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プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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2017年08月04日

エリン・メイヤー『異文化理解力―相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養』―アジア人の部下を日本方式で叱ってはならない


異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養
エリン・メイヤー 田岡恵

英治出版 2015-08-22

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 以前、ブログ別館の記事「エリン・メイヤー『異文化理解力―相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養』」で取り上げたが、改めて本ブログでも紹介したいと思う。

  《参考記事》
 (メモ書き)人間の根源的な価値観に関する整理(1)―『異文化トレーニング』(2)
 人間の根源的な価値観とマネジメントの関係をまとめてみた―『異文化トレーニング』(以上は旧ブログ)
 トロンペナールス&ターナーによる「文化の基礎次元」の補足

 各国の文化の特徴を研究したものとしては、上記の参考記事でも挙げたように、トロンペナールス&ターナー、クラックホルン&ストロッドベック、ヘールト・ホフステードなどが有名である。本書は「カルチャーマップ」という形で、文化に関する新しい視点を提供してくれる。

カルチャーマップ

 カルチャーマップでは、各国の文化を8つの視点で分析する。①コミュニケーションは、「ローコンテクスト」か「ハイコンテクスト」かという軸でとらえられる。コンテクストとは「文脈」という意味で、ローコンテクストとは、文脈を共有していないことを表す。別の言い方をすると、価値観、規範、文化、経験などを共有していないということである。一般に、西洋はローコンテクストの文化である。多様な価値観を持つ人々が集まる地域であるから、何でもかんでも言葉で表現しないとコミュニケーションが成立しない。これに対して、ハイコンテクストとは、文脈を共有している、つまり価値観、規範、文化、経験などを共有していることを指す。日本は典型的なハイコンテクストの国であり、いわゆる阿吽の呼吸で意味が通じてしまう。

 ②評価は、「直接的なネガティブ・フィードバック」か「間接的なネガティブ・フィードバック」かという軸でとらえられる。面白いのは、ローコンテクストの西洋の国々は否定的な評価を直接的に伝えるかというと、必ずしもそうではないという点である。西洋の中でも、アメリカやイギリスは、否定的な評価を間接的に伝える傾向がある。言葉の上ではそれほど怒っていないようでも、心の中でははらわたが煮えくり返るような思いをしていることがある。これを知らない他の西洋の国々の人々は、アメリカ人やイギリス人の言葉を額面通りに受け止めてしまい、彼らの本音をつかみ損ねる。例えば、イギリス人が「もう少し考えてみてください」と言う時、心の底では「悪いアイデアです。やめてください」と思っている。ところが、これをオランダ人が聞くと、「いいアイデアなんだな。もう少し掘り下げてみよう」と受け止めてしまう。

 ③説得は、「原理優先」か「応用優先」かという軸でとらえられる。原理優先とは、演繹的な思考と言い換えることができる。原理優先の国の人々は、「まず、一般的な原理としては○○である。この原理を今回のケースに当てはめると○○となる。したがって、結論は○○である」というロジックの組み立て方をする。結論が最後に出てくるため、応用優先の国の人からすると非常にまどろっこしく聞こえる。その応用優先の国では、結論が最初に述べられる。「今回の結論は○○である。なぜならば、A、B、Cという事実があるからである」というのが彼らの論理構成である。

 ④リードは、「平等主義」か「階層主義」かという軸でとらえられる。平等主義の国では、フラットな組織が好まれる。これに対して、階層主義の国では、ヒエラルキー型の組織が採用される。⑤決断は、「合意重視」か「トップダウン式」かという軸でとらえられる。通常、平等主義の国では合意重視、階層主義の国ではトップダウン式になるのだが、いくつかの例外がある。例えば、ドイツや日本は階層主義の国であるのに、意思決定は合意重視で行われる。一方、アメリカは平等主義の国であるのに、意思決定はトップダウン式で行われる。

 ⑥信頼は、「タスクベース」か「関係ベース」かという軸でとらえられる。タスクベースとは、仕事上の人間関係を通じて信頼を醸成することである。逆に言えば、仕事上の関係が全てであるという非常にドライな関係である。他方、「関係ベース」の国においては、仕事上の関係だけではなく、プライベートでの関係も重視される。会社での人間関係がプライベートにも介入してくるような、非常にウェットな関係である。⑦見解の相違は、「対立型」か「対立回避型」かという軸でとらえられる。意見が異なる時に、敢えて対立を扇動するのが対立型である。私はドイツ人と一緒に働いたことがある何人かの人から話を聞いたことがあるが、皆一様に「ドイツ人はずけずけ物を言うし、頑固で絶対に自分の意見を曲げない」と言っていた。対立回避型はその名の通り、対立をできるだけ避けようとするタイプであり、日本人はまさにこれにあたる。

 ⑧スケジューリングは、「直線的な時間」か「柔軟な時間」かという軸でとらえられる。直線的な時間とは、別の言い方をすれば時間厳守である。一方、柔軟な時間とは、乱暴な言い方をすると時間にルーズということである。例えば、今ある人と商談をしているとしよう。30分後には別の商談があり、そろそろ移動しないと時間に間に合わなないとする。この場合、日本のように時間を直線的にとらえる国の人々は、次のアポに間に合うよう、今の商談を何とか上手く切り上げようとするだろう。だが、時間を柔軟にとらえる国の人々(中東に多い)は、次の商談の時間を気にしない。今目の前にいる人との関係が重要であり、話が終わるまでは絶対に席を立たない。仮に商談が長引いて次の商談に遅れても、悪びれる様子はないし、相手も遅刻を咎めない。

 上記のカルチャーマップを見ると、フランスとドイツ、日本と中国は比較的近い文化であるように思える。ところが、両国の間には大きな違いがいくつかある。フランスとドイツに関しては、ドイツよりフランスの方がハイコンテクスト寄りであり、意思決定がトップダウン式であり、人間関係がウェットであり、時間に対する意識が柔軟である。日本と中国に関して言うと、中国の意思決定がトップダウン式であるのに対し、日本の意思決定は合意重視であるという決定的な違いがある。また、時間に対する意識も、中国は柔軟であるが、日本人は時間厳守の意識が強い。西洋人だから、東洋人だから皆同じだと一括りに考えるのは、ミスコミュニケーションの元となる。

 同じアジアでも、日本と他のアジアの国で決定的に違うのが、「部下の叱り方」ではないかと思う。先ほどのカルチャーマップを見ると、②評価のところで、日本は「間接的なネガティブ・フィードバック」に寄っていることが解る。この点については少し補足が必要であろう。つまり、日本人が否定的な評価を間接的に伝えるのは、会議などの場に限られるということである。日本人は、会議では波風を立てたくないと考えるため、反対意見をあまりはっきりと言わない(⑦見解の相違とも関連)。ところが、部下と1対1になると、突然高圧的な態度に出ることがある。「お前、ちっとも仕事ができていないじゃないか!」、「このバカヤロー!」など、他の社員が見ている前で、特定の部下を名指しして大声で怒鳴ることがある。

 この日本式の部下指導を、他のアジアの国に持ち込むと危険である。特に、中国、フィリピン、タイ、インドネシアでは気をつけた方がよい。これらの国の人々は面子やプライドを非常に重視する。そのため、人前で叱られると面子やプライドを傷つけられたと感じる。部下はその場で会社を辞めてしまうかもしれない。会社を辞められるだけならまだましな方で、最悪の場合、その社員の家族や親族から復讐(物理的な攻撃)を受けることがある。こういう国々の人に対して否定的な評価を伝えるコツとして、本書では5つのポイントが挙げられている。

 ①グループの前でフィードバックしない。
 ②メッセージをぼかす。
 ③フィードバックをゆっくりと、長い時間をかけて行い、徐々に浸透するようにする。
 ④好ましくないメッセージをぼかすために、一緒に食事などをしながら話す。
 ⑤よいことを言い、悪いことは言わない。

 最後の「⑤よいことを言い、悪いことは言わない」とは、次のようにフィードバックすることである。例えば、部下に3つのドキュメント作成を依頼し、2つのドキュメントはよくできていたが、残りの1つのドキュメントの出来がひどかったとする。この場合、日本人なら「お前、この最後のドキュメントは何だ!?全然できていないじゃないか!」と怒り出すところだが、アジアにおいては出来がよかった2つのドキュメントに着目しなければならない。そして、「最初の2つのドキュメントはよくできていたよ」とだけ言う。すると、部下は「最後のドキュメントについては何も言ってくれなかったから、ひょっとしたら上司の期待水準を満たしていなかったのではないだろうか?」と思ってくれるかもしれない。その可能性に賭けるしかないのである。

 部下に対して否定的な評価を伝えなければならないのが人事考課面談である。こんな状況を考えてみよう。皆さんは、ある情報システム会社のインドネシア支社で部長を務めているとする。部下であるプロジェクトマネジャーに対して、人事評価の結果を伝える面談を行うことになった。事前に手元に用意した紙には次のように書かれている。

 <よかった点>
 (ⅰ)顧客企業の中でシステム導入に反対していたA課長を粘り強く説得したこと。
 <悪かった点>
 (ⅱ)自社で開発できない機能まで安易に引き受けて、部長である自分に承諾を取らないまま外注先を使った結果、プロジェクトのコストがかさんだこと。
 (ⅲ)前任の部長がプログラムの品質管理に厳しかったためか、必要以上に細かいプログラムテストにこだわりすぎて、バグが一向に減らなかったこと。
 (ⅳ)マネジャーなのに部下の仕事を手伝いすぎている。そのせいで、顧客とシステムの仕様を擦り合わせたり、プロジェクトの進捗を報告したりする時間が十分に確保できていない。
 ⇒総合評価はA(よい)~E(悪い)の5段階のうち、「D」。

 (※私がIT業界出身で、コンサルティングでもIT業界のクライアントが多いため、すぐに作成できるケースがIT業界のものになってしまう点はご容赦いただきたい)

 部下が日本人であれば、上記で書かれている内容をそのまま伝えるだろう。よかった点はよかったと言い、悪かった点は悪かったとはっきり言ってあげるのが部下のためと考えられている。しかし、相手がアジア人(このケースではインドネシア人)の場合は一工夫必要である。ネガティブなことをそのまま伝えると、相手のプライドを傷つける恐れがある。よって、ネガティブな事実の中からできるだけポジティブな要素を見出し、それを伝えるように努めなければならない。

 例えば、(ⅱ)の「自社で開発できない機能まで安易に引き受けて・・・」という箇所は、肯定的にとらえれば「顧客のニーズをきめ細かく吸い上げて対応した」ということになる。よって、まずはその点を強調する。その上で、「顧客のニーズに追加対応する際には、自社で本当にできるのか、コストはどのくらいかかるのかをもう少し慎重に検討した方がよい」と、やんわり改善点を伝える。(ⅲ)に関しては、「前任の部長のやり方に引きずられなくてもいい。君がいいと思う方法でやってみなさい」と言うのも1つの手であろう。(ⅳ)にある「マネジャーなのに部下の仕事を手伝いすぎている」という箇所は、肯定的にとらえれば「マネジャーとして部下の支援を十分に行っている」ということになる。それを強調した上で、「部下を支援する時間と同じくらいの時間を、顧客とのコミュニケーションにも費やしてほしい」と提案する。

 ただし、これだけ肯定的な点を見出して部下にフィードバックしても、総合評価の「D」は変更できない。上記のようにできるだけ肯定的にフィードバックした結果、部下から「なぜ自分はDなのですか?」と聞かれたら、こう答えるとよい。「今期は他のプロジェクトマネジャーが君以上にすごく頑張ったから、相対評価でDなんだ」。おそらく、これでは部下は十分に納得しないかもしれない。また、上司の側も、本当はプロジェクトマネジャーとしてもっとこうしてほしいと思うところがたくさんあるだろう。その場合は、前述した「否定的な評価を伝えるコツ」の「④好ましくないメッセージをぼかすために、一緒に食事などをしながら話す」に従うとよい。部下を何度か食事に誘い、食事をしながらプロジェクトマネジャーのあるべき姿を何回かに分けてゆっくりと伝えていく。

 アジアで事業展開をしている企業から話を聞くと、どの企業も人事労務管理で非常に苦労されている。現地の法制度や行政とのやり取りの仕方が日本とは全く異なるのも理由の1つであろうが、日本式の部下指導・部下育成のやり方がアジアでは通用しないという点が非常に大きいのではないかと思われる。決めつけはよくないが、アジアの人々は必ずしも日本人と同等の能力を持っている人ばかりとは限らない。彼らに対して、日本人は、恐らく自分が昔日本国内で上司からされたように、厳しく指導をしたくなる。だが、アジアではそれを我慢して、可能な限り部下のプラスの面を見出し、部下が自然と育っていくのをじっくりと見守る懐の深さが求められる(ただし、不正は別問題である。不正に対しては毅然とした態度をとらなければならない)。


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