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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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2017年07月21日

【日本アセアンセンター】ASEANにおける人事/労務/ビザ最新情報(セミナーメモ書き)


パスポート

 日本アセアンセンターのセミナーに参加してきた。セミナーで勉強になったことのメモ書き。

 【Ⅰ.タイ】
 ・タイの一般就業数は約3,858万人(2012年)であり、そのうち38.9%が農業従事者である。タイでは2018年より生産年齢人口が減少すると予想されており、第2次・第3次産業の成長スピードを緩めないためには、農業従事者を第2次・第3次産業に移行させる必要がある。ただ、2018年後半に予定されている国民総選挙では、農業従事者の支持が強いタクシン派が反タクシン派に勝利すると予想されており、就業者の産業間の移行がどこまで進むか不透明である。

 ・タイに進出している日本企業数は約8,000社であるが、そのうち経営活動の実態を伴っているものは約4,000~5,000社と推定される。在留邦人数は67,424人(2015年10月時点)であると公表されているものの、近年は若干日本人が減少する傾向にある。それが顕著に表れているのが、日本人学校の生徒数の減少である。バンコクの日本人学校では、以前は1学年のクラスが16ほどあったのが、最近は13~14クラスに減少している。

 ・最近の大きな法改正としては2点ある。まず、①2016年11月、Provident Fund(退職金積立制度)の強制加入の草案が決定した。対象は、社員数100人以上の企業、上場企業、国営企業、公的機関、BOI企業である。財務省は本草案を2018年に法制化、発効させる意向である。タイでは日本以上のスピードで高齢化が進んでおり、それに備えるためのものである。次に、②タイではこれまで定年が定められておらず、一般的に55歳を定年とする企業が多かったのに対し、今後は60歳が定年とされ、定年時の解雇補償金の支払いが義務化される。

 ・タイには公的医療保険があるが、被保険者が受診する医療機関をあらかじめ指定し(指定外の医療機関では受診不可)、指定された医療機関には保険金が前払いされる仕組みとなっている。そのため、医療従事者にとっては、治療のインセンティブが低いという問題がある。そこで、ローカル社員からは、民間の医療保険に加入してほしいとの要望が強い。タイの日系企業のうち、約4割は民間の医療保険に加入していると言われる。

 ・他のASEAN諸国にも共通するが、タイでもジョブホッピングが盛んである。タイ人の転職活動の特徴としては、以下の点が挙げられる。①勤務地へのこだわりが強く、自宅からより近い企業が見つかるとすぐに転職する。②年収やボーナスは見ておらず、月収を重視している。ボーナスを含めた年収ベースではほぼ同額であっても、月収が高い方を選択する。これは、月々のローンが支払えるかどうかで判断するためである。③内定までの期間が短い企業を好む。面接は1~2回で、2週間程度で内定を出してくれる企業が選ばれやすい。④日本以上に高学歴志向である。新卒採用者の6~7割は、2~3年ぐらい社会経験を積んでから大学院に進学したいと言う。大学院を出ても、元の企業に戻ってくる人は非常に少ない。

 ・今までは経済が右肩上がりで成長していたため、多少仕事ができない人が混じっていても他の社員から不満はあまり出なかった。ところが、近年、タイ経済の成長が鈍化しているせいか、ローカル社員がお互いに給与額を見せ合うと(ASEAN諸国ではこうしたことが普通に行われる)、「なぜあの人は大した能力もないのに自分よりも高い給与をもらっているのか?」と不満が出るようになった。早急に公正な評価制度を整備しないと、優秀な人から順番に退職し、優秀でない人ばかりが残ってしまうというリスクがある

 【Ⅱ.シンガポール】
 ・シンガポールでは、景気に左右されず、毎年3.5~4.0%の割合で昇給するのが一般的である。昇給がない場合、暗に退職を促していると思われかねない。シンガポールでもタイと同じく、年収よりも月収を気にする。賞与としては、AWS(Annual Wage Supplement)に加え、月収の平均1.5~2か月分を支給する。AWSとは、所得税を補助する役割を持つ年間給与補助である。12月に1か月分給与に相当する額を固定ボーナスとして支給する。法律に定められた義務ではないものの、政府が推奨しており、多くの企業が導入している。

 ・若いローカル社員は上昇志向が強く、ジョブホッピングを頻繁に行う。一方で、現地企業の立ち上げ期から在籍している勤続20~30年のベテラン社員も増加傾向にあり、社内で人材層の二極化が進んでいる。定年退職が近いベテラン社員の後任に対するニーズが増加している。

 ・日系企業の中には、現地化を推進するため、日本人駐在員の後任として、現地採用日本人およびローカル社員の採用による補充を行うところが出てきている。しかし、依然として、日本人駐在員数名+各部門の現地採用スタッフという人員構成が多く、思うように現地化が進んでいない。また、シンガポールには地域統括企業が設置されることも多いが、地域統括企業においては、コーポレート機能強化(特に、内部統制やリスクマネジメント)のために日本人駐在員を配置しており、その右腕となるローカル社員のニーズが増加傾向にある。

 ・シンガポールの人口約561万人(2016年6月)のうち、外国人は30%の約167万人である。近年、外国人雇用に対するシンガポール市民の目が厳しく、就労ビザ(EP)の取得も厳格化されている(後述)。そこで、シンガポール市民、永住権保持者(PR)、配偶者ビザ(DP〔EP保持者の配偶者は就労が可能である〕)、マレーシア人(EP)の採用ニーズが上昇している。

 ・EP(Employment Pass)を取得するための給与条件は、月収3,300シンガポールドル以上であったが、2017年1月より3,600シンガポールドル以上に引き上げられた。しかし、現実的には3,600シンガポールドルでEPが取得できることは稀である。MOM(労働省)のサイトhttp://www.mom.gov.sg/eservices/services/employment-s-pass-self-assessment-tool では、国籍、年齢、大学、職種などを入力すると、EP取得に必要な月収をチェックすることができる(金額はあくまでも目安であり、EP取得を確約するものではない)。上記サイトによると、なぜかマレーシア人は3,600シンガポールドル以下でもEPが取得可能という結果が出る。

 EPが取得できない場合は、S-passを取得するという手もある。従来は熟練労働者向けのビザであったが、現在はそれ以外の職種でも取得することができる。給与条件は月収2,200シンガポールドル以上である。ただし、S-pass保有者を1名採用するごとにシンガポール市民を5~6名採用しなければならないという採用枠制限がある。

 ・シンガポール市民の雇用に協力的でない企業は、MOMのWatch Listに掲載される2017年3月には、250社をWatch Listに掲載したとMOMが発表した。Watch Listに掲載された企業は、雇用環境の改善に向けた取り組みに関する報告書を提出しなければならない。また、Watch Listに掲載されている期間中は、就労ビザが下りないという問題が生じる。

 【Ⅲ.マレーシア】
 ・マレーシアの労働者人口は約1,440万人であるのに対し、外国人労働者は約580万人(合法労働者約230万人、不法労働者約350万人)である。マレーシア政府は、外国人労働者依存の労働集約的な産業構造から脱却し、産業の高度化を急いでおり、外国人労働者規制に関する政策を矢継ぎ早に打ち出している。ただし、新経済モデルを目指す政府と、景気後退を警戒する経済界の間のやり取りで方針が二転三転している。例えばこんな具合である。

 ○2016年2月・・・バングラデシュ人労働者150万人の受入を発表するも、労働組合などの反対を受け曖昧にされた。
 ○2016年3月・・・全ての外国人労働者の新規受け入れを凍結すると発表。
 ○2016年4月・・・アーマド・ザヒト・ハミディ副首相は、マレーシア小売チェーン協会の会議において、一部のセクターにおいて雇用が不足していることを政府が認識しているとし、新規受け入れに向けて動きがあることを明かす。
 ○2016年5月・・・外国人労働者の受入凍結を解除する場合は、①マレーシア人を雇用しようとしたことを証明する書類、②従事させる仕事内容を明記した書類の提出を条件とすると指摘。

 ・マレーシア人求人の内訳を見ると、営業、事務、エンジニア、財務・経理、ITいずれの職種においても、マネジャー、エグゼクティブクラスの求人が高い割合を占めている。日本人の求人に関しては、ビザの発給条件がやや厳しくなっているものの、特に20~30代の若手層の求人割合が高く、現地で採用された日本人が急増している。

 ○営業・・・設備投資より営業力強化のニーズが強い。若手の営業担当者は常に枯渇気味。
 ○事務・・・秘書が多い。日本人の細かいフォロー、丁寧さを求めている。
 ○カスタマーサポート・・・在マレーシア邦人数が増加しており、彼らへのサポート業が多い。
 ○エンジニア・・・製造管理、品質管理、工場長など、シニア層がメイン。
 ○接客・飲食・・・日本食飲食店が激増しており、店長、シェフの求人が増加。
 ○財務・経理・・・事務の中でも割合が高いものの、英語力とのバランスが難しく苦戦。
 <参考>
 ○翻訳・通訳・・・基本的にビジネスは英語で行われるため、日本人の求人は少ない。
 ○IT・・・ここ数年で進出が増加しているが、基本的には本社からの派遣が多い段階。

 ・マレーシア人は、マレー系65%、中華系25%、インド系10%という構成である。同じマレーシア人でも、見た目、性格、得意職種が全く異なる。

 ○マレー系・・・温厚な性格で人柄はよい。家族・お祈りが最優先であり、仕事の優先度は低いことが多い。家族重視のため、家族向けの福利厚生を充実させると満足度が上がる。営業職は敬遠され、事務全般、エンジニア職が好まれる。
 ○中華系・・・ハングリー精神が強い。お金を稼ぐことに執着心があるので、仕事へのモチベーションは高い。数字を達成するなどの意識は高いが給与アップを目的とした転職も多く、安定しない。管理職、経理、営業に多い。営業職はコミッション制度が必須である。
 ○インド系・・・医者、弁護士などの専門職で特出した才能を示す人も多い一方、タクシードライバーにおけるインド系比率も多く、インド系の中でもステータスの格差が大きい。全体的に頭のよい人が多い一方、中にはよからぬ方法でお金を稼ぐことに頭のよさを使う人もいる。

 ・金正男殺害事件により、北朝鮮との国交断絶も疑われたが、北朝鮮との間で”何かの”合意を交わし、容疑者を北朝鮮に変換するとともに、頑なに拒んでいた遺体の引き渡しも実行した。ナジブ首相は、「我々は駐平壌大使館を閉鎖もしなければ、北朝鮮との断交もしない。マレーシア国内における北朝鮮労働者らの外貨獲得活動も引き続き認める」と発言し、引き続き良好な関係を築こうとしている。現地では何事もなかったかのような状況である

 【Ⅳ.ベトナム】
 ・日本企業の採用手法を見ると、大卒新卒者はカレッジリクルーティング、スタッフレベルの経験者は求人サイト、マネジメントレベルの経験者は人材紹介、ワーカーは自社募集が中心である。自社募集ではSNSが活用される。日本ではFacebookはどちらかと言うと年齢が上の人たちが使うものであるが、ベトナムでは20代のFacebookユーザが多い

 ・上位校出身者は昇進、昇給に対しての意識が強く離職率も高いため、中堅校のポテンシャル人材を採用し、教育を通じて会社に対するロイヤリティを高めるのも1つの手である。福利厚生を充実させることも重要である。ベトナムでは特に社員食堂の充実が求められ(「食事をおいしくしてほしい」という理由でストライキが起きる)、運動会、誕生日会、社員旅行が喜ばれる。

 ・ベトナムに関してはセミナーで得られた情報が少なかったので、代わりに私が今までに聞いたことのある情報を書いておく。

 ○ベトナム企業は、労働組合に対して、賃金総額の2%を毎年拠出しなければならない(日本では不当労働行為にあたり、法律で禁止されている)。
 ○ベトナムでは、テト(正月休み)前にストライキが起きやすい。在庫が少ないと、仕事が減っていると思われ、解雇されるのではと不安になって社員がストライキを起こす。よって、テトの前には在庫を積み増しするなど、工夫が必要である。また、ストライキの際には、トイレの落書きが決起のサインになっていることがあるため、日頃からトイレは入念にチェックする。
 ○採用時には診断書を提出させる。これは、麻薬などをやっていないかどうかを確認するためである。なお、診断書の偽物が流通しているとも言われており、診断書が本物かどうか注意すべきである(ちなみに、日本では採用段階で診断書を提出させることは違法である)。
 ○ベトナムの労働法では、有期雇用契約について、1回目の更新は有期雇用契約でも構わないが、2回目の更新からは無期雇用契約になると定められている。
 ○ベトナム人には、捨てたものは皆のものという意識がある。そのため、工場から出る廃材などを個人で勝手に売却してお金を得、仲間と分け合っていることがある。廃材を売却して得たお金は会社のものであることを教え、そのお金は福利厚生に使うとよい。
 ○ベトナムの歴史は外国からの支配の歴史であることから、表面的には穏やかであっても、内面には反抗心を持っている。したがって、上から目線で「指導」をすると反発を食らう。どの国に進出する場合でもそうだが、自社がその国のために仕事をしてやっているという感覚でいると失敗する。そうではなく、進出先国のローカル社員をパートナーと見なし、その国のおかげで事業をさせてもらっているという気持ちを持つことが大切である。

 最後に、以前私がASEAN諸国の労働事情を比較調査した際に作成したファイルをDropboxにアップしておいた。シンガポールとブルネイを除く8か国の情報をまとめてある。様々な書籍などの情報の寄せ集めであるため、抜け漏れ、誤りがあればご指摘いただきたい。
 https://www.dropbox.com/s/kgn7n6ijekmwvvq/20170721_ASEAN_employment.pdf


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