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2017年07月10日
東京都の中小企業向け補助金・助成金など一覧【平成29年度】
(一社)東京都中小企業診断士協会の理論政策更新研修に参加してきた。この研修は2コマ構成なのだが、1コマ目は必ずその年度の中小企業政策を学習する時間となっている。今回は、東京都が平成29年度に実施する中小企業振興施策について、東京都産業労働局商工部の担当者から説明があった。東京都が中小企業振興施策のために持っている予算は約4,600億円だという。ただし、そのうち約700億円は観光、雇用・就労支援、農業のための予算であり、残り約3,900億円のうち約8割は制度融資のために都内の金融機関に貸し付けているものであるから、純粋に中小企業支援のために使われる予算は約600億円となる。それでも、中小企業庁の予算がだいたい1,500億円程度であるから、いかに東京都がお金を持っているかが解る。
以下、研修の中で紹介があった主要な中小企業振興施策を列記する。70の施策があるが、実際にはこの倍ぐらいの施策があるそうだ。可能な限り、関連リンクをつけておいた。ただし、古い情報のページも混じっているため、随時最新情報をチェックしていただきたい。補助金・助成金は「●」、専門家派遣が中心のものは「◇」、相談窓口サービスが中心のものは「▽」で示した。
【経営革新支援】
○経営革新計画
●団体向け課題解決プロジェクト支援事業
【経営安定支援】
▽小規模企業対策(地域持続化支援事業)
平成27年度から都内6か所に支援拠点を整備し、小規模事業者が抱える事業承継などの課題解決を支援するとともに、商工会や商工会議所が取り組む地域ブランド開発などの事業を促進し、地域全体の活性化を実現する。平成29年度は多摩・島しょにおける支援を充実。
◇中小企業活力向上プロジェクト
▽取引改善指導(ADR)
●受注型中小企業競争力強化支援事業
●新・目指せ!中小企業経営力強化事業
◇東京都BCP策定支援事業
○団体向けリスクマネジメント普及啓発事業【新規】
▽事業承継・再生支援事業
●技術・技能承継事業
▽中小企業サイバーセキュリティ対策の普及促進
中小企業をサイバー空間の脅威から守るため、警視庁や各中小企業支援機関と連携し、平成28年度から相談窓口を設置するなどサイバーセキュリティ対策の普及促進を実施。東京五輪を控え、中小企業自らがサイバーセキュリティの重要性を実感し、早急な対策に取り組むことができるよう、企業1社1社への働きかけを強化する。
●中小企業における危機管理対策促進事業【新規】
【販路開拓支援】
○東京ビッグサイトの拡張整備
○中小企業グローバル連携促進事業
▽海外販路開拓支援事業
▽都内中小企業の海外への魅力発信事業
平成27年12月、東京都中小企業振興公社タイ事務所が業務を開始し、現地において経営相談やマッチングなどを実施。引き続き、都立産技研バンコク支所、タイ工業省、カシコン銀行などと連携し、都内中小企業の海外展開を現地できめ細かくサポート。
○海外展開人材育成事業
企業の現状や発展段階に合わせて、貿易実務者養成講習会、国際化対応リーダー養成講座を開催し、中小企業の海外展開に資する人材の育成を総合的に支援。
○アジア特別商談会
○医療関連機器等の海外展開支援【新規】
海外市場におけるPR(世界最大級の医療機器展示会「COMPAMED」への出展など)やビジネススキル・ノウハウの取得支援を実施する他、現地政府機関や企業、産業クラスター、研究機関などとの連携によるネットワークの構築を図る。
○産業交流展
○地域連携型商談機会創出事業
【ネットワークづくり支援】
○広域多摩イノベーションプラットフォーム
○広域産業交流・連携の促進
埼玉県、千葉県、神奈川県、横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市、相模原市の近隣8県市と共同で、年1回、中小企業と大企業による商談会を実施する。
○被災地等中小企業ビジネス革新支援事業
都内および被災県等中小企業と、東日本を中心とした大企業開発試作部門との連携を促進することで、被災県の産業を立て直すとともに、都内産業の活性化を図る。
●新事業分野創出プロジェクト
【技術支援】
●新製品・新技術開発助成事業
●製品開発着手支援助成事業
○ものづくりイノベーション企業創出道場
▽知的財産総合センターの運営
●知財戦略導入支援事業(ニッチトップ育成支援事業)
○知的財産活用製品化支援事業
○デザイン活用への支援
●次世代イノベーション創出プロジェクト2020
●成長産業分野の海外展開支援
●先進的防災技術実用化支援事業
●海外展開技術支援事業
○生産性向上のための中核人材育成事業
●革新的事業展開設備投資支援事業【新規】
○未来を拓くイノベーションTOKYOプロジェクト【新規】
東京には世界屈指の大企業が拠点を有しているが、現状では大企業と中小・ベンチャー企業の連携は低調である。今後、広く中小企業全体に波及効果をもたらすイノベーションを創出するため、リーディング企業、ベンチャー・中小企業を巻き込んだオープンイノベーションを活用して、新製品・新技術開発や新事業への展開を促す仕組みの構築に向けた調査・検討を実施(平成30年度から採択プロジェクトへの支援を予定)。
【創業支援】
○次世代アントレプレナー育成プログラム
○インキュベーション施設の運営
東京コンテンツインキュベーションセンター(中野区)、ベンチャーKANDA(千代田区)、白鬚西R&Dセンター(荒川区)、ソーシャルインキュベーションオフィス・SUMIDA(墨田区)、タイム24ビル内創業支援施設(江東区)、青山創業促進センター(通称:青山スタートアップアクセラレーションセンター、渋谷区)、インキュベーショオフィス・TAMA(昭島市)の運営。
●インキュベーションHUB推進プロジェクト
○青山創業促進センターの設置・運営
●ライフサイエンス系ベンチャー支援
●創業活性化特別支援事業
▽創業支援拠点の運営
○東京都ベンチャー技術大賞
○多摩ものづくり創業の促進【新規】
○グローバル・ベンチャー創出プラットフォーム【新規】
海外で成功するベンチャー企業を育成するために、海外のベンチャーキャピタルや大企業とのビジネスマッチングを重視する。
○女性ベンチャー成長促進事業【新規】
国内外でトップベンチャーとして活躍する女性ベンチャーのモデルケースを輩出することを目的に、社会課題の解決やグローバル市場への進出など、スケールアップする可能性の高い事業ビジョンを持つ女性起業家を支援する。
【地域工業の活性化】
○産業立地情報収集・提供事業
●産業集積活性支援事業
●都内ものづくり企業立地継続支援事業
●ものづくり企業グループ高度化支援事業
●地域の魅力を活かした新ビジネス創出事業【新規】
▽東京都企業立地相談センター業務委託事業【新規】
今後、都内へ立地を希望する企業に対し、立地に関するよりきめ細やかな情報や適切なアドバイスをワンストップで提供できるよう、相談センターを設置する。
【地域商業の活性化】
●商店街への支援
-商店街補助事業
-政策課題対応型商店街事業
-商店街グランプリ
-広域支援型商店街事業
-進め!若手商人育成事業
◇商店街ステップアップ応援事業
●商店街空き店舗活用モデル事業
●商店街起業・承継支援事業
●若手・女性リーダー応援プログラム
【総合的支援】
▽中小企業ニューマーケット開拓支援事業
○新事業分野開拓者認定・支援事業
●航空機産業への参入支援
●医療機器産業への参入支援
○東京発「クールジャパン」の推進
東京の「クールジャパン」を世界へ発信・浸透させ、東京の産業力とブランド力の強化を図る。
○中小企業世界発信プロジェクト
○中小企業新サービス創出事業
●障害者スポーツ用具開発の促進【新規】
東京2020パラリンピック競技大会に向けて、中小企業や地域が取り組む障害者スポーツ用具などの開発を支援。障害者スポーツ用具の開発が活性化され、中小企業の同用具市場さらには福祉機器市場への参入にもつなげていく。
【試験研究機関】
●ロボット産業活性化事業
●中小企業へのIoT化支援事業【新規】
ここからは余談。理論政策講師研修の2コマ目は「中小企業の海外展開支援」であったが、これが最悪であった。私の知り合いに海外経験が豊富な診断士の先生がいて、一部の「国際派」診断士なる人たちを非常に毛嫌いしている(まず、「国際派」の意味が解らないと言う)。彼らが勉強会や会合を開くと、何十年も前に海外で自分が経験したことを、「私が○○にいた頃の話『では』・・・」などと言って、永遠と自慢話を続けるそうだ。「国際派」診断士に対して否定的なその先生は、彼らのことを「出羽山地の神々」をもじって「ではの神」と揶揄している。
研修の前日にその先生に会う機会があって、「明日、理論政策更新研修で、○○先生の『中小企業の海外展開支援』を聞くことになっている」と話したら、その先生は「それは一番最悪な講師だ。絶対にFOBとかL/C(信用状)とかの話をするに決まっている」とおっしゃった。案の定、蓋を開けてみたら、2時間半の研修のうち、大半はFOBやCIF、L/C、NEXIなど貿易実務の話であった。この程度の知識なら、貿易実務をやったことがない私でも知っている。それに、我々はそもそも診断士であって、貿易業務のプロを目指しているわけではない。
診断士が関心を持っているのは、あくまでも経営の話である。例えば、輸出をする際には、どういう視点でターゲット市場を評価すればよいのか、展示会で効果的に見込み客のリストを集めるにはどうすればよいのか、販売店・代理店はどうやって見つけるのか、販売店・代理店の信用評価はどのようにして進めるのか、販売・代理店の育成、モニタリングはどうやって実施するのか、代理店とトラブルになったらどう対処すればよいのか、といったことを聞きたかった。もしも講師がこれらの論点に答えられないなら、「海外展開支援を専門としている」などと言ってほしくない。
それに、輸出というのは、中小企業の海外展開の一面でしかない。神奈川県が実施した「海外展開している又は計画がある県内中小企業の動向調査」によると、最も割合が高い進出形態は「現地生産」である。「輸出」が2位、3位にあるが、4位には「販売拠点の設置」がランクインしている。これは、中国、ASEANなど、従来はコスト削減のための生産拠点として見てきた国が経済成長し、有望な市場としても評価できるようになったという事情を反映している。
ややデータが古いが、中小企業庁『中小企業白書(平成22年版)』によると、直接投資企業は、輸出企業と比較して、「人材確保・労務管理」や「投資費用の調達・資金繰り」といった人材面や資金面の課題を挙げる割合が高くなる傾向が見られる。
さらに、日本政策金融公庫『中小企業の海外進出に関する調査結果』(2012年5月)を見ると、海外直接投資先の経営課題(複数回答)として「外国人従業員の教育や労務管理が難しい」が製造業で1位、非製造業で2位になっている。とどのつまり、直接投資の場合は、人材マネジメントが中小企業にとって最大の経営課題となっていると言える。
人材マネジメントに関する経営課題を細分化すると、様々な問題が出てくると思う。現地の労働法が複雑で対応に苦労する、当局とのやり取りが煩雑である、政府の裁量で最低賃金がどんどん上昇し収益が圧迫される、ワーカーやスタッフの育成が難しい、仕事に対する意識が日本人と違いすぎて、日本人の指示通りに仕事をしてくれない、せっかく育成しても給与が高い企業にすぐに転職してしまう、ちょっとでも労働条件が悪いと感じるとストライキをちらつかせてくる、労働組合との対立が深刻である、ローカル社員の不正に悩まされている、リーダー・マネジャークラスの人材が育たない、ハイクラスの人材を外部から採用しようとしても適材がいない、経営の現地化が進まず、いつまでも日本人駐在員を引き上げられないなど、挙げればきりがない。
進出国の最新事情を考慮に入れつつ、かつこれらの課題に対応しながら、現地企業が持続可能な成長を遂げるためにどうすればよいかアドバイスするのが診断士の仕事というものではないだろうか?そういう仕事ができるようになるために、我々は研修を受けているのである。そうでなければ、理論政策「更新」研修は、「知識の更新」にならない。