プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2017年08月18日

『ブロックチェーンの衝撃(DHBR2017年8月号)』―ネットワークは分散型だが中央集権的なプレイヤーが出現すると思う、他


DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2017年8月号 [雑誌]DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2017年8月号 [雑誌]
ダイヤモンド社 DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部

ダイヤモンド社 2017-07-10

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 (1)ブロックチェーンの技術的な側面については私は全くの素人なので、今回の記事は本号を読んだ雑感レベルにとどまることをご容赦いただきたい。本号を読むまでは、ブロックチェーンとは現在国家が管理している通貨に代わるもの、といったぐらいのイメージしか持っていなかった。しかし、実はブロックチェーンはそれ以上のことが実現可能であることが解った。
 アクセス権管理では、たとえば、以下のような仕組みが実現されるかもしれない。ユーザーが利用料金や保証金などを支払うと、ブロックチェーン上のスマートコントラクトにより、自動車へのアクセス権が付与される。ユーザーが利用可能な時間帯に車の前に立つと、車からブロックチェーンに照会がかけられ、認証されるとロックが解かれる。
(鳩貝淳一郎「仮想通貨からスマートコントラクトまで社会を変える理念 ブロックチェーン:ビットコインを動かす技術の未来」)
 「スマートコントラクト」については、別の論文でもっと詳しい説明がある。
 事前に取り決めておいた契約条件が満たされれば、支払いも、通貨もしくはその他の資産の譲渡も自動的に行われる。たとえばスマートコントラクトによって、納入業者から発送された荷物が届くと同時に支払いを行う、というケースが考えられる。特定の商品を受け取ったという合図を受取手の企業がブロックチェーン経由で送ることもできるし、その商品にGPS機能を持たせて移動するごとに自動で位置情報をアップデートさせ、最終的にその情報が支払い手続きのスイッチとなるようにすることも可能だ。
(マルコ・イアンシティ、カリム・R・ラカニー「技術普及の4フェーズから読み解く ブロックチェーンと企業戦略」)
 これは私の解釈だが、従来は製品・サービスの流通と資金の決済がバラバラに行われていたのに対し、ブロックチェーンを活用すると両者を同時に実施できるようになる、ということだと思う。ただし、資金の決済はアルゴリズムで自動的に実施できるものの、製品・サービスの流通には人手が介入することが多い。つまり、品質にばらつきが生じる恐れがある。そこで、品質を平準化するために、AI(人工知能)を活用しようという発想が出てくる。
 AIによる安定した高品質サービスの提供は、スマートコントラクトが、金融や情報のやりとり以外の領域に展開するための、極めて重要な要因であると思われる。AIは、我々に、知識やスキルをコモディティ化し、そこへのアクセスを可能とするのである。

 再び運転技術を例に取る。これは1つのスキルであり、それを職業とする人々は、このスキルを車両というインフラとともに提供し、利用者の移動を実現することで価値化する。しかし、人が提供するサービスには、品質のばらつきがある。AIで実現する自動走行は、このスキルにアクセスできない個人に、高品質なスキルへの安定したアクセスを提供することで、移動手段の提供や事故などの防止という貢献をする。
(北野宏明「能力のコモディティ化が切り拓く新市場 ブロックチェーンの活路は人工知能との連携にあり」)
 従来の取引は次の通りである。企業の工場のラインで、ある部品の在庫が発注点を下回ったとすると、購買担当者が仕入先に部品の発注を行う。仕入先の作業員は、フォークリフトなどを使って必要な部品の数を工場の在庫からピックアップし、物流業者のトラックに載せて企業に納品する。企業側は検収を行い、検収がOKであることを仕入先に知らせると、仕入先は請求書を発行する。請求書を受け取った企業は、金融機関で代金の支払いを行う。ここで、この企業と仕入先、さらに物流業者がブロックチェーンとAIを活用したとしよう。

 この企業の工場では、部品の在庫量の情報がブロックチェーンと連動している。在庫が発注点を下回ると、ブロックチェーンが自動的に仕入先に対して部品を発注する。仕入先の工場ではAIロボットが導入されており、注文を受けると、ロボットが必要な量の部品を自動的にピッキングする。同時に、注文情報は物流業者のブロックチェーンとも共有されていて、他の荷主企業の荷物量、納入期限などを勘案し、何時にその仕入先の工場に自動運転トラックを到着させるかを決める。物流業者の自動運転トラックが仕入先の工場に到着する頃には、積載する部品の準備が完全に完了しており、スムーズに積み荷が行われる。後は、自動運転トラックが発注企業に部品を納品する。検品は、発注先企業のロボットが自動的に行う。検収が完了すると、その情報がブロックチェーンに伝えられ、決済が一瞬で完了する。これが近未来の姿なのかもしれない。

 ブロックチェーンは分散型のネットワークが前提だが、その将来は次のように予測されている。
 おそらく、AIによるサービスの高品質化と安定性、効率化と(※原文ママ)追求する巨大プライベートブロックチェーン群と、サービス品質により大きなゆらぎを許容することで、人が直接サービスすることの味わいや面白さを打ち出すDAO(※非自律型中央集権型企業:De-centralized Autonomous Organization)群、さらには、ニッチなAIサービスを展開するDAO群が並存し、多様なブロックチェーンのサービスが生み出されるはずである。
(北野宏明「能力のコモディティ化が切り拓く新市場 ブロックチェーンの活路は人工知能との連携にあり」)
 興味深いことに、分散型のブロックチェーンを集権的に活用する巨大プライベートブロックチェーン群が登場すると予測されている。私は、これはかなり可能性が高いシナリオだと思う。

 インターネットは分散型のネットワークとして広がったが、結局現在のインターネットの世界を支配しているのは、googleやamazon、facebookなど一部の巨大企業である。また、歴史をさかのぼれば、望ましい政治形態は独裁でも専制でもなく、分散的な市民が知恵を統合する民主制だとされてきたが、現在の世界を見ると、結局大きな政治力を持っている国は独裁制か専制主義である。世界中にプレイヤーが分散した時、彼らが自由気ままに振る舞ったのではシステムが崩壊してしまう。各地のプレイヤーが一定のルールにのっとって行動できるよう、オーケストラの指揮者に相当する力の強い者が必要となる。指揮者の力は、世界中のプレイヤーが分散的であればあるほど、強力でなければならないという逆説が成り立つ。

 話は変わるが、ブロックチェーンは改竄が難しいと言われる。ブロックチェーンと言うぐらいであるから、ブロックチェーンとはブロックのチェーン(鎖)である。各ブロックには、過去の「トランザクション」のデータが全て入っている。トランザクションとは、例えばAさんがBさんに10万円送金する、といった取引のことである。ブロックには「ヘッダ」と呼ばれる部分があり、①トランザクションの圧縮データ、②直前のブロックのヘッダの圧縮データ、③ナンスという3つから成り立っている。そして、①+②+③が一定の値を下回るように計算しなければならない。①と②の計算は比較的容易だが、③の計算が非常に難しいとされる。③が求められればヘッダが完成し、そのブロックは直前のブロックと結合することができる。

 ここで、nというブロックを改竄しようとする者がいたとする。つまり、トランザクションを自分の都合のよい情報に書き換えようとしたとする。すると、トランザクションの変化によって、ブロックnのヘッダのうち、①トランザクションの圧縮データが変化するため、③ナンスの値を再計算しなければならない。前述の通り、ナンスの計算は非常に難しい。仮に、運よく条件を満たすナンスが見つかっても、ブロックnのヘッダ情報はブロックn+1における②直前のブロック(つまりブロックn)のヘッダの圧縮データを変化させる。よって、今度はブロックn+1の③ナンスの値を再計算する必要がある。この再計算が際限なく続くため、ブロックチェーンの改竄は困難と言われる。

 ただ、技術に疎い私が言うのもおこがましいが、改竄は「不可能」ではなく「困難」であるとされている。インターネットの世界には様々な暗号技術がある。新しい暗号技術が開発されるたびに、「今回の暗号を見破るのは相当困難だ」と言われてきた。ところが、何十年か経つと、暗号を解読する人が現れるのである。だから、ブロックチェーンも決して安心はできないと思う。

 (2)本号の特集からは外れるが、スティーブン・ヘイダリ・ロビンソン、スザンヌ・ヘイウッド「期待通りの成果を生み出すために 組織改編を成功させる5つのステップ」という論文があった。その5つのステップは以下の通りである。

 ①損益計算書を作成する
 ②現在の強みと弱みを知る
 ③多くの選択肢を検討する
 ④「配線・配管」を正しくする
 ⑤スタートを切り、学習し、軌道修正する

 ただ、個人的には、①損益計算書の作成が最初に来るのはやや不自然であり、③選択肢の検討の段階で、それぞれのプランによって想定される損益計算書を作成するのが筋ではないかという気がした。また、⑤はExecution as Learningと呼ばれるものであるが、組織はITと違って、バグが見つかったらその都度アップデートすればよいという性質のものではない。一度組織を変更してしまうと、微修正であってもそれを再度変えることは非常に手間とコストがかかる。

 業績が伸び悩むと、組織改編に乗り出す企業は少なくない。半年ごとに全社の組織がコロコロと変わる企業は要注意である。組織改編をすると、経営陣は何か大きな改革をしたような気分になってしまうようである。しかも、組織改編は組織図を書き換えればよく、安上がりの改革だと思われている節がある。しかし、実際には、組織改編によって社員の権限や責任の範囲が変わるため、新しい役割に慣れるのに時間がかかる。また、社員の権限・責任の変化に伴い、社内システムのマスターテーブルや権限設定も見直す必要がある。システムを変更すれば、当然テストのための費用が発生する。さらに、特に営業担当者は、組織が変わったことをいちいち顧客に説明しなければならない。組織改編は決して、安上がりの改革ではないのだ。

 組織改編そのものが目的にならないようにするためには、やはり組織設計の定石を押さえるべきである。企業は、顧客に対して価値を提供するために存在する。まず、自社のターゲット顧客は誰なのか、その顧客に対してどんな価値を提供するのかを明確にする。その上で、その提供価値を実現するには、社内でどのようなビジネスプロセスを整備するべきかを検討する。加えて、そのビジネスプロセスが適切に機能しているかを俯瞰的にチェックする機能も必要である。これがマネジメントであり、ビジネスプロセスと同時にマネジメントプロセスも設計しなければならない。プロセスがはっきりしたところで初めて、どこまでの範囲の業務を1人の社員に担当させるのか、どこまでの範囲の業務を1つの組織としてまとめるのが適切かを熟慮することになる。

 個々の社員の仕事の範囲を決定するには、それぞれの社員の能力や特性、モチベーションの源泉を考慮し、彼らが強みを伸ばし、自律的に仕事ができるようにしなければならない。組織の単位を決める場合、1つの組織を小さくすれば、個々の組織の凝集性は高まる反面、周囲の組織との壁が多くなり、組織間連携が難しくなる。逆に、1つの組織を大きくすると、組織間の調整といった不毛な作業は減少するが、人数が多くなるがゆえに、組織の求心力を保つのが難しくなる。こうした点を念頭に置いて、最適な組織サイズを決定しなければならない。このように、組織設計は非常に難しいのである。そう考えると、組織はおいそれと変えられるものではない。

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