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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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2017年08月26日

【海外】タイビジネス最新情報―銅とアルミには気をつけよう


タイ国旗

 タイの最新情報について、様々な人から聞いた話のまとめ。

 ・タイの失業率はここ数年ずっと1%を切っており、最新のデータでも0.7%である。しかし、バンコクを歩いていると日中からブラブラしている男性をたくさん見かけるので、とても失業率が0.7%とは思えない。日本の内閣府が、タイの失業率がなぜ低いのか調査したものの、原因は不明であった。タイ政府の数字を当てにしない方がよい。肌感覚だと、失業率は3%ぐらいである。タイは失業率が低く採用が難しいと言われているが、実際にはそれほど採用では苦労しない。

 ・タイの実質GDP成長率は3.2%、物価上昇率は0.2%であり、経済の成長が鈍化している。ところが、賃金に関しては、物価上昇率が5%だった2008年に賃金を5%上げる企業が多かったため、その流れで現在でも賃金上昇率は5%にしなければならないという雰囲気がある。

 ・タイでは北部の農村部に支持基盤があるタクシン派と、都市部、軍隊、中間層を支持基盤とする反タクシン派が対立しており、しばしばクーデターが起きるので、危険な国というイメージが強い。しかし、実際には無血クーデターであり、政治は混乱していても経済は普通に回っている。前国王であるラーマ9世(プーミポン国王)は、タクシン派と反タクシン派の代表者を呼びつけて双方をなだめる役割を担っていたことから、国民からも高く支持されていた。

 ところが、現在のラーマ10世(ワチラロンコーン国王)は、国民の評判がすこぶるよくない。まず、国民の前に出て話をしている映像が存在しない(タイの映画では、冒頭に国王の動画を入れるのが普通であるが、ラーマ10世の場合は静止画しかない)。身体には刺青を入れており、ドイツにいる愛人のところへ足繁く通っている。「国民が選挙をすると汚職する人ばかり選ばれるから、選挙はやらない方がよい」とfacebookで発言し、慌てて政府が火消しに走ったこともあった。それでも、タイには不敬罪がある関係で、国民は国王のことを悪く言うことができない。

 ・タイでは、少子高齢化と大学進学率の上昇により、建設・工場における肉体労働者や飲食サービス業のスタッフが不足している。不足分は、周辺国のミャンマー、カンボジア、ラオスからの出稼ぎ労働者が担っている。ただ、タイ人はプライドが高く、周辺国の人々を見下す傾向があり、工場では周辺国の人と仲良くできない。不足しているのは肉体労働者やサービス労働者だけはない。大卒のエンジニアや日本語通訳も不足している。大卒のエンジニアは英語が話せる人、日本語通訳は日本語検定1級に合格している人のニーズが高い。日本語検定1級に合格している通訳は、月給6万バーツ(約18万円)でも採用ニーズがある。しかし、現実的には1級合格者が少ないため、3級合格者を採用して訓練する企業もある。

 ・日本は資金調達がしやすい国であるが、タイでは資金調達が非常に難しい。審査が厳しい上に担保主義が根づいている。また、日本の信用保証協会に相当する機関がない。「1,000万バーツ貸してほしい」と金融機関に言うと、「1,000万バーツを現金で用意せよ」と要求されるのがタイである。こうした事態を改善するために、2016年に「事業担保法」が成立したものの、金融機関の対応に変化は見られない。「法律は立派でも機能しない、運用できない」ことがタイではしばしば起こるが、事業担保法はその典型である。タイでは、業歴5年以上の企業が6割であり、業歴が浅い企業は生き残ることが難しい(日本の場合、『中小企業白書』によると、業歴5年以上の企業の生存率は82%である)。結局、信用力のある財閥にお金が集まり、信用のない中小企業にはお金が回ってこないというのが現状である。

 ・タイ企業のほとんどは同族企業である。日本には「3代目が企業を潰す」という言葉があるのに対し、タイでは3代目がどんどん企業を発展させている。これは、タイには相続税、固定資産税がないからである。厳密には、相続税については2016年2月から開始されているのだが機能していない(建前上、1億バーツ以上の相続に対して10%の相続税)。また、固定資産税に関しても2017年8月から施行されることになっていたが、翌年に先延ばしされた。

 ・日本企業は、タイのローカル企業といきなり新規取引をして、債権回収不能に陥るケースが多い。新規取引をする際には、相手企業の信用調査が必須である。タイでは、商務省が全ての企業の決算書を保有しており、多少テクニックは必要であるが、通訳を連れていけば決算書を閲覧することができる。また、概要レベルであれば、商務省のHPで見ることが可能である。

 これ以外に、タイの信用調査で気をつけるべき点は以下の2点である。まず、①華人系の企業の場合、子どもの間で企業を分けることがある。よって、単体の企業ではなく、グループ全体を調査した方がよい。次に、②裏に軍隊、警察、政治家、公務員がいないかを確認する。法人登記簿を取得すると、株主、役員の情報を取得することができる。株主や役員に軍隊、警察、政治家、公務員がいる場合は要注意である(なお、政治家だけは役員になることができない)。

 ・タイ子会社の不正に関して一番多い相談は、「購買担当者が仕入先からキックバックをもらっているかもしれない」というものである。最近は、購買担当者にATMカードを渡すという手口が増えている。タイでは、日本と異なり、通帳には振込人名が印字されないから悪用されやすい。しかし、実際にキックバックが行われていることを立証しようとすると、①キックバックを行っている場面の写真、②キックバックを行った時の音声、③渡した人と受け取った人の供述が必要であり、立証はまず不可能である。企業にできることと言えば、「最近、キックバックが行われているらしい」という噂を社内に流して、購買担当者を自主退職に追い込むことぐらいである。

 ・製造業では、価値のある製品、油、原材料(銅、アルミ、貴金属)、市中で転売が利く完成品(家電、タイヤ、アフターマーケット製品)が横領されやすい。99%は内部の組織犯である。まずマネジャーがヘッドとなり、アシスタントがコーディネーター役となって、各種書類の操作や関係者の調整を行う。運送業者・廃棄物処理業者を持ち出し役、警備員を見逃し役とし、あとはキャッシュ化する役の人を決めておけば、横領は発覚しにくい。また、原材料を注文したのに工場に入ってこないこともある。この場合は、購買担当者、検収担当者、運送業者が結託している。

 ・家電のように金や銀を使う場合は倉庫管理が必須である。それでも、金庫ごと盗まれることがある。そのため、倉庫をさらに柵で囲うなど、二重、三重の管理が必要である。地金でないプラチナも在庫から消えることがある。地金でないプラチナは換金しにくいから盗まれないと思ったら大間違いである。在庫管理の甘さを放置しておくと、さらなる不正につながる恐れがある。

 ・ワーカーをたくさん抱える企業では、賭博、麻薬、闇くじ、金貸し、社内売買に注意が必要である。企業に対する直接的な損害はないが、社内の不正行為を放置することになる。また、これらの行為にはお金がかかるため、横領や窃盗につながりやすい。これらの行為が工場で蔓延するのは、ワーカーという顧客が多いこと、顧客の顔が見えやすいこと、工場には警察が入ってこないこと、市中より高い価格で売れること、などが挙げられる。なお、金貸しとは、社員から集めたお金を原資とし、金利10%程度で社員に貸す互助会のようなものである。ある月はAさんが親になって社員に貸す、翌月はBさんが親になって社員に貸す・・・というのを繰り返す。問題なく返済が行われている間はよいが、途中でしくじる社員が出てくるとトラブルに発展する。

 ・タイの工場では「ヤーバー」と呼ばれる麻薬が蔓延していることがある。ヤーバーを砕いてアルミの上に乗せ、下から火であぶって煙をかぐ。ヤーバーの体内残留時間はそれほど長くなく、仕事が終わると抜けてしまうので、終業後のチェックでは見抜くことが難しい。ただし、ヤーバーを吸うのはたいていトイレの中であり、ワーカーは使用済みのアルミをトイレの窓の桟に残していることがある。もし、トイレの窓の桟からアルミが見つかったら、麻薬使用の可能性を疑った方がよい(ある企業では、大雨が降ってトイレの管が破裂し、中から大量のアルミが出てきたことがあった。ワーカーが使用済みのアルミをトイレに流していたのである)。

 ・タイ子会社のローカル化は重要な課題であるが、①往々にしてトップになったタイ人がグループ全体の利益よりもタイ子会社の利益を優先し、重要な情報を本社に報告しないというケースがある。この場合の打開策としては、親会社側から積極的にコミュニケーションを図ることに尽きる。また、②トップになったタイ人が好き勝手にしないよう、モニタリングの仕組みを作ることも重要である。ある企業では、トップが勝手に個室を作って個室に鍵をかけ、PCには社内規定に定められていないのに勝手にパスワードを設定していたことがあった。

 ・タイでは日系企業が増加しているとはいえ、現地に派遣される駐在員が皆優秀とは限らない。肌感覚では、駐在員のレベルはここ10年で落ちている。日本本社は、もっと赴任前研修に力を入れて、コミュニケーションの取り方や倫理観、正義感について教育をするべきである。タイ子会社で不正が起きるかどうかは、駐在員のレベルにかかっている。なお、不正防止のために「目安箱」を設けるケースが見られるが、これはあまりお勧めできない。まず、タイ人社員にとっては、書いたところを同僚に見られると仲間外れにされる恐れがあるので、二の足を踏んでしまう。また、タイ語を日本語に翻訳する段階で誰が書いたか解ってしまい、匿名性が担保されない。目安箱よりも、適切な内部通報システムを導入する方が効果的である。

 ・タイも賄賂が多い社会である。身近な例で言えば、新車を購入して仮ナンバーを普通のナンバーに変更する際に、警察に賄賂を渡す必要がある(実際には、ディーラーが賄賂の分をかぶっている)。ドイツ企業は賄賂に関する立ち回りが上手い。具体的に言えば、簿外金庫を作っている。経費の水増しやキックバックなどによって裏金を作り、これを賄賂の原資としている。


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