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ものづくり補助金(平成29年度補正予算)申請書の書き方(2)
ものづくり補助金(平成29年度補正予算)申請書の書き方(1)
【平成28年度補正ものづくり補助金】賃上げに伴う補助上限額の増額について

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京から実家のある岐阜市にUターンした中小企業診断士(コンサルタント・トレーナー)。ほとんど書評ブログ。たまにモノローグ。双極性障害Ⅱ型を公表しながら仕事をしているのは、「双極性障害(精神障害)の人=仕事ができない、そのくせ扱いが難しい」という世間の印象を覆したいため。

 中長期的な研究分野は、
 ①日本の精神、歴史、伝統、文化に根差した戦略論を構築すること。
 ②高齢社会における新しいマネジメント(特に人材マネジメント)のあり方を確立すること。
 ③20世紀の日本企業の経営に大きな影響を与えたピーター・ドラッカーの著書を、21世紀という新しい時代の文脈の中で再解釈すること。
 ④日本人の精神の養分となっている中国古典を読み解き、21世紀の日本人が生きるための指針を導くこと。
 ⑤激動の多元的な国際社会の中で、日本のあるべき政治的ポジショニングを模索すること。

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2018年01月02日

ものづくり補助金(平成29年度補正予算)申請書の書き方(2)


事業計画書・マーケティング

 ※補助金を初めて受ける企業に読んでいただきたい記事
 【シリーズ】補助金の現実
 【第1回】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない
 【第2回】補助金の会計処理は、通常の会計処理よりはるかに厳しい
 【第3回】補助金=益金であり、法人税の課税対象となる
 【第4回】《収益納付》補助金を使って利益が出たら、補助金を返納する必要がある
 【第5回】補助金の経済効果はどのくらいか?
 ※以前まとめた「ものづくり補助金申請書の書き方」
 「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(1)(2)(3)(4)(5)
 「平成27年度補正ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金)」申請書の書き方(細かい注意点)
 【平成28年度補正ものづくり補助金】賃上げに伴う補助上限額の増額について
 (前回の続き)

 その2:将来の展望
 (本事業の成果の事業化に向けて想定している内容及び期待される効果)
 ◆市場規模
 ○図2(再掲):成人の週1回以上運動・スポーツを行う者の割合の推移
成人の週1回以上運動・スポーツを行う者の割合の推移

 上記の図2に基づいて、成人の週1回以上運動・スポーツをする者、週3回以上運動・スポーツをする者の割合が線形的に増加すると仮定すると、平成33年、平成36年における、成人の週1回以上運動・スポーツをする者、週3回以上運動・スポーツをする者の割合は図7のようになる。

 ○図7:成人の週1回以上運動・スポーツを行う者の割合の推移(将来予測を含む)
成人の週1回以上運動・スポーツを行う者の割合の推移

 ○表1:市場規模と当社シェアおよび売上高の推移予測
市場規模

 この値から、平成30年~平成34年の5年間における、成人の週1回以上運動・スポーツをする者、週3回以上運動・スポーツをする者の割合を計算すると、表1の①②となる。これに、総務省統計局が公表している日本の将来人口の予測値(③:20歳以上の人口のデータが得られなかったため、便宜的に15歳以上の人口を成人とした)をかけると、成人の週1回以上運動・スポーツをする者、週3回以上運動・スポーツをする者の人数(千人)は④⑤となる。⑤から④を引くと、成人の週1~2回運動・スポーツをする者の人数(千人)が得られる(⑥)。

 センシング繊維活用アンダーウェアは、まず成人の週3回以上運動・スポーツをする者が先行して購入すると予想され、平成30年~平成34年の普及率を1%⇒2%⇒4%⇒6%⇒8%と仮定した(⑧)。一方、成人の週1~2回運動・スポーツをする者の普及率はそれよりも低く、0.2%⇒0.5%⇒1%⇒1.5%⇒2%と仮定した(⑦)(ウェアラブル端末が2013年の実績で約457万台〔普及率約0.4%〕、2020年には1,160万台〔普及率約9.7%〕に増加する見込みであるという、総務省『平成28年版 情報通信白書』のデータを参考にしている)。

 成人の週1~2回運動・スポーツをする者でアンダーウェアを購入する人は1人1着購入すると仮定し、成人の週1~2回運動・スポーツをする者(⑥)に普及率(⑦)をかけると、購入枚数が算出される(⑨)。成人の週3回以上運動・スポーツをする者でアンダーウェアを購入する人は1人3着購入すると仮定し、成人の週3回以上運動・スポーツをする者(⑤)に普及率(⑧)をかけ、それを3倍すると、購入枚数が算出される(⑩)。⑨+⑩=⑪が枚数ベースの市場規模となる。

 想定競合他社数は、平成30年が3社(後述)であるが、平成31年以降は新規参入が相次ぎ、10社⇒20社⇒25社⇒30社と増加すると予測する(⑫)。当社の市場シェアは、平成30年は販売開始前であるため(後述)0%だが、平成31年には3%を目指す。その後、4%⇒5%とシェアを拡大するものの、平成34年には競合他社の増加による競争激化で市場シェアが4%に下がると見込んでいる(⑬)。通常のアンダーウェアは2,000円~10,000円程度と幅があるが、当社のセンシング繊維を活用したアンダーウェアは付加価値を加味して小売希望価格を図1(※前回の記事を参照)の通り14,980円と想定する。顧客であるスポーツウェアメーカーへの納品価格は、約2割の2,980円とする。この単価に市場規模(⑪)と市場シェア(⑬)をかけると、当社の毎年の売上高は⑮となる(なお、この試算では最終消費者の買い替えサイクルは考慮していない)。
 【POINT】開発しようとしている製品・サービスの市場が確かに存在し、自社の事業として成立するだけの市場シェアを獲得する見込みがあることを示す。市場規模に関するデータは、市場調査会社などが公表しているものがあればそれを用いればよいが、今回のように適当なデータがない場合は、様々なデータを組み合わせ、いくつかの仮定を置いて推測することになる。市場シェアの目標を設定する際には、将来の競合他社の数も考慮しなければならない。時折、市場シェアを20%も30%も獲得したいという事業計画書を見かけるが、本当に妥当かよく検証するべきである。

 審査項目の「【事業化面】②事業化に向けて、市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か」とも関連。
 ◆競合他社および競合他社に対する優位性
 現時点で直接の競合となるのは、ウェアラブル端末である。だが、ウェアラブル端末は心拍数や体温といった基礎的なデータしか取得できない、水に濡らすことができないなどのデメリットがある。センシング繊維は、心拍数や体温に加えて、心電図や加速度など様々な身体情報を取得することができるため、より多面的に最終消費者の健康をモニタリングすることができる。また、ウェアラブル端末と異なり、センシング繊維は洗濯が可能である。

 現時点で、当社のセンシング繊維と類似の製品を開発している競合他社は次の3社である。3社とも当社より企業規模が大きいが、技術面、生産量の面では当社が競争優位に立っているため、前述の通り平成31年には市場シェア3%を達成したい。

 【A社】
 大手アパレルメーカーとのコラボ高機能繊維などで自社ブランド力をアップし、事業の収益源としている。導電性繊維を活用し、ウェアラブル装置を装着できるウェアを発表した。近年新製品開発に苦戦しており、この分野に力を居入れてくる可能性が高い。
 ⇒【A社に対する当社の優位性】
 当社は自社生産設備が整っており、生産量の制約が少ない。

 【B社】
 スポーツ衣料向け繊維が強く、ユニフォームなどが好調である。ただし、原材料費の高騰の影響を受けて、収益は厳しい状況が続いている。近年は海外市場向けの特化製品に注力している。また、ウェアラブルウェアへの参入を発表した。
 ⇒【B社に対する当社の優位性】
 B社に比べ、高機能繊維技術に関する特許が多い。

 【C社】
 炭素繊維が好調であるが成長が鈍化している。高機能繊維強化のためにベンチャー企業を買収した。これを機に高機能繊維にも注力してくる見込みである。その際、海外市場への製品投入を先行させると予想される。
 ⇒【C社に対する当社の優位性】
 導電性繊維、フィルムなどの高機能製品ラインナップが多い。
 【POINT】競合他社は誰か、その競合他社に対して自社はどのような点で優位に立つのかを明らかにする。往々にして、中小企業は自社の競合他社を十分に把握していないことが多いが、市場で戦うためには競合他社の戦略を分析・理解し、相手の出方を予測することが重要である。上記の例では示していないが、自社製品と競合他社製品の価格、機能、性能を一覧で比較できる表を作成するのが最も望ましい。

 審査項目の「【事業化面】③補助事業の成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有し、かつ、事業化に至るまでの遂行方法及びスケジュールが妥当か」とも関連。
 ◆ビジネスモデルと事業化に向けたスケジュール
 今回の新規事業のビジネスモデルは図8の通りである。主たる顧客(スポーツウェアメーカー)としては、X社、Y社、Z社を検討している。X社は業界内での影響力が強く、X社に当社のセンシング繊維が採用されれば、他のスポーツウェアメーカーにも採用されることが期待できる。Y社はP社、Q社、R社といった販売チャネルとのつながりが強く、採用されると一定量の売上高が見込める。Z社は当社と長年のつき合いがあるメーカーであり、業界内での地位はそれほど高くないものの、他のメーカーと明確に差別化した製品の開発を検討している。よって、当社のセンシング繊維を活用してオリジナリティの高いアンダーウェアを開発してくれる可能性が高い。

 スマートフォンのアプリケーション開発に関しては、L社を検討している。当社は今までL社と取引したことがないが、L社は既にウェアラブル端末用のアプリケーションを開発した実績がある(アプリ名:「aaa」、「bbb」、「ccc」など)。また、将来的に当社のセンシング繊維を採用するスポーツウェアメーカーが増えて、各社が独自のアプリを希望したとしても、それに応えられるだけの十分な開発・運用・保守体制を有している(社員数○○名)。L社の開発には、当社がスポーツウェアメーカーとともに積極的に関与し、アプリの品質をモニタリングする予定である。

 ○図8:今回の新規事業のビジネスモデル
ビジネスモデル

 補助事業終了後の事業化に向けたスケジュールは図9の通りである。平成30年内に、スポーツウェアメーカーに向けて集中的に営業活動を行う。また、10月に幕張で開催される衣料・繊維業界向けの展示会「XXX展示会」に出展する。平成30年の終盤から平成31年の中旬にかけてスマホアプリを開発する。それと並行して、スポーツウェアメーカーにはセンシング繊維活用アンダーウェアを開発してもらう。平成31年の中旬から最終消費者に向けて販売を開始する。

 ○図9:補助事業終了後の事業化スケジュール
補助事業終了後の事業化スケジュール
 【POINT】新製品・サービスを開発して終わりではなく、補助事業終了後に事業化につながる道筋がついていることを示すことが重要である。技術的課題その他の残課題がある場合には、それらをいつまでにどのようにして解決するのかを示す。事業化に向けては、特にマーケティング・営業の方法を具体的に記述することがポイントとなる。新製品・サービスを購入してくれる可能性が高い有力な顧客名がいくつか挙がっていると、計画の実現可能性が高いと映る。

 審査項目の「【事業化面】③補助事業の成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有し、かつ、事業化に至るまでの遂行方法及びスケジュールが妥当か」とも関連。
 ◆会社全体の事業計画
 既存事業、本補助事業を含む新規事業、ならびに両者を合算した会社全体の損益計算書は表2の通りである。

 ○表2:既存事業、新規事業、会社全体の損益計算書
損益計算書

 試算にあたっては以下の前提を置いている。

 <既存事業>
 ・売上高は国内市場の縮小に伴い、前年比マイナス3%で計算。
 ・売上原価については、売上高の減少に伴い変動費が減少するが、固定費は減少しないため、前年比マイナス2%で計算。
 ・販管費はコスト削減のために前年比マイナス5%で計算。
 ・減価償却費は一定とする。

 <新規事業>
 ・売上高は表1(※前回の記事を参照)の金額を使用。
 ・材料費(変動費)は売上高の70%と仮定。
 ・外注加工費(変動費)は売上高の5%と仮定。
 ・物流費(変動費)は売上高の3%と仮定。
 ・売上原価の労務費(固定費)については、平成31年に5名、平成33年に7名採用すると仮定。平均給与は450万円とする。また、各社員の給与は毎年2%ずつ上昇する。
 ・減価償却費(固定費)は、本補助事業で導入する生産設備(3,000万円)の分である。平成30年の後半に導入し、5年間で償却する。
 ・販管費の人件費については、平成31年に2名、平成33年に3名採用すると仮定。平均給与は450万円とする。また、各社員の給与は毎年2%ずつ上昇する。
 ・研究開発費については、平成30年に本補助事業の経費として、センサ・回路繊維開発費用(400万円)+電池部分繊維開発費用(200万円)を計上する。平成31年には一旦研究開発費が減少するが、以降も継続的に研究開発を進め、徐々に拡張していく。
 ・広告宣伝費については、平成30年に展示会の出展費用(400万円)を計上する。平成31年以降は100万円ずつ計上する。
 【POINT】申請書には会社全体の表のフォームしか用意されていないが、丁寧に試算するならば、既存事業の損益計算書、本補助事業を含む新規事業の損益計算書を別々に作成し、その上で両者を合算した会社全体の損益計算書を作成するのが望ましい。また、申請書には損益計算書の試算の根拠を書くスペースがないが、試算の根拠・前提は明記する必要がある。なお、通常の損益計算書とは異なり、経常利益を「営業利益-営業外費用」で計算する点に注意する。これは、中小企業の場合、営業赤字を営業外収益で賄って経常利益を捻出しているケースが見られるので、本来の儲ける力をより明確に可視化するための措置である。

 審査項目の「【技術面】①【革新的サービス】においては、中小サービス事業者の生産性向上ガイドラインで示された方法で行うサービスの創出であるか。また3~5年計画で「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成する取組みであるか/【ものづくり技術】においては、特定ものづくり技術分野の高度化に資する取組みであるか。また3~5年計画で「付加価値額」「経常利益」の増大を達成する取組みであるか」、「【事業化面】④補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して想定される売上・収益の規模、その実現性等)が高いか」とも関連。



2018年01月01日

ものづくり補助金(平成29年度補正予算)申請書の書き方(1)


事業計画書・マーケティング

 ※補助金を初めて受ける企業に読んでいただきたい記事
 【シリーズ】補助金の現実
 【第1回】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない
 【第2回】補助金の会計処理は、通常の会計処理よりはるかに厳しい
 【第3回】補助金=益金であり、法人税の課税対象となる
 【第4回】《収益納付》補助金を使って利益が出たら、補助金を返納する必要がある
 【第5回】補助金の経済効果はどのくらいか?
 ※以前まとめた「ものづくり補助金申請書の書き方」
 「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(1)(2)(3)(4)(5)
 「平成27年度補正ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金)」申請書の書き方(細かい注意点)
 【平成28年度補正ものづくり補助金】賃上げに伴う補助上限額の増額について
 昨年12月に、経済産業省・中小企業庁は2017年度補正予算で、中小企業・小規模事業者を対象とした「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業(ものづくり補助金)」で1,000億円の予算を計上することを発表した。補助上限は原則として1,000万円とし、3年ぶりに1万社支援(2016年度補正での採択数は6,157件)を復活させる方針だ。公募は2018年2月に始まる予定である。過去の傾向からすると、公募は1か月ほどで締め切られる可能性が高いため、申請を検討している中小企業は今から準備を始めておいた方がよい。

 これまでも上記のように申請書の書き方に関する記事を何本か書いてきたが、これは申請書は基本的には中小企業が独力で作成してほしいという一介の中小企業診断士の願いからである。中小企業を支援するコンサルタント会社の中には成功報酬として採択金額の数十パーセントを取ったり、認定支援機関の中にはA4で1枚の確認書を書くだけで数十万円を請求したりするケースがあるらしく、中小企業庁が問題視している。中小企業の経営者は、こういう悪徳支援業者に引っかからないようにしていただきたいものである。

 なお、平成26年度補正予算ものづくり補助金の申請書の書き方の記事は、全体で5回もある割に、実際の申請書のフォーマットに沿った記述になっていなかった。その反省を踏まえ、今回は申請書のフォームを意識した記述例を紹介したい。ただし、今日はまだ公募前であり、正式な申請書が公表されていないため、便宜的に平成27年度補正予算ものづくり補助金の申請書に従った(毎年、フォーマットはほとんど変わっていないから、今回も昨年度とほぼ同じだと思う)。また、枠内の「審査項目」も、昨年度の公募要領からの引用である。記述例の作成にあたっては、高橋透『技術マーケティング戦略』(中央経済社、2016年)に記載されている架空の事例を私が編集した。これからお見せするサンプルは1万字程度だが、採択事業者から話を聞くと、A4で15ページ前後の申請書を作成しているところが大半である。

技術マーケティング戦略技術マーケティング戦略
高橋 透

中央経済社 2016-09-22


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 【事業計画名】
 導電性繊維技術を利用した、ウェアラブル装置に代わるセンシング繊維の開発

 その1:革新的な試作品開発・生産プロセスの改善の具体的な取組内容
 ◆当社の概要
 当社は1950年に創業した繊維企業である。創業当時から蓄積してきた紡績・織布/編成・染色加工・縫製における独自の技術を活かし、コットンやウール、麻など天然繊維をベースにした高機能・高感度の繊維製品を製造・販売している。近年は導電性繊維(※)・フィルム、炭素繊維などを開発し、多様な要素技術を有しているのが強みである。また、産官学でのオープンイノベーションにも積極的に取り組んでおり、他からの技術支援を受けられる体制が整っている。

 (※)導電性繊維=通常、繊維を形成する高分子化合物は絶縁体であるが、特に導電性を持たせた繊維を導電性繊維と言う。近年、石油化学工場における静電気による火災の防止、医薬品工業,精密電子工業におけるほこりの付着や放電の防止のために、優れた制電性を有する被服材料が要求されている。現在開発されている導電性繊維には,①合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させたもの、②ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、③有機物繊維の表面を金属で被覆したもの、④有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆したもの、などがある(「世界大百科事典 第2版」より)。

 ○主な取扱製品
 ①一般・カジュアル衣料品=シワ形状コントロール素材で、ビジネスカジュアルからヴィンテージまで幅広いファッションに対応できるテキスタイル素材。
 ②ユニフォーム関連=防炎性の優れたアクリル系繊維プロテックスと、製造段階でできた落綿を含むコットンを混紡。防炎機能とエコロジーを兼ね備えたテキスタイル素材。
 ③一般衣料品・生活雑貨・インテリアホームテキスタイル=糸の内部に空隙を持つ、軽くて膨らみ感のあるソフトな風合い、優れた吸水性を持つ特殊紡績糸素材。
 ④抗菌・抗ウイルス機能繊維=繊維上のウイルスの数を減少させ、細菌、真菌などの増殖を抑制。高機能と高い安全性、洗濯耐久性を実現。
 【POINT】審査員は公募企業のことを知らないことが大半であるため、最初に簡単に会社の概要を説明するとよい。特に、強みに触れるとベター。
 ◆開発の背景
 当社を取り巻く事業環境をPEST分析した結果、図1のようになった。

 ○図1:PEST分析の結果
PEST分析の結果

 ○図2:成人の週1回以上運動・スポーツを行う者の割合の推移
成人の週1回以上運動・スポーツを行う者の割合の推移

 我が国は高齢化の進行に伴って社会保障費が毎年1兆円ずつ増加する見込みであり、社会保障費の抑制が喫緊の課題になっている。そのためには、国民が健康を維持することが重要である。幸い、健康に対する意識の高まりとともにスポーツ人口(特に女性)は中長期的に見ると増加傾向にあり(図2)、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催もスポーツ関連需要の拡大を後押ししている。文部科学省も「できるかぎり早期に、成人の週1回以上のスポーツ実施率が3人に2人(65%程度)、週3回以上のスポーツ実施率が3人に1人(30%程度)となることを目標」とする「スポーツ基本計画」を掲げている。

 ところで、近年の注目すべき技術としてセンシング技術が挙げられる。ウェアラブル端末に代表されるように、体内の各種データを随時取得してモニタリングしたいというニーズが消費者の間で高まっている。そこで、当社は強みである導電性繊維とセンシング技術を組み合わせて、健康意識の高いスポーツ愛好者をターゲットに、ウェアラブル端末よりも多様なデータを取得することが可能な、センシング繊維を開発することとした。
 【POINT】開発する製品・サービスをいきなり説明するのではなく、開発の背景にも触れるとよい。その際、客観的な分析結果があると説得力が増す。なお、この後の記述にも共通することだが、図表は別添資料とせず、本文に入れ込むべきである。審査員の中には、別添資料を読まない人がいるためである。
 ◆開発する製品
 今回開発するのは、図3のようなセンシング繊維である。ウェアラブル端末で取得可能な心拍数、体温に加えて、センシング繊維では心電波形、加速度も取得できる。当社が製造したセンシング繊維を活用して、顧客であるスポーツウェアメーカーはアンダーウェアを製作する。アンダーウェアを購入した最終消費者はまず、モニタリング・解析用のアプリケーションをスマートフォンにインストールし、会員登録する。次に、アンダーウェアに記載されているQRコードを読み取り、会員情報と紐づける。最終消費者が複数のアンダーウェアを購入・使用する場合でも、同一IDの下に身体情報を蓄積・管理することが可能である。アンダーウェアが取得した情報は、Bluetoothを通じてスマートフォンのアプリケーションに転送される(図4。なお、アプリケーションはスポーツウェアメーカーがスマートフォンアプリ開発会社に開発委託することを想定している)。

 ○図3:センシング繊維の概要
センシング繊維

 ○図4:センシング繊維活用アンダーウェアからスマートフォンへのデータ転送イメージ
ウェアラブル端末からスマートフォンへの転送

 (※適当な画像がなかったため、こちらから拝借した。本当は、アンダーウェアとスマートフォンの連携の図を記載する)
 【POINT】審査員は、必ずしも応募企業の技術に詳しいとは限らない(むしろ詳しくないと考えた方がよい)。審査員に製品・サービスのイメージが湧くよう、ビジュアルを多用して表現するのが望ましい。

 審査項目の「【技術面】①新製品・新技術・新サービス(既存技術の転用や隠れた価値の発掘(設計・デザイン・アイディアの活用等を含む))の革新的な開発となっているか」とも関連。
 ◆技術的な課題と解決策
 センシング繊維を開発するにあたっての技術的な課題と解決策は以下の通りである。課題の達成度合いは下記の指標にて判断する。
 【要素技術開発】
 ①導電性繊維・フィルムの導電性アップ⇒素材、組合せの見直しによる効率アップ(目標効率=○○%アップ)。
 ②発電繊維による発電量の確保⇒ナノファイバーを利用し、摩擦発電と圧電効果による発電のハイブリッド構造により実現(目標発電量=○○μA)。
 ③電気回路の設置⇒印刷方式の回路を生地にプリントする方式を採用(目標品質=○○)。

 【設計技術開発】
 ①生地の伸縮性、肌との密着度、データ精度と着心地のバランス⇒既存スポーツ向け繊維に発電用の炭素繊維を織り込むことで伸縮性を確保しつつ、圧着による皮膚接触圧を確保、デー測定の安定を図る(目標データ精度=医療用との相関r=0.7)。
 ②洗濯耐久性⇒特に課題となる、回路やセンサ部分を繊維、印刷加工にすること、フィルムコーティングすることで洗濯耐久性を確保(目標品質=○○)。

 【生産技術開発】
 ①発電、二次電池用炭素繊維の生産方法⇒溶融紡糸生産方式を用い、カーボンナノファイバー化することにより実現(目標生産量=○○)。
 ②生産キャパシティ、フレキシブルな生産⇒新規生産設備の導入(協力メーカーとの一部共同開発)(目標生産量=○○)。
 【POINT】技術的な課題は3~5個程度記述する。上記の例では文章でしか記述していないが(私が繊維業界に詳しくないため)、この部分も図面やポンチ絵などを用いてビジュアルで訴求したい。技術的な課題と解決策は審査の重要ポイントであるから、ここだけで最低でも2ページは記述がほしいところである。

 審査項目の「【技術面】②サービス・試作品等の開発における課題が明確になっているとともに、補助事業の目標に対する達成度の考え方を明確に設定しているか、③課題の解決方法が明確かつ妥当であり、優位性が見込まれるか」とも関連。
 ◆開発体制およびスケジュール
 開発体制および開発スケジュールは図5・6の通りである。回路の生地プリントについては、長年の協力企業である○○紡績株式会社からの支援を受ける。また、発電繊維に関する技術については、○○大学○○研究室と共同で研究を進める。

 ○図5:開発体制
開発体制

 ○図6:開発スケジュール
開発スケジュール

 <各タスクの説明>
 【要素技術開発】
 ①導電性繊維・フィルムの導電性アップ=森(フィルム技術)が中心となり、山口(炭素繊維技術)の支援を受けながら、○○シミュレーション方式、△△シミュレーション方式を用いて、素材u、v、wなど7種類の素材の中から最適な組み合わせを特定する。
 ②発電繊維による発電量の確保=・・・。
 ③電気回路の設置=・・・。

 【設計技術開発】
 ①生地の伸縮性、肌との密着度、データ精度と着心地のバランス=・・・。
 ②洗濯耐久性=・・・。

 【生産技術開発】
 ①発電、二次電池用炭素繊維の生産方法=・・・。
 ②生産キャパシティ、フレキシブルな生産=・・・。

 【試作品の生産・品質検証】=・・・。
 【POINT】開発体制を図で表し、責任者と担当者を明確にする。連携している協力会社や大学などがあればそれも記載する。自社に足りないリソースは外部から調達できる目途が立っていることを審査員にアピールすることができる。開発スケジュールはガントチャートで表した上で、それぞれのタスクの詳細(誰が、何を、どのように行うのか)を説明する。補助事業期間中に補助事業が完了するように留意する(補助事業期間は、年度によって1年を超える場合もあれば半年程度しかない場合もあるため、公募要領で確認すること)。

 審査項目の「【技術面】④補助事業実施のための体制及び技術的能力が備わっているか」、「【事業化面】①事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか」とも関連。
 (「ものづくり補助金(平成29年度補正予算)申請書の書き方(2)」へ続く)


2016年11月25日

【平成28年度補正ものづくり補助金】賃上げに伴う補助上限額の増額について


給料

 平成29年度補正予算「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業補助金」の申請書の書き方に関する記事を公開しました。ご参考までに。

 ものづくり補助金(平成29年度補正予算)申請書の書き方(1)(2)
 《参考記事》
 「新ものづくり補助金(平成25年度補正)」申請書の書き方(例)
 「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(1)(2)(3)(4)(5)

 平成28年度補正予算ものづくり補助金(革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金)の公募が11月14日から開始された(締切は2017年1月17日)。従来は賃上げへの取り組みを表明すると加点要素となったが、今回は賃上げへの取り組みにより、下表の通り補助上限額が引き上げられることとなった。ただし、全社員(雇用保険対象者)の賃金額、勤務地のほか、雇用保険被保険者証番号、氏名などの必要事項を全国事務局が採択決定後に用意するインターネット上のシステムに入力する必要があるなど、事務処理が大変になる。補助上限が最大で3倍になるのだから、それ相応の負担は覚悟せよということなのだろう。

平成28年度補正ものづくり補助金_類型・補助上限額

 補助上限の増額の要件は下記の通りだが、なかなか複雑なので、自分の理解を深めるためにも今回の記事で一度整理してみることにした。

平成28年度補正ものづくり補助金_雇用・賃金拡充への取組み

 【Ⅰ】まず、補助上限額が2倍となるのは、以下の3要件を全て満たす場合である。
事業終了時点から遡及した6ヵ月間と、前年同期間(6ヵ月間)を比較して、
 ①全社員の平均賃金を5%以上増加する。
 ②従業員の最低賃金グループの平均賃金を5%以上増加する。
 ③雇用者を維持・増加する。
 例えば、補助事業が2017年12月に完了する予定の場合は、2017年7~12月の6ヶ月間と、その1年前にあたる2016年7~12月の6ヶ月間を比較する。

 ①について、
 ・社員とは、本社、国内の支社・営業所・工場等のすべての雇用保険対象となる者を指す。契約形態は、正社員の他、雇用保険対象であるパート、アルバイト、契約社員(有期・無期を問わない)、非正規社員、出向者および嘱託員を含む。

 ・平均賃金は6ヶ月間の平均時間単価を採用する。平均時間単価は、賃金÷勤務時間で計算されるが、(a)賃金には通勤手当、家族手当、精皆勤手当、時間外勤務手当、休日出勤手当、深夜勤務手当、賞与を含まない(ほぼ基本給と等しいと考えればよい)。賃金に時間外勤務手当などを含まないため、(b)勤務時間には残業時間を含めず、所定労働時間で計算する。

 ・事業終了時点から遡及した6ヵ月間と、前年同期間ともに在籍した社員の平均賃金を比較する。例えば、前年同月期にA、B、C、D、Eの5名が所属していた企業において、補助事業終了までにA、Bが退職し、F、Gが入社した場合は、C、D、Eの3名の平均賃金を比較する。

 ・上記の留意点に基づいて全社員の平均賃金を比較し、5%以上増加することが要件となる。平均賃金を計算するExcelのフォーマットを作成してみた。白抜きセルに入力すると、朱色のセルが自動計算される(社員数30名までに対応。それ以上の場合は行を追加してください)。パート、アルバイトは基本的に時給が決まっているため、本来は計算しなくてもよいのだが、例えば朝シフトと昼シフトで時給が異なる、月の途中で昇給するといったケースが考えられるため、賃金÷勤務時間で計算するようにしてある。なお、夜シフトの時給が深夜手当込みになっている場合などは、割増賃金相当分を控除する必要がある。
 >>平成28年度ものづくり補助金 賃上げ計算用Excel

平成28年度補正ものづくり補助金_賃上げ

 ②について、
 ・「最低賃金グループ」とは、社員のうち、賃金が低い下位10%の社員グループ(全社員数の10%相当)を指す。最低賃金グループを構成する人数の基準となるのは、実績確認期間の前年同期間における賃金が低い10%に位置する範囲であり、全社員数を10で割って小数点切上げにより算出する(例:社員数が1~10人の場合⇒1人、従業員数が11~20人の場合⇒2人)。

最低賃金グループ

 ・上記の例は社員数30名の場合を表している(以下同)。左表では平均賃金が高い順に並んでいる。最低賃金グループに所属するのは、30名÷10=3名であり、左表の従業員番号28、29、30の社員が該当する。補助事業が2017年10月に完了した場合、実績確認期間は2017年5~10月、前年同月期は2016年5~10月となる。従業員番号28、29、30の社員の平均賃金が右表のように変化した場合、3人の平均賃金の合計額が前年同月期より5%以上アップしているため、要件を満たす(従業員番号29よりも26、27の平均賃金が低くても問題ない)。

最低賃金グループ③

 ・最低賃金グループに属する平均賃金と同額の社員が複数いる場合は、その社員も最低賃金グループに含める。上記の例では、下位3名は従業員番号28、29、30であるが、従業員番号27の社員と従業員番号28の社員の平均賃金が同じであるため、従業員番号27の社員も最低賃金グループに含め、4人とする。

最低賃金グループ②

 ・上記の例では、公募時点では従業員番号28、29、30の3名を最低賃金グループとしていたが、補助事業期間中に社員に変動があった場合を表している。従業員番号28、29の社員が退職したことにより、比較対象となる最低賃金グループは、従業員番号28、29、30の3名ではなく、退職者を除く下位10%、すなわち、従業員番号26、27、30の3名となる。

 ③について、
 ・雇用者とは、①における社員と同義である(社員とは、本社、国内の支社・営業所・工場等のすべての雇用保険対象となる者を指す。契約形態は、正社員の他、雇用保険対象であるパート、アルバイト、契約社員(有期・無期を問わない)、非正規社員、出向者および嘱託員を含む)。雇用者の減少には、解雇の他、社員の定年退職や自発的離職者、契約満了も含むため、雇用維持の要件を満たすにはその分の人員補充が必要となる。

 【Ⅱ】【Ⅰ】に加えて、さらに補助上限額が1.5倍となるのは、次の条件を満たす場合である。
 ④社員の最低賃金グループの平均賃金を10%以上増加する。
 (※)ただし、前年同期間において最低賃金グループに属する社員のうち、平均賃金が時間給(時間換算額)で1,000円以上の者がいる場合は、④の増額要件の適用を受けることはできない。
最低賃金グループ

 ・上図のように、賃上げ後に平均賃金が1,000円を超えるのは問題ない。

最低賃金グループ②

 ・上図のように、公募時に想定していた最低賃金グループに属する社員が補助事業期間中に退職したことにより、最低賃金グループの構成が変更となった場合、その中に平均賃金が1,000円を超える者(従業員番号26の社員)がいると、要件を満たさなくなる。



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