このカテゴリの記事
「平成27年度補正ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金)」申請書の書き方(細かい注意点)
「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(5)
「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(4)

お問い合わせ
お問い合わせ
アンケート
プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
所属組織など
◆個人事務所「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ


(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

Experian海外企業信用調査 海外企業信用調査(Experian)
(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

中小企業診断士の安い通信講座なら「資格スクエア」資格スクエア
(以下の資格の講師をしています。
 ―ITパスポート
 ―情報セキュリティマネジメント
 ―経営学検定(初級・中級)
 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
アクセスカウンター(PV)
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:


Top > 【シリーズ】「ものづくり補助金」申請書の書き方(例) アーカイブ
2016年02月07日

「平成27年度補正ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金)」申請書の書き方(細かい注意点)

このエントリーをはてなブックマークに追加
工場

 2016年2月5日(金)より、「平成27年度補正ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金)」の公募が開始された。公募要領に「革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセス改善を行う中小企業・小規模事業者の設備投資等を支援」すると書かれている通り、今回のものづくり補助金は従来と異なり、設備投資に対する補助が中心である。試作開発を行いたい場合は、下記の「小規模型」を選択する。なお、この「小規模型」は、対象が小規模事業者(商業・サービス業では従業員5人以下、製造業その他では従業員20人以下)に限定されるということではなく、補助金の額が小規模であるという意味である。

 事業類型 補助対象経費 補助率 補助上限額
 (下限額)
 一般型 機械装置費
 技術導入費
 運搬費
 専門家経費
 補助対象経費の 
 3分の2以内
 1,000万円
 (100万円)
 小規模型 機械装置費
 原材料費(※)
 技術導入費
 外注加工費(※)
 委託費(※)
 知的財産権等関連経費(※)
 運搬費
 専門家経費
 クラウド利用費(※)
 (※は設備投資のみの場合
 対象外)
 補助対象経費の 
 3分の2以内
 500万円
 (100万円)
 高度生産性 
 向上型
 機械装置費
 技術導入費
 運搬費
 専門家経費
 補助対象経費の 
 3分の2以内
 3,000万円
 (100万円)

 今回新たに追加された「高度生産性向上型」は、「IoTなどを用いた設備投資」によって生産性を向上させる取り組みを支援するものである。「IoTなどを用いた設備投資」とは、「IoTを用いた設備投資」、「最新モデルを用いた設備投資」のいずれかを指す。「最新モデルを用いた設備投資」とは、各メーカーの中で、下記のいずれかのモデルを用いた設備投資を行うことを言う。

 ①一定期間内(機械装置:10年以内、工具:4年以内、器具:6年以内、ソフトウェア:5年以内)に販売が開始されたもので、最も新しいモデル。
 ②販売開始年度が取得などをする年度およびその前年度であるモデル(当該年度に販売が開始されたものであれば、その販売時期は問わない)。

 単に最新モデルの工作機械を導入するだけでも「IoTなどを用いた設備投資」に該当するわけで、これのどこがIoTなのか?と疑問に思うのだが、どうも役人の考えていることはよく解らない。

 募集期間は2月5日(金)~4月13日(水)(※当日消印有効)。採択結果の発表は6月中とされている。補助事業実施期間は、交付決定後から2016年12月31日(土)まで(小規模型の場合は2016年11月30日(水)まで)である。以前の記事「【補助金の現実(1)】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない」でも書いたが、採択後すぐに補助事業を開始できるわけではない。交付申請という2回目の審査を受ける必要がある。過去の事例からして、交付申請を行ってから交付決定が下りるまでには約1か月かかる。

 だから、採択後すぐに交付申請を行っても、補助事業が開始できるのは早くて7月中である。一方、補助事業の終了は12月31日(土)(小規模型の場合は11月30日(水))に設定されているから、今回は超短期決戦を覚悟しなければならない。とりわけ、小規模型で試作開発をする場合、使える時間はわずか4か月ほどである。この期間で試作品を完成させるのは至難の業だろう。だから、例えば試作開発プロジェクトを技術課題ごとに3つのフェーズに分けて、今回の補助金ではフェーズ1の達成を目標とするなど、一工夫が必要かもしれない。
 【重要な注意点】《2016年2月24日追記》
 上記の通り、今回は補助事業実施期間が非常に短い。だが、期間内に機械装置を購入して、代金を支払えばそれで十分というわけではない点には注意が必要だ。機械装置を導入した後、ある程度試運転を行い、新製品を製造する必要がある。そして、生産工程がどの程度短縮されたのか、品質や精度がどの程度向上したのかなど、定量的な成果を報告しなければならない。

 機械装置は発注から納品まで数か月かかるのが通常である。しかし、採択企業からの発注が特定の機械メーカーに集中した場合、納期が延びる恐れがある。すると、上記の補助事業期間中に機械装置が納入されないという、重大な問題が発生することも考えられる。機械メーカーとは事前に十分協議をすることをお勧めする。
 《参考記事》
 「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(1)(2)(3)(4)(5)
 「新ものづくり補助金(平成25年度補正)」申請書の書き方(賃上げに関して)

 申請書の具体的な書き方については上記の過去記事を参考にしていただくとして、今回の記事では形式的な細かい注意点を整理しておきたいと思う。何分、非常に多くの応募が予想されるため、形式要件を満たさない申請書は足切りされることが十分に予想される。せっかく質の高い事業計画をまとめたのに、つまらないミスで不採択になるのは避けたいところだ。

 【様式1】
 ☑左上の宛先は、全国中小企業団体中央会と、書類を提出する都道府県の中小企業団体中央会の連名とする。
 ☑右上の受付番号は空白とする(受付番号は事務局が採番する)。
 ☑右上の日付は、平成28年4月13日以前とする。
 ☑応募者欄のうち、代表者役職・氏名の欄については、代表者役職を忘れずに記入する。
 ☑応募者欄の印は、角印ではなく代表者印とする。

 【様式2】 
 ☑平成24年度補正~平成26年度補正ものづくり補助金に応募したことがある場合は、その時の受付番号を記入する。応募したことがあるのに記入がない場合、虚偽記載となる。

 《(1)応募者の概要等》
 ☑法人の場合は、法人番号を忘れずに記入する。自社の法人番号が解らなければ、「国税庁法人番号公表サイト」で検索できる。
 ☑代表者の役職および氏名欄は、代表者役職を忘れずに記入する。
 ☑補助事業の実施場所が本社所在地と異なる場合は、「補助事業の実施が本社の所在地と異なる場合の実施場所」に住所を記入する。申請書の提出先は、補助事業の実施場所がある都道府県の中小企業団体中央会となる。なお、採択された後、交付申請の段階で補助事業の実施場所を変更することは、原則としてできない。仮にこれが許されてしまうと、採択率が都道府県によって若干異なっていることから、公募は採択率が高い都道府県で行い、交付申請時に採択率が低い都道府県に補助事業の実施場所を移す、といったことができてしまう。
 ☑主たる業種には、日本産業分類の中分類を記入する。必ず、「2桁の中分類コード+中分類名」という形式で記入する。
 ☑創業・設立日は、登記簿謄本の会社設立の年月日と一致させる。
 ☑株主等一覧表の右上の日付を、【様式1】の右上の日付(提出日)以前とする。
 ☑株主等一覧表の出資比率の合計が100%となるようにする。
 ☑役員一覧に記載する役員は、登記簿謄本と一致させる。監査役も忘れずに記入する。
 ☑経営状況表の数値は、損益計算書と一致させる。

 《(2)事業内容》
 ☑事業計画名、事業計画の概要は、採択後にHPで公表される可能性がある(過去の事例を見ると、事業計画名は公表されている)。審査員に伝わるよう解りやすく書く必要はあるものの、あまり具体的に書きすぎるとノウハウの流出につながる恐れもあるため注意する。
 ☑本事業で取り組む対象分野となる業種には、日本産業分類の中分類を記入する。必ず、「2桁の中分類コード+中分類名」という形式で記入する。(1)応募者の概要等で記入した業種=会社全体の業種と異なっていてもよい。
 ☑事業類型は、「一般型」、「小規模型(試作開発等)」、「小規模型(設備投資のみ)」、「高度生産性向上型(IoT)」、「高度生産性向上型(最新モデル)」の5つのうち1つだけを選択する。
 ☑事業計画は、補助事業単独ではなく、会社全体の数字で作成する。以下にサンプルを掲載した。余白に金額の単位を補記しておく。この表においては、経営革新計画に倣い、経常利益=営業利益-営業外費用で計算する(営業外収益は加算しない)。したがって、損益計算書の金額とは必ずしも一致しない。計算式が色々と複雑なため、フォーマット(Dropbox)を用意した。黄色セルを入力すれば、残りのセルは自動計算されるようにしてある。
ものづくり補助金事業計画(例)

ものづくり補助金事業計画(フォーマット)

 ☑革新的サービスの場合、付加価値額が年平均3%以上、経常利益が年平均1%以上増加するような計画とする。例えば5年計画の場合、5年後の付加価値額が直近期末に比べて3%×5年=15%以上、経常利益が直近期末に比べて1%×5年=5%以上増加していなければならない。
 ☑高度生産性向上型の場合、投資利益率(上表の4年後の列の一番下)が5%以上となるような計画とする(投資利益率=2年後~4年後の「営業利益+減価償却費」の増加額の平均÷1年後の設備投資額。設備投資額=本補助金によって導入予定の機械装置の価格)。
 ☑単に上表を完成させるだけでなく、数値の根拠を明記する(添付資料としても可)。

 《(3)これまでに補助金または委託費の交付を受けた実績説明(申請中の案件を含む)》
 ☑申請時点から過去5年間の補助金・委託費の実績を記入する。補助金・委託費の実績があるのに故意に記入しなかった場合は虚偽記載となる。

 《(4)経費明細表》
 ☑冒頭の表の通り、事業類型ごとに使用可能な費目が決まっているため、それ以外の費目は使用しない。
 ☑一般型、高度生産性向上型は、単価50万円(税抜き)以上の機械装置費が必須である。
 ☑高度生産性向上型(最新モデル)の場合、機械装置費に最新モデル以外の機械装置を含めてはならない(例えば、本体は最新モデルであるが、オプションが旧モデルの場合、オプションは補助対象とはならないので要注意)。
 ☑高度生産性向上型(最新モデル)の場合、ここで言う「モデル」とは、経済産業省関係産業競争力強化法施行規則で言うところの「型式」のことである。型式があるということは規格品であり、したがって、型式のないカスタマイズされた機械装置は補助対象外である。
 ☑一般型、高度生産性向上型の場合、機械装置費以外の補助金は500万円が上限である。
 ☑外注加工費と委託費の補助対象経費の合計は、補助対象経費総額の2分の1以下とする。
 ☑委託費に含める間接経費または一般管理費は、直接経費の10%を限度とする。
 ☑知的財産権等関連経費の補助対象経費は、補助対象経費総額の3分の1以下とする。
 ☑技術導入費、外注加工費、委託費、専門家経費は、同一の法人・個人に支出できない。
 ☑専門家経費(謝金、旅費)には上限が定められているため、公募要領を参照のこと。
 ☑(A)事業に要する経費(税込み)には消費税込みの金額を、(B)補助対象経費(税抜き)には消費税抜きの金額を記入する。海外から輸入するなど消費税がかからない場合は、(A)=(B)としてよい。その際、積算基礎欄にもその旨を記載する。
 ☑汎用性があり、目的外使用になりうるもの(例:事務用パソコン、プリンタ、文書作成ソフトウェア、タブレット端末、スマートフォン、デジタル複合機など)は補助対象外である。たとえ、タブレットやサーバなどが今回の補助事業専用に使用するものであっても不可である。その他、補助対象外となる経費については、公募要領を参照のこと。
 ☑各費目の(C)補助金交付申請額の欄には、(B)補助対象経費(税抜き)の3分の2以内の金額を記入する。1円未満は必ず切り捨てる。
 ☑計算上、(C)補助金交付申請額が0円となる場合は、当該費目の(A)事業に要する経費(税込み)、(B)補助対象経費(税抜き)を計上することはできない((A)~(C)全て空白とする)。
 ☑(A)、(B)、(C)の合計が合っているか確認する。また、(C)の金額が事業類型ごとに定められた上限額と下限額の範囲内に収まっているかも確認する。
 ☑積算基礎欄には、購入する物件の単価(税込み)、数量を記入する。可能であれば、購入予定のメーカー名、技術指導者・専門家名も記入する。

 《(5)資金調達内訳》
 ☑以前の記事「【補助金の現実(1)】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない」で書いたように、ものづくり補助金は事後精算のため、補助金を受領するまでの間、つなぎ融資が必要である。自己資金で賄う場合は問題ないが、金融機関から借り入れる場合は必ず金融機関と交渉しておく。「取引銀行にこれからお願いする予定」程度の柔らかい話ではNGである。なお、無事に採択されて将来的に補助金をほぼ確実に受領できると解っている場合でも、金融機関が融資に応じないケースが稀にあると聞く。金融機関は、補助事業だけでなく会社全体の財務状況、返済状況、融資枠などを見て総合的に判断するためであるらしい。

 《(6)その他》
 (※ここは特に注意点はなし)

 【様式1、様式2】
 ☑ページ最下部中央に必ず通しページを記入する。

 【認定支援機関確認書】
 ☑左上の宛先は、全国中小企業団体中央会と、書類を提出する都道府県の中小企業団体中央会の連名とする。
 ☑右上の日付は、平成28年4月13日以前とする。
 ☑認定支援機関の印は、角印ではなく代表者印とする。
 ☑全国の認定支援機関は、「認定経営革新等支援機関 活動状況検索システム」(中小企業基盤整備機構)で検索することができる。普段自社と取引のある金融機関、税理士はたいてい認定支援機関となっているため、まずは金融機関、税理士に相談するとよい。

 【機械装置費に関する追加書類】
 ☑機械装置を購入する場合、有効期限が2016年6月以降の見積書、カタログ、パンフレットを提出する。単価50万円(税抜き)以上の機械装置を購入する場合は、入手価格の妥当性を証明できるよう、自社と資本関係にない2社以上の相見積を取得する。子会社、関連会社からの調達は認められない。また、相見積とは、Aという製品について代理店Xと代理店Yから見積書を取得することであり、製品Aと、Aと機能的に類似する製品Bの見積書を取得することではない。相見積が取れない場合は、業者選定理由書(書式自由)を提出する。
 ☑「業者選定理由書」は書式自由となっているが、過去のものづくり補助金で各都道府県事務局が用意した雛形がある。例えば、大阪府中小企業団体中央会のページからダウンロードできるWordの<参考様式7>を利用するとよい(左上は提出先の都道府県の中小企業団体中央会宛てとする)。なお、選定理由としては、技術的な理由、その企業からでなければ調達できない理由を書く。「見積を取る時間がない」、「古くから取引がある」などはNGである(神奈川県中小企業団体中央会「平成26年度補正ものづくり補助金 業者選定理由書の注意点」を参照)。

 (※)2016年6月までの有効期限というのは、採択発表時期を意識してのことだろう。だが、その後の交付申請では、交付申請時点で有効な見積書が必要となる。さらに言えば、最後の実績報告時に、発注時点で有効な見積書を提出しなければならない。したがって、何度も見積書を取り直す手間を省くために、機械メーカーには見積有効期限を長めに設定してもらうとよい(期限を「次回見積まで」、「成り行き」などとするのが最も簡単である)。

 ☑事業類型「高度生産性向上型(最新モデル)」を選択した場合は、最新モデルであることを証明する書類を提出する。この点だけは私もよく理解できていないのだが、このルールは「生産性向上設備投資税制」に倣ったものと思われる。だとすると、例えば工作機械については、一般社団法人 日本工作機械工業会に、ソフトウェアについては一般社団法人 情報サービス産業協会依頼すれば、証明書を発行してくれるのかもしれない。

2015年02月06日

「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(5)

このエントリーをはてなブックマークに追加
 平成27年度補正予算「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」の申請書の書き方に関する記事を公開しました。ご参考までに。

 「平成27年度補正ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金)」申請書の書き方(細かい注意点)
 《本シリーズを書くにあたって参考にした書籍》
実際の設計 改訂新版-機械設計の考え方と方法- (実際の設計選書)実際の設計 改訂新版-機械設計の考え方と方法- (実際の設計選書)
畑村 洋太郎 実際の設計研究会

日刊工業新聞社 2014-12-26

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 《これまでの記事》
 「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(1)(2)(3)(4)

 《申請書作成のステップ》
 1.環境分析を通じたターゲット顧客・製品コンセプトの設定
 2.競合他社との差別化要因の明確化
 3.新製品の潜在的な市場規模、目標とする市場シェア・売上高・価格
 4.顧客価値から要求機能への展開
 5.要求機能から機構・構造への展開
 6.機構・構造を実現するための技術的課題とその解決方法
 7.製品開発プロジェクトのタスク、スケジュール、体制
 8.製品開発プロジェクト後、事業化に向けた想定タスクとスケジュール


 6.機構・構造を実現するための技術的課題とその解決方法
 機構・構造が明らかになったら、その機構・構造に潜む技術的課題を特定し、解決策(案)を整理する。技術的課題は、個別の機構に含まれているかもしれないし、複数の機構を集約する組み立て方に含まれているかもしれない。いずれにしても、前述の思考展開図の中で、どこに技術的課題があるのかを番号などで明示し、図に続いて技術的課題と解決策の文章を記述するとよい(なお、下図には技術的課題の番号は含まれていない点をご了承いただきたい)。

 <図6(再掲):思考展開図(要求機能から機構・構造へ)>
4_思考展開図(要求機能から機構・構造へ)

 簡単な例だが、LANの障害対策における技術的課題と解決策をまとめたものを以下に示す(ちなみに、全て特許が取得されている技術である)。

 【課題①:障害救済】
 ループ方式は伝送路/ノードの一個所でも障害を起こすと、全体システムがダウンする。このため、障害が生じた時に救済できる構成にする。
⇒【解決策】
 ①-1.障害が生じたノードの直前で信号をループバックさせる。一般的には2重ループを構成し、予備ループを介してループバックをさせる。
 ①-2.障害ノードをバイパスする。
 ①-3.あらかじめ、迂回路を設けておき、障害が生じた時信号を迂回させる。
 ①-4.通常時はループ構成とし、異状時はバス構成とする。

 【課題②:複数障害対策】
 同時複数障害の時にも対応できるような構成にする。
⇒【解決策】
 ②優先順位をつけた複数の監視ノード間を再接続し、両者の連携により複数障害個所のループバックを行う。

 【課題③:障害位置の標定】
 障害救済の前提として、障害個所を特定する方法を確立する。
⇒【解決策】
 ③-1.一定時間異常キャリアを検出しない場合、自局アドレスを送出し、制御局で判定する。
 ③-2.擬似信号を用いて障害ノードを検出する。
 ③-3.障害を検出したら予備ループで各局に一斉に指令信号を送出し、各局が応答することにより複数障害ノードを標定する。

 【課題④:制御局の分散】
 障害時の制御等、ネットワーク全体の制御を行う制御局が一つの場合、この制御局の障害により、システム全体がダウンとなる場合がある。これに対処するための構成を行う。
⇒【解決策】
 ④-1.制御局の機能を代行する局を設け、同期制御を行う。
 ④-2.各局にタイマを設け、タイムアウト時に通信制御を行うことで、集中制御局を不要とする。

 以上のような形で、おおよそ3~5個程度の技術的課題を抽出し、現時点で考えられる解決策のオプションを列記する。技術的課題があまりにも多すぎると、審査員に「試作開発のハードルが高すぎるのではないか?」と思われて、点数が低くなる可能性があるから要注意である。絞り込まれた技術的課題に対して、解決策の候補をしっかりと検討していること、さらにその解決策は自社の既存の技術や組織能力を活用すれば実現可能であると示すことが重要である。

 7.製品開発プロジェクトのタスク、スケジュール、体制
 6で定めた技術的課題を解決し、試作品を完成させるためのプロジェクト全体のスケジュールを立案する。これは下図のような図(ガントチャート)を作成し、縦軸に記載したタスクについて、それぞれ具体的にどんな作業を行うのかを文章で記述すれば十分であろう。

 <図9:製品開発スケジュールの例(分子レーザー法ウラン濃縮技術開発)>
製品開発スケジュール例(分子レーザー法ウラン濃縮技術開発)

 (※ATOMICA「分子法レーザーウラン濃縮」より)

 スケジュールについて注意しておきたいのは以下の2点である。補助金の場合、「補助対象期間」と言って、「その期間に発生した経費について補助金の対象とする」という期間が設定されている。ものづくり補助金の場合はだいたい1年弱である。補助対象期間を1日でも過ぎた支払いに関しては、絶対に補助対象とならない。

 新製品開発プロジェクトは不確定要素が多いとの理由で、プロジェクトの完了を補助対象期間の終了日ギリギリに設定しているケースがよくあるが、これは危険である。人間というのは不思議なもので、余裕を持って完了日を設定したつもりでも、いざやってみると完了日に終わらず、プロジェクトが長引いてしまうものだ(エリヤフ・ゴールドラット『クリティカル・チェーン』を参照)。だから、補助対象期間の終了日ギリギリにプロジェクトが完了する計画ではなく、2~3か月程度前倒しで完了する計画にするとよい。実際にプロジェクトをやると、そのぐらいでちょうど帳尻が合う。

クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?
エリヤフ ゴールドラット 三本木 亮

ダイヤモンド社 2003-10-31

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 もう1つの注意点は、補助金で実施する製品開発プロジェクトは、思ったほど早く始められないということだ。まず、応募が締め切られてから採択企業が発表されるまでに、だいたい1か月ぐらいかかる。しかも、採択されたからと言って、すぐに原材料や機械装置などの発注をかけられるわけではない。採択後に「交付申請」という手続きが必要であり、これが最長で2か月ほどかかる(交付申請については、以前の記事「【補助金の現実(1)】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない」を参照)。

 よって、仮に3月末が公募の締切だとすると、結果発表は4月末、そして、交付決定が下りるのは下手すると6月末ということになる。交付決定が遅くなれば、その分補助対象期間が短くなる。1つ目の注意点で、プロジェクトの完了予定日が2~3か月ほど繰り上がるから、それと合わせて考えると、製品開発スケジュールは初めから相当タイトに組まなければならないことになる。

 プロジェクト体制図のイメージを下図に示した。ただ、この手のプロジェクト体制図は、多くのメンバーが関与するシステム開発の現場では一般的であるものの、人数が限られている中小製造業では、図にせよと言っても図にならないことがほとんどだろう。

 ものづくり補助金の申請書が要求する体制図で重要なのは、社内の人員の情報というよりも、協力してくれる外注加工先や委託先、技術指導者や専門家に関する情報であると思う。外部ノウハウの活用予定について明記すれば、プロジェクトの成功確率の高さを審査員に印象づけることができる(ただし、あまりに外部関係者が多い場合は、技術的課題の解決を丸投げしていると思われて、補助金の応募要件を満たさなくなってしまうため、やりすぎには要注意である)。

 <図10:プロジェクト体制図>
プロジェクト体制図

 (※ZDNet Japan「MindManagerで「見える化」実践! スマートなプロジェクト管理(3)--仲間と仕事の地図を共有しよう!」〔2007年11月12日〕より)

 8.製品開発プロジェクト後、事業化に向けた想定タスクとスケジュール
 申請書には、試作品が完成して補助事業が終了した後、どのように事業化まで持っていくのか、そのスケジュールも記述が求められる。このスケジュールは、3で設定した目標シェア、顧客数、顧客単価、売上高と整合性が取れていなければならない。

 とはいえ、試作品開発プロジェクトでさえ何が起こるのか解らないのだから、その後の中長期的なスケジュールを書くのはなかなか難しい。最低限書くべきタスクとしては、追加で実施する市場調査、追加で実施する試作開発、量産試作、生産ライン立ち上げ~量産実施、営業・販売活動などであろう。これらのタスクをいつ実施するのか、7と同様にスケジュール表を作成する。下図は、プロモーション活動に関するスケジュールの例である。

 <図11:事業化スケジュール(プロモーション活動)>
事業化スケジュール

 (※「東京広告専科〔アイムアンドカンパニー株式会社〕」HPより)

 (終わり)

《2015年4月17日追記》
 申請書のフォーマットには、補助事業終了後の5か年計画を記入する表がある。「「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(4)」の「3.新製品の潜在的な市場規模、目標とする市場シェア・売上高・価格」に従って将来の目標売上高を設定し、コストを見積もって利益を算出するわけだが、経常利益が「営業利益-営業外利益」で定義されている。これはフォーマットのミスではなく、ものづくり補助金における経常利益は、「本業での利益」に近い概念でとらえられていることを意味する。

 中小企業の中には、営業損益を営業外収入で補って経常利益を出しているケースがある。しかしながら、営業外収入は本業以外の収入であるから、それによって経常利益が出ていても本業が強いとは言えず、そのような事業計画を審査の段階で高く評価することはできない。よって、ものづくり補助金における経常利益からは、営業外収入が除外されている。

 一方、営業外費用の大部分は支払利息である。事業を行う上では借入金が必要であり、借入金があれば支払利息は不可欠である。借入金にかかる支払利息は、実質的に本業での費用と考えることができる。そのため、ものづくり補助金における経常利益の算出にあたっては、営業外費用を差し引く。以上のような操作によって、より実態に近い「本業での利益」を算出しようというのが、このフォーマットの意図であると考える。


ものづくり補助金_5か年事業計画


2015年02月05日

「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(4)

このエントリーをはてなブックマークに追加
 平成27年度補正予算「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」の申請書の書き方に関する記事を公開しました。ご参考までに。

 「平成27年度補正ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金)」申請書の書き方(細かい注意点)
 《本シリーズを書くにあたって参考にした書籍》
実際の設計 改訂新版-機械設計の考え方と方法- (実際の設計選書)実際の設計 改訂新版-機械設計の考え方と方法- (実際の設計選書)
畑村 洋太郎 実際の設計研究会

日刊工業新聞社 2014-12-26

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 《これまでの記事》
 「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(1)(2)(3)

 《申請書作成のステップ》
 1.環境分析を通じたターゲット顧客・製品コンセプトの設定
 2.競合他社との差別化要因の明確化
 3.新製品の潜在的な市場規模、目標とする市場シェア・売上高・価格
 4.顧客価値から要求機能への展開
 5.要求機能から機構・構造への展開
 6.機構・構造を実現するための技術的課題とその解決方法
 7.製品開発プロジェクトのタスク、スケジュール、体制
 8.製品開発プロジェクト後、事業化に向けた想定タスクとスケジュール


 3.新製品の潜在的な市場規模、目標とする市場シェア・売上高・価格
 1と2で戦略コンセプトを定めても、そもそも十分な市場規模がなければ事業化できない。そこで、潜在的な市場規模を推計する。また、2で見た競合他社の数などから、自社がどの程度の市場シェアを取れそうか、あるいは取るべきかを決める。おおよその市場規模と目標シェアが定まれば、それを実現するために必要な顧客数や顧客単価も見えてくる。

 市場規模のデータは、インターネットで「(製品ジャンル)+市場規模」で検索すれば出てくる。ただし、インターネットで公開されている市場規模のデータは、あまり鵜呑みにしない方がよい。例えば、東京・丸の内でラーメン店を出店しようとしている人が、日本全国のラーメンの市場規模を調べたところで無意味である。この場合は、丸の内近辺に勤めるビジネスパーソンの数や夜の人口などのデータから、潜在的な市場規模を推計しなければならない。

 市場規模を試算する際のコツは、できるだけ保守的に見積もること、つまり、顧客、製品、商圏をできるだけ絞り込んだ上で計算することである。そうすると、だいたい、思ったより小さな市場に、思ったより多くの競合他社がいることが解るものである。

 市場規模を推計するにあたっては、一時期流行った「地頭力(≒フェルミ推定)」を駆使する必要がある。ただし、これはそれほど難しい話ではない。解りやすい例として、日本における軽自動車の一般世帯向け新車販売台数を推計してみよう。

 ・日本の世帯数を4,800万世帯とする(人口1.2億÷世帯平均人数(2.5人と仮定))。
 ・1世帯あたりの自動車普及数を1.2台(2台以上:30%、1台:60%、0台:10%と仮定)と仮定すると、日本における乗用車数(一般世帯)は5,760万台。
 ・自動車の買換え周期を平均10年とすると、1年間の販売台数は約576万台。
 ・販売台数に占める新車:中古車の比率を2:1とすると、1年間の新車販売台数は約384万台。
 ・一般世帯向けの新車販売のうち軽自動車の占める割合を、半分弱の40%と仮定すると、約154万台が新車販売台数となる。

 ちなみに、(一社)日本自動車販売協会連合会によると、2014年の軽自動車新車販売台数は184万台であるから、フェルミ推定の数値は大きく外れていない。全体の数字は解らなくても、仮定を細かく設定すれば、比較的精度の高い市場規模を導き出すことが可能である。

 4.顧客価値から要求機能への展開
 1と2で製品コンセプトが大体固まっているので、そこから製品の機能に展開してもよいのだが、今回はもう少し丁寧な手順を踏みたいと思う。ここでは「ユースケース」という技法を使う。本来はソフトウェア開発で使われる方法だが、一般的な製品開発でも十分に活用することができる。ユースケースとは"Use Case"であり、製品の利用シーンを想定することである。

 <図5:ユースケースと顧客のニーズ・要求機能>
3_ユースケースと顧客のニーズ・要求機能

 ユースケースの記述は、まずは製品の使用シーンを書き出すところから始める。上図は、油圧ショベルが「余分な土を排出する」シーンを中心に書き出したユースケースである。ここで重要なのは、「土をすくう」という直接的な使用シーンだけでなく、その前後のシーンも含めて網羅的に書き出すことである。前のシーンとしては、「ショベルを建設現場まで運搬する」、後のシーンとしては「作業が行われない夜間・休日の点検、メンテナンス」などが考えられる。そして、それぞれのシーンを細分化して、顧客が行う個別具体的な作業レベルまで落とし込む(上図の左側)。

 ユースケースを書き出したら、それぞれの作業について、ターゲット顧客の潜在的なニーズを洗い出す。上図では、競合他社との差別化につながる顧客ニーズの部分だけが記載されており、顧客が当たり前と思っているニーズ(いわゆる「当たり前品質」)はブランクになっていると思われるが、私は表の全てをちゃんと埋めた方がよいと思う。表が埋められない=顧客ニーズの分析が不十分ということであり、その場合には1の環境分析に立ち戻る必要がある。

 顧客ニーズを網羅的に整理することができたら、そのニーズに対応する製品機能を定義する。上図では一般的な機能の表現にとどまっている箇所が多いが、ここも2で整理した差別化要因を踏まえて、具体的に定義するのが望ましい。例えば、「前方向への走行(速度15%up)」などのように、数値を使うのは1つの手である。具体的に定義できる機能が多いほど、差別化要因がたくさん積み重なっているということであり、競争力のある製品になる。

 5.要求機能から機構・構造への展開
 ここまで来れば、後は通常の設計の流れになるから、設計者もお手のものだろう。4で整理したそれぞれの機能を、具体的にどのような機構・構造で実現するのか、下図のように体系化する。ここでも、各機構の記述は、下図の例よりももう少し踏み込んだ表現がよい。要求機能から機構・構造へと展開する図のことを、冒頭の書籍の中では「思考展開図」と呼んでいる。

 なお、下図の右半分で、右に行くに従って機構が集約されている部分は、左側の機構の組み立て方を表している。最終的には1つの製品に組み立てられるわけだから、一番右は「グローバル(新興国)で要求される環境に対応した油圧ショベル」(つまり完成品)となっている。

 <図6:思考展開図(要求機能から機構・構造へ)>
4_思考展開図(要求機能から機構・構造へ)

 この思考展開図と合わせて作成したいのが「ポンチ絵」である。思考展開図に下図のように番号を振り、ポンチ絵のどの箇所がどの番号に対応しているのかを示す。これで、製品の全体像が視覚的にも把握できるようになる。下図はガラスのブラシ研磨機の例である。

 <図7:ポンチ絵作成のための思考展開図>
5_ポンチ絵作成のための思考展開図

 <図8:思考展開図に対応したポンチ絵>
6_機構に対応したポンチ絵

 (続く)


  • ライブドアブログ
©2012-2017 free to write WHATEVER I like