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『正論』2017年10月号『日本は北朝鮮と戦わないのか/傲る中国』―朝鮮半島の北が資本主義国家、南が社会主義国家になる可能性?
『正論』2017年9月号『戦後72年/誰も金正恩を止めない・・・』―日本が同じように統治したのに戦後の反応が異なる韓国と台湾、他
『小池劇場と不甲斐なき政治家たち/北朝鮮/憲法改正へ 苦渋の決断(『正論』2017年8月号)』―小池都知事は小泉純一郎と民進党の嫡子、他

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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2017年10月03日

『正論』2017年10月号『日本は北朝鮮と戦わないのか/傲る中国』―朝鮮半島の北が資本主義国家、南が社会主義国家になる可能性?


月刊正論 2017年 10月号 [雑誌]月刊正論 2017年 10月号 [雑誌]
正論編集部

日本工業新聞社 2017-09-01

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 《参考記事》
 ○日本にとっては、朝鮮半島は南北分裂の現状維持がベスト。
 『「慰安婦」戦、いまだ止まず/台湾は独立へ向かうのか/家族の「逆襲」(『正論』2016年3月号)』―朝鮮半島の4つのシナリオ、他
 『トランプ大統領/進まぬ憲法改正/「生前退位」でいいのか/「死刑廃止」宣言(『正論』2017年1月号)』―朴槿恵問題は一歩間違えば朝鮮半島の”革命”を引き起こしていた、他

 ○朝鮮半島が社会主義国として統一される可能性がある。
 『巨頭たちの謀事/朴槿恵政権崩壊(『正論』2017年2月号)』―ますます可能性が高まった「朝鮮半島統一」に対してどう対処すべきか?
 『愚神礼讃ワイドショー/DEAD or ALIVE/中曽根康弘 憲法改正へ白寿の確信(『正論』2017年7月号)』―日本は冷戦の遺産と対峙できるか?

 ○アメリカが中国と手を組んで日本のはしごを外したら、ロシアと手を結ぶべき?
 『非立憲政治を終わらせるために―2016選挙の争点(『世界』2016年7月号)』―日本がロシアと同盟を結ぶという可能性、他
 『小池劇場と不甲斐なき政治家たち/北朝鮮/憲法改正へ 苦渋の決断(『正論』2017年8月号)』―小池都知事は小泉純一郎と民進党の嫡子、他

 一介の経営コンサルタントが書くアジア情勢に関する記事など、上記のように矛盾だらけで取るに足りない内容が多いのだが、その矛盾をさらに複雑にしかねない記事をこれから書くことをどうかご容赦いただきたい。ブログ別館の記事「牧野愛博『金正恩の核が北朝鮮を滅ぼす日』―アメリカも北朝鮮も本気で戦争をする気はないと思う」では、アメリカが北朝鮮の報復を抑えるために制圧すべき拠点、ミサイル基地などが膨大な数に上るため、アメリカは本気で北朝鮮を攻撃することはできないと書いた。しかし、本号には次のような記述があった。
 主戦論の民間における主唱者、ジョン・ボルトン元国連大使は、作戦計画をある程度知る立場から、ソウルに向けた北の高射砲群を大部分一斉破壊することは、「なしうる」(doable)と強調している。
(島田洋一「アメリカの深層 第26回 まさに開戦の時―」)
 現在、韓国には20万人強のアメリカ民間人や在韓米軍人の家族が滞在している。そのことを理由に米軍の攻撃開始はない、という見方をする向きも少なくない。自国民間人の命を危険にさらしてまで、米軍は攻撃を始めないし、始めるときは、彼らを退避させるはずだ、という理屈だ。また、日本に住む在日米軍人家族を含む米国人も退避させない限り、軍事攻撃はないと見る人もいる。

 本当だろうか。筆者は、彼らの退避はなくとも攻撃は始まり得ると考える。そのための手段があるからである。簡単に言えば、奇襲攻撃だ。(※この後、具体的な奇襲攻撃の説明が続くが、軍事面の詳細な話に入るため割愛する)
(香田洋二「アメリカが北朝鮮を攻撃しない理由は初めからない」)
 以前の記事「『北朝鮮”炎上”/日本国憲法施行70年/憲法、このままなら、どうなる?(『正論』2017年6月号)』―日本はアメリカへの過度の依存を改める時期に来ている」で、アメリカは北朝鮮の軍事力が上がるのを敢えて待っているのではないかと書いた。北朝鮮の軍事力が中途半端なままでは、インテリジェンス頼みのアメリカは十分な情報が収集できず、適切な対北戦略が立てられない。北朝鮮の軍事力が上がってくれば、巨大化した北朝鮮の基地を衛星写真で正確に知ることができるし、またサイバー攻撃を仕掛けて北朝鮮の機密情報を大量に入手することも可能になる。これらの情報に基づいて、様々な選択肢を検討しながら、北朝鮮を短時間で一気に潰す戦略を構想する。上記の引用文は、その戦略が相当程度まで完成していることを意味し、同時にやはりアメリカはこれまで時間稼ぎをしていたのだと私は感じた。

 朝鮮半島をめぐる各国の思惑を私なりに整理してみると以下のようになる。

 ・アメリカ・日本=北朝鮮を非核化する。南北分裂はそのままとし、現状維持を目指す。

 ・北朝鮮=核の恫喝によってアメリカから体制の維持を認めてもらう。というのは建前であって、実際には、アメリカをICBMで牽制しながら韓国を攻撃し、最終的には朝鮮半島を社会主義国家として統一したいと目論んでいる。

 ・韓国=北朝鮮を非核化する。だが、これもまた建前であって、左傾化が著しい韓国は、実は北朝鮮と一緒になりたいと願っている。文在寅大統領が、国連の制裁決議が通った後で、北朝鮮に対して人道支援を行ったのは、文大統領が左傾化していることの表れである。統一国家は親中国家となる。アメリカとの同盟は放棄する。北朝鮮の核に韓国の資金を投入して、強力な核保有国となる。共産主義の38度ラインを朝鮮半島の南まで押し下げて日本と対立する。

 ・中国・ロシア=香田洋二「アメリカが北朝鮮を攻撃しない理由は初めからない」では、中国・ロシアも北朝鮮の非核化には賛成しており、金正恩体制を崩壊させないのであれば、アメリカの軍事攻撃をギリギリ容認するだろうと書かれていた。しかし、中ロは、金正恩体制が存続さえしてくれれば、国際世論のほとぼりが冷めた頃に再び北朝鮮の核開発支援を再開するに違いない。日本では、北朝鮮の暴走に中ロが手を焼いていると報道されることが多いものの、中ロとしては、朝鮮半島に核保有国を作り、将来的には日本を奪取したいというのが本音である。

 こうして見ると、朝鮮半島に核保有国を誕生させたがっている国の方が多いことが解る。朝鮮半島の核保有国を容認すると、いわゆる「核ドミノ」が発生する恐れがある。具体的には、まず朝鮮半島の核に反応して日本が核を保有する。それにつられて、東南アジア諸国も朝鮮半島や中国の核に対抗するために核の保有を目指す。こうなると、核拡散防止条約(NPT)は事実上骨抜きになる。NPTに関しては、既にインドという例外を作ってしまっている以上、さらなる例外の発生は避けたいところである。それに、核保有国が増えることは、先般成立した核兵器禁止条約の流れにも逆行することになる。だから、何としてでも北朝鮮を非核化しなければならない。

 北朝鮮を非核化するには、①外交による解決と②軍事的手段の2つがある。まず、外交による解決だが、アメリカと北朝鮮が直接対話をする。アメリカは北朝鮮に対して核の放棄を迫る代わりに、北朝鮮はアメリカに対して金正恩体制の維持を約束させる。だが、北朝鮮の要求はこれだけにとどまらないであろう。前述の通り、北朝鮮の真の狙いは南北統一であるから、北朝鮮は韓国との戦いを優位に進めるため、在韓米軍の撤退を要求する。これは、アメリカとしては到底呑める条件ではない。ただ、韓国の文大統領がアメリカの意向に反して左傾化している現状を踏まえると、アメリカが韓国を捨て石にする可能性もゼロではない。朝鮮半島の非核化の価値と、米韓同盟の価値を天秤にかけた場合、アメリカは前者を選択するかもしれない。

 しかし、そもそもこの交渉は決裂するリスクが高い。
 仮に外交交渉等の非軍事的手段で北朝鮮の核ミサイル開発と使用を一時的に合意した場合、続く核ミサイル放棄交渉において北朝鮮が全面放棄に同意すれば本件は一件落着であり、正に万人の望む結果となる。問題は北朝鮮が同意しない場合であり、その際に次の交渉カードは最早残っていない。

 今述べた、交渉にこぎつけたものの核ミサイル廃棄交渉が決裂した場合及び現在の状況である北朝鮮との対立が続き、問題解決の糸口が見つからない場合の両ケースにおいて、米国をはじめとする国際社会が何もしない場合には、「ズルズル」と北朝鮮の核ミサイル開発と実戦化を黙認してしまうこととなる。
(香田洋二「アメリカが北朝鮮を攻撃しない理由は初めからない」)
 それに、仮に交渉が成功して北朝鮮の核放棄に成功したとしても、繰り返しになるが、金正恩体制が続く限り、中国とロシアが再び北朝鮮の核開発の支援を行う恐れがある。

 よって、北朝鮮を完全に非核化するには、金正恩体制を完全に崩壊させるしかない。つまり、トランプ大統領が発言したように、「北朝鮮という国を完全消滅させる」しかない。アメリカは、北朝鮮がアメリカ本土に届くICBMを完成させた頃を見計らって、自衛戦争と称して北朝鮮に攻め込むであろう(日本にとっては、集団的自衛権の行使が問われる初のケースとなるだろう)。冒頭の引用文のように、短時間で北朝鮮のミサイル基地や核関連施設を封じ込める作戦が本当にあるならば、アメリカの勝利の可能性が見えてくる。アメリカが気をつけるべき点は、100万人を超えるとされる北朝鮮の人民解放軍とのゲリラ戦にズルズルと巻き込まれることだ。アメリカがゲリラ戦に弱いことはベトナム戦争、アフガン戦争、イラク戦争で経験済みである。

 アメリカが北朝鮮を攻撃すれば、北朝鮮VSアメリカ・韓国となる。当然、中国とロシアが出てくるから、中国・ロシア・北朝鮮VSアメリカ・韓国となる。だが、左傾化した韓国はアメリカを裏切って(米韓同盟を破棄して)北朝鮮側につくことも考えられる。すると、中国・ロシア・北朝鮮・韓国VSアメリカとなり、自ずと日本はアメリカを支援しなければならない立場に置かれる(ここで集団的自衛権の行使が問われる)。中国・ロシア・北朝鮮・韓国VSアメリカ・日本の結果がどうなるかは私には予想がつかない。仮に前者のグループが勝利すれば、朝鮮半島は社会主義国家として統一されるであろう。さらに悪いことに、朝鮮半島の非核化は達成されないままとなる。

 アメリカ・日本が勝利した場合、アメリカは北朝鮮の跡地に新たな国家を建設する。朝鮮半島では、北側にアメリカ主導で新しい資本主義・民主主義国家であり非核化された国家が生まれる一方で、南側には左傾化しアメリカを裏切った韓国が存在するという構図になる。つまり、朝鮮半島は、北側が資本主義国家、南側が社会主義国家という、現在とは正反対の配置になる。そして、北側の資本主義国家は中ロと南の韓国によって抑え込まれ、南の韓国は北側の資本主義国家と日米によって抑え込まれるという図式が成立する。

 ここで留意しなければならないのは、左傾化して中ロ側についた韓国が核開発に乗り出す可能性である。韓国と中ロの間には新しい資本主義国家が存在しているため、韓国と中ロのつながりは地理的には一応分断されており、中ロが北朝鮮に対してしたような直接的な支援はやや困難になる。しかし、韓国ほどの資金と技術があれば、中ロの支援をそれほど受けなくても、独自に核を開発することが可能かもしれない。とはいえ、韓国にとって核開発は一からの開発になるから、韓国と言えども一定の時間が必要になる。アメリカや日本をはじめとする国際社会としては、北朝鮮の核開発を20年以上も放置して現在の問題を招いた過去を反省し、韓国の早期封じ込めに注力することが今後の重要な課題となるのかもしれない。


2017年09月12日

『正論』2017年9月号『戦後72年/誰も金正恩を止めない・・・』―日本が同じように統治したのに戦後の反応が異なる韓国と台湾、他


正論2017年9月号正論2017年9月号

日本工業新聞社 2017-08-01

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 (1)安倍政権が窮地に立たされている。NHKが公表している内閣支持率の推移を見ると、特定秘密保護法の公布(2013年12月)、集団的自衛権の憲法解釈の変更(2014年1月)、安保法制の公布(2015年9月)、共謀罪(テロ等準備罪)を新設した改正組織犯罪処罰法の公布(2017年6月)の際には、様々な批判があったにもかかわらず、内閣支持率はそれほど大きく変化していない。これに対して、森友学園問題、自衛隊のPKO日報問題、加計問題が発覚すると内閣支持率は急落し、7~8月は不支持が支持を上回った。私にはこの現象が不思議に見える。

 報道を詳しく追っているわけではないので私の認識が不正確な部分もあるかもしれないが、森友学園問題は財務省のチョンボにすぎない。安倍首相が籠池氏に100万円を渡したとされる点も、籠池氏が安倍首相に100万円を渡していたのならば問題になるだろうけれども、本件はお金の流れが逆である。自衛隊のPKO問題は、日報があった、なかったという問題であり、行政組織の透明性、政府の説明責任が問われた一件である。しかし、この手の不透明性や政府の説明の曖昧さは、安保法制や共謀罪をめぐる審議でも見られたことであり、何も防衛省が特別というわけではない(もちろん、だからと言って防衛省や政府が責任を免れられるわけでもない)。

 報道を見ていると、内閣支持率急落にとって致命的だったのは、どうやら加計学園問題のようである。国家戦略特区制度を利用して愛媛県に獣医学部を新設する際に、安倍首相への忖度が働いたのではないかということ、そしてそれを裏づけるかのように、自民党の下村幹事長代行が文部科学相であった2013~14年に、加計学園の当時の秘書室長から、後援会の政治資金パーティー券の購入代金として現金計200万円を受け取っていたことが問題視されている。

 こういうことを言うと関係者から怒られるかもしれないが、特定秘密保護法、集団的自衛権の憲法解釈の変更、安保法制、共謀罪に比べれば、獣医学部の新設というのは小さな問題にすぎない。そもそも、国家戦略特区制度とは、岩盤のような既存の規制にドリルで穴を開けて、国際競争力を持つ産業を育成するための制度である。それが、獣医学部の新設という、国際競争力の強化との関係が不明な取り組みのために矮小化されていることの方が問題である。確かに、日本のペット(犬と猫)の数は増加の一途にあり、現在では15歳以下の子どもの数より多い。それに伴って、獣医の需要が増えていることは想像に難くない。しかし、獣医を増やすのにわざわざ特区を利用する必要があったのかというこそが問われるべきである。

 それが、これほど大きな問題になって内閣支持率に打撃を与えているのは、結局のところ日本国民は「政治とカネ」の問題に対して異常に敏感である、ということなのだろう。思い返してみれば、第1次安倍政権が倒れたのは、当時の農水相であった松岡利勝に、事務所費の不透明な支出の問題、光熱水費の問題、100万円献金の使途不明という問題が覆いかぶさり、最終的に松岡が自殺したことが大きかった。国民は、政策の重要性の高低で内閣の支持・不支持を決めていない。本来、規制を強化または緩和してほしい、あるいは個人や特定の組織を庇護してほしい時には、その必要性とメリットを滔々と政治家に説いて政治家を説得するという努力を払うべきだと国民は考えている。それを不透明なカネの力で一気に片づけてしまおうとする姿勢に国民は反感を覚えるのであり、またその不透明なカネに乗る政治家にも強い不信感を抱くのである。

 この問題を解決するには、e政府が進んでいるエストニアのようにカネの流れを完全にオープンにするか、献金を完全に禁止するかのどちらかしかないだろう。ただ、前者の場合、結局はカネのある人が有利になるという問題は解決しないため、残るのは後者しかない。とりわけ、政治家の意思決定を歪めやすい企業団体献金は禁止するべきである。しかし、見方を変えると、企業団体献金というのは、選挙権を持たない企業や団体が政治的なニーズを政治家に伝達する手段であるとも言える。そこで、これは全くの私案であるが、献金を禁止する代わりに、法人にも選挙権を与えるというのはどうだろうか?もちろん、制度設計には様々な障害が想定される。

 ・法人の1票と個人の1票を同等に扱ってよいのか?
 ・外国人が代表者を務める法人にも選挙権を認めてよいのか?
 ・宗教法人にも選挙権を与えると、政教分離の原則に反するのではないか?
 ・権利能力なき社団には選挙権を与えなくてもよいのか?
 ・企業法人に選挙権を与えるなら、個人事業主にも選挙権を与えるべきではないか?ただしこの場合、事実上個人が2票持つことになり、他の国民との平等性が崩れるのではないか?

 (2)日本は日清戦争後の下関条約によって台湾を併合し、韓国併合に関する条約によって韓国を併合した。欧米列強がアジアやアフリカの諸国を植民地としたのに対し、日本は台湾や韓国を日本の一部にした。そして、欧米列強が植民地から食料や資源を略奪し、植民地に対して自国の製品を大量に輸出し、植民地の人々を過酷な労働環境の下に置いた、つまり一言で言えば植民地を搾取したのに対し、日本の場合は鉄道、道路、水道、ガス、電気などのインフラを整備し、工場を建設し、学校を設立し、教師を育成し、警察制度を確立するなど、当時の日本社会のコピーを台湾と韓国に実現しようとした。もちろん、日本のやり方には是非の議論が当然あるわけだが、注目すべきは戦後の台湾と韓国の反応がまるで違っていることである。

 台湾は、日本統治時代について概ね肯定的な見方をしているようである。事実、台湾に親日派が多いことは有名である。本号では、蔡焜燦の『台湾人と日本精神(リップンチェンシン)』(小学館、2001年)が紹介されている。以下、孫引きになることをご容赦いただきたい。
 台北の鉄筋コンクリート製下水道施設などは、東京市(当時)よりも早く整備され、劣悪な衛生状態を改善することによって伝染病が一掃された。そして、あらゆる身分の人が教育を受けられるよう、貧しい家庭には金を与えてまで就学が奨励された事実を忘れてはならない。

 戦後、台湾経済がこれほどまでに成長した秘密は、日本統治時代に整備された産業基盤と教育にあるといっても過言ではない。同様に、台北の近代化はこうした日本統治時代を抜きに語ることはできないのである。
台湾人と日本精神(リップンチェンシン)―日本人よ胸をはりなさい (小学館文庫)台湾人と日本精神(リップンチェンシン)―日本人よ胸をはりなさい (小学館文庫)
蔡 焜燦

小学館 2001-08-01

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 ところが、これが韓国となると評価が180度変わる。韓国は日帝による支配を何としてでも否定しようとしている。右派で知られる作家・百田尚樹氏は、最近『今こそ、韓国に謝ろう』(飛鳥新社、2017年)という著書を発表した。百田氏は、韓国に元々存在していた文化、風俗、社会制度などを無視して、日本式のやり方を強引に持ち込んだことを詫びている。ただ、本当に謝罪しなければならないのは、教育で韓国の精神を変えられなかったことだと言う。この点で、単に日帝=悪とし、韓国(や中国)に言われるがままに謝罪を続ける左派とは一線を画している。
 日本人は併合時代に朝鮮人に様々なものを教えました。もっともそれらは何度も言ってきたように、朝鮮人が望んだものではないので、彼らにしてみれば「有難迷惑なこと」以外の何ものでもありません。そのことは謝罪しなければならないのは当然ですが、それはひとまず置いておいて、日本人が朝鮮人にいろんなことを教えようと思った動機は、彼らが多くのことを知らなかったからです。文字を知らず、灌漑技術を知らず、近代的農業を知らず、護岸工事を知らず、植林の意義を知らず、ビジネスを知らず等々、だからこそ一所懸命に、それらを教えたのです。

 しかし日本人は一番大事なことに気付きませんでした。それはモラルです。もしかしたら日本人はそうしたものはわざわざ教えなくとも、自然に身に付くと考えていたのかもしれません。前に私は「衣食足りて礼節を知る」と書きましたが、衣食を与えれば礼節を知ることになるだろうと、安易に考えていたような気がしてなりません。
今こそ、韓国に謝ろう今こそ、韓国に謝ろう
百田尚樹

飛鳥新社 2017-06-15

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 明治維新後の日本が西洋の技術を取り入れて急速な近代化に成功したのは、佐久間象山の「東洋道徳、西洋芸術(東洋の精神の上に西洋の科学技術を移入させる)」という言葉の通り、日本人にはベースとなる精神があったからである。日帝時代の日本人は、韓国には儒教という精神的支柱があるから、日本と同じように近代化できると考えたのかもしれない。ところが、実際にはそんな精神的支柱はなかったのである。精神のないところに技術だけを持ち込んだことが、韓国統治の失敗の原因であり、同時に韓国の反発を買った原因なのかもしれない。もっとも、私の関心は、儒教国であるはずの韓国になぜ精神的な支柱が存在しなかったのかという点にある(この点は現在の中国も同じである)。これについては引き続き考察を続けたい。

 もう1つ、韓国がこれほどまでに日本に対して反発しているのは、実は裏に中国がいて、日韓を分断してアメリカの影響力の低下を狙っていることも考えられるが、それ以上に「『韓国オリジナル』というものがないことへの強烈なコンプレックス」の表れなのではないかと思う。朝鮮半島は長らく中国の属国であり、何もかもを中国に依存してきた。つまり、オリジナルのものを持つことを許されなかった。そこに、日帝がさらに様々なものを持ち込んだため、韓国の怒りは頂点に達してしまったというわけである。最近、韓国が自国に起源があると主張しているものは「ウリジナル」と呼ばれ、テコンドー、剣道、相撲、サッカー、茶道、端午の節句などが該当する。果てはメソポタミア文明やインカ文明、西洋文明も韓国が起源であり、孔子もイエスも韓国人だと言い出している。ウリジナルは、韓国オリジナルがないというコンプレックスの裏返しである。

 私は台湾の歴史のことはよく解らないのだが、日本に関して言えば、日本も外国に多くを依存しながら自国の文化を構築してきた国であり、その意味では韓国と同じく、オリジナルに乏しい。しかし、日本が韓国のようにヒステリックでないのは、日本が特定の国に属してその国に抑圧された歴史を持たないからであろう。だから、反動としてオリジナルなものに対する希求を抱くこともなかった。むしろ、日本はいつの時代にも外国に開かれていた。鎖国政策をとっていた江戸時代でさえも、近年の研究によれば外国に対して比較的オープンであったことが解っている。こうした背景が、日本人が日本オリジナルのものにそれほど執着しなかった要因と考えられる。先ほど、明治時代の日本には基盤となる精神があると書いたが、その精神も、諸外国の文化や価値観などの混合から醸成されたものである。それでよしとする寛容さが日本人にはあった。

 (3)高齢者の割合が増えてくると、いわゆる「シルバー・デモクラシー」に陥りがちである。そこで、若者、特に子ども向けの政策を充実させようという動きが見られる。その1つが「子ども保険」である。子ども保険とは、小泉進次郎・農林部会長ら自民党の若手議員による「2020年以降の経済財政構想小委員会」が提唱しているもので、保育や幼児教育を無償にすることを目的としている。財源としては1兆円ほどが必要と試算されている。その財源を確保するために、教育国債を発行する、現在の社会保険料に上乗せする、などの案が浮上している。

 子どもを持つことが「保険事故」に相当するのかという議論にはここでは立ち入らない。1兆円の財源確保の手段として、私は信用保証協会の代位弁済を大幅に減らすことを提唱したい。信用保証協会は、中小企業が金融機関から融資を受ける際、「信用保証」を与えることで、資金調達を支援する。仮に中小企業が債務を返済できなくなったら、信用保証協会が代わりに債務を返済する。これを代位弁済と呼ぶ。日本では代位弁済の額が年間約1兆円に上り、その財源は国民の税金である。これは、中小企業の数が日本の5倍近いアメリカの約10倍である。代位弁済とは、簡単に言えば、潰れかけの中小企業に税金を突っ込んで延命を図ることである。そんな形で市場競争を歪めるよりも、未来ある子どもに投資した方がよっぽど賢明であると思う。

 子どものためのもう1つの政策が「高等教育の無償化」である。本号には、日本維新の会・丸山穂高議員と、評論家・池田信夫氏の対談が掲載されている(「大学の無償化は是か非か」)。高等教育の無償化に必要な財源は、文部科学省の試算によると、大学の無償化だけで3.1兆円、他も合わせると5兆円になるそうだ。この規模の財源を確保するのは至難の業である。

 私はここで、大学で学び直す社会人を増やし、彼らに費用を負担してもらうことを提案したい。経営学者のピーター・ドラッカーは、これからますます増加する知識労働者は、自らの資本である知識を常に最新のものに保つために、継続学習に取り組まなければならないと様々な著書の中で繰り返し主張している。そして、継続学習の場として、大学が今後非常に重要な役割を果たすと述べている。『ポスト資本主義―科学・人間・社会の未来』(岩波新書、2015年)の中では、ドラッカーは日本の大学の問題点を次のように指摘している。
 他のいろいろな面で、日本は新しく生じてきたニーズに応える体制になっていない。例えば教育の分野では、高学歴者のための継続学習機関として大学を発展させる必要が十分認識されていない。日本の高等教育は、いまだに成人前かつ就職前の若者の教育に限定されている。そのような体制は、21世紀のものではない。19世紀のものである。
ポスト資本主義――科学・人間・社会の未来 (岩波新書)ポスト資本主義――科学・人間・社会の未来 (岩波新書)
広井 良典

岩波書店 2015-06-20

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 2013年の調査によると、25歳以上の大学への入学者の割合は、OECD加盟国の平均が20.6%であるのに対し、日本はたった2.7%と非常に低い。原因としては色々考えられるだろうが、日本企業の悪しき伝統である長時間労働が、社会人の学び直しの機会を阻害していることは容易に想像できる。現在、安倍政権が取り組んでいる働き方改革が功を奏し、残業の抑制や週休3日制などが定着すれば、働きながら大学で学ぶことを望む社会人は増えると思う。

 OECD並みの水準とまではいかなくとも、仮に25歳以上の大学への入学率が2.3%増えて5%になったと仮定しよう。日本の労働力人口は2016年時点で6,648万人であるから、大学に入学する社会人は約153万人増える。社会人が大学を卒業するまでに要する年数を、若者と同じく4年とすると、社会人学生は毎年約612万人存在することになる。彼らが負担する授業料を年間50万円に設定すれば、授業料収入は約3兆円となり、大学の無償化に必要な財源をカバーすることができる。丸山穂高議員は、社会人学生も無償にするべきだと記事の中で主張していたが、私はお金のある社会人からお金のない若者への再分配を推進するべきだと考える。社会人学生が増えれば、当然のことながら教える側の人間も増やさなければならない。これは、現在就職先がなくて困っているポスドクに相当数のポストを用意できることを意味する。


2017年08月14日

『小池劇場と不甲斐なき政治家たち/北朝鮮/憲法改正へ 苦渋の決断(『正論』2017年8月号)』―小池都知事は小泉純一郎と民進党の嫡子、他


月刊正論 2017年 08月号 [雑誌]月刊正論 2017年 08月号 [雑誌]
正論編集部

日本工業新聞社 2017-06-30

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 (1)先の東京都議会議員選挙で、小池百合子東京都知事が率いる都民ファーストの会が自民党を破って大勝した。しかし、2016年に小池氏が都知事に就任して以来したことと言えば、
 東京五輪で使う国立競技場の屋根をなくしたぐらいではないですか。屋根の分、建設費が安くなったなどと言っていますが、真夏に屋根のない炎天下でサッカー競技をやるわけです。どうなるか、今から心配です。
(屋山太郎「ふくらんだ期待がしぼんでいる・・・ 小池よ急げ 今ならまだ安倍と”共闘”できるぞ」)
 小池都知事は、一時期小泉純一郎氏と近しい関係を保っていたことから、その政治手法には小泉氏の影響を見て取ることができる。「都民ファースト」というワンフレーズ・ポリティクスは小泉氏が最も得意とすることであったし、小泉氏が「自民党をぶっ壊す」と言ったように、小池氏は「都議会をぶっ壊す」と宣言している。本号には小池氏のインタビュー記事も掲載されていたが(小池百合子「小池百合子・東京都知事独占告白 私はマクロン 9条3項は唐突・・・」)、「まずは議会を変える」と明言している。しかし、このインタビュー記事は非常に内容が薄いものであり、「とにかくリベラルでも何でもいいから人を集めた。彼らは泥臭い選挙戦を戦い抜いてくれた。彼らが都政を変えてくれると期待している」といった程度のことしか書かれていない。

 議会の改革はあくまでも手段にすぎない。何か重要な政治的課題を解決するために、意思決定機関である議会を変える必要がある、と考えるのが通常のロジックである。小池氏の発言は、企業で例えれば、新任のCEOが「まずは取締役会を変える」と言っているようなものである。しかし、そんなことを口にするCEOなどまずいない。顧客視点で戦略を練り直して必要な改革を導き出し、その改革を実現するための一手段として、取締役会の意思決定機能やガバナンス機能を見直す、という流れになる。小池氏も、「都民ファースト」という名前をつけているぐらいであるから、まずは都民のニーズを丁寧に汲み取って、あるいはニーズを先取りして、どんな改革が必要になるのかを考え、その実現手段として議会改革を挙げる、という順番でなければおかしい。

 小池氏は、インタビュアーに対して、時に非常にそっけない回答をしている。
 ―意地悪な見方で恐縮ですが、彼ら(※当選した都民ファーストの会の議員)は小池知事と一緒に経験を積んだ後、国政に進出しようという計画ではないでしょうか?
 小池:それは知りません(笑)。
(小池百合子「小池百合子・東京都知事独占告白 私はマクロン 9条3項は唐突・・・」)
 ―都議選の間近、6月に入ってから自民党を離党されましたね。とはいえ、安倍晋三総理もそうかと思いますが、自民党の中には小池知事との連携に大きな期待を寄せている人たちもいるのではないでしょうか。
 小池:さあ。(同上)
 政治とは非常に複雑なプロセスである。多様な考え方を持つ様々な利害関係者が形成する網の目をかいくぐり、ある者は押し、ある者からは引くという微妙で繊細な駆け引きが必要である。こうした、選挙戦以上に泥臭い調整プロセスを経て、政治課題を実現していくものである。だが、小池氏は、離党したとはいえ自民党とどのような関係を構築していくのか、当選した大量の新人議員をどのように活用していくのかといったことに関する構想が描けていないのではないかと思ってしまう。もっとも、小池氏には達成したい政治的課題がはっきりとあるわけではないから、その実現ルートを検討するというところまで頭が回らないのは致し方ないのかもしれない。

 小池氏のやり方は、旧民主党のやり方にも通じるところがある。旧民主党が政権を奪取した時、最初にやったのは八ッ場ダムの建設見直しであった。八ッ場ダムについては、政府と自治体、地元住民が何十年も議論を重ねて、ようやく建設合意に達したところであった。それを、前原誠司氏の一言でストップさせてしまった。地元の失望は計り知れないものがあった。小池氏は就任直後、築地市場の豊洲移転問題を延期したが、この構図は八ッ場ダムとそっくりである。
 豊洲問題では、長い間かけて都庁や市場関係者が移転合意をとりつけ、さあ移転という時に、突如都知事として乗り込んできたあなたに、ぶち壊されてしまいました。民主党が政権を取った途端に、八ッ場ダム建築中止を決めた構図にそっくりです。(中略)結局、大騒ぎして、八ッ場ダムの建築は再開され、計画は大幅に遅れて竣工いたしました。
(犬伏秀一「拝啓 小池百合子さま 「自分ファースト」になっていませんか?」)
 結局、豊洲移転が計画から大幅に遅れて進行することになった点まで、八ッ場ダム問題とそっくりである。短期的に成果を出すために、国民や住民が注目しやすい政策に目をつけ、大幅なコストカットをちらつかせる(そして、結果的にはそのコストカットに失敗する)。これが旧民主党のやり方であり、小池氏のやり方でもある。ここまで書いてきたことを総合すると、私の眼には、小池氏は小泉純一郎氏と旧民主党の嫡子であるかのように映る。

 (2)杉田水脈「スポンサーにNHKも名を連ねる 欧州の反日フリーペーパーはこんなにヒドい・・・」では、フランスを拠点に配布されている「ZOOM JAPAN」というフリーペーパーが反日左翼に傾倒していることが報告されている。ZOOM JAPANの概要は以下の通りである。
 この「ZOOM JAPAN」という名のフリーペーパーは、2010年6月創刊。フランス語圏において、日本の文化を総合的に発信する唯一の無料月刊誌とのことです。現在、フランス国内約850ヶ所に配布拠点があり、フランスを中心に毎月7万部、多い時には15万部も発行されています。英語、イタリア語、スペイン語にも翻訳され、ヨーロッパ中で配布され、Japan Expoや国際旅行博覧会の会場をはじめ、多種多様な日本関連イベント会場でも積極的に配布をされています。
 ZOOM JAPANは、表向きは日本文化に関する情報を欧州の人々に発信するという形式を取っている。しかし、その内容をよく読むと、慰安婦問題、沖縄基地問題、日本会議などに関して、事実誤認を含む左寄りの記事も相当含まれているそうだ。そして、驚くことに、このZOOM JAPANには、NHKや政府観光局も広告を出稿している。『正論』では、左派が海外で日本に不利な情報を発信していることがしばしば取り上げられる。左派にとっての総本山が国際連合であり、国連は今や反日左翼NGOの巣窟と化している(本号では、仲新城誠「反基地・山城氏VS我那覇氏 国連人権理事会での戦い」という記事で国連の内情が報告されている)。

 なぜ、左派は日本を貶めたいのだろうか?まず考えられるのは、左派にとっては国家という権力が邪魔であり、それを取り除きたいからだということである。左派の究極の目標は世界市民社会の実現であり、世界中の人々が平等に政治に関与することである。そして、アリストテレスの古代から、人間が理性を発揮できるのは政治の舞台だとされてきた。左派は、今は国家権力が独占している政治を自らの手に取り戻し、理性ある人間として生きることを目指している。

 しかし、慰安婦問題、南京事件などをめぐる左派の対応を見ていると、ひたすら中国と韓国に謝罪するばかりである。内田樹氏は、中国人や韓国人に会うと、最初に「昔の日本人がひどいことをした。深くお詫びする」と言うそうだ。この心理を紐解くと、実は、左派は国家権力をなくそうとしているわけではないように思える。「日本は三流国家である。その三流国家が中国・韓国という一流国家を害した。大変申し訳ない」という国家の上下関係が透けて見える。左派にとって国家、特に中国・韓国のような強い国家(正確には声の大きい国家)は必要なのであり、その国家にへつらうことで自己の存在空間を確保している。それはちょうど、自己否定に悩む青年が、大人に憧れるという行為で自己を辛うじて規定するというナイーブな感情に似ている。

 左派は弱者の味方である。ややもすると権力に虐げられ、政治的課題から漏れてしまいがちな弱者の声に耳を傾け、弱者のニーズを政治に反映させることを信条としている。しかしここで今度は、先ほどとは逆の優越感が顔をのぞかせる。すなわち、左派には無知な弱者のことを十分に理解する知識があり、弱者を代表して政治の舞台に立つ能力を持っていることを示したいのである。弱者をだしにして、自らの有能さを誇示しようとしているのが左派という人間である。だから、近代西欧において民主主義が成立した時、その形式は「ブルジョワ民主主義」であった。ブルジョワとは、比較的裕福な商工業者である。彼らは、弱者よりも、知識、能力、資金の面で優れている。そのブルジョワジーに反感を持った弱者が試みたのがプロレタリアート革命であった。

 つまり、国家権力の存在しない究極の平等主義を志向しているのに、自分より強い国家に対してはへこへこと媚を売り、自分より弱い者に対しては、彼らの味方を装いながら内心は彼らに対する優越感を充満させる。平等主義どころか、保守も顔負けの上下関係重視である。これが左派、特に日本における左派の実態ではないかと思う。

 (3)朝鮮半島の情勢が相変わらずきな臭いが、私は最近、どんなシナリオをとっても、朝鮮半島が共産主義国家として統一されるのは避けられないのではないかと思うようになった。

 ①アメリカが北朝鮮の核開発を容認した場合・・・北朝鮮は数年内に、アメリカ本土に届くICBMを完成させる。すると、北朝鮮はアメリカをICBMで牽制しながら、韓国併合に向けて軍事行動を起こす。ただし、この作戦は多大な犠牲を払うことになるため、実現可能性は低い。

 ②中国が金正恩体制を揺さぶった場合・・・現在、アメリカが中国を通じて北朝鮮に圧力をかけている。その結果、金正恩政権が倒れ、北朝鮮の核は放棄されるかもしれない。北朝鮮には新たな政権が誕生するが、この政権は中国の傀儡政権である。また、中国が北朝鮮に圧力をかける代わりに、中国とアメリカが密約を交わしていると言われる。具体的には、在韓米軍の縮小であろう。つまり、アメリカは韓国を捨てるということだ。しかし、これで喜ぶのは、実は親北派の韓国・文在寅大統領である。南北で軍縮が進めば、平和裏のうちに南北統一へと進むことが考えられる(以前の記事「『愚神礼讃ワイドショー/DEAD or ALIVE/中曽根康弘 憲法改正へ白寿の確信(『正論』2017年7月号)』―日本は冷戦の遺産と対峙できるか?」を参照)。

 ③トランプ大統領が金正恩党委員長と交渉した場合・・・北朝鮮の核開発が相当程度に進んだ段階で両者の交渉が実現する可能性がある。両国はまず、双方の核兵器の削減を討議する。次に、北朝鮮はアメリカに対し、金正恩体制の承認を求める。アメリカはそれを認める代わりに、韓国に手出ししないことを約束させる。さらに、交渉では、北朝鮮が国境付近でソウルに向けている大量の大砲もテーブルに上がる。北朝鮮がこれらの砲台を削減する一方で、アメリカは在韓米軍の削減を約束する。すると、②と同様に、南北で軍縮が進むことになるため、南北統一の可能性が見えてくる(以前の記事「『韓国新政権と東アジアの未来/住宅保障 貧困の拡大をくいとめるために(『世界』2017年7月号)』―びっくりするほど呑気なリベラル、他」を参照)。

 元々、朝鮮半島が南北に分裂しているのが異常事態であったわけで、その両国が、社会主義国家がよいかどうかという点はともかく、統一されるということは、ノーマルな状態に戻ることを意味する。ただし、朝鮮半島に社会主義国家が誕生するということは、日本と朝鮮半島が資本主義と社会主義、別の言い方をすればアメリカと中国・ロシアの代理戦争の場になるリスクを秘めている。だから、以前の記事「『愚神礼讃ワイドショー/DEAD or ALIVE/中曽根康弘 憲法改正へ白寿の確信(『正論』2017年7月号)』―日本は冷戦の遺産と対峙できるか?」で、日本は冷戦の遺産と戦う覚悟を決めなければならないと書いたわけである。

 以前の記事「マイケル・ピルズベリー『China 2049』―アメリカはわざと敵を作る天才かもしれない」で、かなりざっくりとだが下のような図を使った。アメリカとドイツは自由主義の陣営、中国とロシアは専制主義の陣営に属し、お互いに対立しているものの、実は、アメリカは中国に、ドイツはロシアに接近している。一方、同じ陣営の中でも、アメリカとドイツ、中国とロシアは決して一枚岩ではなく、時に対立をしている、ということを表した図である。この図を描いた後、親ロシアのトランプ大統領が当選し、図が崩れてしまったと思ったのだが、最近はシリア空爆や米大統領選の不正疑惑をめぐって、アメリカはロシアと距離をとっている。むしろ、アメリカは急速に中国に接近しつつあり、この図はあながち間違っていないのではないかと思っているところである。

4大国の特徴

 最近、「アメリカが中国と組む可能性」について、『正論』の中でも言及される機会が増えた。個人的に「アメリカが中国と組む」というのはどういうことなのかよく解っていなかったのだが、具体的にはこういうことではないだろうか?まず、北朝鮮問題において、前述の②のような協力をする。これが引き金となって、朝鮮半島は社会主義国家として統一される。

 次に、アメリカは、中国の一帯一路構想に本格的に賛同する。一帯一路のうち、海を通る「一路」は南シナ海を通っている。よって、アメリカが中国の一帯一路構想に本格的に賛同するということは、中国の南シナ海における一連の軍事行動を容認することを意味する。さらに中国は、一帯一路構想の実現のために、アメリカに対しAIIBへの参加を強く求める。トランプ大統領はビジネスライクな人物であるから、投資対効果があれば簡単に参加OKと言うかもしれない。

 さらに米中の関係は深化し、中東と日本・中国を結ぶシーレーンの共同管理や、習近平国家主席が提案した「太平洋2分割管理」にアメリカが同意する可能性がある。ここで一番怖いのは、日本がアメリカからはしごを外されて、米中両国から日本が共通の仮想敵国と位置づけられることである。当然のことながら、日本が強固なものだと信じて疑わなかった日米同盟は破棄される。すると、日本は自主防衛へと舵を切ることになる。しかし、これは一筋縄ではいかない。
 武装中立はかっこいいですが、防衛費は現在の約5兆円から23~24兆円ほどに跳ね上がるという試算もある。それに、日米同盟を解消した瞬間に核抑止力がなくなります。核兵器の独自開発は、各国の妨害が確実なことから、10年以上かかり、実現可能性は低い。
(小川和久、矢野義昭「日本の核武装は是か非か」)
 米中は日本を仮想敵国とする。朝鮮半島の社会主義国家は日本を敵視する。つまり、日本の周りは敵だらけになる。私はここで、ウルトラC(?)として、ロシアと軍事同盟を結び、ロシアの核の傘に入るという選択肢が浮上すると考える。ロシアに対しては、同盟を結ぶ代わりに、北方領土を4島全て返還せよという交渉も可能になる。そして、先ほどの図に従えば、ロシアはドイツとつながりを深めているから、日本はロシアルートを通じて、ドイツを中心とするEUとの関係深化にも力を注ぐようになるだろう。もちろん、これはかなり過激なシナリオであり、日本としては、アメリカが簡単に中国と手を結ばないことを願うばかりである。



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