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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

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2017年08月16日

『中国の「最前線」はいま(『世界』2017年8月号)』―中国本土を批判できない左派、他

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世界 2017年 08 月号 [雑誌]世界 2017年 08 月号 [雑誌]

岩波書店 2017-07-07

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 (1)「中国の『最前線』はいま」という特集タイトルから、私は勝手に、中国本土で行われている法輪功の弾圧やチベット、ウイグル地区での人権抑圧などが取り上げられるものだと思い込んでいた。あるいは、先月死去した民主活動家・劉暁波氏の軌跡について考察がなされるものだと思っていた。そして、これらの事象に対して、左派らしく、自由、基本的人権、民主主義などの観点から切り込んでいくことを期待した。ところが、蓋を開けてみると、「最前線」とは香港、台湾のことであり、両地域の民主主義が危機に瀕しているという内容に終始していた。

 以前の記事「『小池劇場と不甲斐なき政治家たち/北朝鮮/憲法改正へ 苦渋の決断(『正論』2017年8月号)』―小池都知事は小泉純一郎と民進党の嫡子、他」でも書いたように、左派、特に日本の左派はねじれた思想の持ち主であると感じている。本来の左派は、国家という権力装置をなくし、世界市民社会を実現して究極の平等主義を手に入れようとする。そこにおいては、個は全体の中に埋没し、一が全体であり、全体が一であるという社会が出現する(だから私は、全体主義につながる可能性があると危惧している)。

 ところが日本の左派は、個を埋没させるためにまずは自己否定を行う。つまり、日本という国家を毛嫌いし、太平洋戦争でアジアに多大な被害をもたらした三流国家であると貶める。その自己否定の反動として、被害者である中国や韓国を過度に持ち上げる。自己否定すると同時に、他者肯定をする。左派にとって、中国や韓国は、日本とは違い一流国家である。その一流国家に対して、南京事件や慰安婦問題をめぐって永遠に謝罪し続ける。非常に矛盾したことであるが、日本の左派は、自己否定をしておきながら、中国や韓国にへつらうことで、自己の生存空間を確保しているのである。だから、日本の左派は、中国本土(や韓国)の民主主義が危機に陥っていても、正面からそれを批判できない。せいぜい、次のことを言うのが関の山である。
 「表題の『一国両エン(※「厭」の下に「鬼」)』が示すように、香港は正に困難に直面している。香港の高度な自治は北京政府の未だかつてないほどの深刻な侵害を受け、一方で北京政府は香港の高度な自治と制度が中国国内に浸透し、絶対的な支配権に脅威を及ぼすのではないかと危惧している」
(高橋政陽「「一国両エン」返還20年、香港のいま」)
 前掲の以前の記事でも書いたように、日本の左派は、一方で中国や韓国を恭しく扱う一方で、左派が本当に味方するべき社会の弱者に対しては優越的な態度をとる。後者の傾向は、日本に限らず、他国の左派にも見られるようである。左派は、弱者は無知な者として扱う。その無知な人々の上に立って、自らの能力と知識をひけらかし、有能さを示そうとする。そして、人々の無知につけ込んで、左派にとって都合のよい情報を吹き込もうとする。
 台湾有事の際にマラッカ海峡を第七艦隊が封鎖すれば、エネルギー資源の入手経路がただちに遮断される「マラッカ・ジレンマ」は、米国の「核の傘」の下にある日本には縁遠い話ではあるが、中国にとっては重大関心事である。
(羽根次郎「世界のなかの「一帯一路」構想とその思想的可能性」)
 マラッカ海峡は、日本が中東から石油を輸入する際のシーレーンの一部をなしているため、非常に重要な拠点であることは周知の事実である。安保法制の議論の時にも、中国の南シナ海における暴挙を報じる時にも、散々取り上げられたことである。それを「日本には縁遠い話」としてしまうのは、日本人を無知な人々だと思いたい著者の精神が表れているのではないかと勘繰ってしまう。幸いなことに、この記事は読者に対して何か特定の思想を押しつけようとするものではなかった。また、記事の最後で、以下のようにボロが出ていた。
 また、(欧州や中東などの)西方との関係を日本では南シナ海やマラッカ海峡抜きに想像できないのも無理はない。日本にやってきた西方の人びとはそうした海域を通ってきたのだ。(同上)
 左派は本当の意味で弱者の声に耳を傾けない。アメリカ大統領選挙で民主党のヒラリー氏が敗れたのは、大衆のニーズを汲み取ることができず、それどころか大企業に肩入れして、ウォールストリートで講演をしては何千万円という報酬を得ていたからである。イギリスの左派も、弱者からの乖離傾向が見られた。ところが、先のイギリス総選挙では、バーニー・サンダース氏に倣って、左派が草の根運動を展開したことが報告されている。これこそ左派の本来の姿である。
 これまで、コービンの熱心な支持者たちは高学歴の若者たちが多く、彼らはツイッターで政治を語り合うばかりで、草の根の選挙活動を行なわないと批判されてきた。が、6月の総選挙で彼らは変わった。若者たちは1軒1軒のドアをノックして、研修で教わったとおりに有権者の心配事や不満、労働党への批判も聞き、ポジティヴな態度で労働党の政策を語り歩いた。
(ブレイディみかこ「イギリス総選挙で見せた左派の底力 進歩的なドブ板政治」)
 (2)以前の記事「岡本隆司『中国の論理―歴史から解き明かす』―大国中国は昔から変わらず二項対立を抱えている」でも書いたように、現代の大国、すなわちアメリカ、ドイツ、ロシア、中国は皆、二項対立的な発想をする。山本七平によれば、二項対立はセム系民族の特徴であるらしい。なぜセム系は二項対立で物事を考えるのか、また、セム系ではない中国人が二項対立的な発想をするのはなぜなのかについては、現在も探索を続けているところである。

 大国は、自国の外に常に仮想敵国を設定することで、対立構造を創造する。さらに、国内にも二項対立を抱える。これをアメリカ対中国で説明すると次のようになる。周知の通り、アメリカと中国は現在様々な分野で対立している(もっとも、アメリカと中国の関係は、アメリカとロシアの関係よりも複雑であり、米中間では色々な協力もなされていることを付記しておく)。アメリカ、中国ともに、国内にも二項対立を抱えている。アメリカ国内には、多数派である反中派と、少数派である親中派がいる。中国国内には、多数派である反米派と、少数派である親米派がいる。

 アメリカと中国の間では、アメリカの反中派と中国の反米派が対立している。同時に、アメリカ国内では反中派と親中派が、中国国内では反米派と親米派が対立している。一方で、アメリカの親中派は、中国の親米派と裏でつながっている。このような関係にあるため、アメリカの反中派と中国の反米派は、お互いの対立に全力を注ぎたいが、国内でそれぞれ親中派、親米派と戦っている以上(しかもアメリカの親中派は中国の親米派から、中国の親米派はアメリカの親中派から支援を受けている)、全てのエネルギーを対中、対米に振り向けることができない。このことによって、大国間の深刻な対立を何とか回避することができる。

 中国は、香港と台湾に対して一国二制度を敷いている。つまり、国内において対立構造を保持している。中国は香港と台湾を本土に取り込んで、文字通り「1つの中国」を実現することを目指しているようだが、個人的にこれは危険な兆候だと思う。仮に1つの中国が実現されると、国内の対立構造がなくなり、国内のエネルギーが全て対立するアメリカに向けられる。また、国内政治は共産党一党に集約され、政治の失敗が許されない。少しでも政治が失敗しそうなサインが生じれば、国民の目を危機から逸らすために、対外的に強硬な態度に出ることが予想される。しかし、このやり方にも限度があり、政治の失敗がいよいよ明らかになった際には、共産党支配が崩壊するに違いない(中国の歴史とは、政治の失敗をめぐる王朝の興亡の歴史である)。矛盾した言い方になるが、中国は現在の一国二制度を維持しておくのが最善であると思う。

 (3)教育勅語を教育の現場で使ってもよいかどうかが議論を呼んだが、中嶋哲彦「なぜ教育勅語の復活を願うのか―「徳」の樹立と建国の一体性」によれば、1948年6月19日の衆議院決議で、教育勅語に「指導原理性を認めない」ことが明確に宣言されたという。参議院も同日、「教育勅語等が、あるいは従来の如き効力を今日なお保有するかの疑いを懐く者あるをおもんばかり、われらはとくに、それらが既に効力を失つている事実を明確にする」と決議した。これらを受けて文部省も、国会決議の趣旨を徹底すべく、教育勅語の回収を指示した。よって、政府が今年の国会で、教育勅語を教育現場で活用できる可能性について触れたことは問題がある。

 だが、この部分についてはどうだろうか?
 むしろ、文部科学省は、徳目主義とは反対に、「考える道徳」を通じて、①新自由主義的社会秩序に対応する生き方を自ら主体的に選択する価値観と思考回路から構成された市民道徳と、②社会の経済秩序と国家による政治的統治に対する内外からの侵犯に対する主体的安全保障意識、の育成を目指しているのではないか。
 特に、②について、教育は子どもに対して十分に考える機会を与えたであろうか?左派に浸食された教育関係者は、「安保法制は戦争につながる」、「徴兵制の復活をもたらす」と判を押したように主張し、(1)で述べた「弱者の上に立つ左派知識人」は、過去の国会・政府答弁資料などを持ち出して、机上における文言の分析だけを通じて安保法制を憲法違反と結論づけた。その結果、安保法制=悪という印象だけを子どもたちに刷り込ませたのではないだろうか?

 現在、日本を取り巻くアジアの情勢がどのように変化しているのか?その結果、日本にとってどのような脅威が発生しているのか?それらの脅威に対して、日本はどんなシナリオで対応するべきなのか?そのシナリオを実行する際に、障害となることは何か?その障害を取り除くにはどうすればよいか?こういったことを議論することが、②の主体的安全保障意識の醸成につながるはずである。さらに、現在の安全保障は、自国のみを対象とする安全保障から広がりを見せている。なぜ、他国の安全を日本が保障する必要があるのか?保障するべきだとして、どの範囲まで保障するのか?現在の日本には、他国の安全を保障できる能力があるか?こういった論点も俎上に載せなければならない。我々が見るべきは過去の資料ではなく現実である。

2017年08月14日

『小池劇場と不甲斐なき政治家たち/北朝鮮/憲法改正へ 苦渋の決断(『正論』2017年8月号)』―小池都知事は小泉純一郎と民進党の嫡子、他

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月刊正論 2017年 08月号 [雑誌]月刊正論 2017年 08月号 [雑誌]
正論編集部

日本工業新聞社 2017-06-30

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 (1)先の東京都議会議員選挙で、小池百合子東京都知事が率いる都民ファーストの会が自民党を破って大勝した。しかし、2016年に小池氏が都知事に就任して以来したことと言えば、
 東京五輪で使う国立競技場の屋根をなくしたぐらいではないですか。屋根の分、建設費が安くなったなどと言っていますが、真夏に屋根のない炎天下でサッカー競技をやるわけです。どうなるか、今から心配です。
(屋山太郎「ふくらんだ期待がしぼんでいる・・・ 小池よ急げ 今ならまだ安倍と”共闘”できるぞ」)
 小池都知事は、一時期小泉純一郎氏と近しい関係を保っていたことから、その政治手法には小泉氏の影響を見て取ることができる。「都民ファースト」というワンフレーズ・ポリティクスは小泉氏が最も得意とすることであったし、小泉氏が「自民党をぶっ壊す」と言ったように、小池氏は「都議会をぶっ壊す」と宣言している。本号には小池氏のインタビュー記事も掲載されていたが(小池百合子「小池百合子・東京都知事独占告白 私はマクロン 9条3項は唐突・・・」)、「まずは議会を変える」と明言している。しかし、このインタビュー記事は非常に内容が薄いものであり、「とにかくリベラルでも何でもいいから人を集めた。彼らは泥臭い選挙戦を戦い抜いてくれた。彼らが都政を変えてくれると期待している」といった程度のことしか書かれていない。

 議会の改革はあくまでも手段にすぎない。何か重要な政治的課題を解決するために、意思決定機関である議会を変える必要がある、と考えるのが通常のロジックである。小池氏の発言は、企業で例えれば、新任のCEOが「まずは取締役会を変える」と言っているようなものである。しかし、そんなことを口にするCEOなどまずいない。顧客視点で戦略を練り直して必要な改革を導き出し、その改革を実現するための一手段として、取締役会の意思決定機能やガバナンス機能を見直す、という流れになる。小池氏も、「都民ファースト」という名前をつけているぐらいであるから、まずは都民のニーズを丁寧に汲み取って、あるいはニーズを先取りして、どんな改革が必要になるのかを考え、その実現手段として議会改革を挙げる、という順番でなければおかしい。

 小池氏は、インタビュアーに対して、時に非常にそっけない回答をしている。
 ―意地悪な見方で恐縮ですが、彼ら(※当選した都民ファーストの会の議員)は小池知事と一緒に経験を積んだ後、国政に進出しようという計画ではないでしょうか?
 小池:それは知りません(笑)。
(小池百合子「小池百合子・東京都知事独占告白 私はマクロン 9条3項は唐突・・・」)
 ―都議選の間近、6月に入ってから自民党を離党されましたね。とはいえ、安倍晋三総理もそうかと思いますが、自民党の中には小池知事との連携に大きな期待を寄せている人たちもいるのではないでしょうか。
 小池:さあ。(同上)
 政治とは非常に複雑なプロセスである。多様な考え方を持つ様々な利害関係者が形成する網の目をかいくぐり、ある者は押し、ある者からは引くという微妙で繊細な駆け引きが必要である。こうした、選挙戦以上に泥臭い調整プロセスを経て、政治課題を実現していくものである。だが、小池氏は、離党したとはいえ自民党とどのような関係を構築していくのか、当選した大量の新人議員をどのように活用していくのかといったことに関する構想が描けていないのではないかと思ってしまう。もっとも、小池氏には達成したい政治的課題がはっきりとあるわけではないから、その実現ルートを検討するというところまで頭が回らないのは致し方ないのかもしれない。

 小池氏のやり方は、旧民主党のやり方にも通じるところがある。旧民主党が政権を奪取した時、最初にやったのは八ッ場ダムの建設見直しであった。八ッ場ダムについては、政府と自治体、地元住民が何十年も議論を重ねて、ようやく建設合意に達したところであった。それを、前原誠司氏の一言でストップさせてしまった。地元の失望は計り知れないものがあった。小池氏は就任直後、築地市場の豊洲移転問題を延期したが、この構図は八ッ場ダムとそっくりである。
 豊洲問題では、長い間かけて都庁や市場関係者が移転合意をとりつけ、さあ移転という時に、突如都知事として乗り込んできたあなたに、ぶち壊されてしまいました。民主党が政権を取った途端に、八ッ場ダム建築中止を決めた構図にそっくりです。(中略)結局、大騒ぎして、八ッ場ダムの建築は再開され、計画は大幅に遅れて竣工いたしました。
(犬伏秀一「拝啓 小池百合子さま 「自分ファースト」になっていませんか?」)
 結局、豊洲移転が計画から大幅に遅れて進行することになった点まで、八ッ場ダム問題とそっくりである。短期的に成果を出すために、国民や住民が注目しやすい政策に目をつけ、大幅なコストカットをちらつかせる(そして、結果的にはそのコストカットに失敗する)。これが旧民主党のやり方であり、小池氏のやり方でもある。ここまで書いてきたことを総合すると、私の眼には、小池氏は小泉純一郎氏と旧民主党の嫡子であるかのように映る。

 (2)杉田水脈「スポンサーにNHKも名を連ねる 欧州の反日フリーペーパーはこんなにヒドい・・・」では、フランスを拠点に配布されている「ZOOM JAPAN」というフリーペーパーが反日左翼に傾倒していることが報告されている。ZOOM JAPANの概要は以下の通りである。
 この「ZOOM JAPAN」という名のフリーペーパーは、2010年6月創刊。フランス語圏において、日本の文化を総合的に発信する唯一の無料月刊誌とのことです。現在、フランス国内約850ヶ所に配布拠点があり、フランスを中心に毎月7万部、多い時には15万部も発行されています。英語、イタリア語、スペイン語にも翻訳され、ヨーロッパ中で配布され、Japan Expoや国際旅行博覧会の会場をはじめ、多種多様な日本関連イベント会場でも積極的に配布をされています。
 ZOOM JAPANは、表向きは日本文化に関する情報を欧州の人々に発信するという形式を取っている。しかし、その内容をよく読むと、慰安婦問題、沖縄基地問題、日本会議などに関して、事実誤認を含む左寄りの記事も相当含まれているそうだ。そして、驚くことに、このZOOM JAPANには、NHKや政府観光局も広告を出稿している。『正論』では、左派が海外で日本に不利な情報を発信していることがしばしば取り上げられる。左派にとっての総本山が国際連合であり、国連は今や反日左翼NGOの巣窟と化している(本号では、仲新城誠「反基地・山城氏VS我那覇氏 国連人権理事会での戦い」という記事で国連の内情が報告されている)。

 なぜ、左派は日本を貶めたいのだろうか?まず考えられるのは、左派にとっては国家という権力が邪魔であり、それを取り除きたいからだということである。左派の究極の目標は世界市民社会の実現であり、世界中の人々が平等に政治に関与することである。そして、アリストテレスの古代から、人間が理性を発揮できるのは政治の舞台だとされてきた。左派は、今は国家権力が独占している政治を自らの手に取り戻し、理性ある人間として生きることを目指している。

 しかし、慰安婦問題、南京事件などをめぐる左派の対応を見ていると、ひたすら中国と韓国に謝罪するばかりである。内田樹氏は、中国人や韓国人に会うと、最初に「昔の日本人がひどいことをした。深くお詫びする」と言うそうだ。この心理を紐解くと、実は、左派は国家権力をなくそうとしているわけではないように思える。「日本は三流国家である。その三流国家が中国・韓国という一流国家を害した。大変申し訳ない」という国家の上下関係が透けて見える。左派にとって国家、特に中国・韓国のような強い国家(正確には声の大きい国家)は必要なのであり、その国家にへつらうことで自己の存在空間を確保している。それはちょうど、自己否定に悩む青年が、大人に憧れるという行為で自己を辛うじて規定するというナイーブな感情に似ている。

 左派は弱者の味方である。ややもすると権力に虐げられ、政治的課題から漏れてしまいがちな弱者の声に耳を傾け、弱者のニーズを政治に反映させることを信条としている。しかしここで今度は、先ほどとは逆の優越感が顔をのぞかせる。すなわち、左派には無知な弱者のことを十分に理解する知識があり、弱者を代表して政治の舞台に立つ能力を持っていることを示したいのである。弱者をだしにして、自らの有能さを誇示しようとしているのが左派という人間である。だから、近代西欧において民主主義が成立した時、その形式は「ブルジョワ民主主義」であった。ブルジョワとは、比較的裕福な商工業者である。彼らは、弱者よりも、知識、能力、資金の面で優れている。そのブルジョワジーに反感を持った弱者が試みたのがプロレタリアート革命であった。

 つまり、国家権力の存在しない究極の平等主義を志向しているのに、自分より強い国家に対してはへこへこと媚を売り、自分より弱い者に対しては、彼らの味方を装いながら内心は彼らに対する優越感を充満させる。平等主義どころか、保守も顔負けの上下関係重視である。これが左派、特に日本における左派の実態ではないかと思う。

 (3)朝鮮半島の情勢が相変わらずきな臭いが、私は最近、どんなシナリオをとっても、朝鮮半島が共産主義国家として統一されるのは避けられないのではないかと思うようになった。

 ①アメリカが北朝鮮の核開発を容認した場合・・・北朝鮮は数年内に、アメリカ本土に届くICBMを完成させる。すると、北朝鮮はアメリカをICBMで牽制しながら、韓国併合に向けて軍事行動を起こす。ただし、この作戦は多大な犠牲を払うことになるため、実現可能性は低い。

 ②中国が金正恩体制を揺さぶった場合・・・現在、アメリカが中国を通じて北朝鮮に圧力をかけている。その結果、金正恩政権が倒れ、北朝鮮の核は放棄されるかもしれない。北朝鮮には新たな政権が誕生するが、この政権は中国の傀儡政権である。また、中国が北朝鮮に圧力をかける代わりに、中国とアメリカが密約を交わしていると言われる。具体的には、在韓米軍の縮小であろう。つまり、アメリカは韓国を捨てるということだ。しかし、これで喜ぶのは、実は親北派の韓国・文在寅大統領である。南北で軍縮が進めば、平和裏のうちに南北統一へと進むことが考えられる(以前の記事「『愚神礼讃ワイドショー/DEAD or ALIVE/中曽根康弘 憲法改正へ白寿の確信(『正論』2017年7月号)』―日本は冷戦の遺産と対峙できるか?」を参照)。

 ③トランプ大統領が金正恩党委員長と交渉した場合・・・北朝鮮の核開発が相当程度に進んだ段階で両者の交渉が実現する可能性がある。両国はまず、双方の核兵器の削減を討議する。次に、北朝鮮はアメリカに対し、金正恩体制の承認を求める。アメリカはそれを認める代わりに、韓国に手出ししないことを約束させる。さらに、交渉では、北朝鮮が国境付近でソウルに向けている大量の大砲もテーブルに上がる。北朝鮮がこれらの砲台を削減する一方で、アメリカは在韓米軍の削減を約束する。すると、②と同様に、南北で軍縮が進むことになるため、南北統一の可能性が見えてくる(以前の記事「『韓国新政権と東アジアの未来/住宅保障 貧困の拡大をくいとめるために(『世界』2017年7月号)』―びっくりするほど呑気なリベラル、他」を参照)。

 元々、朝鮮半島が南北に分裂しているのが異常事態であったわけで、その両国が、社会主義国家がよいかどうかという点はともかく、統一されるということは、ノーマルな状態に戻ることを意味する。ただし、朝鮮半島に社会主義国家が誕生するということは、日本と朝鮮半島が資本主義と社会主義、別の言い方をすればアメリカと中国・ロシアの代理戦争の場になるリスクを秘めている。だから、以前の記事「『愚神礼讃ワイドショー/DEAD or ALIVE/中曽根康弘 憲法改正へ白寿の確信(『正論』2017年7月号)』―日本は冷戦の遺産と対峙できるか?」で、日本は冷戦の遺産と戦う覚悟を決めなければならないと書いたわけである。

 以前の記事「マイケル・ピルズベリー『China 2049』―アメリカはわざと敵を作る天才かもしれない」で、かなりざっくりとだが下のような図を使った。アメリカとドイツは自由主義の陣営、中国とロシアは専制主義の陣営に属し、お互いに対立しているものの、実は、アメリカは中国に、ドイツはロシアに接近している。一方、同じ陣営の中でも、アメリカとドイツ、中国とロシアは決して一枚岩ではなく、時に対立をしている、ということを表した図である。この図を描いた後、親ロシアのトランプ大統領が当選し、図が崩れてしまったと思ったのだが、最近はシリア空爆や米大統領選の不正疑惑をめぐって、アメリカはロシアと距離をとっている。むしろ、アメリカは急速に中国に接近しつつあり、この図はあながち間違っていないのではないかと思っているところである。

4大国の特徴

 最近、「アメリカが中国と組む可能性」について、『正論』の中でも言及される機会が増えた。個人的に「アメリカが中国と組む」というのはどういうことなのかよく解っていなかったのだが、具体的にはこういうことではないだろうか?まず、北朝鮮問題において、前述の②のような協力をする。これが引き金となって、朝鮮半島は社会主義国家として統一される。

 次に、アメリカは、中国の一帯一路構想に本格的に賛同する。一帯一路のうち、海を通る「一路」は南シナ海を通っている。よって、アメリカが中国の一帯一路構想に本格的に賛同するということは、中国の南シナ海における一連の軍事行動を容認することを意味する。さらに中国は、一帯一路構想の実現のために、アメリカに対しAIIBへの参加を強く求める。トランプ大統領はビジネスライクな人物であるから、投資対効果があれば簡単に参加OKと言うかもしれない。

 さらに米中の関係は深化し、中東と日本・中国を結ぶシーレーンの共同管理や、習近平国家主席が提案した「太平洋2分割管理」にアメリカが同意する可能性がある。ここで一番怖いのは、日本がアメリカからはしごを外されて、米中両国から日本が共通の仮想敵国と位置づけられることである。当然のことながら、日本が強固なものだと信じて疑わなかった日米同盟は破棄される。すると、日本は自主防衛へと舵を切ることになる。しかし、これは一筋縄ではいかない。
 武装中立はかっこいいですが、防衛費は現在の約5兆円から23~24兆円ほどに跳ね上がるという試算もある。それに、日米同盟を解消した瞬間に核抑止力がなくなります。核兵器の独自開発は、各国の妨害が確実なことから、10年以上かかり、実現可能性は低い。
(小川和久、矢野義昭「日本の核武装は是か非か」)
 米中は日本を仮想敵国とする。朝鮮半島の社会主義国家は日本を敵視する。つまり、日本の周りは敵だらけになる。私はここで、ウルトラC(?)として、ロシアと軍事同盟を結び、ロシアの核の傘に入るという選択肢が浮上すると考える。ロシアに対しては、同盟を結ぶ代わりに、北方領土を4島全て返還せよという交渉も可能になる。そして、先ほどの図に従えば、ロシアはドイツとつながりを深めているから、日本はロシアルートを通じて、ドイツを中心とするEUとの関係深化にも力を注ぐようになるだろう。もちろん、これはかなり過激なシナリオであり、日本としては、アメリカが簡単に中国と手を結ばないことを願うばかりである。

2017年07月17日

『韓国新政権と東アジアの未来/住宅保障 貧困の拡大をくいとめるために(『世界』2017年7月号)』―びっくりするほど呑気なリベラル、他

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世界 2017年 07 月号 [雑誌]世界 2017年 07 月号 [雑誌]

岩波書店 2017-06-08

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 以前の記事「『トランプ大統領/進まぬ憲法改正/「生前退位」でいいのか/「死刑廃止」宣言(『正論』2017年1月号)』―朴槿恵問題は一歩間違えば朝鮮半島の”革命”を引き起こしていた、他」でも書いたが、アメリカにとっては、朝鮮半島が南北に分裂したままの方が都合がよい。アメリカと中国・ロシアという大国が直接対立せず、代理戦争を朝鮮半島という狭い領域に閉じ込めておくことができるからだ。だが、最近は、アメリカがどう動いても(あるいは動かなくても)、朝鮮半島が社会主義国家として統一されることは避けられないような気がしてきた。そして、アメリカもこのことに気がついているはずである。

 まず、アメリカが動かない場合であるが、北朝鮮は国際社会の警告を無視して核兵器の開発を進める。以前の記事「『愚神礼讃ワイドショー/DEAD or ALIVE/中曽根康弘 憲法改正へ白寿の確信(『正論』2017年7月号)』―日本は冷戦の遺産と対峙できるか?」でも書いたように、北朝鮮がアメリカ本土にまで届く核兵器を開発する目的は、北朝鮮が韓国を侵略して韓国を奪取する際に、アメリカに邪魔されないようにするためである。これにより朝鮮半島が北朝鮮主導で統一された場合、韓国の財閥が握っている大量の資金が北朝鮮の核兵器に流れ、日本の隣に巨大な核兵器保有国家が誕生する恐れがある。ただ、北朝鮮としても、この作戦で犠牲になる人々があまりにも多すぎるので、実行には慎重にならざるを得ない。

 現在、アメリカは中国と協力して北朝鮮に圧力をかけている。この場合に起こりうるシナリオを以前の記事「『愚神礼讃ワイドショー/DEAD or ALIVE/中曽根康弘 憲法改正へ白寿の確信(『正論』2017年7月号)』―日本は冷戦の遺産と対峙できるか?」で書いたが、最も可能性が高いのは、金正恩政権が倒れ、親中政権が誕生するというものである。中国のおかげで北朝鮮の核武装は解除されるであろう。しかし、北朝鮮に誕生するのは中国の傀儡政権である。そして、これで喜ぶのは韓国である。文在寅大統領は生粋の親北・親中派であり、現在の韓国の世論も親北に傾いている。韓国はいきなり南北統一とはいかなくとも、連邦制など統一の道を模索するに違いない。現に、文在寅は南北の文化交流から始めることを検討しており、早速、平昌オリンピックの一部を北朝鮮で開催するとか、南北合同チームを送るなどと言っている。

 では、トランプ大統領が金正恩党委員長と交渉する場合はどうであろうか?まず、トランプは北朝鮮に対し、アメリカの方を向いている核兵器の縮小を迫る。金正恩は、その条件を呑む代わりに、アメリカ国内で北朝鮮の方を向いている核兵器の縮小を求める。ただ、米朝間交渉では、北朝鮮の方がアメリカよりもパワーを持っているため、交渉はこれだけにとどまらない。金正恩はトランプに対し、金正恩体制の承認を要求する。これに対しアメリカは、金正恩体制を承認する代わりに、北朝鮮がアメリカの同盟国である韓国に手出しをしないことを約束させる。さらに金正恩は、在韓米軍の縮小もトランプに求めるだろう。トランプはその要求を受け入れる代わりに、現在北朝鮮国境付近でソウルの方を向いている何千もの大砲を削減することを要求する。

 これによって、北朝鮮は、アメリカから核兵器で攻撃されることを心配せず、韓国の在韓米軍を恐れることなく、南北統一に向かうに違いない。「北朝鮮は韓国に手出しをしない」という約束を金正恩が破り、さらに韓国もアメリカを裏切ったことになるが、アメリカは韓国の大統領が文在寅になった時点で、ある程度覚悟を決めたのではないかと思われる。ただ、この場合も、一気に南北統一が実現するというよりは、まずは連邦制から始まると予想される。というのも、統一後の国家において、北朝鮮と韓国の政権のどちらを正統とするかという問題があるからだ。

 社会主義政権としては金正恩に分があるが、韓国民が金一族による支配をどれだけ受け入れるかは未知数である。一方の韓国政権については、韓国憲法の前文に「大韓国民は3・1運動で成立した大韓民国臨時政府の法統」を継承するとあるものの、「大韓民国臨時政府」とは1919年の3・1運動後、海外で朝鮮の独立運動を進めていた活動家によって、上海で結成された亡命組織であり、実は国際的に正統性が認められた政権ではない。内紛が絶えなかったことから国際的な評価を下げ、枢軸国・連合国双方からいかなる地位も認められず、国際的承認は得られなかったのである。その亡命政権の理念を受け継いでいるという韓国憲法の前文には無理がある。となると、現存の南北政権とは異なる第三の政権を新たに創造するしかない。

 「韓国新政権と東アジアの未来」という特集タイトルから、今後の東アジアの動静について、リアリスティックな分析を期待していたのだが、左派は拍子抜けするほど呑気であるというのが正直な印象であった。自国の北部に猛スピードで核兵器開発をする国がある中で行われた韓国大統領選挙について、「変化への熱望を集中できる革新的議題がない」(李南周「新政権が時代転換に貢献する道」)と述べられていたのには驚いてしまった。

 朝鮮半島がこのような状況にある時、日本には何ができるであろうか?私の個人的な見解は「何もしない」ということに尽きる。大国同士の対立にどっぷりと巻き込まれている小国同士の対立に、日本のような小国が安易に近づくのは危険である。というのに、左派はアメリカがキューバと国交を回復したのに倣って、日本も北朝鮮と国交を回復せよと進言する。
 現状を基本的に維持したままということは、日本は経済制裁を維持したまま、北朝鮮は核兵器を保有したまま、拉致問題の従来の回答を維持したままで、国交を樹立して、その新しい基盤の上で、一切を国交のある国同士の交渉で前進をはかるということである。
(和田春樹「北朝鮮危機と平和国家日本の平和外交」)
 自国民を拉致して殺害したかもしれず、凶悪な核兵器を持つ国とまずは国交を樹立せよと言うわけだ。例えるなら、自分の家族を誘拐して殺害した疑いがあり、現在もなお凶器を振り回す隣人とまずは仲良くせよと言っているようなものであり、無茶苦茶である。よしんば南北統一が実現して、中国寄りの国家になったとしても、その新国家が日本のような二項混合的な発想によって国創りをする、あるいはしようとしているのであれば、日本は新国家に支援の手を差し伸べる準備がある。そうではなく、中国にべったりで反米・反日を掲げ、現状と変わらないなら、古田博司氏が唱える「助けない、教えない、関わらない」という非韓三原則に従うのが賢明である。

 本号では、NHKスペシャル『憲法70年 ”平和国家”はこうして生まれた』への言及もあった。憲法9条の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」という文言はGHQ案にはなく、日本人が独自に入れた文言である。よって、平和憲法は日本人によって作られたものだ、というのが番組の趣旨であった。しかし、これは重大な事実誤認を含んでいる。

 終戦後、憲法改正に着手した日本政府は大日本帝国憲法の一部条項を修正し、陸海軍をまとめて「軍」とする、軍事行動には議会の賛成を必要とする、という規定のみを盛り込んで済ませるつもりであった。1946年(昭和21年)2月8日に憲法問題調査委員会(松本烝治委員長)がGHQに提出した「憲法改正要綱」(松本案)では、次のような条文となっている。
 憲法改正要綱
 五
  第十一条中ニ「陸海軍」トアルヲ「軍」ト改メ且第十二条ノ規定ヲ改メ軍ノ編制及常備兵額ハ法律ヲ以テ之ヲ定ムルモノトスルコト(要綱二十参照)
 六
  第十三条ノ規定ヲ改メ戦ヲ宣シ和ヲ講シ又ハ法律ヲ以テ定ムルヲ要スル事項ニ関ル条約若ハ国ニ重大ナル義務ヲ負ハシムル条約ヲ締結スルニハ帝国議会ノ協賛ヲ経ルヲ要スルモノトスルコト但シ内外ノ情形ニ因リ帝国議会ノ召集ヲ待ツコト能ハサル緊急ノ必要アルトキハ帝国議会常置委員ノ諮詢ヲ経ルヲ以テ足ルモノトシ此ノ場合ニ於テハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ報告シ其ノ承諾ヲ求ムヘキモノトスルコト
 この草案には、平和主義の要素など全くない。これに対して、GHQでは戦争と軍備の放棄の継続が画策されていた。その意思は、憲法草案を起草するに際して守るべき三原則として、最高司令官ダグラス・マッカーサーがホイットニー民政局長(憲法草案起草の責任者)に示した「マッカーサー・ノート」に表れている。その第二原則には次のようにある。
 国権の発動たる戦争は、廃止する。日本は、紛争解決のための手段としての戦争、さらに自己の安全を保持するための手段としての戦争をも、放棄する。日本はその防衛と保護を、今や世界を動かしつつある崇高な理想に委ねる。日本が陸海空軍を持つ権能は、将来も与えられることはなく、交戦権が日本軍に与えられることもない。
 9条の制定過程の紆余曲折はここでは省くが、9条の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」という文言は、第90回帝国議会の衆議院帝国憲法改正小委員会での審議過程において、芦田均によって第9条に加えられた修正(いわゆる芦田修正)であり、マッカーサー・ノートにおける「日本はその防衛と保護を、今や世界を動かしつつある崇高な理想に委ねる」が復活したものである。だから、9条は日本人の手によるものとは到底言い難い。
 小西豊治『憲法「押しつけ」論の幻』(講談社現代新書)のように、日本国憲法の「国民主権」の概念が、日本人憲法学者鈴木安蔵の発案であることを以て、日本国憲法は日本人によって作り上げた憲法だ、などと主張する向きもある。だが、これは、「憲法制定権力」の問題を無視した暴論であり、自身の主張そのものが「幻」である。日本国民から「憲法制定権力」が奪われ、全く日本国民の与り知らぬ間に憲法が強制されていた。これが歴史の真実であり、だからこそ、戦後一貫して保守派は、憲法の改正、あるいは自主憲法の制定を訴えてきたのである。
(岩田温「どうしてそうなるの?左曲がりの憲法改正論」)
月刊正論 2016年 10月号 [雑誌]月刊正論 2016年 10月号 [雑誌]
正論編集部

日本工業新聞社 2016-09-01
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 上記引用文にあるように、日本国憲法は自主憲法とはとても呼べない。右派は国防をアメリカに依存しつつ、憲法はアメリカからの押しつけだと批判する。右派は基本的に現実的でいいところ取りのスタンスであるから、こうした矛盾、アメリカに対するあべこべな態度が成立する。ところが、左派は論理的に筋が通っていないと許せないタイプなのだろう。平和主義をうたった憲法は是が非でも守りたい。しかし、それがアメリカからの押しつけであるというのでは具合が悪い。そこで、どうにかして日本人の手によるものであると言おうとしているように見える。

 NHKは以前にも重大な誤報をしている。2016年8月6日に放送された『決断なき原爆投下』がそれである。詳細は『正論』2017年2月号の有馬哲夫「驚くべきNHK特番はここにも・・・ トルーマンは原爆投下を決断していない?」をご参照いただきたいが、NHKはトルーマン大統領が原爆投下の意思決定をしていないと放送した。だが、実際には、

 ①アメリカ、イギリス、カナダの間ではケベック協定が結ばれており、原爆の開発と使用について3か国が同意していた。
 ②原爆の使用について討議し、大統領に諮問する「暫定員会」が設置されていた。
 ③トルーマンの日記には「私ほど原爆の使用に心を痛めている人間はいません」とあるが、トルーマンの日記には偽善的・自己弁護的な言葉が多く、現に「けだものと接するときはそれをけだものとして扱わなければなりません」という記述もある。
 ④皇室維持条項の入ったポツダム宣言を出せば日本が降伏すると知っていたにもかかわらず、トルーマンは敢えて皇室維持条項を削除した。

というのが事実である。

正論2017年2月号正論2017年2月号

日本工業新聞社 2016-12-28

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 衆議院においては結果において429人のうち421人でありましたが、とにかく殆ど全員に近きものをもって可決せられ、まして貴族院においてももとより深い議論はありましたが、結局において300人のうち2人を除いて298人によって可決させられたのであります。
(桐山桂一「「文一道」でゆく 憲法大臣・金森徳次郎の議会答弁(中)」)
 本号の別の箇所では、憲法大臣として連日国会の答弁に立った金森徳次郎の日記への言及もあった。帝国議会では、衆議院、貴族院のいずれにおいても、圧倒的多数の賛成によって憲法が成立したことが記されている。この事実をもって、日本国憲法は、国民が選挙で選んだ代表者によって制定された国民の手による憲法であると言いたいのだろう。しかし、実際にはこの選挙はGHQによって操作されていたことを指摘しておかなければならない。
 国会で議論されたことが重要なことであるかのように池上氏は主張しているが、これも重要な事実を隠蔽したうえでの主張に過ぎない。確かに、国会で憲法について議論がなされたのは事実だが、この国会議員の選び方にもGHQは関与していた。すなわち「公職追放」という形で、自分たちに都合の悪い政治家の立候補を不可能にしたうえでの選挙であったことを指摘しておかねば、「真実」とは言えないであろう。
(岩田温「シリーズ第10回 日本虚人列伝「池上彰」 中立を装った左翼 底の浅さが目に余る」)
正論2017年7月号正論2017年7月号

日本工業新聞社 2017-06-01

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