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プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都豊島区を拠点に、東京23区で活動する中小企業診断士(コンサルタント・トレーナー)。コンサルティングなどの仕事の実際の中身は守秘義務の関係で書くのが難しいため、書評が中心となっている点は何卒ご容赦あれ。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長を務めています)

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(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

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 持病の悪化により、今年の3月に続いて再び入院することとなりました。皆様にはご心配をおかけして申し訳ございません。復帰は8月末~9月上旬の予定です。それまでは過去の記事をお楽しみいただければと思います。
2018年01月09日

『致知』2018年1月号『仕事と人生』―「『固定型』の欧米、『成長型』の日本」が最近は逆になっている気がする


致知2018年1月号仕事と人生 致知2018年1月号

致知出版社 2018-01


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 以前、「『しなやかな交渉術(DHBR2016年5月号)』―「固定型」のアメリカ、「成長型」の日本、他」という記事を書いた。アメリカに限らず、欧米諸国の多くは「固定型」である。キリスト教が支配的であった欧米では、神が自分に似せて人間を創造したという考えが元々根づいていたが、神の絶対性とそれに等しい人間の絶対性をことさら強調するようになったのは18世紀の啓蒙主義であると思う。人間が唯一絶対の神と等しいとする思想が全体主義に陥る危険性を大いにはらんでいることは、以前の記事「【現代アメリカ企業戦略論(1)】前提としての啓蒙主義、全体主義、社会主義」などで書いた通りである。

 そこで、アメリカを中心に、この思想に修正が加えられることになった。神はそれぞれの人間の中に、その人が生まれた時点で既に、その人の完成図を埋め込んでいる。この点で、欧米諸国は「固定型」である。一方、人間は自由意思を持ち、自分はどのような人物になりたいのかを人生の早い段階で決定する。キリスト教の言葉を用いれば、人間が神と契約を結ぶ。人間の決断内容が神の埋め込んだ完成図と等しければ、つまり、神と人間との契約が正解であれば、その人は人生において大成功を収める。他方、神と間違った契約を結んでしまった人は、どんなに努力をしても報われることがない。だから、アメリカなどでは貧富の差が非常に大きくなる。

 キャリア研究の分野でよく知られている「計画された偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」を提唱したジョン・D・クランボルツは、クリントン元大統領の娘が大学の卒業式で、「私は○○になりたい。そのためには、△△と□□をする」と将来のキャリアに関する綿密な計画をスピーチで披露したことを批判したことがあった。だが、逆に言えば、そのように将来の目標を明確に設定し(つまり、神と契約を結び)、その目標からバックキャスティング的になすべきアクションを導き計画を立てていくのが普通のアメリカ人と言えるだろう。ドイツでは、幼少の段階で自分が基幹学校に通うのか、実科学校に通うのか、ギムナジウムに通うのかを選択しなければならない。その選択によって、将来の職業がほぼ決まる。これもまた、「固定型」の表れの1つである。

 欧米の「固定型」はリーダーシップにも見て取れる。アメリカの経営者は、明確な経営ビジョンを掲げてそれを社員にくまなく浸透させようとするし、自分がこれだと信じるイノベーションを半ば強制的に世界中の人々に押しつける(この辺りの詳細については、以前の記事「【現代アメリカ企業戦略論(3)】アメリカのイノベーションの過程と特徴」を参照)。アメリカのリーダーほど強引ではないが、ドイツのリーダーもなかなか押しつけがましい。ドイツ人のマネジャーに対して部下があれこれ意見すると、マネジャーに「これは私の方針だ。つべこべ言わずに黙ってやれ」と一蹴されたという話を何度か聞いたことがある。欧米のリーダーの思考は固定的である。

 これに対して、日本人は「成長型」である。日本人1人1人には神が宿っているが、その神は決して唯一絶対ではなく、むしろ多様である。自己のアイデンティティを発見すること、つまり、自分に宿った神の正体を突き止めることは、人生における重要な課題である。だが、自分の中の神は不完全な姿でしかないから、内面と対峙するだけでは神の姿を明らかにすることができない。日本の神社は、キリスト教の教会のように、人間と神が直接通信する場ではない。そこで日本人は、他者との交流という旅に出る。というのも、自分とは異なる神を宿しているであろう他者と出会うことで、学習が触発され、内面の神を知る手がかりになるからだ。日本人が様々な人と出会う中で、その人の能力は多方面に開発されていく。これが、日本人が「成長型」たるゆえんである。学習意欲が高い人が多い日本では、欧米のような極端な格差が生まれにくい。

 日本人はほぼ単一民族であるから、思考や価値観が極めて似通っているとよく言われる。確かに、阿吽の呼吸で物事が進むこともある。しかし、私は日本人こそ極めて多様性に満ちた民族ではないかと思っている。それが最も顕著に表れているのが、欧米人にはさっぱり理解できないあの「根回し」という習慣である。仮に、日本人の考えがほとんど同質であるならば、根回しなどは不要である。皆の考えていることが違うがゆえに、根回しによってその違いを浮き彫りにし、合意に向けてどのような努力ができるかという議論をしなければならない。

 日本人の「成長型」は、マーケティングにも表れている。P&Gの"Livin It"、"Workin It"キャンペーンや、文化人類学の手法を活用したエスノグラフィー・マーケティングという手法が欧米から流入するよりもずっと前から、日本企業は顧客の声をよく聞いてきた。顧客が声を発しない場合は、顧客の消費行動をつぶさに観察して、潜在的なニーズを明らかにしてきた(川上智子『顧客志向の新製品開発―マーケティングと技術のインタフェイス』〔有斐閣、2005年〕より)。こうして、顧客の繊細なニーズを汲み取り、それを自社の製品・サービスに丁寧に反映してきたのが日本企業である。日本企業は製品・サービスの改善が得意だと言われるが、欧米のイノベーティブなリーダーが「固定型」で生み出し、世界中に普及させた(押しつけた)製品・サービスに対する顧客の不満を拾い上げて、日本オリジナルの製品・サービスを「成長」させてきたと言えよう。

顧客志向の新製品開発―マーケティングと技術のインタフェイス顧客志向の新製品開発―マーケティングと技術のインタフェイス
川上 智子

有斐閣 2005-08-01

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 もっとも、最近の欧米企業は顧客の声を重視するようになっている。しかも、ITを駆使して、全世界の顧客情報を活用しようとする。だがそれは、欧米企業が「固定型」で創出したイノベーションの空白地帯を見つけ、どうすればその空白地帯を埋めて世界を制覇することができるかという観点で行われているように私には見える。それはちょうど、欧米諸国が植民地支配をする際に、西洋で普遍的とされる価値観、制度、文化を植民地に浸透させるために、植民地の実態を調査し、どうすれば彼らを”洗脳”できるかを明らかにしようとするのに似ている。日本企業の顧客情報の活用方法は、これとは全く異なる。日本の顧客情報活用は、あくまでも顧客のために行われる。これに対して、欧米企業の情報活用は、自社の野心を満たすことが目的となっている。

 ところが、最近は日本が「固定型」で、欧米の方が「成長型」になっているかもしれないと、『致知』2018年1月号を読みながら感じた。例えば、次のような記述に私は動揺する。
 數土:例えば、サッカーでも陸上でも小さい時からそればっかりやらせる日本の指導法では、20歳を過ぎたら大きく伸びないといいます。欧米では逆に、小さい時はいろんな競技をやらせて、少しずつ専門性を高めていくのだそうです。学問も同じで、文系と理系を自由に行き来できる欧米の学生は、日本の学生より大成するそうです。
(數土文夫、松田次泰「一筋の道を極める生き方」)
 確かに、メジャーリーグの選手の中には、高校時代は野球とアメリカンフットボール、野球とバスケットボールの両方をやっていたという選手が結構いる。また、日本の捕鯨を批判した映画『ザ・コーヴ』に対して、反証映画『ビハインド・ザ・コーヴ~捕鯨問題の謎に迫る~』を制作した映画監督・八木景子氏は次のように述べている。
 海外の方はたとえ自分の考えとは違うとしても、相手の意見を聞くことを求めています。まずはこちらの考えを伝え、そこから物事が動き出したり、クリアになっていくことのほうが多いように思います。
(八木景子「捕鯨問題にどう向き合うか 捕鯨問題から見える日本の課題」)
 トップダウン型のリーダーシップをよしとするアメリカ人や、「いいから黙ってやれ」と怒鳴るドイツ人マネジャーとは違う欧米人の像がここにはある。逆に、日本人の方が「固定型」になっていると感じさせる局面に出くわすことが最近は多い。日本人の場合、出発点が不完全であるから、不完全のまま固定化されるということは破滅的な結果を招く。欧米の企業に倣って、市場調査をせずに、顧客の声を聞かずに、新製品開発担当者自身がこれだと信じるイノベーションを作ろうとしても、日本には欧米の神のようにそのイノベーションの正しさを担保してくれる存在がいない。私はここに、日本からイノベーションが生まれない最大の理由があると考える。

 以前、「中小企業診断士が「臨在感的把握」で商店街支援をするとこうなる、という体験記」という記事で、発想が固定化している診断士の例を取り上げたが、先日商店街関係者と中華料理屋で飲んでいたらこんなことがあった。ある商店街の人が、おもむろに自分の鞄からチョコレートがたくさん詰まった袋を取り出して、店員に差し出した。聞けば、この人はいつも何らかのお菓子を持ち歩いていて、飲み屋に行くたびに店員にあげるようにしているのだと言う。

 一見すると好意的な行動にも思えるが、私は大きな落とし穴があると感じた。まず、この店員は、必ずしもチョコレートが好きとは限らない。しかも、店員は中国人であった。中国人の口に日本のチョコレートが合うかは解らない。海外旅行のお土産でもらったチョコレートを食べて、何と不味いチョコレートを外国の人は食べているのだと感じた経験がある人は結構いるだろう。チョコレートは万人受けするものではないのだ。それに、女性に多量のお菓子をあげるという行為が、女性の心理をとらえていない。もしかしたら、その女性はダイエット中かもしれないからだ。

 この商店街の人は、「こうやってお菓子をあげると、相手は絶対に悪い思いはしないんだよ」と自慢げに話していた。それに賛同している商店街関係者も多かった。商店街という、顧客と日常的に密に接触して、顧客のことを一番よく知っていなければならない立場の人が、このような固定化した考え方をしているようでは、日本の商店街の復活は遠いと思ってしまった(もっとも、彼が事前に入念なリサーチをしていて、この中華料理屋のあの店員は日本のチョコレートが大好物だという情報を入手していたならば別の話なのだが、まず間違いなくそんなことはしていないだろう。なぜなら、彼はこの中華料理屋で飲み会があることを当日に知ったからだ)。


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