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プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都豊島区を拠点に、東京23区で活動する中小企業診断士(コンサルタント・トレーナー)。コンサルティングなどの仕事の実際の中身は守秘義務の関係で書くのが難しいため、書評が中心となっている点は何卒ご容赦あれ。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
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所属組織など
◆個人事務所「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ


(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

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2018年04月20日

『致知』2018年5月号『利他に生きる』―「ただ一心に聴く」ことの難しさ


致知2018年5月号利他に生きる 致知2018年5月号

致知出版社 2018-04


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 コンサルティングの現場では、顧客企業内の様々な関係者にヒアリングを行うことが多いのだが、私はどうもこのヒアリングが一向に上達しないので、悩みの1つになっている。『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2017年2月号に収録されている論文「人間特性に基づいて科学的に嘘に対処する 誰もが正直者になれる交渉術」(レスリー・K・ジョン)では、相手から本音を引き出すポイントが5つ紹介されていた。

ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2017年 11 月号 [雑誌] (「出る杭」を伸ばす組織)ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2017年 11 月号 [雑誌] (「出る杭」を伸ばす組織)

ダイヤモンド社 2017-10-10

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 ①返報しようという気持ちを促す
 人間には、誰かから情報を入手した見返りに、自分も情報を与えるという傾向が強い。相手がデリケートな情報を打ち明けたら、こちらも同じく包み隠さずに対応しようとするのが本能である。よって、まず自分の方から戦略上重要なことに関する情報をつまびらかにするとよい。

 ②適切な質問をする
 多くの交渉者は、自分が劣勢に立つ恐れのあるデリケートな情報をがっちりガードする。関連する事実を自発的に提供せず、「不作為の嘘」をつく。これを回避するには、楽観的な仮説に基づく質問(例えば、「装置は正常に動いていますよね?」)ではなく、悲観的な想定に基づく質問(例えば、「もうすぐ新しい装置に取り換える必要がありますよね?」)をするとよい。

 ③はぐらかしに要注意
 抜け目のない交渉人は、単刀直入な質問をかわすことが多い。実際に尋ねられたことではなく、「これを聞いてくれたらよかったのに」と思うことに答える。ここで、肝心の質問を思い出すように促せば、はぐらかしを見破ることができる。例えば、相手の回答を聞きながら、自分がした質問を手元で確認するという方法がある。したがって、質問のリストを作成し、相手の回答をメモするスペースを残した用紙を持って交渉に臨むとよい。答えが返ってくるたびに時間を取って、実際に自分の求めている情報が得られたかどうかを検討する。

 ④機密保持に安住しない
 プライバシーと機密情報の保持に努めようとすると、実際には相手は疑いを抱き始めて口を閉ざし、情報の共有が減る原因になりかねないことが米国学術研究会議の調査で明らかになっている。相手が率直に話してくれる可能性が高いのは、機密保持の保証を避けるか、少なくとも最低限に抑えて、何気なくその話題を持ち出した場合である。当然ながら、耳にした機密情報は守らなければならない。ただし、尋ねられない限りはそれを公言する必要もない。

 ⑤情報を漏らさせる
 ある実験では、自己の行動をズバリと尋ねられたグループに比べ、自己の行動を間接的に尋ねられたグループの方が、悪い行動を取ったことを暗に認める可能性が約1.5倍高かったという。他人に知られると都合の悪い行動に関しては、はっきり打ち明けるのではなく、うっかり漏らす可能性の方が高い。交渉の場では、間接的な問いかけによって情報を収集できるかもしれない。例えば、相手に2種類の提案をして、どちらか一方を選んでもらうという方法がある。

 随分昔に旧ブログで「インタビューはボクシングに似たり-『コンサルタントの「質問力」』」という記事を書いたが、コンサルタントは事前に立てた仮説を検証するためにヒアリングを行う。そのためにロジックツリーなどを使い、知りたいことを網羅的に洗い出した上でヒアリングに臨む。ヒアリングによって仮説とは異なる事実が明らかになった場合には、仮説の方を修正する。ただ、これまでの実務を振り返ってみると、ヒアリングを受けて仮説を修正するケースは稀で、ほとんどの場合は仮説を裏書きするためだけにヒアリングを行っていたように思える。

 前職のベンチャー企業(教育研修&組織・人事コンサルティングサービスの企業)にいた時、「自発的にキャリア開発を行っており、モチベーションが高い社員」に共通して見られる行動特性を調査するというプロジェクトがあった。プロジェクトの成果物は、顧客企業のイントラネットに掲載されることになっていた。私の上司は、その行動特性に関する仮説をあらかじめ立てて、顧客企業の社員にヒアリングを行った。ところが、ある社員が、その仮説とは全く別の行動特性を示すことが明らかになった。ヒアリングの議事録を作成した私は、その社員の回答をそのまま記録したが、上司は「これは仮説と異なるから仮説に沿うように修正せよ」と命じてきた。私は、「対象者が一言も口にしていないことを議事録に残すことはできない。まして、イントラネットに掲載するのは無理だ」と言って、上司と喧嘩になったことがある。

 若い時は血気盛んだった私も、年齢を重ねると現実的になってしまった。まず、ヒアリングで検証したい仮説を列挙する。次に、ヒアリングの時間が1時間だとすると、質問できることは最大で10個ぐらいだと考えて、仮説の中で特に優先順位が高いものをピックアップする。その後、ヒアリングの相手に関する情報を集める。その上で、「こういう相手ならこの質問に対してこう答えるだろう」といった具合に、1時間の想定問答を頭の中でシミュレーションする。ヒアリングでは、できるだけシミュレーション通りに問答を進める。仮説から外れる情報については、一応メモを取るものの、後で「見なかったことにしている」。私もコンサルタントとしてはまだまだ未熟である。

 もっと相手の話を「聴く」ということに集中しないといけない。今月号の『致知』には、河合隼雄に学んだ臨床心理士・皆藤章氏のインタビュー記事が掲載されていた。
 皆藤:話を聴いている、というと「聴けばいいんですか」「誰にでもできることですね」と思う人がいらっしゃるでしょうけど、私が意識しているのは命懸けで話を聴くということです。先ほども少し触れましたが1人の人の声に50分間、ひたすら耳を傾けます。「ああしたらいい、こうしたらいい」という話は一切しません。週1回の話が長い人になると20年以上続くこともあります。
(鈴木秀子、皆藤章「人々の命に寄り添い続けて」)
 命懸けで聴くと言っても、具体的にどうすればよいか、想像力の乏しい私にはイメージが湧かない。そう思って過去の『致知』を読み返していたところ、2017年5月号にヒントがあった。
 横田:私の師匠で、円覚寺の先代管長である足立大進老師は、新しい若い住職が寺に入った時に必ずこう言っていました。和尚たる者、言葉は3つだけでいいんだと。1つは誰かが訪ねてきたら、ただ「ああ、そう」「ああ、そう」と話を聞きなさい。とことん話を聞いて、それが嬉しい話だったら、最後に「よかったね」。辛い話だったら「困ったね、大変だったね」。この「ああ、そう」「よかったね」「困ったね、大変だったね」の3つだけでいい。それ以外のことは言うなと。
(横田南嶺、相田一人「相田みつをの残した言葉」)
致知2017年5月号その時どう動く 致知2017年5月号

致知出版社 2017-05


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 「聴く」ことに徹すると言うと、相手にあれこれとたくさん質問をしなければいけないように感じてしまう。以前に「【城北支部青年部】元Hondaの企画屋がやってきたコミュニケーション(勉強会報告)」という記事の中で、「(『内的傾聴』の反対である)『集中的傾聴』をしていると、質問が勝手に浮かんでくる」などと書いたが、実は質問が自然に湧き出てくるようになるまでには相当な訓練が必要である。たくさんの「聴く」を体感しなければ、その境地に至ることはできない。だが、「ああ、そう」、「よかったね」、「困ったね、大変だったね」の3つだけであれば実践できそうである。まずは、この3つの言葉を使い分けることに集中して、聴く訓練を重ねてみたいと思う。

 おそらく、コンサルタントが時間節約のために、ヒアリングをしながらメモを取るのもよくないのだろう。メモを取る時は、何を書くべきかを考えることになり、肝心の「聴く」ということに集中できない。だから、ヒアリング中はメモを取るのを止めてみようかと思う。前述の3つの言葉(「聴く」訓練を重ねたら、これらに加えて、『集中的傾聴』によって自然と浮かんでくる質問)を使って、相手の話を最大限に引き出すように努力する。それをボイスレコーダーに記録して、後からじっくりと書き起こす。ボイスレコーダーを出すと相手が委縮する場合があるが、何かの証拠のために使うわけではなく、聴き手である自分が聴くことに集中するためであること、また相手の話の聴き洩らしがないようにすることが目的であることを説明して、相手の理解を得るようにする。

 ただ、こういう形でヒアリングをする場合、怖いのが「沈黙」である。沈黙が続くと、相手との信頼関係が壊れてしまうのではないかと感じる。そして、沈黙を埋めるために余計な質問をしてしまう。時にその質問が、相手の答えを誘導することになる。この点に関して、私の大好きな『水曜どうでしょう』のディレクターである嬉野雅道氏が面白いことを言っていた。嬉野Dは最近、「嬉野珈琲店」なるものを運営している。コラム、エッセイ、旅日記などがメインだが、嬉野Dがこだわりのコーヒーを淹れながらファンと一緒に読書をするといったイベントも開催している。嬉野Dは、「1杯のコーヒーを媒介としてコミュニケーションが成立する。もし沈黙が続いた場合でも、1杯のコーヒーがあれば、お互いにそれを口にして、再びコミュニケーションに戻ってくることができる」と語っていた。私も、ヒアリングの際にはコーヒーやお茶を持ち込んでみることにしよう。

 命懸けで聴くことは、最終的には「祈り」につながるという。
 鈴木:私には祈ることの意味を感じた1つの出来事があります。40歳前後でしょうか、1人の男性が人生に行き詰って、医者の紹介で私のところにお見えになったことがあります。その人は船に乗って世界を回っているのですが、時々家に帰ると、幼い我が子が母親に虐待されていた。子供たちは体中アザだらけの状態で「お父さんのところに行きたい」と訴えるというんです。

 だけど、子供たちを船に連れていくことはできません。両方の親も亡くなっていて子供たちを預けることもできない。私と男性が向き合って、長い沈黙が続いた後、男性はふっと顔を上げて「いま決心がつきました。子供たちを施設に預けます。妻も病院で治療を受けられるよう手配を整えます」と言いました。(中略)

 それで、彼が立ち上がって帰ろうとする時、私は「何もしてあげられませんが、あなたのためにずっと祈り続けます。お子さんのためにも奥さんのためにも祈り続けます」と言ったんです。そうしたら彼は「自分のために祈ってくれる人がこの世に1人でもいれば、生き抜くことができます」と言って突然、わーっと大声を上げて泣き出し、椅子に座りこみ、かなり長いこと涙を出し続けていました。この彼との出会いは、祈りを大切に生きてきた私に大きな励ましの力を与えてくれました。
(鈴木秀子、皆藤章「人々の命に寄り添い続けて」)
 コンサルタントも困っている顧客企業とその社員を助けるのが仕事である。だから、彼らの懐に深く入り込み、心の奥底の声に耳を傾け、「彼らにとってよい結果となりますように」と祈る―これが理想のヒアリングというものではないだろうか?顧客企業のため、顧客中心・顧客志向と言いながら、結局のところ自分の仮説にとって都合のよい情報だけを恣意的に取捨選択するような独善的なヒアリングとはそろそろおさらばしなければならない。


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