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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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2017年11月21日

『正論』2017年11月号『日米朝 開戦の時/政界・開戦の時』―ファイティングポーズは取ったが防衛の細部の詰めを怠っている日本


正論2017年11月号正論2017年11月号

日本工業新聞社 2017-09-30

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 以前の記事「『天皇陛下「譲位の御意向」に思う/憲法改正の秋、他(『正論』2016年9月号)』―日本の安保法制は穴だらけ、他」、「『北朝鮮”炎上”/日本国憲法施行70年/憲法、このままなら、どうなる?(『正論』2017年6月号)』―日本はアメリカへの過度の依存を改める時期に来ている」、「『愚神礼讃ワイドショー/DEAD or ALIVE/中曽根康弘 憲法改正へ白寿の確信(『正論』2017年7月号)』―日本は冷戦の遺産と対峙できるか?」で、アメリカは北朝鮮がアメリカ本土に届く核兵器(ICBM)を完成させるのを待っている、北朝鮮が核兵器を完成させれば、かつてアメリカが旧ソ連と行ったのと同様に核軍縮に向けた対話が始まると書いたが、これは実に甘い見通しだったと反省している。

 冷戦時代にアメリカと旧ソ連、NATOと旧ソ連の間で核軍縮に向けた対話が実現したのは、双方が核に関する条件を出すという交渉の対称性があったからである。同じ土俵の上で対話を行っているため、相手が譲歩すればこちらも譲歩する、あるいはこちらが譲歩すれば相手も譲歩することが期待できた。ところが、現在の米朝間の問題は、これとは性質が異なる。アメリカは北朝鮮に対し核兵器の放棄を要求する。一方の北朝鮮は、在韓米軍の撤退を要求するに違いない。つまり、交渉が非対称である。そして、双方の立場を比べると、明らかに北朝鮮の方が有利である。仮にアメリカが北朝鮮の要求を呑んだ場合、北朝鮮は通常兵器でやすやすと韓国を併合するだろう(左傾化している韓国も、北朝鮮に併合されることを望んでいるかもしれない)。

 だから、非常に危険な賭けではあるが、交渉の対称性を取り戻すためには、韓国に核兵器を持たせるという選択肢もあり得るのではないだろうか?南北双方が核兵器を保有することで、交渉を米朝間から南北間へと移行させる。そして、冷戦時代の交渉と同様に、徐々に核軍縮を進めていき、最終的には朝鮮半島から核を取り除く。この場合、米韓同盟は保たれ、在韓米軍もそのままであるから、北朝鮮は韓国に手出しをすることができない。朝鮮半島は現状維持のままで非核化されるわけだから、アメリカ、中国、日本にとっても最高のシナリオとなる。

 さて、以前の記事「『躍進トランプと嫌われるメディア(『正論』2016年7月号)』―ファイティングポーズを見せながら平和主義を守った安倍総理という策士、他」では、安保法制によって、日本はいざとなれば自国を守る意思があるというポーズを安倍首相が示したと書いたが、このポーズは空元気であって、実際には以前の記事「『天皇陛下「譲位の御意向」に思う/憲法改正の秋、他(『正論』2016年9月号)』―日本の安保法制は穴だらけ、他」で書いたように、国防の細部が詰められていない。本号でも、現在の日本に存在する穴がいくつか指摘されていた。

 ・米韓両国は最悪の事態には実力で北朝鮮の核やミサイルを防ぎ、破壊する能力を有している。ところが、日本は北朝鮮がミサイルを発射するたびに、「断じて容認できない」と繰り返し、アメリカや韓国、加えて中国やロシア、さらには国連と連携して対処することばかりを強調している。つまり、日本独自の措置が出てこない(古森義久「戦えない国家日本でいいのか」)。

 ・韓国には3万8千人の日本人が在住しており、いざという時には彼らをどのようにして避難・脱出させるのかを想定しておく必要がある。国民の中には、「安保法制が整備されたのだから、現地の日本人は自衛隊が救い出せるのではないか?」と考える人もいるが、実は自衛隊による邦人救出は相手国の同意がなければ実行することができない(薗浦健太郎「インタビュー 北朝鮮に核を放棄させる安倍官邸の国家戦略」)。それにもかかわらず、いわゆる駆けつけ警護は安保法制で可能になっている。日本人よりも外国人の生命を先に守ろうというのだから、日本も随分とお人好しな国だと思う。ちなみに、北朝鮮の拉致問題が一向に解決しないのは、法律上、自衛隊が北朝鮮の邦人救出をすることができないことも一因である。

 ・第1次安倍政権の2004年6月14日に有事法制諸法が成立したが、それ以前は外国の武力攻撃があっても国土交通省、総務省などが所管する法令が自衛隊に厳格に適用され、その行動に大きな制約をかけていた。例えば、敵の攻撃で狙われやすい空港を守ろうと、自衛隊が管理下に置きたくても、法律の壁があって実現不可能であった。では、有事法制の成立によって自衛隊が空港を自由に使えるようになったかと言うと、全くそんなことはない。

 日本には軍民共用の空港が多い。無論、海外にも軍民共用の空港はあるものの、多くは輸送機などを装備する兵站基地であり、領空侵犯対処と防空の第一線にある飛行場を軍民共用にしている例は滅多にない。その軍民共用空港で危機が高まった場合、空港にいる民間人を退去させ、土産店やレストランなどを閉鎖させ、航空会社にも民間航空機の乗り入れを自粛(場合によっては禁止)させなければならない。乗客を的確に避難させ、駐機している航空機を撤去させる場合もある。命令に従わない者の身柄拘束も想定しておかなければならない。だが、こうした手順や法的権限を整理・明記したものはない(樋口恒晴「これでは日本は守れない」)。

 ・北朝鮮が何らかのミサイルを日本に向けて発射した場合、果たして本当に迎撃できるのかどうかが問題となる。大気圏外で迎撃するイージス艦からのSM3ミサイルは1発20億円で、その数には限りがある。北朝鮮が大量のミサイルを撃ち込んだ場合には、SM3ミサイルでは撃ち漏らしが生じる可能性がある。その場合は、地上から迎撃するPAC3ミサイルがあるが、迎撃に成功してもミサイルの破片が落下して被害が出る。破片の大きさは数十キロから百キロに達する可能性がある。(麻生幾「麻生幾が語る 日本が核武装する日」)。

 SM3/PAC3ミサイルによる迎撃については、古是三春「北朝鮮の核とミサイル 徹底検証」でより具体的なシミュレーションがなされていた。やや長くなるが、要点は以下の通りである。

 ・地下サイロからなる弾道ミサイル発射用固定基地は、米韓軍がその正確な位置を把握しているため、衝突が始まれば精密誘導爆撃でたちどころに破壊される。問題は、自走発射台から発射されるミサイルである。米軍の推定では、50基の自走発射台が運用下にある場合、ローテーションを考慮するならば、1日に最大40発程度が発射される。この40発は、半分が朝鮮半島の米韓軍拠点に、残り半分が日本で最大の米軍兵站基地である横田基地に打ち込まれる。

 日本海に展開する6隻の海自イージス艦のうち、2隻はローテーション運用のために待機しているため、迎撃にあたるイージス艦は4隻となる。各イージス艦はSM3ミサイルを8発ずつ搭載しており、弾道ミサイルを8発×4隻=32発で迎撃する。1発の目標ミサイルに対して2発の迎撃ミサイルで対処するので、全て命中すれば16発の弾道ミサイルを大気圏外で破壊できる。残る4発は、PAC3ミサイルが高度10キロ、有効射程20キロで捕捉を図る。同様に1ミサイルに対し2発のミサイルを差し向けたとして、8発を要する。現在、PAC3ミサイルは二個高射群が運用しており、これらは有事が想定されれば、重要施設にそれぞれ配置される。横田基地周辺に配置されるのは一個高射群にとどまるはずで、それが持つ迎撃ミサイルは32発である。

 問題は2日目以降である。1日目と同様、20発が横田基地に差し向けられた場合、洋上では前日にSM3ミサイルを撃ち尽くしたイージス艦4隻に代わって、待機中だった2隻が計16発のSM3ミサイルで迎撃を図る。これらが撃墜できる弾道ミサイルの最大数は8発である。残り12発に対して、横田基地付近に配備された高射特科群が前日に使わずに残した24発を差し向ける。幸運ならこれで飛来した弾道ミサイルを全て破壊できるが、翌日から使用できるPAC3ミサイルはない。洋上の6隻のイージス艦でもSM3ミサイルは枯渇している。そうなると、攻撃3日目からは、北朝鮮の弾道ミサイルは何ら迎撃されずに日本に着弾することになる。

 安倍首相は安保法制でファイティングポーズを見せたまではよかったが、それ以来、上記の穴を放置したままにしている。北朝鮮がICBMを完成させるまでに残された時間は少ない。山積する諸問題を早期に解決する政治的決断が必要とされている。同時に、国民の生命を守るために最大限の措置を講ずることも不可欠である。その際に参考となるのが、永世中立国・スイスである。スイス政府は『民間防衛』という冊子をまとめており、その中に次のような記述がある。

民間防衛ーあらゆる危険から身をまもる民間防衛ーあらゆる危険から身をまもる
原書房編集部

原書房 2003-07-07

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 深く考えてみると、今日のこの世界は、何人の安全も保障していない。戦争は数多く発生しているし、暴力行為はあとを絶たない。われわれに危険がないと、あえて断言できる人がいるだろうか。
 最小限度言い得ることは、世界がわれわれの望むようには少しもうまく行っていない、ということである。危機は潜在している。恐怖の上に保たれている均衡は、十分に安全を保障してはいない。それに向かって進んでいると示してくれるものはない。こうして出てくる結論は、我が国の安全保障は、われわれ軍民の国防努力いかんによって左右される。
 日本国憲法の前文に「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とあるのとは対照的である。現在の日本の周囲には、「平和を愛する諸国民」がどれだけいるだろうか?この点、スイスは徹底的なリアリズムを貫いている。

 同書の中には、有事に備えて家庭で備蓄しておくものとして、家族1人につき米、麺類、砂糖各2キロ、食用脂肪1キロ、食用油1リットル、他にスープ、ミルク、果物、肉、魚などの缶詰、石鹸や洗剤、冬の燃料などが挙げられている。また、スイスの核シェルターは有名で、1970年代の後半、10万人を収容可能な核シェルターが工事中で話題になったことがある。200~800人程度を収容する一般シェルターなら公共の設備として至るところに設けられている。内部には医療設備、調理室や食堂、子どものための遊び場や通信施設なども用意され、万一貯水池に毒物を混入された場合は地下水をくみ上げて利用するために削岩機やコンプレッサまで備えている。

 北朝鮮の弾道ミサイル発射によってJアラートが発動した時、「地下に隠れてくださいと言われてもそんな地下はない」という声が各地から聞かれた。日本の技術力をもってすれば、政治的決断さえあればわずか2年で核弾頭つきの弾道・巡航ミサイルを配備できるそうだ(麻生幾「麻生幾が語る 日本が核武装する日」)。だが、日本では核武装に対して世論の壁が大きく立ちはだかるのは間違いない。それならば、同じ政治的決断力をもって、せめて国民を守るための地下シェルターを急ピッチで整備することが重要ではないかと思う(公共工事にあたるため、景気対策としても有効である)。そうすれば、Jアラートに対して「朝からうるさい」とか「戦争への恐怖を煽り立てる」とか文句を言うくせに、本当に北朝鮮のミサイルが日本に着弾したら「政府は何もしなかった」と批判するに違いない理不尽な国民を黙らせることができるであろう。

 《参考》占部賢志「連載・第52回 日本の教育を取り戻す 比較検証・スイスと日本 平和をいかに守るのか」(『致知』2017年11月号)

致知2017年11月号一剣を持して起つ 致知2017年11月号

致知出版社 2017-11


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