2014年03月10日
中小企業診断士が断ち切るべき5つの因習(+2個追記)
昨年5月の記事「中小企業診断士が断ち切るべき5つの因習」への補足。この記事を書いてから約1年の間に、この5つ以上に私がびっくりさせられた中小企業診断士の悪しき習慣を2つほど追記したいと思う。
(6)仕事が終わるまで自分の報酬がいくらなのか解らない
この1年の間に、知り合いの中小企業診断士からいくつか仕事を頼まれたが、これには本当に困った。金額も提示されなければ、契約書を交わすこともない。一応、同じ仲間の間での話なので無下に断ることもできず、最終的には引き受けてしまうのだけれども、こんな商習慣で動いているのはさすがに問題だろう。私が知る限り、普通の中小企業でも、一連の必要書類を揃えて明示的な取引を行っているものだ。中小企業診断士同士の取引は、中小企業以下である。
ある案件で事業計画書のレビューを引き受けた時は、担当件数と締切だけが指示されて、報酬は教えてもらえなかった。レビュー終了後、事務局から提示された報酬は、1件あたり約600円だった。1件レビューするのにだいたい30分ぐらいかかっていたから、時給換算すると約1,200円である。これでは、コンビニの深夜バイトと変わらない。最初に報酬が解っていたら、引き受けなかったかもしれない(”約”となっているのは、振込額に源泉徴収税を加えた想定報酬を担当件数で割っても割り切れず、1件あたりの正確な金額が最後まで解らなかったためである)。
また、私は昨年5月から始まって12月に終了したある調査案件の売掛金が現時点で回収できていない。それどころか、報酬の金額がまだ決まっていない。私がつけている日記によると、私はこの案件に30人日の工数を費やしている。それなりの報酬をもらわないと困るのだが、事務局からは一向に報酬の話がなく大変心配している。
なお、特段の理由がないのに発注前に金額を提示しないのは、下請代金支払遅延等防止法に反する。同法3条には「親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない」とある。
(7)コンサルティングの報酬を自ら安く設定
こういう診断士がいらっしゃると、値崩れが起きてコンサルティングの単価がどんどん下がってしまう。昨年、プロの独立診断士を育成するためのスクールの企画・立ち上げに携わったことがあるのだが、講師に支払う報酬をめぐって事務局内で議論になった。私は、前職が研修会社であったこともあり、その時の経験に基づいて「1日10万円」を主張した(これでも研修業界では安い方だと思う)。しかし、講師の報酬を上げると受講料も高くせざるをえず、同じ診断士仲間から高いお金をもらうのは忍びないという意見に押されて、最終的には「1日2万円」に落ち着いた。
この金額で割に合うと思う診断士はいないだろう。いたらどういう生活を送っているのか、逆に聞いてみたい。そもそも、報酬をあまりに安く設定すると、手抜きをする講師が出てきて、スクールの品質に関わる。だから、私は敢えて高めの報酬を設定することで、言わば講師の”尻を叩く”ことを提案したわけだ。ある講師からは、「私はもう高齢で、金儲けをしようという気持ちもないので、むしろ無償でもいい」という驚きの提案を受けた。本人は善意のつもりなのだろうが、それがかえって診断士全体の報酬水準を下げる方向に働いてしまうことにこの方は気づいていない。
私の周りには、仕事を取ってくるのが上手い、営業に長けていると評判の先生がいらっしゃる。確かに、その先生は多方面に人脈があり、様々な仕事を受注してくる。しかし、私はその先生が受注した仕事の1つに関わったのだが、診断士1人あたりの報酬が異常に安い。中小企業へのアンケート調査で、1社あたり1時間かけて調査をしても1,000円にしかならない、というケースもあった。話をよく聞くと、その先生がマージンをたくさん抜いているわけではなく、もともとの受注額が異常に低い。私のコンサルティング経験と比較すると、桁が1ケタ少ないということもザラだった。
値段を下げて受注することは誰にでもできる。それをもって営業力が長けているとは言えない。私は前職の会社で、「営業は1円でも高い価格で受注してくるのが仕事だ」と教えられた。安きで儲けるのではなく、高きで儲けなければならない。そして、高い価格に見合ったパフォーマンスを上げられるよう、必死で努力しなければならない。安易に価格を下げるのは、自らの価値を貶める自殺行為である。それでは、プロフェッショナルの名に値しないと思う。