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近藤隆雄『サービスマネジメント入門―ものづくりから価値づくりの視点へ』―「おもてなし」は顧客の心を読んでいるようで実は日本人のおしつけ、他
中小企業支援施策に関して最近感じていること(北区の中小企業施策説明会に参加して)
「神奈川県中小企業診断協会」の理論政策更新研修に行ってきた(テーマは「ものづくり」)(2/2)

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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マネジメント・フロンティア
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(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

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(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

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(以下の資格の講師をしています。
 ―ITパスポート
 ―情報セキュリティマネジメント
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 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
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2017年08月02日

近藤隆雄『サービスマネジメント入門―ものづくりから価値づくりの視点へ』―「おもてなし」は顧客の心を読んでいるようで実は日本人のおしつけ、他

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サービスマネジメント入門―ものづくりから価値づくりの視点へサービスマネジメント入門―ものづくりから価値づくりの視点へ
近藤 隆雄

生産性出版 2007-12-01

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 旧ブログの記事「サービス・デザインでは「組織の価値観」を中核に据える―『サービスマネジメント入門』」で取り上げた本書をもう一度読み返してみた。

 (1)
 ノーマンは、サービスの革新は社会革新(ソーシャル・イノベーション)だと主張している。この場合の「社会」とは、多人数が作る全体社会ではなく、複数人の人が作り出す一定の社会関係のことである。サービスの生産場面で、新しい役割と役割関係を創造して、新しい人的能力とエネルギーを活用すること、これがサービスのイノベーションなのだ。
 サービスが純粋な製造業と異なるのは、サービスの提供プロセスに顧客が参画する点である。そして、顧客の態度や能力がサービスの品質を決める。さらに、他の顧客の態度や能力が、別の人にとってのサービスの品質に影響を与えることがある。上記の引用文は穏当な表現になっているが、別の箇所ではもっと踏み込んだ記述がなされている。
 レストランやホテルでは、どんな客層の人々が利用しているかで、雰囲気や「格」といったものが決まってくる。また、人々のその場での振る舞いもまた、サービス提供場面の雰囲気やイメージの形成に影響を及ぼす。サービスの提供者にとっては、いわば「場違い」の顧客や、静かな室内で声高に話をするお客、その他ルール違反のお客などの逸脱行為をどのように処理するかが、重要な課題となることがある。企業は良質のサービス提供に責任を負っているから、サービス提供場面での「状況」のコントロールは、サービス提供の重要な役割の一部なのだ。
 要するに、自社のサービスにとって不適切な顧客は、企業側が責任を持って排除しなければならないということである。私は仕事柄、隙間時間に電源のあるカフェで仕事をすることが多いのだが、電話で大きな声で部下や顧客と長々と話をしながらパソコンを操作している人を見かけることが多い。個人的には、「でかい独り言」で非常に迷惑だから、店側には電話を禁止してもらいたいと思っている。ただ、この理由だと、カフェでの電話は不快なのに、オフィスでの電話は不快に感じないことの違いを説明できない。それに、この点に関しては色々な意見があるようで、街中や電車の中では電話ができないから、カフェで電話しているのだという声も聞く。

 しかしながら、私が思うに、オフィスを離れた場所で、長電話をしながら仕事をするというのは、仕事のやり方に問題がある。そんなにたくさん部下と電話をしなければならないのは、部下への指示や、日頃の部下の育成が不十分であったということである。顧客と長電話をしなければならないということは、商談や打合せで顧客と十分な擦り合わせができていなかったことを意味している。つまり、カフェで長電話をする人は、「私は仕事ができる人です」ではなく、「私の仕事は非効率、下手くそです」と周りに告知しているようなものなのである。カフェの中には、「他のお客様の迷惑になる」という理由で電話を禁止しているところがあるが、私は、顧客が自身の生産性を低下させるような行為をカフェが阻止するべきだと思う。

 ついでにもう1点。先日、土曜日の夜9時過ぎぐらいに、あるファーストフードチェーン店で仕事をしていたら、幼稚園か小学校低学年の子どもを連れた家族が複数組入ってきて、大声でバカ騒ぎをしていた。こういう家庭が社会の底辺の家庭なのだろうと思ってしまった。まず、幼稚園か小学校低学年の子どもならば、夜9時は風呂に入って寝る時間であるはずだ。それに、週末の夕食がファーストフードというのはあまりにも寂しい(せいぜい昼ご飯にとどめておくべきだろう)。ゲームセンターやカラオケボックスは、一定の時刻を過ぎると子どもの入店を禁止しているが、それと同様に、道徳的・倫理的観点から、ファーストフード店も顧客を制限するべきだと感じた。

 この話を私の友人にしたら、彼はファミリーレストランでの体験を話してくれた。彼が夜10時過ぎにご飯を食べていたところ、やはり同じように小さい子どもを連れた家族連れが入ってきて、子どもは店中を走り回り、大声でニンテンドーDSをし、親はスマートフォンに夢中になっていたという。彼は、「こんな家族がいるような環境がいるところで子育てができるか」と思って、その土地から引っ越してしまった。ファミリーレストランとしては、不適切な顧客のせいで、顧客を1人失ったことになる。ファミレスに限らず、最近はどの企業も売上の確保に必死であるから、どんな顧客でもなりふり構わず受け入れようとしているように見える。つまり、経済的な観点のみでビジネスをしている。しかし、企業は社会的責任を果たさなければならない。自社のサービスの特性をよく考えて、社会的な観点から適切な顧客を選別することが重要になるのではないだろうか?

 (2)旧ブログの記事「「ES向上⇒CS向上⇒利益向上」の自己強化システムについての考察-『バリュー・プロフィット・チェーン』」では、社員満足度(ES)の向上が顧客満足度(CS)の向上につながると安直な考えを書いてしまったが、その後現行ブログの記事「【議論】人材マネジメントをめぐる10の論点」でこの考えに疑問を呈するようになった。

 ESはあくまでも過去に対する評価であり、現状に満足してしまうと、今後顧客に対してよりよい製品・サービスを提供しようとするモチベーションが上がらない、という事態が想定される。よって、ESと社員のモチベーションは区別しなければならない。
 従業員の動機付けの強さと顧客満足の間には正の相関が見られるのだが、一方厳密な心理学的考察によれば、「従業員の満足度」が直接従業員の強い「動機付け」を生むとは考えられていない。(中略)研究の結果明らかなのは、動機付けが強く高い業績を上げている従業員は、仕事への満足度が高いという逆方向の関係である。
 「社員のモチベーション向上⇒CS」という因果関係は存在する可能性がある。一方、モチベーションが高い社員はESが高いが、ESが高いからといってモチベーションが高いとは限らない、ということである。私自身は、現在の仕事に多少不満を持っている社員の方が、モチベーションが高いという仮説を持っている。ただし、ここで言う不満とは、給与などの待遇が悪い、作業環境に問題がある、職場での人間関係が上手くいっていないといった、企業の内部環境に起因する不満ではない。「このままでは顧客を満足させる品質水準に達しない」、「競合他社に追い抜かれる」、「代替品の登場によって市場が消滅する恐れがある」といった、外部環境の視点から見た不満である。このような不満(というか危機感)がモチベーション向上につながると推測する。

 CSも同様であって、一般にはCSが上昇すると再購入率が高くなるとされるが、CSが過去に対する評価であるのに対し、再購入率は将来の購買意欲である。業種によっては顧客満足度と再購入率の間には相関関係がないことが知られている(例えば、自動車など)。CSと再購入率をつなぐには、何か新しい因子を間に挟む必要があるように思える。ただし、残念ながら、それが何であるのかは今のところ解らない。本書ではその因子の候補として「顧客ロイヤリティ」が挙げられていたものの、CSとの違いがあまり判然としない印象であった。以上をまとめると、「社員の不満(危機感)⇒社員のモチベーション向上⇒CS向上⇒(何か新しい因子)⇒再購入率向上」という関係が成り立つのではないかと考える。

 (3)
 わが国でホスピタリティという場合、「おもてなし」という日本的な価値観を反映した姿勢や態度が想定されているのではないだろうか。それは極端な場合には、顧客のことを大切にはするのだが、思い込みによる提供側の一方的な好意の押しつけがその内容となる危険性がある。
 東京五輪の誘致活動を通じて、「おもてなし」という言葉が日本人の美徳として世界に広まった。しかし、本書の著者は、おもてなしが、顧客のニーズを汲み取っているようで、実は提供者側が「こうすれば顧客が喜ぶはずだ」と思い込んでいるサービスを顧客に押しつけている可能性があると指摘する。これを読んで私が思い出したのが、次の事例である。

 北京で日本料理店を経営している日本人のA氏のお店では、日本流のおもてなし精神をサービスに反映させている。和服の中国人女性が料理を運び、日本と同じように座って皿を並べ、片づける。ところが最近、この給仕の仕方が、中国人の間で話題となった。地元の新聞は、次のような読者の声を紹介した。「服務員を低い地位に置いている。旧中国でもこんな醜い現象はなかった。国家の尊厳を損ね、服務員を侮辱している」、「自分の親にもひざまづいたことがないのに、どうして客にひざまずく必要があるのか?」 この背景には、中国も日本と同じ儒教社会、権威主義社会であるものの、自らへりくだってまで上の者に仕えるという考え方がないということがある(八代京子他『異文化トレーニング―ボーダレス社会を生きる』〔三修社、1998年〕より)。

異文化トレーニング―ボーダレス社会を生きる異文化トレーニング―ボーダレス社会を生きる
八代 京子 小池 浩子 町 恵理子 磯貝 友子

三修社 1998-02

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 個人的な見解だが、日本人というのは元々、個々の顧客に密着してその言動をつぶさに観察し、顧客のニーズを丁寧に汲み取って、1人1人の顧客に合った製品・サービスを製造・提供するのが上手な国民であったと思う。だから、大量生産が常識となっていた自動車業界であっても、トヨタは独自の生産方式を開発して多品種少量生産を実現した。それが、いつの時代からか、企業側が「これだ」と思い込む製品・サービスを顧客に押しつけるようになった。

 これは、アメリカのイノベーション経営の影響が大きいと思う。以前の記事「【シリーズ】現代アメリカ企業戦略論」などでも書いたが、アメリカのイノベーターは、「これから全世界の人々は、我が社のこの製品・サービスを使用するべきだ」と、ベンチャーキャピタルから調達した多額の資金を使って大々的にプロモーションする。それが可能なのは、イノベーターが「顧客にとって、あってもなくてもよい製品・サービス」の分野で勝負しているからである。世界中の顧客のニーズは白紙であるから、その白紙をイノベーターが自由自在に塗りつぶすことができる(ブログ別館の記事「秦充洋『プロ直伝!成功する事業計画書のつくり方』―2段階ターゲティングは興味深いがアメリカのイノベーターは最初から世界を目指す、他」を参照)。

 ところが、日本企業はこういうイノベーションが不得意である。日本企業が強いのは顧客のニーズが比較的はっきりしている「必需品」の分野である。この分野では、昔ながらの泥臭いマーケティングで戦わなければならない。それなのに、無理にアメリカの真似をした結果が、おもてなしの押しつけなのではないかと思う。もちろん、本ブログで何度か書いているように、企業は顧客のニーズに従順に従うだけでなく、顧客に対して「下剋上」(山本七平の言葉を借用)を行うことがある。これも日本企業の強みであると考える。つまり、「お客様のことを考えると、こういう製品・サービスにした方がもっと価値がある」と提案するわけである。ただし、下剋上の前提となるのは、やはり日頃から顧客をじっくりと観察・洞察することであって、それを離れて企業が勝手に顧客に何でも提案してよいというわけではない。この点は誤解してはならない。

2015年05月11日

中小企業支援施策に関して最近感じていること(北区の中小企業施策説明会に参加して)

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 先日、東京都北区の中小企業支援施策に関する説明会に参加した際、国・都道府県・市区町村で似たような施策をやっているという印象を受けた。例えば、商店街について、北区では「商店街イベント支援事業」や「商店街環境整備事業」など、様々な施策メニューを取り揃えている。

 これを、東京都の商店街支援施策や、国の商店街支援施策と比べてみると、商店街のイベントや街灯のLED化の支援、買い物難民対策など多くが3者で重複しており、補助上限額もほとんど同じである。私は、補助金というのは、市場の失敗によって苦境に陥った一部の事業者に対する一時的な救済金だと思っている。しかし、商店街の支援がこれだけ手厚いと、全国の全ての商店街が、何らかの補助金の恩恵を受けられることになっているのではないだろうか?こういう批判をかわすために、類似の補助金を国・都道府県・市区町村で分散させているような気がする。

 他にも、北区のものづくり支援策には、新規市場開拓などに向けて、新製品や新技術を開発する場合に、その研究開発に要する経費の一部を助成する「新製品・新技術開発支援事業」(補助率3分の2、補助上限200万円)というのがあるが、東京都レベルは「新製品・新技術開発助成事業」(補助率2分の1、補助上限1,500万円)などが、国レベルでは「ものづくり・商業・サービス革新補助金」(補助率3分の2、補助上限1,000万円)などがある。

 また、産学連携に関しては、北区に「産学連携研究開発支援事業」(補助率3分の2、補助上限200万円)があるのに対し、東京都は「製品開発着手支援助成事業」(補助率2分の1、補助上限100万円)を行っている。さらに、安倍首相が「日本の開業率をアメリカ・イギリス並みの10%台に引き上げる」と躍起になっている創業については、国の「創業・第二創業促進補助金」(補助率3分の2、補助上限200万円)に加えて、東京都が2015年度から創業活性化特別支援事業を立ち上げ、補助率3分の2、補助上限300万円の補助金を開始すると発表した。

 個人的には、3者が同じような施策で張り合っても仕方がないと思う。もう少しお互いの棲み分けを明確にしてはどうだろうか?まず、市区町村は地元に最も近い存在であるから、地域密着型の小規模企業を重点的に支援する。具体的には、市区町村は商店街支援施策に集中し、それ以外は都道府県や国に任せる。北区の産業経済費は約28億円だが、そのうち約20億円は金融機関の預託金であり、自由に使えない。さらに、区職員の人件費や執行残などを考慮すると、実際に使えるのは4億円ほどしかないという。その4億円を効果的に使うことが必要だろう。

 ここで、現在の商店街偏重主義は改める必要がある。中小企業庁「商店街実態調査報告書」(2013年3月)によると、全国の商店街数は約15,000、1商店街の平均店舗数は約53店であるから、商店街に入っている店舗数は約79.5万である。一方、総務省統計局「日本統計年鑑」によると、2012年の小売業の事業所数は約103万、「平成24年経済センサス」によると、サービス業(サービス関連産業B)の事業所数は約152万で、両者を合わせると約255万となる。したがって、商店街支援だけでは、商店街に属さない圧倒的多数への支援が抜け落ちてしまう。

 昨年「小規模企業振興基本法」が成立し、政府は小規模企業(製造業は社員数20名以下、商業・サービス業は5名以下)への支援を拡充する方針である。その一環として、昨年から国が「小規模事業者持続化補助金」(補助率3分の2、補助上限50万円)を実施している。

 ただ、50万円というのはちょっと小さすぎる気がする。以前の記事「【補助金の現実(2)】補助金の会計処理は、通常の会計処理よりはるかに厳しい」で述べたように、行政に提出する書類作成にはかなりの労力がかかる。加えて、行政側がその書類をチェックするための人件費や、経営支援を行う商工会議所の人件費なども考慮すれば、50万円の補助金を支払うのに、50万円の経費がかかっている疑いがある。これでは何のための補助金か解らない。

 また、この補助金は、販売力強化という目的を掲げれば何にでも使えてしまう。顧客層拡大のためにトイレを和式から洋式にするのも補助対象となるらしい。今やトイレが和式などというのは当たり前品質であり、それを補助金で賄うのはおかしな話だ。トイレを洋式に変えるだけの利益すら上げられない企業は市場から退出すべきであって、補助金で救済する理由がない。この補助金は、1件あたりの金額が小さいので、適正に利用されのたか、補助金の効果があったのかを真面目に検証するのがバカらしくなる。だから、完全なるバラマキで終わる可能性がある。

 国からは小規模企業が遠すぎて、全国に広く補助金を交付しようとするとこういう補助金になってしまうのだろう。よって、小規模企業向けの補助金は、市区町村が主体となるべきだ。その際、補助金の使途をもっと明確にし(例えば、外国人顧客向けの接客スキルのトレーニングや、顧客への付加価値向上のためのIT導入に対する補助金など)、金額を大幅に上げた方がよいと思う。各市区町村が、地元企業の特性を踏まえて、創意工夫を凝らした補助金を設計する。もちろん、市区町村の職員が補助金の投資対効果をモニタリングすることも忘れてはならない。

 都道府県は、都道府県レベルで事業を展開する中小製造業の製品開発や産学連携などの支援に特化する。北区には申し訳ないが、「新製品・新技術開発支援事業」の補助金200万円では、試作開発を行うには全然足りない。米谷雅之「わが国企業の製品開発行動―実態調査結果の検討―(1)」によれば、大阪府下の中堅・中小企業に限定されるものの、製品開発費で最も多かった回答は「1,000~5,000万円」だという。やはり、製品開発の支援には1,000万円単位の補助金が必要であり、この額が出せるのは、市区町村ではなく都道府県になると思う。

 国は、中小企業支援の大まかな方針だけ決めて、具体策は都道府県や市区町村に任せた方がいいのかもしれない。代わりに、中堅・大企業向けの補助金事業をメインとする。以前の記事「「省庁横断的な中堅・中小企業支援パッケージ説明会」と「多府省連携フォーラム」に行ってきた」でも書いたが、国は今まで手薄だった中堅企業向けの施策を拡充する方針を打ち出しているものの、まだまだ十分ではない。この分野の検討と実施にもっと労力を割いた方がいいと思う。

 国が行う中小企業支援策は、その時の政策的課題に対応したものになるだろう。現在ホットなのは海外進出である。安倍首相は「今後5年間で新たに1万社の海外進出を実現する」と明言している。よって、海外進出を支援する施策は国が主体となる(もっとも、本当に海外進出を推進すればよいのかは若干疑問を感じている。以前の記事「『北欧に学べ なぜ彼らは世界一が取れるのか/最新 買っていい株220 買ってはいけない株80/東日本大震災4年 復興よ、どこへ行く(『週刊ダイヤモンド』2015年3月14日号)』」を参照。海外進出を支援するならば、海外からの投資・輸入も促進しないと、国際的な理解が得られないのではないだろうか?)

 今後出てくると予想されるテーマは、女性の活用と事業承継である。女性の活用は大企業でも国際レベルからは程遠いのだが、中小企業ではもっと遅れている。よって、女性の雇用・福利厚生に対する助成金や、女性活用のための人事制度構築に対する補助金などが新設されるかもしれない。事業承継については、現在各都道府県に「事業引継ぎ支援センター」が設置されており、税制の見直しも行われている。また、3月には「承継円滑化法案」が閣議決定され、親族以外の第三者が事業承継する場合の特例が設けられる予定である。ただし、これらはあくまでも始まりにすぎず、今後様々な支援策が出てくると予想される。

2014年12月06日

「神奈川県中小企業診断協会」の理論政策更新研修に行ってきた(テーマは「ものづくり」)(2/2)

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 (前回の続き)

 (4)3コマ目は、茅ケ崎市にある中小製造業の社長の講演であった。神奈川の研修は、経営者の生の声が聞けるのが非常によい。だから、この3コマ目は非常に楽しみにしていた。この企業は、平成22年に設立されたばかりの非常に若い会社である。にもかかわらず、社員数よりも多い機械設備を持っている。どうやってこれだけの設備を揃えることができたのか不思議だったのだが、実は非常に面白い事業承継をしていることが解った。

 その社長はもともと別の中小製造業に在籍しており、社長も長く務めていた。だが、オーナーが高齢になったこともあり、事業承継をすることになった。ところが、その社長はオーナーの親族ではなく、社長が事業承継をする場合には、会社の機械設備などを買い取る必要があった。しかし、社長にはそれだけの資金がない。そこで、まずは社長が別会社を設立し、元の会社が新会社に対して機械設備を貸し出すという形で事業承継をしたというのである。

 なるほど、そういう事業承継もあるのかと新しい発見だった。ただ、今のところは元の企業から機械設備を借りることができているが、仮に元の企業のオーナーが亡くなり、相続によって株式が分散してしまった場合、借りていた機械設備はどうなるのか、やや不安な部分はある。

 最近は製造業で起業しようとする人が非常に少ない。創業補助金の書面審査員などをしていても、1,000万円単位の初期投資をして製造業をやろうという人を見たことがない。その社長曰く、昔は工作機械が1台あれば、仕事が勝手に舞い込んできたそうだ。しかし、現在は相当の初期投資をしないと製造業で起業できない。それだけ、参入のハードルが高い。ただ、事業承継に困っている中小製造業は非常に多いわけで、製造業で起業したい人とうまくマッチングできる仕組みがあれば、製造業での起業がもっと増えるのかもしれない。

 (5)この社長はオートバイ好きが高じて、自社ブランドでオートバイのパーツを展開している。本業は下請による部品の製造だが、自社製品を開発してみると、今までは解らなかったことがいろいろ解ったそうだ。当たり前かもしれないが、自社製品を開発すると、製品企画から製造、販売まで全て自社でやらなければならない。その大変さが身に染みたという。本業で製造している部品は、長いバリューチェーンの一部にすぎず、1つの完成品を作るためには何百という企業が関わっている。自社製品では、その何百社分の苦労を一手に引き受けなければならない。

 また、社長は20年オートバイに乗っているので、自称「最もオートバイにうるさい顧客」である。その顧客(社長)のニーズを満たすのは容易ではない。社内ではよくできた、早くできたと思っても、社長が顧客の立場から見ると、全然できていないと不満に思うことが非常に多かったそうだ。本業でも、社内の勝手な基準で満足するのではなく、常に顧客の厳しい要求を先取りしていかなければならない、と感じたという。

 (6)中小企業はしばしば連携体を組んで経営力の強化を目論むが、この企業も同世代の社長を中心に連携体を構成している。しかし、この社長は、「中小企業の連携体はなかなかうまく行かない」と本音を漏らしていた。実は、1コマ目の関東経済産業局の職員が、「中小企業政策には連携体を支援する施策が多いが、これは個社を支援するよりも政策コストが安いためである」と語っていたばかりだったので、思わず苦笑いしてしまった。

 やはり、中小企業にはそれぞれの個性や特徴があり、考え方が違うので、連携体で足並みを揃えることは容易ではないのだという。一時期、共同受注が流行った時期があったが、成功した事例を聞いたことがないともおっしゃっていた。この連携体は、一応連携体という形をとっているものの、価値観が似ている特定の企業同士が1対1でやりとりをしているのが実態だという。

 中小企業のグループ化の効果については私も強い疑問を抱いており、「『2020年のマーケティング(DHBR2014年10月号)』―日本の企業間連携は、実は「共通目的」を追わない方がよい?」などといった記事も書いたので、参考までに。


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