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DHBR2017年10月号『グローバル戦略の再構築』―日本の中小製造業がこれから海外進出する際の5つのポイント
『「最後のフロンティア」アフリカ われわれは何を学ぶのか(『一橋ビジネスレビュー』2015年SUM.63巻1号)』―アフリカ基礎データ集
『「最後のフロンティア」アフリカ われわれは何を学ぶのか(『一橋ビジネスレビュー』2015年SUM.63巻1号)』

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2017年10月24日

DHBR2017年10月号『グローバル戦略の再構築』―日本の中小製造業がこれから海外進出する際の5つのポイント


ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2017年 10 月号 [雑誌] (グローバル戦略の再構築)ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2017年 10 月号 [雑誌] (グローバル戦略の再構築)

ダイヤモンド社 2017-09-08

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 本号にはホンダの八郷隆弘代表取締役兼CEOのインタビュー記事が掲載されていた(八郷隆弘「需要地生産の理念と収益性を両立させるホンダの要諦 ローカルで愛され、グローバルで儲ける」)。ホンダは、創業者である本田宗一郎の「需要のあるところで生産する」というモットーに従って、世界6極体制(日本、中国、アジア・オセアニア、ヨーロッパ、北米、南米)を構築してきた。つまり、中国の自動車は中国で、ヨーロッパの自動車はヨーロッパで生産するという体制である。ところが、昨今は世界経済が不安定になり、各地域の需要変動が大きくなりつつあるため、例えばアジア・オセアニアで生産した自動車を南米に持っていくなど、生産能力をグローバル規模で調整し、融通し合うことを検討しているという。ただ、これは海外進出の歴史が長い大企業だからこそ直面している課題であり、また解決可能な課題であると言えよう。

 私は一応中小企業診断士なので、これから海外に進出することを検討している中小企業、特に中小製造業に向けて、今回の記事を書いてみたいと思う。製造業に注目しているのには理由がある。本号にも書かれている通り、製造業はサービス業と違い、規模の経済によって生産性を大きく向上させることができる。しばしば言われるように、昨今の深刻な経済格差を解消するには、生産性向上がカギを握っている。また、製造業には雇用の乗数効果がある。製造業の雇用を1創造すると、サービス業の雇用が1.6創造されるという。「自動車組立工場を作ると隣にウォルマートが来る。だが、ウォルマートができても自動車組立工場は来ない」という言葉もある(アイリーン・ユアン・サン「産業革命の次なる舞台 ”世界の工場”は中国からアフリカへ」より)。

 私は決してサービス業を軽視しているつもりはない。しかし、製造業は様々な機能、職能、技術の複雑な集合体であり、その経営には高度な知識とノウハウが必要とされる。よって、製造業に強い国こそが世界で高い競争力を持つと思っている。アメリカやドイツが第4次産業革命、インダストリー4.0を掲げているのは至極真っ当なことだと思う。製造業が凋落したからと言って、金融業にシフトしたイギリスがますます落ち目になってしまったのとは対照的である。最近の日本では、スマートフォンのゲームアプリで何百億円もの売上高を上げたとか、Youtuberが1億円を稼いだといったことばかりが話題になるが、私が見たい未来はそういう未来ではない。

 今回の記事では、これから海外進出する中小製造業が注意すべきポイントを5つ挙げる。1つ目は、海外市場で売れる「最終製品」を開発することである。日本の中小製造業は、最終製品を組み立てる大企業の下請として、各種部品を製造しているところが多い。しかし、大企業の工場は今や海外に移転してしまった。さらに、大企業はコスト削減のために現地のサプライヤーと新たな関係を構築している。日本に残された中小製造業が、後からその関係に割って入ることは難しい。そこで、今まで部品製造で培ってきた技術を活用して、海外市場向けの最終製品を作る。これは、アンゾフの成長ベクトルで言うところの「多角化戦略(新しい製品を新しい顧客に提供する)」に該当し、最もリスクが高いが、中小製造業が生き残るにはこれしかない。

 日本企業は、顧客に直接会い、顧客の声に耳を傾け、ニーズを丁寧に拾い上げて製品に反映させる能力に長けていると思う。アメリカ企業が大量のデータを駆使して統計的に顧客のニーズを分析したがるのとは対照的である。本号でも、海外、特に新興国では「プッシュ型戦略(企業が売りたい製品を顧客に売る戦略)」ではなく「プル型戦略(顧客を企業側に引きつける戦略)」が有効とされている。具体的には、①顧客が直接表明する怒り、いらだち、不安、苦痛を理解する、②顧客が代替品で何とかやりくりしている問題に着目する、③顧客が法律を歪曲して対応している問題に注目する、といった手法が挙げられている(クレイトン・クリステンセン他「潜在的なニーズをいかにつかむか 市場創造型イノベーション:アフリカを開拓する新手法」より)。

 中小製造業が、日本で製造していた部品と同じ部品を海外で安く製造するのではなく、全く異なる最終製品を海外で製造するのにはメリットがある。ある中小企業は、取引先の親会社からの要請に基づいて、コストダウンのために国内工場の一部を海外に移転させた。海外では何とかコスト削減に成功したが、その後親会社はとんでもないことを要求してきた。「海外でこれだけ安く作れるのだから、御社が国内で我々の日本本社に納めている部品についても、同じ価格で納品してほしい」。親会社が海外でその中小企業の海外子会社から購入している部品と、親会社が日本でその中小企業の日本工場から購入している部品は同じなのだから、親会社の要望は解らなくもない。ただ、中小企業にとっては、とても対応できる問題ではない。もしも国内と海外で別々の製品を製造していれば、こういうリスクは回避することができる。

 本号にはアフリカに関する論文がいくつか所収されていた。アフリカのリスクは、①賄賂・汚職が蔓延している、②インフラが未整備である、③能力を持った人材が欠如している、④(BOP理論で増加が予想されていた)中間層が育っていない、といったことが挙げられる。ただし、これらは程度の差はあれ、アジアの新興国にも該当することである。特に①~③の問題に対処するために、できるだけ自前主義をとるという方策がある。これが2つ目のポイントである。

 前掲のクレイトン・クリステンセン他論文では、ナイジェリアで「インドミー」というインスタント麺の製造・販売を行うドゥフィル・プリマ・フーズ(インドネシアのトララム・グループ傘下の企業)の事例が紹介されている。新興国では、原材料の横流しや、仕入先への賄賂などが頻発する。同社はこうした不正を防ぐために、外部のパートナーに頼らず、自社で原材料から製造することにした。また、ナイジェリアはインフラが未整備で工場の稼働に支障をきたしていたため、同社は電力・水道事業にも着手した。さらに、製品を納品するために、自前のトラックを活用したサプライチェーンを構築し、流通倉庫や小売店も設けた。加えて、ナイジェリアの学校を好成績で卒業した人材を採用し、自前の研修を通じて電気工学、機械工学、ファイナンスなどを教えている。

 ただ、日本で部品製造に特化し、業界のバリューチェーンの一部を占めるにすぎなかった中小製造業が、海外でいきなりバリューチェーンの全部を構築するのはハードルが高い。どうしても現地企業をパートナーとして活用せざるを得ない。そこで、川上や川下のプレイヤーに対して、強いパワーを発揮することが重要となる。原材料メーカーには、高いレベルの品質マネジメントシステムを導入してもらう。そして、定期的に工場の内部監査を行い、5Sが徹底されているかといった基本事項から始まり、高品質と低コストを両立させる製造ラインが整備されているかを直接目で見て確認する。販売店・代理店に対しては、厳しい与信管理を行い、きめ細かく業績管理をする。そして、必要に応じて契約内容やインセンティブを見直す。さらに、川上・川下の両プレイヤーに対して共通することだが、現地パートナーの人材育成に積極的に力を貸すことである。

 日本で新規事業を立ち上げる際には、顧客の生の声を吸い上げると同時に、各種機関が公表している統計データや、市場調査会社から得られる情報に基づいて、緻密な事業戦略を構想することが可能である。ところが、海外の場合は、信頼できる客観的なデータが入手できないことが多い。したがって、厳密なフィージビリティ・スタディは困難である。だから、最後は経営者の直観に頼る部分が大きくなる。ただ、1つだけ明確に決めておくべきことがある。それは「撤退基準」である。撤退基準をはっきりさせておくことが3つ目のポイントである。例えば、「進出後○○年後の累積赤字が△△円になったら撤退する」といった具合である。海外進出で失敗する企業を見ていると、撤退基準を設定しておらず、ずるずると赤字を垂れ流しているのに、「いつか事態は好転するだろう」と楽観視して、結局膨大な負債を抱えてしまう、というケースが少なくない。

 日本の新規事業がそうであるように、海外の新規事業も最初の数年間はほぼ間違いなく赤字になる。日本本社は、海外事業が軌道に乗るまでは、その赤字を補填しなければならない。補填可能な金額が撤退基準であると言えるだろう。海外事業の赤字を補填するためには、日本本社の利益を上積みする必要がある。逆説的なことだが、日本の市場が飽和状態であるから海外に進出するのに、海外事業を成功させるには日本の事業を拡大させなければならないのである。ただし、1つ朗報がある。『通商白書2012』によると、海外での売上高が増加している企業のうち、約5割が国内の売上高も増加しており、海外での売上高が減少している企業のうち、約6割が国内の売上高も減少している。つまり、海外売上高と国内売上高はトレードオフの関係というより、同じ方向に動く傾向が高いことが解っている。

 化学薬品商社である「江守グループホールディングス」は、福井市で100年以上続く名門商社であったが、2015年4月に民事再生法を適用した。同社は2000年代に入ってから中国に進出し、中国事業を積極的に拡大していた。中国事業の売上高は、日本事業の売上高をはるかに上回るまでに成長した。ところが、実は中国子会社では架空売上の計上など粉飾決算が日常的に行われており、実態は大幅な赤字であった。中国事業の実際の累積赤字が発覚すると、その額があまりにも大きすぎたため、日本本社でカバーすることができず、最後は倒産してしまった。これは、中国子会社のガバナンスが機能不全に陥っていたことと、撤退基準が明確でなかったことが重なって引き起こされた悲劇であると言えるだろう。

 4つ目のポイントは、一度ある国に進出したら、中長期的にその国にコミットメントするべきだということである。コスト削減を目的に進出する日本の大企業は、現地の賃金が上がると、すぐにもっと労賃の安い国に工場を移す傾向がある。大企業には余剰資源と体力があるから、それも可能である。しかし、中小企業にとっては、工場を頻繁に移動させることは難しい。一度その国に進出したら、10年、20年はその国でビジネスをする腹積もりでいなければならない。

 アジアの新興国では、政治家の人気取り政策によって、最低賃金が毎年10%以上上がるということも珍しくない。それに耐えられない大企業はすぐに他の国に移ってしまう。だが、これは見方を変えると、最低賃金が上がる分だけ、その国の人々の生活水準が上がるということでもある。今、この記事では、中小製造業が現地で売れる最終製品を製造・販売することをテーマとしている。現地の生活水準が上がったら、今度はより高付加価値製品にシフトしていく。今、新興国で何が売れるのか解らないわけだから、将来的にどんな高付加価値製品が売れるようになるのかを予測することは不可能に近い。しかし、新興国に進出する以上は、長い目で見た時に高付加価値製品にシフトすることも視野に入れておくことが肝要である。

 最後のポイントは、4つ目のポイントとも関連するが、進出先の国の発展に貢献するのだという意気込みを持って進出しなければならないということである。本号には、新興国で電気バイク、電気三輪車を製造・販売するテラモーターズの代表取締役社長である徳重徹氏の記事があった(徳重徹「テラモーターズは失敗から学ぶ 新興国で勝ち残る5つの鉄則」)。これによると、新興国企業のリーダーは非常に愛国心が強いという。そして、社会的意義の高い事業を行おうとしている。日本の中小製造業は彼らと競争することになる。国内市場が頭打ちだから、何となく海外の方が稼げそうだからといった生半可な気持ちで進出すると手痛い目に遭う。

 ただ個人的には、「採点審査に困る創業補助金の事業計画書(その6~10)」でも書いたように、事業の社会的価値を強調しすぎるのもいかがなものかと感じる。大言壮語でビジョンを語られると、かえって胡散臭さを感じてしまう。進出先の国の”全国民”を豊かにするといった類のビジョンは、私はかえって邪魔だと思う。それよりも、経営者が直接観察して発見した、先進国なら当然存在する製品・サービスが欠けているために困っている人たちを助けたいという”リアルな”思い、経営者が雇用したローカル社員に少しでも高い給与を払って彼らの生活レベルを上げたいという”リアルな”思いの方がはるかに重要である。そして、以前の記事「『致知』2017年10月号『自反尽己』―上の人間が下の人間に対してどれだけ「ありがとう」と言えるか?、他」でも書いたように、「この国で事業をさせていただいている」という謙虚な姿勢を忘れないことである。

 新興国は国策として外国からの投資を呼び込んでいる。よって、新興国に進出する中小製造業は、政府や行政と良好な関係を構築することが必要になる。『コークの味は国ごとに違うべきか』の著者であるパンカジュ・ゲマワットは、本号の論文で、現在各国で問題になっている収入格差を解消するために、政府は保護主義ではなく、セーフティーネットの整備、最低賃金の引き上げ、税制改革、職業訓練などを施すべきであり、企業がこれらの政策の支持を表明すれば大きなメッセージになると述べている(パンカジュ・ゲマワット「多国籍企業は混乱の中でどこに向かうべきか トランプ時代のグローバル戦略」より)。

 ただ、これはどちらかというと大企業向けの提言であり、中小製造業が実施するには困難が伴う。中小製造業は身の丈に合った形で政府の政策に協力し、社会的責任を果たせばよい。例えば、繰り返しになるが、最低賃金すれすれの賃金ではなく、社員にとって魅力的な賃金を支払うこと、また、社員に対して十分なトレーニングを実施し、能力の向上に貢献することなどである。これらの取り組み1つ1つは小さなものかもしれないが、日本の多くの中小製造業が新興国に進出するようになれば、確実にその国の発展に貢献する。

2015年08月18日

『「最後のフロンティア」アフリカ われわれは何を学ぶのか(『一橋ビジネスレビュー』2015年SUM.63巻1号)』―アフリカ基礎データ集


一橋ビジネスレビュー 2015年SUM.63巻1号一橋ビジネスレビュー 2015年SUM.63巻1号
一橋大学イノベーション研究センター

東洋経済新報社 2015-06-12

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 前回の記事「『「最後のフロンティア」アフリカ われわれは何を学ぶのか(『一橋ビジネスレビュー』2015年SUM.63巻1号)』」の続き。アフリカに関する無知を放置しても仕方がないので、基礎的なデータを集めてみた。

 ○アフリカ人口ランキング(2014年、単位:100万人)
 人口1億人超の国はナイジェリア1か国のみ。6位で人口5,000万人を切る。人口3,000万人以上の国は11か国。20か国以上が人口1,000万人未満の小国である。
アフリカ人口ランキング
 (※)IMF - World Economic Outlook Databases(2015年4月版)より。

 ○アフリカ主要国人口ピラミッド(2013年)
 ケニア、ナイジェリア、エチオピアの人口ピラミッドはきれいなピラミッド型をしている。一方、南アフリカでは既に少子化が進行している。
アフリカ主要国の人口ピラミッド
 (※)WirelessWire News「アフリカ編2013(1)急成長するアフリカ携帯電話市場の現況」(2013年9月7日)より。

 ○アフリカ名目GDPランキング(2014年、単位:10億USドル)
 1位ナイジェリアの名目GDPは、5,736億5,000万USドル=68兆8,380億円(1ドル=120円で計算)。日本の名目GDPが約500兆円なので、日本の約7分の1である。
アフリカ名目GDPランキング
 (※)IMF - World Economic Outlook Databases(2015年4月版)より。

 ○アフリカ1人あたり名目GDPランキング(2014年、単位:ドル)
 赤道ギニアとセーシェルが、世界銀行が定義する「アッパーミドル(1人あたり名目GDP15,000ドル超~35,000ドル以下)」に属する。「ローワーミドル(1人あたり名目GDP5,000ドル超~15,000ドル以下)」は8か国、残りは「低所得国(1人あたり名目GDP5,000ドル以下)」である。

 一般に、1人あたりGDPが1,000ドルを超えると、オートバイや生理用品が普及し始めると言われる。また、3,000ドルを超えると子ども用紙おむつ、家電、肉・卵・魚などのタンパク質製品が、5,000ドルを超えると自動車、医療機器(メタボや成人病が増加するため)が普及し始める。
アフリカ1人あたり名目GDPランキング
 (※)IMF - World Economic Outlook Databases(2015年4月版)より。

 ○アフリカ実質GDP成長率ランキング
 5%以上の高成長国が23か国ある。ガンビア(-0.22%)、赤道ギニア(-3.11%)、リビア(-24.03%)はマイナス成長。
アフリカ実質GDP成長率ランキング
 (※)IMF - World Economic Outlook Databases(2015年4月版)より。

 ○実質GDP成長率、1人あたり名目GDPによる分類
 実質GDP成長率と1人あたり名目GDPの2軸でマトリクスを作り、53か国を分類してみた。

 ■横軸=実質GDP成長率
  高成長(5%以上)、中成長(2%以上5%未満)、低成長(2%未満)
 ■縦軸=1人あたり名目GDP
  アッパーミドル(15,001ドル以上)、ロワーミドル(5,001~15,000ドル)、低所得国(906~5,000ドル)、貧困国(905ドル以下)
 アッパーミドル、ロワーミドル、低所得国の分類は世界銀行の分類に従った。また、貧困国については、国連開発政策委員会(CDP:United Nations Committee for Development Policy)が定める「最貧国(後発開発途上国(LDC:Least Developed Countries))」の定義の中に、「国民総所得(GNI)の 3 年平均値が905ドル以下であること」とあるのに倣った。
【アフリカ】実質GDP成長率&1人あたり名目GDPによる分類

 ○世界の対アフリカ輸入額の推移
 アメリカと中国がアフリカから買いまくっている。
世界の対アフリカ輸入額の推移
 (※)JETRO「在アフリカ進出日系企業実態調査(2012年)」より。

 ○世界の対アフリカ輸出額の推移
 グラフ上はEUが1位だが、国別にみると中国が独走している(アメリカの2倍以上)。
世界の対アフリカ輸出額の推移
 (※)JETRO「在アフリカ進出日系企業実態調査(2012年)」より。

 ○対アフリカ直接投資(FDI)(フロー/ストック)
 対アフリカの直接投資額(フロー)は年間約572億ドル(上図)、直接投資残高(ストックは約6,870億ドル(下図)となっている。参考までに、日本への海外直接投資額は年間約90億ドル、直接投資残高は約1,900億ドルである(JETRO「直接投資統計」より)。
【アフリカ】対アフリカ直接投資(フロー)

【アフリカ】対アフリカ直接投資(ストック)
 (※)UNCTADより。

 ○アフリカ投資コスト比較
 JETROが調査したエジプト、モロッコ、チュニジアの投資コストを比較してみた。いずれも1人あたりGDPは3,000~4,000ドルの国であるが、日本と比べると思ったほど安くない。

 (※)JETRO「投資関連コスト比較調査(欧州・ロシア・CIS・北アフリカ)」(2014年10月)、「第24回アジア・オセアニア主要都市・地域の投資関連コスト比較」(2014年5月)より。日本については東京のデータを採用。棒グラフの下部が白く切れているものは上限値と下限値を、通常の棒グラフは平均値を表す。単位はドル。

 (左)法定最低賃金(月額)
 (右)ワーカー賃金(月額)
【アフリカ】法定最低賃金(月額)【アフリカ】ワーカー賃金(月額)

 (左)エンジニア賃金(月額)
 (右)中間管理職賃金(月額)
【アフリカ】エンジニア賃金(月額)【アフリカ】中間管理職賃金(月額)

 (左)工業団地(土地)購入価格(1m2あたり)
 (右)工業団地借料(月額)(1m2あたり)
【アフリカ】工業団地(土地)購入価格(1m2あたり)【アフリカ】工業団地借料(月額)(1m2あたり)

 (左)事務所賃料(月額)(1m2あたり)
 (右)駐在員用住宅借上料(月額)
【アフリカ】事務所賃料(月額)(1m2あたり)【アフリカ】駐在員用住宅借上料(月額)

 (左)国際通話料金(日本向け3分間)
 (右)インターネット接続料金(ブロードバンド)
【アフリカ】国際通話料金(日本向け3分間)【アフリカ】インターネット接続料金(ブロードバンド)

 (左)産業用電気料金(1kWhあたり)
 (右)一般用電気料金(1kWhあたり)
【アフリカ】産業用電気料金(1kWhあたり)【アフリカ】一般用電気料金(1kWhあたり)

 (左)産業用水道料金(1m3あたり)
 (右)産業用ガス料金(1m3あたり)
【アフリカ】産業用水道料金(1m3あたり)【アフリカ】産業用ガス料金(1m3あたり)

 ○アフリカビジネス環境ランキング
 本号では、フロンティア・アドバイザリーが2015年3月に日本企業に対して行ったインタビューへの言及があった。「日本企業にとって近年重要となっている市場」として、ガーナ、ナイジェリア、ケニア、タンザニア、アンゴラ、ザンビア、モザンビーク、マダガスカル、南アフリカの9か国の名前が挙がったという。この9か国のビジネス環境の評価について、世界銀行の”Doing Business”からデータを取得した。世界銀行は10の項目について、全世界189か国の順位をつけている。
【アフリカ】ビジネス環境ランキング
 (※)The World Bank, "Doing Business (2015)" より。

 ○アフリカ民主主義指数
 ビジネス環境ランキングと同様に、民主主義指数も一覧化した。民主主義指数(Democracy Index)は、イギリスのエコノミスト誌傘下の研究所エコノミスト・インテリジェンス・ユニットが世界167ヶ国を対象に、各国の政治の民主主義のレベルを5つの部門から評価した指数である。
【アフリカ】民主主義指数
 (※) The Economist Intelligence Unit, "Democracy Index 2014" より。

2015年08月17日

『「最後のフロンティア」アフリカ われわれは何を学ぶのか(『一橋ビジネスレビュー』2015年SUM.63巻1号)』


一橋ビジネスレビュー 2015年SUM.63巻1号一橋ビジネスレビュー 2015年SUM.63巻1号
一橋大学イノベーション研究センター

東洋経済新報社 2015-06-12

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 (1)旧ブログの記事「気がついたら30歳になっていたよ」で、調子に乗って(?)「将来はアフリカを目指すんだ!」などと書いてしまったが、アジアのことさえちゃんと理解していないのに、アフリカを持ち出したのはいかにも恥知らずだったと反省している。

 21世紀はアジアの時代だと言われる。 アジアの人口は2011年から2050年にかけて約1.2倍の51.4億人になる。2050年の世界全体の人口は約96億人と予想されているから、2人に1人はアジア人となる計算だ。また、経済面に目を向けると、2020年にはアジア全体のGDPが38.6兆ドルとなり、世界全体(118兆ドル)の約3分の1を占めるようになる。一方でアフリカは、21世紀中にはまだ世界の中心にはなれず、22世紀以降にずれ込むのではないかという気がしている。

 海外進出の可否を判断するフレームワークに、パンカジ・ゲマワットが提唱した「CAGEモデル」というものがある。これは進出候補先の国/地域を、文化的(Cultural)、制度的/政治的(Administrative/Political)、地理的(Geographical)、経済的(Economic)という4つの視点で評価するものである。本国と進出先の国/地域で、文化的、制度的/政治的、地理的、経済的な共通点が多ければ進出は成功しやすく、逆に差異が多ければ進出の難易度が上がる。

コークの味は国ごとに違うべきかコークの味は国ごとに違うべきか
パンカジ・ゲマワット

文藝春秋 2009-04-23

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 CAGEモデルに従えば、日本にとって中国やアメリカがビジネスのしやすい国である点が十分に説明できる。日本にとって中国は、制度的/政治的には大きく異なるものの、文化的に見れば長らく日本の師であり、地理的には非常に近く、経済的にも資本主義という共通点が見られるようになっている。また、日本とアメリカは、地理的には非常に遠いけれども、残りの3つの要素については多くの点で共通する(アメリカが日本をアメリカ化した結果ではあるが)。

 日本からアフリカを見ると、文化的にはどういう共通項があるのかよく解らないし、制度的/政治的には民主主義ではなく専制政治が蔓延しているし、地理的には地球をほぼ半周しなければならないし、経済的には資本主義のシステムがどの程度根づいているのか不明である。CAGEモデルを使うと、日本にとってアフリカは進出の難易度が非常に高い地域となる。
 アフリカは長らく「暗黒大陸」、あるいは腐敗した政府の役人やビジネスパーソンがただ海外からの援助や投資を待っているような地域であり、このことが、アフリカにおいてビジネスをすることは高くつき、「リスクの高い」ものにしていると認識されてきた。この認識は結局、透明性や情報開示、さらに定期的な取引関係によってのみ是正されるしかない「未知に対する恐れ」の問題なのである。
(ミッシェル・ルイターズ、ティエリ・ジョルダーノ「紛争後/脆弱国家におけるプロジェクトファイナンス」)
 ヨーロッパ諸国は、第2次世界大戦時にアフリカに多くの植民地を保有していた。彼らにとっては、統治を通じて得られた現地体験に加え、地理的な近さもあいまって、アフリカでビジネスをすることにはそれほど抵抗がないのかもしれない。そのヨーロッパから見ても、上記引用文のようにアフリカは暗黒大陸なのである。まして日本企業にとっては、超暗黒大陸であろう。

 もちろん、一部の日本企業が非常に高い野心を持ってアメリカ市場を攻めるとか、競合他社との競争をいろいろと回避した結果アフリカに行き着いたとか、アフリカ市場の固有性に応えるような非常に競争力のある製品・サービスを持っているといった理由で、アフリカに進出することはあるだろう。しかし、日本企業がこぞってアフリカに進出するというのは、ちょっと違うというか、あまりにも時期尚早な気がするのである。

 (※)近年、中国がアフリカ諸国に積極的に投資をしている。日本も中国も、アフリカとの距離はほとんど変わらないのに、中国はどうしてアフリカに進出できるのだろうか?それは、制度的/政治的に見れば中国の共産主義政権とアフリカの独裁政治の間に共鳴する部分があり、一党独裁の下で限定的に資本主義を導入することで経済成長を遂げた中国モデルに、アフリカ諸国が憧れを持っているからであろう。ただし、中国式の開発は、アフリカの地域資源を破壊し、現地の労働力を使い捨てにするため、アフリカ各国から批判の声が上がっていると聞く。

 (2)アフリカの大部分の消費者は、いわゆるBOP(ボトム・オブ・ザ・ピラミッド)に属する。BOPというコンセプトは、ゲイリー・ハメルとともに「コア・コンピタンス経営」を提唱したC・K・プラハラードが提唱したものであり、年間2,000ドル以下で暮らす約40億人の人々が該当する。

製品・サービスの4分類(修正)

 最近よく使うこの図を再掲(以前の記事「日本とアメリカの戦略比較試論(前半)(後半)」などを参照)。それぞれの象限に該当する製品・サービスをもう少し補足する。

 (a)必需品である&製品・サービスの欠陥が顧客の生命・事業に与えるリスクが小さい=
 食品、衣料品、日用品、白物家電、不動産、飲食店、小売店、教育、ニュースメディア
 (b)必需品である&製品・サービスの欠陥が顧客の生命・事業に与えるリスクが大きい=
 自動車、輸送機器、産業機械、住宅、建設、医療、介護、製薬、IT(BtoBの基幹業務システム)、物流・輸送サービス、金融サービス(預金&貸出)
 (c)必需品ではない&製品・サービスの欠陥が顧客の生命・事業に与えるリスクが小さい=
 高機能家電(スマートフォン、PC、タブレットなど)、アパレルブランド、エンターテイメント(ディズニー、ピクサーなど)、テレビメディア、IT(BtoCのWebサービス〔Youtube、Facebook、Twitter、Instagramなど〕)、音楽、書籍、雑誌、観光、金融サービス(証券&保険)

 (※)この製品・サービスの分類はまだ暫定版であり、今後追加&修正を施す予定である。

 BOPというのは、基本的なニーズが十分に充足されていない層のことである。言い換えれば、上記の(a)の象限に該当する製品・サービスが十分に行き渡っていない。BOPビジネス戦略とは、先進国のグローバル企業が、積極的にこの象限(a)を攻めようというものである。

 だが、思うに象限(a)は、基本的には現地企業が担うべきである。新興国や途上国においては、象限(a)で例示した製品・サービスの分野で外資規制がかかっていることが多い。なぜなら、新興国や途上国にとって象限(a)は、他の象限に比べるとビジネスの難易度が比較的低く、経済発展の出発点となるからである。新興国などでは、まずは象限(a)で多くの現地企業を生み出し、その中から十分な富を蓄積した企業が象限(b)(日本やヨーロッパが強い)や象限(c)(アメリカが強い)に進出する、というシナリオを描いている。

 象限(a)を現地企業が担うのは、安全保障の観点からも意味がある。前述のように、象限(a)は国民の大多数を占める貧困層の基本的ニーズを満たすものである。それを外資企業が供給する場合、万が一外資企業が戦略転換によって現地から撤退したら、供給がストップしてしまう。外資企業は経済的な利得に従って行動したまでであり、それによって現地が困窮しようとも彼らには関係ない。そうならないようにするためにも、象限(a)を現地企業に担わせ、保護主義的な政策でガードする代わりに、簡単には撤退させないという牽制を働かせることは重要である。

 BOPビジネスというのは、(プラハラードのコンセプト自体は素晴らしかったのかもしれないが、)実際には先進国のグローバル企業が新興国や途上国の経済発展のシナリオを挫き、貧困層からなけなしの所得をかすめ取っているだけかもしれない。20世紀を振り返ると、国内の生産能力が過剰になった先進国は、新たな市場として植民地を開拓し、先進国でだぶついていた製品を現地人に大量に売りつけた。これがいわゆる帝国主義である。BOPビジネスという名で現実に行われていることは、帝国主義の亜種であるというのは言葉が過ぎるであろうか?




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