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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

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2017年04月15日

『絶望の朝鮮半島・・・/言論の自由/世界を動かすスパイ戦(『正論』2017年5月号)』―緊迫する朝鮮半島で起こりそうなあれこれ、他

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正論2017年5月号正論2017年5月号

日本工業新聞社 2017-04-01

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 『正論』2017年5月号の記事は5月にアップしようと思ったが、朝鮮半島の情勢が想像以上に緊迫してきたため、急遽4月にアップすることとした。

 (1)以前の記事「『トランプ大統領/進まぬ憲法改正/「生前退位」でいいのか/「死刑廃止」宣言(『正論』2017年1月号)』―朴槿恵問題は一歩間違えば朝鮮半島の”革命”を引き起こしていた、他」で、朝鮮半島で起こり得るシナリオのうち、最も可能性が高く、かつ日本にとって最悪なのは、今度の韓国の大統領選挙で文在寅氏などが当選して親北左派政権が誕生し、中国の支援を受けて北朝鮮あるいは韓国主導で、朝鮮半島に核兵器を持った単一の共産主義国家が誕生することだと書いた。だが、ここに来て事態は急変している。

 ①まず、アメリカは本当に北朝鮮を先制攻撃するのかという問題がある。シリアが化学兵器を使用したという理由でアメリカがシリアを空爆し、ロシアの軍事拠点を破壊したことで、親ロ路線を進んでいたトランプ政権は完全に方針転換を余儀なくされた。プーチン大統領は、現在の米ロ関係は史上最悪だとまで述べている。このタイミングで北朝鮮を攻撃すれば、次は中国をも敵に回すことになる。ロシアと中国に同時に対処できる力が今のアメリカにあるだろうか?

 ②仮にアメリカが北朝鮮を攻撃するとして、何を大義名分に掲げるのかも問題である。シリアの場合は、化学兵器禁止条約違反を理由に空爆を行った。北朝鮮の場合、核心は核兵器にあるわけだが、現在のところ、核兵器を完全に禁止する条約は存在しない。核拡散防止条約(NPT)はあるものの、北朝鮮は同条約から脱退している。よって、核兵器を保有しているという理由で攻撃するという論理は成り立たない。もっとも、北朝鮮がマレーシアで金正男氏をVXで殺害しており、化学兵器を大量に保有しているという報道もある。アメリカなら、それを口実に攻撃をして、ついでに核関連施設を破壊するということも考えそうだが、理屈としては苦しい。

 ③アメリカが攻撃をする場合は、アメリカに核兵器が飛んでくることを防ぐのはもちろんのこと、同盟国である日本や韓国に被害が及ばないようにするために、ICBM(大陸間弾道ミサイル)と短距離ミサイルの基地を集中的かつピンポイントで一斉に攻撃すると思われる。また、同時に、北朝鮮のミサイルシステムに対して、大量のサイバー攻撃を仕掛けるであろう。さらに、核のボタンを握っている金正恩氏の斬首計画も進行するはずである。これらの作戦は短期決戦で行われ、かつミスなく遂行することが要求される。

 ④トランプ大統領は、中国が北朝鮮問題のカギを握っていると述べている。先の米中首脳会談でトランプ氏は習近平氏との昵懇をアピールし、中国が北朝鮮にさらなる強力な圧力をかけてくれることを期待している。その裏では、トランプ氏が対中貿易赤字の面で中国に大幅に譲歩したと推測される。だが、中国がどのようにして協力するのかは、どの報道を見てもいまいちピンとこない。1つ言えるのは、アメリカが北朝鮮を攻撃するのを中国は黙って見ていろという約束ではないのは確かである。北朝鮮をアメリカに取られることは、中国にとってアメリカの脅威が北上することを意味するから、中国としては望ましい事態ではない。

 ここからはかなり大胆な予想であるが、アメリカは中国に対し、中国が庇護していた金正男氏を暗殺された報復として、中国が金正恩氏を斬首することを要求したのではないかと考えている。そして、中国共産党が新たに正統性を付与した政権を打ち立てる。そうすれば、中国としても、北朝鮮を従来通りアメリカとの間の緩衝地帯として活用することができる。ただし、中国と北朝鮮が今まで構築してきた深い関係は、アメリカとの貿易という金銭的な価値と天秤にかけられるような簡単なものではない。中国が約束を履行しない可能性は十分にある(そもそも、先の米中首脳会談では、共同声明すら発表されていない)。

 ⑤アメリカによる攻撃のタイミングはいつなのかも不透明である。①で述べたように、シリア問題が深刻化しているため、アメリカが今すぐに北朝鮮を攻撃する可能性は低いと見ている(と書いたそばからアメリカが攻撃するかもしれないが)。シリア問題はヨーロッパの難民問題と関係しており、世界的な問題であるという意識が共有されている。一方、北朝鮮の核問題に関しては、残念ながらそこまで至っていない。ヨーロッパ諸国は、極東の小国が好き勝手に暴れているというぐらいの認識しか持っていない。つまり、北朝鮮問題は世界的に見て優先順位が低い。それに、アメリカが北朝鮮を攻撃する場合、韓国の軍隊が投入されることになるが、韓国軍の最高指揮官である大統領は現在不在である。だから、大統領選の結果を待つ必要がある。

 ⑥北朝鮮は、アメリカが先制攻撃をしてきたら、在日米軍基地をミサイルで攻撃すると公言している。仮に日本にミサイルが飛んできた場合、日本の自衛隊はこれを迎撃できるのであろうか?これについては、私も日本の軍事情勢に詳しいわけではないため、よく解らない。ただ、本号によると、海上自衛隊は日本海に常時イージス艦を1隻警戒配置しているが、日本の迎撃技術では一度に2発しか撃てない。一方で、北朝鮮は4発以上のミサイルを同時に発射する技術を確立している。したがって、北朝鮮のミサイルのうち、一部は日本本土を直撃するリスクがある(加藤達也、古田博司「私を弾圧した朴政権の最期」より)。

 ⑦⑤で述べたように、韓国は現在大統領が不在であるから、5月の大統領選が終わって政権が落ち着いた頃でなければ、現実的には北朝鮮を攻撃できないと思われる。ただし、ここで問題なのは、冒頭でも書いたように次の政権が親北左派になった場合である。アメリカの北朝鮮攻撃に対し、韓国が寝返るかもしれない。つまり、米韓同盟を破棄し、北朝鮮とともにアメリカと戦うというシナリオである。さらに、ここに加えて、中国までもが裏切り、北朝鮮を支援するようになれば、アメリカは南北から挟撃され、非常に苦しくなる。朝鮮戦争は長期化する恐れがある。

 (2)以前の記事「山本七平『人間集団における人望の研究』―「先憂後楽」の日本、「先楽後憂」のアメリカ」などでも書いたが、日本人は基本的に利他的な人種である。他者から何かを得たければ、自分からまずは何かを他者に与える。他者から何かをしてほしくなければ、自分がまずはそれを放棄する。日本人には謙虚な姿勢で自己を犠牲にする精神が身についている。確かにこれは日本人の美徳であり、私も日本が世界に誇るべきことの1つであると思う。

 この利他的な精神、別の言い方をすればお人好しの精神は、国内だけでなく国際政治の舞台でも発揮される。以前の記事「守屋武昌『日本防衛秘録―自衛隊は日本を守れるか』―基地の必要性を国民に納得させることはできない」でも書いたように、通常は自国をどう防衛するかという議論が先にあって、その議論が成熟したのちに国際貢献を検討するものであるが、日本の場合はこの議論が逆になっている。PKO法が20世紀に成立したのに対し、安保法制はようやく2年前に成立したにすぎない。駆けつけ警護は可能であるのに、海外における邦人救出については依然としてハードルが高い(だから、北朝鮮の拉致問題が一向に解決しない)。日本の経済はもう20年ぐらいずっと横ばいで苦しい状態なのに、海外支援には熱心に資金を供給する。

 ただ、(1)でも見たように、国際政治の舞台では、日本の利他的精神が全く通用しない相手がいるという事実から目を背けることはできない。左派であれば、戦争が起きるのは各国が武器を持っているせいだから、武器を全廃しよう、日本の憲法のように平和主義を採用しようと言うだろう。だが、「日本人は相手を攻撃しないから、海外の人も同じように考えるべきだ」という主張は、利他的であるように見えて、実は自分の都合を相手に押しつけるエゴイスティックな論法である。国内の人間関係と、国家間の関係は性質が違うことを左派の人々は理解していない。

 国家間の関係は、不信、緊張が基本である。国家の主たる役割は、主権、領土、国民を守ることである。これら3要素が、いつ何時、諸外国から侵害されるか解らないという不信感を国家は抱いている。よって、国家は自ずと利己的、自己保存的にならざるを得ない。そのために、軍隊という暴力を持つ。その軍隊によって外国からの脅威を低減させることができているから、国内の人間は安心して利他的に振る舞うことができる。相手を信頼して取引をすることができる。

 ここで左派は次のように言うだろう。国家という機構があるから、軍隊という暴力が発生する。世界同時革命によって世界政府を作り、世界中の人々が平等になれば、世界中で信頼が醸成され、戦争はなくなるのではないかと言うわけである。ただし、世界中で完全なる平等を実現するには、世界中どの地域に行っても同じように作物が収穫できて食べるのに困らず、世界中どの地域に行っても同じように天然資源が入手できて産業に困らないといった状態が前提となる。ところが、現実の世界はそうはなっていない。世界各地は非常にバラエティに富んでいる。ということは、どうしても土地や資源の奪い合いが避けられない。つまり、国家が発生する。

 国家とは、領土内の資源(国民を含む)を最大限に活用して、国力を増強するためのルールを定める機構である。世界の地理は不釣り合いであるから、国家が生じる。そして、各国のルールが異なるから、国家には多様性が生まれる。世界政府を提唱したカントは、そういうルールには普遍的なルールがあると主張した。だが、実際にはそれぞれの国家が抱える資源の量や質が異なるので、各国の事情に応じたルールが策定される。さらに、それぞれの国家は、隙あらば他国との格差を埋めようと狙っている。相互不信を出発点として徐々に信頼関係を構築し、条約などを締結する。それが無理ならば暴力的な手段に出る。日本国内と同じやり方で、最初から相手を信頼して下手に出ることは命取りになりかねない。これが国際政治の現実なのである。

 (3)本号の本筋からは外れるのだが、「日本虚人列伝」という連載で内田樹氏のことが取り上げられていた。人生相談では非常に的確な助言をするのに、こと問題が政治となると、まるで頓珍漢な回答をしてしまうことを批判している記事であったが、その中にこんな記述があった。
 広告代理店に就職してみたいという学生が就職活動の準備として「何やっとけばいいんですか?」という質問をしている。(中略)

 しかし、内田氏の回答は見事だ。問題に対する「正解」を求ているこの学生は「クリエイター」に向かないから、広告代理店に就職するのは止めた方がいいというのだ。そして、「最低限これだけはやっておけばいい」という最低限の水準を求める行為そのものを「そんなことをやっていても何にもなりませんよ」と一蹴する。さらに、最低レベルだけをこなすような人間は「いくらでも換えが利く」人間であり、「ある日いなくなっても誰も困らないし、誰も気がつかない」とまで断じている。
(岩田温「日本虚人列伝 第8回「内田樹」 売れっ子思想家先生が、見当外れの政治談議をつづける理由」)
 この内容には私も同感である。以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第25回)】「顧客から100を要求されたら101を提供すればよい」というマインド」で、顧客からの要求を少し上回る成果物を出せばよいと考えているマネジャーの話をしたが、目標を立てても往々にして結果はそれを下回ることをこのマネジャーは理解していない。顧客から100を要求されたら、130ぐらいを目指さなければならない。実際には8割程度の出来にしかならないから、130×0.8で104となり、ギリギリ顧客の要求を上回ることができる。元中日監督の落合博満氏は、3割バッターは3割を目標とするのではなく、3割3分ぐらいを目標とするから3割を達成できると語っていた。

采配采配
落合博満

ダイヤモンド社 2011-11-17

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 偏差値の高い学生の中には、試験で合格点ギリギリを狙うような勉強法をする人が少なからず存在する。確かに、試験に合格するためであれば、それでよいのかもしれない。しかし、それと同じ態度を人生全般に当てはめるのはよくないと私は思う。こういう人たちは、合格するのに必要最低限の知識を効率よく学習しようとする。しかし、新しいアイデアやイノベーションは、効率的な学習からは生まれない。むしろ、非効率な学習からこそイノベーションは生まれる。

 「こんなことを覚えて何の役に立つのか?」と思えるような知識でも、とにかく貪欲に吸収する。大量に知識を覚えると、既存の知識との間で齟齬が生じるようになる。自分の記憶の中で矛盾点が存在するのは非常に気持ちが悪い。そこで、脳はその非合理性を何とか論理的に説明しようと努力する。すると、そこから新たなアイデアが生まれることがある。また、しばしば言われるように、イノベーションというのは全くの無から生まれるのではなく、既存の知識の組み合わせによって生じるものである。ということは、脳に保管されている知識の量が多いほど、知識の組み合わせのパターンは多くなり、イノベーションの源泉が豊かになる。逆に、最低限の知識で済まそうとする人の脳内は、知識がスカスカであり、良質な知識のネットワークが形成されない。

2017年02月04日

『巨頭たちの謀事/朴槿恵政権崩壊(『正論』2017年2月号)』―ますます可能性が高まった「朝鮮半島統一」に対してどう対処すべきか?

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正論2017年2月号正論2017年2月号

日本工業新聞社 2016-12-28

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 加藤:デモの原因を作った朴氏に問題の根源があることは否めませんが、韓国の次期政権が北朝鮮寄りの政権になっていくと、反日に加えて北朝鮮に従順で親中国の政権が出来てしまう。それは日本の新たな脅威になる恐れがあると思うのです。

 呉:確かにこのままだと次の大統領は野党の文在寅(ムンジェイン)だと容易に想像がつきます。文在寅はもう強烈な親北朝鮮の政治家です。政策も親北朝鮮的な政策が採られ、そうなれば韓国はもう本当に大混乱に陥ることが避けられない。中国も後ろに控えていてそれをたくみに利用する―という光景が目に浮かびます。
(加藤達也、呉善花「言論弾圧の果てに・・・韓国の自由は死んだのか」)
 以前の記事「『トランプ大統領/進まぬ憲法改正/「生前退位」でいいのか/「死刑廃止」宣言(『正論』2017年1月号)』―朴槿恵問題は一歩間違えば朝鮮半島の”革命”を引き起こしていた、他」で、北朝鮮が朴槿恵問題につけ込んで韓国を攻撃し、朝鮮半島を統一する可能性について触れた。引用文にあるように、もし韓国で親北朝鮮の大統領が誕生すれば、結果的には朝鮮半島に反日、親中の共産主義国家が建設されることになるのかもしれない。朝鮮半島問題を含めて混乱を極める世界情勢を前に、西部邁氏は「慌てるな、落ち着け、自国の保護に全精力を注げ」(西部邁「ファシスタたらんとした者」より)と日本人を鼓舞するが、残念ながら日本には自力で自国を防衛するだけの力がないと思われる。

 以前の記事「山本七平『日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条』―日本組織の強みが弱みに転ずる時(1)(2)」で、日本社会は「(神?⇒)天皇⇒立法府⇒行政府⇒市場/社会⇒企業/NPO⇒学校⇒家庭⇒個人」と階層が積み重なる多重階層社会であると書いた。だが、このラフなスケッチに私は重要な要素を1つ加えるのを忘れていた。それは、神と同レベルに、「大国」という存在を位置づけることである。日本は常に、大国から影響力を受けることで存続を守ってきた。日本史の大半において、大国の位置にあったのは中国であった。明治維新後の日本においては、当時のヘゲモニーであるドイツやフランスなどが大国の位置を占めた。そして、戦後はアメリカが大国のポジションに収まっている。この伝統を今さら変えることは極めて困難である。

 朝鮮半島が共産主義国家として統一された時、その国家は資本主義国である日本と直接対峙することになる。朝鮮の新国家のバックには中国が、日本のバックにはアメリカがついている。ここで、単純に考えれば、日米同盟をより強固なものにして、朝鮮半島の共産主義国家からの脅威に備えるべきだという主張に至るであろう。しかし、私はこの考えは非常に危険だと感じる。

 本ブログでも何度か書いたが、大国は二項対立的な発想をする。つまり、危険だと解っていながらも常に対立関係に立ち、緊張を保つ。そして、大国は、周辺の小国を自国の味方に引き込み、勢力圏を拡大していく。しかし、大国の真の狙いは、大国同士が直接衝突して甚大な被害を出すのを防ぐために、双方の大国がお互いに囲い込んだ小国同士に代理戦争をさせることにある。中東はまさに、米露の代理戦争の舞台となっている。仮に日本が日米同盟を強固にするならば、中国も朝鮮半島の共産主義国との関係を強化し、かえって日本と朝鮮半島の共産主義国との紛争のリスクが高まるだろう。これは言うまでもなく、米中の代理戦争である。

 小国が、二項対立をする大国の一方に過度に肩入れするのは自殺行為である。そうではなく、(これも決して楽な道ではないのだが、)もう一方の大国の懐にも飛び込んでいくことが重要である。中国には「日本を攻撃すると中国にとって損になる」と思わせなければならない。そのためには、具体的には中国が主導するAIIBに日本が加盟したり、中国も交渉国として名を連ねているRCEPの交渉を日本が後押ししたりすることが必要であろう。RCEPの交渉を前進させるためには、アメリカにTPPに戻ってきてもらわなければならない。ここは日本の正念場である。そして、将来的にTPPとRCEPを連携させることができれば(FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏))、トランプ次期大統領が強く批判している中国の高関税問題は相当程度に解消する。

 中国は、朝鮮半島に新しく誕生した共産主義国家と一緒になって、歴史問題を執拗に取り上げることだろう。現に、南京事件と慰安婦問題をセットにした「アジアン・ホロコースト」なる言葉を中国と韓国が世界中にばら撒いているという(大高未貴「「慰安婦、南京=ホロコースト」のウソに終止符を」より)。中国などが歴史問題にこだわるのは、日本に自虐史観を植えつけるためである。そして、朝鮮半島の共産主義国家が(中国の支援を受けて)日本を攻撃した際に、日本人に「我が国はかつて、あなた方にひどいことをしました。我が国はとても悪い国です。だから、あなた方は我が国の領土を好きなように持って行って結構です」と言わせるためである。

 彼らには、いくら真実を主張しても通らない。中国などのプロパガンダを信じていた諸外国は、多少は認識の誤りを正すだろうが、肝心の中国はより一層プロパガンダに力を入れるに違いない。だから、歴史問題を処理するには、東アジアの外交で時折使われる「棚上げ」という技法を使うしかない。以前、韓国との間で「慰安婦問題の不可逆的解決」という合意がなされたが、これも一種の棚上げである。棚上げをするには何か条件が必要となるものの、あいにく私には妙案がない(日本のAIIB加盟が条件となる?)。また、棚上げもおそらく一時的なものに留まるであろう。慰安婦をめぐる韓国との合意も、大統領が代われば反故にされると言われている。それでも、中国の攻撃の手を緩めるために、韓国と同様の棚上げを検討するのは無価値ではないと思う。

 つまり、日本が生き残る道は、依然としてアメリカを神と同レベルに位置づけ、アメリカの(軍事的、経済的)影響力を受けつつも、同時に中国の(経済的)影響力も受けるという選択を取ることである。これを私は本ブログの中で「ちゃんぽん戦略」と呼んでいる。ちゃんぽん戦略は、対立する双方の大国の顔色を常にうかがい、キョロキョロする日和見主義的な戦略である。

 このように書くとみっともない戦略のように思う方もいるだろう。しかし、小国が大国の圧倒的なパワーに押しつぶされずに生き残るには、これ以外に有効な手だてが思いつかない。事実、世界の小国はちゃんぽん戦略を駆使してしたたかに生き延びている。ベトナムはロシアとの関係が深いが、同時にかつて戦争で自国をめちゃくちゃにしたアメリカとも合同軍事演習を行う仲である。フィリピンでは、ドゥテルテ大統領がアメリカをこき下ろし、中国にべったり寄り添う姿勢を見せたものの、結局は本鞘に収まった。賢い小国は大国を手玉に取っている。

 朝鮮半島をめぐっては、もう1つ重大なシナリオを検討しておかなければならない。それは、アメリカと中国が手を組んで、日本がはしごを外されるという事態である。本号でもその可能性について言及している箇所がある(西尾幹二、中西輝政「歴史問題はなぜ置き去りにされているのか」)。もっとも、米中が手を組んだ世界とは一体どんなものなのか、想像力が貧困な私には予想がつかない。米中は本当に、太平洋を二分割して統治するつもりなのだろうか?また、南シナ海のシーレーンを米中で共同管理するとでも言うのだろうか?

 日本は、神と同レベルに位置していたアメリカという存在を失う。そして、現実問題として、米中が朝鮮半島の共産主義国家を巻き込んで日本を包囲したら最悪である。前述の通り、日本は神と同じレベルで何らかの大国を崇めないと生き残ることができない。米中を失ったとすると、日本が頼ることのできる残りの大国はロシアしかない。以前の記事「『非立憲政治を終わらせるために―2016選挙の争点(『世界』2016年7月号)』―日本がロシアと同盟を結ぶという可能性、他」では、日露同盟があり得るのではないかと書いた。日露同盟が成立すれば、択捉島、国後島にロシア軍の駐留を認める代わりに、4島一括返還をさせることができるかもしれない。

 現在、安倍総理はロシアとの関係構築に熱心であるが、日本はオプションの1つとしてロシア研究にもっと投資することを真剣に検討した方がよい。もちろん、ロシアから学ぶのは忌まわしき共産主義ではない。ソ連から共産主義を取り除いた時に残る純粋なロシアである。ソ連から共産主義を吸収した時代を除けば、日本がロシアから熱心に学んだ時代がもう1つある。それは江戸時代後期である。ロシアから通商を求めて使節が度々訪日していた頃、例えば平田篤胤はロシアとの外交機密文書を大量に収集してロシアに学ぼうとしていた。篤胤は、ロシア語学習ノートを自分で作成するほどの熱の入れようであった。ロシアは帝国主義的で領土拡大に余念がないが、一方では仁徳ある国王が統治する国であるというのが篤胤の見方であった。

 18世紀末に大黒屋光太夫が帰国してからは、ロシアに対する日本人のイメージが大きく転換したという。従来の脅威としてのロシア、潜在的貿易相手国としてのロシアというイメージに加えて、憧れの国としてのロシアイメージが生まれた。同時に、ロシアを理想化し、畏怖することで新たな脅威のイメージも出てきた。江戸時代後期のロシア研究は、それほど長く続かなかったと思われる(明治時代に入るとプツリと途切れた?)。しかし、今回のロシア研究は、東アジアの情勢次第では、相当に腰を据えて行う必要が出てくる可能性がある。

 《参考》川久保剛、星山京子、石川公彌子『方法としての国学―江戸後期・近代・戦後』(北樹出版、2016年)

方法としての国学―江戸後期・近代・戦後 (叢書 新文明学3)方法としての国学―江戸後期・近代・戦後 (叢書 新文明学3)
川久保剛 星山京子 石川公彌子

北樹出版 2016-04-08

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2017年01月27日

【現代アメリカ企業戦略論(補論)】日本とアメリカの企業戦略比較

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アメリカ

 《これまでの記事》
 【現代アメリカ企業戦略論(1)】前提としての啓蒙主義、全体主義、社会主義
 【現代アメリカ企業戦略論(2)】アメリカによる啓蒙主義の修正とイノベーション
 【現代アメリカ企業戦略論(3)】アメリカのイノベーションの過程と特徴
 【現代アメリカ企業戦略論(4)】全体主義に回帰するアメリカ?

 本シリーズの最後として、日米企業の戦略の違いについて簡単にまとめておきたいと思う。

 ①フォーカスする製品・サービス
 アメリカ企業は、「必需品でなく、かつ製品・サービスの欠陥が顧客・企業に与えるリスクが小さい」というタイプに強い。具体的には、高機能家電(スマホ、タブレットなど)、ブランド品、エンタメ、テレビメディア、IT(BtoCのWebサービス)、映画、音楽、書籍、雑誌、観光、金融(証券・保険)などが該当する。一方、日本企業は、「必需品であり、かつ製品・サービスの欠陥が顧客の生命・事業に与えるリスクが大きい」というタイプに強い。具体的には、自動車、輸送機器、産業機械、住宅、建設、医療、介護、製薬、化粧品、IT(BtoBの基幹業務システム)、物流・輸送、金融(預金・貸出)などが該当する。もちろん、アメリカ企業も厳しい品質管理を導入しているところが多い。しかし、日本企業が実践する「不良ゼロ」のための品質管理には遠く及ばない。

 ②目標の立て方
 アメリカ企業のリーダーは、イノベーションを全世界に普及させることを唯一絶対の神と約束する。したがって、戦略的目標は自ずと野心的かつ具体的なものとなる。一方、日本企業が立てる目標は曖昧であり、またそれほど野心的ではない。いつまでに実現するのかという期限を欠くことも多い。①で述べたように、日本企業は高度な品質管理が要求される必需品に強い。これらの製品・サービスは需要規模が予測しやすいため、敢えて具体的な目標を設定しなくてもよいのかもしれない。また、必需品であるということは、裏を返せば人口規模によって需要が規定されるわけだから、野心的な目標を立てづらいとも言える(必需品でない場合、余剰所得を全てその製品・サービスにつぎ込むような極端な顧客が現れて、市場規模が上振れすることがある)。

 ③製品・サービスの種類
 アメリカ企業は、イノベーション=単一の製品・サービスに全ての経営資源を集中する。それが唯一絶対の神との契約であるからだ。各国のニーズの違いは考慮しない。他方、日本は多神教文化の国である。それぞれの顧客や企業に異なる神が宿ると考えられる。だが、その神はアメリカの神と違って、不完全である。日本企業が自社に宿る神の姿を知る、つまりコア・コンピタンスを見極めようとする時、自社の内部に閉じこもって信仰を重ねても、その姿を知ることは難しい。そこで、外部に積極的に出ていく必要がある。具体的には、自社とは異なる神を宿しているであろう顧客と触れ合う。良質な学習は異質との出会いから始まる。多様な顧客を相手にするうちに、日本企業の製品・サービスは多角化していく。しかも、この学習には終わりがない。

 ④顧客理解
 アメリカ企業は、非必需品という市場動向が予測しづらい領域で勝負しているにもかかわらず、データを活用して顧客を理解しようとする。どのようなイノベーションがヒットするのかモデル化する。また、イノベーションを全世界に普及させる段階で、まだ自社のイノベーションを受け入れていない顧客層をセグメント化し、なぜイノベーションを受け入れていないのか、彼らがイノベーションを受け入れるにはどのようなマーケティング施策が有効かを分析する。これに対して日本企業は、必需品という市場動向が予測しやすい領域で勝負しているにもかかわらず、あまりデータを活用しない。むしろ、顧客と直に接することで、顕在的・潜在的なニーズを把握しようとする。データという冷たい情報よりも、顧客の生の声という温かい情報を重視する。

 ⑤政府の規制との関係
 アメリカ企業は、「必需品でなく、かつ製品・サービスの欠陥が顧客・企業に与えるリスクが小さい」という領域において、デファクト・スタンダードの確立を目指す。政府の規制とは無関係に、自社で世界標準を作ってしまう。時にその世界標準は、政府による規制を無力化する。これに対して日本企業は、「必需品であり、かつ製品・サービスの欠陥が顧客の生命・事業に与えるリスクが大きい」という領域で勝負をする。この領域では、政府が顧客の生命・事業を守るために様々な規制を課し、デジュア・スタンダードを形成している。日本企業が競争で勝つためには、政府と上手に交渉し、政府の規制が自社の製品・サービスにとって有利になるように働きかけなければならない。日本企業にとっては、顧客との関係に加えて政府との関係も非常に重要である。

 ⑥競合他社との関係
 以前の記事で、アメリカは二項対立的な発想をすると書いた。よって、アメリカ企業にとって、競合他社は徹底的に攻撃すべき対象である。ただし、相手企業を完全に打倒することまではしない。自社の戦略、ブランド、アイデンティティは、競合他社との相対性によって形成されている。攻撃対象となる競合他社が消えてしまえば、自社のアイデンティティなどを認識することが困難となり、何かと不都合である。アメリカ企業は、競合他社を完全にノックアウトする寸前で攻撃の手を止める。これに対して日本企業は、競合他社との協業をいとわない。その象徴的な存在が、日本に特有の業界団体である。業界団体においては、戦略などに関する情報が競合他社との間で積極的に共有される(アメリカにも業界団体は存在するが、その主目的はロビー活動である)。

 ⑦業界構造
 アメリカの業界はできるだけシンプルな構造を目指す。メーカーは部品を可能な限りモジュール化し、調達先を自由に入れ替えることができる単純なモデルにする。また、流通構造を簡素化し、メーカーから最終消費者まで効率的に製品・サービスを提供する。アメリカでは、シンプルなビジネスモデルを構築した企業が急成長を遂げる。一方、日本の業界構造は多段階構造となることが多い。自動車業界、IT業界、建設業界では多重下請け構造になっている。さらに、メーカーは下請企業との擦り合わせを重視する。また、流通構造もアメリカに比べて複雑である。メーカーと小売業者の間に複数の卸売業者が介在する。日本の業界は、成長性よりも安定性を重視する(安定のために多重階層構造を採用するのは、日本社会全体に見られる傾向である)。

 ⑧組織内の構造
 アメリカは、業界構造をシンプルにすると同時に、一企業内の組織構造もシンプルにする。以前の記事で書いた通り、アメリカ企業では分権化が進んでいる。しかし、同時に組織のフラット化も進んでおり、ミドルマネジメントは削減される傾向にある。これに対して日本の場合は、業界構造と同様に、組織内の構造も多重化している。アメリカから組織のフラット化というコンセプトが持ち込まれた後も、ミドルマネジメントの割合は減少するどころか増加している。そして、多重化された指揮命令系統を通じて公式のコミュニケーションを重視する企業の方が、組織のパフォーマンスが高いという研究結果もある。日本企業は、アメリカのようにトップの情報がほぼダイレクトにボトムに届くよりも、トップの情報が徐々に咀嚼されながらボトムに浸透していくことを好む。

 ⑨事業マネジメント
 ②で、アメリカ企業は野心的な目標を立てると書いた。アメリカ企業は、その野心的な目標を達成するために、何がカギを握るのか、重要な要因を特定することに力を注ぐ。CSF(Critical Success Factor:重要成功要因)やKPI(Key Performance Indicator:重要業績指標)は、こうした考え方を反映している。アメリカ企業は、CSFやKPIと最終的なゴールの因果関係を重視した事業マネジメントを行う。他方、日本企業は最終的な目標が曖昧であるがゆえに、CSFやKPIが設定できない。代わりに、「顧客や社会にとって望ましい行動」をたくさん積み重ねれば、自ずと望ましい結果が得られると考える。よって、日本の目標管理は、1つ1つの目標は達成が容易だが、評価されるためには膨大な数の目標を達成しなければならないという形で運用される。

 ⑩動機づけ
 アメリカのリーダーは、自分が信じるイノベーションを全世界に普及させることを目指す。言い換えると、自己実現を目指している。自己実現は、マズローの欲求5段階説で最上位に位置する内発的な動機づけ要因である。アメリカでは、神と正しい契約を結んだイノベーターだけが自己実現に成功するが、それでは大多数のアメリカ人にとって救いがない。そこで、分権化によってイノベーター以外の人たちにもある程度大きな権限を与え、自己実現の場を提供する。いずれにしても、アメリカ人を動機づけるのは、内発的な要因である。一方、他者との関係を重視する日本人を動機づけるのは、外発的な要因である。周囲の人から承認・評価されることが日本人にとっては最も嬉しい。さらに言えば、その評価が地位・役職という形を伴っているとなお望ましい。日本企業は、社員をポストによって動機づけるために多層化しているとも言える。


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