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『その時どう動く(『致知』2017年5月号)』―企業の「弱み」を活かした経営というものを考えられないか?
中沢孝夫『中小企業の底力―成功する「現場」の秘密』―2つの賛同と2つの疑問(前半)
『競争優位は持続するか(DHBR2013年11月号)』―戦略構想の7ポイント(に入る前の前書き)

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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(監事を務めています)

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(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

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 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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2017年05月08日

『その時どう動く(『致知』2017年5月号)』―企業の「弱み」を活かした経営というものを考えられないか?

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致知2017年5月号その時どう動く 致知2017年5月号

致知出版社 2017-05


致知出版社HPで詳しく見る by G-Tools

 今回の記事は単なる問題提起で終わっている点をあらかじめご了承いただきたい。『致知』の定期購読を始めて3年以上になるが、『致知』に登場する企業は、欧米流の経営を行う企業と、日本流の経営を行う企業とが混在していると最近は思うようになった。

 欧米流の経営においては、まずは強力なリーダーシップを持つ人間が「自分はこれがやりたい」という壮大で明確な目標を設定する。ターゲット市場は最初から全世界である。リーダーは自分が考案したイノベーションについて、「私がやりたがっていることは、世界中の人々が受け入れてくれるはずだ」という強い信念を持っている。そして、そのイノベーションを世界中に普及させるために、VCや株式市場から調達した豊富な資金を使って、大々的なキャンペーンを実施する(その手法は時に強引であるため、「ゴリ押しマーケティング」などと揶揄される)。

 リーダーは、自分が設定した壮大な目標からバックキャスティング的に計算して、いつまでにどんな目標を達成すべきか、綿密な計画を立てる。そして、それぞれの目標をクリアするためのCSF(重要成功要因:Critical Success Factor)を特定する。目標は定量的に測定可能なものであり、CSFは数が絞り込まれているほどよい。リーダーはCSFに経営資源を投入し、目標に向けて邁進する。自ずとその経営は短期志向となる。また、リーダーは目標達成に向けて人一倍努力しているわけだから、他人よりも多くの利益の分け前を要求する。リーダーが数々の目標をクリアし、当初設定した壮大な最終目標を完遂すれば、リーダーの自己実現が完結する。そして、リーダーは莫大な富を手にし、成功者の栄誉をほしいままにする。

 一方の日本流の経営では、強力なリーダーシップを持つ人がいない。顧客をはじめとする様々なステークホルダーから「あれがほしい」、「これをしてほしい」などと色々と注文を受け、それに対して受動的に反応する。したがって、欧米企業のような明確で壮大な目標を持ちづらい。ターゲット顧客も、全世界の人々を想定するといった大げさなことはしない。あくまでも、自社から顔が見える人々のために尽くすのが日本企業である(以前の記事「『繁栄の法則(『致知』2017年4月号)』―日本企業は「顧客の顔が見える経営」に回帰すべきではないか?」を参照)。

 日本企業は、企業を社会の公器として位置づけ、長く存続することをよしとする。よって、欧米企業とは対照的に、中長期的な視点での経営が行われる。と言っても、遠い未来に何か目標を設定して、そこから逆算してスケジュールを組むようなことはしない。企業として、いや人間として当たり前のことを日々1つ1つ積み重ねていけば、自ずとよい結果が得られると信じている。だから、日本企業では職場での挨拶や工場での5Sといった、企業の業績に直結しているとは考えにくい社会的・倫理的行動の数々が重視される。企業は経済的存在である前に、社会的存在でなければならない。欧米企業のように、利益を目的としない。企業やそこに勤める人々が日々善であるならば、利益は後からついてくる。しかも、その利益は非常に慎ましいものである。

製品・サービスの4分類(大まかな分類)

製品・サービスの4分類(各象限の具体例)①

製品・サービスの4分類(各象限の具体例)②

 以前の記事「【シリーズ】現代アメリカ企業戦略論」や「『イノベーション研究 これからの20年(『一橋ビジネスレビュー』2017年SPR.64巻4号)』―「製品・サービスの4分類」に関する修正案」で上図を用いたが(何度も言い訳間がしいが、まだこの図は自分の中で腹落ちしておらず、修正の余地がある)、欧米流の経営は左上の<象限③>と親和性が高い。<象限③>では顧客のニーズを先取りし、新市場を創造しなければならない。伝統的な市場調査は役に立たない。そこで、イノベーターが自らを最初の顧客に見立て、「自分ならこんな製品・サービスがほしい」と思うものを形にする。そして、「自分がこれほどほしがっているものだから、世界中の人々もきっと同じようにほしがるに違いない」と考える。そして、イノベーションによる世界征服を企む。

 一方、日本流の経営は右下の<象限②>と親和性が高い。この象限では顧客のニーズが比較的明確であるため、企業側が敢えてイノベーションで冒険をしなくてもよい(もちろん、イノベーションが全く不要であるとは言わない)。1人1人の顧客のニーズにきめ細かく応えていけば、それなりの業績は後からついてくる。ただし、<象限②>は、製品・サービスの欠陥が許されない象限である。例えば、自動車業界は不良ゼロを目指している。野球やサッカーではミスをしたチームが負けると言われるが、<象限②>ではいかなるミスも許されない。そのため、社員1人1人が一挙手一投足において、「自分は正しい行動をしたか?」と問わなければならない。

 欧米流の経営のもう1つの特徴は、「自社の強みを活かす」ことである。ドラッカーをはじめ、様々な経営学者やコンサルタントが口を酸っぱくして言っていることだ。強みの要件を整理したゲイリー・ハメル&C・K・プラハラードの「コア・コンピタンス」や、強みを評価するフレームワークであるJ・B・バーニーの「VRIO」が有名である。強みがなければ、はったりをかますこともある。
 佐藤:例えばある(※ヨーロッパの)オペラのクラスで、「この役を歌える人」と先生から聞かれた時に、私を除いて皆が一斉に手を挙げました。あとで友達に、「何で手を挙げないの」と聞かれ、歌ったことがないからと言ったら、その友達に、「歌ったことがある人なんか一人もいないわよ。経験があるかないかじゃなくて、自分に任せろって言えなきゃダメでしょ」と言われました。でも、「私、そんな嘘つけない」って(笑)。
(村上和雄、佐藤しのぶ「最高の幸せは出逢いの中にある」)
 ここで発想を逆転させて、日本流の経営では、「自社の弱みを活かす」経営ができないか?というのが私の問題提起である。というのも、人間関係においては、自分の強さばかりをアピールする人が受け入れられるとは限らないからだ。敢えて自分の弱みを告白すると、かえってその人に対する信頼感が増すことがある。
 横田:魅力ということで言えば、私は相田みつを先生が自分の弱さを平気でお書きになって、それを認めておられるところが大きな魅力だと、こう思っているんです。
(横田南嶺、相田一人「相田みつをの残した言葉」)
 ただし、「敢えて弱みを見せる」という経営は、今のところ<象限②>よりも<象限③>の方が効果がありそうである。例えば、日本の例になってしまうが、ソニーが1999年に発売したAIBOがそうである。AIBOは、その当時の最新の人工知能、64ビットのRISCプロセッサ、赤外線センサーつき1万8000ピクセルのカラーCCDカメラなどを備えたハイテク製品であった。ところが、エンジニアたちの予想通り、最先端で高度に複雑なデバイスの初期世代につきものの欠点をことごとく備えていた。内蔵ソフトに不具合が起きやすく、持ち主の命令に全く答えないこともあった。しかし、ロボットではなくペットとして売り出されたため、つまり<象限②>ではなく<象限③>の製品として売り出されたため、ユーザーから予期せぬ反応を引き出すこととなった。

 通常のロボットであれば欠陥と見なされる事象が、ペットにありがちな気まぐれな行動に見え、まるでAIBOが「自分の心を持っている」かのように感じられたのである。AIBOのユーザーはAIBOの欠陥を許し、AIBOに愛着を覚えた。雑誌に記事を書くためにAIBOをレンタルしていた人は、AIBOをソニーに返さなければならない時に非常に残念に思ったと雑誌に書いた(以上、ヤンミ・ムン『ビジネスでいちばん、大切なこと』〔ダイヤモンド社、2010年〕より)。最近の例で言えば、AppleのSiriに対して我々が抱く感情がこれに近いだろうか?

ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業
ヤンミ・ムン 北川 知子

ダイヤモンド社 2010-08-27

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 私が大好きな「水曜どうでしょう」も「敢えて自らの弱さをさらけ出す」バラエティー番組であろう。いつも「自分が考えた企画は楽しい」と言いながら、旅の途中でなぜか辛い方向に行ってしまう藤村ディレクター、その藤村ディレクターを叱咤して旅を強引に進めるものの、最後は自壊するミスター、フリートークではあれだけ人の心の先読みができるのに、料理の段取りは全くできず、またディレクター陣には何度も騙される大泉さん、カメラマンなのにブレブレの映像を平気で撮影し、挙句の果てには出演者ではなく車窓や風景にカメラを向ける嬉野ディレクターという4人に、視聴者は癒しを感じる(大泉さんは「サラリーマンの入浴剤のような存在」と言っていた)。

 「自分の弱みを見せる」ことが効果的なのは、上図にある通り、<象限③>は情緒面を重視することと関係しているのかもしれない。企業側が見せる弱みや欠陥がむしろ人間味を醸し出し、それに共感する顧客が増えていくということは十分に考えられる。では、情緒面ではなく、機能面を重視する<象限②>で「自分の弱みを見せる」経営は果たして可能なのだろうか?繰り返しになるが、<象限②>は欠陥が許されない、言わば非常に緊張感のある領域である。そこで企業の弱みを前面に打ち出す余地はあるのか?この点は引き続き考えてみたいと思う。

2014年06月16日

中沢孝夫『中小企業の底力―成功する「現場」の秘密』―2つの賛同と2つの疑問(前半)

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中小企業の底力: 成功する「現場」の秘密 (ちくま新書 1065)中小企業の底力: 成功する「現場」の秘密 (ちくま新書 1065)
中沢 孝夫

筑摩書房 2014-04-07

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 著者の中沢孝夫氏(福山大学経済学部教授)は中小企業論の第一人者だそうだ。これまでに1,100社(うち100社は海外)の聞き取り調査を行っているという。恥ずかしいことに、私の不勉強のせいでお名前を存じ上げていなかった。もっと勉強します・・・。

 【賛同①】本書では中小製造業が中心に取り上げられているが、高業績を上げているBtoBの中小製造業は、特定の産業にとどまって少数の特定メーカーからの下請に依存しているのではなく、やはり複数の産業をまたにかけて多様な製品を展開しているものだ、という思いを強めた(以前の記事「中小製造業を国が支援する際の2つの方向性―平成25年度補正「新ものづくり補助金」を受けて」を参照)。

 例えば、株式会社ナカキン(大阪)は、食品メーカー向けのサニタリーロータリーポンプと自動車向けのエンジン部品や金型を作っているし、同じく大阪にあるヤマウチ株式会社は、直径2ミリのハードディスク用樹脂製品からプリンタや複写機のローラー、あるいは全長11メートルの製紙用ロールまで数千種類のものを作っているという。顧客企業はメディア関連、製紙・紡績、建設、そして自動車と多岐にわたる。

 かといって、これらの企業は戦略が不明確なわけではない。製品や顧客企業だけを見ればてんでバラバラで何でもやっているようだが、コアの技術は明確である。それはナカキンであれば鋳造技術であるし、ヤマウチであればゴム・樹脂形成技術である。ゲイリー・ハメルとC・K・プラハラードは、「コア・コンピタンス」の要件の1つとして、「多様な市場にアクセスし、多様な顧客に価値を提供できる中核的な技術」を挙げたが、両社のコア技術はまさにこの条件に合致する。

 これに対して、大企業は近年そうしたコアを失っていると著者は指摘する。
 近年、大企業のなかには「御社はなんの会社ですか」と聞いても判然としない会社がある。要するに自社の「家業」あるいは「コア」が説明できないのである。「えーと、大きく分けて6つの事業がありまして・・・」と始まり、さまざまな説明はあるのだが、要するに「なんでもやっているのですね」という結論になる。(中略)

 またそういう会社の製品の多くはオリジナルではない。同業他社と同じものを「若干の色をつけて」つくっているに過ぎない。テレビや白物家電、その後のエレクトロニクス系商品を展開した、電機系大企業の商品のラインナップがその典型である。「若干の色」とは、「ガラパゴス」と揶揄される「先端技術」である、といってもよい。基盤から遊離した「先端」は積極的な意味をもたない。
 同じ「何でも屋」でも、コア技術のある何でも屋とそれがない何でも屋では全く違う。この点は私も賛成である。ハメルとプラハラードはコア・コンピタンスという概念を打ち出した時、NECの「C&C(Computer & Communication)構想」のことをよく研究していたのだが、大手家電メーカーが現在そのコア・コンピタンスを失って苦境に落ちっているのは何とも悲しい話である。

 【賛同②】著者は、1999年に廃止された「中小企業近代化促進法」(1963年制定)のことを次のように批判している。この法律は、同年施行の「中小企業基本法」と表裏一体をなしている。
 「基本法」のコンセプトは、(中略)(中小企業を)「近代化」させ、大企業との間にある格差を是正するために、「近代化法」により、小さな企業を集団化・集約化し「大きな会社」にする必要がある、というものだった。(中略)

 しかし結果はさんざんだった。失敗の理由を1つ挙げれば、なによりも起業家精神を否定していたからである。つまり、いったい集団化して誰が社長になるのか。どのようにしてそれを選ぶのか。経営資源をもち寄って、どのように経営権を配分するのか、お互いに少しずつ異なった要素技術、固有技術をどのように融合させるのか、といったことが何もわからないだけでなく、何よりも、経営者は「自分のアイデアを生かしたい」「自分の理念の経営をしたい」といった、自尊と独立の精神が必要とされるのであって、「皆と一緒」というわけにはいかない、という市場経済の基本の無視があった。
 中小企業の世界では、何か新しいことをやろうとする時、和の精神を尊重したがるのか、自分だけリスクを取るのを恐れているのか、すぐに仲間と群れたがる。この傾向は、中小企業近代化促進法が廃止された現在でも、実はそれほど変わっていない。具体的な名前は伏せるが、中小企業の集団化の取り組みに対して補助金を出している公的な事業は今でも存在する。

 また、中小企業経営の支援の局面においても、この悪癖が顔を出す。経済産業省や中小企業庁は、やれ認定支援機関制度だの地域プラットフォーム構想だのを持ち出して、中小企業診断士を含む様々な士業や金融機関を束ね、グループで中小企業経営のサポートを行おうとする。しかし、実態としては構成メンバー間の利害関係の調整に時間を取られて、コンサルティングのスピードがむしろ落ちているという印象である(もっとも、中小企業診断士が公的なコンサルティング資格でありながら、企業内診断士が7割に上り資格制度として十分に機能していないため、中企庁などがしびれを切らしてこういうスキームを考えた、という背景がある点は補足しておく)。

 集団化の悪癖は大企業にも見られる。大企業は何かというとすぐに業界団体やコンソーシアムを作って、何十社もの会員企業を集めたがる。一般論で片づけるのは乱暴かもしれないが、こうした業界団体などが果たしてどこまで機能しているかは疑問である。

 例えば、数年前に急浮上した電子書籍をめぐっては、Amazonに対抗するために出版社や取次会社が集まって業界団体を設立した。しかし、今のところAmazonに対する有効な対抗馬にはなっていない。また、半導体業界では、国が主導で様々なコンソーシアムを作ったが、具体的な成果を上げられず、むしろ半導体メーカーの競争力を削いだことが、エルピーダの元社員・湯之上隆氏の著書『日本型モノづくりの敗北―零戦・半導体・テレビ』で明らかにされている。

 ある目的を達成する時、たとえそれが複数の組織にとって共通の目的だとしても、個別の組織レベルで見れば、組織内でその目的をどう優先順位づけるかは大きく異なる。ある組織はその目的に対する活動を強力にプッシュするのに、別の組織は戦略的な優先順位の低さからあまり力を入れない、ということが起こる。こうしてグループ内の足並みは崩れていき、当初の目的は達成が難しくなる。もし何か大きな目的を達成したいならば、吸収合併などによって経営資源を緊密に統合し、1つの組織体にまとめ上げる方がはるかに効果的であると思う。

 (続く)

2013年12月16日

『競争優位は持続するか(DHBR2013年11月号)』―戦略構想の7ポイント(に入る前の前書き)

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Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2013年 11月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2013年 11月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2013-10-10

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 競争環境が激化する中で、企業は競争優位を持続させることができるのか?というのが本号の大きな問いである。この問いに対し、「競争優位を持続することは不可能に近い。その都度競争優位を構築する必要がある」という立場をとっているのが、リタ・ギュンター・マグレイス「事業運営の手法を変える8つのポイント 一時的競争優位こそ新たな常識」という論文である。一時的な競争優位を獲得するためのポイントとして著者が挙げているのが、

 (1)業界という既存の枠組みにとらわれない発想をする
 (2)大きなテーマを設定して実験を促す
 (3)起業家精神の成長を促す評価基準を採用する
 (4)顧客のエクスペリエンスと顧客へのソリューションを重視する
 (5)顧客や社員と強固な関係性とネットワークを構築する
 (6)非情な業務再編を避け、健全な撤退策を学ぶ
 (7)初期段階のイノベーションに組織的に対応する
 (8)実験し、反復し、学習する

の8つである。要するに、顧客の潜在ニーズを素早く見極め、どのような製品・サービスが受け入れられるのか実験を繰り返し、競合他社よりも早くソリューションを導出しならない、ということである。そして、顧客ニーズに少しでも変化が見られたら、過去のソリューションはさっさと捨て去り、再び実験のプロセスに突入する。この繰り返しである。

 これに対し、「持続する競争優位性を構築することは今でも可能である」という立場に立っているのが、トッド・センガー「成功する起業セオリーが持つ3つの"sight" 戦略は価値観に従う」と、佐藤克宏「戦略の賞味期限が短くなった時代 ケイパビリティこそ競争優位の源泉である」だ。

 「戦略は価値観に従う」という点については、旧ブログの記事

 戦略による競争優位からビジョンによる競争優位へ?―『「チェンジ・ザ・ワールド」の経営論(DHBR2012年3月号)』
 競争優位が戦略からビジョンへ移行しつつあることの再発見―『絆の経営(DHBR2012年4月号)』

でも書いたが、ディズニーを題材としたこの論文は、ディズニーの価値観というよりは、「戦略ストーリー」が競争優位になっていることを論じたものである(「戦略ストーリー」については、旧ブログの記事「(※注)以降の記述で作品に関する核心部分が明かされています―『ストーリーとしての競争戦略』」を参照)。この論文を読むと、ディズニーの戦略は、ウォルト・ディズニーが描いた戦略ストーリーに忠実である、逆に言えば、ウォルト・ディズニーが創業時に設計した戦略ストーリーは非常に緻密であり、今でも十分に威力を発揮していることがうかがえる。

 後者の論文では、「成人学習(アダルト・ラーニング)」の原則に従って、社内にケイパビリティ(組織能力)を蓄積することの重要性が説かれている。ちなみに、ケイパビリティとコア・コンピタンスはしばしば混同されることがあるので、その違いを私なりに簡単に述べておきたいと思う。コア・コンピタンスとは基本技術のことであり、その技術から競争力が高い多数の製品・サービスを生み出せるような技術を指す。コア・コンピタンスの提唱者であるゲイリー・ハメルとC・K・プラハラードは、その一例として、ホンダにおけるエンジン技術を挙げた。ホンダはエンジン技術を核として、芝刈り機や除雪機から自動車まで、幅広く製品を展開している。

 これに対して、ケイパビリティとはもっと広い概念であり、マイケル・ポーターの言う「価値連鎖(バリュー・チェーン)」におけるそれぞれの活動の中で、価値を飛躍的に増加させる社員の行動の集合を意味する。例えば、P&Gのケイパビリティはマーケティングであり、トヨタのケイパビリティは生産を中心としたトヨタ生産システムである。

 この論文については、企業が自社のケイパビリティを特定する方法が曖昧な印象を受けた。戦略の定石としては、まずは外部環境を分析して市場機会を特定し、そのチャンスをものにするための具体的な製品を構想する。そして、その製品をスムーズに製造・販売すべくケイパビリティを強化する、というステップを踏むものである。だが、本論文はこのようなプロセスに触れていない果たして、外部環境の分析なしに、ケイパビリティを突き止めることは可能なのだろうか?ややもすると、外部環境を無視した、内向きで独りよがりの能力アップになりはしないだろうか?

 (続く)


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