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私の仕事を支える10の価値観(これだけは譲れないというルール)(3/3)
【ベンチャー失敗の教訓(第46回)】上から下まで生産性を上げる努力をしない会社
【ベンチャー失敗の教訓(第40回)】ダメ会社の典型=遅刻や締切遅れが当たり前の体質

プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2014年08月27日

私の仕事を支える10の価値観(これだけは譲れないというルール)(3/3)


 (前回の続き)

(7)嘘やごまかしの効かない書き言葉によるコミュニケーションを重視する。
 以前の記事「中小企業診断士が断ち切るべき5つの因習」で、顧客を口先でちょろまかせばよいと豪語する診断士を断罪した。その人が話し言葉重視ならば、私は徹底した書き言葉重視である。話し言葉は一過性のものなので、その場の勢いで何とか乗り切れるし、多少つじつまが合っていなくても、聞き手を何となく解った気にさせることも可能だ。しかし、形も残らない、内容も不完全なものに対して顧客からお金をいただくというのは、どうも不誠実に思えてならない。

 これに対して、書き言葉は形に残り、多くの人に繰り返し読まれるから、絶対にごまかしが効かない。だからこそアウトプットの品質にこだわるわけで、高い品質のアウトプットを提示することができれば、胸を張ってお金をいただける。私は、他人のアウトプットも割と厳しく見ている方だと思う。個人的には、自分で提案書を書いたことのない営業担当者や、企画書を書き上げた経験のない本社スタッフは信用していないし、報告書の中身がプアーなコンサルタントや、セミナーの配布資料がお粗末な講師の価値も低く見積もっている。

 私が前職の企業で開発したアセスメント(診断)の中に「コンサルティング能力診断」というものがあった。その中に、「論理的飛躍があっても口頭で上手に説明することができるか?」という設問があり、「はい」と答えるとコンサルティング能力の得点が高くなる仕様になっていた。この設問は、当時このアセスメントの開発責任者であったマネジャー(彼はどちらかと言うと話し言葉重視であった)の意向で入れられたのだが、当時も今も、この設問は誤りだったと思っている。

(8)模倣されることを恐れない。ナレッジはオープンにして全体の底上げを図る。
 (7)と関連するが、書き言葉を重視するということは、成果物が目に見える形で残るということである。成果物がはっきりと残ることには、メリットもあればデメリットもある。組織内で事例を横展開できるという利点がある半面、ノウハウが何らかの形で外部に流出するリスクを背負うことになる。例えば、コンサルティングのフレームワークを転職先に持っていかれる、セミナーの配布資料を別のセミナーで転用される、といった具合だ。もちろん、知財保護の規定は設けるものの、全ての流出を止めることは不可能に近い。

 だが、私はノウハウの流出に目くじらを立てるべきではないと思う。知的財産に対する意識が甘いと言われるかもしれないが、私は自分のナレッジに対してそれほど執着心はない。事実、本ブログではノウハウ(大したノウハウではないが・・・)がダダ漏れ状態である。私のノウハウが外部に流出したところで、競合他社が私のビジネスを完全に潰しにかかるとは思えない。それよりも、自分の考え方を知ってくれる人が増えることの方が嬉しい。仮に競合他社が私のノウハウを盗んだとしても、私がさらに新しいナレッジを開発すればよいだけの話である。

 コンサルティング会社や研修会社が主催するセミナーなどに参加しようとすると、申込ページに「同業他社の参加はお断りします」と書かれていることがほとんどである。私はこのルールが嫌で嫌で仕方ない。ノウハウが持っていかれたところで、自社のビジネスが決定的なダメージを受けるのだろうか?旧ブログの記事「研修業界はまだまだ未熟な業界かもしれない」でも書いたが、この業界のプレイヤーは中小・零細企業がほとんどである。そんなプレイヤーにノウハウが流出しても、大した痛手ではないはずである。私は、このルールがあるために、業界に良質なナレッジが浸透せず、業界全体の底上げがなされないのではないか?とさえ疑っている。

 最近、いろんな中小企業の経営者とお話をさせていただいて、1つ気づいたことがある。中小企業の経営者は、自分の事業にのめり込んでいるので、話し出すとたいてい止まらなくなる。だが、事業がうまく行っている経営者とそうでない経営者では、話の内容が全く違う。

 業績が好調な企業の経営者は、未来志向で話をする。将来のビジョンはこうで、こういう市場にこういう製品で打って出たいとストーリーを語る。一方、業績不振の企業の経営者は、過去の出来事に執着する。特に、外部の関係者から”攻撃”されたことに対して、異常なまでの反応を示す。その”攻撃”の中に決まって入っているのが、知財の侵害である。彼らは、知財を侵害した相手を徹底的に憎む。しかし、いつまでも相手を憎んでいても仕方がない。シャープの創業者は、「他社に真似される製品を作れ」と社員にハッパをかけたそうだ。経営者はそういう気概で臨んだ方がよいと思うし、私自身もそうありたい。

(9)時間は万人に平等に与えられた宝。宝を壊す人を許してはいけない。
 これは当たり前すぎるし、「【ベンチャー失敗の教訓(第40回)】ダメ会社の典型=遅刻や締切遅れが当たり前の体質」など多くの記事で書いたことなので、簡単な説明にとどめておく。「(6)信賞必罰に頼らない。相手の成長を見守ることで相手を動かす」で、相手を怒ったりしないと書いたが、時間にルーズな人に対してだけは私もさすがに怒ると思う。極端な話だが、私はお金を盗まれても怒らないけれども、時間を破壊されたら怒るに違いない。そのぐらい、時間に対しては自分に対しても他人に対しても厳しいつもりでいる。

 アポイントの時間に遅れる、締切を守らないといった行為は明白な破壊行為であるが、会議というものは破壊行為が横行する場である。必ずしも全員が参加する必要がなかったり、参加者の顔ぶれにそぐわない議題が話し合われたりする。先日、中小企業診断協会の支部の役員会議に出席する機会があった。会議には、企業で言うところの部長・副部長クラス以上のメンバーが20人ほど参加していた。

 そこで話し合われたことは、支部のメーリングリストの運用ルールをどうするか?支部でプロジェクター(8万円ぐらい)を購入してもよいか?といったことであった。これには正直がっかりした。どれも、担当者が5分で決められそうなことばかりである。それを、大の大人が2時間近くも議論しているのだから、怒りを通り越して笑うしかなかった。会議は相手の貴重な時間をいただく行為である。いただいた時間に見合うだけの、中身のある会議をあらかじめ設計できないのであれば、いっそ会議を開かない方がましである。

(10)仕事に楽しみを求めない。わずかな楽しみのために多くの苦しみがある。
 よく、「仕事を楽しめ」と言う。しかし、私が社会人になってちょうど10年が経過したが、仕事を楽しいと思った記憶がない。むしろ苦しみの連続でしかなかった。どこかに楽しい仕事があるだろうと期待を寄せてみたものの、どんな仕事をしても苦しみにぶち当たった。シリーズ「【ベンチャー失敗の教訓(全50回)】」は、そんな苦しみの結晶である。そのため、最近では、「仕事は楽しいものである」という思い込みの方が間違っているのではないか?と思うようになった。

 元阪神の金本知憲氏は、引退会見で「僕の21年間のプロ野球人生は、大袈裟でなく70%が辛い苦しいものだった」と語った。元ヤクルトの宮本慎也氏も、引退時に「最近は『楽しみたい』と言うけど、僕は野球を楽しむなんてできない」とコメントしている。引退の間際になってようやく、「苦しかっただけのグラウンドで自分は幸せ者だったと気づいた。すべてが報われたと感じた」そうだ。イチローは、日米通算4,000本安打という偉業を達成した試合後のインタビューで、「4,000のヒットを打つには、僕の数字で言うと、8,000回以上は悔しい思いをしてきている」と答えた。こうした大打者と自分を並べるのはあまりにもおこがましいが、私もこの3人の考え方に深く共感する。

 サービス業などのマーケティングにおいては、インナー・マーケティングを実施して社員満足度を上げれば、顧客満足度の向上につながるとされる。端的に言えば、仕事を楽しんでいる社員が増えれば、顧客満足度は上がるというわけだ。だが私は、この説は正しくないのではないか?と思う。エンターテイメントの要素が強いサービスであれば、顧客接点で働く社員が楽しんでいることで、それが顧客に伝染することも考えられるだろう。

 しかし、世の中の大半の製品・サービスは、エンターテイメント的なものではない。私が生業としているコンサルティング業や研修サービス業もそうである。その上、顧客からは高い要求を受ける。その結果、顧客のニーズに応えようと、もがき苦しむことになる。

 だが、私が苦しんでいるからと言って、顧客満足度が下がるとは一概には言えない。事実、私が苦しんで開発した研修を実施したところ、研修後のアンケートでは受講者ほぼ全員から5段階評価で5の評価をいただいたことが何度もある。「社員満足度向上⇒顧客満足度向上」ではなく、「社員の苦しみ度向上⇒顧客満足度向上」というロジックが成り立つかどうか?今は私の単なる価値観・信念でしかないが、その妥当性を検証することが今後の私の研究課題である。


《2014年9月13日追記》
 『致知』2014年10月号の「対談 日本の次世代に託す夢 泥を肥やしに花は咲く」(鍵山秀三郎、上神田梅雄)という記事で紹介されていた下村湖人の言葉が印象に残ったので引用する。
 私は不満のない人生をおくりたいとは思わない。私ののぞむ人生は、不満が平和をみだす原因とならず、創造への動機となるような人生である。私は苦悩のない人生に住みたいとは思わない。私の住みたい世界は、苦悩が絶望の原因とならず、勇気への刺激となるような世界である。
致知2014年10月号夢に挑む 致知2014年10月号

致知出版社 2014-10


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2014年01月05日

【ベンチャー失敗の教訓(第46回)】上から下まで生産性を上げる努力をしない会社


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 ホワイトカラーの仕事はブルーカラーの仕事とは違って、いちいち誰かが指図してくれたり、明確な指示書があったりするわけではない。だから、自分で作業手順を組み立て、それぞれのタスクのやり方を工夫して、生産性を高める努力を積み重ねなければならない。ましてそれがベンチャー企業ともなれば、先行する競合他社に追いつき、これを追い越すために、非常に高い生産性を実現する必要がある。ところが、3社の社員の多くは自分の生産性に関して無頓着だった。

 Z社では、見かねた経営陣が社員のタイムマネジメントに乗り出した。エクセルのフォーマットを用意し、毎週月曜日になると、1週間で予定されているタスクと、それぞれのタスクに費やす予定の時間を記入させた。そして、毎日仕事の実績を記録させ、予定と実績の乖離を見える化した。しかし、Z社の社員に話を聞くと、エクセルの報告書を提出しても、経営陣から何かフィードバックがあるわけではなかったという。どうやら、経営陣は各社員のエクセルを管理部門の社員に集計させ、それで満足してしまっていたらしい。

 私は、この話には2つの問題点があると思う。1つは、Z社は社員数が10名程度の小さい企業であるにもかかわらず、エクセルに頼っていたという点である。10名程度であれば、経営陣が直接それぞれの社員に仕事の進捗度合いを確認し、その場で生産性向上のための助言をすれば事足りる。そういう対面のコミュニケーションは、経営陣と現場の距離感を縮めるうえで非常に重要である。Z社の経営陣は、エクセルを使うことで、コミュニケーションの機会を放棄してしまった。

 もう1つは、経営陣自身がタイムマネジメントの対象となっていなかったことである。Z社の経営陣は「社員が仕事をしていない」と思ってタイムマネジメントを始めたのだが、現場社員は「経営陣が仕事をしていない」という不満を抱いていた。経営陣はいつもオフィスにいて、クライアントのところにはたまにしか行かないし、コンサルサービスの開発にもあまり協力してくれない、というのが現場社員の目に映る経営陣の姿であった。現場社員からすれば、「経営陣は、自分の生産性のことは棚に上げて、我々のことばかり管理しようとしている」というのが本音であった。

 もし経営陣がこうした現場の意見を聞いたら、「自分の仕事は部下を管理することであるから、自分の仕事のことは公開する必要はない」と反論しただろう。だが、そんなことを言えば、部下のさらなる心理的離反を招くだけである。経営陣は、「我が社は今まで生産性を軽視しすぎていた。これからは生産性を上げるために、お互いの仕事の内容をオープンにしよう。もちろん、私も自分の仕事を可視化するから、社員の皆さんも仕事の透明化に協力してほしい。そして、生産性向上のために、忌憚なく意見を言い合ってほしい」と言うべきだった。部下に何か負担になる作業をお願いする時には、上に立つ者が率先垂範してその負担を受け入れなければならない。

 一方のX社は、Z社に比べれば多少はましであった。エクセルのようなツールを使わず、毎週月曜日に経営陣と開発・講師チームが集まって、各個人のその週のタスクと予定工数を確認する会議を開いていた。その会議では、経営陣のタスクも公にされた。

 ところが、営業チームはこの会議の参加メンバーから外れていた。もともとこの会議は、「開発・講師チームは仕事が遅いから何とかしてほしい」という営業チームの要請で開かれたものであった。しかし、私はマーケティング担当という立場で、両方のチームと接点があった経験から言えば、数字が目標通りに上がっていない営業チームも生産性に何らかの問題があるはずであり、会議に加わるべきであった。実際、提案書の作成に何時間もかけている担当者や、自分とは関係のない会議に入り込んで時間をつぶしている担当者を何度か見かけた。

 営業チームの生産性に具体的にどのような問題があるのかは、結局のところ突き止めることができなかった。だが、開発・講師チームに関しては、上記の会議に出席すると愕然とする事実が次々と明らかになった。端的に言えば、作業時間を非常に過大に見積もっているのである。

 開発・講師チームでは、研修のカスタマイズに2日かけるとか、研修の実施報告書の作成に1日かけるといったことが常態化していた。以前の記事「【ベンチャーの教訓(第21回)】何年経ってもまともな管理会計の仕組みが整わない」で指摘したように、研修のカスタマイズに2日かけると、その案件は赤字になる。しかも、似たようなカスタマイズを何度も繰り返しているはずなのに、一向に作業時間が減らない、つまり生産性が上がっていないのである。また、研修の実施報告書といっても、研修終了後の受講者アンケートを集計するだけであり、エクセルの雛形さえしっかりしていれば、2時間程度で終わる作業である。

 以前の記事「【ベンチャーの教訓(第32回)】メディア露出が中途半端すぎてティッピングポイントを超えられない」でも書いたが、私はマーケティング担当として、各講師に対し、HPに掲載するコラムの執筆をお願いしていた。ところが、マネジャーの中には、そのコラム作成に1日かけるという、とんでもない見積もりをしてくる人もいた。コラムは2,000字程度である。1,000字で1時間とすれば、2時間で終わる作業だ(ちなみに、今日の記事は3,500字ぐらいだが、2.5時間で書き上げている)。コラムは、講師が自分の専門分野について意見を表明する場であった。そのコラムに時間がかかるということは、自分の専門性が浅いということであり、恥ずべきことである。

 私は、マネジャーたちの過剰な見積もりにいつも驚かされていた。私自身、マネジャーに対して改善ポイントを十分に指摘しなかったことは反省すべき点である。だが、そのような改善点の指摘は、会議の主催者である経営陣が進んで行うべきであっただろう。経営陣は、いつもメンバーの作業見積もりを漫然と聞いているだけで、生産性を上げよとハッパをかけることもなかった。

 経営陣は経営陣で、見込み顧客に対する表敬訪問を週に2~3件やっているだけで、残りは提案書を作成しているという、何とも曖昧な弁明が多かった。提案書作成は、表敬訪問の少なさを覆い隠す口実に感じられた。経営陣が営業活動にもっと注力すれば、表敬訪問は週に10件、20件とできたはずである。もっと言えば、ベンチャー企業の経営者なのだから、表敬訪問などという形式的な活動で満足せずに、トップセールスでクロージングまで持っていくぐらいの仕事をしてほしかった。経営陣が社員に対して生産性を上げるように強く言えなかったのは、問題を指摘するとブーメランのように自分に跳ね返ってくることを恐れていたからなのかもしれない。

 余談だが、3社の社員は職種に限らずパワーポイントを使う機会が非常に多かった。コンサルタントは報告書のために、営業担当者は提案書のために、開発・講師チームのメンバーは研修テキストのためにパワーポイントを使用していた。コンサルタントは比較的パワーポイントに慣れていたのに対し、それ以外の人はパワーポイントを使うのがあまり上手ではなかった。

 パワーポイントは、ショートカットを覚えれば、生産性を大幅に上げることができる。特に重宝するのが、オブジェクトの整列のショートカットである。また、同じファイルを複数人が扱うため、加工しやすいようにいくつかのルールを設けておくことも重要である。例えば、四角形などの図形は「塗りつぶしなし」にせず、白く塗りつぶしておくとよい。そうすると、その図形を移動させる時に、図形のどこをクリックしてもその図形が選択されるので楽である。これが「塗りつぶしなし」になっていると、図形を移動させる時に枠線を慎重に選択しなければならず、操作を誤りやすい。

 X社の全社会議で、X社にしては珍しく、予定よりも早くアジェンダが消化できたため、残り時間を使って私がパワーポイントの簡単な講習を行ったことがあった。その時には、先ほど述べたショートカットや共通ルールの話をした。私は普段やっていることをそのまま話しただけだが、X社の社員にとっては新鮮だったようで、会議が終了すると、ある営業担当者から冗談半分で、「今までの全社会議の中で一番有意義だったよ」などと言われた。裏を返せば、そういう細かいところで生産性を上げる努力がなおざりにされていたということだろう。
(※注)
 X社(A社長)・・・企業向け集合研修・診断サービス、組織・人材開発コンサルティング
 Y社(B社長)・・・人材紹介、ヘッドハンティング事業
 Z社(C社長)・・・戦略コンサルティング
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2013年10月20日

【ベンチャー失敗の教訓(第40回)】ダメ会社の典型=遅刻や締切遅れが当たり前の体質


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 最近、中小企業診断士と弁護士の両方の資格を持つという強者から、弁護士業界には「弁護士時間」という言葉があることを教えてもらった。弁護士が時間を守らないことを自虐的に言う言葉だそうで、中には裁判に遅刻してくる弁護士もいるという。3社の社員も時間にルーズな人が多く、階層が上がるほどその傾向が強かった。若手社員の間では、会社名をとって「○○時間」という言葉が使われていた。

 とにかく、社内会議が時間通りに始まった記憶がない。商談が長引いたとか、自分の仕事の区切りがつかなくて遅れたとか、何かと理由をつけて会議に遅刻する。仕方ないので、私が会議の主催者になっていた場合は、会議の時間になると、出席者たちに「そろそろ会議ですよ」とわざわざ声をかけて回っていた。だが、「何で私が彼ら(彼らの大半は、私より役職も年齢も上である)の時間管理までしなければならないのか?」と、だんだんバカらしく思えてきた。そこで、会議の時間になっても、出席者に声をかけず私一人で会議室に入り、出席者が来るのを待ってみることにした。すると、見事に皆10分から20分ぐらい遅れてくる。そして、さほど悪びれる様子もない。

 顧客企業先で会議がある時も、余裕をもって顧客企業先に到着しようという意識が希薄であった。一緒に会議に向かうシニアマネジャーから、オフィスを出発する時間を調べるよう告げられた私は、会議の開始に余裕をもって間に合うような時間を調べた。そして、会議の20分ぐらい前には顧客企業先に到着するようにしていた。ところが、シニアマネジャーからは、「到着が早すぎるじゃないか」と注意されてしまったのである。20分もあれば、オフィスでもう少し自分の仕事ができたのに、というのがシニアマネジャーの言い分であった。しかし、電車にもしものことがあった場合のことを考えると、私はギリギリに到着する時間で移動する気にはなれなかった。

 顧客企業先の会議に関して一番驚いたのは、Z社のC社長の話である。C社長は、ある戦略コンサルティングプロジェクトの最終報告のために、顧客企業先にプロジェクトメンバーを連れて行った。会議は午後一に設定されており、顧客企業の社長をはじめ、重役たちが出席する予定であった。C社長たちは、10分前に顧客企業先に到着した。これだけ重要な会議なのに、10分前に到着するのもいかがなものかと私は思うのだが、C社長は何と、「まだ10分あるのか。ちょっとお腹が空いたなぁ。10分あればカレーライスぐらいはパッと食べられるかな?」と言って、顧客企業先のビルの1階に入っていたレストランで、カレーライスを平らげたのである。

 仕事の締切を守らないのも3社の社風であった。X社のマーケティングを兼務していた私は、HPに人材育成や組織開発に関するコラム記事を毎週1本アップして、コンテンツの充実とアクセス数の増加を狙った。そして、向こう数か月のコラムのスケジュールを決め、A社長や講師たちに担当を割り振って、コラム記事を書いてもらうことにした。

 だが、スケジュールに定められた締切になっても、講師は原稿を私に送ってこない。HP更新日の直前になって、講師が慌てて原稿を送り、私も慌てて校正してHPを更新する、ということが何度も続いた。講師だけでなく、A社長までもが原稿の締切を全く守ってくれなかった。私は、「社長が締切を守らないと、他の講師が真似をするからやめてほしい」とA社長に注意したことがある。すると今度は、いくら催促しても原稿を送ってこないというサボタージュを起こすようになった。

 講師が仕事の締切を守らないのは折り紙つきで、私以外にも多くの社員が被害をこうむっていた。X社には、テキストの印刷など、研修準備や運営サポートを行っていたオペレーションチームがあった。オペレーションチームは、入稿の締切日になっても、講師がテキストデータの完成版を送ってくれないと困っていた。さらに悪いことに、オペレーションチームが印刷の手配を済ませた後も、追加の修正要望を出してくるのだという。どの研修でも講師の対応がギリギリで一向に改善される様子がなかったため、チームメンバーは相当参っていた。

 昔、ある経営幹部の方から、2つの質問をされたことがある。

 「あなたは友達と待ち合わせています。待ち合わせ時間の何分前に到着しますか?」
 「あなたはSPです。アメリカの大統領が成田空港に来日し、あなたは大統領の警護を命じられています。あなたは成田空港に、飛行機の到着時間の何分前に到着しますか?」

 前者の質問に対しては、「待ち合わせ時間ギリギリ」という答えが多いだろう。それどころか、相手は友達なのだから、5分か10分ぐらい遅れても平気という人も相当数いるに違いない。これに対して、後者の質問はどうだろうか?アメリカ大統領の警護という重要な任務である。もししくじれば、日本国家の信頼が失墜しかねない。よって、何分前と言わず、2時間ぐらい前に成田空港に到着していても、何ら不思議ではない。2時間前に成田空港に到着し、警護の手順や注意すべきポイントを他のSPと入念に確認して、警護のシミュレーションを入念に行うことだろう。

 この経営幹部の方が教えてくれたのは、「待ち合わせ時間の何分前に到着するかは、その待ち合わせをどのぐらい重要だと思っているか、という意識の表れだ」ということであった。会議に遅刻したり、締切を守らなかったりするのは、その会議や仕事を重要だと思っていない証拠なのである。遅刻や締切遅れが常態化していた3社は、仕事を舐めている無責任な社員が多かった、と言われても仕方がないだろう。
(※注)
 X社(A社長)・・・企業向け集合研修・診断サービス、組織・人材開発コンサルティング
 Y社(B社長)・・・人材紹介、ヘッドハンティング事業
 Z社(C社長)・・・戦略コンサルティング
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