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【東京協会国際部セミナー】外国人従業員が活躍できるビジネス環境とは?(セミナーメモ書き)

プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2016年12月16日

【東京協会国際部セミナー】外国人従業員が活躍できるビジネス環境とは?(セミナーメモ書き)


外国人社員

《プログラム内容》
 【講演①】「外国人従業員が活躍できるビジネス環境とは」
 講師:エンピカンデル氏(株式会社トモノカイ 留学生支援事業メンバー)

 【講演②】「料理店での外国人社員の能力発揮の手法について」
 講師:稲岡千春氏(インド料理店”マサラキッチン”オーナー)

 【グループディスカッション】
 各テーブルに外国人ゲストをお迎えし、以下のテーマについてディスカッション。
 (a)外国人が日本の中小企業で働くメリットとは?
 (b)外国人が長く働きたいと思う魅力ある中小企業とは?
 (c)中小企業が外国人の能力を発揮させるためには?
 (1)日本の外国人留学生は、2003年に10万人を突破し、2015年には20万人を超えている(ただし、このうち約5万人は日本語学校の学生であり、大学生ではない)。政府は2020年までにこの数を30万人に増やす計画を立てている。日本人留学生の8割は日本での就職を希望しているが、日本で就職する留学生の数は2007年以降1万人前後でほぼ横ばいである。企業は表向きは外国人留学生を採用すると公言しているものの、実績との間には乖離がある。

 例えば、株式会社ディスコが実施した調査によると、2015年度に外国人留学生を採用する予定があると回答した企業は54.8%であったのに対し、2015年度に実際に外国人留学生を採用した(採用予定を含む)のは34.3%にとどまる。また、ある私立大学の求人票を調査したところ、約1,500社が「留学生可」としていたが、別の調査会社を使って採用実績を調査した結果、実際に外国人留学生を採用した企業は2%しかないことが判明した。

 (2)外国人留学生の採用ミスマッチには様々な原因が考えられる。①まず、外国人留学生への要求レベルが高すぎることが挙げられる。企業が外国人留学生を採用するのは、海外事業を実施・強化するためであろう。外国人留学生には、入社後すぐに海外事業を担当してもらう。そういう外国人留学生には、チャレンジ精神があり、異文化への適応能力が高く、複数の言語を自由自在に操り、将来的には経営者としてリーダーシップを発揮してほしいと高望みをしてしまう。しかし、そんなスーパーマンみたいな外国人留学生はいない。外国人留学生と言っても、能力は語学レベルを除けば日本の大卒とそれほど変わらない。

 ②2つ目の要因として、採用プロセスが結果的に外国人留学生を排除する形になっていることがある。SPIは明らかに日本人に有利である。また、グループディスカッションで「小学校の科目に1つ新しい科目を追加するならば、どんな科目がよいか?」といったテーマを与えてしまう。日本の小学校の事情を知らない外国人留学生は議論に参加できない。外国人留学生の採用に積極的な企業は、SPIの合格点を外国人留学生に限って低く設定するといった工夫をしている。また、日本の文化的コンテクストを前提としないグループディスカッションを行うべきである。

 ③最後に、外国人留学生に最も理解されない日本の慣行が総合職という職種の存在である。ただ、なぜ部署を転々とするのか、部署を転々とした結果、将来的にどうなるのかを丁寧に説明すれば納得してくれる。もう1つ、新卒で入社した直後は雑用ばかりをさせられることも理解できない。ある中国人留学生は、3年後に中国工場の経営幹部になるという約束で入社した。ところが、入社後にやらされた仕事は、日本工場の掃除、整理整頓、お茶出しばかりだった。彼は「うちの会社は自分を経営者にする気がない」と不満だったが、会社側は日本企業が現場を非常に重視する点を強調した。彼は晴れて3年後に中国工場の総経理となったという。

 (3)稲岡千春氏がインド料理店を開いたばかりの頃は、インド人の習慣に驚くことが多かったという。例えば、インド人は熱すぎるものや冷たすぎるものは手に取らない。そのため、顧客に出す皿や料理が生温かいことがしばしばあった。また、台拭きを雑巾として使う、ごみ袋を食品保存用に使う、洗剤スプーンでお茶の量を計る、シンクでモップを洗うなどの行動も見られた。インド人は悪気があってそうしているわけではない。熱すぎるものや冷たすぎるものを手にしないのは、そういうものは歯に悪い(歯が黄色くなる)と考えているためである。それから、インド人が物を使い回すのは彼らなりの節約意識の表れである。日本では、食品衛生管理法によって、食品用に使えるものとそうでないものが分かれていることを説明して理解を得た。

 (4)インドは厳格な階級社会である。ゴミ拾い、トイレ掃除、皿洗いなどは下の階級の人がすることであり、オーナーである稲岡氏がそれをするとインド人社員からとがめられた。インド社会のもう1つの特徴として、役割が非常に細かく分かれているという点がある。インドの家には使用人が10人いることも珍しくない。彼らは掃除する場所によって分担が決まっている。飲食店でも、カレーのクック、タンドールのクックといった具合に役割が分かれる。困るのは、インドはヒンドゥー教の国であり、カレーのクックがある日突然ベジタリアンになるケースである。ベジタリアンになったカレーのクックは味見ができない。クックが味見をせずにカレーを出して、顧客から「塩が入っていないのではないか?」と指摘されたこともあった。

 人口が多いインドでは、ゴミ拾い専門の人を探せばすぐに見つかるし、カレーのクックがベジタリアンになれば、代わりに別のカレーのクックを連れてくればよいのかもしれない。だが、日本では一度に大勢の社員を採用することができない。そのため、1人で何役もこなさなければならず、オーナーも率先して掃除をしなければならない。この点を繰り返しインド人社員に説明した。今ではタンドールのクックはカレーも作るし、接客やレジ打ちもするなど、多能工化している。

 (5)(3)、(4)はインド人社員に日本のやり方を覚えてもらった例だが、逆に、インド人社員のニーズを取り入れたケースもある。インド人は仕事よりも家族を大切にする。1年に1か月ほどはインドに帰りたいと言う。日本では1か月も休みをもらったら帰る席がなくなるところだが、稲岡氏は社員の要望に応えて1か月間の休暇を認めた。ところが、中には1か月経っても帰ってこない社員がいる。話を聞くと、現地で甥っ子や姪っ子などの面倒を見るにはもっと長い休みが必要だと言う。しかし、ずるずると休暇を引き延ばすわけにもいかない。この一件があって以降、稲岡氏は、インド人社員の中で1人をリーダーに指名し、彼を通じて休暇を申請させるようにした。同じインド人のリーダーの目が黒いうちは1か月以内に帰ってくるだろうという算段である。

 外国人と一緒に働く場合、価値観の衝突は必ず起こる。異文化コミュニケーションの研究者はしばしば、弁証法的な発想によって、自分とも相手とも異なる新たな共有価値観を構築することが重要だと説く。私の前職の企業の社長もそんなことをよく言っていた。しかし、第三の道を構築するのは簡単ではない。本ブログでは何度か、アメリカ、ロシア、ドイツ、中国といった大国が二項対立的に物事を考えると書いてきたが、大国が弁証法的な態度を身につけているならば、世界はとっくの昔に平和になっているはずだ。私の前職の企業の社長も、共有価値観を作るべきと言っておきながら結局は口先だけであり、社員同士(日本人同士である)が対立してもそれを何一つ解決できず、リストラをするか社員に逃げられるかのどちらかであった。

 個人的に、双方の価値観が対立した時に最も現実的な方策は「取引」であると思う。つまり、「次回はあなたの要求を呑むから、今回は私の言い分を聞いてくれ」といった関係である。ただし、完全に平等な取引というものは存在しない(だから、世界から紛争は消えない)。稲岡氏の場合は、日本でインド料理店を開いているため、インド人社員が稲岡氏に要求するよりも、稲岡氏がインド人社員に要求することの方が多くなる。どんなに経済がグローバル化しても、その企業がどの国に存在するかは、経営を左右する重要なファクターである。仮に、稲岡氏がインドでインド料理店を開いていたら、どのようなマネジメントを行っていたかは興味深いところである。

 (6)私のグループにはアメリカ人のゲストが入ってグループディスカッションを行った。彼が「中小企業が自ら外国人を雇用するのではなく、海外の企業を上手く使った方が安く済むことがある」というユニークな視点を提示してくれたため、私のグループでは与えられたテーマとは異なる観点で議論を行った。すなわち、「中小企業が海外展開をするにあたって、海外企業をどのように自社のビジネスモデルに取り込み、活用すればよいか?」という論点である。

 このアメリカ人は、日本で美容室を多店舗展開している企業に勤めている。最近は美容室だけでなく、美容用品を中国で製造し、アメリカに輸出しているという。彼の話がいかにもアメリカ人らしいと感じたので、その話を紹介する。日本企業が海外で製造拠点を探す場合、信用調査を行い、経営者に会うのはもちろんのこと、現地の工場を必ず視察するものである。特に、5Sが徹底されているかどうかをチェックする。そして、契約を締結した後も定期的に監査を行い、5Sのチェックに始まり、製造ラインや品質、社員のモラルなどを厳しく確認する。

 このアメリカ人の企業は中国企業に製造委託しているから、さぞかし品質管理は大変なのだろうと思ったのだが、彼は「ITソリューションがあれば品質管理はできる」と豪語する。現場を見なくても、現場から適切な情報が上がってくれば遠隔地で意思決定が可能だというのは、いかにもアメリカ人らしい。情報システムで細かい製品仕様を伝えることはできるのかと尋ねると、「そういう時はポンチ絵を描いて説明する」と言う。美容用品は、たとえ欠陥があったとしても顧客の生命や身体に与える影響は小さい。つまり、品質の要求水準はそこまで高くない。だからこそ、こういうマネジメントが成立しうるのではないか?日本人が十八番とする輸送機械や産業機械などは、欠陥が文字通り命取りになるから、こういう品質管理は通用しない気がした。




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