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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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マネジメント・フロンティア
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(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

Experian海外企業信用調査 海外企業信用調査(Experian)
(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

中小企業診断士の安い通信講座なら「資格スクエア」資格スクエア
(以下の資格の講師をしています。
 ―ITパスポート
 ―情報セキュリティマネジメント
 ―経営学検定(初級・中級)
 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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2014年09月01日

創業補助金の書面審査をして感じた7つのこと

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 平成25年度の補正予算で実施されている「創業促進補助金(創業補助金、予算44億円)」の書面審査員をやった。ここ半年ぐらいで3回引き受けて、約150社の事業計画書を審査したが、当分この手の仕事はいいかな・・・。申請者が補助金とは無関係に起業するのであれば、どんな計画書であっても知ったことではないのだが、税金が原資の200万円(=補助金の上限額)がほしいのならば、もうちょっとしっかり計画書を作ってもらいたいと思うことが少なからずあった。

 今日は、「もっとこうした方がいい」と私が感じた7つのポイントを整理してみたい。来年度以降も創業補助金があるかどうか不明だが、申請を検討している方の参考になれば幸いである。

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(1)製品・サービスの全体像が解りにくい
 これは一番審査に困った。製品・サービスの中身が解らないと、どのくらいのニーズがあるのか?何と競合しそうなのか?競合他社と何が違うのか?といった点が評価できない。例えば飲食店の場合、「○○(=産地名)から仕入れた独自の食材を使った料理」、「○○という調理法を用いて工夫をした」などと文章で説明されるが、文章だけでは正直言ってイメージが湧かない。こういう場合は、添付資料として食材や調理法、完成品などの写真をつけた方がよい。

 エステも申請が多かったが、サービスの中身が解らなくて困った。「○○というオイルを使うことで従来の手法よりも効果がアップする」などと書かれても、本当かどうか判断できない。個人で勝手に事業展開する場合であれば、そのような曖昧な書き方でもプロモーションとして成り立つのかもしれない。しかし、国のお金を使うのであれば客観的なエビデンスがほしいところである。また、コンサルティングなどのBtoBビジネスも、無形のサービスであるがゆえに、サービスの可視化が必要である。例えば、提案書や成果物サンプルを添付する、というのも一つの手だろう。

(2)右から左へモノを流すだけの事業
 「地域のよい製品・サービスを全国展開する」、「日本のよいものを世界に発信する」というケースである。単にものを右から左へ流すだけならば、申請者の企業にはどのような付加価値があるというのだろうか?一番苦労して付加価値を創造しているメーカーなどの利益を、単に横取りしようとしているだけではないだろうか?いわゆるAmazonの「せどり」で申請してきた人もいたが、さすがに申請書を投げつけてやろうかと思った(苦笑)。そんな事業に税金を投入できるか??

 そもそも、本当によいものであれば、既に全国や世界に向けて提供されているはずだ。それができない何らかの要因があるから、全国や世界へ出ていくことができないのである。そういう業界構造の分析もなく、販売方法に特段の工夫がない事業は、低く評価せざるを得ない。

(3)役員報酬や社員の給与が低く抑えられている起業貧乏
 以前の記事「「開業率アップ」を掲げながら創業補助金には及び腰になった中小企業庁」で、先進国では開業率が上がると、一人あたりGDPが伸びる傾向があると書いた。成熟市場に大企業が集まってパイの取り合いをしているうちは、社員1人あたりの給与が減少する。そこで、大企業の一部の社員が大企業から転出して成長著しい市場に参入すれば、大企業の社員も、ベンチャー企業の社員も1人あたり給与が増える、という理屈である。

 だが、申請書の内容に基づいて計算すると、役員報酬が十分に捻出できていなかったり、社員1人あたりの年俸が不当に低く抑えられていたりするケースが散見される。確かに、開業間もない頃は十分な報酬を支払うことが難しかもしれない。だが、3年経っても役員報酬が500万円に満たないとか、社員の年俸が200万円しかないという企業は、あまりに魅力に乏しい。それだったら、企業に勤め続けてもらった方がよっぽどよい。

 やはり、リスクを冒して起業するからには、創業メンバーが将来的に年俸2,000~3,000万円とは言わないまでも、1,000万円ぐらいはもらえるような事業をしてもらいたいし、それが実現可能なビジネスモデルをデザインすべきではないだろうか?国は、いわゆるブラック企業を増やすために補助金を出しているわけではない。

(4)ビジネスモデルデザインが不十分で目標売上高が達成できない
 申請書には3か年の売上目標を書くのだが、目標通りに事業を回すとキャパシティを超えてしまうことがある。例えば、飲食店やコミュニティスペース、レンタルオフィスで、申請者が目標としている顧客数を本当に獲得してしまうと、店舗からあふれる顧客が出てきてしまう、といった具合だ。

 もう少し複雑な例で言うと、ある申請者がメーカーとして起業しようとしているとする。製品は販売パートナーを通じて販売する。この場合、単に最終顧客の目標数を設定するだけでは不十分である。販売パートナー1社あたり年間何個卸すのか?納入ロットはどのくらいか?納入回数はどのくらいか?納入ロットとスケジュールに適合した物流業者は確保できているか?といったことも考えなければならない。予想以上に大きなロットを販売パートナーから要求された場合は、想定外の運転資金が必要となる。あるいは、物流業者がこちらの希望する小口配送に応じてくれなければ、販売パートナーに迷惑をかけることになる。

 原材料の仕入先についても検討が必要だ。販売先への納入ロットや納入スケジュールに合わせて生産計画を策定し、仕入ロットや仕入スケジュールを仕入先と詰めなければならない。また、それに合わせて物流業者も選定する必要がある。仕入先や物流業者がこちらの要望に応えてくれない場合は、生産計画が頓挫する。事業計画は、売上高だけを考えればよいわけではない。

(5)資金計画が不明確ですぐに資金がショートしそう
 申請書には、次のような「資金計画」を記入する欄がある。補助事業期間(だいたい1年ぐらい)の必要経費を洗い出し、その資金をどのように調達するのかを記述するものである。

創業補助金_資金計画

 調達方法を見ると、「将来の売上」が必要資金の大半を占めているケースがよくある。例えば、店舗改装・設備費などの初期投資が大きいケースや、ソフトウェア業のように固定費である人件費の割合が大きいケースでは、売上が立つよりも前に多額の支出が必要となる。それなのに、将来の売上をあてにしているようでは、資金ショートは時間の問題である。国が用意したこのフォーマットも悪いのだが、資金計画は月ごとに立てて、最も資金が必要となるのは何月なのか?金融機関からいくら借り入れる必要があるのか?を明らかにしなければならない。

 また、個人的には「親族からの借入」が多額に上るのもあまり感心しない。親族は身内だからという理由で簡単に貸してくれる反面、返済で揉めると本業に支障をきたすほどドロドロの争いになる。やはり面倒でも金融機関から借入をすべきだと思う。金融機関と話をすれば、事業計画を精査して改善ポイントを教えてくれる。これは親族からの借入では得られないメリットだ。金融機関の力を借りて事業計画をブラッシュアップさせる、という考え方が必要ではないだろうか?

(6)3年間1つのアプリだけで勝負しようとする
 審査した約150社の中には、スマートフォン向けアプリの開発で起業するケースが非常に多かった。しかし、ほとんどの計画が、3年間アプリ1本で勝負しようとしている。ゲームアプリが3年間も持つとは到底思えない。パズドラやモンスターストライクでさえ、3年持つか微妙である。サイバー・バズの調査によると、1アプリあたりのプレイ日数で最も多かったのが「1日未満」(22%)だったという(「ソーシャルアプリの寿命が二極化|MarkeZine」を参照)。そのぐらい、アプリの寿命は短い。だから、開業時に第2弾、第3弾のコンセプトがないと、すぐに行き詰まる。

 もちろん、中には半年、1年と使い続けてもらえるアプリもあるだろう。先ほどの調査によれば、「1日未満」に続いて高かったのは、「2~3か月程度」(20%)、「半年以上」(19%)である。だが、長く使い続けてもらうためには、「利用者の生活に密着していて、それなしに過ごすことは考えられない」と思わせる必要がある。私が見る限り、そこまでの魅力を感じるアプリは皆無だった。

(7)既に国などから庇護を受けているのにさらに補助金を重ねる
 こういう補助金事業をやると、必ず制度を乱用しようとする輩が出てくる。国が規制で保護している業界で起業したり、既に他の補助金を受けたりしているのに、さらに補助金を申請してくる人がいる。私が最も辟易したのは、太陽光発電事業での起業である。事業用太陽光発電装置の設置には、自治体から補助金が出る。また、国の「固定価格買取制度」によって、電力会社による買い取りが約束され、またその価格も法律で維持されている。ここまで優遇されているのに、さらに創業補助金を受けようというのだから、図々しいにもほどがある。

2014年04月10日

『ビジネスモデル 儲かる仕組み(DHBR2014年4月号)』―悲しいかな中小企業診断士に破壊的イノベーションは訪れない、他

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Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 04月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 04月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2014-03-10

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 ビジネスモデルと戦略の違いについて整理したジョアン・マグレッタの論文「コンセプトのあいまいさが失敗を招く ビジネスモデルの正しい定義」は12年前の論文の再掲だが、一読の価値がある。サム・ウォルトンが描いたのは戦略であり、マイケル・デルが描いたのはビジネスモデルであるという説明は非常に解りやすい。
 ビジネスモデルとは、事業というパズルの各片がどのように組み合わさるのかを一つの体系として説明するものである。

 しかしここには、売上げを左右するきわめて重要な要素の一つが織り込まれていない。その要素とは『競争』である。遅かれ早かれ(今日では早いことが多いが)、どんな企業も必ず競争に巻き込まれる。このような現実に対処するのが『戦略』の役割だ。競争戦略とは、どうしたらライバルよりも優位に立てるかを説明するものである。
 本号からはあと2つほど論文を取り上げたいと思う。

○グローバル・ファームも淘汰の時代 コンサルティング業界は変われるか(クレイトン・クリステンセン、ディナ・ワン、デレク・バン・ビーバー)
 破壊的イノベーションで有名なクリステンセンの最新論文。著者は、今までブラックボックスであったコンサルティング業界にも、破壊的イノベーションが訪れる兆しが見られると指摘している。事実、マッキンゼーは、「マッキンゼー・ソリューションズ」という、ソフトウェアとテクノロジーを土台としたサービスを提供し始めており、破壊的イノベーションの脅威に備えているらしい。

 従来、コンサルティングというと、優秀だが単価の高いコンサルタントを何人かファームから顧客企業に送り込み、ファームに蓄積されたマル秘の事例集と独自のノウハウに基づいて質の高い包括的なアウトプット(報告書)を出す、というのが一般的だった。ところが、マッキンゼー・ソリューションを使うと、特定の経営課題にフォーカスして、これまでよりもはるかに安いコストでソリューションを導き出すことが可能となる。

 また、著者によると、別の形でコンサルティング業務の分業化が進んでいるという。競合他社をはるかに下回る価格で、顧客企業にフリーランス・コンサルタントからなるプロジェクトチームを派遣するプロフェッショナル派遣企業が登場している。彼らの大多数は、一流コンサルティング・ファームの中・上流ポストの経験者である。彼らの頭の中には、前職で培ったノウハウが蓄積されている。だから、人材育成への投資がそれほど必要ではなく、それが低価格につながっている。マッキンゼーなどは、自社から優秀な人材が世の中に巣立っていくことをよしとしてきた。ところが、世の中に輩出した人材が増えてきて、彼らが自社にとっての脅威となり始めた、というわけだ。

 では、中小企業診断士にも破壊的イノベーションは襲いかかるのだろうか?結論から言うと、非常に悲しい理由から、中小企業診断士の業界に破壊的イノベーションは当分訪れないだろう。破壊的イノベーションが成立する条件は、(1)業界全体が非常に成熟していること、(2)製品・サービスの品質が、一部の顧客の期待水準を上回っていること、の2つだと私は考える。このうち、(1)に関して、中小企業診断士の業界はまだまだ未熟であると感じる。

 業界の成熟度を測るモデルとしては、マイケル・ポーターの「ダイヤモンド・モデル」が役に立つ。本来は産業集積の魅力を測るのを目的としたモデルだが、産業集積が魅力的である≒業界が成熟していると捉えることができるだろう。

(1)需要条件
 顧客のニーズが洗練されているかどうかが需要条件である。もともと日本は自前主義が強い国民性であり、外部のコンサルタントから助言を受けようという気質が弱い。大企業や中堅企業ではようやくコンサルティングを受け入れる文化が整ってきたが、中小企業では未だに「コンサルティングって何?」と言われてしまう。また、コンサルティングに対して適切なフィーを支払うという感覚も薄い。公的機関が無料で提供しているコンサルティングなら受けてもいいが、自社が身銭を切ることには抵抗を覚える企業が少なくない。サービスに関して相応の金額のやり取りがなければ、企業側もコンサルタント側も本気になれないのではないかと思う。

(2)要素条件
 製品・サービスに投入する要素の品質や専門性の度合いが要素条件である。だが、投入要素=中小企業診断士自身の品質はかなりブラックボックスであり、おそらく非常にばらつきがある。中小企業診断士は会合などで頻繁に集まる機会があるにもかかわらず、お互いがどのような専門性・能力を持っているのか、驚くほど知らない。先ほど紹介したプロフェッショナル派遣企業では、顧客企業の経営課題に合ったフリーランス・コンサルタントをアサインするために、コンサルタントのデータベースが完備されていると推測される。中小企業診断士も、そのようなデータベースを構築しようという動きがもう何年も前からあるが、未だに完成を見ない。

(3)関連産業・支援産業
 有能な供給業者の存在や、競争力のある関連産業の存在が、業界を成熟させる。中小企業診断士の関連業界には、同じ士業である税理士や弁護士、信用組合や信用金庫などの金融機関、中小企業基盤整備機構や商工会議所などの公的機関がある。中小企業庁は、中小企業診断士がだらしないものだから、中小企業にコンサルティングサービスを提供する際に、関連業界のプレイヤーが多数関わるスキームを考える。だが、彼らは必ずしもコンサルティングが専門ではないため、チームの方向性がぶれやすい。しかも、(1)で見たように報酬は限られているから、プレイヤー同士が少ないパイをめぐって醜い奪い合いをする。これでは顧客志向とは言えない。

(4)競争環境
 中小企業診断士は投入要素であると同時に、お互いがライバルの関係にある。また、最近は中小企業庁が税理士や金融機関にもコンサルティング能力を要求しているから、関連産業のプレイヤーもまたライバルである。ところが、中小企業に対するコンサルティングはどう進めるべきで、そのためにはどのような能力・知識が求められるのかという標準が業界として確立されていないため、プレイヤー同士が同じ土俵の上に立って競争できない。中小企業診断士の中には、「中小企業にはいろんな課題があって、コンサルティングのやり方も様々だ」とおっしゃる方がいるのだが、自分の能力を客観的に評価されたくないという逃げの口実でしかないように思える。

○経済合理性だけでは、苦しい時に粘れない 【インタビュー】ビジネスモデルとは『やりたいこと』の確信である(スマイルズ代表取締役社長・遠山正道)
 主語はビジネスではなく、『やりたいこと』なのです。(中略)どんなに苦しくても撤退はしませんでした。なぜなら、私たちには『やりたいことをやりたい気持ち』、そして『やりたいことをやるべき意義』があったからです。
 前職の会社で、皆が「やりたいこと」をやった結果、皆沈んでいったという苦い経験を持つ私からすると、どこかきれいごとのような気がしてならない。どんなに「やりたいこと」であっても、それを顧客が求めていなければ意味がない。もっとも、スマイルズ社の場合、単に「やりたいこと」を追求するのではなく、それを社会的な使命にまで昇華させる段階で、市場の試練を受けていると解釈できるのかもしれない。

 「やりたいこと」を軸に戦略やビジネスモデルを構築するというのは、実は戦略論にほとんど見られない考え方である。戦略論にあるのは、「できること」を軸としたアプローチである。ゲイリー・ハメルらが提唱したコア・コンピタンスや、ジョージ・ストークらが提唱したケイパビリティといった概念は、このアプローチから生まれた。「やりたいこと」から戦略を構想するというアプローチを、少なくとも私は知らない。20世紀の戦略論を体系的に整理したヘンリー・ミンツバーグの著書『戦略サファリ』にも、そのようなカテゴリはなかったと記憶している。

戦略サファリ 第2版 -戦略マネジメント・コンプリート・ガイドブック戦略サファリ 第2版 -戦略マネジメント・コンプリート・ガイドブック
ヘンリー ミンツバーグ ブルース アルストランド ジョセフ ランペル 齋藤 嘉則

東洋経済新報社 2012-12-21

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 《10学派一覧(旧ブログにジャンプします)》
 第1学派:デザイン・スクール
 第2学派:プランニング・スクール
 第3学派:ポジショニング・スクール
 第4学派:アントレプレナー・スクール
 第5学派:コグニティブ・スクール
 第6学派:ラーニング・スクール
 第7学派:パワー・スクール
 第8学派:カルチャー・スクール
 第9学派:エンバイロメント・スクール
 第10学派:コンフィギュレーション・スクール

 「やりたいこと」が市場に受け入れられるかどうかは、一種の賭けである。「やりたい」と思っている自分が熱くなっているだけで、市場はそんなものを全く求めていない可能性もある。「やりたいこと」に共感してくれる顧客がどこにどれだけいるのか、時間をかけてその答えを見つけ出さなければならない。よって、結果が出るまで体力勝負となる。事実、スマイルズ社の事業の中には、収益化までに8年を要したものもいくつかあるそうだ。結果的に顧客が見つかり、一定の成功を収めているからよいものの、もっと上手に戦略を構築すれば、もっと早く黒字化することができたのではないか?とも思う。

2013年11月17日

【ベンチャー失敗の教訓(第44回)】仕事に人を割り当てるのではなく、人に仕事を割り当ててしまう

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 組織デザインの論理的な順番を簡単に述べるならば、まずは経営ビジョンを基軸として、経営ビジョンと整合性の取れた戦略を構想するところからスタートする。次に、その戦略に基づいて戦略目標(売上高○○円、市場シェア○○%など)を設定し、目標の達成に向けたビジネスモデルをデザインする。ビジネスモデルが描けたら、モデルの中身を具体化し、その中で自社が担当すべき業務の内容を詳細に洗い出す。その上で、業務を円滑に運営するための組織構造や、業務に投入する経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報・知識)を決定する。業務と人材の関係で言えば、業務が決まってから人材が決まる、つまり仕事に人が割り当てられるのであって、その逆ではない。

 ところが、X社ではその逆のことがしばしば発生していた。売上高が芳しくなく、比較的手が空いている社員が多かったことも、事態の悪化に拍車をかけていた。手持ち商談が少ない営業担当者は、研修の内容を勉強するという名目で、必要もないのに頻繁に研修に同席していた。外出していれば、自分が仕事をしていないことを多少はごまかせるからである。また、研修運営をサポートするオペレーションチームの仕事に対して、オペレーションチームが特に忙しいわけでもないのに、稼働日数の少ない講師が手を出していることもあった。彼らは、研修で使用している診断(アセスメント)の集計や、研修テキストの印刷といった事務的な仕事を”横取り”していた。

 年俸1,000万円(!)ももらっていた営業チームのシニアマネジャーがせっせと研修テキストの印刷をやっている時には、さすがに注意する気が失せた。シニアマネジャーは、「今回の研修のテキストはいつもと違って複雑だから、オペレーションチームに任せておけない」という謎の言い訳をしてきた。だが、印刷に何らかの高等テクニック(?)が必要なほど複雑なテキストは、X社のどこを見渡してもあるわけがない。そのシニアマネジャーは、本来の重要ミッションである新規顧客の開拓をなおざりにしていたために、手持ち無沙汰になっていただけだ。それなのに、研修テキストの印刷を口実にして、自分がやるべき業務から逃れていた。

 オペレーションチームは4人いて、前述した診断の集計やテキストの印刷の他に、自社セミナーへの申込者の管理、研修テキストの簡単なカスタマイズや修正、研修で使用する模造紙やマーカーといった備品の手配、研修運営のマニュアルの整備などを行っていた。4人はいつも、全員が揃って夜遅くまで仕事をしていた。確かにオペレーションチームの仕事の内容は多岐にわたるものの、X社の売上高の現状を考えると、毎日残業をしなければならないほど仕事の量が多いのかどうか、私には疑問であった。

 X社の売上高が振るわず、2009年の秋に2度目のリストラを行った際、オペレーションチームを解体することが決定された。オペレーションチームの仕事は、講師、コンテンツ開発担当者、営業担当者で協力しながらカバーすることになった。オペレーションチームの4人は、リストラされることが決まると、今までの長時間労働が嘘であったかのように、一斉に定時に帰るようになった。リストラされたショックにより、手を抜いて仕事をするようになった点を差し引いたとしても、結局のところ、オペレーションチームにはそのぐらいの仕事量しかなかった、ということだろう。

 オペレーションチームが解体されてしまったため、稼働率の低い講師は、仕事を横取りするターゲットを失った。すると今度は、講師チームの内部に目をつけるようになった。すなわち、稼働予定がある講師の仕事に寄りついて、本来その講師がやるべき研修テキストのカスタマイズなどに首を突っ込むようになったのである。

 ある時、大手企業から約4,000万円という大型案件を受注することができた。1回約80万円のシニア社員向けキャリア開発研修を1年間で50回開催し、50代の社員全員を参加させるというものであった。この研修の担当講師がX社には1人しかいなかったため、臨時で外部講師を1人使うことに決まった。この案件は、講師2人と営業担当者の3人で回すことになった。

 ところが、稼働率が低い他の講師が、まるで密に群がる蟻のように、この案件に近づくようになった。そして、グループワークの設計や診断ツールの開発、研修マニュアルの作成など、必要以上に仕事を作り出しては、皆で忙しい”フリ”をするようになった。結局、3人で回すはずの案件に講師が2人加わり、さらには営業活動もサービス開発もせずに時間を持て余していたA社長までもが加わって、全部で6人がこの案件にほぼつきっきりになるという状態が1年近く続いた。

 これでは利益を自ら手放すようなものだ。そもそも、同じ顧客企業に同じ研修を提供するのだから、そんなに付加的な仕事が頻繁に発生するはずがない。私はある顧客企業に研修とコンサルティングの両方を提供して、年間で2,500万円ほどの売上を上げていたことがあるが、その仕事は私と外部講師の2人で回していたし、私はそれ以外にも案件を担当していた。シニア社員向けキャリア開発研修の案件は私の仕事の1.6倍の規模があるとはいえ、6人はさすがに多すぎである。しかも、その6人は私よりも年俸が高い人ばかりである。

 人には「易きに流れる」という性質と、「暇を嫌い、暇を仕事で埋めたがる」という性質がある。この2つの性質のために、組織の中にはどうでもいい仕事が増えていく。人は少し暇な時間ができると、周囲の人に何か手伝えそうなことはないかと聞く。聞かれた人は、申し出をむげに断ることもできず、相手の好意に応えるために、何かしら簡単な仕事をひねり出す。こうして、それほど価値のない仕事が組織を侵食し始める。

 だが、本当に本来業務に集中していれば、暇などあり得ないのではないだろうか?自分のミッションにフォーカスしていると、やってもやっても課題が出てくる。目標は高く、全身全霊を捧げなければ達成できそうにない。それが本来業務というものではないだろうか?自分が暇だから他人の仕事を手伝いたいなどと安易に言い出すのは、ミッションに集中できていない証拠である。それを「チームワークの発揮」などとというきれいごとで許してはならない。

 社員がそうならないように、本来業務へと引き戻すのがマネジャーの役割である。加えて、マネジャーは自らの仕事についても、なすべき仕事ではなく、やりたい仕事へと安易に流れていないかどうかを厳しくチェックしなければならない。
(※注)
 X社(A社長)・・・企業向け集合研修・診断サービス、組織・人材開発コンサルティング
 Y社(B社長)・・・人材紹介、ヘッドハンティング事業
 Z社(C社長)・・・戦略コンサルティング
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