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『熱と誠(『致知』2017年2月号)』―顧客が「下問」してくれる企業こそ真の顧客志向を体現している
戦略を立案する7つの視点(アンゾフの成長ベクトルを拡張して)(2/2)
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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
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(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

Experian海外企業信用調査 海外企業信用調査(Experian)
(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

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(以下の資格の講師をしています。
 ―ITパスポート
 ―情報セキュリティマネジメント
 ―経営学検定(初級・中級)
 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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2017年02月02日

『熱と誠(『致知』2017年2月号)』―顧客が「下問」してくれる企業こそ真の顧客志向を体現している

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致知2017年2月号熱と誠 致知2017年2月号

致知出版社 2017-02


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 ―スーパースター団員(※ラッキーピエロで導入されているポイント会員制度)の方はどれくらいいらっしゃるのですか。
 王:累計では3700人は超えています。自主的に店内のトイレットペーパーを交換してくださったり、「王さん、○○店の草取り、そろそろしたほうがいいんじゃないの?」などと、直接電話が掛かってくることもよくあります。おそらく自分が「ラッキーピエロを育てているんだ」という気持ちからなのだと思います。そのように当店を心から愛してくださっている方がいらっしゃるということは本当にありがたいことです。
(王一郎「愛こそが、私の人生と経営を導いてきた」)
 やや教科書的な説明になるが、マーケティングのコンセプトは20世紀から21世紀にかけて何度か変遷を遂げてきた。最初が「生産志向」と呼ばれる時代で、おおよそ1900~1930年頃を指す。この時期は慢性的なモノ不足であり、作れば作った分だけモノが売れた。次に訪れたのが「販売志向」の時代である。1930~1950年頃には技術革新による大量生産が実現し、消費者の所得水準が上昇した。企業は顧客から選ばれるために、販売活動に注力した。ただし、依然として需要が供給を上回っており、企業はプロダクト・アウト的な発想をとっていた。

 1950年~現在に至る時代は「消費者志向」、「顧客志向」の時代である。経済が成熟化し、消費者の嗜好が多様化した。また、初めて供給が需要を上回るようになり、企業は消費者のニーズにきめ細かく寄り添って製品・サービスを製造・販売しなければ、過剰在庫を抱えるリスクに直面した。企業はそれまでのプロダクト・アウトの発想からマーケット・インの発想へ転換することを迫られた。そして、この時代にマーケティングの理論は最も発達した。

 現代はさらに、「経験志向」、「個客志向」の時代であると言われる。企業は今までセグメント単位で市場と向き合ってきたが、これからは1人1人の顧客のニーズの違いを汲み取り、それぞれの顧客にとって特別な経験を味わってもらうことが重要とされるようになった。ただし、企業が抱える全ての顧客に対して「個客志向」を貫くと、企業側のコストが膨大になる。そこで、企業は「個客対応」に値する顧客を選別するようになった。典型的な手法が小売店などで実施されている「FSP分析」であり、FSP分析に将来という時間軸を加えて、その顧客が生涯に渡ってどのくらいの利益を自社にもたらしてくれるかを分析する「LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)」である。これらの分析によって選ばれた重要顧客を「CRM(Customer Relation Management:顧客関係維持)システム」で管理し、いわゆる「One to One マーケティング」を実践していく。

 ただし、これらの取り組みはあくまでも企業側から顧客を一方的に分析し、管理する関係である。「顧客志向」、「One to One マーケティング」には、さらに次の段階が存在すると考えられる。それが「顧客との協創志向」のマーケティングである。企業は製品・サービスを提供する側、顧客はそれを受け取る側という役割分担が崩れ、企業と顧客が協働して顧客価値を創造していくフェーズである。そのキーワードとなるのが、顧客による「下問」である。

 以前の記事「山本七平『日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条』―日本組織の強みが弱みに転ずる時(1)(2)」でも書いたが、日本社会は垂直・水平方向に細かく区切られた巨大なピラミッド社会である。垂直方向の関係を大まかにスケッチすると、「(神?⇒)天皇⇒立法府⇒行政府⇒市場/社会⇒企業/NPO⇒学校⇒家庭⇒個人」となる。上の階層は下の階層に指揮命令する関係にあるが、ここで私は山本七平の言葉を借りて「下問」という言葉を導入した。

 上の階層は、全てのことを熟知した上で下の階層に命令しているわけではない。そこで、その命令の不足を下の階層に直接尋ねる。そして、下の階層が成果を上げるために何か支援できないかと申し出る。つまり、上の階層が下の階層に降りてくるのである。こうした上の階層の下問は、下の階層による「下剋上」(これも山本七平の言葉)を誘発する。すなわち、下の階層は、上の階層の命令通りにやるよりも、もっと優れた方法があると上の階層に提案するのである。ただし、通常の意味における下剋上とは異なり、山本七平の言う下剋上は、上の階層を打倒することを目指していない。上の階層から指揮命令を受ける、あるいは下問を受けるというその関係の中において、下の階層にとどまりながら下剋上を果たす。

 こうした「下問」―「下剋上」は、主に企業内における関係を想定していた。上司が部下に下問し、部下が上司に対して下剋上する。すると、提案を受けた上司は「よし解った。じゃあ君がやってみなさい。責任は私が取る」と言って提案を採用してくれる。トップダウンのリーダーシップに慣れ切ってしまい、社員が皆受け身になっている組織と、それぞれの社員が自分の持ち場で自律的に奮闘し、組織全体が活性化している企業との違いはここにある。

 「顧客との協創志向」のマーケティングにおいては、顧客と企業の関係に「下問」―「下剋上」を持ち込む。顧客は、単に「自分はこれがほしい」と企業にオーダーするだけではなく、「企業が事業の目的を達成するために、顧客としてできることは何か?」と問い、企業のために支援活動を行う。だから、ラッキーピエロでは、スーパースター団員が自主的に店舗のトイレのトイレットペーパーを交換してくれたり、他店舗の清掃具合いを気にしてくれたりする。顧客の下問は、クレームとは明らかに違う。クレームは、自分の不満を企業に解消してもらうことを目的としている。これに対して顧客の下問は、他の顧客のためになることをしたいという動機に支えられている。

 顧客が下問してくれるようになると、顧客との間で双方向の関係ができ上がる。この段階になると初めて、「個客志向」や「One to One マーケティング」は「顧客との協創志向」へと成熟する。さらに言えば、顧客からの下問に対して、企業が下剋上するようになるとなおよい。「顧客との協創」と書くと、顧客と企業が仲良くすればよいというイメージが抜け切らなくて個人的にはあまり好きではないのだが、「下問」と「下剋上」の関係と書けば、顧客と企業との間に一種の緊張感が生まれる。その緊張感がより優れた顧客価値、より強固な顧客と企業の絆を生み出すと信じる。

 ここに至って、顧客と企業は上下関係ではなく、対等のパートナーとなる。ところで、このパートナーという言葉について、本号で1か所だけ気になる記述があった。
 新井:で、これらのことを機会のあることにルミネの社員のみならず、お付き合いしているショップスタッフ、そこのオーナーさんにも徹底しているんです。従来のディベロッパーとテナント、という上下関係ではなく、我われはパートナーだと思っています。
(新井良亮、松井忠三「熱と誠が経営の道を開く」)
 新井良亮氏はJR東日本で駅ナカなどの生活サービス事業を担当した後、ルミネ社長になった方である。ディベロッパーであるルミネと、ルミネに入店しているテナントはパートナー関係だというわけだが、ルミネにとってテナントは流通チャネルであり、重要な顧客である。通常、「私はあなたのパートナーである」と言う時、元々上の地位にいた者が下位の者のところにまで降りてきて対等の関係を宣言するものであり、その逆ではない。

 ところが、引用文では、下の立場にあるはずのルミネが上の立場にあるテナントをパートナーと呼んでいる。厳しい言い方になるが、これはルミネの思い上がりではないかと思う。引用文中において、ディベロッパーが上で、テナントが下だと明言されていることも影響しているのだろう。ディベロッパーは一等地を押さえて、どんなテナントでも大抵は成功する下地を作ってやったのだから、テナントはディベロッパーに感謝せよとでも言いたげである。そして今度は、ルミネがパートナーとしてテナントの目線まで降りてきてやったというわけだ。

 本号の記事によると、ルミネは全てのショップスタッフにルミネ主催の接客研修を受けてもらったり、ショップスタッフの研修会を定期的に開催したり、モノづくりの現場を見学させたりするなど、優れた取り組みを色々と行っている。しかし、根本のところでテナントとの関係に関する意識を改めない限り、テナントとの共存共栄は成り立たないと思う。ディベロッパーは、テナントに「出店していただいている」と思わなければならない。その上で、テナントはディベロッパーに下問し、ディベロッパーはテナントに下剋上する。つまり、テナントは「ルミネ全体の価値を高めるために我が店舗にできることは何か?」と問い、ディベロッパーは「テナントが顧客に対してよりよい価値を提供するためにはこうするべきだ」と提案する。これが真のパートナー関係であると考える。

 《2017年2月8日追記》
 本ブログで最初に「下問」という言葉を使ったのは、「山本七平『帝王学―「貞観政要」の読み方』―階層社会における「下剋上」と「下問」」という記事だったと思う。この時は、唐の太宗が臣下である魏徴や房玄齢らに対して、自らの能力不足を認め、自分がこの国をよりよく統治するためにはどうすればよいか意見を求めるという意味で「下問」という言葉を用いた。つまり、「下問」の目的は太宗自身のためであった。ところが、「下問」に関する記事を何本か書いているうちに、「下問」の意味が変質していたことに気づいた。

 今回の記事でも解るように、上司は部下に一方的に命令するだけでなく、部下が成果を出せるように上司として何か支援できることはないかと「下問」する。あるいは、顧客は企業に対し一方的にニーズを伝えるのではなく、企業が成果を上げる=他の大勢の顧客の役に立つために一顧客として何か支援できることはないかと「下問」する。すなわち、「下問」は下位に位置する部下や企業のためになされるのである。山本七平が用いた「下問」の意味からは外れるが、日本人は重層的な階層社会において、垂直・水平方向に自由に移動し、自らに課された目的だけでなく、他者の目的の達成をも支援する目的の多重性という観点から、「下問」という言葉を、自分より下の階層の者の成果創出をサポートするという意味で使いたいと思う。


2015年06月25日

戦略を立案する7つの視点(アンゾフの成長ベクトルを拡張して)(2/2)

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 (前回の続き)

 《参考記事(旧ブログ)》
 【シリーズ】ビジネスモデル変革のパターン(全20回予定)

戦略を立案する7つの視点

 ⑤新市場開拓戦略とは、既存の製品を活用して、新規の市場を切り開く戦略である。ただし、既存の製品がそのまま新規の市場に通用するとは考えにくいため、既存の製品を多少変更する必要はある。新市場開拓戦略としてまず挙げられるのが、「破壊的イノベーション」で知られるクレイトン・クリステンセンの「ローエンド型破壊」や「新市場型破壊」である。企業は製品の付加価値向上を狙い、こぞって性能アップを目指す。ところが、あまりに性能が上がりすぎると、そこまでのレベルを期待していない顧客層が生まれる。彼らをターゲットに、既存製品の性能を落としたり、機能を絞り込んだりした製品を販売すると、一気に受け入れられることがある。

 「ローエンド型破壊」や「新市場型破壊」は、個人的には意外と高度な戦略であると思う。もっと手軽にできる方法としては、旧ブログの記事「【第4回】全く異なる属性の顧客を狙う―ビジネスモデル変革のパターン」で述べたように、反対の属性の顧客に狙いを定める、というものがある。非常に安直な発想だが、男性向けの製品を女性向けに、若者向けの製品を高齢者向けに販売する、といった具合だ。だが、中には比較的成功しやすい逆転の発想のパターンもある。

 例えば、BtoBから始まった企業がBtoCでも成功することがある。一般的に、法人顧客は個人顧客に比べて要求水準が厳しいため、製品の完成度が高くなる。それを、個人顧客の要求レベルに合わせて上手く調整すれば、個人顧客にも受け入れられるようになる。日本通運は、陸運元会社として創業し、法人向けの貨物輸送・物流業務を得意としていたが、一方で1977年に開始した「ペリカン便」でも成功した(その後、JPエクスプレスに移管)。もちろん、顔の見える限られた顧客とじっくりビジネスを行うBtoBと、不特定多数の顧客を相手に迅速にビジネスをしなければならないBtoCでは、求められるビジネスモデルが異なる点は言うまでもない。

 富裕層向けの製品を一般消費者向けに展開するという方法もある。リチャード・コニフ『金持ちと上手につきあう法』(講談社、2004年)によると、富裕層の「顕示的消費」が人々の生活を豊かにしたという。富裕層は、プラスティック、水洗トイレ、陶器、ガラス、自動車などの最初の購入者となった。それをうらやましく思った多数の一般消費者からのプレッシャーによって、数多くの高級技術が実用技術へと変容し、やがて一般消費者にも手が届くようになったというのだ。よって、今は富裕層しか消費していない製品の中に、将来のヒット製品が隠れている可能性がある。

金持ちと上手につきあう法  「ザ・リッチ」の不思議な世界へ金持ちと上手につきあう法 「ザ・リッチ」の不思議な世界へ
R・コニフ

講談社 2004-03-16

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 軍事技術を民生技術に転用するという道もある。コンピュータはもともと弾道計算が目的であったし、電子レンジはアメリカのレイセオン社のレーダー開発が発端である。インターネットについても、ソ連からの核攻撃を想定し、仮に核攻撃を受けても指揮能力を喪失しないようにするために、分散処理システムとしての現在のインターネットの原型が誕生したという俗説がある。アメリカは財政赤字などを理由に軍事費を削減しているが、軍需産業を手放すことは絶対にないだろう。軍事技術から重要なイノベーションが生まれることをよく知っているからだ。

 既存の製品を未知の市場で展開する方法には、海外展開も含まれる。ただし、日本ではよく知られた製品でも、海外では初めて見る製品であるから、それが受け入れられるには長い時間がかかるし、場合によっては大幅なローカライズも必要である。日本のコンビニは今や世界各国に進出しているが、現地の習慣に合わせてカスタマイズされている。例えば、インドネシアでは家族で買い物に出かけ、お店で買ったものをその場で食べる習慣がある。そこで、インドネシアに進出したコンビニは2階建てとし、2階を食事スペースとしている。

 逆に、インドネシアに進出したある100円ショップから、1つ失敗談を聞いたことがある。この100円ショップは、オペレーション効率を優先し、日本とほとんど同じ製品ラインナップにした。ところが、その中にはカブトムシ用の虫かごと虫取り網が含まれていた。現地のインドネシア人によれば、インドネシアにはカブトムシはいないし、昆虫を捕まえて家で飼うという習慣もないという。

 ⑥代替品開発戦略は、新規市場開拓と同時に既存市場を破壊するという意味で、非常に危険な戦略である。しかし、放っておけば誰かが代替品を開発して、自社のビジネスを破壊するに違いない。よって、痛みを伴うとしても、着手せざるを得ない領域である。最も予測しやすい代替品は、大幅な技術革新によって、性能などが飛躍的に変化するものである。ガソリン自動車から電気・水素自動車への転換は最たる例だろう。顧客層自体は変化しないが、技術的には全く別物となる。しかも、電気・水素自動車は、ガソリン自動車に取って代わる存在である。

 2つ目のパターンは、顧客の同じニーズを別の手段で満たすような代替品の開発である。以前、マンガ雑誌社の人から、「社会人男性に雑誌が売れなくなった」という嘆きを聞いたことがある。雑誌不況も一因なのだが、一番の原因は「スマホが普及したこと」であると分析していた。結局、電車でマンガ雑誌を読んでいる大人にとって、マンガの中身が重要なのではなくて、目的地に着くまでの暇つぶしができることが重要だったわけだ。そして、スマホは暇つぶしの道具として最適であり、マンガ雑誌を駆逐してしまった。この教訓から学ぶことは多いと思う。

 ここまでの2つの話は、既存顧客のニーズをいわば対処療法的に解決するものである。代替品開発戦略の3番目は、顧客ニーズを根源的に解決する。最近、電車で髭剃りの広告をよく見かけるのだが、髭剃りの広告は10年前から切れ味のよさを訴求するだけで、内容的にはあまり変わっていないように感じる。髭剃りは、「伸びた髭を剃る」というニーズを解決するものである。しかし、顧客の根本的なニーズは、「髭が生えないようにする」ことかもしれない。よって、髭を毛根から死滅させる塗り薬が発明されたら、髭剃り市場は一気に縮小するのではないだろうか?

 未知の市場を今までに存在しなかった製品で開拓するのは、⑦完全なるイノベーションである。この分野ははるかに難易度が高く、どんなアプローチがあるのか、私には十分なアイデアがない。顧客の潜在ニーズから出発するか、先行する技術シーズから出発するか、そのどちらかなのだが、具体的にどう検討すればよいのか、今後もっと詰める必要がある。ただ1つ、完全なるイノベーションとは言えないかもしれないけれども、「日本には存在しないが海外に存在する製品を日本に持ち込むことで、日本国内の市場を切り開く」という方法があることを指摘しておきたい。

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2015年06月24日

戦略を立案する7つの視点(アンゾフの成長ベクトルを拡張して)(1/2)

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 《参考記事(旧ブログ)》
 【シリーズ】ビジネスモデル変革のパターン(全20回予定)

 上記の「ビジネスモデル変革のパターン(全20回)」シリーズといい、今日これから書く記事といい、戦略というものをエレガントに描き上げる力が私にはどうも欠けているようだ。だから、私は戦略コンサルタントには向いていないと思う。そう自覚してながら、敢えて戦略について書くことをどうかお許しいただきたい。

 戦略コンサルタントには向いていないと言いながらも、ありがたいことに戦略立案のコンサルティングの仕事は舞い込んでくる。たいていの場合、コンサルタント側も顧客企業側も、単体の製品・サービスもしくは単独事業の戦略立案を目指している。しかし、企業というのは、全体を見渡しながら戦略を構想しなければならない。その全体感をとらえられるフレームワークはないものかと思案した結果、アンゾフの「成長ベクトル」を変形した以下のアイデアにたどり着いた。

戦略を立案する7つの視点

 まず、戦略の最も基本的な目的として、企業は既存の顧客に対して既存の製品・サービス(以下、単に製品と記す)を再購入してもらわなければならない。そのための戦略が、①リピート購入戦略である。だが、どんなに既存顧客を囲い込み、リテンションに努めても、一定の割合で既存顧客は離反してしまう。また、リピート購入だけでは企業の成長が見込めない。よって、競合他社から顧客を奪う戦略も必要となる。これが、②市場シェア拡大戦略である。この2つの戦略を考えていない企業はまず存在しないだろう。

 企業が単一の製品だけで成長を遂げるのには限界がある。それに、ある日突然、その製品の代替品が登場したら、その企業は一発でアウトである。そういう事態を避けるために、企業は周辺製品への進出を検討しなければならない。既存の顧客に対し、既存の製品と関連がありそうな新規製品を提供する。顧客が財布の中から自社に支払う金額を増やすという意味で、③ウォレットシェア拡大戦略と呼ぶ。具体的には、旧ブログの記事「【第5回】顧客の隣接する消費行動を押さえる―ビジネスモデル変革のパターン」、「【第6回】顧客のライフステージを押さえる―ビジネスモデル変革のパターン」で書いたような戦略が該当する。

 アンゾフの成長ベクトルでは、新規顧客に新規製品を提供する④多角化戦略はリスクが高い禁じ手であるとされる。しかし、自社のターゲット市場が一瞬にして消え去る可能性もある今日では、リスクヘッジとしての多角化も十分検討に値する。多角化戦略には、大きく分けて外部環境アプローチと内部環境アプローチがある。

 外部環境アプローチで最も単純な方法は、マクロ的に見て高い成長が見込める業界に参入することである。現代であれば、高齢者や環境などをテーマにしたビジネスが容易に思いつく。もう1つの外部環境アプローチは、輸入超過に陥っている製品に着目することだ。輸入超過であるということは、国内に確実にニーズがありながら、それを充足する企業が足りていないことを意味する。競合他社に先んじてその分野に参入すれば、勝機がある。例えば、以前の記事「『ベンチャーとIPOの研究(一橋ビジネスレビュー2014年AUT.62巻2号)』―マクロデータから見る事業・起業機会のラフな分析」で挙げた医療機器などがこれに該当する。

 内部環境アプローチの1つ目は、経営資源の有効活用である。その好例は、富士フィルムであろう。デジタルカメラの台頭によって(その一翼を富士フィルムも担っていたわけだが)、カラーフィルム市場は年10%以上も減少した。この危機的状況を救ったのが、フィルム技術の転用による化粧品市場への進出であった。現在の富士フィルムは、デジタルイメージング、ヘルスケア、高機能素材、グラフィックシステム、光学デバイス、ドキュメントの6つを重点事業領域としている。

 もう1つの内部環境アプローチは、経営ビジョンを起点とするものである。かなり古い事例になるが、NECは1970年代に「C&C(コンピュータ&コミュニケーション)」というビジョンを描いていた。C&Cというコンセプト自体にはそれほど新鮮味はないのだが、NECの戦略を大きく転換させるのに十分な役割を果たした。当時のNECは、NTTに通信機器を供給するのが主たる事業であった。ところが、C&Cを標榜したことで、NECは企業をターゲットとし、コンピュータ、通信、電子部品を融合させたソリューションを提供する企業へと変化したのである(ゲイリー・ハメル、C・K・プラハラード『コア・コンピタンス経営』〔日本経済新聞社、1995年〕)。

コア・コンピタンス経営―未来への競争戦略 (日経ビジネス人文庫)コア・コンピタンス経営―未来への競争戦略 (日経ビジネス人文庫)
ゲイリー ハメル Gary Hamel C.K. プラハラード C.K. Prahalad 一條 和生

日本経済新聞社 2001-01

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 ①~④は、国内に既に市場が存在していることを前提とし、その市場を取り込む戦略であることから、マーケティングの範疇に入る。一方で、これから述べる⑤~⑦は、国内や海外で未知の市場を創造することを目的としているので、イノベーションである。マーケティングとイノベーションの違いは、論者によっててんでバラバラなのだが、私自身はこのような使い分けをしている。

 (続く)

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