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【東京商工会議所】メコン5か国の会社法および投資法徹底比較―近年の改正状況を踏まえて(セミナーメモ書き)
「ミャンマー投資セミナー」に行ってきた(日本アセアンセンター)
「ミャンマー・エーヤワディー管区投資誘致セミナー」に行ってきた

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2017年05月12日

【東京商工会議所】メコン5か国の会社法および投資法徹底比較―近年の改正状況を踏まえて(セミナーメモ書き)


アンコールワット
 
 東京商工会議所のセミナーに参加してきた。講師は大江橋法律事務所の弁護士。
 
 【Ⅰ.メコン各国の会社法】
 (1)会社法施行・改正状況
タイ  非公開会社については、1925年施行の民商法という非常に古い法律しかない。公開会社については、公開会社法(1992年施行)が適用される。いずれも、過去に大きな改正は行われていない。社外取締役に関する規定は上場企業にのみ適用される。株主代表訴訟については、制度自体は存在するものの、実際には行われていない。多重代表訴訟に関しては、法律そのものが存在しない。
ベトナム  2005年に統一企業法が施行された。2014年に改正され、2015年7月より改正企業法が施行されている。
ミャンマー  1914年にインド法を継受した会社法が施行され、100年近くほとんど改正されていなかった。2017年3月、改正会社法が次の議会に提出されることが判明した(倒産、清算、買収などについては、今後改正予定)。
カンボジア  2005年に会社法が施行され、その後大きな改正はない。2016年より、オンラインによる商業登記制度がスタートしている。
ラオス  2014年に会社法が施行されている。

 (2)外国企業とされる要件
 ラオスを除いて各国とも、「出資比率」ベースで判断される。「議決権」ベースではない。よって、出資比率上は内資企業でありながら、外国企業が経営権を握るために、種類株式を使用することがある。具体的には、例えばタイにおいて出資比率は50%未満だが、議決権を日本:タイ=2:1などとすることで、議決権ベースでは外国企業がマジョリティとなり得る。
タイ  50%以上の出資比率。なお、土地法上では49%超と規定されており、両法律の間に齟齬がある点に注意が必要である。
ベトナム  51%以上の出資比率。
ミャンマー  従来は1株でも外資が保有していると外国企業と見なされた。改正法により、35%以上となる予定。
カンボジア  51%以上の出資比率。
ラオス  一般的な定義規定がない(合弁会社の場合、外国企業の最低出資比率は資本金の10%以上と定められている)。

 (3)株主の最低数
タイ  非公開会社は3名以上、公開会社は15名以上。設立時の発起人には自然人しかなれないことに注意が必要である。
ベトナム  1名有限責任会社は1名、複数社員有限責任会社は2名以上50名以下、株式会社は3名以上。
ミャンマー  2名以上が必要であったが、改正法により単独株主が認められる予定
カンボジア  非公開会社は1名以上、公開会社は2名以上。
ラオス  有限責任会社は1名以上30名以下、公開会社は9名以上。

 (4)株主総会の決議要件など
タイ  普通決議は出席株主の議決権の過半数、特別決議は4分の3以上。デフォルトとして、「1人1議決権」だが、通常は定款で修正する。
ベトナム  株式会社の普通決議は、出席株主の議決権の51%以上、特別決議は65%以上(定款に定める必要がある)(ちなみに、旧会社法では、普通決議でも65%以上であった)。
ミャンマー  普通決議は出席株主の議決権の過半数、特別決議は4分の3以上。改正法により、「特殊決議」が廃止される予定。
カンボジア  普通決議は出席株主の議決権の過半数、特別決議は3分の2以上。
ラオス  普通決議は出席株主の議決権の過半数、特別決議は3分の2以上(定足数が80%以上)。

 (5)取締役の最低人数・居住要件など
タイ  非公開会社は1名以上、公開会社は5名以上。非公開会社では国籍・居住要件がないのが建前となっている。実際には、土地・建物に対する投資を含む案件の場合、日本人取締役が多いと土地局による手続きが遅くなると言われている。
ベトナム  株式会社では3名以上11名以下。法定代表者のうち1名はベトナムに居住する必要がある。
ミャンマー  最低2名以上必要と解釈されてきたが、改正法により1名以上と明記される予定。また、最低1名はミャンマーに居住する必要があると規定される見込み。
カンボジア  非公開会社は1名以上、公開会社は3名以上。国籍・居住要件なし。
ラオス  非公開会社は1名以上、公開会社は9名以上。国籍・居住要件なし。

 (6)取締役会の開催方法・頻度など
タイ  2016年9月の通達により、電話・テレビ会議の要件が明確化された(国外開催は不可であり、参加者は全員タイにいなければならない)。また、書面決議も禁止された。開催頻度については定めがない。
ベトナム  オンライン会議、郵便・電子メールなどによる投票が可能である。また、取締役会は最低3か月に1回開催する。
ミャンマー  書面決議、電話・テレビ会議は、定款に定めることで有効となる。
カンボジア  書面決議、電話・テレビ会議は有効と解釈されている(定款の定めが必要)。また、取締役会は最低3か月に1回開催する。
ラオス  電話・テレビ会議は有効と解釈されている(定款の定めが必要)。

 (7)署名権限者
 基本的に代表取締役という概念がない。唯一、ベトナムの「法定代表者」がそれに相当。
タイ  会社のために署名権限を有する取締役を登記する必要がある。複数人を指名して共同署名を求めることも可能である。
ベトナム  法定代表者を複数設置することができる。ただし、そのうち最低1名はベトナムに居住していなければならない。
ミャンマー  実務上、Managing Directorに対外的な署名権限があると解釈されてきた。Managing Directorが日本の代表取締役に相当し、取締役会が委任状を提出するという運用を行ってきた。改正法により、取締役2名の署名による契約締結が可能となる予定。ただし、実務上は引き続き取締役会が署名人に委任状を提出することになる見込みである。
カンボジア  定款などで署名権限者を定めることが可能である。
ラオス  署名権限者(General Director)を定めることが可能である。

 (8)監査役の要件
 日本のように取締役の業務監査まで行う監査役は存在せず、会計監査のみを担当する。
タイ  会計監査人の選任が義務づけられている。
ベトナム  監査役会の設置が原則だが、独立取締役が20%以上の場合に、内部会計監査委員会の設置による代替が認められている。ベトナムの監査役は例外的に業務監査も行う。
ミャンマー  会計監査人の選任が義務づけられている。
カンボジア  原則として、監査役の設置が義務づけられているが、非公開会社では総会決議を経て設置しないことも可能である(ただし、総会決議を経ずに設置していない会社も多い)。
ラオス  一定額以下の総資産の有限会社は、監査役の設置は任意だが、それ以外の会社は設置義務がある。

 (9)株式譲渡手続き(主に譲渡制限)
 M&Aの選択肢が乏しく、株式譲渡が一般的である。
タイ  非公開会社でも、定款に定めがない限り、譲渡制限はない(通常は、定款で譲渡制限をかける)。公開会社では、強制的公開買い付けの対象となる場合がある。
ベトナム  非公開会社でも、定款に定めがない限り、譲渡制限はない。
 外資比率が51%以上になる場合は、計画投資局に事前登録(M&A登録手続)を行う。また、発起人の株式は3年間譲渡制限がかかる。
ミャンマー  ミャンマーから外国人に対する株式譲渡は現状認められていないが、改正法により解禁される予定。非公開会社については、譲渡制限がある。
カンボジア  私的有限責任会社では譲渡制限があり、株式を譲渡する場合は、株主総会の普通決議による承認が必要。
ラオス  譲渡制限なし。

 (10)株式譲渡以外のM&A手法
タイ  事業譲渡(全部譲渡をして、残った会社は清算する。残存会社は時価ではなく簿価で評価されるため、税制上優遇される)。非公開会社の場合、第三者に直接割り当てる新株発行は不可である。
ベトナム  事業譲渡または新株発行(既存株主に新株引受権あり)。
ミャンマー  事業譲渡または新株発行(外国人に対する割り当ては認められていなかったが、法改正により解禁される予定)。
カンボジア  事業譲渡または新株発行(既存株主に新株引受権なし)。
ラオス  事業譲渡または新株発行(既存株主に新株引受権あり)。

 【2.メコン各国の投資法】
 (1)外資規制
タイ  外国人事業法に基づき、次の3種類43業種については、外国企業の参入が規制されている。①外国企業による参入禁止業種(新聞、放送、土地取引など)、②国家安全保障または文化・伝統・環境などに影響を及ぼす業種、③産業競争力が不十分な業種(小規模な小売業・卸売業、その他サービス業)
 ②③は規制されているものの、事業許可を取得すれば進出できる。ただし、アンチノミニー規制が厳しく、ノミニーを使って内資企業に見せかけようとすると罰せられる。
ベトナム  新投資法に基づき、次の事業については、外国企業の参入が規制されている。①投資禁止事業(麻薬物質などに関する事業、人身売買など)、②条件付投資事業(銀行、保険、物流事業、不動産事業など合計267業種)
 公開会社に対する100%外資出資が可能になったが、ロジスティクス分野や通信分野といった一部の業種については、まだ外資100%による会社設立が認められていない。
ミャンマー  従来は、外国投資法およびミャンマー投資委員会(MIC)の公表する通知などによって、外資参入が禁止される事業、合弁強制事業や外資出資比率などが規定され、非常に複雑だった。新投資法により外資規制が明確化される予定。2017年2月に公表されたドラフトでは、136業種が規制の対象となっている。
カンボジア  外資規制が非常に緩く、多くの業種で外資100%による進出が可能である。
ラオス  外資規制として、①禁止事業、②規制事業、③外国企業に対する資本金・出資比率の条件がある事業(卸売・小売、運輸など)、④外資参入禁止事業が存在する。

 (2)投資奨励措置
タイ  業種を6つ(A1からA4、B1からB2)に分け、その重要度に応じて法人税免除などの恩典が与えられる。また、投資対象の活動内容(研究開発や教育など)に応じても、恩典が与えられる。さらに、工業団地公社法に基づく恩典制度も存在する。
ベトナム  新投資法により、投資優遇対象を拡大。また、投資奨励分野、投資奨励地域を明記した。
ミャンマー  2017年4月に改正投資法が施行され、外国投資法と内国民投資法が統合された。投資許可(MIC許可)と投資優遇措置(MIC承認)が区別される。これにより、MIC許可がなくても、長期の土地賃貸借(外資は原則として1年のリースだが、それを50~70年に延長することができる)といった優遇措置を受けられるようになる。また、国土をその発展段階から3段階のゾーンに分け、3年、5年、7年の税制優遇措置を与えるゾーン制が導入される。さらに、経済特区法が別途存在する。
カンボジア  業種および(一定の場合に)最低投資金額に応じて、適格投資プロジェクトとして認可を受け、投資優遇措置を受けることができる。
ラオス  業種、ゾーン別の投資奨励措置がある。投資奨励法の改正作業が進行中であり、その詳細は未定だが、近代技術や教育などの活動内容に応じた投資優遇措置が導入される予定である。


2015年09月09日

「ミャンマー投資セミナー」に行ってきた(日本アセアンセンター)


ミャンマー国旗

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 日本アセアンセンターの「ミャンマー投資セミナー」に参加した。内容に関する簡単なメモ書き。

 ミャンマー投資委員会(MIC)事務局長の話で印象的だったのが、「日本の農業がミャンマーに進出することを期待する」という言葉だった。日本では農業に外資を入れることなど考えられず、ミャンマーのグローバル志向の強さをうかがわせた。一方で、農業にまで外資を入れなければならないほど、国内産業がまだ成熟していないと見ることもできる。ASEANの中で中所得国の仲間入りをしたタイは、どんな外資でも歓迎していた従来の投資奨励策を改め、高付加価値産業を重点的に誘致しようとしている。タイとミャンマーは全く対照的である。

 (1)ミャンマーのインフラについて
 (a)ミャンマーの最大電力供給量は約1,500MW(2013年)。総電力需要は約2,000MW(2013年)であるため、約500MWの需給ギャップを補うべく計画停電を行わなければならない(ちなみに、日本の最大電力供給量は約22万MW、総電力需要は約18.6万MW)。世帯電化率は約3割、送配電ロス率は約25%と、ASEANの中で最低水準である。

 既存の電源設備の状況を見ると、合計設備容量は3,896.05MWであり、内訳は水力発電所2,780MW、ガス火力発電所996.05MW、石炭火力発電所120MWとなっている。ただし、水力発電出力の大半は中国向け、国産ガスの大半がタイや中国向けであるため、十分な出力を国内需要に振り向けることができていない状態である。

 (b)ミャンマーの上水道接続率(配管で給水を受けている割合)は約8%、うち都市部は19%、地方は3%と著しく低い。ヤンゴンの水道普及率は35%である。中央商業地域は9割をYCDC(Yangon City Development Committee)の水道に依存しているが、その周辺地域は井戸など他の水源を利用している。ヤンゴン市の日平均配水量は52万立方メートル/日であるのに対し、収入水量(日平均使用量)は18万立方メートル/日にすぎず、無収水率は推定65%と非常に高い。なお、水源の約9割が表流水利用にもかかわらず、その3分の2が水処理を行っていない。また、塩素消毒もほとんど実施されていない。

 (c)通信セクターは、情報通信・技術省ミャンマー郵電公社(MPT)が固定電話、携帯電話、インターネットサービスを独占してきた。インフラの整備は遅延しており、2012年時点で固定電話普及率0.99%(加入者数60.9万人)、携帯電話普及率8.90%(加入者数544万人)、インターネット普及率1.07%と、いずれも低い水準にとどまっている。

 2013年に可決された新通信法以降、ミャンマー政府は新規の外資系通信オペレーター2社(ノルウェーとカタール)を入札で決定した。MPTも新規参入企業と競争していくため、外資系オペレーターの中からパートナーを募り、2014年7月16日にKDDI・住友商事と事業協力や利益分配などを規定した契約"Joint Operation Agreement(JOA)"を締結した(ただし、JOAは合弁会社ではなく、MPTは引き続き政府機関となる)。

 (d)ベトナム―カンボジア―タイ―ミャンマーを結ぶ「南部経済回廊」は、ミャンマーにとって非常に重要である。ミャンマーの主要貿易国タイとの輸出入は、ミャンマー側の陸路が整備されていなかったことから、長らく海上輸送に依存してきた。タイからの輸入の75%、タイへの輸出の56%が海上輸送である。しかし、ヤンゴンからマレー半島を迂回してアユタヤに至るルートは約4,000kmあり、21日間も要していた。これが、陸路では3.3日と大幅に短縮される。今後道路の整備が進めば、1.9日に短縮されると推計されている。

 (2)株式会社ニチレイフレッシュのミャンマー事業
 (a)水産物は、加工形態・キャパシティが限定される船上で漁獲される天然の素材が多いのに対し、末端のニーズは年を追うごとに分散化しており(切り身加工に始まり、生食用の寿司ネタ加工まで幅広い)、委託加工なしでは成り立たない状況にあるという。ミャンマーでは、水産物の委託加工は国内の水産業を保護するという観点から許可されていなかったが、工場稼働率を上げたい生産者(工場)の強い要望を背景に、2012年より事前登録制で正式に認可された。

 (b)ミャンマーの漁獲量は年々増加しており、現在は約500万トンと、日本とほぼ同じである。内訳は、天然が約400万トン、養殖が約100万トンである。世界的に見ると、天然は頭打ちで養殖が伸びる傾向にあるが、ミャンマーの場合は逆に天然の方が大きく伸びている。ニチレイフレッシュにとっては、天然のピンクエビが獲れることがミャンマーの大きな魅力となっているらしい。

 (c)ニチレイフレッシュは、1990年代半ばよりミャンマーでエビの調達を開始した。当時はどこで漁獲された原料であっても、一度ヤンゴンにある原料市場に集めてから、委託先の工場に搬入していた。しかし、漁獲から加工までに長時間がかかり、またエビの鮮度を保つための氷も十分に確保できないことから、輸送の途中で鮮度が落ちてしまうという問題に悩まされた。そのため、現在はできるだけ漁獲エリアに近い工場で加工することにしている。

 戦略を立てる時は、ややもすると「どんな顧客に、どのような製品を、どのように競合他社と差別化して提供するか?」という出発点のコンセプトを練るだけで満足してしまうことがある。しかし、「どの原材料をどこから調達するのか?どこで加工するのか?原材料・(半)製品をどうやって運ぶのか?」という具体的なオペレーションにも思いをめぐらし、適切に機能するビジネスモデルを設計・構築することも、戦略立案者の重要な役目であると改めて感じた。

 (d)委託加工で期待できる工場収入の数字が公開されていた。以下は、300人規模の水産加工場で、「切り身フィレ加工(加熱を含む加工)」と「寿司用スライス加工(生のまま加工)」を行った場合である。工場トータルの年間売上高は約17億円となる。仮に、同じ工場が10あれば、全体で約170億円になる。ミャンマーの経済特区(SEZ)に対する日本企業の投資累積額が約1億8,600万ドルであるから、それに匹敵する数字となる。

 商品 切り身 寿司ネタ
 加工 フィレ加工 スライス加工
 加工数量(1日あたり)  22トン/日 7.5トン/日
 加工賃(トンあたり) 1,000ドル/トン 3,500ドル/トン
 稼働日数(年) 300日/年 300日/年
 加工賃収入(年) 6.6百万ドル/年(7.92億円/年)  7.875百万ドル/年(9.45億円) 
 (※)1ドル=120円で計算。

 (3)双日ロジスティクス株式会社のミャンマービジネス
 (a)ミャンマーの小売は電力不足により常温食品が中心であり、依然として「ゼー」と呼ばれる伝統市場や道端の路上店を通じて行われる。これらが全体流通量の9割を占めていると言われる。一方、国内には2ケタ規模の店舗数を持つ小売業が少ない。このような状況下で、近年急速に近代的な小売業態を展開しているのが、ミャンマーの小売・流通最大手City Martグループである。双日と双日ロジスティクスは、City Martグループ傘下の食品・生活消費財卸売会社Premium Distributionとの共同出資により、Premium Sojitz Logisticsを設立している。

 (b)双日ロジスティクスは、ミャンマー国内のコールドチェーンだけでなく、大メコン圏のクロスボーダー物流も手がけている。セミナーでは、タイ―ミャンマールートに関する説明があった。

タイ―ミャンマークロスボーダー物流

 《プランA:ミャワディ・ルート》
 最も道路が整備されており、通関もスムーズである。ただし、少数民族との軍事衝突により、国境が封鎖されることがある。ミャンマー国内のティンガニーノ―コーカレイ間の山越えルートは、偶数日と奇数日で進行方向が入れ替わる1車線であったため、逆算でバンコクを出発する必要があった。所要時間は約3時間。混雑や車両故障があると、1日待機しなければならないこともあった。だが、2015年7月1日に2車線のバイパスが完成し、所要時間は40分に減少した。

 《プランB:タチレク・ルート》
 もともとは、タイとミャンマーを抜けて中国の昆明に抜ける南北経済回廊の一部である。タイとミャンマーの中小規模の貿易ルートであることから、生活資材をはじめ、中古車なども往来がある。ただ、中国に行くにはラオスルートの方が利便性がよく、ミャンマールートはもっぱらタイからミャンマーへの輸出に使われている。距離が長い分、トラック運賃が高いのがデメリットである。

 《プランC:ティキ・ルート》
 将来的には有力なルートだが、現在は道路が未整備であり、河川の橋も不通となっている。

 《プランD:メーホーンソーン・ルート》
 道路は整備されているものの、通関の担当者が手続きに慣れていないのが難点である。通関を通るのに5日かかると言われる。

2015年06月01日

「ミャンマー・エーヤワディー管区投資誘致セミナー」に行ってきた


 日本貿易振興機構(JETRO)とグリーンフィールド経済政治研究所が主催する「ミャンマー・エーヤワディー管区投資誘致セミナー」に参加してきた。ミャンマーからは、エーヤワディー管区の地域首席大臣ウー・テイン・アウング氏をはじめ、同区の関係者が多数来日していた。



(※イワラジ川は、エーヤワディー川の旧名称)

【ミャンマー全般について】
 (1)軍事政権時代には、中国、香港、タイによる電力、石油・ガスなどインフラ関連の直接投資が多かったが、民政移管後はシンガポールによる製造業、輸送・通信業への直接投資が急増している。シンガポールの割合が高いのは、シンガポールにアジア統括拠点を置くグローバル企業が、シンガポールの子会社を通じて投資を行っているためである。

 (2)ミャンマーには、チャウピュー、ティラワ、ダウェーといった経済特区がある(ブログ別館の記事「森哲志『こんなはずじゃなかったミャンマー』他」を参照)。経済特区は、2014年に施行された経済特区法に基づいて設置されている。同法では9種の禁止事業が定められているが、それ以外の業種は基本的にオープンであり、外資比率規制もない。投資申請書の提出後、30日以内に認可の可否が決定されるなど、手続きはスピーディーである。

 経済特区以外の地域に投資する場合は、2012年に施行された外国投資法に依拠することになる。経済特区以外では、国家計画経済開発省の通達やミャンマー投資委員会の通達により、規制業種が細かく定められている。また、合弁が求められる事業については、外資は原則として80%までしか出資できない(ただし、案件により、それ以上の外資比率が認められたケースもある)。投資申請書を提出してから認可までは4~5か月かかると言われる。加えて、投資認可から投資認可書が発行されるまで、3週間から1か月かかるという。

 (3)チャウピュー経済特区は中国、ティラワ経済特区は日本、ダウェー経済特区はタイが開発に協力している。日本が支援するティラワ経済特区は2,400haにも上る広大な経済特区であり、2015年夏には400haの先行開発エリアが完成する予定とされている。

 だが、JETROの担当者から今年3月に撮影した写真を見せてもらったところ(著作権の関都合上、写真の掲載は控えさせていただく)、オープンまであと半年ぐらいだというのに、まだほとんど更地でコンクリートも敷かれておらず、一部で工場の骨組みの建設が見られる程度であった。電線などが全く見当たらず、インフラ整備がどこまで進んでいるのかも不明であった。

 (4)ミャンマーには縫製業が多数進出しているが、そのほとんどが委託加工ビジネスである。委託加工ビジネスのことを、ミャンマーではCMP Business(Cutting, Making and Packing)と呼ぶ。対価は委託加工賃(CMP Charge)であり、製品を製造し自ら販売して利益を得る形態とは異なる。CMP型で企業登記することで、原材料の輸入免税が受けられるというメリットがある(その代わり、完成品は原則として100%輸出しなければならない)。

 (5)ヤンゴン日本人商工会議所によると、2011年度の会員数は53であったが、2014年度には約4倍の221に増えた。工業部会、建設部会、流通サービス部会、運輸部会(2014年度に新設)の会員数が軒並み急増している。ただし、ミャンマーでは貿易業と金融・保険業の規制がまだ厳しいため、貿易部会、金融保険部会の会員数は微増にとどまる(なお、金融業に関しては、三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行が今年4月下旬に支店を開設した。これは、昨年10月にミャンマー政府が日本の3メガバンクなど6カ国9行に営業免許を交付したことを受けたものである)。

 (6)ミャンマーは農業大国である。第1次産業がGDPの約4割を占め、かつ就業人口の約6割が農業に従事している。しかし、2014年のGDP成長率が7.69%と非常に高く、2015年のGDP成長率も8.33%と予想されていることから、農業部門の人材が工業・産業部門に吸収され、農業部門の人材不足が進んでいる。そこで、機械化により人手不足を解消しようとしているのだが、ミャンマーで使われている農業機械の大部分は中国、インド製である。したがって、日本企業にとってはこの分野で大きなチャンスがあるかもしれない。

【エーヤワディー管区について】
 (1)エーヤワディー管区の基本データを以下に示す。
 ■首都:パテイン市
 ■首相:ウー・テイン・アウング
 ■面積:21,851平方キロメートル
 ■人口:800万人
 ■民族:バマー(ビルマ人)、カイン、ラカイン、インディアン
 ■宗教:仏教、キリスト教、イスラーム、ヒンドゥー教
 ■平均降水量:2,500ミリ
 ■地区数:6地区
 ■町の数:26町
 ■村の数:11,710村
 ■海抜:最大85フィート、最小5フィート
 ■耕地面積:3,631,287エーカー
 ■ダム数:85基

 (2)気になるのはインフラであるが、エーヤワディー管区関係者の話によると、電力については50MWの送電線を整備するという(ただし、この送電線が工場を稼働させるのに十分なのかどうかは、やや疑問が残る。工業団地の面積にもよるものの、これでは足りないのではないか?)。水については、淡水処理施設の建設が進行中である。また、ミャンマー初の港であるパテイン港は、軍事政権時に使用不能となっていたが、再度利用できるようになる予定である。これらのインフラは、2015年中に完成するとのことであった。

 (3)現在、エーヤワディー管区には、マレーシア、中国、台湾の縫製業3工場が進出している。年内には、新たに6工場が稼働する予定だという。現在、エーヤワディー管区では2つの大きなプロジェクトが進行している。1つはMyanmar Super Axisであり、石炭発電所から石油発電所への切り替えや、パテイン―ヤンゴン間の高速道路整備が計画されている。もう1つはPathein Industrial Estateであり、前述の高速道路沿いに、巨大な工業団地を建設するというものである。タイのコンサルティング会社が製作したというプロモーションビデオが上映された。

 動画では、広大な工場用土地と、工場で働く社員のための住宅地や商業施設などを完備する見通しであることがしきりにアピールされていた(ウォルマートだけ具体名が出ていたが、進出を決めたのだろうか?)。しかし、そもそもエーヤワディー管区としては、この工業団地にどんな産業をどのくらい誘致するつもりなのだろうか?それがはっきりしてなければ、どの程度のインフラを整備すればよいのか解らないはずだ。また、雇用創出の目標はどうなっているのだろうか?その目標なくして、雇用に見合った住宅の数や商業施設の種類は定められない。

 実は、エーヤワディー管区はミャンマーの中でも有数の農業地帯に属している。ミャンマーには7つの地域と7つの州があるが、エーヤワディー地域のコメの生産量は年間8,620,549MTであり、全地域・州の中でトップである。エーヤワディー管区関係者が配布した資料にも、同管区では農業・漁業が盛んであることが記されている。従来の農水産業と、新興の工業・商業とのバランスをどのように取るつもりなのかも不明であった。

 (4)参加者の中に弁理士の方がいて、「ミャンマーの知的財産法はどうなっているのか?」と質問した。この「知的財産」という概念自体がエーヤワディー管区関係者にはうまく伝わらないようで、最初は固定資産と勘違いされていた。質問者が、固定資産ではなく知的資産の話だと言うと、「知的財産については、それぞれの経済特区法の中で個別に定められている」という回答が返ってきた。もちろん、通常の法体系としてはあり得ない話である。結局、JETROの担当者が途中から間に入り、「現在は法律がなく、作成の途中である」とフォローしていた。

 セミナーには、エーヤワディー管区関係者が30名ぐらい同席しており、この質問に対して次から次へと関係者が回答したのだが、担当者が皆若いことに驚いた。ほとんどが30代で、中には20代とおぼしき人もいた。ミャンマーは非常に若い国であることを改めて思い知らされた。




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