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『営業のモチベーション(DHBR2015年8月号)』―社員のタイプに応じた報酬制度の使い分けは公平性に反する、他
『力闘向上(『致知』2015年8月号)』―私が仕事を「楽しい」と思える日は来るのだろうか?

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
所属組織など
◆個人事務所「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ


(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

Experian海外企業信用調査 海外企業信用調査(Experian)
(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

中小企業診断士の安い通信講座なら「資格スクエア」資格スクエア
(以下の資格の講師をしています。
 ―ITパスポート
 ―情報セキュリティマネジメント
 ―経営学検定(初級・中級)
 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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2016年03月05日

『願いに生きる(『致知』2016年3月号)』―日本には成果主義より職能資格制度がフィットするかも、他

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致知2016年3月号願いに生きる 致知2016年3月号

致知出版社 2016-3


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 (前回の続き)

 (4)
 仕事というものは本来楽しいものであるし、どんなに大変な仕事であろうともそこに意義や価値を見出し、「面白い」「楽しい」と思って取り組まなければ何も得られない。
(大橋洋治「失敗しない人間は信用できない」)
 引用文にもあるように、「仕事は楽しめ。楽しまなければモチベーションは上がらない」とよく言われる。だが、私は普通の人と比べて感情機能が故障しているせいか、どうもこういう考えをすんなりと受け入れられない。確かに、ディズニーランドのようなエンターテインメントにおいては、キャストが心の底から楽しんでいなければ、顧客を楽しませることはできないだろう。しかし、私が携わる経営コンサルティングという仕事は、顧客がどうしようもなく困って支援を求めてくるものである。コンサルタントは、言わば顧客の苦しみを肩代わりするわけだから、楽しいはずがない。

 もちろん、顧客の課題が解決されて、顧客とともに最後に安堵感を味わうことはある。とはいえ、そこに至るまでのプロセスは基本的に重荷である。もしそれを楽しいと言うならば、他人の不幸を飯の種にしていることを積極的に認めることになり、はなはだ不謹慎だと思う。そもそも、仕事に楽しい⇔楽しくないという感情を持ち込むから話がややこしくなる。仕事を快⇔不快で判断するから、やりたい⇔やりたくないという両極を行き来することになる。だから、私は最近、できるだけ心の平静を保って、楽しい⇔楽しくないという感情を排除するようにしている。

 社員の動機づけについてもう少しだけ話をしておく。前述の通り、仕事を快⇔不快で判断すると、モチベーションが上下しやすくなる。社員のモチベーションの乱高下を防ぐために、企業は社員に楽しい仕事を与え続けるべきだなどという、トンチンカンな主張を見かけることがある。果たして、企業は社員のモチベーションを上げる義務があるのだろうか?社員は企業から給与という形でお金をもらっている。お金をもらう側が、お金を払う側からモチベーションを上げてもらうのがいかにおかしいことであるかは、顧客と企業の関係を考えればよく解る。

 同じことは教育研修についても言える。企業は社員に教育投資をすべきだと言われるが、顧客は企業が組織能力を高めるためのトレーニングに対して、追加のお金を出してくれるだろうか?こういう話をすると、私が「”社員”が”輝く(Shine)”経営のお手伝いをする」という意味で、屋号を「シャイン経営研究所」としていることに反して、社員に厳しすぎるという声が聞こえてきそうだ。ただ、私は企業側の動機づけや教育投資を全否定するわけではない。

 企業と社員の関係は、顧客と企業の関係と異なる点がある。顧客は、ある企業が気に入らなければ、別の企業から製品を買える。だが、企業の場合、ある社員が気に食わなくても、代わりの人材をすぐには採用できない。トヨタの自動車が嫌なら、ホンダの自動車を買えばよい。しかし、トヨタを退職した技術者の代わりを見つけるのは容易ではない。少なくとも、顧客がトヨタのディーラーから近所のホンダのディーラーへ移動するよりははるかに難しい。企業は、今いる社員で成果を上げるしかない。だから、動機づけと教育訓練で社員をつなぎ止めることが必要である。

 (5)
 「私たちはお金に関係のない世界に生きていますから、本が売れているなどいままで知りませんでした」。そう答えた時、「ああ、だから本が売れるんですね」と返された言葉がいまでも印象に残っています。無心になって手放せば反対に入ってくる。私たちの社会にはそういう原理が働いているのかもしれません。
(鈴木秀子「この心臓は鉛でできているが、泣かないではいられないのだよ」)
 「無心になって手放せば反対に入ってくる」という感覚は、最近何となく解る気がする。「この製品・サービスを売りたい」、「あの顧客企業からこのぐらいのお金をいただきたい」と私がいくら望んでも、その通りになることはほとんどない。それどころか、人生全般を振り返っても、私の思い通りにいったことなど数える程度しかないような気がする。逆に、何も望まない状態でいると、周りの人が私のことを気にかけてくれるのか、色々と仕事をくださったりする。

 (4)とも関連するが、自分がこうしたい、ああしたいと思って仕事をするのは快⇔不快という感情にとらわれている。自分がしたい仕事であれば快く感じ、モチベーションが上がる。反面、自分がしたくない仕事であれば不快に思い、モチベーションが下がる。こうしたモチベーションの乱高下は、コントロールが非常に難しい。いっそのこと欲を手放してしまえば、快⇔不快という感情に左右されることもなくなるので、モチベーションというもの自体を考えなくて済む。

 「無心になって手放せば反対に入ってくる」というのが我々の社会に働く原理であるとすれば、アメリカ流の成果主義は日本にとって最悪である。成果主義によって、短期的な成果しか追わなくなった、職場内の協力関係がなくなり組織がタコツボ化したなど、様々な弊害が指摘されるが、そもそも根本的に日本社会の原理に反していた可能性がある。とはいえ、私も全ての目標設定を否定するつもりはなく、何らかの目標を持つ必要はあると考えている。ただし、その目標は、○○円受注する、市場シェア○○%を達成するなど、組織の外部の成果に求めるのは望ましくない。

 代わりに、人として、あるいは企業という共同体を円滑に運営する上で当然と見なされる行為にフォーカスを当てる。例えば、自己啓発をするとか、後輩を育てるといった具合である。そういう行為をたくさん積み重ねていった結果として、売上高、顧客数、市場シェア、利益などの数字が後からついてくると考えた方がよさそうだ。その意味では、日本の職能資格制度は、実は非常によくできた制度である。成果主義が導入された時、職能資格制度は内向きで抽象的な目標ばかり立てていると批判された。しかし、実はそういう目標こそ、日本人が追求すべきものである。

2015年08月05日

『営業のモチベーション(DHBR2015年8月号)』―社員のタイプに応じた報酬制度の使い分けは公平性に反する、他

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ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2015年 08 月号 [雑誌]ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2015年 08 月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2015-07-10

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【社会的責任】最適な社会的責任を果たす4つのステップ CSRこそ効率化せよ(カストゥーリ・ランガン、リサ・チェイス、ソエル・カリム)
 著者の分類に従うと、CSR(社会的責任)活動には、①いわゆるフィランソロピーやメセナのような慈善活動、②環境・社会へのベネフィットを提供するサステナビリティ・プロジェクト、③ビジネスモデルの抜本的な転換を通じて社会的ニーズの充足を目指すCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)戦略の3つがあるという。しかし、多くの企業ではこれら3つの活動に一貫性がなく、責任者も担当者もバラバラである。そのため、CSRの総合責任者を置いて、彼の下に社内のCSR活動を統合する必要がある、という論文である。

 この論文に限らないが、CSRの議論は色々と錯綜していて、非常に理解しづらい印象がある。そこで、私は次のように理解している。まず、企業活動を「成果が経済的か社会的か?」と「成果を生み出す手段が経済的か社会的か?」という2軸のマトリクスで4つに分ける。成果と手段がともに経済的というのは、通常の企業活動である。成果は経済的だが手段は社会的というのは、環境に配慮したサプライチェーンを構築したり、社員の労働環境、医療、教育に投資したりしながら、一般的な市場ニーズを充足する活動である。多くの企業のCSRはこの象限に該当する。

 手段は経済的だが成果は社会的という象限は具体例を挙げるのが難しいのだが、バングラデシュのグラミン銀行で有名になったマイクロファイナンスが該当するだろう。ファイナンスの仕組み自体は、従来のシステムを拡張・発展させたものであり、経済的である。しかし、そのシステムを通じて多くの小規模起業家(=顧客)を生み出し、彼らが貧困から脱するのを支援している。

 最難関のCSRは、成果も手段も社会的という象限である。この象限に取り組む企業はパッと思いつかない。法政大学・坂本光司教授の『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズには、障碍者雇用に積極的な企業(日本理科学工業株式会社、株式会社大谷、株式会社協和、株式会社障がい者つくし更生会など)と、障碍者向けの製品を製造する企業(徳武産業株式会社など)が紹介されている。仮に、ある企業が障碍者を数多く雇用し、障碍者向けの製品・サービスで持続的な収益を上げていれば、おそらくそれは究極のCSRと呼ぶことができるに違いない。

日本でいちばん大切にしたい会社日本でいちばん大切にしたい会社
坂本 光司

あさ出版 2008-03-21

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正しいインセンティブ設計を構築する方法 誰が本当に優れた営業なのか(V・クマー、サラン・サンダー、ロバート・P・レオーネ)
営業の研究における第一人者が語る 【インタビュー】インセンティブがすべてではない(アンドリス・A・ゾルトナーズ)
 「正しいインセンティブ設計を構築する方法 誰が本当に優れた営業なのか」では、営業担当者を「トレーニング志向型」と「インセンティブ志向型」に分け、前者は教育研修の拡充を、後者は金銭的報酬の増加を通じて動機づけるべきだとしている。また、トレーニング志向型は小規模だが成長の早い顧客に販売する傾向があり、インセンティブ志向型はより大規模で安定的な顧客にアプローチする傾向があるため(個人的には逆の方がしっくりくるので、この記述は意外なのだが)、タイプに応じた顧客の振り分けをすべきことも示唆されている。

 だが、営業担当者のタイプに応じて動機づけの手法を変えるのは、あまり現実的ではないと感じる。同じ受注金額を獲得した2人の営業担当者について、一方はトレーニング志向型であるからより高度な教育研修の機会を付与し、もう一方はインセンティブ志向型であるからコミッションを高くする、などという企業はないだろう。そんなことをすれば社員の間に不公平感が生まれ、モチベーションはかえって低下するに違いない。それに、社員のタイプをいちいち判別して動機づけの手法を選択しなければならない人事部側も、制度運用の複雑さに悲鳴を上げるだろう。

 「営業の研究における第一人者が語る 【インタビュー】インセンティブがすべてではない」には次のように書かれている。
 営業担当者は普通さまざまな世代にまたがり、仕事への期待も異なります。ミレニアム世代は生活の質を向上させ、仕事にもっと意義を見つけたいと考えるでしょう。彼らはメールなどの電子メディアでたえずコミュニケーションを図ろうとし、自分の仕事ぶりに対するフィードバックを頻繁に求めます。ベビーブーマーは退職後の安心を確保したいと考えます。その中間層の人たちは、経済的な安定のために働いているのかもしれません。成功する報酬制度はこれらすべての目的に対応する必要があります。
 (※太字は筆者)
 先ほどの例で言えば、企業側としては教育研修とコミッションの両方の動機づけ手法を用意し、2人の営業担当者にその両方を与えるべきである。前者の営業担当者にはコミッションが、後者の営業担当者には教育研修が動機づけとして十分に機能しないが、それは仕方ないのである。それよりも、動機づけ手法の公平性を守ることによる利益の方がずっと大きい。

 以前の記事「坂本光司『日本でいちばん大切にしたい会社2』―給与・採用に関する2つの提言案(後半)」で、動機づけの手法には、①経済的動機づけ、②社会的動機づけ、③心理的動機づけという3つがあると書いた。①②は外発的動機づけであり、③は内発的動機づけである。このうち、①②についてもう少し詳しく書くと、

 ①経済的動機づけ=給与、賞与、各種手当、コミッション、福利厚生、ストックオプションなど。
 ②社会的動機づけ=命令、昇進、やりがいのある仕事、上司からの叱咤激励、人事考課、顧客からの評価、職場の人間関係、組織風土など。

となる。このうち、給与、福利厚生、昇進、人事考課など、制度というハードで運用されるものは、全社員に全てを公平に与えなければならない。社員のタイプに応じて使い分けることは許されない。ただ、何でもかんでもハードで解決しようとすると、制度構築で苦労する割には、一定の社員にとって機能しない動機づけ手法もたくさん生じることになる。それに、制度運用が組織に浸透するには時間がかかるものであり、その間は社員を上手く動機づけられないという問題もある。

 結局のところ、社員のタイプに応じて柔軟に動機づけられるのは、ソフトな動機づけ手法、中でも上司による叱咤激励に限られる。マネジャーは部下を動機づける様々な言葉を持っていなければならない。旧ブログで「モチベーションが高い人は「ボキャブラリーが多い」」という記事を書いたが、動機づけが上手なマネジャーもまた、ボキャブラリーが多いと思うのである。マネジャーには国語力が必要だ。昔のマネジャーは、部下から提出された日報に赤字でぎっしりとコメントを書いて返していたという。部下はそのコメントを迷惑だと思う反面ありがたく感じて、翌日の仕事にいそしんでいた。最近は、そういうマネジャーが減ってしまったように感じる。

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乗務員のモチベーションを上げる3つの仕組み 日本交通のタクシーはなぜ「選ばれる」ようになったのか(川鍋一朗)
 サービスマニュアルの策定、キャリアパスの設定、各営業所の業績のランキング化という3つの施策によって、日本交通の改革を行ったという論文である。
 そこで実施したのが、営業所や関連会社のランキングだ。チーム単位での競争を促し、チームワークを育むことが目的である。ランキング上位の報奨としては、売上アップに直結する黒タク(※日本交通が新たに設けた「黄タク」、「黒タク」、「EDS」という3段階のキャリアパスで、2番目に位置する。黄タクと黒タクでは料金は変わらないが、黒タクの方が顧客からの指名が多いため、収入が上がる)を活用している。日本交通グループに加盟した企業は、原則として黒タク比率20%からスタートするが、以降、成績に応じて黒タク比率が高まるのだ。
 以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第42回)】いびつなオフィス構造もコミュニケーション不全を引き起こす原因に」で、私の前職の会社では、グループ会社が同じフロアに集まっていながら、壁で不自然に区切られているせいで、コミュニケーションが阻害されていると書いた。人間は不思議なもので、物理的に隔離されると、心理的にも壁を作ってしまう。このことを知ったいくつかの企業では、大部屋方式に改装したり、デスクのフリーアドレス化を進めたり、役員の個室を廃止したりして、社内コミュニケーションの活性化に努めている。

 だが、飲食店・小売店などの店舗では、そもそもこういう施策ができない。各店舗を孤立感から救うには、日本交通のような営業所・店舗間の業績ランキングを作成・共有して、適度な社内競争を促すことが有効かもしれない。加えて、例えば年に1度全店舗の代表者を集めて、業績上位の店舗を表彰したり、セブン・イレブンがやっているような「店舗間学習」(販売ノウハウを店舗間で共有する仕組み。コンビニは基本的に他店舗と商圏が重ならないので、自店舗のノウハウを公開しても他店舗に売上高を食われる心配がない)に取り組んだりすると、より効果的であろう。

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【R&D】なぜ多くの発明、特許が対価を得られないのか 研究成果が事業にならない7つの理由(レディ・コタ、フィリップ・H・キム、オリバー・アレクシ)
 論文のタイトルからして、特許を製品化・事業化するプロセスの途中で直面する様々な課題に対して、どのように対処すべきかを論じたものだと勝手に想像していたのだが、ちょっと違った。特許は出願前に公知の状態であってはならない。ところが、研究成果を早く世に知らしめたい研究者は、勇み足で論文を出したり、仲間の研究者に情報を漏らしたりしてしまう。そこから情報が広がると、特許の要件を満たさなくなってしまうから注意が必要である、という論文であった。

 中小企業、特にベンチャー企業は、新しい技術やアイデアを自力で事業化することが難しい。そこで、資金力のある大企業に話を持ちかける。だが、ここに落とし穴がある。私が聞いた話では、ある大企業の経営者は、中小企業の社長から提案を持ち込まれると、その社長が持ってきた提案書を部下に渡して、「これを使って我が社で特許を取得せよ」と命令するのだという。以前の記事「起業・創業をめぐる3つの勘違いをまとめてみたい」で、ベンチャー企業はいきなり大企業を狙わない方がよいと書いたが、大企業との取引にはこういうリスクもあるので要注意だ。

2015年08月03日

『力闘向上(『致知』2015年8月号)』―私が仕事を「楽しい」と思える日は来るのだろうか?

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致知2015年8月号力闘向上 致知2015年8月号

致知出版社 2015-08


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 こんなことを書くと関係各所から怒られるかもしれないが、私は社会人になってこのかた、自分の仕事が楽しいと思ったことが一度もない。前職のベンチャー系コンサルティング会社では、以前の記事「ベンチャー失敗の教訓シリーズ(全50回)」で書いたような経験もあってか、楽しい日は1日たりともなかった。4年前に中小企業診断士として独立してからは、自由がきく仕事になってちょっとは楽しくなるかと思ったが、はっきり言って苦しみの日々が今日まで続いている。では、10年続くこのブログを書いている時は楽しいかというと、これもまた苦しいのである。パソコンに向かうと、言葉が思うように出てこなかったらどうしようと不安に駆られて苦しくなる。

 だから、日本旅行で「カリスマ添乗員」と呼ばれ、パッケージ旅行で年間8億円も売り上げる平田進也氏の次のような文章を読むと、不思議で不思議で仕方がない。
 私は誰に頼まれたわけではなく女装や変装をします。場が盛り上がり、お客様が喜んでくださるからです。それにかかる衣装、化粧品代等の費用はすべて自分持ち。「何でそこまでするの?」と思う方もいるかもしれませんが、私は断言します。やり切ったほうが自分が楽しいからです。生きている感が違うからです。
(平田進也「セールスのコツここなりと気づいた価値は8億円」)
 仕事が楽しいということは、仕事で満足感を得ているということである。マーケティングの研究ではしばしば、社員満足度が顧客満足度につながり、業績の向上をもたらすと言われる。私も昔はこの命題を盲目的に信じていた。だが、この命題には重要な問題が潜んでいる。それは、社員満足度と社員のモチベーションが区別されていない、ということである。

 社員満足度というのは、仕事や組織に対する過去の評価である。一方、モチベーションは、将来仕事をどれだけ頑張れるかというバロメータである。どちらが顧客満足度の向上につながるかと問われれば、社員満足度ではなくモチベーションであろう。過去に満足している社員は、もうそれ以上を望まず、将来は仕事を頑張らないかもしれない。その結果、顧客満足度が低下し、業績にマイナスのダメージを与えることも考えられる。そうではなく、将来仕事を頑張ろうとしている社員によって顧客満足度が高まり、業績が向上するという流れの方がしっくりくる。

 (厳密に言うと、社員の満足度とモチベーションを区別するならば、顧客の満足度=製品・サービスに対する過去の評価と再購入意欲=将来その製品・サービスを再び購入したいと思う気持ちも区別しなければならない。ここでは詳しく論じないが、「社員満足度が顧客満足度につながり、業績の向上をもたらす」という命題は、正確には「社員のモチベーションが顧客の再購入意欲につながり、業績の向上をもたらす」と表現すべきかもしれない)

 ただ、そうは言っても、社員満足度をあまりに軽視しすぎるのは、それはそれで別の問題があるように思える(議論がぐるぐる回って恐縮だが・・・)。社員の満足度が製品・サービス品質に強い影響を与える分野は確かに存在しているようだ。平田進也氏の日本旅行が提供するパッケージ旅行はまさにそうである。他にも、例えばディズニーランドは、キャスト自身が心の底から夢の国を楽しんでいるからこそ、顧客に夢を提供できる。リッツカールトンも、社員自身がリッツカールトンを愛し、仕事を楽しんでいるからこそ、顧客が快適に宿泊することができる。

 ディズニーランドなどのように社員が仕事を楽しむことができる分野と、私のように仕事が苦行のように感じられてしまう分野の違いは何であろうか?乱暴だが、世の中の製品・サービスは、顧客の快楽に貢献するものと、顧客の苦痛を取り除くものの大きく2つに分けられる。ディズニーランドなどは前者に該当する。前者の場合は、社員の快楽に共鳴して顧客が快楽を感じる。社員満足度がモチベーションに影響するのか、モチベーションが社員満足度に影響するのかは判然としないが、とにかく社員満足度とモチベーションが一体となって、顧客満足度を左右する。

 一方で、私がやっているコンサルティング業や教育研修というのは、後者に該当する。顧客企業が経営上の課題を抱えて苦しんでいるところに入り込み、その苦しみを共有して、顧客企業にフィットした解決策を地道に組み立てていく。こういう仕事であるから、そもそも楽しいはずがないのである。仮にそれが楽しいと思えるのならば、顧客企業の苦しみを見て楽しんでいるわけであって、何とも不謹慎極まりない。もしそういうコンサルタントがいたら、悪いニュースが増えるほど盛り上がるマスメディアと同様に、私は軽蔑のまなざしを送るに違いない。

 もちろん、こういう仕事であっても、満足感が全くないわけではない。顧客企業から、「君の企画・提案で課題解決の道筋が見えた」などと感謝されれば、この仕事をやってよかったと思える。ただし、苦労が報われるのはほんの一瞬であって、次の瞬間からは再び別の経営課題を背負い苦しむことになる。それでも、私は決してモチベーションを失っているわけではない。顧客の苦痛を取り除く製品・サービスにおいては、満足度とモチベーションは別物である。この分野で顧客満足度に影響を与えるのは、社員満足度ではなく、決定的に社員のモチベーションのみである。

 しかしながら、一生苦しみながらこの仕事を続けるのも、夢がない話だと思われるかもしれない。私も、一生この苦しみが続くかと思うと、うんざりする時がある。だが、苦しみを経た後に仕事が楽しくなる可能性があることを、声楽家・坂本博士氏の言葉に見出すことができた。
 それまで僕は城多先生の厳しい指導のもと、音楽の「楽」が学ぶほうの「学」だけになっていたんです。つまり「音学」ですね。こうなるといつの間にか「音が苦」になっている。いくら音楽学校に入ったからといっても、ドレミファソラシドと音階のことばかり厳しく言われると、誰だって音符恐怖症になってくるんですよ。

 ところがヘッサード先生はそういう指導をしませんでした。代わりに、例えば目の前に山があると想像して、その山に向かって「山、山、山」と日本語で音階を歌わせるんです。そうやっていると、面白いことに音符恐怖症が影を潜め、気持ちよく声を出せるようになりました。まるで心の扉がスッと開くように。音を楽しむ、つまり本当の意味での「音楽」になりましたね。
(坂本博士「見果てぬ夢を追い続けて」)



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