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『人材育成(DHBR2017年4月号)』―人事考課は不要かと聞かれれば「それでも必要だ」と私は答える、他
『人を巻き込む技術(DHBR2016年2月号)』―リーダーは時々「バカ」になれるか?他
『リーダーシップの神髄(『致知』2016年1月号)』―リーダーはもっと読書をして机上の空論を作ればいい

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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2017年03月27日

『人材育成(DHBR2017年4月号)』―人事考課は不要かと聞かれれば「それでも必要だ」と私は答える、他


ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2017年 04 月号 [雑誌] (人材育成)ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2017年 04 月号 [雑誌] (人材育成)

ダイヤモンド社 2017-03-10

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 CEBが2014年に行った推計によると、米国企業の12%が年次の人事査定を完全に廃止したという。ウィリス・タワーズワトソンの推計値は8%だが、このほかに、廃止を検討ないし計画中の企業が29%に上るとされる。デロイトは2015年に、業績評価制度を再検討する予定のない企業は、全体のわずか12%だとする報告を出している。この傾向は米国以外にも広まっているようだ。
(ピーター・カッペリ、アナ・テイビス「業績評価から人材育成へ 年度末の人事査定はもういらない」)
 アメリカでは人事考課、人事査定が廃止される傾向にあるそうだ。旧ブログで「GEの「9Blocks」というユニークな人事制度」という記事を書いたが、そのGEもCEOがジェフリー・イメルトに交代してから、人事制度を見直しているという。私の前職の企業は、人材・組織関連のコンサルティングと教育研修サービスを提供するベンチャー企業であった。日本の場合、賞与を年2回支給する関係で、人事考課を年2回実施する企業が大半であろう。私は前職の企業に5年半在籍していたから、単純に考えれば11回人事考課の機会があったはずだ。

 ところが、私が実際に人事考課を受けたのはわずか2回だけである。しかも、そのうちの1回は面談で昇給額を告げられただけだった。人材・組織関連のコンサルティングを提供する企業がこのありさまなのだから笑い話にもならない。最近、その企業が「日本企業にはもう人事考課はいらない」といった内容の書籍やコラムを発表しているらしいが、全くバカげている。人事考課をさんざんやってきた結果、その限界に気づいて人事考課はいらないと主張するならいざ知らず、人事考課をさぼってきた企業が人事考課はいらないと言ったところで、何の説得力もない。

 次の点を誤解してはならないのだが、人事考課を廃止する企業は、人材の評価を放棄しているわけでは決してない。上司が部下の仕事に関して、頻繁にフィードバックを行うというやり方に改めているのである。こうすることで、人事考課の際に、直近の業績が過大に評価され、期初の業績が過小評価されるというエラーを回避することができる。

 そもそも、人事考課には4つの目的があると私は考える。その4つとは、①給与の額を決定する、②仕事ぶりについてフィードバックする、③能力開発計画を策定する、④昇進・配置転換を決定する、である。このうち、②については、前述の通り、人事考課を廃止しても、代わりに日常業務の中で頻繁に部下にフィードバックすることで、人事考課と同様、あるいはそれ以上の効果を期待することができる。また、①に関しては、私は今のところ年功制こそが最も公平な給与体系だと信じているため、人事考課を続けようと廃止しようと関係がない(以前の記事「『戦略人事(DHBR2015年12月号)』―アメリカ流人材マネジメントを日本流に修正する試案」を参照)。残った③と④のために、私は依然として人事考課は必要であると考える。

 究極的に理想的な企業とは、外部環境の変化に応じて、あるいは外部環境の変化を先取りして、常に柔軟にビジョンを変化させ、ビジョンとリンクした戦略を短期間で何度も立案する。そして、戦略を変更するたびに自社のビジネスプロセスを再構築し、どのプロセスにどういう能力を持った社員を何人紐づけるのか、どこからどこまでのプロセスをひと塊として組織を分けるのか、それぞれの組織内ではどのようにビジネスプロセスのマネジメントを行うのか、そのマネジメントのために、どのようなマネジメント能力をもったマネジャーを何人必要とするのか、などといったことを決めていく。そして、その構想に合わせて全社員の配置をドラスティックに変える。いわば、ミスミの「ガラガラポン」を常にやり続けているという状態である。

 しかし、この曲芸的な経営ができる企業はまず存在しないであろう。よく、「走りながら考える」と言う人がいるが、そういうことを言う人に限ってろくずっぽ考えないものである。常に走っている企業では、社員の誰もが大量のメールやSNSのメッセージに溺れ、上司や同僚からの度重なる介入によって仕事を中断されている。こういう状態をカル・ニューポートは「シャロー・ワーク」と呼んでいる。シャロー・ワークのせいで、我々は新しい戦略を立てるといった、深い考察によって上手くいく大きな取り組みをバラバラに寸断してしまい、質を低下させている。

 大きな取り組みを行うためには、「ディープ・ワーク」が必要である。それは通常一定のまとまった時間を必要とし、認識能力を限界まで高め、注意散漫のない集中した状態でなされる活動である。最近では、ビル・ゲイツが年に2度、「考える週(Think Weeks)」を設け、その間は湖畔のコテッジに引きこもり、本を読んだり大きな構想を練ったりしているそうだ。つまり、ビジョンや戦略のように高度な知的活動を必要とする場面では、喧騒を離れ、一度立ち止まってじっくりと考える時間が必要なのである(以前の記事「『リーダーシップの神髄(『致知』2016年1月号)』―リーダーはもっと読書をして机上の空論を作ればいい」を参照)。

大事なことに集中する―――気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法大事なことに集中する―――気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法
カル・ニューポート 門田 美鈴

ダイヤモンド社 2016-12-09

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 ディープ・ワークで策定されたビジョンや戦略によって、望ましい組織の姿が見えてくる。すると、誰を昇進させ、誰を異動させるべきかが決まる。新しいポジションは、その人が既に有する能力を発揮しさえすれば成果が上げられるというものではない。もちろん、新しいポジションが要求する能力のうち、一定の割合をカバーしているから新しいポジションに移すわけだが、同時に、新しいポジションで新たに身につけてほしい能力もある。その能力をどのように開発するのか、入念に計画を立てなければならない。ビジョンや戦略の構想をディープ・ワークで行う限り、ディープ・ワークのタイミングに合わせて、前述の③と④の目的で人事考課を行う必要がある。

 そもそも、シャロー・ワークによって前述のような曲芸的な経営ができる能力が人間に備わっているのであれば、おそらく1年365日という概念は存在しなくてもよかったであろう。有史以来、朝日が昇る回数を単純にカウントしていけば済む話である。それをわざわざ1年365日と決めたのは、1年単位など、一定のタイムスパンで強制的にディープ・ワークを行った方が、その後の活動で大きな成果を上げられることを知っていたからではないだろうか?
 MEP事業部に新たに着任したゼネラルマネジャーは、この高コストなプログラム(※リーダーシップ研修のこと)の成果を評価することを要求した。そして、それを実行したところ、プログラム自体が啓発的なものだったとはいえ、最終的にほとんど変化を生み出していないと判断した。マネジャーたちは、チームワークやコラボレーションに関する学習を実施したところで、その内容を現場で応用するのは不可能だと悟っていたのだ。それは、社内にマネジメントや組織の面で数々の障壁が存在するためである。
(マイケル・ビア、マグヌス・フィンストローム、デレク・シュレーダー「変化を阻む6つの障壁を乗り越えろ リーダー研修はなぜ現場で活かされないのか」)
 前職でリーダーシップ研修を開発・販売していた身としては、非常に耳が痛い話である。以前の記事「鈴木克明『研修設計マニュアル―人材育成のためのインストラクショナルデザイン』―研修をデザインするのがIDではなく、組織的な学習をデザインするのがID」でも書いたように、研修を現場で機能させるためには、研修で学習する内容を現場の業務プロセスや、プロセスを支えるIT、人事評価制度などの仕組みにも反映させる必要がある。ところが、営業や生産管理などのように、一定の技術的・技能的なプロセスがある分野とは異なり、リーダーシップというのはプロセスを持たない極めて曖昧なものである。これを研修でどう扱えばよいかは難題である。

 ここからは、まだ十分にまとまっていないが私見を述べたいと思う。リーダーシップの役割は「アジェンダ(課題)設定」と「ネットワーキング」の2つだと言われる。「アジェンダ設定」はさらに、①ビジョンの策定と②課題解決の技法に、「ネットワーキング」は③プレゼンテーション(リーダーの考えを発信する)、④傾聴(メンバーの考えを聞く)、⑤交渉(利害関係者と調整する)、⑥動機づけ(energize=motivate以上の強烈な動機づけ)に分けることができる。これらはリーダーの基礎作法とでも呼ぶべきものであり、まずはベーシックな研修で押さえておく。

 ただし、リーダーシップ研修がここで止まっている場合、その研修は十中八九失敗する。研修の参加者には、半年ないし1年程度の長い時間をかけて、実際にリーダーシップを発揮して解決したい課題を設定してもらうべきだ。そして、その課題解決のために、前述の①~⑥を活用して、変革プログラムを実行する。さらに、研修の参加者は、1か月に1回、難しい場合は3か月に1回ぐらいのペースで定期的に集まり、変革プログラムの進捗状況を共有する。リーダーシップには定型のプロセスがないから、各人のやり方や進捗度合いがバラバラであっても構わない。リーダーは現場では孤独である。定期的に”同志”が集まることで、違う視点から有益なアドバイスがもらえるかもしれない。あるいは、顔を合わせるだけで癒しの効果が得られるかもしれない。

 引用文にあるように、変革プログラムを実行する途中で組織やマネジメント上の障壁に直面することがある。その場合は、その障壁を取り除くことも変革プログラムに盛り込めばよい。ただし、明らかに研修参加者の権限や責任範囲を超える行動が必要になる場合には、研修参加者の上司や経営陣などがサポートに回れるよう柔軟に調整しておくことが重要である。リーダーシップ研修は、前述の①~⑥の能力の習得をゴールとするのではなく、変革プログラムの完遂そのものをゴールとするべきであるというのが私の考えである。


2016年02月05日

『人を巻き込む技術(DHBR2016年2月号)』―リーダーは時々「バカ」になれるか?他


DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2016年2月号 [雑誌]DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2016年2月号 [雑誌]
ダイヤモンド社 DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部

ダイヤモンド社 2016-01-09

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 ○【リーダーシップ】社会・環境面での貢献も加味した 【2015年版】世界のCEOベスト100(『ハーバード・ビジネス・レビュー』編)
 HBR誌が毎年発表している、世界のCEOのランキングである。従来は、そのCEOの在任期間中に、企業のTSR(株主総利回り)と時価総額がどれだけ変化したかに基づいてランキングが作成されていた。だが、今回は環境、社会、ガバナンスにおけるパフォーマンスが加味されている(財務データが80%、環境、社会、ガバナンスにおけるパフォーマンスが20%)。その結果、2014年に1位であったAmazonのジェフ・ベゾスは、環境、社会、ガバナンスにおけるパフォーマンスの低さが影響して、2015年は87位に急落するなど、ランキングに大きな変化が見られる。

 日本企業からは、10位に御手洗富士夫氏(キヤノン)、35位に柳井正氏(ファーストリテイリング)、78位に孫正義氏(ソフトバンクグループ)、80位に永守重信氏(日本電産)が入っている。ただ、環境、社会、ガバナンスにおけるパフォーマンスの順位を見ると、御手洗氏こそ140位であるが、柳井氏は509位、孫氏は762位、永守氏は718位と低い。本ブログでは、日本企業はCSRという言葉が登場する前から社会と調和してきたとか、渋沢栄一の道徳経済合一説のように経済的価値と社会的価値を区別しないなどと書いてきたのだが、今回の結果はやや残念であった。

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 ○オーセンティック・リーダーシップの罠 「自分らしさ」が仇になる時(ハーミニア・イバーラ)
 たとえば、「本当の自己」を貫くという考え方は、人は経験を通じて進化し、内省するだけではけっして掘り起こせない自分自身の多面性を発見していくという、数多くの研究と矛盾する。
 繰り返しになるが、自分のストーリーを書き直すことは、内省的なプロセスであると同時に、社会的なプロセスでもある。
 自分の価値観を中心に据える欧米型のリーダーシップを反省した論文である。本論文によれば、自分らしさを貫くよりも、環境に応じて変幻自在に自己を変容させるカメレオン人間の方が、昇進スピードが早いという。価値観の重要性は、旧ブログや本ブログで何度も取り上げたし、組織間で協働する場合には同じ価値観で結ばれることが大切だとも書いてきたのだが、あまり価値観で硬直的になってもよくないかもしれないと思い直した。

 価値観が完全に一致する人などまずいない。日頃密に接する家族の間でも、価値観は異なるものだ。それでも家族が成り立つのは、異なる価値観を前提として、双方をできるだけ傷つけないよう折り合いをつけるためには何をすべきかというコミュニケーションが図られるためである。離婚する芸能人夫婦は、価値観の違いを理由に挙げることが多い。だが、離婚の原因は価値観の違いではなく、そのようなコミュニケーションが十分でなかったためと言う方が適切である。

 もちろん、基本的な価値観が共有できていた方が、組織の結束力が高まるのは間違いない。だが、チームメンバー全員の価値観を洗い出した時、重なる価値観よりも、重ならない価値観の方が圧倒的に多いことを忘れてはならないだろう。そして、組織で問題が生じるのは、たいていは重ならない価値観同士が衝突する場合なのである。その価値観はどこまで自分にとって重要なのか?「今回は自分が譲る」という選択肢は考えられないか?今後同じような衝突を防ぐには、自分の価値観をどのように改めればよいか?といったことを、皆が考えることが必要である。

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 ○一人ひとりがリーダーシップを発揮する ピクサーで学んだ創造的チームのつくり方(堤大介)
 相手に興味を持つことの重要性は、ピクサーのリーダーシップトレーニングでも協調された。興味を持つとは、相手の話をただ黙って聞くということではない。耳を傾け、その時に語られる話の内容だけではなく、相手の考え方までを理解するということである。
 こういう話の聞き方を「傾聴」と呼ぶのだろう。以前、コミュニケーションの研修で、傾聴にも2種類あることを学んだ。「内的傾聴」と「集中的傾聴」である。内的傾聴とは、相手の話を自分の記憶、体験、知識に照らし合わせながら聞くことで、途中で相手の話のよしあしを判断したり、相手に意見や質問を述べたりしようとする。これに対して集中的傾聴とは、純粋に相手の話に意識をフォーカスさせ、相手の記憶、体験、知識をそのまま受け止める聞き方である。

 端的に言えば、内的傾聴は何とかして相手の話を理解しようと意識を集中させることである。集中的傾聴は、あまり深いことは考えずに、心をフラットにして相手の言葉を自分の中に流入させる。研修では2人1組になり、一方がもう一人に対して、「最近楽しかったこと」を3分間で話す、というワークをやった。聞き手は内的傾聴と集中的傾聴の両方を演じ分けることとした。

 すると、内的傾聴の場合は、相手の話を理解しようと緊張して構えるせいか、自然としかめっ面になり、腕や足を組んでしまう傾向があった。相手に質問しようと考えるのだが、適当な質問も思い浮かばない。話し手も会話の緊張に耐えられなくなって、3分間話し続けることができない。会話が終了した後、講師から「相手の話をどのくらい覚えていますか?」と尋ねられたが、一生懸命相手を理解しようとしたにもかかわらず、記憶が断片的であることに気づかされた。

 集中的傾聴の場合、相手の話を理解しようと深く考える必要がないので、非常に気が楽である。極端なことを言えば、適当に笑顔を振りまいて、相槌を打っていればよい。すると、不思議なことに、そうしている方が相手の話をよく理解できる。相手への質問もどんどん思い浮かぶ。だから、3分では会話が終わらなかった。それに、会話の後も会話の内容をよく思い出すことができた。一般的に、傾聴と言うと、相手を意識的に理解することばかりが重要視される。しかし、逆説的だが、実は相手を理解しようと気張らない方が、かえって相手の理解が深まるようである。

 《2016年3月13日追記》
 八代京子他『異文化コミュニケーション・ワークブック』を読んで、集中的傾聴が内的傾聴よりも有効であるのは、「エポケー」を伴うからではないかと思うようになった。
 自分が聞いて理解したことを相手の人に返して確認するという行為は、相手のことを決めつけず、同時に自分の考えは留め置くという姿勢を表しています。このように、自分の判断や評価をいったん脇に置いておこうという姿勢でリスニングして物事を認識する方法をエポケー(判断停止または判断留保)と呼びます。アクティブ・リスニングよりもう一段階自分の判断を留めた慎重な聞き方です。
異文化コミュニケーション・ワークブック異文化コミュニケーション・ワークブック
八代 京子 樋口 容視子 コミサロフ 喜美 荒木 晶子 山本 志都

三修社 2001-09-01

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 ○変化の激しい時代に必要なエンゲージメントとは 【インタビュー】BCG流21世紀型リーダーシップ(御立尚資、水越豊)
 御立:企業も予定調和なんてありえず、変化の多い時代は会社も変化するために、リーダーは時には意図的に矛盾したことを言ってみることも必要になります。それによって下は右往左往しますが、それでいいのです。
 リーダーに必要な要素はいくつかあるが、その中でも重要なのが「バカになること」だと私は考える。優れた組織やチームでは、上から下への指揮命令系統がしっかりしていることに加えて、下から上に良質な情報が上がる(山本七平流に言えば、「下剋上」である。以前の記事「山本七平『帝王学―「貞観政要」の読み方』―階層社会における「下剋上」と「下問」」を参照)。

 リーダーは大局的に物事を判断するので、簡単に間違ってはいけない。だが、細部については、現場の最前線にいる部下の方がよく知っている。その情報に基づいてリーダーは大局観を修正する必要があるかもしれないし、時には従来の大局を捨てて、新たな現実に対応した大局を描き直さなければならない。リーダーが完全に正しければ、部下はリーダーに何も情報を上げてこない。リーダーが多少バカになって、時々おかしなこと、矛盾したことを言うからこそ、部下は慌てて「いや、それは違います。実際にはこうなっています」と報告してくれる。

 ただし、リーダーが常にバカでは、部下が信用してくれない。時々のバカだから許されるのである。だから、リーダーは可能な限り正しくあるために、日々研鑽を怠ってはならない(関連記事として「『リーダーシップの神髄(『致知』2016年1月号)』―リーダーはもっと読書をして机上の空論を作ればいい」を参照)。また、リーダーのバカが許されるように、日頃から部下との信頼関係に気を配ることが肝要である。信頼関係がなければ、リーダーがバカを見せても、部下は「リーダーの間違った指示の通りにやって、リーダーに恥をかかせてやろう」とよからぬことを企てる。

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 ○リーダーシップと意思決定の要 アドバイスの科学:与える技術・受ける技術(デイビッド・A・ガービン、ジョシュア・D・マーゴリス)
 最終決断を下す立場でないにもかかわらず、助言者の多くは自分の意見がかなりの程度まで受け入れられないと感情を害し、対話を打ち切ってしまう。こうなると、その時だけでなく、長い目で見ても、失うものがある。
 助言をする側、助言を受ける側それぞれが陥りやすい罠を指摘し、双方が良好な関係を構築するための処方箋を示したものである。コンサルタントは企業経営者に助言をする立場であるから、本論文には納得できる箇所が多々あった。特に耳が痛かったのが上記の引用文である。

 私が駆け出しの頃は、「なぜクライアントはこちらの提案をすんなり受け入れてくれないのか?」と憤懣やる方ない気持ちになることがあった。膨大な調査をし、プロジェクトメンバーと半ば喧嘩になりながら議論を重ね、何日も徹夜して報告書を書いたことが報われない気がした。クライアントが提案内容を変更して実行しようとすると、「勝手に中身を変えるなよ」と思うことさえあった。

 私も多少は大人になったので、今はクライアントがこちらの提案をそのまま受け入れることは滅多にないと割り切っている。コンサルティングの成功は、プロジェクト終了後もクライアントが社内協議を継続し、当初の提案とは違う形であってもよいから、何かしら改革を行ってくれることだと考える。つまり、クライアントがプロジェクトをきっかけとして学習を行い、自らの手で新しい知を獲得することである。コンサルタントはその素材を提供するにすぎない。あくまで素材であるから、クライアントがその素材をどのように調理しようと、コンサルタントは文句を言うべきではない。

 何年か前に、ある企業の海外事業戦略立案を支援させていただいた時、経営陣にはインド進出を提案した。ところが、プロジェクト終了後、その企業の中で海外進出の話は立ち消えになってしまったように思われた。それから1年ほど経ったある日、その企業のプレスリリースを見たところ、ブラジルに進出するという記事が出ていた。私は「この企業は1年かけて海外進出を検討してくれていたのだ」と思い、インド進出という当初の提案とは異なるが、海外進出が形になったことを非常に嬉しく感じた。この一件があってから、私の心境は前述のように変化したのである。


2016年01月04日

『リーダーシップの神髄(『致知』2016年1月号)』―リーダーはもっと読書をして机上の空論を作ればいい


致知2016年1月号リーダーシップの神髄 致知2016年1月号

致知出版社 2016-1


致知出版社HPで詳しく見る by G-Tools

 子供は体だけでなく頭も心もすごいスピードで成長していきます。ところがその成長に親がついていけないために、自分の考えを押しつけてしまう現象が多く見られます。これは何もスポーツの世界だけでなく、受験の世界でも同じような傾向があるようです。(中略)子供への無二の愛情は、親にとってエネルギーの発生源になります。その素晴らしいエネルギーを正しい方向に注ぐためには、親自身も学ぶ姿勢をしっかりと持つことが必要なのです。
(杉山芙紗子「一流選手を育てる親の共通項」)
 最近思うのは、続けることが大事だということです。アスリートは毎日トレーニングしなかったら最高のパフォーマンスを発揮できないように、経営者も心を鍛えるトレーニングを毎日やらないといけないと思います。
(早川宗徳「経営はトップの人間性で決まる」)
 そして、何よりも大事なのは指導者自身が輝いていること。輝いているためには指導者が常に勉強している。そうすると、子供たちもイキイキとしてきますよ。
(藤重佳久、岩倉真紀子「吹奏楽×ダンス 世界の頂点への道」)
 新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。2016年1本目の記事では、『致知』2016年1月号より、「人の上に立つ者は、自分が従えている人よりもはるかに多くのことを学習しなければならない」ことを教えてくれる3つの記事を紹介したいと思う。

 リーダーは部下より優秀でなければならない(ただし、全知全能になる必要はない)。学習を怠るリーダーは、知識や能力のレベルが向上しない。一方、現場で必死になっている部下は経験値がどんどん上がり、やがてリーダーのレベルを脅かすようになる。それに耐えられないリーダーは、自分の考えを部下に押しつけることで、部下のレベルを相対的に引き下げる。部下に対して高圧的な態度をとるリーダーは、自分の地位を失うことに対する不安を抱えていると言える。

 リーダーが学習をするためにはどうすればよいだろうか?最も手っ取り早い方法は、現場に行くことである。現場には最新の情報が転がっている。部下はその情報を吸収して成長する。だが、リーダーがあまりに頻繁に現場へ足を運ぶのも、実は考えものだと思う。現場の仕事は部下の仕事である。リーダーは、現場から一歩身を引いて、たくさんの部下の仕事ぶりを俯瞰的に眺めるためにリーダーの職にある。それなのに、リーダーが率先して現場に行ってしまったら、部下の仕事を取り上げることと同じだ。プレイングマネジャーが陥っている罠がこれである。

 もちろん、リーダーは顧客のニーズを知るために重要顧客と会い、部下の仕事ぶりを知るために現場に潜り込むことは重要である。かつて、"Management By Wandering About(MBWA)"(歩き回る経営)という言葉が流行ったことがあるが、これは経営陣があまりに現場を知らないので、少しは現場に出よというメッセージであった。逆に言えば、現場に行くのは少しでよい。現場に行きすぎるのはよくない。部下からは「うちのリーダーは現場のことを全然知らない」と不満が出るかもしれない。だが、リーダーが現場を知らないのは当然なのである。

 リーダーは現場に行かずにどのように学習をするのだろうか?それはやはり、読書に尽きると思う。私の印象にすぎないかもしれないが、優れたリーダーや経営者は大変な読書家であることが多い。蔵書が5,000冊、1万冊に至るリーダーもいる。忙しいリーダーに本を読む時間はなさそうに思えるけれども、彼らは隙間時間を活用して上手に読書をする。1日10時間働く人でも、仕事終わりにあと3時間頑張って読書をすれば、1日1冊のペースで読書することも可能である。これを30年続けると、365冊/年×30年=10,950冊となり、1万冊を超える。

 では、リーダーはどのような分野の本を読めばよいだろうか?現在の仕事に直接関連する書籍は、あまり重要ではない。そういう情報は、いくら本で勉強しても、部下が現場で培った知識にはかなわない。下手に本で知識をかじると、部下に底の浅さを見透かされてバカにされる。それよりも、仕事とは直接関係がなく、今すぐ必要になるとは思えない分野の本を読んだ方がよい。もっと端的に言えば、一般教養(リベラルアーツ)に関する書籍がよい。

 仕事に直結する書籍は、知識の効率的な伝達を目的としているため、シンプルさ、解りやすさが追求されている。言い方は悪いが、頭が弱くても理解できる。ところが、一般教養の本はそうはいかない。1行理解するのに1時間かかることもある。どうして自分はこんなことも理解できないのだろうと絶望する。しかし、そうやって言葉の意味を1つずつ丁寧に拾い、仕入れた知識を順番に結びつけていく訓練を重ねることで、頭は強くなっていくものである。高企業のマネジメント層は、読書量が多く、かつ一般教養に関する書籍が多いのではないかと私は勝手に仮説を立てている。マネジメント層の蔵書と企業の業績の関係を調べた研究があったらきっと面白い。

 リーダーが現場にあまり行かず読書ばかりしていると、部下はおそらく「うちの上司は机上の空論ばかり考えている」と指摘するに違いない。「机上の空論を立てる暇があったら、走りながら考えるべきだ」と主張する人もいる。しかし、私に言わせれば、立ち止まっているという時間的余裕の中ですら考えることができない人が、走りながらという時間的制約の中で考えることなど不可能である。走りながら考えればよいと言う人は、実は考えることを放棄している。

 リーダーは現場から一歩身を引いて、じっくりと机上の空論を作ることを恐れてはならない。たまに観察する現場から入手した断片的な顧客や部下の情報から想像を膨らませて、仕事の全体像をイメージする。そこからあるべき姿をデザインし、それを実現するための課題を特定する。あるべき姿のデザインや課題の特定には、読書で培った一般教養の知識を総動員する。それによってリーダーは、部下が現場で反射的に思いつく課題解決策よりも、はるかに深い洞察に基づく解決策を考案しなければならない。解決策が見つかったら現場にフィードバックし、現場の意見を聞きながら、現場が実行しやすい形に改善する。これがリーダーの仕事である。

 読書量という点に限れば、私の前職(組織・人材開発コンサルティング&教育研修のベンチャー)の社長は合格点だった。社長は大変な読書家であった。オフィスには、社長の本が1,000冊ほど並んでいた。おそらくそれは蔵書の一部で、社長の自宅にはたくさんの書物が保管されていたのだろう。社長が若い頃は、仕事中おもむろに1冊の本を取り出して、パラパラと5分ぐらい読んだ後に「この本のことはもう解った」と言って本をしまったという都市伝説があったくらいだ。

 だが、前職の業績はずっと芳しくなかった。その理由の1つは、社長が現場に行かなさすぎたことである。いや、現場に行っていたのだが、あまりに形式的だった。社長は一応営業活動もしていたものの、表敬訪問ばかりであった。会社案内だけを渡してさっさと帰ってきてしまうのである。顧客のニーズを知りたければ、やはり商談を自らの手で完結させなければならない。

 もう1つは、自分が作った机上の空論を頑固に押し通そうとしたことである。社長はことあるごとに「今年は売上高2億円を目指す」と言っていたが、具体策について聞いても、社長が何を考えているのか、ついに解らなかった。また、社長が研修サービスの開発に関与すると、本の知識を並べ立てるばかりで、現実に即した柔軟性がなかった。そもそも、本と同じ内容であれば、顧客は研修など受けずにその本を買えばよいだけの話である。リーダーはもっと読書をして机上の空論を作るべしと書いたが、リーダーのこの機能はこのように容易に弱みに転ずるので要注意だ。

 最後に。私はコンサルタントの端くれなのだが、コンサルタントは企業経営者が相手の仕事である。その企業経営者は前述のように非常にたくさんの本を読んでいるのだから、コンサルタントはそれ以上にもっと学習しなければならない。何とか1日1冊のペースで読みたいと思うものの、今のところ3日で2冊ぐらいのペースにとどまっている。今日の記事を書きながら、自分に甘えてはいけないと喝を入れ直したところだ。私に対して、「あなたは本を読みすぎで現場のことが解っていない」と批判する人ももちろんいる。しかし、どうせ現場の知識は顧客企業にかなわないのだから、それとは違う次元で勝負したい。つまり、圧倒的な読書量をバックに仕事をしたいと思う。

 (読書量を増やすとしても、やはり限界はある。私が一生のうちに読むことができる冊数は決まっている。あと30年元気に仕事ができるとして、1日1冊のペースで読めば前述の通り1万冊である。この1万冊の枠を有効に使わなければならない。若い時は自分の好きな本を好きなように読めばいいと考えていた。しかし、1万冊”しか”枠がないのであれば話は別である。読んでも無駄な本は極力排除して、有益な本を選択しなければならない)



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