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『中国の「最前線」はいま(『世界』2017年8月号)』―中国本土を批判できない左派、他
【AGSコンサルティング】中国・アセアン進出動向セミナー(セミナーメモ書き)
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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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◆個人事務所「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ


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(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

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(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

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(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

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2017年08月16日

『中国の「最前線」はいま(『世界』2017年8月号)』―中国本土を批判できない左派、他

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世界 2017年 08 月号 [雑誌]世界 2017年 08 月号 [雑誌]

岩波書店 2017-07-07

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 (1)「中国の『最前線』はいま」という特集タイトルから、私は勝手に、中国本土で行われている法輪功の弾圧やチベット、ウイグル地区での人権抑圧などが取り上げられるものだと思い込んでいた。あるいは、先月死去した民主活動家・劉暁波氏の軌跡について考察がなされるものだと思っていた。そして、これらの事象に対して、左派らしく、自由、基本的人権、民主主義などの観点から切り込んでいくことを期待した。ところが、蓋を開けてみると、「最前線」とは香港、台湾のことであり、両地域の民主主義が危機に瀕しているという内容に終始していた。

 以前の記事「『小池劇場と不甲斐なき政治家たち/北朝鮮/憲法改正へ 苦渋の決断(『正論』2017年8月号)』―小池都知事は小泉純一郎と民進党の嫡子、他」でも書いたように、左派、特に日本の左派はねじれた思想の持ち主であると感じている。本来の左派は、国家という権力装置をなくし、世界市民社会を実現して究極の平等主義を手に入れようとする。そこにおいては、個は全体の中に埋没し、一が全体であり、全体が一であるという社会が出現する(だから私は、全体主義につながる可能性があると危惧している)。

 ところが日本の左派は、個を埋没させるためにまずは自己否定を行う。つまり、日本という国家を毛嫌いし、太平洋戦争でアジアに多大な被害をもたらした三流国家であると貶める。その自己否定の反動として、被害者である中国や韓国を過度に持ち上げる。自己否定すると同時に、他者肯定をする。左派にとって、中国や韓国は、日本とは違い一流国家である。その一流国家に対して、南京事件や慰安婦問題をめぐって永遠に謝罪し続ける。非常に矛盾したことであるが、日本の左派は、自己否定をしておきながら、中国や韓国にへつらうことで、自己の生存空間を確保しているのである。だから、日本の左派は、中国本土(や韓国)の民主主義が危機に陥っていても、正面からそれを批判できない。せいぜい、次のことを言うのが関の山である。
 「表題の『一国両エン(※「厭」の下に「鬼」)』が示すように、香港は正に困難に直面している。香港の高度な自治は北京政府の未だかつてないほどの深刻な侵害を受け、一方で北京政府は香港の高度な自治と制度が中国国内に浸透し、絶対的な支配権に脅威を及ぼすのではないかと危惧している」
(高橋政陽「「一国両エン」返還20年、香港のいま」)
 前掲の以前の記事でも書いたように、日本の左派は、一方で中国や韓国を恭しく扱う一方で、左派が本当に味方するべき社会の弱者に対しては優越的な態度をとる。後者の傾向は、日本に限らず、他国の左派にも見られるようである。左派は、弱者は無知な者として扱う。その無知な人々の上に立って、自らの能力と知識をひけらかし、有能さを示そうとする。そして、人々の無知につけ込んで、左派にとって都合のよい情報を吹き込もうとする。
 台湾有事の際にマラッカ海峡を第七艦隊が封鎖すれば、エネルギー資源の入手経路がただちに遮断される「マラッカ・ジレンマ」は、米国の「核の傘」の下にある日本には縁遠い話ではあるが、中国にとっては重大関心事である。
(羽根次郎「世界のなかの「一帯一路」構想とその思想的可能性」)
 マラッカ海峡は、日本が中東から石油を輸入する際のシーレーンの一部をなしているため、非常に重要な拠点であることは周知の事実である。安保法制の議論の時にも、中国の南シナ海における暴挙を報じる時にも、散々取り上げられたことである。それを「日本には縁遠い話」としてしまうのは、日本人を無知な人々だと思いたい著者の精神が表れているのではないかと勘繰ってしまう。幸いなことに、この記事は読者に対して何か特定の思想を押しつけようとするものではなかった。また、記事の最後で、以下のようにボロが出ていた。
 また、(欧州や中東などの)西方との関係を日本では南シナ海やマラッカ海峡抜きに想像できないのも無理はない。日本にやってきた西方の人びとはそうした海域を通ってきたのだ。(同上)
 左派は本当の意味で弱者の声に耳を傾けない。アメリカ大統領選挙で民主党のヒラリー氏が敗れたのは、大衆のニーズを汲み取ることができず、それどころか大企業に肩入れして、ウォールストリートで講演をしては何千万円という報酬を得ていたからである。イギリスの左派も、弱者からの乖離傾向が見られた。ところが、先のイギリス総選挙では、バーニー・サンダース氏に倣って、左派が草の根運動を展開したことが報告されている。これこそ左派の本来の姿である。
 これまで、コービンの熱心な支持者たちは高学歴の若者たちが多く、彼らはツイッターで政治を語り合うばかりで、草の根の選挙活動を行なわないと批判されてきた。が、6月の総選挙で彼らは変わった。若者たちは1軒1軒のドアをノックして、研修で教わったとおりに有権者の心配事や不満、労働党への批判も聞き、ポジティヴな態度で労働党の政策を語り歩いた。
(ブレイディみかこ「イギリス総選挙で見せた左派の底力 進歩的なドブ板政治」)
 (2)以前の記事「岡本隆司『中国の論理―歴史から解き明かす』―大国中国は昔から変わらず二項対立を抱えている」でも書いたように、現代の大国、すなわちアメリカ、ドイツ、ロシア、中国は皆、二項対立的な発想をする。山本七平によれば、二項対立はセム系民族の特徴であるらしい。なぜセム系は二項対立で物事を考えるのか、また、セム系ではない4大国の人々が二項対立的な発想をするのはなぜなのかについては、現在も探索を続けているところである。

 大国は、自国の外に常に仮想敵国を設定することで、対立構造を創造する。さらに、国内にも二項対立を抱える。これをアメリカ対中国で説明すると次のようになる。周知の通り、アメリカと中国は現在様々な分野で対立している(もっとも、アメリカと中国の関係は、アメリカとロシアの関係よりも複雑であり、米中間では色々な協力もなされていることを付記しておく)。アメリカ、中国ともに、国内にも二項対立を抱えている。アメリカ国内には、多数派である反中派と、少数派である親中派がいる。中国国内には、多数派である反米派と、少数派である親米派がいる。

 アメリカと中国の間では、アメリカの反中派と中国の反米派が対立している。同時に、アメリカ国内では反中派と親中派が、中国国内では反米派と親米派が対立している。一方で、アメリカの親中派は、中国の親米派と裏でつながっている。このような関係にあるため、アメリカの反中派と中国の反米派は、お互いの対立に全力を注ぎたいが、国内でそれぞれ親中派、親米派と戦っている以上(しかもアメリカの親中派は中国の親米派から、中国の親米派はアメリカの親中派から支援を受けている)、全てのエネルギーを対中、対米に振り向けることができない。このことによって、大国間の深刻な対立を何とか回避することができる。

 中国は、香港と台湾に対して一国二制度を敷いている。つまり、国内において対立構造を保持している。中国は香港と台湾を本土に取り込んで、文字通り「1つの中国」を実現することを目指しているようだが、個人的にこれは危険な兆候だと思う。仮に1つの中国が実現されると、国内の対立構造がなくなり、国内のエネルギーが全て対立するアメリカに向けられる。また、国内政治は共産党一党に集約され、政治の失敗が許されない。少しでも政治が失敗しそうなサインが生じれば、国民の目を危機から逸らすために、対外的に強硬な態度に出ることが予想される。しかし、このやり方にも限度があり、政治の失敗がいよいよ明らかになった際には、共産党支配が崩壊するに違いない(中国の歴史とは、政治の失敗をめぐる王朝の興亡の歴史である)。矛盾した言い方になるが、中国は現在の一国二制度を維持しておくのが最善であると思う。

 (3)教育勅語を教育の現場で使ってもよいかどうかが議論を呼んだが、中嶋哲彦「なぜ教育勅語の復活を願うのか―「徳」の樹立と建国の一体性」によれば、1948年6月19日の衆議院決議で、教育勅語に「指導原理性を認めない」ことが明確に宣言されたという。参議院も同日、「教育勅語等が、あるいは従来の如き効力を今日なお保有するかの疑いを懐く者あるをおもんばかり、われらはとくに、それらが既に効力を失つている事実を明確にする」と決議した。これらを受けて文部省も、国会決議の趣旨を徹底すべく、教育勅語の回収を指示した。よって、政府が今年の国会で、教育勅語を教育現場で活用できる可能性について触れたことは問題がある。

 だが、この部分についてはどうだろうか?
 むしろ、文部科学省は、徳目主義とは反対に、「考える道徳」を通じて、①新自由主義的社会秩序に対応する生き方を自ら主体的に選択する価値観と思考回路から構成された市民道徳と、②社会の経済秩序と国家による政治的統治に対する内外からの侵犯に対する主体的安全保障意識、の育成を目指しているのではないか。
 特に、②について、教育は子どもに対して十分に考える機会を与えたであろうか?左派に浸食された教育関係者は、「安保法制は戦争につながる」、「徴兵制の復活をもたらす」と判を押したように主張し、(1)で述べた「弱者の上に立つ左派知識人」は、過去の国会・政府答弁資料などを持ち出して、机上における文言の分析だけを通じて安保法制を憲法違反と結論づけた。その結果、安保法制=悪という印象だけを子どもたちに刷り込ませたのではないだろうか?

 現在、日本を取り巻くアジアの情勢がどのように変化しているのか?その結果、日本にとってどのような脅威が発生しているのか?それらの脅威に対して、日本はどんなシナリオで対応するべきなのか?そのシナリオを実行する際に、障害となることは何か?その障害を取り除くにはどうすればよいか?こういったことを議論することが、②の主体的安全保障意識の醸成につながるはずである。さらに、現在の安全保障は、自国のみを対象とする安全保障から広がりを見せている。なぜ、他国の安全を日本が保障する必要があるのか?保障するべきだとして、どの範囲まで保障するのか?現在の日本には、他国の安全を保障できる能力があるか?こういった論点も俎上に載せなければならない。我々が見るべきは過去の資料ではなく現実である。

2017年07月03日

【AGSコンサルティング】中国・アセアン進出動向セミナー(セミナーメモ書き)

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海外ビジネス

 「AGSコンサルティング」と「マイツグループ」共催のセミナーにご厚意で参加させていただいた。セミナーで勉強になったことのメモ書き。

 <中国>
 ・2016年3月に第13次5か年計画が採択された。小康社会の全面的完成に向け、政府は発展の不均衡、不調和、持続不可能といった突出した問題に狙いを定め、イノベーション発展、調和のとれた発展、グリーン発展、開放発展、ともに享受する発展という5つの発展理念の確固たる樹立と徹底した貫徹に取り組むとしている。これにより改革が深化され、公平性の確保された透明性の高いビジネス環境の整備が期待される。

 ・近年、中国から日系企業が相次いで撤退しているとしばしば報じられる。事実、外務省の「海外在留邦人数調査統計」によると、中国の日本企業拠点数(支店、駐在員事務所を含む)は、2017年には33,390拠点だったのが2018年には32,313拠点となり、1,077拠点減少している。しかし、中国全体で見た場合、中国への対内直接投資額は着実に増加しており、2014年には1,285億ドルを記録して2年連続過去最高となった。2015年は1,262億ドルであるが、この数字には金融分野(銀行、証券、保険)が含まれておらず、金融分野を含めると、3年連続過去最高となるのは確実である。なお、直接投資の中心は製造業から非製造業にシフトしている。

 ・中国に進出している日系企業のうち、製造業は内販比率59.4%、外販比率40.6%、非製造業は内販比率75.0%、外販比率25.0%となっている。経営上の課題を尋ねたアンケートでは、製造業、非製造業ともに、1位は「従業員の賃金上昇」であるが、2位は製造業の場合「限界に近づきつつあるコスト削減」、非製造業の場合「新規顧客の開拓が進まない」となっている。製造業においては、製造原価に占める材料費の比率が平均59.5%であり、製造コストの低下に向けては材料費の削減(現地調達割合を上げるなど)に向けた取り組みが必要である。

 ・内販比率が高い湖北省、重慶市、北京市、上海市では、今後事業を拡大すると回答した日系企業が多い。一方、外販比率が高い福建省、山東省、広東省、遼寧省では、今後事業を拡大すると回答した日系企業の割合が相対的に低い。業種別に内販/外販比率と今後の事業展開の意向を尋ねたところ、内販比率が高い食料品、化学・医薬、輸送機械器具、卸・小売業では事業の拡大志向が高い。一方、外販比率が高い繊維では、事業の拡大志向が低い。

 <ASEAN>
 ・現在、海外拠点がある日系企業に対して、今後拡大を図る国を尋ねたアンケートによると、中国:56.5%(2014年)⇒52.3%(2016年)、タイ:44.0%(2014年)⇒38.6%(2016年)、インドネシア:34.4%(2014年)⇒26.8%(2016年)、ベトナム:28.7%(2014年)⇒34.1%(2016年)なっており、中国、タイ、インドネシアは減少傾向、ベトナムは増加傾向にある。中国が減少している理由は周知の通りである。タイは、近年経済成長が鈍化しており、投資が一服した感がある(タイのGDP成長率は、2013年2.73%、2014年0.92%、2015年2.94%、2016年3.23%。1人あたり名目GDPは、2013年6,157.36ドル、2014年5,921.09ドル、2015年5,799.39ドル、2016年5,899.42ドル)。インドネシアは人口の多さから市場として期待されてきたが、元々非常に複雑な多民族国家であり、簡単に事業化できないことが明らかになったことが原因と思われる。

 ・新興国の経済の発展は3段階に分けて考えることができる。①コストメリットを活かした生産拠点の受け入れ、②内需拡大による販売拠点の受け入れ、③研究開発などのさらなる高機能化、の3段階である。中国は2000年代半ばまで①のフェーズにあったが、2000年代後半は②のフェーズに入り、現在は③に移行しつつある。ASEAN諸国のうち、人件費が安いベトナム、カンボジア、ミャンマー、ラオスは、現在①のフェーズにあり、中国から生産拠点が移管されている(チャイナプラスワン戦略)。他方、既に高度な経済成長を遂げたシンガポールやマレーシア、経済が成熟しつつあるタイは、①のフェーズを卒業し、②や③のフェーズに移っている(ただし、タイではR&D人材が不足していると言われる)。ベトナムは、人件費が安いため①のフェーズにあるものの、人口が多いことから②のフェーズもパラレルで進行している印象がある。

 ・海外に進出するにあたっては、進出の目的を明確にすることが非常に重要である。日本市場が成熟・縮小傾向にあるから海外に進出するという理由では弱い。自社の製品・サービスが海外においてどのような価値を創造することができるのか、進出先の地域においてどのような貢献ができるのかをはっきりさせる必要がある。また、海外進出にあたりフィージビリティスタディを実施する際に、経済産業省、JETRO、国連などのデータを用いて各国の市場の情報を入手することになるが、国別だけでなく、都市別にも分析を行うべきである。ASEAN諸国は、都市によって経済レベル、文化、生活習慣、インフラ、社会制度などがバラバラである(この点が、前述のように、インドネシアにおける事業展開を難しくしている1つの要因であろう)。

 ・中堅企業が海外進出する場合には、「小さく始めて大きく売る」ことを目指すとよい。特に、代理店を効率的に活用することが有効である。代理店は販売のリスクを低減してくれる。ただし、代理店を利用するにあたっては、代理店の信用調査を事前に入念に行うことが必要である。なお、海外事業を小さく始めるからと言って、本社が現地に任せっ放しにするのはよくない。ASEANの場合、英語でコミュニケーションが取れるとは限らないから、本社が現地にあまり触れたがらない傾向がある。しかし、現地は製造、購買、販売、人事労務管理、経理、行政への対応など、ありとあらゆることを少人数で行っている。本社のサポートは必要不可欠である。

 ・シンガポールに進出している日本企業拠点数は1,116拠点(2016年)である。このうち、シンガポールの商工会議所に登録している日経企業数は、2017年時点で836社である。商工会議所に登録している日系企業の内訳を見ると、製造業が10年前に比べて減少しているのに対し、金融・保険業は2007年の46社から2017年の64社へと1.4倍、観光・流通・サービス業は2007年の106社から2017年の249社へと2.5倍に増加している。

 ・シンガポールで就労するためには、EP(外国人就労ビザ)を取得する必要がある。シンガポールは多様な民族を受け入れることで急速に経済発展を遂げた国であるが、近年は自国民の雇用確保へと舵を切っている。そのため、EP取得の要件が2010年頃から厳格化されている。具体的には、2017年1月より、EP申請に必要となる最低月給が、3,300シンガポールドルから3,600シンガポールドルに増加した。また、実際に承認を受けるために必要な月給も上昇しているとの印象がある。EPを取得するために日本人駐在員の月給を上げると、人件費が増加してしまう。そのため、ローカル人材の活用を検討する必要がある。

 ・シンガポールでは、PIC優遇税制が2017年終了事業年度を最後に廃止されることが予定されている。PIC優遇税制とは、企業の自動化、効率化を促進する適格支出(パソコンの購入など)について、400%償却(つまり、10万円のパソコンを購入すると、40万円を減価償却費として計上できる)、または一定の条件の下で60%現金給付を与える(つまり、10万円のパソコンを購入すると、6万円戻ってくる)優遇制度である。これに代わるものとして、Automation Support Packageという優遇税制が創設されるが、現地出資が30%以上であることが条件であるなど、多くの日本企業は利用することができない見込みである。

 ・2015年1月にIRAS(シンガポール内国歳入庁)が公表した移転価格ガイドラインにより、シンガポールでも本格的に移転価格同時文書化が始まることとなった。法人税の確定申告期限(原則として、決算日の翌年11月末まで)に文書を作成する必要がある。ただし、棚卸資産購入取引が1,500万シンガポールドル以下、ロイヤルティ支払が100万シンガポールドル以下の場合など、少額の場合には文書化が免除されることがある。

 ・シンガポールや香港は、地域統括拠点として利用されることが多い。地域統括会社を利用すると、企業グループ全体の税負担を軽くすることができる。例えば、インドネシアとタイに子会社を持つ日本企業があり、インドネシア子会社で出た利益100をタイ子会社に再投資する場合を考えてみる。まず、インドネシアにおいて、源泉税10が引かれる(日インドネシア租税条約による)。次に、日本において100×5%×30%=1.5が引かれる(外国子会社配当金益金不算入制度による)。よって、タイ子会社に再投資できるのは、100-10-1.5=88.5となる。

 ここで、香港に地域統括会社を置き、インドネシアとタイの子会社を香港の地域統括会社の下に置いたとする。この場合、まずインドネシアでは源泉税5が引かれる(香港-インドネシア租税条約による)。次に香港であるが、香港では配当は非課税である。よって、香港の地域統括会社は、100-5=95をタイ子会社に再投資することができる。ただし、企業グループ全体の規模が大きくないうちは、享受できるタックスメリットよりも、統括拠点の維持コストの方が高くなる恐れがある。タックスメリットを目的として地域統括会社の設置を検討するのは賢明ではない。あくまでも、ビジネス的なニーズ(個社から地域ごとの経営管理への移行、バックオフィス業務の集約と効率化など)に基づいて、地域統括会社を設置するかどうか決定するべきである。

2017年06月09日

『北朝鮮”炎上”/日本国憲法施行70年/憲法、このままなら、どうなる?(『正論』2017年6月号)』―日本はアメリカへの過度の依存を改める時期に来ている

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正論2017年6月号正論2017年6月号

日本工業新聞社 2017-05-01

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 クリントン大統領と北の核疑惑が顕在化した1993年からオバマ大統領が退任する2017年までの24年間、米国が実質的に何もしなかった間に、北朝鮮は核実験を重ね、ミサイルも日本までを射程に入れるノドン、テポドン、そしてグァムに到達するムスダンまで開発を進めてきた。核ミサイルにより一部とはいえ米国市民を脅すところまで来たのである。
(香田洋二「トランプVS金正恩の裏側 徹底分析!両軍の実力は・・・」)
 以前の記事「『天皇陛下「譲位の御意向」に思う/憲法改正の秋、他(『正論』2016年9月号)』―日本の安保法制は穴だらけ、他」でもやや突飛なことを書いたが、この24年間、アメリカは北朝鮮に対して何もできなかったのではなく、敢えて何もしなかったのではないかというのが私の考えである。北朝鮮が核兵器を開発し始めた初期の段階では、当然のことながらその能力はとても十分なものとは言えない。だが、能力が十分でないがゆえに、アメリカは北朝鮮の核に関する情報を十分に入手することができない。北朝鮮がどこに核開発施設を持っているのか、核兵器の破壊能力はどの程度なのかをアメリカは見積もることができない。

 この段階でアメリカが最も恐れるのは、アメリカがなまじ北朝鮮に制裁を行った結果、北朝鮮が暴走し、韓国を攻撃することである。同盟国である韓国が攻撃されれば、アメリカは否が応でも朝鮮半島に出向かなければならない。北朝鮮の軍事能力に関する分析も不十分で、戦略・戦術が明確に定まらないまま、アメリカは朝鮮半島の戦争にズルズルと巻き込まれる。いくらアメリカの軍隊が世界最強だからと言っても、こんな戦争をアメリカはやりたがらない。

 だから、アメリカは北朝鮮の核兵器の能力が上がり、アメリカが分析可能なレベルに達するまで待っていたのだと思う。ミサイルの能力が上がれば、北朝鮮はミサイル発射実験を繰り返すようになる(まさに今そうなっている)。アメリカは実験の映像を分析することで、北の実力を正確に推定できる。また、北朝鮮の核兵器の能力が上がれば、核開発施設が大型化し、衛星からその存在を把握することも可能になる。そうすれば、アメリカは対北朝鮮の戦略を練りやすくなる。

 アメリカが北朝鮮に対して取っている態度は、中国に対して取っている態度とも同じである。アメリカは、敵国のレベルが上がるのを待って、「戦争か、交渉か」と迫る。これがアメリカのいつものやり方である。ただし、仮に戦争が選択された場合は、敵国も相当程度の軍事能力を保有しているため、大規模な戦争に発展する。そして、日本が巻き込まれる可能性は極めて高い。
 柳澤:それはアメリカが助けに来てくれたとしたら、その時は尖閣の取り合いでは済まない大戦争になっているということですよね。沖縄や西日本にミサイルが飛んでくる事態も覚悟しなければならない。今までと同じようにアメリカに守ってもらうことを政策目標にしていたら、無理が生じるのではないかという懸念も出てきているのです。だからこそ、日本にとって守るべきものはいったいなんなのか、守るためにはどれほどのコストを負担すべきなのかを含めて、抜本的に考え直さなければいけない。
(柳澤協二、潮匡人「護憲か、改憲か」)
 日本は、「アメリカが日本を見捨てる日」に備える必要があるのではないかと思う。現在のアメリカ大統領は、「アメリカ・ファースト」を公言してはばからない人物である。いくら安倍首相がトランプ大統領と密接な関係を構築して、日米同盟の磐石性を強調しても、アメリカがあっさりそれを放棄する可能性はゼロではない。日本はそのXデーに備えて、自力で自国を防衛できる能力を保有する必要がある。それが、日本が戦後レジームを脱却して「普通の国」になる道である。
 山田:では仮に、安倍内閣が河野談話を撤回するなんて表明したとしたら、「修正主義だ」などと騒がれて、喜ぶのは韓国や中国ということになってしまいます。ですのでやはり、モーガンさんのような方に、アメリカの一般の人たち向けに、この問題(※慰安婦問題)についての正確な情報をきちんと出していってほしいと思いますね。
(ジェイソン・M・モーガン、山田宏「トランプ大統領の靖国参拝で歴史問題は解決する
!」)
 ただ悲しいかな、戦後70年の歴史の中で、日本人は対米依存体質にどっぷりと浸かっているようである。上記の引用文は、韓国や中国が慰安婦問題に関して根拠のない情報を世界中にばらまいていることに対し、山田宏氏がアメリカ人のジェイソン・M・モーガン氏に正しい情報を発信してくれるよう依頼している場面である。ところで、この記事には次のような文章もある。
 モーガン:日本の学問は真実を追求していくのが原則なんですけれども、アメリカの学問はあくまでもイデオロギーありきで、いくら真実を語っても聞く耳を持たない、ということに気付かされたのです。イデオロギーに染まっている人は、何を言っても聞く耳を持たないので、証拠をいくら出してもムダというわけで、それはそれで一貫性があります。(同上)
 イデオロギーに染まって真実を聞く耳を持たない人に対して、真実を伝えるようにお願いするのは全く矛盾している。慰安婦問題や南京事件問題などに関しては、韓国や中国は莫大な予算をつけて世界中で広報キャンペーンをやっている。そこで、日本も広報予算を大幅に増額して、韓国や中国に対抗すべきだという主張をしばしば耳にする。しかし、はっきり言ってイデオロギーに染まっている韓国人や中国人に何を言っても徒労に終わるであろうし、良識ある第三国から「真実はこうなのですよ」と韓国や中国を諭してもらうことも期待できない。

 私は、韓国や中国がどんなに外野で騒いでも、日本人だけは事実を適切に認識していればそれで十分だと思う。韓国や中国のキャンペーンによって、過去の日本人に対して悪いイメージを持つ人々が世界中で増えるかもしれない。しかし、過去は過去と割り切って、それでも日本を必要とする諸外国との協力関係を誠実に維持することが重要である。そうすれば、「日本人は昔は悪かったかもしれないが、今は本当に信頼できる国民だ」と思ってもらえる。外交関係は過去に束縛されるのではなく、常に未来志向でなければならない。

 私は、安倍内閣になってから、アメリカへの依存度が高まっていることに少なからぬ不安を抱いている。安倍首相は何かにつけて日米同盟の強固さを強調する。現代は米中の2大国の対立の時代であり、中国の脅威から日本を守るためにアメリカとの関係をより深化させなければならないというのが政府の理屈であろう。しかし、以前の記事「山本七平『存亡の条件』―日本に「対立概念」を持ち込むと日本が崩壊するかもしれない」でも書いたように、二項対立の一方に過度に肩入れすると、日本は危機に直面するという特性がある。

 特に、理想と現実という二項対立の扱いが不得手である。歴史を振り返ると、少なくとも3度、日本人は理想の扱いでミスをしていると私は考える。1つ目は中世における仏教の扱いである。仏教はインドから中国を経由して日本に伝来した。よって、日本の仏教という現実に対し、インドや中国の仏教が理想という関係がある。インドが天竺であるのに対し、日本は粟散辺土である。中国が大国であるのに対し、日本は小国である。ところが、中世になると、日本が粟散辺土で小国であるがゆえに、仏教の理想国であるという考え方が現れるようになった。日本が仏教の発祥の地であるとする伝説も創作された。さらに、日本書紀の神々が仏によって書き換えられた。日本書紀は日本の成立を記した重要な書物であるから、それに手を加えるというのは一大事件である(ただし、私は神仏習合自体は日本独自の二項混合として評価している)。

 2つ目は、江戸時代における中国礼賛の動きである。古代から、日本国家は中国の制度を真似して作られてきた。中国では皇帝が大きな権力を有し、広大な土地を治めている。それに倣って、日本では天皇に影響力を集中させ、国家を統治するという機構が構築された。ここでは、中国が理想で、日本が現実という関係になっている。ところが、江戸時代に入ると、儒学者である山鹿素行が『中朝事実』を著し、日本こそが中国の理想を最もよく体現している、端的に言えば、日本こそが中国であるという主張を展開するようになった。山鹿素行は江戸時代初期の人物であるが、その影響は後代にまで長く及んだ。明治維新によって幕府が消滅し、天皇に権力が集中する体制が整備されたが、山本七平は明治維新のことを「中国化革命」と呼んでいる。

 ここにおいて、日本と中国の関係は、日本が理想で中国が現実という具合に逆転する。理想的な日本は中国という現実に直面するのだが、理想の扱いに慣れていない日本はここで失態を犯す。通常、理想と現実の間にギャップがあれば、その間を埋める施策を講ずるものである。だが、自国が理想だと主張してはばからない日本は、現実の中国を攻撃する。これが日中戦争である。もう1つの態度は、理想を捨てて現実の前に土下座するというものである。戦後、田中角栄が電撃的に中国との国交を回復したのはその表れである(以前の記事「イザヤ・ベンダサン(山本七平)『日本人と中国人』―「南京を総攻撃するも中国に土下座するも同じ」、他」を参照)。つまり、理想に強くしがみつくあまり、現実との間で上手く折り合いをつけられないのである。

 3つ目は、太平洋戦争である。明治維新以降、日本は西洋の価値観を手本としてきた。西洋が理想であり、日本が現実という関係である。ところが、いつしか日本こそが西洋であり、アジアにおいて西洋的な価値観を実現する使命を帯びていると考えるようになった。それが実行されたのが、太平洋戦争における満州国の建国であり、東南アジアにおける植民地の解放運動である。しかし、現代の我々は、いずれも失敗に終わったことを知っている。よく、日本人は東南アジアで欧米による植民地支配を打ち破ってくれたから、東南アジアには親日国が多いと言われる。しかし、実際にフィリピンで戦場に立った山本七平などは、日本軍に東南アジア経営のビジョンがなく、現地の激しい抵抗運動にあったと述懐しているのは見逃せない。

 現在、日本はアメリカを絶対的な理想としている。私が恐れているのは、アメリカが重視する基本的価値観を最もよく体現しているのは日本であり、日本こそアメリカであるという主張が現れることである。仮にそうなった場合、あまりに突飛な予測かもしれないが、日本がアメリカを総攻撃するか、ワシントンに土下座するといった日が来る恐れがある。これを防ぐためには、二項対立の一方に過度に肩入れしないことである。つまり、中国との関係も重視しなければならない。中国をいらずらに敵視するばかりではなく、中国に「日本を攻撃すると自国にとって大きな不利益となる」と思わせることが必要である。この点で、条件が整えば中国が主導するAIIBに参加してもよいと発言した安倍首相の態度は評価できると思う。


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