このカテゴリの記事
『巨頭たちの謀事/朴槿恵政権崩壊(『正論』2017年2月号)』―ますます可能性が高まった「朝鮮半島統一」に対してどう対処すべきか?
アメリカの「二項対立」的発想に関する整理(試論)
岡本隆司『中国の論理―歴史から解き明かす』―大国中国は昔から変わらず二項対立を抱えている

お問い合わせ
お問い合わせ
アンケート
プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
所属組織など
◆個人事務所「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ


(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

Experian海外企業信用調査 海外企業信用調査(Experian)
(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

中小企業診断士の安い通信講座なら「資格スクエア」資格スクエア
(以下の資格の講師をしています。
 ―ITパスポート
 ―情報セキュリティマネジメント
 ―経営学検定(初級・中級)
 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
アクセスカウンター(PV)
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

最新記事

Top > 中国 アーカイブ
2017年02月04日

『巨頭たちの謀事/朴槿恵政権崩壊(『正論』2017年2月号)』―ますます可能性が高まった「朝鮮半島統一」に対してどう対処すべきか?

このエントリーをはてなブックマークに追加
正論2017年2月号正論2017年2月号

日本工業新聞社 2016-12-28

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 加藤:デモの原因を作った朴氏に問題の根源があることは否めませんが、韓国の次期政権が北朝鮮寄りの政権になっていくと、反日に加えて北朝鮮に従順で親中国の政権が出来てしまう。それは日本の新たな脅威になる恐れがあると思うのです。

 呉:確かにこのままだと次の大統領は野党の文在寅(ムンジェイン)だと容易に想像がつきます。文在寅はもう強烈な親北朝鮮の政治家です。政策も親北朝鮮的な政策が採られ、そうなれば韓国はもう本当に大混乱に陥ることが避けられない。中国も後ろに控えていてそれをたくみに利用する―という光景が目に浮かびます。
(加藤達也、呉善花「言論弾圧の果てに・・・韓国の自由は死んだのか」)
 以前の記事「『トランプ大統領/進まぬ憲法改正/「生前退位」でいいのか/「死刑廃止」宣言(『正論』2017年1月号)』―朴槿恵問題は一歩間違えば朝鮮半島の”革命”を引き起こしていた、他」で、北朝鮮が朴槿恵問題につけ込んで韓国を攻撃し、朝鮮半島を統一する可能性について触れた。引用文にあるように、もし韓国で親北朝鮮の大統領が誕生すれば、結果的には朝鮮半島に反日、親中の共産主義国家が建設されることになるのかもしれない。朝鮮半島問題を含めて混乱を極める世界情勢を前に、西部邁氏は「慌てるな、落ち着け、自国の保護に全精力を注げ」(西部邁「ファシスタたらんとした者」より)と日本人を鼓舞するが、残念ながら日本には自力で自国を防衛するだけの力がないと思われる。

 以前の記事「山本七平『日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条』―日本組織の強みが弱みに転ずる時(1)(2)」で、日本社会は「(神?⇒)天皇⇒立法府⇒行政府⇒市場/社会⇒企業/NPO⇒学校⇒家庭⇒個人」と階層が積み重なる多重階層社会であると書いた。だが、このラフなスケッチに私は重要な要素を1つ加えるのを忘れていた。それは、神と同レベルに、「大国」という存在を位置づけることである。日本は常に、大国から影響力を受けることで存続を守ってきた。日本史の大半において、大国の位置にあったのは中国であった。明治維新後の日本においては、当時のヘゲモニーであるドイツやフランスなどが大国の位置を占めた。そして、戦後はアメリカが大国のポジションに収まっている。この伝統を今さら変えることは極めて困難である。

 朝鮮半島が共産主義国家として統一された時、その国家は資本主義国である日本と直接対峙することになる。朝鮮の新国家のバックには中国が、日本のバックにはアメリカがついている。ここで、単純に考えれば、日米同盟をより強固なものにして、朝鮮半島の共産主義国家からの脅威に備えるべきだという主張に至るであろう。しかし、私はこの考えは非常に危険だと感じる。

 本ブログでも何度か書いたが、大国は二項対立的な発想をする。つまり、危険だと解っていながらも常に対立関係に立ち、緊張を保つ。そして、大国は、周辺の小国を自国の味方に引き込み、勢力圏を拡大していく。しかし、大国の真の狙いは、大国同士が直接衝突して甚大な被害を出すのを防ぐために、双方の大国がお互いに囲い込んだ小国同士に代理戦争をさせることにある。中東はまさに、米露の代理戦争の舞台となっている。仮に日本が日米同盟を強固にするならば、中国も朝鮮半島の共産主義国との関係を強化し、かえって日本と朝鮮半島の共産主義国との紛争のリスクが高まるだろう。これは言うまでもなく、米中の代理戦争である。

 小国が、二項対立をする大国の一方に過度に肩入れするのは自殺行為である。そうではなく、(これも決して楽な道ではないのだが、)もう一方の大国の懐にも飛び込んでいくことが重要である。中国には「日本を攻撃すると中国にとって損になる」と思わせなければならない。そのためには、具体的には中国が主導するAIIBに日本が加盟したり、中国も交渉国として名を連ねているRCEPの交渉を日本が後押ししたりすることが必要であろう。RCEPの交渉を前進させるためには、アメリカにTPPに戻ってきてもらわなければならない。ここは日本の正念場である。そして、将来的にTPPとRCEPを連携させることができれば(FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏))、トランプ次期大統領が強く批判している中国の高関税問題は相当程度に解消する。

 中国は、朝鮮半島に新しく誕生した共産主義国家と一緒になって、歴史問題を執拗に取り上げることだろう。現に、南京事件と慰安婦問題をセットにした「アジアン・ホロコースト」なる言葉を中国と韓国が世界中にばら撒いているという(大高未貴「「慰安婦、南京=ホロコースト」のウソに終止符を」より)。中国などが歴史問題にこだわるのは、日本に自虐史観を植えつけるためである。そして、朝鮮半島の共産主義国家が(中国の支援を受けて)日本を攻撃した際に、日本人に「我が国はかつて、あなた方にひどいことをしました。我が国はとても悪い国です。だから、あなた方は我が国の領土を好きなように持って行って結構です」と言わせるためである。

 彼らには、いくら真実を主張しても通らない。中国などのプロパガンダを信じていた諸外国は、多少は認識の誤りを正すだろうが、肝心の中国はより一層プロパガンダに力を入れるに違いない。だから、歴史問題を処理するには、東アジアの外交で時折使われる「棚上げ」という技法を使うしかない。以前、韓国との間で「慰安婦問題の不可逆的解決」という合意がなされたが、これも一種の棚上げである。棚上げをするには何か条件が必要となるものの、あいにく私には妙案がない(日本のAIIB加盟が条件となる?)。また、棚上げもおそらく一時的なものに留まるであろう。慰安婦をめぐる韓国との合意も、大統領が代われば反故にされると言われている。それでも、中国の攻撃の手を緩めるために、韓国と同様の棚上げを検討するのは無価値ではないと思う。

 つまり、日本が生き残る道は、依然としてアメリカを神と同レベルに位置づけ、アメリカの(軍事的、経済的)影響力を受けつつも、同時に中国の(経済的)影響力も受けるという選択を取ることである。これを私は本ブログの中で「ちゃんぽん戦略」と呼んでいる。ちゃんぽん戦略は、対立する双方の大国の顔色を常にうかがい、キョロキョロする日和見主義的な戦略である。

 このように書くとみっともない戦略のように思う方もいるだろう。しかし、小国が大国の圧倒的なパワーに押しつぶされずに生き残るには、これ以外に有効な手だてが思いつかない。事実、世界の小国はちゃんぽん戦略を駆使してしたたかに生き延びている。ベトナムはロシアとの関係が深いが、同時にかつて戦争で自国をめちゃくちゃにしたアメリカとも合同軍事演習を行う仲である。フィリピンでは、ドゥテルテ大統領がアメリカをこき下ろし、中国にべったり寄り添う姿勢を見せたものの、結局は本鞘に収まった。賢い小国は大国を手玉に取っている。

 朝鮮半島をめぐっては、もう1つ重大なシナリオを検討しておかなければならない。それは、アメリカと中国が手を組んで、日本がはしごを外されるという事態である。本号でもその可能性について言及している箇所がある(西尾幹二、中西輝政「歴史問題はなぜ置き去りにされているのか」)。もっとも、米中が手を組んだ世界とは一体どんなものなのか、想像力が貧困な私には予想がつかない。米中は本当に、太平洋を二分割して統治するつもりなのだろうか?また、南シナ海のシーレーンを米中で共同管理するとでも言うのだろうか?

 日本は、神と同レベルに位置していたアメリカという存在を失う。そして、現実問題として、米中が朝鮮半島の共産主義国家を巻き込んで日本を包囲したら最悪である。前述の通り、日本は神と同じレベルで何らかの大国を崇めないと生き残ることができない。米中を失ったとすると、日本が頼ることのできる残りの大国はロシアしかない。以前の記事「『非立憲政治を終わらせるために―2016選挙の争点(『世界』2016年7月号)』―日本がロシアと同盟を結ぶという可能性、他」では、日露同盟があり得るのではないかと書いた。日露同盟が成立すれば、択捉島、国後島にロシア軍の駐留を認める代わりに、4島一括返還をさせることができるかもしれない。

 現在、安倍総理はロシアとの関係構築に熱心であるが、日本はオプションの1つとしてロシア研究にもっと投資することを真剣に検討した方がよい。もちろん、ロシアから学ぶのは忌まわしき共産主義ではない。ソ連から共産主義を取り除いた時に残る純粋なロシアである。ソ連から共産主義を吸収した時代を除けば、日本がロシアから熱心に学んだ時代がもう1つある。それは江戸時代後期である。ロシアから通商を求めて使節が度々訪日していた頃、例えば平田篤胤はロシアとの外交機密文書を大量に収集してロシアに学ぼうとしていた。篤胤は、ロシア語学習ノートを自分で作成するほどの熱の入れようであった。ロシアは帝国主義的で領土拡大に余念がないが、一方では仁徳ある国王が統治する国であるというのが篤胤の見方であった。

 18世紀末に大黒屋光太夫が帰国してからは、ロシアに対する日本人のイメージが大きく転換したという。従来の脅威としてのロシア、潜在的貿易相手国としてのロシアというイメージに加えて、憧れの国としてのロシアイメージが生まれた。同時に、ロシアを理想化し、畏怖することで新たな脅威のイメージも出てきた。江戸時代後期のロシア研究は、それほど長く続かなかったと思われる(明治時代に入るとプツリと途切れた?)。しかし、今回のロシア研究は、東アジアの情勢次第では、相当に腰を据えて行う必要が出てくる可能性がある。

 《参考》川久保剛、星山京子、石川公彌子『方法としての国学―江戸後期・近代・戦後』(北樹出版、2016年)

方法としての国学―江戸後期・近代・戦後 (叢書 新文明学3)方法としての国学―江戸後期・近代・戦後 (叢書 新文明学3)
川久保剛 星山京子 石川公彌子

北樹出版 2016-04-08

Amazonで詳しく見る by G-Tools


2016年12月01日

アメリカの「二項対立」的発想に関する整理(試論)

このエントリーをはてなブックマークに追加
米中関係

 本ブログでは、大国、特にアメリカ、ドイツ、ロシア、中国は二項対立的な発想をすると何度か書いてきた。今回の記事では、アメリカの二項対立について、少し掘り下げてみたいと思う。

 どうやらアメリカという国は、二項対立によって常に敵と味方を作っておかないと気が済まない国のようである。それは、対立によって様々なお金が動き、経済成長につながることを知っているからである(その究極形が戦争である)。アメリカの二項対立にはいくつかパターンがある。1つ目は、他の大国と正面から対立するというものである。アメリカとロシアは冷戦を戦ったし、現在は中国と新しい関係に突入しようとしている。大国同士が対立する場合は、次のような形をとる。冒頭で触れた通り、アメリカに限らず、他の3つの大国も二項対立的な発想をする。大国は国外で対立を扇動すると同時に、国内においても二項対立を発生させる。

 アメリカと中国の関係を見てみると、アメリカ国内には反中派と親中派がいる。同様に、中国にも反米派と親米派がいる。米中対立は、表面的には反中派と反米派の対立である。ところが、我々の目につかないところで、アメリカの親中派が中国を支援している。これによって、中国国内では反米派と親米派の対立が大きくなり、そのエネルギーが今度はアメリカへと向かってくる。つまり、アメリカの親中派が中国を支援することで、米中間の対立を大きくすることができる。

 マイケル・ピルズベリーの『China 2049』によると、これまで中国は、自分が弱い国であるかのように見せかけて、アメリカの親中派からありとあらゆる支援を獲得してきた。しかしそれは、中国が共産党設立100周年にあたる2049年に世界の覇権を握るという目標を達成するためであったという。ピルズベリーは、中国の意図を知らずに自ら親中派を名乗って中国をサポートしたことを後悔しているかのように書いていたが、本当のところはアメリカの思惑通り中国が強くなって自分に刃向うようになってくれたことを内心喜んでいるのではないかとさえ感じる。

 中国についても、国内の親米派がアメリカを裏で支援していると思われる。それによってアメリカ国内の対立を先鋭化させ、ひいては米中の緊張をさらに高めようとしている可能性がある。これはあくまでも仮説であるから、今後の検証が必要である。また、米ソ冷戦についても、単にアメリカとソ連が対立したという関係ではなく、アメリカの親ソ派がソ連を、ソ連の親米派がアメリカを秘密裏に支援したのではという仮説が成り立つ。この点もこれから追求しなければならない。

 アメリカとドイツの関係はどうであろうか?アメリカとドイツは第2次世界大戦で戦った。経営学者であるピーター・ドラッカーは、『産業人の未来』の中で、第2次世界大戦はアメリカの自由をドイツのファシズムから守るための戦いだと述べたが、どうやら米独の関係はそんなに簡単なものではなかったようだ。かつてドイツには、IGファーベンという、ドイツ化学製薬関連企業のカルテルが存在した。ナチス政権が誕生すると、爆薬や合成ガソリンを100%製造する工場となった。さらには、強制収容所で新薬を用いた人体実験を行った。強制収容所では毒ガスが用いられたという話をよく聞くが、この毒ガスの特許はIGファーベンのものだった。

 そして、このIGファーベンに多額の資金援助を行っていたのが、アメリカのロックフェラー財閥であった。ロックフェラー財閥は、ロスチャイルド財閥のモルガングループの協力を得て、IGファーベンの最大の資金供給者となった。さらに、IGファーベンとロックフェラー財閥傘下のスタンダード・オイルは、お互いの株式を持ち合っていた。結局のところアメリカは、戦争でアメリカが勝とうとドイツが勝とうと、必ず自分が儲かるようなスキームを作っていたわけである。

 対立している双方の国に賭けることで、どちらが勝ってもアメリカが得をするようなモデルにするというのが、アメリカの二項対立の2つ目のパターンである。これは、アメリカが世界中で小国同士の対立を創造することによって達成される。このやり方は、かつてのフランスの植民地支配を模倣しているのかもしれない。フランスの植民地経営の特徴は、その植民地における部族・民族間の対立を利用することであった。フランスは、敢えて部族・民族の間を断ち切るような政策をとった。この一見リスキーな方法により、フランスは、対立する双方の部族・民族から庇護を求められるようになり、宗主国としての権威を高めることに成功した。

 あるいは、イギリスの三枚舌外交を真似しているのかもしれない。イギリスはフサイン=マクマホン協定(1915年)によって、オスマン帝国の支配下にあったアラブ地域の独立と、アラブ人のパレスチナでの居住を認めた。一方で、サイクス・ピコ協定(1916年)により、第1次世界大戦後のオスマン帝国をイギリス、フランス、ロシアの間で分割する秘密協定を結んだ。さらに、バルフォア宣言(1917年)では、パレスチナにおけるユダヤ人の居住地の建設に賛意を示した。これにより、中東ではアラブ人とユダヤ人が対立するようになり、現在でも混乱は続いている。

 アメリカは、イスラエルにとって最大の支援者である。ところがその一方で、アメリカは中東の盟主であるサウジアラビアを重視している。つまり、ユダヤ人とアラブ人の双方に賭けている。同じことは、イスラエルとエジプトとの関係についても言える。アメリカはエジプトに対し、表面的には「イスラエルに手を出すな」と警告するものの、本当はエジプトがほどよくイスラエルを刺激してくれることを望んでいるはずである(イスラエルからエジプトに対しても同様のことが言える)。

 アメリカにとっての敵がいない時にはどうするか?アメリカは、自分の味方を過度に支援することで、アメリカからの過剰な支援に反発する反対派を作り出すという高度なテクニックを用いる。これが3つ目のパターンである。アメリカは、1970年代からイランのパーレビ体制を支えてペルシャ湾の秩序を維持していた。ところが、1979年にホメイニ師が率いるイスラム原理主義革命によってパーレビ体制は崩壊した。そこでアメリカは、隣国イラクのサダム・フセインを支持して、1980年9月から8年間にわたるイラン・イラク戦争に側面強力した。だが、1990年には増長したサダム・フセインがクウェートに侵攻して湾岸戦争に至り、ついには自らが育てたモンスターというべきサダムを処断することになったという展開が、9.11後のイラク戦争であった。

 ソ連が1979年にアフガニスタンンに侵攻した際、アメリカはこれに対抗するために、神の戦士を養成して戦わせる戦略を立てた。隣国のパキスタンはアメリカと密接な関係を持っていたため、パキスタンとアメリカが協力してイスラーム神学校(マドラサ)で学んでいた血気盛んな若者たちを神の戦士に仕立て上げた。これがタリバンの原型である。ソ連が撤退した後、1990年代後半に入ると、アフガニスタンでは軍閥系の私兵が戦利品の略奪から始まって、民衆からの略奪、強姦、殺人など、暴虐の限りを尽くした。そこで、タリバンは、厳格なイスラーム法による統治を浸透させることで、アフガニスタンに秩序を取り戻すことを目論見た。

 しかし、タリバンと言っても、たかだか神学校を出た若者たちが中心である。現地には、彼らよりも知識に長けたイスラーム法学者がたくさんいた。出来のよいタリバンが行った村ではまっとうな統治ができたが、多くの村にはイスラーム法学に未熟な出来の悪いタリバンが赴いて、生半可な知識で、つまりしばしばイスラーム法から逸脱した処罰などを実施してしまった。これが、ブッシュ政権から「タリバンの冷酷と暴虐の支配」だと目の敵にされたわけである。そのタリバンからアルカーイダやウサーマ・ビン・ラーディンが生まれ、9.11が起きたことは周知の事実である。

 最近、アメリカはISとの戦いを進めている。だが、元をたどると、原因の一部は、アメリカがサウジアラビアに輸出した武器にあると言われる。サウジアラビアへ輸出した武器は、同国内のイスラム原理主義組織の手に渡り、それがシリアに流れてISを助長させたというわけである。アメリカはおそらくその事実を知っていたに違いない。ところが、アメリカはサウジアラビアへの武器輸出を止めなかった。アメリカに立ち向かう勢力が生まれてくれれば、軍需産業が潤い、それがアメリカ全体の経済成長をもたらすという、軍産複合体らしい発想が見え隠れする。

カテゴリ: 政治 コメント( 0 )
2016年09月25日

岡本隆司『中国の論理―歴史から解き明かす』―大国中国は昔から変わらず二項対立を抱えている

このエントリーをはてなブックマークに追加
中国の論理 - 歴史から解き明かす (中公新書)中国の論理 - 歴史から解き明かす (中公新書)
岡本 隆司

中央公論新社 2016-08-18

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 私が考える大国(ここで言う大国とは、アメリカ、ロシア、ドイツ、中国の4か国を指す)の「二項対立論」は、まだ著しく不十分なのだけれども、現時点で到達している地点を簡単に整理すると次のようになる。まず、大国同士はイデオロギーをめぐって対立する。例えば、アメリカの資本主義とソ連の社会主義の対立といった具合だ。もう少し一般化して、アメリカがAという思想・立場を、ロシアがBという思想・立場を掲げて対立していたとしよう。表面的にはA対Bなのだが、実はアメリカもロシアも国内は一枚岩ではない。アメリカ国内には少数だがB派が、ロシア国内には少数だがA派がいる。アメリカのA派は、ロシアのB派を攻撃すると同時に、ロシアのA派を支援する。ロシアのB派も、アメリカのA派を攻撃すると同時に、アメリカのB派を擁護する。

 アメリカもロシアも、実は本気で相手を倒そうとは思っていない。対立が深まるほど、軍事産業が発達し、軍事産業から生まれた技術やイノベーションが経済を活性化させることを知っているからである。しかし、何かの弾みで、アメリカのA派がロシアのB派を倒したとする。すると、アメリカはロシアがA化するべく支援に乗り出す。アメリカはここでもひと儲けできる。結局、アメリカにしてみれば、ロシアと対立していようがロシアを倒そうが自国の利益にかなうのである。

 ここで、日本のような小国には理解しがたいことなのだが、アメリカはロシアを完全にA化しない。二項対立は大国の本質であることをアメリカは理解している。アメリカは、ロシアのA派を強く支援しながら、実は、A派の対立軸として新たにB´派が生まれるのを待っている(アメリカが中東で自国の味方に過度に肩入れした結果、自国の敵が生まれていることは、以前の記事「『震災から5年「集中復興期間」の後で/日本にはなぜ死刑がありつづけるのか(『世界』2016年3月号)』―「主権者教育」は子どもをバカにしている、他」で述べた)。そして、今度はロシアのB´派がアメリカのA派と対立する。アメリカの真の狙いはそこにある。大国同士を二項対立の関係に置き、自国内部にも二項対立の状況を作り出す。これが大国の「二項対立論」である。

 アメリカはかつては共産主義と戦い、現在はテロと戦っているように、対外的には対立構造を好む。また、国内に目を向ければ、二大政党が激しく対立している。ドイツは多党制、ロシアは事実上統一ロシアの一党独裁に近いが、エリン・メイヤー『異文化理解力』によれば、ドイツ人もロシア人も文化的に見れば対立を扇動する傾向がある。ドイツ人やロシア人との会議で発言すると、必ず反対意見が返ってくる。しかも、日本人には耐えられないほどの痛烈な批判を浴びせてくる。しかし、彼らは決して、発言者を貶めようとしているわけではない。ある意見に対しては必ず反対意見をぶつけることで、より優れた意見に到達できることを期待している。

異文化理解力 ― 相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養異文化理解力 ― 相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養
エリン・メイヤー 田岡恵 樋口武志

英治出版 2015-08-22

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 ここで私の頭を悩ませたのが、中国の扱いである。以前の記事「『一生一事一貫(『致知』2016年2月号)』―日本人は垂直、水平、時間の3軸で他者とつながる、他」では、「中庸」という考え方を持つ中国は、「二項対立」と「二項混合」の両方ができ、思想的には最強なのではないかと書いた。また、以前の記事「ジョセフ・S・ナイ『アメリカの世紀は終わらない』―二項対立から二項混合へすり寄る米中?」では、米中の経済的つながりの深化に注目して、中国だけではなくアメリカまでもが二項混合になりつつあるかもしれないと書いた。

 ここでようやく本書の内容に入ることができるのだが、本書を読んで、やっぱり中国は二項対立を重視する大国であるという思いを強くした。
 「中国の論理」を貫く時間概念と事実の整序は、史書が表現する。そこに厳存したコンセプトは、「正統」と「偕偽」という二重構造になっていた。政治を組織した社会構成の論理でいえば、その基本にあったのは、「士」「庶」あるいは「官」「民」という階層の乖離で、やはり二元構造である。

 世界観の場合もやはり当然に、そうした二元的な構造論理が貫いている。(中略)「天下」という単一の人間世界は、「華」と「夷」から成る、というのが古来中国の空間認識・世界観であった。
 東洋史学では、唐と宋の間、つまり10世紀前後に、中国を中心とする東アジアで一大転換があったと見る。これを「唐宋変革」と呼ぶ(高校世界史では習わなかったキーワードだ)。

 本書によれば、宋の時代には、科挙に合格した官僚が庶民を支配するという、厳然たる二元構造が確立されたという。科挙自体は隋の時代から行われていたが、官僚が庶民の支配権を完全に掌握したのは宋に入ってからのようだ。隋・唐の時代には、科挙の合格者よりも、地元の豪族から成り上がった従来型の貴族の方が強い力を持っていたと見るべきである。

 中国の歴代王朝は常に、周辺民族からの侵攻に悩まされてきた。その中にあって、宋の時代だけは例外的に「華」と「夷」(もしくは「漢」と「胡」)が併存する体制が敷かれた。代表的なのが、1004年に契丹と結んだ「セン淵の盟」(※「セン」はさんずいに「亶」)である。両国の関係を兄弟の間柄とし、その関係は100年以上もの間続いた。宋はこれ以外にも、後に興った西夏や金ともこうした盟約を結んで類似の関係を構築した。そのため、研究者の中にはこれを「セン淵体制」と呼ぶ者もいるという。つまり、宋の時代は、上記の引用文にあるような国内外における二項対立的な世界観が最も整然と確立された時代だと言えそうだ。

 以前の記事「『死の商人国家になりたいか(『世界』2016年6月号)』―変わらない大国と変わり続ける小国、他」でも書いたが、大国は簡単には自らを変えることができない。西洋から押し寄せる近代化の波に対して中国(清)と日本がどのように対応したかを見れば、大国と小国の違いがよく解る。小国である日本は、「和魂洋才」というキーワードで表されるように、日本人の伝統的な精神は残しつつも、西洋の技術の中で実用的なものは、国を問わずどんどんと吸収していった。さらに、日本の文化や日本人の気質に合うように、西洋の技術をカスタマイズした。

 これに対して、清がとったのは「附会」という技法である。これは、西洋の優れた部分は清と異なっているわけではなく、中国の古典の中に既に存在したものだとこじつけることである。
 そのさい主としてこじつけられた中国の古典は、「諸子」であった。諸子百家である。利益や武力、科学技術を尊重しない儒教は、必ずしも西洋とは合致しない。しかしながら、たとえば富強を重んじる思想は、法家の『管子』にある。また科学・技術でも、化学の理論は『墨子』に載っているし、キリスト教も墨子・墨家の説く兼愛と同じ。西洋の事物はこのように、はるか古代の中国に存在したものであって、それを知らないのは、古典に通暁すべき中華の知識人エリートとして恥ずかしい、という主張がとなえられたのである。
 イデオロギー・体制は君主独裁制から立憲共和政、三民主義からマルクス主義、計画経済から市場経済へ移り変わっていった。しかしその前提に必ず存在していたのは、「士」「庶」が隔絶し、上下が乖離した社会構成である。
 中国は現代になっても、社会構造は古代と全く変わっていない。また、国内に二項対立を抱えるだけでなく、対外的には、香港・台湾に対し一国二制度を認め、内モンゴル、ウイグル、チベットなど周辺民族との対立関係を温存している(厳密に言えば、これらの領域は中国国内に取り込まれているため、対外的という言葉はふさわしくないのかもしれないが)。

 現在の共産党は、膨張政策や歴史外交を四方八方に展開することで、中国国民の心を引き留めることに必死である。また、圧倒的な経済力をバックに、香港や台湾を中国側に抱き込もうとする動きも見られる。さらに、これもまた圧倒的な軍事力を行使して、ウイグルやチベットなどを強引に制圧している。これらの動きを一言で言えば、中国は二項対立をなくして社会の一元化を図っているということになる。しかし、二項対立が一元化した時、そこに出現するのは全体主義である。そして、全体主義は国家を崩壊の危機にさらす(日本やドイツを見るとよい)。

 1930年代~40年代の中国は、対日総動員の一環として、「士」と「庶」の一元化を進めた。ところが、その結果、中国内には軍閥が乱立し、かえって内乱が拡大してしまった。中国は日中戦争に勝ったことになっているが、日本のポツダム宣言受諾がもっと遅く、内乱が長期化していれば、中国には国家を建国するほどの体力が残らなかったかもしれない。また、戦後の毛沢東は文化大革命によって「士」と「庶」の一元化を試みた。だが、その後に吹き荒れたのは粛清の嵐である。文化大革命の正確な犠牲者は解らない。公式発表では死者40万人となっているが、一説には4,000万人とも8,000万人とも言われる。いくら人口が10億人以上いるとしても、人口の1割弱を殺害するのは、自ら国家を死滅へと追いやるようなものである。

 現在の中国は文字通り、「1つの中国」を目指しているのかもしれない。しかしながら、その行為は大国の論理にそぐわない。むしろ、大国を破滅へと向かわせる危険性があることを歴史は示している。国内外で二項対立を抱えるというのは、政治としては何とも矛盾に満ちた非合理的なやり方であるが、大国が自らを保つにはそれが最も現実的なのである。


  • ライブドアブログ
©2012-2017 free to write WHATEVER I like