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『致知』2017年11月号『一剣を持して起つ』―米朝対話が成立するとはアメリカが韓国を捨てることを意味する(ことを左派は解っていない)、他
『中国の「最前線」はいま(『世界』2017年8月号)』―中国本土を批判できない左派、他
【AGSコンサルティング】中国・アセアン進出動向セミナー(セミナーメモ書き)

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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2017年11月07日

『致知』2017年11月号『一剣を持して起つ』―米朝対話が成立するとはアメリカが韓国を捨てることを意味する(ことを左派は解っていない)、他


致知2017年11月号一剣を持して起つ 致知2017年11月号

致知出版社 2017-11


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 近藤:中国の場合、国内にコピー選手をつくるんです。つまり福原愛なら福原愛のコピー、平野美宇なら平野美宇のコピーといった具合に、同じような戦い方をする選手をつくった上でその対策を練ってくる。
 国分:それはすごいな。
 近藤:なんせ中国には指導者と選手のプロが3万人はいますから、そういったことも可能なんです。日本には30人くらいしかプロはいませんから土台からして違う。
(国分秀男、近藤欽司「かくて日本一へと導いてきた」)
 中国と言うと模倣品のイメージがどうしてもつきまとう。そして、それはスポーツの世界でも同じようである。ただ、同記事で紹介されていたが、中国には「人無我有」、「人有我磨」、「人有我創」という諺があるそうだ。最初は自分だけが技術を持っている段階である。しかし、時間が経てば相手が自分の技術を真似してくる。そうしたら、相手に負けないように技術に磨きをかける。さらにそれだけでは飽き足らず、今度は相手に真似されないよう、新しい技術を創ってしまう。

 中国人にはこういうメンタリティがあることを忘れてはならない。私は、中国が21世紀のイノベーション大国になり得る十分なポテンシャルを持っていると思う。そして、日本は、かつて中国から技術や社会制度を学んだように、中国のイノベーションを輸入し、日本流にアレンジすることで生き延びていくのではないかと予想している。非常に格好悪いと思われるかもしれないが、これが小国・日本の一種の宿命である(以前の記事「『視座を高める(『致知』2016年5月号)』―日本は中国がイノベーション大国になることをアシストし、彼らから学べるか?」を参照)。

 さて、米朝関係が膠着状態に陥っている。北朝鮮は体制を維持するために核開発に邁進していると言われることが多いが、体制維持が目的であればアメリカに喧嘩を売る必要はなく、大人しくしていればよいだけの話である。アメリカに喧嘩を売ってでも核兵器の開発を急いでいるのは、体制維持以上の目的があると考えるのが自然である。
 北朝鮮が既に持ってしまった核ミサイルを自ら放棄することはないでしょう。そして、その力の誇示によってアメリカに国交を結ばせ、米軍を撤退させて韓国を併合する。この目標こそ、金日成、金正日、金正恩とその血筋によって継承された、まさに金王朝の究極の目的なのです。
(中西輝政「時流を読む(第2回) 歴史という大きな絵の中に事象を置けば、対処法が見えてくる。北朝鮮問題は日本と日本人に、国として、また人として、いかにあるべきかを問うているのだ」)
 もちろん、アメリカは北朝鮮の非核化を諦めてはいない。アメリカにとって、朝鮮半島での第一目標は北朝鮮の非核化であり、第二目標は南北分裂の現状を維持することである。南北が分裂していることによって、アメリカと中国・ロシアという大国同士の対立、冷戦構造の遺産を、朝鮮半島内の小国同士の対立に代理させることができる。

 以前の記事「『正論』2017年10月号『日本は北朝鮮と戦わないのか/傲る中国』―朝鮮半島の北が資本主義国家、南が社会主義国家になる可能性?」で、朝鮮半島のシナリオの1つを示してみたが、ここで改めて、朝鮮半島で起こりうるシナリオを私なりに整理してみたいと思う。

 ①北朝鮮への経済制裁が一定の効果を上げる場合
 中国、ロシアが経済制裁に協力することが前提であるが、制裁が効果を上げれば、北朝鮮はこれ以上の核開発を断念するかもしれない。ただし、北朝鮮が既に保有している核を放棄することにはつながらない。それに、経済制裁から数年が経ってほとぼりが冷めた頃に、中国とロシアが制裁の隙間を縫って北朝鮮を再び支援する可能性がある。

 ②金正恩斬首計画を実行する場合
 金体制を打倒すれば北朝鮮は核開発を止めるだろうとの予測の下に、金正恩の斬首が計画されたことがある。アルカイーダのウサーマ・ビン・ラーディンはパキスタンで暗殺された。ただ、ビン・ラーディンの場合は、彼の行動をアメリカ側がある程度トレースすることが可能になっており、かつ、ビン・ラーディンの側近にスパイがいて、彼の居場所をアメリカにリークしていたと言われる。これに対して、金正恩の場合は居場所を突き止めるのが困難である。何せ、北朝鮮には地下施設が何千と存在するからだ。また、金正恩を裏切ってアメリカに位置情報をリークするような人物も現れていない。よって、この斬首作戦は実現可能性が低いと言わざるを得ない。

 ③アメリカと北朝鮮が武力衝突する場合
 韓国は米韓同盟に基づいてアメリカと一緒に北朝鮮を攻撃するはずである。「はずである」と書いたのは、最近の韓国は左傾化が激しく、アメリカ側につくという確証がないからである。文在寅大統領も、経済制裁が行われている間に北朝鮮に人道支援を行うぐらいの親北派である。
 ⅰ)韓国がアメリカを裏切らなかった場合
 韓国・アメリカ(・日本)VS北朝鮮・中国・ロシアという構図になる。これはまさに朝鮮戦争と同じであり、アメリカが勝つ可能性は五分といったところであろう。アメリカが勝利すれば北朝鮮の非核化に成功し、北朝鮮は韓国に併合されて単一の資本主義国となる。一方、アメリカが敗れた場合は米朝間で和平条約が締結され、アメリカは北朝鮮の核兵器を認めるとともに、韓国から米軍を撤退させることになる。上手くいけば南北の分裂は維持されるが、韓国から米軍の脅威が消えたのを見た北朝鮮は、南北統一に乗り出すかもしれない。その場合、韓国の資金が北朝鮮の核に投入され、朝鮮半島に凶悪な核保有国家が誕生することになる。
 ⅱ)韓国がアメリカを裏切った場合
 アメリカ・日本VS北朝鮮・韓国・中国・ロシアという構図になる。これはアメリカにとってかなり不利な状況となる。仮にアメリカが勝利すれば、以前の記事「『正論』2017年10月号『日本は北朝鮮と戦わないのか/傲る中国』―朝鮮半島の北が資本主義国家、南が社会主義国家になる可能性?」で書いたようになる。ただ、これは可能性の低いシナリオを仰々しく書いてしまったと反省している。ⅱ)ではアメリカが敗れる可能性の方が高く、その場合は、ⅰ)よりも速いスピードで南北統一が進み、朝鮮半島に凶悪な核保有国家が誕生する。

 ④アメリカが北朝鮮と対話する場合
 ⅰ)アメリカが北朝鮮の核兵器を認めて国交を樹立する場合
 北朝鮮がこれだけの核兵器を保有してしまった以上、アメリカは北朝鮮の核を認め、平和条約を締結して国交を結ぶべきだという意見が、主にアメリカの民主党内から出始めているようである。だが、アメリカが北朝鮮と国交を結ぶというのは、かつてアメリカが中国と国交を結んで台湾を捨てたのと同様に、韓国を捨てることを意味する。もっとも、捨てられた韓国は喜んで北朝鮮と一緒になるかもしれない。すると、朝鮮半島に凶悪な核保有国家が誕生する。

 ⅱ)アメリカが北朝鮮の核兵器放棄を迫る場合
 これは非常に難しい交渉になる。核兵器の放棄を迫られた北朝鮮は、間違いなくアメリカに対して在韓米軍の撤退を要求してくる。北朝鮮が韓国を併合するためである。アメリカとしては、これは到底呑める条件ではない。だが、アメリカの第一目標は北朝鮮の非核化であり、左傾化した韓国を見て、第二目標である南北分裂の現状維持を犠牲にしてでも、在韓米軍の撤退を実現させるかもしれない。この場合、朝鮮半島には、非核化された社会主義国家が誕生する。仮にこの交渉が長引くと、その間に北朝鮮は核兵器(アメリカ本土に届くICBM)を完成させてしまう。そうなると米朝の武力衝突のリスクが高まり、そのシナリオは③で示した通りとなる。

 このように見てくると、アメリカが第一目標、第二目標をともに達成できるのは、韓国が裏切らず、アメリカが北朝鮮との戦争に100%勝てる自信がある場合に限られることが解る。逆に、下手にアメリカが動こうものなら、朝鮮半島が社会主義国家として統一されることを誘発する恐れがある。最悪のシナリオは、韓国の資金が北朝鮮の核に注入されることである。だから、アメリカとしては経済制裁以上に動きようがないというのが正直なところだろう。左派はよく、「解決策は対話しかない」などと言うが(『世界』2017年11月号の特集タイトルは「北朝鮮危機―解決策は対話しかない」であった)、アメリカが北朝鮮と対話を成立させるということは、上記で見たように韓国を捨てることを意味する。この点を左派は理解していないように思える。

 中国は北朝鮮問題で手を焼いていると言われる。だが、実はこれも怪しい面がある。中国はずっと、金正男をかくまっていた。北朝鮮に対して、「いつでも金正男を中心とした政権を北朝鮮内に打ち立てることができる」というメッセージを送るためである。いわば、金正男は中国が握っている「玉」であった。だが、金正男が暗殺されたということは、中国がその玉を放棄したということである。つまり、中国は金正恩政権と上手くやっていく道を選択したと言えなくもないのだ。

 日本にとって最悪なシナリオは、アメリカが北朝鮮の非核化に失敗して朝鮮半島に凶悪な核保有国家の出現を許した挙句、中国の一帯一路構想にトランプ大統領がビジネス的な視点で安易に乗っかってしまうことである。アメリカが中国と手を結べば、日米同盟の意義は希薄化し、日本の周りをアメリカ、中国、朝鮮国家という3つの巨大核保有国が取り囲むことになる。さらに言えば、中国が提唱する一帯一路構想は南シナ海を通っているため、アメリカが一帯一路構想に賛同するということは、南シナ海の諸問題をアメリカが黙殺することにつながる。こうなると、日本は太平洋上のシーレーンを確保できなくなる。となれば、残る選択肢はロシアと同盟を結ぶことしかない。ロシアが注力している北極圏ルートの開発に日本が協力するのである。

4大国の特徴(これまで)

 従来、私が考える現代の4大国、すなわちアメリカ、ドイツ、ロシア、中国は、上図のような関係にあった(詳細は以前の記事「マイケル・ピルズベリー『China 2049』―アメリカはわざと敵を作る天才かもしれない」を参照)。基本的には、アメリカ・ドイツという資本主義国と、ロシア・中国という旧共産圏の国が対立している。ただ、アメリカ・ドイツ、ロシア・中国は必ずしも一枚岩ではなく、しばしば対立する。一方で、表向きは対立しているアメリカと中国、ドイツとロシアが協力する局面もある。アメリカと中国の間、ドイツとロシアの間では貿易が盛んであり、経済的な結びつきが強い。このように、4大国はやや複雑な関係にある。

4大国の特徴(これから)

 ところが、アメリカが中国に接近することで、この構図が変わる可能性がある。まずはアメリカ・中国とドイツ・ロシアが対立するのである。ただ、細部を見れば、アメリカと中国の間、ドイツとロシアの間で対立を抱える一方、アメリカとドイツ、中国とロシアが協力するという関係がある。日本はロシア・ドイツ側につくことになる。日本はロシアの北極圏ルートを通じてドイツとつながり、さらにはEUとの関係を深化させる。こういうシナリオが現実味を帯びてくるかもしれない。

 ただ、日本はアメリカ・中国との関係を完全に断ち切ることはできないだろう。基本スタンスはロシア・ドイツに寄りながら、アメリカ・中国のよいところは引き続き吸収し続ける。これが大国に挟まれた小国の生きる知恵であり、私は「ちゃんぽん戦略」と呼んでいる(以前の記事「『巨頭たちの謀事/朴槿恵政権崩壊(『正論』2017年2月号)』―ますます可能性が高まった「朝鮮半島統一」に対してどう対処すべきか?」を参照。同記事は米中に挟まれた日本のちゃんぽん戦略を想定しているが、米中・露独に挟まれた場合も同様である)。


2017年08月16日

『中国の「最前線」はいま(『世界』2017年8月号)』―中国本土を批判できない左派、他


世界 2017年 08 月号 [雑誌]世界 2017年 08 月号 [雑誌]

岩波書店 2017-07-07

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 (1)「中国の『最前線』はいま」という特集タイトルから、私は勝手に、中国本土で行われている法輪功の弾圧やチベット、ウイグル地区での人権抑圧などが取り上げられるものだと思い込んでいた。あるいは、先月死去した民主活動家・劉暁波氏の軌跡について考察がなされるものだと思っていた。そして、これらの事象に対して、左派らしく、自由、基本的人権、民主主義などの観点から切り込んでいくことを期待した。ところが、蓋を開けてみると、「最前線」とは香港、台湾のことであり、両地域の民主主義が危機に瀕しているという内容に終始していた。

 以前の記事「『小池劇場と不甲斐なき政治家たち/北朝鮮/憲法改正へ 苦渋の決断(『正論』2017年8月号)』―小池都知事は小泉純一郎と民進党の嫡子、他」でも書いたように、左派、特に日本の左派はねじれた思想の持ち主であると感じている。本来の左派は、国家という権力装置をなくし、世界市民社会を実現して究極の平等主義を手に入れようとする。そこにおいては、個は全体の中に埋没し、一が全体であり、全体が一であるという社会が出現する(だから私は、全体主義につながる可能性があると危惧している)。

 ところが日本の左派は、個を埋没させるためにまずは自己否定を行う。つまり、日本という国家を毛嫌いし、太平洋戦争でアジアに多大な被害をもたらした三流国家であると貶める。その自己否定の反動として、被害者である中国や韓国を過度に持ち上げる。自己否定すると同時に、他者肯定をする。左派にとって、中国や韓国は、日本とは違い一流国家である。その一流国家に対して、南京事件や慰安婦問題をめぐって永遠に謝罪し続ける。非常に矛盾したことであるが、日本の左派は、自己否定をしておきながら、中国や韓国にへつらうことで、自己の生存空間を確保しているのである。だから、日本の左派は、中国本土(や韓国)の民主主義が危機に陥っていても、正面からそれを批判できない。せいぜい、次のことを言うのが関の山である。
 「表題の『一国両エン(※「厭」の下に「鬼」)』が示すように、香港は正に困難に直面している。香港の高度な自治は北京政府の未だかつてないほどの深刻な侵害を受け、一方で北京政府は香港の高度な自治と制度が中国国内に浸透し、絶対的な支配権に脅威を及ぼすのではないかと危惧している」
(高橋政陽「「一国両エン」返還20年、香港のいま」)
 前掲の以前の記事でも書いたように、日本の左派は、一方で中国や韓国を恭しく扱う一方で、左派が本当に味方するべき社会の弱者に対しては優越的な態度をとる。後者の傾向は、日本に限らず、他国の左派にも見られるようである。左派は、弱者は無知な者として扱う。その無知な人々の上に立って、自らの能力と知識をひけらかし、有能さを示そうとする。そして、人々の無知につけ込んで、左派にとって都合のよい情報を吹き込もうとする。
 台湾有事の際にマラッカ海峡を第七艦隊が封鎖すれば、エネルギー資源の入手経路がただちに遮断される「マラッカ・ジレンマ」は、米国の「核の傘」の下にある日本には縁遠い話ではあるが、中国にとっては重大関心事である。
(羽根次郎「世界のなかの「一帯一路」構想とその思想的可能性」)
 マラッカ海峡は、日本が中東から石油を輸入する際のシーレーンの一部をなしているため、非常に重要な拠点であることは周知の事実である。安保法制の議論の時にも、中国の南シナ海における暴挙を報じる時にも、散々取り上げられたことである。それを「日本には縁遠い話」としてしまうのは、日本人を無知な人々だと思いたい著者の精神が表れているのではないかと勘繰ってしまう。幸いなことに、この記事は読者に対して何か特定の思想を押しつけようとするものではなかった。また、記事の最後で、以下のようにボロが出ていた。
 また、(欧州や中東などの)西方との関係を日本では南シナ海やマラッカ海峡抜きに想像できないのも無理はない。日本にやってきた西方の人びとはそうした海域を通ってきたのだ。(同上)
 左派は本当の意味で弱者の声に耳を傾けない。アメリカ大統領選挙で民主党のヒラリー氏が敗れたのは、大衆のニーズを汲み取ることができず、それどころか大企業に肩入れして、ウォールストリートで講演をしては何千万円という報酬を得ていたからである。イギリスの左派も、弱者からの乖離傾向が見られた。ところが、先のイギリス総選挙では、バーニー・サンダース氏に倣って、左派が草の根運動を展開したことが報告されている。これこそ左派の本来の姿である。
 これまで、コービンの熱心な支持者たちは高学歴の若者たちが多く、彼らはツイッターで政治を語り合うばかりで、草の根の選挙活動を行なわないと批判されてきた。が、6月の総選挙で彼らは変わった。若者たちは1軒1軒のドアをノックして、研修で教わったとおりに有権者の心配事や不満、労働党への批判も聞き、ポジティヴな態度で労働党の政策を語り歩いた。
(ブレイディみかこ「イギリス総選挙で見せた左派の底力 進歩的なドブ板政治」)
 (2)以前の記事「岡本隆司『中国の論理―歴史から解き明かす』―大国中国は昔から変わらず二項対立を抱えている」でも書いたように、現代の大国、すなわちアメリカ、ドイツ、ロシア、中国は皆、二項対立的な発想をする。山本七平によれば、二項対立はセム系民族の特徴であるらしい。なぜセム系は二項対立で物事を考えるのか、また、セム系ではない4大国の人々が二項対立的な発想をするのはなぜなのかについては、現在も探索を続けているところである。

 大国は、自国の外に常に仮想敵国を設定することで、対立構造を創造する。さらに、国内にも二項対立を抱える。これをアメリカ対中国で説明すると次のようになる。周知の通り、アメリカと中国は現在様々な分野で対立している(もっとも、アメリカと中国の関係は、アメリカとロシアの関係よりも複雑であり、米中間では色々な協力もなされていることを付記しておく)。アメリカ、中国ともに、国内にも二項対立を抱えている。アメリカ国内には、多数派である反中派と、少数派である親中派がいる。中国国内には、多数派である反米派と、少数派である親米派がいる。

 アメリカと中国の間では、アメリカの反中派と中国の反米派が対立している。同時に、アメリカ国内では反中派と親中派が、中国国内では反米派と親米派が対立している。一方で、アメリカの親中派は、中国の親米派と裏でつながっている。このような関係にあるため、アメリカの反中派と中国の反米派は、お互いの対立に全力を注ぎたいが、国内でそれぞれ親中派、親米派と戦っている以上(しかもアメリカの親中派は中国の親米派から、中国の親米派はアメリカの親中派から支援を受けている)、全てのエネルギーを対中、対米に振り向けることができない。このことによって、大国間の深刻な対立を何とか回避することができる。

 中国は、香港と台湾に対して一国二制度を敷いている。つまり、国内において対立構造を保持している。中国は香港と台湾を本土に取り込んで、文字通り「1つの中国」を実現することを目指しているようだが、個人的にこれは危険な兆候だと思う。仮に1つの中国が実現されると、国内の対立構造がなくなり、国内のエネルギーが全て対立するアメリカに向けられる。また、国内政治は共産党一党に集約され、政治の失敗が許されない。少しでも政治が失敗しそうなサインが生じれば、国民の目を危機から逸らすために、対外的に強硬な態度に出ることが予想される。しかし、このやり方にも限度があり、政治の失敗がいよいよ明らかになった際には、共産党支配が崩壊するに違いない(中国の歴史とは、政治の失敗をめぐる王朝の興亡の歴史である)。矛盾した言い方になるが、中国は現在の一国二制度を維持しておくのが最善であると思う。

 (3)教育勅語を教育の現場で使ってもよいかどうかが議論を呼んだが、中嶋哲彦「なぜ教育勅語の復活を願うのか―「徳」の樹立と建国の一体性」によれば、1948年6月19日の衆議院決議で、教育勅語に「指導原理性を認めない」ことが明確に宣言されたという。参議院も同日、「教育勅語等が、あるいは従来の如き効力を今日なお保有するかの疑いを懐く者あるをおもんばかり、われらはとくに、それらが既に効力を失つている事実を明確にする」と決議した。これらを受けて文部省も、国会決議の趣旨を徹底すべく、教育勅語の回収を指示した。よって、政府が今年の国会で、教育勅語を教育現場で活用できる可能性について触れたことは問題がある。

 だが、この部分についてはどうだろうか?
 むしろ、文部科学省は、徳目主義とは反対に、「考える道徳」を通じて、①新自由主義的社会秩序に対応する生き方を自ら主体的に選択する価値観と思考回路から構成された市民道徳と、②社会の経済秩序と国家による政治的統治に対する内外からの侵犯に対する主体的安全保障意識、の育成を目指しているのではないか。
 特に、②について、教育は子どもに対して十分に考える機会を与えたであろうか?左派に浸食された教育関係者は、「安保法制は戦争につながる」、「徴兵制の復活をもたらす」と判を押したように主張し、(1)で述べた「弱者の上に立つ左派知識人」は、過去の国会・政府答弁資料などを持ち出して、机上における文言の分析だけを通じて安保法制を憲法違反と結論づけた。その結果、安保法制=悪という印象だけを子どもたちに刷り込ませたのではないだろうか?

 現在、日本を取り巻くアジアの情勢がどのように変化しているのか?その結果、日本にとってどのような脅威が発生しているのか?それらの脅威に対して、日本はどんなシナリオで対応するべきなのか?そのシナリオを実行する際に、障害となることは何か?その障害を取り除くにはどうすればよいか?こういったことを議論することが、②の主体的安全保障意識の醸成につながるはずである。さらに、現在の安全保障は、自国のみを対象とする安全保障から広がりを見せている。なぜ、他国の安全を日本が保障する必要があるのか?保障するべきだとして、どの範囲まで保障するのか?現在の日本には、他国の安全を保障できる能力があるか?こういった論点も俎上に載せなければならない。我々が見るべきは過去の資料ではなく現実である。


2017年07月03日

【AGSコンサルティング】中国・アセアン進出動向セミナー(セミナーメモ書き)


海外ビジネス

 「AGSコンサルティング」と「マイツグループ」共催のセミナーにご厚意で参加させていただいた。セミナーで勉強になったことのメモ書き。

 <中国>
 ・2016年3月に第13次5か年計画が採択された。小康社会の全面的完成に向け、政府は発展の不均衡、不調和、持続不可能といった突出した問題に狙いを定め、イノベーション発展、調和のとれた発展、グリーン発展、開放発展、ともに享受する発展という5つの発展理念の確固たる樹立と徹底した貫徹に取り組むとしている。これにより改革が深化され、公平性の確保された透明性の高いビジネス環境の整備が期待される。

 ・近年、中国から日系企業が相次いで撤退しているとしばしば報じられる。事実、外務省の「海外在留邦人数調査統計」によると、中国の日本企業拠点数(支店、駐在員事務所を含む)は、2017年には33,390拠点だったのが2018年には32,313拠点となり、1,077拠点減少している。しかし、中国全体で見た場合、中国への対内直接投資額は着実に増加しており、2014年には1,285億ドルを記録して2年連続過去最高となった。2015年は1,262億ドルであるが、この数字には金融分野(銀行、証券、保険)が含まれておらず、金融分野を含めると、3年連続過去最高となるのは確実である。なお、直接投資の中心は製造業から非製造業にシフトしている。

 ・中国に進出している日系企業のうち、製造業は内販比率59.4%、外販比率40.6%、非製造業は内販比率75.0%、外販比率25.0%となっている。経営上の課題を尋ねたアンケートでは、製造業、非製造業ともに、1位は「従業員の賃金上昇」であるが、2位は製造業の場合「限界に近づきつつあるコスト削減」、非製造業の場合「新規顧客の開拓が進まない」となっている。製造業においては、製造原価に占める材料費の比率が平均59.5%であり、製造コストの低下に向けては材料費の削減(現地調達割合を上げるなど)に向けた取り組みが必要である。

 ・内販比率が高い湖北省、重慶市、北京市、上海市では、今後事業を拡大すると回答した日系企業が多い。一方、外販比率が高い福建省、山東省、広東省、遼寧省では、今後事業を拡大すると回答した日系企業の割合が相対的に低い。業種別に内販/外販比率と今後の事業展開の意向を尋ねたところ、内販比率が高い食料品、化学・医薬、輸送機械器具、卸・小売業では事業の拡大志向が高い。一方、外販比率が高い繊維では、事業の拡大志向が低い。

 <ASEAN>
 ・現在、海外拠点がある日系企業に対して、今後拡大を図る国を尋ねたアンケートによると、中国:56.5%(2014年)⇒52.3%(2016年)、タイ:44.0%(2014年)⇒38.6%(2016年)、インドネシア:34.4%(2014年)⇒26.8%(2016年)、ベトナム:28.7%(2014年)⇒34.1%(2016年)なっており、中国、タイ、インドネシアは減少傾向、ベトナムは増加傾向にある。中国が減少している理由は周知の通りである。タイは、近年経済成長が鈍化しており、投資が一服した感がある(タイのGDP成長率は、2013年2.73%、2014年0.92%、2015年2.94%、2016年3.23%。1人あたり名目GDPは、2013年6,157.36ドル、2014年5,921.09ドル、2015年5,799.39ドル、2016年5,899.42ドル)。インドネシアは人口の多さから市場として期待されてきたが、元々非常に複雑な多民族国家であり、簡単に事業化できないことが明らかになったことが原因と思われる。

 ・新興国の経済の発展は3段階に分けて考えることができる。①コストメリットを活かした生産拠点の受け入れ、②内需拡大による販売拠点の受け入れ、③研究開発などのさらなる高機能化、の3段階である。中国は2000年代半ばまで①のフェーズにあったが、2000年代後半は②のフェーズに入り、現在は③に移行しつつある。ASEAN諸国のうち、人件費が安いベトナム、カンボジア、ミャンマー、ラオスは、現在①のフェーズにあり、中国から生産拠点が移管されている(チャイナプラスワン戦略)。他方、既に高度な経済成長を遂げたシンガポールやマレーシア、経済が成熟しつつあるタイは、①のフェーズを卒業し、②や③のフェーズに移っている(ただし、タイではR&D人材が不足していると言われる)。ベトナムは、人件費が安いため①のフェーズにあるものの、人口が多いことから②のフェーズもパラレルで進行している印象がある。

 ・海外に進出するにあたっては、進出の目的を明確にすることが非常に重要である。日本市場が成熟・縮小傾向にあるから海外に進出するという理由では弱い。自社の製品・サービスが海外においてどのような価値を創造することができるのか、進出先の地域においてどのような貢献ができるのかをはっきりさせる必要がある。また、海外進出にあたりフィージビリティスタディを実施する際に、経済産業省、JETRO、国連などのデータを用いて各国の市場の情報を入手することになるが、国別だけでなく、都市別にも分析を行うべきである。ASEAN諸国は、都市によって経済レベル、文化、生活習慣、インフラ、社会制度などがバラバラである(この点が、前述のように、インドネシアにおける事業展開を難しくしている1つの要因であろう)。

 ・中堅企業が海外進出する場合には、「小さく始めて大きく売る」ことを目指すとよい。特に、代理店を効率的に活用することが有効である。代理店は販売のリスクを低減してくれる。ただし、代理店を利用するにあたっては、代理店の信用調査を事前に入念に行うことが必要である。なお、海外事業を小さく始めるからと言って、本社が現地に任せっ放しにするのはよくない。ASEANの場合、英語でコミュニケーションが取れるとは限らないから、本社が現地にあまり触れたがらない傾向がある。しかし、現地は製造、購買、販売、人事労務管理、経理、行政への対応など、ありとあらゆることを少人数で行っている。本社のサポートは必要不可欠である。

 ・シンガポールに進出している日本企業拠点数は1,116拠点(2016年)である。このうち、シンガポールの商工会議所に登録している日経企業数は、2017年時点で836社である。商工会議所に登録している日系企業の内訳を見ると、製造業が10年前に比べて減少しているのに対し、金融・保険業は2007年の46社から2017年の64社へと1.4倍、観光・流通・サービス業は2007年の106社から2017年の249社へと2.5倍に増加している。

 ・シンガポールで就労するためには、EP(外国人就労ビザ)を取得する必要がある。シンガポールは多様な民族を受け入れることで急速に経済発展を遂げた国であるが、近年は自国民の雇用確保へと舵を切っている。そのため、EP取得の要件が2010年頃から厳格化されている。具体的には、2017年1月より、EP申請に必要となる最低月給が、3,300シンガポールドルから3,600シンガポールドルに増加した。また、実際に承認を受けるために必要な月給も上昇しているとの印象がある。EPを取得するために日本人駐在員の月給を上げると、人件費が増加してしまう。そのため、ローカル人材の活用を検討する必要がある。

 ・シンガポールでは、PIC優遇税制が2017年終了事業年度を最後に廃止されることが予定されている。PIC優遇税制とは、企業の自動化、効率化を促進する適格支出(パソコンの購入など)について、400%償却(つまり、10万円のパソコンを購入すると、40万円を減価償却費として計上できる)、または一定の条件の下で60%現金給付を与える(つまり、10万円のパソコンを購入すると、6万円戻ってくる)優遇制度である。これに代わるものとして、Automation Support Packageという優遇税制が創設されるが、現地出資が30%以上であることが条件であるなど、多くの日本企業は利用することができない見込みである。

 ・2015年1月にIRAS(シンガポール内国歳入庁)が公表した移転価格ガイドラインにより、シンガポールでも本格的に移転価格同時文書化が始まることとなった。法人税の確定申告期限(原則として、決算日の翌年11月末まで)に文書を作成する必要がある。ただし、棚卸資産購入取引が1,500万シンガポールドル以下、ロイヤルティ支払が100万シンガポールドル以下の場合など、少額の場合には文書化が免除されることがある。

 ・シンガポールや香港は、地域統括拠点として利用されることが多い。地域統括会社を利用すると、企業グループ全体の税負担を軽くすることができる。例えば、インドネシアとタイに子会社を持つ日本企業があり、インドネシア子会社で出た利益100をタイ子会社に再投資する場合を考えてみる。まず、インドネシアにおいて、源泉税10が引かれる(日インドネシア租税条約による)。次に、日本において100×5%×30%=1.5が引かれる(外国子会社配当金益金不算入制度による)。よって、タイ子会社に再投資できるのは、100-10-1.5=88.5となる。

 ここで、香港に地域統括会社を置き、インドネシアとタイの子会社を香港の地域統括会社の下に置いたとする。この場合、まずインドネシアでは源泉税5が引かれる(香港-インドネシア租税条約による)。次に香港であるが、香港では配当は非課税である。よって、香港の地域統括会社は、100-5=95をタイ子会社に再投資することができる。ただし、企業グループ全体の規模が大きくないうちは、享受できるタックスメリットよりも、統括拠点の維持コストの方が高くなる恐れがある。タックスメリットを目的として地域統括会社の設置を検討するのは賢明ではない。あくまでも、ビジネス的なニーズ(個社から地域ごとの経営管理への移行、バックオフィス業務の集約と効率化など)に基づいて、地域統括会社を設置するかどうか決定するべきである。



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