このカテゴリの記事
「創業促進フォーラム」に出席して思ったこと
【城北支部国際部オープンセミナー】「中小企業診断士による国際展開支援事例から、支援のありかた、診断士の役割を学ぶ」
『中小企業白書』、『小規模企業白書』(2015年度)の概要について(中小機構「虎ノ門セミナー」メモ書き)(2/2)

プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
シャイン経営研究所HP
シャイン経営研究所
 (私の個人事務所)

※2019年にWordpressに移行しました。
>>>シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)

Top > 中小企業基盤整備機構 アーカイブ
2016年01月25日

「創業促進フォーラム」に出席して思ったこと


商談

 開業率アップを目指す中小企業庁は、2014年度から「創業支援事業」を行っている。まず市区町村が、創業支援を行う事業者(民間企業、NPO法人、商工会議所など)と連携して「創業支援事業計画」を策定する。これは、当該市区町村における創業の目標(業種、件数など)を設定し、目標達成に向けた施策を立案するものである。具体的な支援策としては、創業希望者を対象としたセミナー、市区町村役所における窓口相談、創業資金の融資あっせんなどが挙げられる。創業セミナーは地元のNPO法人や商工会議所と、融資あっせんは金融機関と連携して行われる。

 創業支援計画に基づいて創業支援を行う事業者に対しては、「創業支援事業者補助金」という制度がある。創業セミナーを実施した時の会場代や講師謝金、窓口相談を担当する社員・職員の人件費などが補助対象となる。昨年末、この創業支援事業者補助金を受けている全国の事業者を対象として、「創業促進フォーラム」が開催された(中小企業基盤整備機構が主催)。私も昨年は創業支援事業に関わらせていただいた関係で、フォーラムに参加してきた。フォーラムでは、全国の市区町村の事例紹介や、他の創業支援事業者との交流会などがあった。

 以下、「創業促進フォーラム」に出席して思ったことのまとめ。

 (1)以前、創業支援事業者補助金の審査員を務めたことがある中小企業診断士から話を聞く機会があった(私のように創業支援事業を診断士が支援していることは多いが、まさか補助金の審査員を診断士がやっているとは思いもよらなかった。診断士は本当に狭い世界だ)。この診断士の方は、全国の色んな計画書を読んだものの、中身に大差がなくて審査しにくいと嘆いていた。どの市区町村も、判を押したように創業セミナーや窓口相談をやることになっていたという。私も創業促進フォーラムで他の市区町村の事例紹介を聞いたが、同じような印象を持った。

 理想論を言えば、地域によって取り巻く環境は異なるわけだから、創業の目標も、目標達成のための支援策も異なるはずである。計画を策定する際、まずは外部環境を分析する。地域内の企業を大きく分類すると、①地元住民を主たるターゲットとするタイプ、②近隣の市区町村や都道府県をターゲットに含むタイプ、③海外も射程に入れているタイプの3つに分けられる。したがって、地元、近隣地域、海外の市場が今後どのように変化するかを人口動態や世帯・家族構成の変化(BtoCの場合)、企業数・業種の変化(BtoBの場合)などから推測し、ニーズをあぶり出す。

 次に、内部環境に目を向ける。現在の市区町村下にどのような企業が集積されているのか?それらの企業の組織能力(強み・弱み)は何か?を分析する。その上で、外部環境分析から導かれた将来ニーズのうち、地域に蓄積された能力を活かして需要をとらえることが可能な分野は何か?を特定する。それと同時に、現在は地域内に十分な能力が蓄積されていないものの、将来ニーズの増加を見すごすことができず、地域として取り組む意義が大きい分野も明確にする。

 外部環境と内部環境の分析を行うと、両者のギャップが見えてくる。ここまでやって初めて、そのギャップを埋めるために、どんな業種の創業を何件ぐらい創出する必要があるか?という目標が立てられるようになる。その目標を実現する手段は、創業セミナーや窓口相談に限られないかもしれない(例えば、ものづくりに注力する地域は、域内の大学との産学連携を支援することになるかもしれない)。しかしながら、どうやら多くの創業支援事業計画はそのような分析を行っていないため、どれも似たり寄ったりになっているのだろう(私も他人のことは言えないのだが)。

 各市区町村の創業支援計画には、様々な関係機関との連携を示す実施体制図がある。NPO法人、コンサルティング会社、大学、商工会・商工会議所、地方銀行・信用金庫・信用組合などを含んでおり、あたかも手厚い支援ができるかのような印象を与える。だが本来は、創業希望者の創業前後における潜在的なニーズは何か?そのニーズに応えるためにどのような支援サービスを提供するか?それらのサービスのうち、市区町村が実施するものは何で、外部機関の力を借りるものは何か?ということを検討しなければ、体制図は描けないはずだ。とりあえず何でもいいから外部と組めば何とかなるだろうという発想は、個人的にはどうも感心しない。

 (2)創業支援事業者補助金は、補助率3分の2以内、補助上限1,000万円である。つまり、1,500万円の経費を使うと、1,000万円の補助金が受けられる。それなりに大きな金額だ。ところが、創業支援計画を見ると、年間の目標創業件数が経費の金額と釣り合わないのではないか?と疑問に感じることがある。創業1件あたりの経費が100万円を超えると思われるケースさえある。ここで、投資に見合う十分な効果が得られるかどうかが問題となるだろう。

 補助金という投資は、将来の税金で回収することになる。まず、創業によってその企業からの法人税や事業所税が増える。これに加えて、新しい企業が社員を雇用し、その社員が当該市区町村に居住してくれれば、彼らの住民税や固定資産税、(軽)自動車税も増える。だが、これだけでは効果の計算としては十分ではない。創業者が退職することによって、前職の企業の利益がいくばくか減少し、法人税や事業所税に影響するからだ。また、新しい社員が元々住んでいた地域では税収が減少することになる。これらのマイナスを考慮しなければならない。

 こうしたマイナスを差し引いてもなお創業の効果が得られるのは、創業者がより大きな税引き前当期純利益を創出している場合である。具体的には、新しい企業の社員1人あたり税引き前当期純利益(※便宜的に、ここでの「社員」には、役員である創業者も含める)が、転職前の企業のそれを上回る時である。また、新たに採用した社員の給与は、前職よりも増加していなければならない(そうでなければ、支払う住民税なども増えない)。

 もちろん、創業直後は利益も少ないし、社員には薄給で我慢してもらうこともあるだろう。とはいえ、長い目で見たら、前職よりも業績的に優れた企業となることが投資回収の条件である。以前の記事「採点審査に困る創業補助金の事業計画書(その1~5)(その6~10)」で、創業希望者の事業計画は、ややもすると中長期にわたって社員の給与を低水準に据え置いていることがあると書いた。税金を使って貧乏人を増やすのは全く意味がないことである。それならば、既存の企業の新規事業分野進出を支援した方が、実りは大きいかもしれない。果たして、市区町村がこうした投資対効果のことをどこまで考えているのか、個人的にはやや疑問が残った。

 (3)(2)と関連するが、市区町村が創業を増やすのは税収増のためである。税収を増やす方法は、大きく分けて人口を増やすか、産業を活性化するかという2つだ。人口を増やす方法はさらに、他地域からの流入を増やす、当該地域内で産まれる子どもを増やす、の2つに分かれる。他地域からの流入を増やすには、例えば大学・研究機関を誘致する、地域包括医療体制を構築して高齢者の移住を促す、などが考えられる。当該地域内で産まれる子どもを増やすには、幼稚園・保育園の拡充や、小中高における魅力的な教育プログラムの提供などが挙げられる。

 産業を活性化する方法には、企業・工場を誘致する、商業・サービス業集積を形成することなどがある。難しいのは、これらの施策はお互いに影響し合っているという点である。例えば、企業・工場を誘致すれば、社員とその家族が他地域から流入してくる。他地域からの流入が増えれば、商圏の市場規模が大きくなるので商業・サービス業の集積が進む、といった具合だ。つまり、(税収)=f(大学・研究機関の誘致, 地域包括医療体制の構築, 幼稚園・保育園の拡充, 小中高における魅力的な教育プログラムの提供, 企業・工場の誘致, 商業・サービス業集積の形成, ・・・)という関数であり、その関数の中身を特定しなければならない。

 この作業には市区町村の役所を挙げた取り組みが必要となる。ところが、たいていの役所は縦割り化が進んでいる。幼稚園・保育園や小中高のことは教育・保育部門、地域包括医療のことは医療・福祉部門、企業活動のことは産業経済部門が担当している。これらの部門が相互の影響を考慮せずバラバラに動くと、施策の効果が目減りしてしまうに違いない(以前の記事「辻井啓作『なぜ繁栄している商店街は1%しかないのか』―商店が先か、住民が先か?他」で、商業集積の形成よりも住民の移住促進の方が先決だと書いたが、今になって読み返すとロジックの詰めが甘いと感じた。どうやら、どちらが先かという簡単な話ではなさそうだと反省した)。

2015年12月28日

【城北支部国際部オープンセミナー】「中小企業診断士による国際展開支援事例から、支援のありかた、診断士の役割を学ぶ」


global

 私が所属する(一社)東京都中小企業診断士協会 城北支部国際部で、中小企業のグローバル化支援を行っている、または今後行う予定の中小企業診断士向けに、オープンセミナーを開催した。中小企業基盤整備機構(中小機構)で海外展開支援の専門家としてご活躍されている診断士、中小企業と直接的に海外進出支援コンサルティングの契約を結んでいらっしゃる診断士を講師にお招きした。以下、セミナー内容のメモ書き。

 (1)1人目の講師は、中小機構で海外展開支援の専門家を務める診断士であった。中小機構の専門家には大手商社のOBが多く、講師がおっしゃるには「海外に詳しい猛者ばかり」だという(この講師の海外経験は、中国で5年ほどしかないそうだ)。商社OBは海外経験が長いだけあって、現地の法制度やビジネスの仕組みに非常に詳しい。言い換えれば、進出後の”How”に強い。そういう商社OBと差別化を図るために、この講師は進出前の”Why”を大切にしているという。海外進出をしたいという中小企業経営者に対して、講師は次のように理由を掘り下げる。

 経営者:「最近、国内の売上高が減少傾向にあるため、海外に進出しようと思います」
  ⇒講師:「業種、地域、製品・サービス別に売上高の推移を分析しましたか?」
 経営者:「実は、親会社が海外について来いと言っているのです」
  ⇒講師:「親会社はどこまで自社への発注を保証してくれていますか?」
 経営者:「親会社からの発注がなくても、日本ブランドは海外で強く、チャンスだと思います」
  ⇒講師:「最近はインバウンド需要も増加していますが、そちらには対応しないのですか?」
 経営者:「急激に円安になったため、海外に出るなら今しかないと考えています」
  ⇒講師:「では、円高になったら日本に戻ってくるつもりでしょうか?」
 経営者:「本当のことを言うと、海外事業を成功させて自分の求心力を高めたいのです」
  ⇒講師:(やっと本音を話してくれた)

 海外進出の理由について深く切り込んでいくと、実は経営者の個人的な動機に基づいている、というケースは決して少なくない。個人的な動機の有用性を否定するつもりは毛頭ないのだが、個人的な動機だけでは海外事業を成功させることは難しい。まず、個人的動機に基づく海外戦略はいかに脆弱であるかを経営者に認識してもらう。その上で、海外で通用する戦略を経営者と一緒に組み立てていくのが専門家の仕事だという。

 (2)中小機構の海外展開支援は、日本国内における海外戦略立案のフェーズと、現地調査を実施するフェーズに分かれる。以前は、後者のフェーズを重視しすぎていたという。例えば、ベトナムに進出したい中小企業に対しては、北部5か所、南部5か所、計10か所を回るような視察を提案していた。しかし、これでは10か所回ることが目的となってしまい、候補地を効果的に絞り込むことができない。まずは、ベトナム南北のどちらにするか決める。その上で、立地や地盤などの条件を調べて2ケ所ほどに絞り込んでから視察に出かけるべきである(以前の記事「「海外ビジネス進出セミナー」で学んだこと(1)(2)」でも似たようなことを書いた)。

 現地調査で最も苦労するのは、現地企業にアポイントを取ることである。中小機構は現地のアドバイザーとパートナー契約を結んでおり、彼らにアポ取りを依頼している。それでも、当日訪問したら担当者がいなかったり、「アポの話を聞いていない」と面会を拒否されたりする。そのため、必ず予備の訪問先を用意しておく。ちなみに、海外に視察に行く場合は、日本大使館や領事館も訪れるとよい。講師によれば、日本大使館などにはそれほど重要な情報はないのだが、「身体検査をして領事に会える」ことに喜びを感じる経営者が多いのだという。

 (3)(2)とも関連するが、1回目のアポイントは中小機構の専門家や現地アドバイザーが取ってくれる。だが、2回目以降のアポイントは自分で取るという姿勢が必要である。あまりに当たり前の話なのだが、これができない中小企業は意外と多い。海外の展示会に出展したある企業は、ブースで現地企業の関係者と名刺交換した後、注文がないことを嘆いていた。しかし、よく話を聞くと、その企業は名刺をもらっただけで、何のフォローもしていなかった。当然のことながら、こちらから電話やメールで連絡を取り、商談のアポイントを取らない限り、絶対に進展はない。

 日本の展示会もそうだが、ブースの前をたまたま通りかかった人に自社製品・サービスを売り込むのは至難の業である。よって、事前にターゲット顧客をリストアップし、展示会の案内状を送付して、ブースに来てもらえるように誘導しなければならない。海外の場合は、中小機構の現地アドバイザーや信用調査会社に現地企業のリストを作ってもらうことが有効である。

 (4)海外に製造子会社を設立すると、日本の工場長クラスが現地法人の社長として派遣される。海外子会社の社長は、日本の工場長とは比べ物にならないほど忙しい。人事・労務管理、総務、経理処理など、製造以外の仕事も行う必要がある。ところが、海外子会社の社長に対し、本社は従来通り工場長として接する傾向がある。すると、OKY問題が発生する。海外子会社の社長からすれば、「OKY=お前、来てやってみろ」と本社に言いたくなるのである。

 本社は、海外子会社の社長の忙しさに配慮しなければならない。本社は、海外の様子が解らないからと言って、海外子会社の社長にいちいち報告させてはならない(報告業務は、本社が想像する以上に現地の負担となっているものだ)。現地のことを知りたければ、本社が現地に出向いて聞きに行くことが大切である。海外子会社の社長を多忙にしないことは、海外子会社の社長が突然の急病で倒れるといった不測の事態を防ぐことにもなる(この話も、以前の記事「「海外ビジネス進出セミナー」で学んだこと(1)(2)」で書いた内容に通じるところがある)。

 (5)海外で自社製品・サービスを販売するには、現地のパートナー企業を探し、販売店・代理店契約を締結する。だが、パートナーが見つかれば簡単に製品・サービスが売れるようになると勘違いしている中小企業は少なくない。販売店・代理店の役割は、あくまでも「売れる製品・サービスの拡販」である。「売りにくい製品・サービスを売れるようにする」ことではない。日本の販売店・代理店でさえ、売りにくい製品・サービスを売れるようにしてくれるところは例外的である。

 日本でもできないことを海外で望むのは無謀だ(この話に限らず、日本では難しいことが海外では簡単にできると錯覚してしまうことはよくある)。「売りにくい製品・サービスを売れるようにする」のは、自社の役割である。それでもなお、売りにくい製品・サービスを販売店・代理店に売ってもらいたければ、国内以上の労力と費用をかけて、販売店・代理店を育成する必要がある。

 (6)海外販路開拓においては、海外向けWebサイトの構築が必須である。海外の人は、日本人が思っている以上にWebサイトをよく見ている。Webサイトがない企業とは取引しないと明言する外国人も多い。逆に、日本企業が海外企業と取引する場合には、海外企業のWebサイトがあるからと言って安心してはならない。Webサイトはあるが、Webサイトに書かれている住所にはオフィスがない(つまり、会社としての実体がない)ことがある。こういう詐欺的な企業を見破るには、信用調査会社を活用するのが一手である。

 言うまでもなく、日本と海外では価値観や嗜好が異なるため、海外の事情に配慮しなければならない。例えば、日本では挿絵やイラストを多用するが、欧米人は子どもっぽいと感じて敬遠し、むしろ写真や文章を好む。また、表示言語を切り替えるために国旗のアイコンを並べることがあるが、国旗の侮辱だと受け取る人もいるので要注意だ。Web制作会社を選ぶ際には、単に外国語に翻訳するだけの会社(そういう会社は、たいてい翻訳を外部の翻訳家に丸投げしている)ではなく、外国の事情を考慮して外国用のWebサイトを作ってくれる会社を選ぶべきである。

 (7)2人目の講師は、中小企業と直接的に海外進出支援コンサルティングの契約を結んでいる方であった。最近、「チャイナプラスワン戦略」としてASEAN諸国が注目されている。ASEAN諸国は親日国が多いとされるが、この講師はその見方に疑問を呈していた。人間の欲求は経済成長とともに変わる。10年前の中国人は、勤勉で残業もいとわない、家は狭くても文句は言わない、社宅に冷房をつけると「そのお金を賃金に回してほしい」と申し出るなど、日本人にとって非常にビジネスがしやすい相手であった。だが、現在の中国人は、食堂の食事がまずいと言って暴動を起こす。ASEAN諸国も、経済が成長すればストライキや暴動を起こす可能性がある。

 講師は、中国の13億人の市場はやはり捨てがたいと語っていた。私もこの見解には同意する。世界銀行は毎年、各国のビジネス環境をランキング化しているが、実はASEAN諸国は軒並み中国よりはるかに順位が低い。最近、CLM(カンボジア、ラオス、ミャンマー)の労働コストの安さに惹かれて、この3国への進出を検討する中小企業が増えている。しかし、初めての海外進出のターゲットをCLMに設定するのは、あまりにリスクが高い。まずは、比較的進出しやすく、かつ市場が大きい中国に進出して海外経験を積むというのが定石であるように感じる。

 (8)ブログ別館の記事「下川裕治『本社はわかってくれない 東南アジア駐在員はつらいよ』」で、ASEAN各国の人々の特徴について書いたが、講師から教えていただいた情報を追加する。

 ①タイ・・・人前で叱るのはタブーである。特に、人格を否定するような叱り方は絶対にやってはいけない。人格を否定されたタイ人は、仲間と一緒に殺しにやってくる。
 ②ベトナム・・・非常に自意識が過剰で、何でもすぐに「できます」と答える。英語ができるベトナム人を採用しようとして、応募者に「英語はできるか?」と尋ねたところ、「できます」と言ってきた。そこで「英語で自己紹介してください」と言ったら黙り込んでしまった。「英語ができると言ったではないか?」と問い詰めると、「半年後にはできるようになります」と答えたという。
 ③ミャンマー・・・後から序列をつけられるのを嫌がる。ワーカーとして採用した人たちの中から、能力が高い特定の人をリーダーに昇格させようとすると、「私は皆と一緒に働きたいので、ワーカーのままでいい」と言ってくる。それでも無理に昇格させると、昇格したリーダーも、昇格させた人事担当者も、残りのワーカーから嫌われる。リーダークラスを作りたいのであれば、面接の段階から「この人はリーダーにする」と決めておく必要がある。

 (9)ベトナムは建前上サービス業が外資に開放されているが、現在ホーチミンでは飲食店の許認可が下りない。当局の担当者がのらりくらりと処理を引き延ばすうちに担当者が異動になり、新たな担当者と一から交渉をしなければならない。これが繰り返されているのが実情のようだ。この問題はJETROなども認識しており、当局と交渉中だという。

 いわゆる「袖の下」を渡せば許認可が下りるのではないか?という質問が出たが、袖の下を渡しても許認可が下りないらしい。ちなみに、袖の下に関しては、日本人は違法と認識するのに対し、現地の人はそれほど違法だとは思っていない。当局の担当者は、「自分が許認可を与えた、投資奨励策に基づく特典を与えたのだから、その対価をもらってしかるべきだ」と考える。

 別のセミナーで、中国での駐在経験がある講師が、駐在時代に1,000円程度の「交通カード」(昔日本でも使われていたプリペイド型の乗車券)を何枚か常に持ち歩いていた、という話をしてくれた。当局の担当者と交渉する時、書類の間に交通カードをそっと紛れ込ませておく。これだと、袖の下ではないかと指摘を受けても、「うっかり紛れ込んでしまった」とごまかすことができる。

2015年08月11日

『中小企業白書』、『小規模企業白書』(2015年度)の概要について(中小機構「虎ノ門セミナー」メモ書き)(2/2)


 前回「『中小企業白書』、『小規模企業白書』(2015年度)の概要について(中小機構「虎ノ門セミナー」メモ書き)(1/2)」の続き。

<<『小規模企業白書』>>
⑧現経営者が事業承継を行うことを躊躇する個人的な要因

 (1)中小企業は事業承継がなかなか進んでおらず、やむなく廃業に追い込まれるケースが増えている。このことは、中小企業庁も社会的課題として認識している。本設問は、現在の経営者が事業承継を躊躇する個人的な理由を尋ねたものである。「厳し経営環境下で事業を引き継ぐことへの躊躇(後継者候補の人生への配慮)」が最も高い割合となっている。

 「厳し経営環境下で事業を引き継ぐことへの躊躇」とは、言い換えれば「業績が悪いから、このまま後継者に引き継ぐのは忍びない」ということであろう。引き継ぐのがはばかられるような、欠陥のある事業しか残せなかったことは、経営としては恥である。企業というのは規模によらず社会的公器であるから、このような理由で事業承継が進まないのは残念だ(以前の記事「『人生心得帖(『致知』2015年5月号)』―中小企業は「生業」で終わってはならないと思う」を参照)。

 企業は、たとえ小規模であっても、後世に引き継ぐことを前提として、経営資源の厚みを増し、持続的に業績を伸ばしていけるようなビジネスモデルを構築すべきである(そして、この指摘は、私自身のコンサルティング事業にも跳ね返ってくる)。

⑨経営・中小企業施策に関する情報の入手方法

 (2)「メールマガジン」が3.8%と非常に低い。中小企業庁のメールマガジンは約30万の会員がいるそうだが、メールマガジンでは情報が全然伝わっていないと解り、がっかりしたと中小企業庁の担当者がこぼしていた。一方で、「施策のチラシ・パンフレット」が39.8%と意外と高かった。公的機関に行くと様々なチラシ・パンフレットを見かける。正直なところ、「パンフレットなんて誰が見ているのだろう?(この時代にパンフレットなんて・・・。HPに掲載すれば十分ではないか?)」と疑問に感じていた。しかし、この認識は改めなければならないと感じた。

 なお、このデータだけを見ると、中小企業は支援施策に関する情報をよく入手しているようにも思える。だが、実際には、支援施策の認知度は相当に低いと予想される。以前、私が関わらせていただいた「荒川区中小製造業調査」でも、支援施策を知らない中小企業が大多数であった。

⑩事業が好調だった要因
⑪事業が不調だった要因

 (3)事業が好調だった要因、不調だった要因ともに、外部環境に求める割合が高く、そのことを指して中小企業庁は「他律的な経営」と評している。なお、HPで公開されている情報では「他律的な経営」となっているが、セミナーで配布された資料では「日和見的な経営」と、官公庁のレポートとしては珍しく厳しい表現が使われていた。

 研究によると、企業の業績を説明する要因としては、政治・経済のマクロ環境が約10%、事業・市場環境が約10%、自社の組織能力が約40%、その他(運)が約40%だという。つまり、企業の業績に外部環境が与える影響は20%しかなく、内部環境が与える影響の方がはるかに大きい。事業が好調な要因を外部環境に求めるのは、謙虚であってよいのかもしれない。これに対して、事業が不調な要因は、安易に外部環境に転嫁してはならないと思う。

⑫販路開拓に向けて実際に取り組んでいる取組
⑬販路開拓に向けて実際に取り組んでいる取組

 (4)販路開拓に「特に取り組んでいない」が49.5%と半数近くを占めるのが驚きである。販路開拓をせずにどうやって企業を経営しているのだろうか?「新しい顧客への直接訪問・売り込み」や「対面販売における顧客への説明・コミュニケーションの充実」に取り組む企業の割合が高いが、一方でそれが必ずしも売上高拡大につながっていない、という結果も出た。売上高を拡大するためには、「営業能力の高い人材の新規採用」を行うことが最も効果的であるようだ。




  • ライブドアブログ
©2012-2017 free to write WHATEVER I like