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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


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◆個人事務所「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ


(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

Experian海外企業信用調査 海外企業信用調査(Experian)
(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

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(以下の資格の講師をしています。
 ―ITパスポート
 ―情報セキュリティマネジメント
 ―経営学検定(初級・中級)
 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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2016年01月25日

「創業促進フォーラム」に出席して思ったこと

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商談

 開業率アップを目指す中小企業庁は、2014年度から「創業支援事業」を行っている。まず市区町村が、創業支援を行う事業者(民間企業、NPO法人、商工会議所など)と連携して「創業支援事業計画」を策定する。これは、当該市区町村における創業の目標(業種、件数など)を設定し、目標達成に向けた施策を立案するものである。具体的な支援策としては、創業希望者を対象としたセミナー、市区町村役所における窓口相談、創業資金の融資あっせんなどが挙げられる。創業セミナーは地元のNPO法人や商工会議所と、融資あっせんは金融機関と連携して行われる。

 創業支援計画に基づいて創業支援を行う事業者に対しては、「創業支援事業者補助金」という制度がある。創業セミナーを実施した時の会場代や講師謝金、窓口相談を担当する社員・職員の人件費などが補助対象となる。昨年末、この創業支援事業者補助金を受けている全国の事業者を対象として、「創業促進フォーラム」が開催された(中小企業基盤整備機構が主催)。私も昨年は創業支援事業に関わらせていただいた関係で、フォーラムに参加してきた。フォーラムでは、全国の市区町村の事例紹介や、他の創業支援事業者との交流会などがあった。

 以下、「創業促進フォーラム」に出席して思ったことのまとめ。

 (1)以前、創業支援事業者補助金の審査員を務めたことがある中小企業診断士から話を聞く機会があった(私のように創業支援事業を診断士が支援していることは多いが、まさか補助金の審査員を診断士がやっているとは思いもよらなかった。診断士は本当に狭い世界だ)。この診断士の方は、全国の色んな計画書を読んだものの、中身に大差がなくて審査しにくいと嘆いていた。どの市区町村も、判を押したように創業セミナーや窓口相談をやることになっていたという。私も創業促進フォーラムで他の市区町村の事例紹介を聞いたが、同じような印象を持った。

 理想論を言えば、地域によって取り巻く環境は異なるわけだから、創業の目標も、目標達成のための支援策も異なるはずである。計画を策定する際、まずは外部環境を分析する。地域内の企業を大きく分類すると、①地元住民を主たるターゲットとするタイプ、②近隣の市区町村や都道府県をターゲットに含むタイプ、③海外も射程に入れているタイプの3つに分けられる。したがって、地元、近隣地域、海外の市場が今後どのように変化するかを人口動態や世帯・家族構成の変化(BtoCの場合)、企業数・業種の変化(BtoBの場合)などから推測し、ニーズをあぶり出す。

 次に、内部環境に目を向ける。現在の市区町村下にどのような企業が集積されているのか?それらの企業の組織能力(強み・弱み)は何か?を分析する。その上で、外部環境分析から導かれた将来ニーズのうち、地域に蓄積された能力を活かして需要をとらえることが可能な分野は何か?を特定する。それと同時に、現在は地域内に十分な能力が蓄積されていないものの、将来ニーズの増加を見すごすことができず、地域として取り組む意義が大きい分野も明確にする。

 外部環境と内部環境の分析を行うと、両者のギャップが見えてくる。ここまでやって初めて、そのギャップを埋めるために、どんな業種の創業を何件ぐらい創出する必要があるか?という目標が立てられるようになる。その目標を実現する手段は、創業セミナーや窓口相談に限られないかもしれない(例えば、ものづくりに注力する地域は、域内の大学との産学連携を支援することになるかもしれない)。しかしながら、どうやら多くの創業支援事業計画はそのような分析を行っていないため、どれも似たり寄ったりになっているのだろう(私も他人のことは言えないのだが)。

 各市区町村の創業支援計画には、様々な関係機関との連携を示す実施体制図がある。NPO法人、コンサルティング会社、大学、商工会・商工会議所、地方銀行・信用金庫・信用組合などを含んでおり、あたかも手厚い支援ができるかのような印象を与える。だが本来は、創業希望者の創業前後における潜在的なニーズは何か?そのニーズに応えるためにどのような支援サービスを提供するか?それらのサービスのうち、市区町村が実施するものは何で、外部機関の力を借りるものは何か?ということを検討しなければ、体制図は描けないはずだ。とりあえず何でもいいから外部と組めば何とかなるだろうという発想は、個人的にはどうも感心しない。

 (2)創業支援事業者補助金は、補助率3分の2以内、補助上限1,000万円である。つまり、1,500万円の経費を使うと、1,000万円の補助金が受けられる。それなりに大きな金額だ。ところが、創業支援計画を見ると、年間の目標創業件数が経費の金額と釣り合わないのではないか?と疑問に感じることがある。創業1件あたりの経費が100万円を超えると思われるケースさえある。ここで、投資に見合う十分な効果が得られるかどうかが問題となるだろう。

 補助金という投資は、将来の税金で回収することになる。まず、創業によってその企業からの法人税や事業所税が増える。これに加えて、新しい企業が社員を雇用し、その社員が当該市区町村に居住してくれれば、彼らの住民税や固定資産税、(軽)自動車税も増える。だが、これだけでは効果の計算としては十分ではない。創業者が退職することによって、前職の企業の利益がいくばくか減少し、法人税や事業所税に影響するからだ。また、新しい社員が元々住んでいた地域では税収が減少することになる。これらのマイナスを考慮しなければならない。

 こうしたマイナスを差し引いてもなお創業の効果が得られるのは、創業者がより大きな税引き前当期純利益を創出している場合である。具体的には、新しい企業の社員1人あたり税引き前当期純利益(※便宜的に、ここでの「社員」には、役員である創業者も含める)が、転職前の企業のそれを上回る時である。また、新たに採用した社員の給与は、前職よりも増加していなければならない(そうでなければ、支払う住民税なども増えない)。

 もちろん、創業直後は利益も少ないし、社員には薄給で我慢してもらうこともあるだろう。とはいえ、長い目で見たら、前職よりも業績的に優れた企業となることが投資回収の条件である。以前の記事「採点審査に困る創業補助金の事業計画書(その1~5)(その6~10)」で、創業希望者の事業計画は、ややもすると中長期にわたって社員の給与を低水準に据え置いていることがあると書いた。税金を使って貧乏人を増やすのは全く意味がないことである。それならば、既存の企業の新規事業分野進出を支援した方が、実りは大きいかもしれない。果たして、市区町村がこうした投資対効果のことをどこまで考えているのか、個人的にはやや疑問が残った。

 (3)(2)と関連するが、市区町村が創業を増やすのは税収増のためである。税収を増やす方法は、大きく分けて人口を増やすか、産業を活性化するかという2つだ。人口を増やす方法はさらに、他地域からの流入を増やす、当該地域内で産まれる子どもを増やす、の2つに分かれる。他地域からの流入を増やすには、例えば大学・研究機関を誘致する、地域包括医療体制を構築して高齢者の移住を促す、などが考えられる。当該地域内で産まれる子どもを増やすには、幼稚園・保育園の拡充や、小中高における魅力的な教育プログラムの提供などが挙げられる。

 産業を活性化する方法には、企業・工場を誘致する、商業・サービス業集積を形成することなどがある。難しいのは、これらの施策はお互いに影響し合っているという点である。例えば、企業・工場を誘致すれば、社員とその家族が他地域から流入してくる。他地域からの流入が増えれば、商圏の市場規模が大きくなるので商業・サービス業の集積が進む、といった具合だ。つまり、(税収)=f(大学・研究機関の誘致, 地域包括医療体制の構築, 幼稚園・保育園の拡充, 小中高における魅力的な教育プログラムの提供, 企業・工場の誘致, 商業・サービス業集積の形成, ・・・)という関数であり、その関数の中身を特定しなければならない。

 この作業には市区町村の役所を挙げた取り組みが必要となる。ところが、たいていの役所は縦割り化が進んでいる。幼稚園・保育園や小中高のことは教育・保育部門、地域包括医療のことは医療・福祉部門、企業活動のことは産業経済部門が担当している。これらの部門が相互の影響を考慮せずバラバラに動くと、施策の効果が目減りしてしまうに違いない(以前の記事「辻井啓作『なぜ繁栄している商店街は1%しかないのか』―商店が先か、住民が先か?他」で、商業集積の形成よりも住民の移住促進の方が先決だと書いたが、今になって読み返すとロジックの詰めが甘いと感じた。どうやら、どちらが先かという簡単な話ではなさそうだと反省した)。

2015年09月11日

経済産業省の中小企業関係予算概算要求(平成28年度)について(平成27年度予算との比較)

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 平成28年度の概算要求の情報が公開されたので、中小企業関係の施策について比較表を作ってみた。比較表Excelのダウンロードはこちら。以下雑感。

 《参考:経済産業省HP》
 平成27年度 中小企業関係予算の概要
 平成28年度 中小企業関係概算要求等の概要

 ・平成27年度予算の資料は比較的詳細だが、平成28年度概算要求の資料はポイントをまとめたものであるため、両者の情報粒度が異なっている点はご容赦いただきたい。平成27年度に実施された施策で、平成28年度は概算要求されていないものが数多くあるかのように見えてしまうが、本当は裏で概算要求されている可能性がある。

 かねてから私は不思議に思っていたのだが、なぜか官公庁は予算の内訳を全て公開しようとしない。平成28年度概算要求の資料で「平成27年度より継続」となっているのに、平成27年度予算の資料には掲載されていない施策もある。予算の透明性を保つよう、世間からこれだけうるさく言われている割には、まだまだ緩い部分が残っていると感じた。底意地が悪い私などは、公にしたくない施策があるのではないかと勘ぐってしまう。

 ・平成28年度概算要求を見ると、小規模企業向けの施策が拡充された点以外は目新しさがなく、”いつもの当たり障りのない”施策に逆戻りしたようだ。「平成28年度 経済産業政策の重点のポイント」を見ると、経済産業省は、(1)ITによる産業構造・経済社会の革新、(2)イノベーションの担い手の強靱化、(3)未来への投資促進に向けた官民協働、(4)内なる国際化/2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、という4つの方向性を掲げている。しかし、中小企業庁の施策は、これらとのリンクが十分でない。特に、(1)と(4)に関連する施策がない。

 ・平成28年度概算要求からは、平成27年度予算にあった「円安是正」というテーマが消えた。もう1つ、ひっそりと姿を消した(と思われる)のが「創業支援」である。平成27年度は、創業希望者に対する補助金と、創業スクールなど創業支援事業を行う事業者に対する補助金の2本立てで予算が組まれていたが、平成28年度概算要求では前者が消えた。2013年6月に閣議決定された日本再興戦略では、現在5%台の開業率をアメリカ・イギリス並みの10%台に引き上げる目標が設定された。この目標は一体どうするのだろうか?

中小企業関連 平成27年度予算&平成28年度概算要求


2015年02月16日

「ものづくり補助金」平成26年度補正と平成25年度補正の違い

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 平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」の申請書の書き方に関する記事を、2015年2月2日(月)~6日(金)にかけて順次公開しました。昨年に比べて内容を充実させましたので、こちらもご一読いただければ幸いです。

 「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(1)(2)(3)(4)(5)
 経済産業省関連の補助金は、エコカー補助金のように、申請が通ればすぐにもらえる補助金とは全く異なります。一言で言えば、事務・経理処理が非常に大変です。主な留意点をまとめましたので、ご参照ください。

 【補助金の現実(1)】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない
 【補助金の現実(2)】補助金の会計処理は、通常の会計処理よりはるかに厳しい
 【補助金の現実(3)】補助金=益金であり、法人税の課税対象となる
 【補助金の現実(4)】《収益納付》補助金を使って利益が出たら、補助金を返納する必要がある
 【補助金の現実(5)】補助金の経済効果はどのくらいか?
 平成26年度補正予算「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス革新補助金)」の公募が2月13日(金)から開始された。東京都中小企業団体中央会のHPに掲載されている公募要領に基づいて、過去のものづくり補助金との違いを整理してみたい。

 (1)公募期間の長期化
 公募期間は2月13日(金)~5月8日(金)(※当日消印有効)となっている。平成24年度補正予算、平成25年度補正予算で実施されたものづくり補助金では、1次公募の中に1次締切と2次締切があり、1次締切がだいたい3月半ばに設定されていた。ところが、今回の1次公募は5月8日の1回しか締切がない。おそらく、採択結果が発表されるのは6月下旬だろう。

 以前の記事「【補助金の現実(1)】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない」でも書いたように、採択されたからといってすぐに補助事業を始められるわけではない。採択された後、交付申請という手続きが必要となる。これが2か月ぐらいかかるので、補助事業が開始できるのは、8月下旬~9月上旬になる見込みである。補助事業の計画を立てる際には、この点に注意が必要だ。早くプロジェクトを始めたい企業としては、結構もどかしい。

 (2)事業類型の変更
 平成25年度補正予算のものづくり補助金には、以下の6つの類型があった。
 ①成長分野型&ものづくり技術(補助上限額:1,500万円)
 ②成長分野型&革新的サービス(同1,500万円)
 ③一般型&ものづくり技術(同1,000万円)
 ④一般型&革新的サービス(同1,000万円)
 ⑤小規模事業型&ものづくり技術(同700万円)
 ⑥小規模事業型&革新的サービス(同700万円)
 ※⑤⑥以外は単価50万円以上の設備投資が必須。

 一方、今回は以下の4つの類型に再整理されている。
 ①革新的サービス&一般型(補助上限額:1,000万円)
 ②革新的サービス&コンパクト型(同700万円)
 ③ものづくり技術(同1,000万円)
 ④共同設備投資(補助上限額:共同体で5,000万円〔500万円/社〕)
 ※②以外は単価50万円以上の設備投資が必須。

 主な変更点としては、以下の3つが挙げられる。
 ・補助上限額1,500万円の成長分野型がなくなった。
 ・ものづくり技術は設備投資が必須になった。
 ・共同設備投資という新たな類型が登場した(後述)。

 (3)「共同設備投資」という類型の追加
 新登場の「共同設備投資」とは、「事業に参画する事業実施企業により構成される組合などが事業管理者となり、複数の事業実施企業が共同し、設備投資により、革新的な試作品開発やプロセスの改善に取り組む」ケースである。考えられるのは、例えば水産加工業協同組合が、組合員である複数の水産加工会社が共同で使用する加工設備を導入する場合などであろう。もともとは別の補助金がこういうケースを扱っていたが、今回はものづくり補助金に統合された。

 しかも、従来の補助金では5社までの連携体しか認められなかったのに対し、今回は1社最大で500万円、共同体全体で5,000万円まで認められるので、6社以上の共同体も申請が可能になった点がセールスポイントだという。だが、こういう共同設備投資に対するニーズがどのくらいあるのかは、正直なところよく解らない。過去のものづくり補助金でも、連携体による申請は可能であったものの、公開されている採択企業一覧を見ると、連携体は1%もなさそうである。

 (4)「革新的サービス」の重視
 「ものづくり補助金」という名前がついていながら、公募要領に書かれた事業の目的が「国内外のニーズに対応したサービスやものづくりの新事業を創出するため・・・」とあり、事業類型も「革新的サービス」が先頭に来ていることから、実はサービスがかなり重視されている。日本のサービス業は欧米に比べて生産性が低く、経済成長の足を引っ張っていることから、サービス業の生産性を何としても上げたいという政府・経済産業省の思惑が見て取れる。

 平成25年度補正予算のものづくり補助金では、言葉は悪いが「サービスなら何でもOK」だった。一方、今回は経済産業省が定める「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」に沿ったサービス開発であることが要求されている。確かに、この取り組み自体は私も非常に重要だと思っている。しかし、どうもしっくりこない点が1つだけある。

 本来のものづくり補助金は、経済産業省が定める「特定ものづくり基盤技術」を強化して、中小企業が数多く集まる裾野産業の競争力を上げ、ひいては川下の産業の発展に寄与することが狙いであった。ところが、サービス業の生産性向上は、これとは文脈が全く異なる話である。それを同じ1つの補助金の中で扱おうというのは、ちょっと無理があるのではないだろうか?

 一番危惧されるのは、ガイドラインに挙げられている「サービスの生産性向上」のうち、「効率の向上」ばかりが注目されて、「サービス提供プロセスの改善」、「IT利活用」に該当する補助事業、もっと噛み砕いていえば、業務効率化のためのIT導入という補助事業での応募が殺到することである。これは果たして「ものづくり」と言えるのだろうか?

 (5)補助対象外事業の条件の厳格化
 これは今年からではなく、正確に言えば平成25年度補正予算のものづくり補助金の2次公募から実施されていることなのだが、金額に関するルールが厳しくなっている箇所がある。公募要領のp6を読むと、「『補助対象経費』の各区分など(機械装置費、外注加工費・委託費、知的財産権等関連経費および機械装置費以外の経費)に設定されている上限を超える補助金を計上する事業」は補助対象外であると明記されている。

 これは、①革新的サービス&コンパクト型において、総額50万円(税抜き)以上の機械装置費を計上する、②外注加工費と委託費の補助対象経費(税抜き)の和が、補助対象経費総額(税抜き)の2分の1を超える、③知的財産権等関連経費の補助対象経費(税抜き)が、補助対象経費総額(税抜き)の3分の1を超える、④機械装置費以外の補助金申請額(税抜き)の和が、500万円を超える場合には、事業内容に関わらず、一発でアウトになることを意味する。特に④は要注意である。昨年も④に引っかかって不採択になったケースが相当数あったと聞いている。

 (6)機械装置費(設備投資)の重視
 (2)とも関連するが、設備投資が不要なのは、革新的サービス&コンパクト型のみで、残りの類型は全て設備投資が必要となる。設備投資が重視されていることは、公募要領のp8を見ても解る。平成24年度補正予算、平成25年度補正予算のものづくり補助金では、最初の費目は原材料費であった。ところが、今回は機械装置費が先頭に来ている。

 (5)の④を裏返すと、機械装置費以外の補助金申請額(税抜き)の和は500万円以下にしなければならない、ということになる。よって、革新的サービス&一般型とものづくり技術で、満額の1,000万円をもらうためには、機械装置費で500万円、それ以外で500万円の補助金を申請する必要がある。政府・経済産業省は何とか設備投資に誘導しようとしているみたいだ。これは単純に、「民間の設備投資が進めばGDPが上がるから」というのが第一の理由だろう。

 また、中小企業が設備投資をすると、機械メーカーは下請の部品メーカーへの発注を増やし、部品メーカーはさらに下請の部品メーカーへの発注を増やし・・・というふうに波及効果が得られるので、経済が活性化するという考えもあるに違いない(この辺りについては、以前の記事「【補助金の現実(5)】補助金の経済効果はどのくらいか?」を参照)。これが委託費や専門家謝金では、委託先の職員や専門家の報酬に消えて終わりだから、波及効果が少ない。

 (7)特定ものづくり基盤技術に「デザイン」を追加
 経済産業省では、日本の製造業の国際競争力強化に特に資する技術を指定している。ものづくり技術の類型で応募する際には、基盤技術と関連性のある試作開発であることが要求される。この基盤技術は2月9日(月)に見直しがあり、新たに「デザイン」が追加された。デザインにかかる技術は、公募要領のp27で次のように定められている。

 「製品の審美性、ユーザーが求める価値、使用によって得られる新たな経験の実現・経験の質的な向上などを追求することにより、製品自体の優位性のみならず、製品と人、製品と社会の相互作用的な関わりも含めた価値想像に繋がる総合的な設計技術」

 機能だけで製品を差別化することが難しく、これからはデザインが差別化要因になるという傾向を踏まえてのことだろう。だが、デザインにかかる技術だけで今回のものづくり補助金に応募することは多分できない。というのも、公募要領p6の補助対象外事業として、②主たる技術的課題の解決方法そのものを外注または委託する事業、③試作品等の製造・開発の全てを他社に委託し、企画だけを行う事業、が挙げられているからである。デザインだけを自社で行い、開発は外部に丸投げというパターン(いわゆるファブレス)は、補助事業の要件を満たさない。

 (8)「クラウド利用費」という費目の追加
 今回の最も大きな変更点は、これではないだろうか?補助対象経費として、「クラウド利用費」が追加された。公募要領を読むと、どうやら「ソフトウェア会社が、既に市販されているクラウド型のアプリケーションをカスタマイズして、オリジナルのクラウドサービスを開発する」というケースが想定されているようである。その際の、

 ・アプリケーション、サーバの利用料
 ・アプリケーションのカスタマイズ費
 ・専用アプリケーションの利用マニュアルの作成費

などが補助対象となる。マニュアル作成費については、「紙面、CD-ROM、DVD、ネット等の提供媒体の種類にかかわらず、400字につき3,000円を限度とする。また、この金額にはSEなどの人件費相当額を含むものとする」(公募要領p31)など、細かく規定されている。ただ、アプリ開発を外部に依頼する場合に、わざわざマニュアル作成費を別項目で見積もってくれるソフトウェア開発会社は少数派であろう。普段の取引ではそれでも問題ないが、ものづくり補助金に関しては、マニュアル作成費を別項目で切り出すように地域事務局から指導が入る可能性がある。

 「アプリケーションのカスタマイズ費」も「クラウド利用費」に入れてよいということだから、例えばある会社がクラウド型サービスの企画だけをやって、開発は外部のITベンダーに任せたとしても、その費用は全て「クラウド利用費」に計上できてしまう。ところが、(7)の②③で述べたように、技術的課題の解決を外部に丸投げする事業は補助対象外である。技術的課題の解決を自社中心でやっていることを示すためには、直接人件費を必ず計上するなど、工夫が必要である。


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