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「起業セミナー」に参加された方にアドバイスした3つのこと
ティム・クラーク他『ビジネスモデルYOU』―キャリア開発における「内省」を企業の内部環境分析に応用するための私案(2)
ティム・クラーク他『ビジネスモデルYOU』―キャリア開発における「内省」を企業の内部環境分析に応用するための私案(1)

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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2015年12月02日

「起業セミナー」に参加された方にアドバイスした3つのこと


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 今年は色々と起業セミナーの企画・運営をやらせていただいた。先日の起業セミナーでは、参加者が各々のビジネスプランを発表し、僭越ながら私が中小企業診断士の立場でアドバイスをさせていただいた。その時の内容のまとめ。

 (1)製品・サービスを絞ると、かえって多様な仕事が舞い込んでくる
 1人目は中堅・中小企業向けの経営コンサルティングで起業したいという方だった。私とガチンコで競合になると思いながら(苦笑)、ビジネスプランを聞いていた。全体的に、サービス内容が総花的であったため、「フォーカスを絞った方がよい」というアドバイスをさせていただいた。

 私の周りの独立診断士を見ると、儲かっていない人ほど「私は何でもできます」とアピールする傾向がある(私も他人のことは言えないが)。顧客企業に対して間口を広げるためであっても、顧客企業側からすると、その診断士を使った場合に一体どんな成果が期待できるのか解らず、仕事を発注しづらい。これは、コンサルティングに限らず、事業一般に言えることである。以前の記事「採点審査に困る創業補助金の事業計画書(その1~5)」では、「誰にでも効果がある製品・サービス」や「あれもこれも手広くやろうとする事業」は低く採点したという話を書いた。

 逆に、儲かっている診断士は、サービス内容のエッジが効いている。海外工場運営、海外リスクマネジメント、融資・資金繰り、事業再生などといった特定分野の専門性を持っていたり、建設業、IT業界、韓国系飲食店(単なる飲食店ではなく、韓国系であることがポイント)、パチンコ店、水商売(キャバ嬢に対して、「もっと髪をアップにせよ」などとアドバイスしているらしい)などといった特定業種に強かったりする。「そんなニッチなコンサルティングを一体どんな中小企業が望んでいるのか?」とこちらが心配になるが、実はそんな心配は全く無用で、かえって成功しやすい。

 さらに言えば、ニッチなサービスを提供していると、それをトリガーとして仕事の幅が広がっていく。韓国系飲食店に強いとある診断士は、新しいおもちゃの企画・開発を支援するなど、飲食店とは必ずしも結びつかない仕事までしているという。顧客企業は、「先生の専門分野に直接関係しないかもしれないが、実はこういうことで悩んでいる」といった感じで、その先生に相談するようである。端から手広くやることを狙うのではなく、最初は狭く入り込んで、そこから様々な仕事を派生させ、結果的には多様な製品・サービスを提供するようになるのが理想的である。

 こう書くと、以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第30回)】ターゲット市場がニッチすぎて見込み顧客を発見できない」の内容と矛盾しているように思われるかもしれない。私の前職のベンチャー企業は、「キャリア開発研修」というニッチな教育研修サービスを展開しようとしていた。前述の通り、ニッチ市場を狙うという戦略自体は必ずしも間違いではない。問題は、前職の企業は既に高コスト体質になっており、キャリア開発研修の売上高ではコストをカバーできそうになかったことにある。すなわち、ニッチ市場の選択が誤っていたというわけだ。

 (2)組織の価値観はたえざる解釈と発信を必要とする
 2人目は、母親の子育てを支援するITサービスを立ち上げたいという方であった。ビジネスモデルはまだ曖昧だが、組織の価値観だけは最初に確立されているのが印象的であった。価値観とは、不確実性が高い状況において様々な選択肢が想定され、そのいずれも一定の妥当性・合理性があるような時に、損得などの定量的な基準を超えて特定の選択肢を絞り込むための判断基準のことである。能力は可変的であるのに対し、価値観は一度形成されると変化しにくい。

 こう書くと抽象的だが、例えば私自身の価値観は以前の記事「私の仕事を支える10の価値観(これだけは譲れないというルール)(1)(2)(3)」で書いた。もちろん、これとは異なる価値観も十分に成立する。例えば、1つ目に掲げた「努力に惚れるのではなく、成果が出る努力をする。成果が出なければ努力を諦める」については、「成果が出るまで努力する」という価値観もありうる。だが、私の場合は、最初に撤退基準を決め、成果が出る見込みがないと解ったら、たとえそれが大化けする可能性が残っていたとしても、スパッと諦めることをよしとする。

 価値観は、社員の採用時に非常に重要となる。通常は能力重視で採用するものだが、ベンチャー企業の場合そうはいかない2つの事情がある。1つ目は、ベンチャー企業の戦略は流動的であり、戦略の変化に伴って別の能力が必要になることが多いからだ。能力重視で採用をすると、入社後の戦略変更に伴ってその能力が不要になった途端に、社員は「私はこの会社にとって必要な人材ではない」と感じ、離職してしまうリスクが高まる。

 一方で、戦略が変わっても、組織の価値観が変わることは稀である。価値観は組織のアイデンティティそのものであり、それが変わるということは組織の放棄に他ならない。だから、戦略がいかに変化しようとも、その根底に流れる価値観はほぼ不変であるし、そうでなければならない。ベンチャー企業は、変化しにくい自社の価値観をテコに、価値観で組織と心理的に強くつながる社員を採用する。そうすれば、仮に戦略が変わっても社員が組織に残ってくれる可能性が高まる。

 もう1つの理由は、そもそもベンチャー企業には、企業側が求める高い能力を持った人は応募してくる可能性が低い、ということである。ベンチャー企業は資金も人も足りないので、あれもこれもできる人材を採用したくなる。ところが、それが高望みであることは以前の記事「起業・創業をめぐる3つの勘違いをまとめてみたい」でも書いた。極論すれば、能力は採用後でも何とかなる。しかし、価値観は固定的であり、組織の価値観と矛盾する人を採用してしまうと取り返しがつかなくなる。だから、ベンチャー企業の採用は価値観重視でなければならない。

 『ビジョナリー・カンパニー』の著者であるジェームズ・コリンズは、「最初にバスの行き先を決めるのではなく、バスに乗る人を決めよ」と説いた。戦略は不確実でも構わないが、間違った価値観を持つ人を絶対に選んではならない、という意味である。また、GEは「9 Blocks」という人事制度で、社員の価値観がGEの価値観と合致しているかどうかを評価していた。価値観が合わない社員は、たとえハイパフォーマーであっても最悪の場合解雇される(ただし、GEは現在、9 Blocksに代わる新しい人事制度を構築中のようである)。

 2人目の人は、明石家さんまさんの「生きているだけで丸儲け」という言葉を組織の価値観に据えていた。ここで重要になるのは、この言葉を起業家自身が何度も解釈し、その意味を折りに触れて社員に伝える必要がある、ということである。「生きているだけで丸儲け」という文言だけを表面的に繰り返しても意味がない。この言葉がどのような意味を持つのか?具体的にどういうシチュエーションでこの価値観が活かされるのか?そのシチュエーションでこの価値観に従った結果どうなったか?などといったことを伝え、時に社員とともに議論しなければならない。

 私はこの言葉の意味を、「毎日目の前のことに必死に取り組んでいれば、お金は後からついてくる」というふうに解釈した。明治時代の実業家・渋沢栄一の「金は働きのカスだ。機械を運転しているとカスがたまるように、人間もよく働いていれば、金がたまる」という言葉と同じ意味であるととらえたのだ。しかし、人によっては、拝金主義のことだと受け取る人もいるだろう。こういう齟齬が生じないよう、経営者はメッセージを発信し続けるべきである。

 稲盛和夫氏は、「経営者は壊れたレコーダーのように同じことをしつこく社員に伝えよ」と主張した。ただし、レコーダーのように本当に毎回同じ話をするのはあまりよくないと思う。経営者はあれこれと言葉を変え、様々なバリエーションで価値観を語るのが望ましい。ボキャブラリーが多いということは、それだけ深く考え抜かれているということであり、社員の心に響きやすい。逆に、いつも全く同じ話しかしない経営者は、社員から底の浅さをバカにされる。

 (3)「知っていることを知らない人とやる」または「知っている人と知らないことをやる」
 3人目の人は、コワーキングスペースの運営を企画されていた。自分一人ではできることに限界があるため、パートナーとなる人を探したいとのことであった。この方に限らず、ベンチャー企業は経営資源の不足を補うために、外部パートナーの力を借りる局面が多々ある。私は、ある総合商社出身の診断士から聞いた話をお伝えした。総合商社は日々世界中のパートナー企業と一緒に取引をしている。その中で得られた教訓は、「知っていることを知らない人とやる」か、「知っている人と知らないことをやる」のが望ましい、ということであった。

 「知っている人と知っていることをやる」のがベストであることは言うまでもない。だが、どちらか一方が要件不足でも、それは構わない。しかし逆に言えば、どちらか一方は絶対に要件を満たす必要がある。最悪なのは、「知らない人と知らないことをやる」ことである。言われれば当たり前なのだが、知らない人と知らないことをやろうとする人は意外と多い。

 私の前職はまさにそんな感じだった(以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第4回)】何にでも手を出して、結局何もモノにできない社長」を参照)。また、独立後に創業補助金の審査員を務めた際、応募者が未経験の分野で起業しようとしているケースがたくさんあることに気づいた(以前の記事「採点審査に困る創業補助金の事業計画書(その6~10)」を参照)。知らない人と知らないことをやるのは高リスクなのに、それでもやりたくなるのは、自分がよく解っていないがゆえに成功時の収益を大きく見積もってしまうという認知の歪みのせいだろう。加えて、「自分ならそのリスクを上手く回避できる」という過信や楽観主義も影響しているのかもしれない。

 私の前職は大手コンサルファーム出身者が作った企業なのに、なぜこんな当たり前のことが解らなかったのか考えてみた結果、彼らが長年クライアント企業に提供してきた戦略立案のパッケージが問題だったのではないかと思うようになった。彼らの方法論では、まず環境分析を通じて戦略機会(平たく言えば、儲かりそうなビジネスチャンス)を洗い出す。その中から最も魅力的なものを選択し、ビジネスモデルを設計する。その際、自社が担いきれない役割・資源に関しては、外部企業との協業を検討する。そして、パートナー候補をリスト化し、順番に交渉する。

 今になって振り返ると、この戦略検討プロセスは、選択した戦略機会は自社が知見を持っている分野か?パートナー企業は自社が知っている企業なのか?という点が軽視されていたと感じる。だから、知らない戦略機会を過大評価し、知らないパートナー企業でも自社のビジネスモデルが魅力的なら自然と協業に応じてくれると思い込んでしまっていた。


2013年05月31日

ティム・クラーク他『ビジネスモデルYOU』―キャリア開発における「内省」を企業の内部環境分析に応用するための私案(2)


ビジネスモデルYOUビジネスモデルYOU
ティム・クラーク アレックス・オスターワルダー イヴ・ピニュール 神田 昌典

翔泳社 2012-10-26

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 (前回の続き)

(2)スキルと能力
 「スキルと能力」を明らかにするワークは、「ライフライン」というワークである。横軸に「時間」を、縦軸に「喜び/ワクワク」をとり、幼少期から現在までの「喜び/ワクワク」の変化を折れ線グラフで表現する。そして、「喜び/ワクワク」を大きく上昇させた、あるいは大きく減少させたライフイベントを書き込む。最後に、それぞれのライフイベントを通じて習得したスキルと能力を明らかにしていく。私のライフラインのグラフは割愛するが、重要なライフイベントを5つ抽出してみた。

 ⅰ)小学2年生の初めから中学3年の途中まで7年以上にわたり、週4日のペースでそろばん塾に通い続けた。珠算は初段、暗算は準初段まで到達することができた。市や県のそろばん大会でもたくさん優勝し、いろんな表彰を受けた。

 中でも一番印象に残っているのは、珠算の準2級の検定試験で、全科目満点という成績で合格し、商工会議所から特別表彰を受けたことだ。私がいた市では、珠算の1級・2級・3級の検定試験で全科目満点を取って合格すると、商工会議所が特別表彰を行う慣例があった。しかし、「準2級」については前例がなく、表彰するかどうか商工会議所内で議論になった。最終的には、「3級は表彰があるのだから、準2級も表彰があっていいのではないか?」ということで、商工会議所が”特別に”特別表彰してくれることとなった。
 ⇒「1人で黙々と同じ作業を続ける忍耐力」が身についた。また、「努力は意外な形で結実する」ということを学んだ。

 ⅱ)大学時代に塾講師のアルバイトをしていた時、ある先生から、問題児扱いされていた高校3年生の生徒を2人引き継ぐことになった。2人は遅刻や宿題忘れが日常茶飯事で、成績も芳しくなかった。引き継ぎの際に、前任の先生の授業を見学させてもらったが、最後の授業にもかかわらず、2人を大声で怒鳴りつけていた。「これは大変な生徒を受け持つことになってしまったなぁ」と思うと同時に、その2人が先生の怒声に全く応えていないことに気づいた。そこで、私は「何があっても絶対に怒鳴らない」と決めて、1年間辛抱強く個別指導を続けた。その結果、1人は芸術大学に、もう1人は産近甲龍レベルの大学に合格することができた。
 ⇒「人を動かすのは怒鳴り声ではなく、真摯に接し続ける姿勢である」ことを学んだ。

 ⅲ)同じく塾講師のアルバイトをしていた時、古典が非常に苦手な生徒を受け持ったことがある。文法の知識を一から教えても生徒の頭がパンクするだけだと思ったため、期末テストの直前に生徒から教科書のコピーをもらって予想問題を作り、それを生徒に繰り返し解いてもらった。すると、その生徒は初めて70点台を取ることができた。本人が一番驚いた顔をしていたのを今でも鮮明に覚えている。

 また、社会人になってから研修事業に携わるようになり、あるクライアントから「新しい営業手法を全営業担当者に浸透させるための研修を作ってほしい」という依頼を受けた。だが、クライアントにいくらインタビューしても、「新しい営業手法」とは一体何を指しているのか、意見が一致しなかった。そこで、クライアントの特性を踏まえた上で「新しい営業手法」をこちら側で定義し、それを盛り込んだ研修を実施した。研修終了後、クライアントの担当者から、「わが社が『新しい営業手法』と呼んでいたものが何だったのか、この研修でようやく解った」という感想をいただいた。
 ⇒「どう学ぶべきか?」の前に、「何を学ぶべきか?」を明確にするのは得意だと思う。

 ⅳ)あるクライアントのキーパーソンに、コンサルティングプロジェクトの提案を行った時のこと。私がシステムエンジニア出身であることを伝えると、「俺はSEが嫌いなんだよなぁ。頭が固いから」と言われた。まだ何も仕事をしていないのに、先入観だけでそう言われたのが悔しかったので、「絶対にこの人を見返してやろう」と思い、プロジェクトに臨んだ。

 プロジェクト期間が非常にタイトだったこともあり、一番気を遣ったのは、タスクの管理とスケジューリングであった。幸いにも、最終的にはキーパーソンから私の仕事ぶりを認めてもらうことができた。そのキーパーソンはプロジェクトの後、社内で何らかのプロジェクトの話が持ち上がると、私が作成した成果物を持って行っては、「こうやってプロジェクトを進めればいいんだよ」と関係者に教えている、と私に話してくれた。
 ⇒これ以外のコンサルティングプロジェクトなども通じて、「プロジェクトのゴールを決めて、タスクを区切り、スケジューリングを行う力」は結構鍛えられたと思う。

 ⅴ)今年に入ってから、私のブログを読んでくださっている方に会う機会があって、「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの書評記事がすごくいい」、「内容はマニアックだが(←私、苦笑)、特定の人に深く刺さる文章だ」というお褒めの言葉をいただいた。また、私のブログを読んでくださった出版社の担当者2人から連絡があった。1社からは原稿執筆の機会をいただき、もう1社からは最新刊の献本を受けることができた。
 ⇒「文章で解りやすく書く能力」は、おそらく同年代の人たちよりも優れていると思う。

 企業の場合、自社の強み・弱み分析はすでにお手のものだが、ここでは2つの点に注意してもらいたい。1つは時間軸を伸ばして考察することである。強み・弱み分析は、ややもするとここ数年の事象に目が行きがちだ。そうではなく、時には社史を一から紐解いて、企業が大きく成長するきっかけとなった出来事や、逆に企業が危機に瀕した出来事にも目を向けるとよい。

 もう1つは、表面的には失敗であっても、何かしら学習成果は存在するということだ。例えば、製品開発プロジェクトが失敗して新製品が日の目を見なかったとしても、プロジェクトの途中で取得した特許、新製品のデザインや設計図、プロモーションの企画などは、別のプロジェクトでも使える貴重な知的資産である。失敗の分析というと、悪かったことを次にどう直すか?という点ばかりに集中してしまうが、部分的な成功が埋もれていることに気づくと、組織の学習能力が上がる。

(3)個性
 本書で言う「個性」は、「性格」、「パーソナリティ」と言い換えた方が解りやすいと思う。本書では、ジョン・ホランドが開発した「六角形モデル」を用いて、自分のパーソナリティを明らかにするワークが紹介されている。ホランドが類型化した6つのパーソナリティは以下の通りである(詳細は「適職探しに役立つホランド理論 - @IT自分戦略研究所」を参照)。

 ・現実的(Realistic)
 ・研究的(Investigative)
 ・芸術的(Artistic)
 ・社会的(Social)
 ・企業的(Enterprising)
 ・慣習的(Conventional)

 厳密に測定するには、リンク先にも書かれているように、ホランド理論に基づいて開発された「CPS-J」(日本マンパワー)や「R-CAP」(リクルート)といったテストを受診する必要がある。それができない場合は、6タイプの説明文を読んで、自分に当てはまりそうなものを感覚的に選んでも構わないと思う。私のパーソナリティは、自己分析に基づくと、「研究的」が最も高く、その次に「慣習的」と「社会的」が高いと考えている。

 個人の集合体である組織にも性格は見られる。野心的な企業もあれば、官僚主義的な企業もある。企業の場合には性格とは言わずに、企業文化、組織風土といった表現の方が的確だろう。ホランドの六角形モデル以外にもパーソナリティを類型化する方法がいくつか存在するように(例えば、心理学者エドガー・シャインが提唱した「キャリア・アンカー」や、宗教家ゲオルギイ・グルジエフが初めて本格的に使い始めたとされる「エニアグラム」など)、企業文化の類型についてもこれといった正解があるわけではない。ただ、企業が個人の集合体である以上、企業文化は個人のパーソナリティと似たような性質を持つと考えられる。ホランドの六角形モデルを援用して、自社の企業文化がどのタイプに該当するのかを議論するとよいだろう。

 私の「関心」は「長い歴史の中で蓄積された知見に価値を見出し、それを解りやすい形で経営に活用して、組織の学習をサポートすること」にある。私の主要な「スキルや能力」は、「1人で黙々と同じ作業を続ける忍耐力」、「努力を続ける力」、「人が動くまで真摯に接し続ける姿勢」、「『何を学ぶべきか?』を明らかにする力」、「プロジェクトのマネジメント能力」、「文章で解りやすく説明する力」の6つである。そして、私の「個性」は第一義的には「研究的」であり、次に「慣習的」、「社会的」である。「関心」、「スキルと能力」、「個性」が重なり合うところが、私のキャリアのスイートスポットとなる。それは一言で言うと、「経営に必要な知を粘り強く、かつ解りやすく体系化し、その知を活用して人々の学習を辛抱強く支援する」ということになるだろう。

 戦略に関してスイートスポットという言葉を使う場合は、競合他社がまだ気づいていないが、高い成長率や収益性が見込める市場の”隙間”を意味する。つまり、外部環境におけるホワイトスペースをいかにして発見するかが戦略のカギとなる。しかし、より先進的な企業は、これまで見てきたような自社組織の内省を通じて社内のスイートスポットも発掘し、外部環境のスイートスポットと内部環境のスイートスポットが一致するところに戦略を見出すに違いない。


2013年05月30日

ティム・クラーク他『ビジネスモデルYOU』―キャリア開発における「内省」を企業の内部環境分析に応用するための私案(1)


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ティム・クラーク アレックス・オスターワルダー イヴ・ピニュール 神田 昌典

翔泳社 2012-10-26

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 前回の記事で紹介した『ビジネスモデルジェネレーション―ビジネスモデル設計図』の個人版。「ビジネスモデル・キャンバス」のフレームワークをビジネスパーソン個人にも当てはめて、キャリア開発に役立てようとするものである。私はこのブログで、企業の事業戦略と個人のキャリアデザインには共通点があると指摘してきたが(「リチャード・モリタ『これだっ!という「目標」を見つける本』―キャリアデザインと戦略立案のアナロジー」、「『最高のキャリアを目指す(DHBR2013年5月号)』―組織の戦略は人間のキャリア形成から何を学べるか?」を参照)、その意味でこの2冊の連続性は興味深い。

 しかし同時に、2冊の内容は微妙に連動していない箇所があり、それもまた興味深い。『ビジネスモデルジェネレーション―ビジネスモデル設計図』では、外部環境の将来の変化に重点が置かれているのに対し、『ビジネスモデルYOU』では、個人の内省にフォーカスが当たっている。企業の戦略も所詮は人間が構想し、実行するものである。したがって、企業の戦略は個人のキャリアデザインの方法にもっと倣うべきであり、逆もまたしかりである。すなわち、企業は自社のことをもっと内省する必要があるし、個人は自らを取り巻く環境の将来的な変化にもっと敏感になる必要がある。今回と次回の記事では、『ビジネスモデルYOU』で紹介されている内省のためのワークを、企業の内部環境分析に応用する方法について、私案を述べてみたいと思う。

 本書では、「関心(自分をワクワクさせるもの)」、「スキルと能力(学んで得た才能と、生まれ持った才能。自分が簡単に行えること)」、「個性(自分なりの働き方や人との関わり方)」の3つが重なり合う部分を、キャリアの「スイートスポット」と呼んでいる。多くのキャリアコンサルタントによると、スイートスポットに沿ったキャリアを歩む時、仕事での満足度が高くなるという。本書で紹介されている数々のワークは、読者が自らのスイートスポットを発見し、スイートスポットに沿ったビジネスモデル・キャンバスをデザインできるように設計されている。

(1)関心
 「関心」を明らかにするためのワークは、「私は、どんな人?」というワークである。まず、何も書かれていない紙を10枚用意する。それぞれの紙の一番上に、「私は、どんな人?」という質問を書く。それから、1枚に1つずつ答えを書いていく。その後、また10枚の紙に戻って、「それぞれの役割において、どういう時にワクワクするか?」という視点から、答えを膨らませる。最後に、10枚の紙をよく見て、自分をワクワクさせるものについての共通項を探す。自分には10個も役割がないと思う場合は、「私は、誰からどんな人として見られたいか?」という点で考えてみるとよい。私の結果はこんな感じだ(中には意外な役割も含まれているが、これが私という人間である)。

 1.コンサルタント・中小企業診断士・・・クライアントの経営を改善できる本質的な施策を2~3個に絞り込むことができた時。経営陣から、「わが社の売上が上がる方法が解った」と言ってもらえる時。
 2.研修プランナー・・・受講者の頭をいい意味で悩ませるケーススタディを開発できた時。受講者から、「明日から現場で使えるナレッジを学習することができた」と言ってもらえる時。
 3.夫・・・妻を献身的にサポートする時(この役割だけは、答えを膨らませるのが何となく恥ずかしい・・・)。
 4.読書家・・・マイナーだが良書に出会えた時。ある本で読んだ内容と、別の本で読んだ内容がつながり、「そうか、そういうことか!」と納得できた時。
 5.ブロガー・・・単なる本の紹介ではなく、批評を行い、自分なりの明確な見解をつけ加えることができた時。オリジナルのフレームワークを紹介することができた時。たくさんのページビューを稼ぐことができた時。読者から、「解りやすい記事だ」と言ってもらえる時。
 6.研究者・・・「創発的戦略」に関する新しい知見が見つかった時。欧米流の受け売りではなく、日本の文化に根差した経営のアイデアが見つかった時。そのアイデアをコンサルティングの現場で活用し、クライアントから高い評価が得られた時。
 7.作詞家・・・作曲家が作ったメロディーにぴったりと乗る日本語が見つかった時。陳腐な愛情の歌ではなく、世相をえぐる深い歌詞が書けた時。リスナーから、「私が普段思っていることをまさに的確に歌ってくれている」と言ってもらえる時。
 (※ここから先は私の現在の役割ではなく、身につけたいと願っている役割である)
 8.数学講師・・・数学の楽しさを高校生に解ってもらえた時。高校生がどこでつまづき、どうすれば理解できるようになるのかが解った時。数学における論理的思考の重要性に高校生が気づいてくれた時。
 9.四書五経に精通した人・・・江戸時代までは教養書として利用されていた四書五経の価値を再発見して、経営に活かせそうなヒントを導き出すことができた時。そのアイデアをコンサルティングの現場で活用し、クライアントから高い評価が得られた時。
 10.経済学と政治学に精通した人・・・ビジネスパーソンに経済学と政治学についてもっとよく知ってもらい、「社会を見る視野が広がった」と言ってもらえる時。経済学と政治学の知見を踏まえて経営学の理論を発展させることができた時。その理論をコンサルティングの現場で活用し、クライアントから高い評価が得られた時。

 これら10個の役割を眺めてみると、私は「長い歴史の中で蓄積された知見に価値を見出し、それを解りやすい形で経営に活用して、組織の学習をサポートする」ことにワクワクするようだ。

 このワークを企業に応用する場合は、「わが社は、どんな企業か?」という質問に変える。答えに際しては、自社の様々なステークホルダーを思い浮かべるとよいだろう。

 「セグメントA、B、C・・・の顧客層からは、どんな企業として見られたいか?」
 「競合他社からは、どんな企業として見られたいか?」
 「社員や社員の家族からは、どんな企業として見られたいか?」
 「主要な仕入先からは、どんな企業として見られたいか?」
 「主要な販売チャネルからは、どんな企業として見られたいか?」
 「その他のパートナー企業からは、どんな企業として見られたいか?」
 「金融機関や株主からは、どんな企業として見られたいか?」
 「労働力を供給してくれる高校・大学からは、どんな企業として見られたいか?」
 「事業所や工場を構えている地域の住民からは、どんな企業として見られたいか?」

 一連の質問を通じて、自社は何に関心があるのか?言い換えれば、自社の社員はどのような時に一番熱狂するのか?が明らかになるはずだ。

 (続く)



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