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【2018年反省会(2)】資格学校の講師の仕事は止めるべきサインがあった(続き)
【2018年反省会(1)】はじめに~資格学校の講師の仕事は止めるべきサインがあった
「ものづくり補助金」平成26年度補正と平成25年度補正の違い

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(コンサルタント・トレーナー)。ほとんど書評ブログ。双極性障害Ⅱ型を抱えながら頑張っています。

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2019年01月22日

【2018年反省会(2)】資格学校の講師の仕事は止めるべきサインがあった(続き)


考えるビジネスマン

 前回の記事で、2017年7月時点で中小企業診断士講座の受講者数が50人しかいないと書いた。私は2016年4月から収録を開始しており、2017年7月までに1年4か月も仕事をしていたから、仮にこのタイミングで契約を解除しても、ダメージが大きいことには変わりがなかった。それよりも、今になって振り返ると、もっと前に契約を解除すべきタイミングがあったと思う。

 私はセミナーや研修の講師をしたことはあったが、資格講座のe-Learningの講師をした経験はなかった。セミナーや研修であれば、顧客企業と企画内容を擦り合わせた上で、ある程度裁量を持ってコンテンツを開発することができる。また、セミナーや研修の本番中に多少言い間違いがあっても、その場で修正することが可能だ。一方、資格講座の場合は教えるべき内容が決まっている。さらに、e-Learningともなれば、さながらテレビ番組のように、視聴している受講者がストレスを感じないよう、流麗な動画に仕上げる必要がある。e-Learningを提供する資格学校は、コンテンツの構成とプレゼンの技術についてノウハウを持っていなければ勝負にならない。

 収録を始めたばかりの頃は、自分の動画をX社がどのように評価しているのかを知りたくて、「今日の講義はどうでしたか?」と担当者によく確認していた。X社からは、「この部分をこのように説明してほしい」、「話し方をこのように工夫してほしい」などとダメ出しが入ることを覚悟していた。ところが、X社からの返答は、「迫力があってよかったです」、「とても解りやすかったです」といったものばかりで、動画に対する注文が全くと言っていいほどなかった。そのため、X社は前述のノウハウを持っていないのではないかと疑うようになった。

 報酬をめぐる交渉で問題になったレジュメ(パワーポイントで作成した講義用資料)も、毎週の収録日に先立ってX社の担当者にメールで送付し、チェックを受けていた。担当者のチェックを通っても、収録中に自分でレジュメの間違いに気づくことがある。その際は、その場でレジュメを修正し、収録後に修正後のレジュメを担当者へ送付して差し替えてもらっていた。レジュメに関しては、内容の解りやすさもさることながら、パソコンとスマホの両方の媒体ではっきりと見えるように、レイアウトや文字サイズ、色などを調整する必要があった。だが、X社の担当者からは、収録の前にも後にも、レジュメの修正を依頼されたことが一度もない。ついには、収録開始から1年ぐらい経った頃に、担当者から「レジュメは収録後にまとめて送ってくれればよい」と言われた。担当者はレジュメを真面目にチェックしていなかったのだろう。

 X社の担当者も頻繁に交代していた。私がX社の仕事をしていた2年近くの間に、担当者が3回代わっている。交代した際に、「今度から担当が○○に代わります」と連絡してくれればよいのだが、X社の場合はしれっと担当者が変更になっていた。まず、担当者の他に副担当者らしき人がつき、メールのCCに追加される。私が担当者とメールのやり取りをしていると、次第に副担当者が前面に出てくるようになる。私が収録でX社のオフィスを訪れるうちに、そう言えば最近担当者を見かけないと感じて、副担当者に担当者はどうされたのかと尋ねてみたところ、実は担当者が随分前に退職していたことが判明した。そして、その副担当者が次の担当者に昇格するのであった。3回の交代劇はいずれもこのようにして行われた。

 X社の社長の資質にも問題があったと感じる。X社は社員が30人程度のベンチャー企業であった。にもかかわらず、社長には秘書がついていた。このパターンはどこかで見たことがあると思ったら、私の前職のベンチャー企業であった(以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第5回)】とにかく形から入ろうとする社長」を参照)。

 それなりの規模の企業であれば、経営陣に秘書がつく理由も理解できる。本社には顧客、取引先、金融機関、投資会社、業界団体、大学、研究機関、行政から果ては政治家まで、様々な人からメール、電話、郵送物で連絡が入る。顧客以外にも本社に物申したい人はいるし、取引先の他に営業をかけてくる企業もある。慈善団体が寄付を要求することもあるだろう。それらのことに経営陣が逐一対応していたら本業に集中できないため、前裁きをしたり、経営陣に代わって対応したりする人が必要になる。これが秘書の役割である。だが、社員が30人ほどの企業に関与する人などたかが知れている。私は中小企業向けの補助金事業の仕事をして、社員数が数十人程度の企業を100社ぐらい訪問したが、秘書がいる企業など見たことがない。

 私は、中小企業の社長は、自ら製品・サービスの開発・製造・提供をするか、自ら営業を行うか、少なくともどちらかの役割を果たさなければならないと考えている。自分ができない役割については、それを遂行してくれる信頼に足る右腕を置く。ホンダ、ソニー、パナソニックなど、現在の日本の代表的な大企業が中小企業だった頃は、社長とその右腕となる人物が二人三脚で製造と営業をリードしていたものである。ところが、X社の社長は、サービスの開発にも営業にもあまり関与していなかったように感じた。これも、私が前職のベンチャー企業で見た光景とそっくりである(以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第2回)】営業活動をしない社長」、「【ベンチャー失敗の教訓(第3回)】製品開発・生産をしない社長」を参照)。

 まず、X社がメインとしている講座については、社長が自ら講師を務めておらず、他の資格学校からスカウトしてきた名物講師らしき人をあてていた。では社長が営業をしていたかと言うと、Youtubeにチャネルを開設して宣伝動画をアップし、全国で雀の涙ほどの回数しか開催していない少人数の説明会で話をするだけで終わっていたように見えた。X社は自社でe-Learningのコンテンツを提供する以外に、他の資格学校にもコンテンツを販売しようとしていた。その営業を行っていたのは、私が知る限り社長ではなく、一般の社員であった。私には、社長は本ばかり書いている人にしか映らなかった。新刊が出る度に私も頂戴したものの、似たような内容を繰り返しているという印象しかなかった。ここまで来ると、もはや完全にデジャブである(以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第7回)】本を書いて満足してしまう社長」を参照)。

 これだけのサインがあれば、X社は危険だと判断してしかるべきだった。それなのに、私は契約解除を申し出ることができなかった。だがそれ以前に、そもそもこの仕事を引き受けるべきではなかった理由が2つある。1つ目は、前回の記事でも触れたレベニューシェアという報酬形態である。レベニューシェアとは、端的に言い換えれば成果報酬型である。私は独立した当初から、成果報酬型の仕事は基本的にやらないと決めていた(書籍の出版に関しては、印税方式という業界慣行を変えることがほとんど不可能であるため、例外的に印税方式に従っていた)。

 営業力強化のコンサルティングを行っている企業の中には、成果報酬型を売りにしているところもある。営業の場合は、元々営業担当者の給与にコミッションが取り入れられていることからも解るように、成果に対する営業担当者の貢献度合いが比較的解りやすい。受注金額から原価を引いた売上総利益のうち、営業担当者の固定給や管理部門の人件費、広告宣伝費その他本社の固定費を除いた金額に対して、営業担当者がどの程度寄与したかを取り決めたものがコミッションである。成果報酬型のコンサルティング会社は、コンサルティングによって前述の金額がどのくらい増加するかを見込んで、パーセンテージを設定する。

 だが、私の専門領域はビジョンや事業戦略(事業計画)の策定、それに紐づく人材育成計画の作成、計画に基づく研修の企画・開発・実施である。もちろん、私も顧客企業の業績が上向くことを願って仕事をしている。とはいえ、私の仕事がどの程度顧客企業の利益増に貢献したかを測ることは、私の仕事以外に影響する要因が多すぎるがゆえにほとんど不可能である。他方、私の仕事以外に影響する要因は多いものの、私の仕事は利益につながる因果関係の一部であり、私の仕事がなければ利益増は達成できなかったと考えれば、増加した利益が私の成果であり、それをそのまま支払ってほしいという強弁も成り立つ。しかし、こんな主張を受け入れる顧客企業などまずいない。だから、私は成果報酬型の仕事はしないことにしていた。

 安倍政権になってから中小企業向けの補助金が増加し、コンサルタントが補助金の申請書(事業計画書)の作成支援を依頼される機会が増えた。コンサルタントの中には、採択された補助金額の一定割合を報酬として請求する、つまり成果報酬型の契約を締結している人もいた。しかし、作成”支援”と言いながら、実質的には作成”代行”になっていることも往々にしてあった。私からすると、作成代行で成果報酬を請求する場合には、事業計画のネタこそ顧客企業が持っていたとはいえ、こちらが作成代行をしなければ補助金を受けられなかったのだから、補助金をほぼ全額頂戴したいという気持ちになる。

 もちろん、この論理が相手に通用するはずもない。例えば、行政書士に会社設立の手続きを代行してもらった際に、事業プランは依頼者にあったかもしれないが、行政書士が会社設立の手続きをしなければそもそも会社を立ち上げることができなかったのだから、設立後の利益を全部寄こせなどと言われたら、誰もが怒るだろう。

 私は、中小企業をメインの顧客としている機械メーカーから、顧客企業に提供する追加サービスの一環として、補助金の申請書の作成支援(実質的にはほとんど代行)をしてくれないかと打診されたことがあった。顧客企業の事業計画が採択されれば、計画の遂行段階で必要となる機械をそのメーカーから購入してもらうという目論見であった。機械メーカーの担当者からは、私の仕事は成果報酬型でないと顧客企業に提案できないと言われた。成果報酬に対して否定的だった私は、採択の有無にかかわらず、顧客企業の経営者の頭の中にあった事業計画を目に見える文書として構造化したこと自体に価値があると主張し、一定額の報酬を要求した。

 この件に関わらず、価格に対する私の考え方はシンプルである。まず、私と同じ仕事を顧客企業が自力でしたら、どの程度の期間と費用がかかるのかを見積もる。私がその期間よりも短期間で仕事をする場合には、顧客企業が要したであろう費用よりも高い価格を想定する。ただし、私がどの程度の品質(早く仕上げることも1つの品質である)を達成する見込みで、顧客企業がそれにいかほどの価値を認めるかはケースバイケースであるから、価格交渉の余地が生じる。一方、私が顧客企業とほぼ同じ期間で仕事をする場合には、顧客企業の費用よりも安い価格を想定する。とはいえ、際限なく安い価格では私が採算割れしてしまうし、同じ期間でも品質を上げられるならば、想定価格より高い価格を設定できるかもしれない。これも交渉事である。先ほど触れた行政書士の各種手続きなどの値段も、同様の考え方で設定されているはずだ。

 この機械メーカーにはこういう話が通じなかったため、話はお流れになった。正直に言って、私の仕事を成果報酬型でないと顧客企業に売り込むことができないというこの企業の営業担当者は腰抜けだと感じた。仮に、この機械メーカーの顧客企業から、機械の値段は成果報酬型で支払いたいなどと言われたら、営業担当者は間違いなく拒否するだろう。まして、この手の企業の主たる収益源となっているアフターサービスの費用を成果報酬型で支払いたいなどと言う顧客企業は、営業担当者が必死で説得するに違いない。

 私が以前精神科の病院に入院していた時、看護師に私の仕事内容を説明したことがあった。経営コンサルティングの仕事は、必ずしも顧客企業の業績アップにつながるとは限らず、その点で顧客企業はリスクを抱えているという話をしたら、看護師からは「そういう性質のサービスであれば、自分なら成果報酬型でお願いしたいと思う」という反応が返ってきた。

 看護師の気持ちは解らなくもない。しかし、その理屈が通るならば、医療サービスについても、患者が治るかどうかを医師が保証できないのだから、患者が診療報酬を成果報酬型にしてくれと要求してもおかしくないことになる。とはいえ、もしそのような主張を許してしまったら、日本の医療制度が崩壊することは誰の目にも明らかである。特に精神疾患は、他の疾患に比べて、治るかどうかがより一層不透明である。さらに、私が抱えている双極性障害は、寛解すること(症状が治まり安定すること)はあっても完治する可能性は低いとされている。その治療費を成果報酬型にしてしまったら、精神科医は皆逃げ出すだろう。


2019年01月21日

【2018年反省会(1)】はじめに~資格学校の講師の仕事は止めるべきサインがあった


カフェで勉強

 年明けに水曜どうでしょうの「初めてのアフリカ」(2013年収録)を久しぶりに観てみた。放送された当時は大泉洋や藤村Dによる執拗な宣伝が企画の邪魔だと感じることが多々あった。ところが、このタイミングで観直してみると、もはやエッセイやグッズの賞味期限が切れているため当初の不満はどうでもよくなり、やはりどうでしょうらしい、いい意味でピントが外れた企画だと思うようになった。水曜どうでしょうは、「寝かせると面白くなる」という稀有な番組である。だから、もう20年以上前の企画であっても、未だに面白く見ることができるのだろう。

 「初めてのアフリカ」以降、どうでしょう班は3回ほど新作の旅に出ているはずである。その編集がようやく始まったという告知が年明けのHTBのCMで流れた。「編集が始まった」ということだけでCMを流してしまうHTBは相変わらず寛大な放送局である。藤村Dは編集が面倒くさかったなどと言い訳をしていたが、寝かせると面白くなることを知っていて、意図的に編集を放置していたのかもしれない。ともあれ、どうでしょう藩士としては、今年の新作放送が楽しみでならない。

 さて、私のブログは久しぶりの更新である。11月以降更新がストップしていたのは、2か月半ほど入院していたためである。2018年は3月に1か月間入院し、7月に1か月間自宅療養し、11月から翌年の1月中旬にかけて長期入院した。個人事業主として満足な仕事ができなかったがゆえに、相当焦っていた。焦って色々手を出すものの、何一つものにならなくて余計に焦り、かえって病状を悪化させるという悪循環にはまっていた。年明けに退院して大分気持ちが落ち着いたので、昨年1年間の出来事を自分なりに振り返ってみようというのが今回の【2018年反省会】シリーズである。このシリーズは寝かせるとさすがに時機を逸してしまうため、今から書き始める。ただし、いつまで続くか自分でも解らない。「初めてのアフリカ」並みにだらだら続くと思う。

 途中、私の両親に関する記述が出てくる予定である。読み方によっては、私が単に両親のことを批判しているかのように受け取る方もいらっしゃるかもしれない。だが、私の目的は「ジャーナリング効果」を狙い、書くことによって嫌な思い出を払拭することにある。もちろん、その程度なら私の日記にとどめておけばよいのではないかという意見もあるだろう。ただ、私としてはもはや日記として手元に残っているのも苦痛であり、記録には残すものの、電子空間のどこかに放り投げておきたい。この点をご理解いただいた上で読み進めていただければ幸いである。

 もう1つ読者の皆様にはご了承いただきたいことがある。【2018年反省会】シリーズの構想は昨年末から病院の中であれこれと練っており、その際スマホで色々と調べ物をしていた。私はスマホのSEO対策に関する最近の動向についてはほとんど知らない。どうやら、目次を作って文章を構造化すると検索結果の上位に表示されるようである。そして、その目次も検索結果に表示され、ユーザは自分が読みたい箇所に直接ジャンプすることができる。しかし、無理に構造化することによって、かえって下手で冗長な文章がものすごく増えたと感じた。

 「皆さんは○○について疑問に思ったことはありませんか?私なりに調べてみました。早速見ていきましょう」という導入から始まり、最後のまとめに入る前に「以上の内容をまとめると次のようになります」などと書くのがテンプレート化しているようである。私に言わせれば、著者が調べたければ勝手に調べればいいし、まとめを読めば解る内容なら最初に要約を持ってくればよい。この手の記事の多くは、ランサーズで外部のライターに対し、1文字0.7円などという異常な単価で書かせたものだろう。そんな文章だから誰も真面目に推敲しようとしない。その結果、変な文章が量産されていると感じた。私には、自分のブログをスマホ用に最適化する考えは毛頭ない。私の文章は読者が読みたい箇所をつまみ食いして理解できるものにはなっていない。通読に耐えうる文章を書いているつもりであるから、最後までおつき合いいただければと思う。

 導入が長くなってしまった。ここからが本題である。話は2017年11月に遡る。当時、私はある資格学校(以下、X社とする)が提供するe-Learningの講座で、中小企業診断士とその関連資格の講師をしていた。その時の顛末は、以前の記事「『致知』2018年4月号『本気 本腰 本物』―「悪い顧客につかまって900万円の損失を出した」ことを「赦す」という話」で書いた。11月時点で、私が業務委託契約によって収録を約束していた科目については、収録が完了していた(むしろ2科目ほど多く収録した)。この時既に、作成したレジュメ(パワーポイントで作成した講義用資料)が多すぎることは、さすがの私も解っていた。

 11月末にX社から連絡があり、「行政書士の人が収録した『ビジネス実務法務検定』と中小企業診断士の『経営法務』の講義に対して受講者からクレームが多数寄せられており、動画を全て撮り直したい。ついては、私にその仕事をお願いしたい」という話を持ちかけられた。

 前掲の記事で書いた通り、契約書ではX社が毎年1月と7月に過去半年分の売上高を計算し、その一部をレベニューシェアとして私に支払うことになっていた。2017年7月に受講者数を報告してもらったところ、たった50人であった。50人しか受講者がいないのにクレームが多数寄せられているというのも不思議な話である。X社が受講者数を過少申告しているのではないかという疑念もよぎった。だが、受講者数がはるかに多ければ、googleで私の名前を検索した際に、サジェスチョンにX社の名前が表示されてもおかしくない。そのサジェスチョンもなかったから、X社の言うことが本当なのだろうと信じ、再収録の仕事を引き受けた。それに、この仕事を問題なく遂行すれば、レジュメに対する報酬の交渉で優位に立てるだろうという変な下心もあった。

 私は法学部出身だが、別に法律の専門家ではない。行政書士の人の方がよっぽど法律に詳しい。『ビジネス実務法務検定』は初級と中級に分かれており、私がこれまでに収録した他の科目と同じペースで収録をした場合には半年近くかかるという見込みをX社に提示した。ところが、X社からは、受講者を待たせるわけにはいかないため、2か月で収録してほしいという要望を受けた。私が考えていたスケジュールを約3分の1にするのだから、かなり無理がある話であった。それでも、後の交渉で優位に立ちたいという一心で、何とか1月末までに収録を終えた。

 動画の収録は孤独である。機材のセッティングはX社の担当者がしてくれるものの、収録が始まると担当者は部屋から出て行ってしまう。デジカメのRECボタンをリモコンで操作するのは私である。動画の収録であるため、当然のことながら途中でNGを出すこともある。その場合は自分で編集点を作り、「すみません、この部分から前の動画とつないでください」などと、X社の編集担当者向けのコメントを入れて続きを収録していた。最初は丁寧にコメントを入れていたのだが、専門外の法律に関する動画を収録していることと、スケジュールが詰まっていることに対する焦りもあって、だんだんと編集点を作る作業が雑になっていった。途中から若干不機嫌そうに、「ここから撮り直します(棒)」といったコメントに変化していたことは、X社の編集担当者も気づいていたと思う(もちろん、動画本編はこれまでの科目と同じ調子で収録した)。

 ビジネス実務法務検定の初級は1月頭に、中級と中小企業診断士の経営法務は2月頭にリリースされた。私は、受講者からクレームが出ていないかどうかを気にしていた。私の過剰な期待だったのかもしれないが、X社がクレーム対応のために動画の撮り直しを私に依頼したのだから、撮り直した結果どうなったのか、少しぐらい報告があってもよいのではないかと思っていた。1月末になってもX社の担当者から特段何の連絡もなかったため、私の方から初級に関する評判を確認してみた。すると、クレームは収まったとのことだった。2月に入ってからもX社から特に追加の要求はなく、中級と経営法務のクレームもなくなったと理解している。この点も含めて評価してほしいと交渉に臨んだものの、不調に終わったことは前掲の記事の通りである。

 そもそも、2017年7月時点で中小企業診断士講座の受講者が50人しかいないというのが大問題であった。中小企業診断協会が公開しているデータによると、1次試験の受験者数は毎年だいたい1万6,000人である。このうち、何らかの資格学校を利用している人がどの程度存在するのかについてのデータは、残念ながら発見することができなかった。

 ここからは私の肌感覚で話を進めることをご容赦いただきたい。2次試験まで合格して資格を取得した知り合いの人たちの話を聞いていると、6~7割は資格学校を利用している。一応、中小企業診断士は難易度が高い資格の部類に入るから、何かしらの資格学校を利用するのが合格への近道とされる。1次試験の受験者の大半は試験に合格していないため、資格取得者に比べれば資格学校の利用率は下がるに違いない。とはいえ、不合格者であっても1次試験の受験までは到達しているから、ある程度勉強しているとも言える。また、初めから複数年かけて科目合格を重ねる計画で挑んでいる人も含まれる。これらのことを総合して、1次試験の受験者のうち4割が資格学校を利用していると仮定しよう。つまり、6,400人である(①)。

 1次試験の受験者以外には、受験まで至らないものの試験勉強はしているという人もいる。私の周りにもそういう人は結構いて、1次試験を受験した人と同じぐらい存在するように感じる。ただし、受験しなかった人の中には、勉強の途中で挫折した人も少なくない。そういう人は往々にして、資格学校への先行投資がないがゆえに、受験者に比べて諦めやすいという傾向がある。したがって、試験勉強だけして1次試験を受験しなかった人のうち、資格学校を利用していた人の割合は2割にとどまると仮定する。すると、3,200人となる(②)。

 ①と②を合計すると、資格学校で1次試験の勉強をしている人は約1万人存在する計算になる。私は、収録の過程で、X社が中小企業診断士の講座に対してどのくらい人件費をかけているかある程度知っていた。また、広告宣伝やe-Learningのシステム開発にもそれなりの投資が必要である。これらの点を踏まえ、加えてX社が受講者向けに設定していた価格をベースにすると、少なくとも毎年500人以上の受講者を獲得しなければ、初期投資を回収できないし、安定した利益が出ないと私は見積もっていた。500人と言っても、全体の市場規模に対してわずか5%である。中小企業診断士の資格学校はそれほど数も多くない。いくらX社がベンチャー企業であるとしても、5%ぐらいの目標なら達成できるだろうと見ていた。これが甘かった。

 レベニューシェアとは、私から見ると印税である。書籍やCDの場合は、それがどれだけ売れるかは出版社やレコード会社にも予測できない。よって、リスクを著者やアーティストに転嫁するために印税方式を採用することは理解できる。一方、資格学校の市場は、受講者がいる限り必ず存在する。まして、中小企業診断士は近年人気が上がっており、受講者数はわずかながら増加傾向にある。だから、適切な事業計画を策定し、適切なマーケティングを行えば、確実にとまでは言わないがそれなりにビジネスになる。需要がある程度見えているものに対して、私が講義動画+レジュメというサービスを納品しているのだから、レベニューシェアという奇妙な契約形態ではなく、サービス全体に対する対価を請求できる契約にするべきであった。

 それにしても、私の目論見の10分の1しか集客できていなかったというのだから、X社は一体どういう事業計画を立てていたのか見てみたかったものである。


2015年02月16日

「ものづくり補助金」平成26年度補正と平成25年度補正の違い


 平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」の申請書の書き方に関する記事を、2015年2月2日(月)~6日(金)にかけて順次公開しました。昨年に比べて内容を充実させましたので、こちらもご一読いただければ幸いです。

 「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(1)(2)(3)(4)(5)
 経済産業省関連の補助金は、エコカー補助金のように、申請が通ればすぐにもらえる補助金とは全く異なります。一言で言えば、事務・経理処理が非常に大変です。主な留意点をまとめましたので、ご参照ください。

 【補助金の現実(1)】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない
 【補助金の現実(2)】補助金の会計処理は、通常の会計処理よりはるかに厳しい
 【補助金の現実(3)】補助金=益金であり、法人税の課税対象となる
 【補助金の現実(4)】《収益納付》補助金を使って利益が出たら、補助金を返納する必要がある
 【補助金の現実(5)】補助金の経済効果はどのくらいか?
 平成26年度補正予算「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス革新補助金)」の公募が2月13日(金)から開始された。東京都中小企業団体中央会のHPに掲載されている公募要領に基づいて、過去のものづくり補助金との違いを整理してみたい。

 (1)公募期間の長期化
 公募期間は2月13日(金)~5月8日(金)(※当日消印有効)となっている。平成24年度補正予算、平成25年度補正予算で実施されたものづくり補助金では、1次公募の中に1次締切と2次締切があり、1次締切がだいたい3月半ばに設定されていた。ところが、今回の1次公募は5月8日の1回しか締切がない。おそらく、採択結果が発表されるのは6月下旬だろう。

 以前の記事「【補助金の現実(1)】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない」でも書いたように、採択されたからといってすぐに補助事業を始められるわけではない。採択された後、交付申請という手続きが必要となる。これが2か月ぐらいかかるので、補助事業が開始できるのは、8月下旬~9月上旬になる見込みである。補助事業の計画を立てる際には、この点に注意が必要だ。早くプロジェクトを始めたい企業としては、結構もどかしい。

 (2)事業類型の変更
 平成25年度補正予算のものづくり補助金には、以下の6つの類型があった。
 ①成長分野型&ものづくり技術(補助上限額:1,500万円)
 ②成長分野型&革新的サービス(同1,500万円)
 ③一般型&ものづくり技術(同1,000万円)
 ④一般型&革新的サービス(同1,000万円)
 ⑤小規模事業型&ものづくり技術(同700万円)
 ⑥小規模事業型&革新的サービス(同700万円)
 ※⑤⑥以外は単価50万円以上の設備投資が必須。

 一方、今回は以下の4つの類型に再整理されている。
 ①革新的サービス&一般型(補助上限額:1,000万円)
 ②革新的サービス&コンパクト型(同700万円)
 ③ものづくり技術(同1,000万円)
 ④共同設備投資(補助上限額:共同体で5,000万円〔500万円/社〕)
 ※②以外は単価50万円以上の設備投資が必須。

 主な変更点としては、以下の3つが挙げられる。
 ・補助上限額1,500万円の成長分野型がなくなった。
 ・ものづくり技術は設備投資が必須になった。
 ・共同設備投資という新たな類型が登場した(後述)。

 (3)「共同設備投資」という類型の追加
 新登場の「共同設備投資」とは、「事業に参画する事業実施企業により構成される組合などが事業管理者となり、複数の事業実施企業が共同し、設備投資により、革新的な試作品開発やプロセスの改善に取り組む」ケースである。考えられるのは、例えば水産加工業協同組合が、組合員である複数の水産加工会社が共同で使用する加工設備を導入する場合などであろう。もともとは別の補助金がこういうケースを扱っていたが、今回はものづくり補助金に統合された。

 しかも、従来の補助金では5社までの連携体しか認められなかったのに対し、今回は1社最大で500万円、共同体全体で5,000万円まで認められるので、6社以上の共同体も申請が可能になった点がセールスポイントだという。だが、こういう共同設備投資に対するニーズがどのくらいあるのかは、正直なところよく解らない。過去のものづくり補助金でも、連携体による申請は可能であったものの、公開されている採択企業一覧を見ると、連携体は1%もなさそうである。

 (4)「革新的サービス」の重視
 「ものづくり補助金」という名前がついていながら、公募要領に書かれた事業の目的が「国内外のニーズに対応したサービスやものづくりの新事業を創出するため・・・」とあり、事業類型も「革新的サービス」が先頭に来ていることから、実はサービスがかなり重視されている。日本のサービス業は欧米に比べて生産性が低く、経済成長の足を引っ張っていることから、サービス業の生産性を何としても上げたいという政府・経済産業省の思惑が見て取れる。

 平成25年度補正予算のものづくり補助金では、言葉は悪いが「サービスなら何でもOK」だった。一方、今回は経済産業省が定める「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」に沿ったサービス開発であることが要求されている。確かに、この取り組み自体は私も非常に重要だと思っている。しかし、どうもしっくりこない点が1つだけある。

 本来のものづくり補助金は、経済産業省が定める「特定ものづくり基盤技術」を強化して、中小企業が数多く集まる裾野産業の競争力を上げ、ひいては川下の産業の発展に寄与することが狙いであった。ところが、サービス業の生産性向上は、これとは文脈が全く異なる話である。それを同じ1つの補助金の中で扱おうというのは、ちょっと無理があるのではないだろうか?

 一番危惧されるのは、ガイドラインに挙げられている「サービスの生産性向上」のうち、「効率の向上」ばかりが注目されて、「サービス提供プロセスの改善」、「IT利活用」に該当する補助事業、もっと噛み砕いていえば、業務効率化のためのIT導入という補助事業での応募が殺到することである。これは果たして「ものづくり」と言えるのだろうか?

 (5)補助対象外事業の条件の厳格化
 これは今年からではなく、正確に言えば平成25年度補正予算のものづくり補助金の2次公募から実施されていることなのだが、金額に関するルールが厳しくなっている箇所がある。公募要領のp6を読むと、「『補助対象経費』の各区分など(機械装置費、外注加工費・委託費、知的財産権等関連経費および機械装置費以外の経費)に設定されている上限を超える補助金を計上する事業」は補助対象外であると明記されている。

 これは、①革新的サービス&コンパクト型において、総額50万円(税抜き)以上の機械装置費を計上する、②外注加工費と委託費の補助対象経費(税抜き)の和が、補助対象経費総額(税抜き)の2分の1を超える、③知的財産権等関連経費の補助対象経費(税抜き)が、補助対象経費総額(税抜き)の3分の1を超える、④機械装置費以外の補助金申請額(税抜き)の和が、500万円を超える場合には、事業内容に関わらず、一発でアウトになることを意味する。特に④は要注意である。昨年も④に引っかかって不採択になったケースが相当数あったと聞いている。

 (6)機械装置費(設備投資)の重視
 (2)とも関連するが、設備投資が不要なのは、革新的サービス&コンパクト型のみで、残りの類型は全て設備投資が必要となる。設備投資が重視されていることは、公募要領のp8を見ても解る。平成24年度補正予算、平成25年度補正予算のものづくり補助金では、最初の費目は原材料費であった。ところが、今回は機械装置費が先頭に来ている。

 (5)の④を裏返すと、機械装置費以外の補助金申請額(税抜き)の和は500万円以下にしなければならない、ということになる。よって、革新的サービス&一般型とものづくり技術で、満額の1,000万円をもらうためには、機械装置費で500万円、それ以外で500万円の補助金を申請する必要がある。政府・経済産業省は何とか設備投資に誘導しようとしているみたいだ。これは単純に、「民間の設備投資が進めばGDPが上がるから」というのが第一の理由だろう。

 また、中小企業が設備投資をすると、機械メーカーは下請の部品メーカーへの発注を増やし、部品メーカーはさらに下請の部品メーカーへの発注を増やし・・・というふうに波及効果が得られるので、経済が活性化するという考えもあるに違いない(この辺りについては、以前の記事「【補助金の現実(5)】補助金の経済効果はどのくらいか?」を参照)。これが委託費や専門家謝金では、委託先の職員や専門家の報酬に消えて終わりだから、波及効果が少ない。

 (7)特定ものづくり基盤技術に「デザイン」を追加
 経済産業省では、日本の製造業の国際競争力強化に特に資する技術を指定している。ものづくり技術の類型で応募する際には、基盤技術と関連性のある試作開発であることが要求される。この基盤技術は2月9日(月)に見直しがあり、新たに「デザイン」が追加された。デザインにかかる技術は、公募要領のp27で次のように定められている。

 「製品の審美性、ユーザーが求める価値、使用によって得られる新たな経験の実現・経験の質的な向上などを追求することにより、製品自体の優位性のみならず、製品と人、製品と社会の相互作用的な関わりも含めた価値想像に繋がる総合的な設計技術」

 機能だけで製品を差別化することが難しく、これからはデザインが差別化要因になるという傾向を踏まえてのことだろう。だが、デザインにかかる技術だけで今回のものづくり補助金に応募することは多分できない。というのも、公募要領p6の補助対象外事業として、②主たる技術的課題の解決方法そのものを外注または委託する事業、③試作品等の製造・開発の全てを他社に委託し、企画だけを行う事業、が挙げられているからである。デザインだけを自社で行い、開発は外部に丸投げというパターン(いわゆるファブレス)は、補助事業の要件を満たさない。

 (8)「クラウド利用費」という費目の追加
 今回の最も大きな変更点は、これではないだろうか?補助対象経費として、「クラウド利用費」が追加された。公募要領を読むと、どうやら「ソフトウェア会社が、既に市販されているクラウド型のアプリケーションをカスタマイズして、オリジナルのクラウドサービスを開発する」というケースが想定されているようである。その際の、

 ・アプリケーション、サーバの利用料
 ・アプリケーションのカスタマイズ費
 ・専用アプリケーションの利用マニュアルの作成費

などが補助対象となる。マニュアル作成費については、「紙面、CD-ROM、DVD、ネット等の提供媒体の種類にかかわらず、400字につき3,000円を限度とする。また、この金額にはSEなどの人件費相当額を含むものとする」(公募要領p31)など、細かく規定されている。ただ、アプリ開発を外部に依頼する場合に、わざわざマニュアル作成費を別項目で見積もってくれるソフトウェア開発会社は少数派であろう。普段の取引ではそれでも問題ないが、ものづくり補助金に関しては、マニュアル作成費を別項目で切り出すように地域事務局から指導が入る可能性がある。

 「アプリケーションのカスタマイズ費」も「クラウド利用費」に入れてよいということだから、例えばある会社がクラウド型サービスの企画だけをやって、開発は外部のITベンダーに任せたとしても、その費用は全て「クラウド利用費」に計上できてしまう。ところが、(7)の②③で述べたように、技術的課題の解決を外部に丸投げする事業は補助対象外である。技術的課題の解決を自社中心でやっていることを示すためには、直接人件費を必ず計上するなど、工夫が必要である。





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