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創業補助金の書面審査をして感じたこと(自治体はもっとしっかりせよ)
「ものづくり補助金」平成26年度補正と平成25年度補正の違い
「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(5)

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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2017年07月14日

創業補助金の書面審査をして感じたこと(自治体はもっとしっかりせよ)


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 《参考記事》
 「うさんくさい補助金申請書」を見極める7つの審査ポイント(その1~3)(その4~7)
 採点審査に困る創業補助金の事業計画書(その1~5)(その6~10)
 創業補助金の書面審査をして感じた7つのこと

 3年ぶりぐらいに「創業補助金(創業・事業承継補助金)」の書面審査員をやらせていただいた。正直な感想を言うと、3年前に比べて応募者の質が落ちたように思える。まず、「誰に」、「どんな製品・サービスを」、「どのような差別化要因で」提供するのかという戦略の基本的なコンセプトすらはっきりしていない計画書が多すぎる。製品・サービスに関しては、いくら創業前であるとは言っても、文章だけではなく、何かしらビジュアルで説明する資料をつけてほしいものである。

 まさかとは思うが、製品・サービスのプロトタイプが全くないのに創業しようとしているるのだろうか?今回の創業補助金は、補助事業期間中に1人以上社員を採用することが要件となっている。販売する製品・サービスがないのに、創業間もない企業に入社してしまった社員は不幸である。私はそういう社員を前職のベンチャー企業で嫌というほどたくさん見てきた。

 前職は組織・人事コンサルティングと教育研修サービスを提供する企業であったが、私より前に入社したマネジャーは、「一緒にキャリア研修を売っていこう」と社長に誘われて入社した。ところが、入社後に実はそんな研修はないことが判明した。それどころか、社長はそのマネジャーにキャリア研修の開発をやらせたのである。後に、同じような手口で入社してしまった人は他にもいることが解った。しかも、社長が非常に飽きっぽく、「この研修がダメなら次はあの研修だ」とすぐに心変わりするため、いつまで経ってもまともに売れる研修プログラムが完成しなかった。

 差別化要因が明確でないということは、競合他社の分析が不十分ということでもある。ターゲット市場・商圏において、どのような競合他社が存在するのか把握している応募者があまりにも少ない。例えば、飲食店を開業するのであれば、ターゲットとする商圏の中に既にどのような飲食店が存在し、誰をターゲットにどのようなメニューをいくらぐらいの価格帯で提供しているのか、味やサービスの質はどの程度のレベルなのか、といったことを調査する必要がある。競合他社に潜入するのが難しい場合でも、せめてHPの情報を分析したり、知り合いを使って競合他社の評判を聞いたり、帝国データバンクなどで競合他社の情報を入手したりするべきである。

 以前、あるスーパーマーケットの競合分析の話を聞いたことがある。このスーパーマーケットは、ある地域への出店を検討する際、調査員をその地域にへばりつける。調査員に何をさせるのかと言うと、既存の競合スーパーの品揃え調査はもちろんのこと、競合スーパーから出てくる買い物客の買い物袋の中身を観察させる。それを何か月も続けて、商圏内の顧客の大まかな需要をつかむ。その次には、商圏内のゴミ捨て場で、ゴミの調査をさせる。顧客が購入した食材のうち、実際に消費したものは何か、消費せずに捨てられたものは何かを分析する。こうして、1年ぐらいかけて、精度の高い需要情報を獲得していく。さすがに、創業希望者にここまでやれとは言わないが、競合分析とはこのくらい本気でやるものだということは解っていただきたい。

 冒頭の参考記事でも書いたが、異質な製品・サービスを単に組み合わせただけの事業も相変わらず散見される。確かに、イノベーションは異質なものの組み合わせから生じると言われる。だが、単に異質なものをくっつけるだけでは不十分であり、その組み合わせによってどのような相乗効果が期待できるのか、異質なもの同士の組み合わせを全体としてどのようにシステマティックにデザインするのかということまで考えないと、イノベーションとは言えない。また、創業当初から、異質な事業をいくつも同時並行で進めようとする計画も多い。個人的には、中小企業は規模を大きくして多角化した方が、リスクヘッジもできるし、研究開発に対する投資も、社員に支払う給与も増やすことができると考えている(『中小企業白書』のデータにも表れている)。しかし、創業間もない企業がいきなり多角化するのは、いくら何でも無理がある。

 私の前職のベンチャー企業(A社としよう)には、グループ会社に人材紹介会社(B社)と、もう1つのコンサルティング会社(C社)があった。こんな会社を選んでしまった私もはなはだ不勉強だったのだが、ベンチャー企業が3つも事業を同時に進めるのは無謀であった。経営資源が分散してしまい、結局どの事業もものにならなかった。また、経営陣は、C社が戦略コンサルティング、A社が組織・人事コンサルティングを行い、コンサルティングの結果浮き上がってきた課題に対するソリューションの1つとして、A社のキャリア研修を提供する、というシナリオを描いていた。ところが、B社が人材紹介事業を行っていたため、キャリア研修の営業に行くと、「我が社の社員をB社の転職サービスで転職させようとしているのではないか?」という疑念を持たれることが少なくなかった。要するに、事業間シナジーを見誤っていたということである。

 通常の戦略策定プロセスにおいては、まずはターゲット顧客層を明確に設定し、現在の市場規模を推定する。次に、地方自治体や調査会社のデータを活用して、将来の市場規模を見積もる。例えば、30代女性をターゲットとする場合、5年後の30代女性の市場規模は、現在の25~34歳の女性の人口からある程度正確に導くことができる。起業する場合、縮小する市場に参入することは稀であろう(※)。普通は成長している市場に参入するものである。当然のことながら、成長市場には競合他社も参入してくる。よって、例えば5年後の戦略目標を設定する場合には、5年後の推定市場規模と、前述の競合他社分析、さらに将来的な競合他社参入の可能性を踏まえて、目標を設定する。具体的には、何%の市場シェアを獲得するのかという目標を立てる。

 (※)ただし、これからの人口減少社会においては、敢えてパイが縮小する市場で勝負するというパターンもあるのかもしれない。この場合、どのように戦略を立てるのが有効なのか?どうすれば持続的な成長が可能となるのか?これらの点は今後の研究課題としたい。

 ところが、戦略コンセプトが曖昧であるから、戦略目標もぼやけている。それなのに、国が用意した申請書のフォーマットにある6か年の収支計画には具体的な数字が並んでいる。一体この数字はどうやって導かれたのか、まるで解らない。毎年、どのくらいの顧客数を獲得するのか、顧客平均単価はいくらを想定しているのかが書かれていない。だから、毎年の目標売上高の妥当性を判断することができない。本来であれば、5年後の目標売上高と、先ほど書いた5年後の目標市場シェアとの整合性が取れているかも確認したいところだが、それもできない。ただし、この点については応募者に責があるというよりも、中途半端な申請書のフォーマットを用意した国が責められるべきであろう。国も、事業計画書とはどういうものなのか理解が足りていない。

 創業補助金では、資金調達の現実性も審査の対象となっている。申請書には、補助事業期間(今回の創業補助金では8月上旬~12月末)の必要資金(設備資金、運転資金)を書き、その資金をどのように調達するのかを記入する。補助金がカバーするのはあくまでも必要資金の一部(上限200万円)にすぎないため、必要資金の大半は自己資金や金融機関からの借入などに頼る必要がある。多くの応募者は自己資金と金融機関からの借入を組み合わせているが、自己資金が極端に少ないケースが見られる。この場合、仮に補助事業者に採択されても、金融機関の審査を通らない恐れがある。一般的に、自己資金は開業資金(開業準備金+開業してから3~6か月の間に発生する費用)の3分の1以上用意する必要があるとされている。

 金融機関からの借入については、申請書に「既に調達済み/補助事業期間内に調達の見込みがある」のいずれに該当するかを記入する欄がある。この「補助事業期間内に調達の見込みがある」というのが曲者である。あくまで「見込み」であるから、金融機関とのリレーション構築がなされていない場合でも、適当な金融機関の名前を書いて提出することができてしまう。

 私はものづくり補助金の事務局に親しい診断士が何人かいるのだが、ものづくり補助金の申請書にも似たような記入欄がある。補助金が支払われるまでの間のつなぎ融資(詳しくは以前の記事「【補助金の現実(1)】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない」を参照)の目途が立っているかを確認するのが目的である。つなぎ融資であるから、普通に考えれば、金融機関から補助金相当額を借り入れ、補助金が振り込まれたらそのまま金融機関に返済すればよい。ところが、中には、決算資金や給与資金が必要だからという理由で、補助金を早く振り込んでほしいと事務局に懇願してくる中小企業があるという。これは、金融機関からつなぎ融資が受けられていなかったことを意味する。その企業が、仮に申請時に「補助事業期間内に調達の見込みがある」と書いていたならば、これは虚偽記載をしたことになる。

 こういう事態を防ぐためにも、「補助事業期間内に調達の見込みがある」と書く場合には、金融機関と覚書を交わし、そのコピーを提出させるべきではないかと思う。具体的には、「応募者が補助事業者として採択された場合には、融資を検討する(融資を確約する必要は全くない)」といった趣旨の文章を金融機関に書かせるのである。そうすれば、安易に「補助事業期間内に調達の見込みがある」と書く向こう見ずな応募者は減るであろう。

 資金調達の方法として「本事業の売上高」を書いてくる応募者もいる。私は、必要資金全体に占める「本事業の売上高」の割合が高い計画書は低く採点した。創業時には、開業後一定期間全く売上がなくても企業が持ちこたえるだけの資金を準備する必要がある。その一定期間は、一般的には3か月という意見が多いようだが、個人的にはリスクを高く見積もって6か月と考えている。申請書の資金計画は、補助事業期間=8月上旬~12月末が対象である。つまり、5か月弱であり、私の考える一定期間より短い。よって、この5か月間の資金需要を満たすために、「本事業の売上高」に相当程度を依存している資金計画は、破綻していると言わざるを得ない。

 現在の創業補助金は、産業競争力強化法における認定市区町村または認定連携創業支援事業者による特定創業支援事業を受けていることが要件となっている。特定創業支援事業とは、創業セミナーや窓口相談のことである。つまり、創業セミナーや窓口相談を受けた人しか、この創業補助金には応募することができない。それにもかかわらず、申請書の質にははっきり言って失望させられた。市区町村や認定連携創業支援事業者は、一体どのような支援をしたのだろうか?その支援の質も問われかねない事態であると個人的には思う。


2015年02月16日

「ものづくり補助金」平成26年度補正と平成25年度補正の違い


 平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」の申請書の書き方に関する記事を、2015年2月2日(月)~6日(金)にかけて順次公開しました。昨年に比べて内容を充実させましたので、こちらもご一読いただければ幸いです。

 「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(1)(2)(3)(4)(5)
 経済産業省関連の補助金は、エコカー補助金のように、申請が通ればすぐにもらえる補助金とは全く異なります。一言で言えば、事務・経理処理が非常に大変です。主な留意点をまとめましたので、ご参照ください。

 【補助金の現実(1)】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない
 【補助金の現実(2)】補助金の会計処理は、通常の会計処理よりはるかに厳しい
 【補助金の現実(3)】補助金=益金であり、法人税の課税対象となる
 【補助金の現実(4)】《収益納付》補助金を使って利益が出たら、補助金を返納する必要がある
 【補助金の現実(5)】補助金の経済効果はどのくらいか?
 平成26年度補正予算「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス革新補助金)」の公募が2月13日(金)から開始された。東京都中小企業団体中央会のHPに掲載されている公募要領に基づいて、過去のものづくり補助金との違いを整理してみたい。

 (1)公募期間の長期化
 公募期間は2月13日(金)~5月8日(金)(※当日消印有効)となっている。平成24年度補正予算、平成25年度補正予算で実施されたものづくり補助金では、1次公募の中に1次締切と2次締切があり、1次締切がだいたい3月半ばに設定されていた。ところが、今回の1次公募は5月8日の1回しか締切がない。おそらく、採択結果が発表されるのは6月下旬だろう。

 以前の記事「【補助金の現実(1)】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない」でも書いたように、採択されたからといってすぐに補助事業を始められるわけではない。採択された後、交付申請という手続きが必要となる。これが2か月ぐらいかかるので、補助事業が開始できるのは、8月下旬~9月上旬になる見込みである。補助事業の計画を立てる際には、この点に注意が必要だ。早くプロジェクトを始めたい企業としては、結構もどかしい。

 (2)事業類型の変更
 平成25年度補正予算のものづくり補助金には、以下の6つの類型があった。
 ①成長分野型&ものづくり技術(補助上限額:1,500万円)
 ②成長分野型&革新的サービス(同1,500万円)
 ③一般型&ものづくり技術(同1,000万円)
 ④一般型&革新的サービス(同1,000万円)
 ⑤小規模事業型&ものづくり技術(同700万円)
 ⑥小規模事業型&革新的サービス(同700万円)
 ※⑤⑥以外は単価50万円以上の設備投資が必須。

 一方、今回は以下の4つの類型に再整理されている。
 ①革新的サービス&一般型(補助上限額:1,000万円)
 ②革新的サービス&コンパクト型(同700万円)
 ③ものづくり技術(同1,000万円)
 ④共同設備投資(補助上限額:共同体で5,000万円〔500万円/社〕)
 ※②以外は単価50万円以上の設備投資が必須。

 主な変更点としては、以下の3つが挙げられる。
 ・補助上限額1,500万円の成長分野型がなくなった。
 ・ものづくり技術は設備投資が必須になった。
 ・共同設備投資という新たな類型が登場した(後述)。

 (3)「共同設備投資」という類型の追加
 新登場の「共同設備投資」とは、「事業に参画する事業実施企業により構成される組合などが事業管理者となり、複数の事業実施企業が共同し、設備投資により、革新的な試作品開発やプロセスの改善に取り組む」ケースである。考えられるのは、例えば水産加工業協同組合が、組合員である複数の水産加工会社が共同で使用する加工設備を導入する場合などであろう。もともとは別の補助金がこういうケースを扱っていたが、今回はものづくり補助金に統合された。

 しかも、従来の補助金では5社までの連携体しか認められなかったのに対し、今回は1社最大で500万円、共同体全体で5,000万円まで認められるので、6社以上の共同体も申請が可能になった点がセールスポイントだという。だが、こういう共同設備投資に対するニーズがどのくらいあるのかは、正直なところよく解らない。過去のものづくり補助金でも、連携体による申請は可能であったものの、公開されている採択企業一覧を見ると、連携体は1%もなさそうである。

 (4)「革新的サービス」の重視
 「ものづくり補助金」という名前がついていながら、公募要領に書かれた事業の目的が「国内外のニーズに対応したサービスやものづくりの新事業を創出するため・・・」とあり、事業類型も「革新的サービス」が先頭に来ていることから、実はサービスがかなり重視されている。日本のサービス業は欧米に比べて生産性が低く、経済成長の足を引っ張っていることから、サービス業の生産性を何としても上げたいという政府・経済産業省の思惑が見て取れる。

 平成25年度補正予算のものづくり補助金では、言葉は悪いが「サービスなら何でもOK」だった。一方、今回は経済産業省が定める「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」に沿ったサービス開発であることが要求されている。確かに、この取り組み自体は私も非常に重要だと思っている。しかし、どうもしっくりこない点が1つだけある。

 本来のものづくり補助金は、経済産業省が定める「特定ものづくり基盤技術」を強化して、中小企業が数多く集まる裾野産業の競争力を上げ、ひいては川下の産業の発展に寄与することが狙いであった。ところが、サービス業の生産性向上は、これとは文脈が全く異なる話である。それを同じ1つの補助金の中で扱おうというのは、ちょっと無理があるのではないだろうか?

 一番危惧されるのは、ガイドラインに挙げられている「サービスの生産性向上」のうち、「効率の向上」ばかりが注目されて、「サービス提供プロセスの改善」、「IT利活用」に該当する補助事業、もっと噛み砕いていえば、業務効率化のためのIT導入という補助事業での応募が殺到することである。これは果たして「ものづくり」と言えるのだろうか?

 (5)補助対象外事業の条件の厳格化
 これは今年からではなく、正確に言えば平成25年度補正予算のものづくり補助金の2次公募から実施されていることなのだが、金額に関するルールが厳しくなっている箇所がある。公募要領のp6を読むと、「『補助対象経費』の各区分など(機械装置費、外注加工費・委託費、知的財産権等関連経費および機械装置費以外の経費)に設定されている上限を超える補助金を計上する事業」は補助対象外であると明記されている。

 これは、①革新的サービス&コンパクト型において、総額50万円(税抜き)以上の機械装置費を計上する、②外注加工費と委託費の補助対象経費(税抜き)の和が、補助対象経費総額(税抜き)の2分の1を超える、③知的財産権等関連経費の補助対象経費(税抜き)が、補助対象経費総額(税抜き)の3分の1を超える、④機械装置費以外の補助金申請額(税抜き)の和が、500万円を超える場合には、事業内容に関わらず、一発でアウトになることを意味する。特に④は要注意である。昨年も④に引っかかって不採択になったケースが相当数あったと聞いている。

 (6)機械装置費(設備投資)の重視
 (2)とも関連するが、設備投資が不要なのは、革新的サービス&コンパクト型のみで、残りの類型は全て設備投資が必要となる。設備投資が重視されていることは、公募要領のp8を見ても解る。平成24年度補正予算、平成25年度補正予算のものづくり補助金では、最初の費目は原材料費であった。ところが、今回は機械装置費が先頭に来ている。

 (5)の④を裏返すと、機械装置費以外の補助金申請額(税抜き)の和は500万円以下にしなければならない、ということになる。よって、革新的サービス&一般型とものづくり技術で、満額の1,000万円をもらうためには、機械装置費で500万円、それ以外で500万円の補助金を申請する必要がある。政府・経済産業省は何とか設備投資に誘導しようとしているみたいだ。これは単純に、「民間の設備投資が進めばGDPが上がるから」というのが第一の理由だろう。

 また、中小企業が設備投資をすると、機械メーカーは下請の部品メーカーへの発注を増やし、部品メーカーはさらに下請の部品メーカーへの発注を増やし・・・というふうに波及効果が得られるので、経済が活性化するという考えもあるに違いない(この辺りについては、以前の記事「【補助金の現実(5)】補助金の経済効果はどのくらいか?」を参照)。これが委託費や専門家謝金では、委託先の職員や専門家の報酬に消えて終わりだから、波及効果が少ない。

 (7)特定ものづくり基盤技術に「デザイン」を追加
 経済産業省では、日本の製造業の国際競争力強化に特に資する技術を指定している。ものづくり技術の類型で応募する際には、基盤技術と関連性のある試作開発であることが要求される。この基盤技術は2月9日(月)に見直しがあり、新たに「デザイン」が追加された。デザインにかかる技術は、公募要領のp27で次のように定められている。

 「製品の審美性、ユーザーが求める価値、使用によって得られる新たな経験の実現・経験の質的な向上などを追求することにより、製品自体の優位性のみならず、製品と人、製品と社会の相互作用的な関わりも含めた価値想像に繋がる総合的な設計技術」

 機能だけで製品を差別化することが難しく、これからはデザインが差別化要因になるという傾向を踏まえてのことだろう。だが、デザインにかかる技術だけで今回のものづくり補助金に応募することは多分できない。というのも、公募要領p6の補助対象外事業として、②主たる技術的課題の解決方法そのものを外注または委託する事業、③試作品等の製造・開発の全てを他社に委託し、企画だけを行う事業、が挙げられているからである。デザインだけを自社で行い、開発は外部に丸投げというパターン(いわゆるファブレス)は、補助事業の要件を満たさない。

 (8)「クラウド利用費」という費目の追加
 今回の最も大きな変更点は、これではないだろうか?補助対象経費として、「クラウド利用費」が追加された。公募要領を読むと、どうやら「ソフトウェア会社が、既に市販されているクラウド型のアプリケーションをカスタマイズして、オリジナルのクラウドサービスを開発する」というケースが想定されているようである。その際の、

 ・アプリケーション、サーバの利用料
 ・アプリケーションのカスタマイズ費
 ・専用アプリケーションの利用マニュアルの作成費

などが補助対象となる。マニュアル作成費については、「紙面、CD-ROM、DVD、ネット等の提供媒体の種類にかかわらず、400字につき3,000円を限度とする。また、この金額にはSEなどの人件費相当額を含むものとする」(公募要領p31)など、細かく規定されている。ただ、アプリ開発を外部に依頼する場合に、わざわざマニュアル作成費を別項目で見積もってくれるソフトウェア開発会社は少数派であろう。普段の取引ではそれでも問題ないが、ものづくり補助金に関しては、マニュアル作成費を別項目で切り出すように地域事務局から指導が入る可能性がある。

 「アプリケーションのカスタマイズ費」も「クラウド利用費」に入れてよいということだから、例えばある会社がクラウド型サービスの企画だけをやって、開発は外部のITベンダーに任せたとしても、その費用は全て「クラウド利用費」に計上できてしまう。ところが、(7)の②③で述べたように、技術的課題の解決を外部に丸投げする事業は補助対象外である。技術的課題の解決を自社中心でやっていることを示すためには、直接人件費を必ず計上するなど、工夫が必要である。


2015年02月06日

「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(5)


 平成27年度補正予算「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」の申請書の書き方に関する記事を公開しました。ご参考までに。

 「平成27年度補正ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金)」申請書の書き方(細かい注意点)
 《本シリーズを書くにあたって参考にした書籍》
実際の設計 改訂新版-機械設計の考え方と方法- (実際の設計選書)実際の設計 改訂新版-機械設計の考え方と方法- (実際の設計選書)
畑村 洋太郎 実際の設計研究会

日刊工業新聞社 2014-12-26

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 《これまでの記事》
 「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(1)(2)(3)(4)

 《申請書作成のステップ》
 1.環境分析を通じたターゲット顧客・製品コンセプトの設定
 2.競合他社との差別化要因の明確化
 3.新製品の潜在的な市場規模、目標とする市場シェア・売上高・価格
 4.顧客価値から要求機能への展開
 5.要求機能から機構・構造への展開
 6.機構・構造を実現するための技術的課題とその解決方法
 7.製品開発プロジェクトのタスク、スケジュール、体制
 8.製品開発プロジェクト後、事業化に向けた想定タスクとスケジュール


 6.機構・構造を実現するための技術的課題とその解決方法
 機構・構造が明らかになったら、その機構・構造に潜む技術的課題を特定し、解決策(案)を整理する。技術的課題は、個別の機構に含まれているかもしれないし、複数の機構を集約する組み立て方に含まれているかもしれない。いずれにしても、前述の思考展開図の中で、どこに技術的課題があるのかを番号などで明示し、図に続いて技術的課題と解決策の文章を記述するとよい(なお、下図には技術的課題の番号は含まれていない点をご了承いただきたい)。

 <図6(再掲):思考展開図(要求機能から機構・構造へ)>
4_思考展開図(要求機能から機構・構造へ)

 簡単な例だが、LANの障害対策における技術的課題と解決策をまとめたものを以下に示す(ちなみに、全て特許が取得されている技術である)。

 【課題①:障害救済】
 ループ方式は伝送路/ノードの一個所でも障害を起こすと、全体システムがダウンする。このため、障害が生じた時に救済できる構成にする。
⇒【解決策】
 ①-1.障害が生じたノードの直前で信号をループバックさせる。一般的には2重ループを構成し、予備ループを介してループバックをさせる。
 ①-2.障害ノードをバイパスする。
 ①-3.あらかじめ、迂回路を設けておき、障害が生じた時信号を迂回させる。
 ①-4.通常時はループ構成とし、異状時はバス構成とする。

 【課題②:複数障害対策】
 同時複数障害の時にも対応できるような構成にする。
⇒【解決策】
 ②優先順位をつけた複数の監視ノード間を再接続し、両者の連携により複数障害個所のループバックを行う。

 【課題③:障害位置の標定】
 障害救済の前提として、障害個所を特定する方法を確立する。
⇒【解決策】
 ③-1.一定時間異常キャリアを検出しない場合、自局アドレスを送出し、制御局で判定する。
 ③-2.擬似信号を用いて障害ノードを検出する。
 ③-3.障害を検出したら予備ループで各局に一斉に指令信号を送出し、各局が応答することにより複数障害ノードを標定する。

 【課題④:制御局の分散】
 障害時の制御等、ネットワーク全体の制御を行う制御局が一つの場合、この制御局の障害により、システム全体がダウンとなる場合がある。これに対処するための構成を行う。
⇒【解決策】
 ④-1.制御局の機能を代行する局を設け、同期制御を行う。
 ④-2.各局にタイマを設け、タイムアウト時に通信制御を行うことで、集中制御局を不要とする。

 以上のような形で、おおよそ3~5個程度の技術的課題を抽出し、現時点で考えられる解決策のオプションを列記する。技術的課題があまりにも多すぎると、審査員に「試作開発のハードルが高すぎるのではないか?」と思われて、点数が低くなる可能性があるから要注意である。絞り込まれた技術的課題に対して、解決策の候補をしっかりと検討していること、さらにその解決策は自社の既存の技術や組織能力を活用すれば実現可能であると示すことが重要である。

 7.製品開発プロジェクトのタスク、スケジュール、体制
 6で定めた技術的課題を解決し、試作品を完成させるためのプロジェクト全体のスケジュールを立案する。これは下図のような図(ガントチャート)を作成し、縦軸に記載したタスクについて、それぞれ具体的にどんな作業を行うのかを文章で記述すれば十分であろう。

 <図9:製品開発スケジュールの例(分子レーザー法ウラン濃縮技術開発)>
製品開発スケジュール例(分子レーザー法ウラン濃縮技術開発)

 (※ATOMICA「分子法レーザーウラン濃縮」より)

 スケジュールについて注意しておきたいのは以下の2点である。補助金の場合、「補助対象期間」と言って、「その期間に発生した経費について補助金の対象とする」という期間が設定されている。ものづくり補助金の場合はだいたい1年弱である。補助対象期間を1日でも過ぎた支払いに関しては、絶対に補助対象とならない。

 新製品開発プロジェクトは不確定要素が多いとの理由で、プロジェクトの完了を補助対象期間の終了日ギリギリに設定しているケースがよくあるが、これは危険である。人間というのは不思議なもので、余裕を持って完了日を設定したつもりでも、いざやってみると完了日に終わらず、プロジェクトが長引いてしまうものだ(エリヤフ・ゴールドラット『クリティカル・チェーン』を参照)。だから、補助対象期間の終了日ギリギリにプロジェクトが完了する計画ではなく、2~3か月程度前倒しで完了する計画にするとよい。実際にプロジェクトをやると、そのぐらいでちょうど帳尻が合う。

クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?
エリヤフ ゴールドラット 三本木 亮

ダイヤモンド社 2003-10-31

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 もう1つの注意点は、補助金で実施する製品開発プロジェクトは、思ったほど早く始められないということだ。まず、応募が締め切られてから採択企業が発表されるまでに、だいたい1か月ぐらいかかる。しかも、採択されたからと言って、すぐに原材料や機械装置などの発注をかけられるわけではない。採択後に「交付申請」という手続きが必要であり、これが最長で2か月ほどかかる(交付申請については、以前の記事「【補助金の現実(1)】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない」を参照)。

 よって、仮に3月末が公募の締切だとすると、結果発表は4月末、そして、交付決定が下りるのは下手すると6月末ということになる。交付決定が遅くなれば、その分補助対象期間が短くなる。1つ目の注意点で、プロジェクトの完了予定日が2~3か月ほど繰り上がるから、それと合わせて考えると、製品開発スケジュールは初めから相当タイトに組まなければならないことになる。

 プロジェクト体制図のイメージを下図に示した。ただ、この手のプロジェクト体制図は、多くのメンバーが関与するシステム開発の現場では一般的であるものの、人数が限られている中小製造業では、図にせよと言っても図にならないことがほとんどだろう。

 ものづくり補助金の申請書が要求する体制図で重要なのは、社内の人員の情報というよりも、協力してくれる外注加工先や委託先、技術指導者や専門家に関する情報であると思う。外部ノウハウの活用予定について明記すれば、プロジェクトの成功確率の高さを審査員に印象づけることができる(ただし、あまりに外部関係者が多い場合は、技術的課題の解決を丸投げしていると思われて、補助金の応募要件を満たさなくなってしまうため、やりすぎには要注意である)。

 <図10:プロジェクト体制図>
プロジェクト体制図

 (※ZDNet Japan「MindManagerで「見える化」実践! スマートなプロジェクト管理(3)--仲間と仕事の地図を共有しよう!」〔2007年11月12日〕より)

 8.製品開発プロジェクト後、事業化に向けた想定タスクとスケジュール
 申請書には、試作品が完成して補助事業が終了した後、どのように事業化まで持っていくのか、そのスケジュールも記述が求められる。このスケジュールは、3で設定した目標シェア、顧客数、顧客単価、売上高と整合性が取れていなければならない。

 とはいえ、試作品開発プロジェクトでさえ何が起こるのか解らないのだから、その後の中長期的なスケジュールを書くのはなかなか難しい。最低限書くべきタスクとしては、追加で実施する市場調査、追加で実施する試作開発、量産試作、生産ライン立ち上げ~量産実施、営業・販売活動などであろう。これらのタスクをいつ実施するのか、7と同様にスケジュール表を作成する。下図は、プロモーション活動に関するスケジュールの例である。

 <図11:事業化スケジュール(プロモーション活動)>
事業化スケジュール

 (※「東京広告専科〔アイムアンドカンパニー株式会社〕」HPより)

 (終わり)

《2015年4月17日追記》
 申請書のフォーマットには、補助事業終了後の5か年計画を記入する表がある。「「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(4)」の「3.新製品の潜在的な市場規模、目標とする市場シェア・売上高・価格」に従って将来の目標売上高を設定し、コストを見積もって利益を算出するわけだが、経常利益が「営業利益-営業外利益」で定義されている。これはフォーマットのミスではなく、ものづくり補助金における経常利益は、「本業での利益」に近い概念でとらえられていることを意味する。

 中小企業の中には、営業損益を営業外収入で補って経常利益を出しているケースがある。しかしながら、営業外収入は本業以外の収入であるから、それによって経常利益が出ていても本業が強いとは言えず、そのような事業計画を審査の段階で高く評価することはできない。よって、ものづくり補助金における経常利益からは、営業外収入が除外されている。

 一方、営業外費用の大部分は支払利息である。事業を行う上では借入金が必要であり、借入金があれば支払利息は不可欠である。借入金にかかる支払利息は、実質的に本業での費用と考えることができる。そのため、ものづくり補助金における経常利益の算出にあたっては、営業外費用を差し引く。以上のような操作によって、より実態に近い「本業での利益」を算出しようというのが、このフォーマットの意図であると考える。


ものづくり補助金_5か年事業計画




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