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東京都の中小企業向け補助金・助成金など一覧【平成29年度】
中小企業向けの補助金・助成金を検討されている皆様へ(リスクを覚悟しましょう)
【東京都補助金】受注型中小製造業競争力強化支援事業(予算:4.18億円)

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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2017年07月10日

東京都の中小企業向け補助金・助成金など一覧【平成29年度】


商売繁盛

 (一社)東京都中小企業診断士協会の理論政策更新研修に参加してきた。この研修は2コマ構成なのだが、1コマ目は必ずその年度の中小企業政策を学習する時間となっている。今回は、東京都が平成29年度に実施する中小企業振興施策について、東京都産業労働局商工部の担当者から説明があった。東京都が中小企業振興施策のために持っている予算は約4,600億円だという。ただし、そのうち約700億円は観光、雇用・就労支援、農業のための予算であり、残り約3,900億円のうち約8割は制度融資のために都内の金融機関に貸し付けているものであるから、純粋に中小企業支援のために使われる予算は約600億円となる。それでも、中小企業庁の予算がだいたい1,500億円程度であるから、いかに東京都がお金を持っているかが解る。

 以下、研修の中で紹介があった主要な中小企業振興施策を列記する。70の施策があるが、実際にはこの倍ぐらいの施策があるそうだ。可能な限り、関連リンクをつけておいた。ただし、古い情報のページも混じっているため、随時最新情報をチェックしていただきたい。補助金・助成金は「●」、専門家派遣が中心のものは「◇」、相談窓口サービスが中心のものは「▽」で示した。

 【経営革新支援】
 ○経営革新計画
 ●団体向け課題解決プロジェクト支援事業

 【経営安定支援】
 ▽小規模企業対策(地域持続化支援事業)
 平成27年度から都内6か所に支援拠点を整備し、小規模事業者が抱える事業承継などの課題解決を支援するとともに、商工会や商工会議所が取り組む地域ブランド開発などの事業を促進し、地域全体の活性化を実現する。平成29年度は多摩・島しょにおける支援を充実。
 ◇中小企業活力向上プロジェクト
 ▽取引改善指導(ADR)
 ●受注型中小企業競争力強化支援事業
 ●新・目指せ!中小企業経営力強化事業
 ◇東京都BCP策定支援事業
 ○団体向けリスクマネジメント普及啓発事業【新規】
 ▽事業承継・再生支援事業
 ●技術・技能承継事業
 ▽中小企業サイバーセキュリティ対策の普及促進
 中小企業をサイバー空間の脅威から守るため、警視庁や各中小企業支援機関と連携し、平成28年度から相談窓口を設置するなどサイバーセキュリティ対策の普及促進を実施。東京五輪を控え、中小企業自らがサイバーセキュリティの重要性を実感し、早急な対策に取り組むことができるよう、企業1社1社への働きかけを強化する。
 ●中小企業における危機管理対策促進事業【新規】

 【販路開拓支援】
 ○東京ビッグサイトの拡張整備
 ○中小企業グローバル連携促進事業
 ▽海外販路開拓支援事業
 ▽都内中小企業の海外への魅力発信事業
 平成27年12月、東京都中小企業振興公社タイ事務所が業務を開始し、現地において経営相談やマッチングなどを実施。引き続き、都立産技研バンコク支所、タイ工業省、カシコン銀行などと連携し、都内中小企業の海外展開を現地できめ細かくサポート。
 ○海外展開人材育成事業
 企業の現状や発展段階に合わせて、貿易実務者養成講習会、国際化対応リーダー養成講座を開催し、中小企業の海外展開に資する人材の育成を総合的に支援。
 ○アジア特別商談会
 ○医療関連機器等の海外展開支援【新規】
 海外市場におけるPR(世界最大級の医療機器展示会「COMPAMED」への出展など)やビジネススキル・ノウハウの取得支援を実施する他、現地政府機関や企業、産業クラスター、研究機関などとの連携によるネットワークの構築を図る。
 ○産業交流展
 ○地域連携型商談機会創出事業

 【ネットワークづくり支援】
 ○広域多摩イノベーションプラットフォーム
 ○広域産業交流・連携の促進
 埼玉県、千葉県、神奈川県、横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市、相模原市の近隣8県市と共同で、年1回、中小企業と大企業による商談会を実施する。
 ○被災地等中小企業ビジネス革新支援事業
 都内および被災県等中小企業と、東日本を中心とした大企業開発試作部門との連携を促進することで、被災県の産業を立て直すとともに、都内産業の活性化を図る。
 ●新事業分野創出プロジェクト

 【技術支援】
 ●新製品・新技術開発助成事業
 ●製品開発着手支援助成事業
 ○ものづくりイノベーション企業創出道場
 ▽知的財産総合センターの運営
 ●知財戦略導入支援事業(ニッチトップ育成支援事業)
 ○知的財産活用製品化支援事業
 ○デザイン活用への支援
 ●次世代イノベーション創出プロジェクト2020
 ●成長産業分野の海外展開支援
 ●先進的防災技術実用化支援事業
 ●海外展開技術支援事業
 ○生産性向上のための中核人材育成事業
 ●革新的事業展開設備投資支援事業【新規】
 ○未来を拓くイノベーションTOKYOプロジェクト【新規】
 東京には世界屈指の大企業が拠点を有しているが、現状では大企業と中小・ベンチャー企業の連携は低調である。今後、広く中小企業全体に波及効果をもたらすイノベーションを創出するため、リーディング企業、ベンチャー・中小企業を巻き込んだオープンイノベーションを活用して、新製品・新技術開発や新事業への展開を促す仕組みの構築に向けた調査・検討を実施(平成30年度から採択プロジェクトへの支援を予定)。

 【創業支援】
 ○次世代アントレプレナー育成プログラム
 ○インキュベーション施設の運営
 東京コンテンツインキュベーションセンター(中野区)、ベンチャーKANDA(千代田区)、白鬚西R&Dセンター(荒川区)、ソーシャルインキュベーションオフィス・SUMIDA(墨田区)、タイム24ビル内創業支援施設(江東区)、青山創業促進センター(通称:青山スタートアップアクセラレーションセンター、渋谷区)、インキュベーショオフィス・TAMA(昭島市)の運営。
 ●インキュベーションHUB推進プロジェクト
 ○青山創業促進センターの設置・運営
 ●ライフサイエンス系ベンチャー支援
 ●創業活性化特別支援事業
 ▽創業支援拠点の運営
 ○東京都ベンチャー技術大賞
 ○多摩ものづくり創業の促進【新規】
 ○グローバル・ベンチャー創出プラットフォーム【新規】
 海外で成功するベンチャー企業を育成するために、海外のベンチャーキャピタルや大企業とのビジネスマッチングを重視する。
 ○女性ベンチャー成長促進事業【新規】
 国内外でトップベンチャーとして活躍する女性ベンチャーのモデルケースを輩出することを目的に、社会課題の解決やグローバル市場への進出など、スケールアップする可能性の高い事業ビジョンを持つ女性起業家を支援する。

 【地域工業の活性化】
 ○産業立地情報収集・提供事業
 ●産業集積活性支援事業
 ●都内ものづくり企業立地継続支援事業
 ●ものづくり企業グループ高度化支援事業
 ●地域の魅力を活かした新ビジネス創出事業【新規】
 ▽東京都企業立地相談センター業務委託事業【新規】
 今後、都内へ立地を希望する企業に対し、立地に関するよりきめ細やかな情報や適切なアドバイスをワンストップで提供できるよう、相談センターを設置する。

 【地域商業の活性化】
 ●商店街への支援
  -商店街補助事業
  -政策課題対応型商店街事業
  -商店街グランプリ
  -広域支援型商店街事業
  -進め!若手商人育成事業
 ◇商店街ステップアップ応援事業
 ●商店街空き店舗活用モデル事業
 ●商店街起業・承継支援事業
 ●若手・女性リーダー応援プログラム

 【総合的支援】
 ▽中小企業ニューマーケット開拓支援事業
 ○新事業分野開拓者認定・支援事業
 ●航空機産業への参入支援
 ●医療機器産業への参入支援
 ○東京発「クールジャパン」の推進
 東京の「クールジャパン」を世界へ発信・浸透させ、東京の産業力とブランド力の強化を図る。
 ○中小企業世界発信プロジェクト
 ○中小企業新サービス創出事業
 ●障害者スポーツ用具開発の促進【新規】
 東京2020パラリンピック競技大会に向けて、中小企業や地域が取り組む障害者スポーツ用具などの開発を支援。障害者スポーツ用具の開発が活性化され、中小企業の同用具市場さらには福祉機器市場への参入にもつなげていく。

 【試験研究機関】
 ●ロボット産業活性化事業
 ●中小企業へのIoT化支援事業【新規】

 ここからは余談。理論政策講師研修の2コマ目は「中小企業の海外展開支援」であったが、これが最悪であった。私の知り合いに海外経験が豊富な診断士の先生がいて、一部の「国際派」診断士なる人たちを非常に毛嫌いしている(まず、「国際派」の意味が解らないと言う)。彼らが勉強会や会合を開くと、何十年も前に海外で自分が経験したことを、「私が○○にいた頃の話『では』・・・」などと言って、永遠と自慢話を続けるそうだ。「国際派」診断士に対して否定的なその先生は、彼らのことを「出羽山地の神々」をもじって「ではの神」と揶揄している。

 研修の前日にその先生に会う機会があって、「明日、理論政策更新研修で、○○先生の『中小企業の海外展開支援』を聞くことになっている」と話したら、その先生は「それは一番最悪な講師だ。絶対にFOBとかL/C(信用状)とかの話をするに決まっている」とおっしゃった。案の定、蓋を開けてみたら、2時間半の研修のうち、大半はFOBやCIF、L/C、NEXIなど貿易実務の話であった。この程度の知識なら、貿易実務をやったことがない私でも知っている。それに、我々はそもそも診断士であって、貿易業務のプロを目指しているわけではない。

 診断士が関心を持っているのは、あくまでも経営の話である。例えば、輸出をする際には、どういう視点でターゲット市場を評価すればよいのか、展示会で効果的に見込み客のリストを集めるにはどうすればよいのか、販売店・代理店はどうやって見つけるのか、販売店・代理店の信用評価はどのようにして進めるのか、販売・代理店の育成、モニタリングはどうやって実施するのか、代理店とトラブルになったらどう対処すればよいのか、といったことを聞きたかった。もしも講師がこれらの論点に答えられないなら、「海外展開支援を専門としている」などと言ってほしくない。

 それに、輸出というのは、中小企業の海外展開の一面でしかない。神奈川県が実施した「海外展開している又は計画がある県内中小企業の動向調査」によると、最も割合が高い進出形態は「現地生産」である。「輸出」が2位、3位にあるが、4位には「販売拠点の設置」がランクインしている。これは、中国、ASEANなど、従来はコスト削減のための生産拠点として見てきた国が経済成長し、有望な市場としても評価できるようになったという事情を反映している。

海外展開している(した)進出形態

 ややデータが古いが、中小企業庁『中小企業白書(平成22年版)』によると、直接投資企業は、輸出企業と比較して、「人材確保・労務管理」や「投資費用の調達・資金繰り」といった人材面や資金面の課題を挙げる割合が高くなる傾向が見られる。

国際化における課題

 さらに、日本政策金融公庫『中小企業の海外進出に関する調査結果』(2012年5月)を見ると、海外直接投資先の経営課題(複数回答)として「外国人従業員の教育や労務管理が難しい」が製造業で1位、非製造業で2位になっている。とどのつまり、直接投資の場合は、人材マネジメントが中小企業にとって最大の経営課題となっていると言える。

海外直接投資先での経営課題

 人材マネジメントに関する経営課題を細分化すると、様々な問題が出てくると思う。現地の労働法が複雑で対応に苦労する、当局とのやり取りが煩雑である、政府の裁量で最低賃金がどんどん上昇し収益が圧迫される、ワーカーやスタッフの育成が難しい、仕事に対する意識が日本人と違いすぎて、日本人の指示通りに仕事をしてくれない、せっかく育成しても給与が高い企業にすぐに転職してしまう、ちょっとでも労働条件が悪いと感じるとストライキをちらつかせてくる、労働組合との対立が深刻である、ローカル社員の不正に悩まされている、リーダー・マネジャークラスの人材が育たない、ハイクラスの人材を外部から採用しようとしても適材がいない、経営の現地化が進まず、いつまでも日本人駐在員を引き上げられないなど、挙げればきりがない。

 進出国の最新事情を考慮に入れつつ、かつこれらの課題に対応しながら、現地企業が持続可能な成長を遂げるためにどうすればよいかアドバイスするのが診断士の仕事というものではないだろうか?そういう仕事ができるようになるために、我々は研修を受けているのである。そうでなければ、理論政策「更新」研修は、「知識の更新」にならない。


2016年11月02日

中小企業向けの補助金・助成金を検討されている皆様へ(リスクを覚悟しましょう)


お金

 安倍政権になってから補正予算などによって中小企業向けの補助金・助成金(以下、単に補助金とする)が増加しており、これらの制度の利用を検討している企業も多いと思う。個人的には、補助金はリスクマネーであると考えている。すなわち、優れたアイデア・技術を持ちながら、外部環境の急激な変化によって一時的に経営難に陥り、金融機関の通常の審査では融資を受けることが難しい企業に対して、資金を供給するのが補助金である。言い換えれば、市場の失敗をカバーする役割を持つ。苦境に陥っている中小企業の救済が目的であるから、本来的には迅速に補助金を支払い、中小企業の創意工夫によって補助金を自由に使わせるのが筋である。

 ところが、実際にはそのようになっておらず、補助金がかえって経営の足かせになる場合があるので、注意が必要だ。まず、補助金は交付を受けるまでに時間がかかる(「交付を受ける」とは補助金がもらえることではない。多くの補助金は、使用した経費の事後精算であり、「交付を受ける」とは、事後精算時に最大いくらまで補助金をもらうことができるのか、その権利を付与されたものととらえるべきである)。金融機関から融資を受ける場合には、事業計画を提示してから通常は1~2か月で資金が振り込まれる。だが、補助金の場合はそうはいかない。

 例えば、近年の補助金の目玉の1つである「ものづくり補助金」を例にとると、2~3月に公募が始まり、5月に締切となる。その後審査が行われ、6月末ぐらいに採択結果が公表される。採択されたからと言ってすぐに事業を開始することはできない。公募の次に交付申請というもう一段階別の審査を受ける必要があり、最終的に交付決定が下りるのは7月末ぐらいになる。交付決定を受けると、ようやく事業を開始することができる。そうすると、2月に事業計画を作成しても、7月末までの約5か月間、事業計画が塩漬け状態になることを意味する。早く事業を開始して経営難から脱したい企業としては、これは非常にリスキーである。

 補助金は事後精算であると書いたが、補助金をもらうためには、購入物に関連する各種伝票類を漏れなく揃える必要がある。その事務処理が非常に大変である。この点については、以前の記事「【補助金の現実(2)】補助金の会計処理は、通常の会計処理よりはるかに厳しい」でも書いた。通常の取引であれば、見積書や注文書を何度かやり取りしているうちに、見積書の日付が注文書の日付より新しくなることがある。税務署はこの点を全く問題視しないのだが、補助金ではNGとなる。見積書の日付は注文書の日付より古い日付でなければならず、もしそうなっていなければ見積書を取り直すか、注文書を再作成する必要がある。

 日付の矛盾だけでなく、金額の矛盾にもうるさい。細かい原材料を何種類も一度に購入した場合などに起こるのだが、消費税の計算がメーカーと中小企業によって若干異なる場合がある。請求書の金額と実際に支払った金額が1円違っていたりする。これも、税務署ならば全く気にしないが、補助金ではその1円の違いを説明させられる。「消費税計算の四捨五入の考え方の違いで1円異なっており、メーカーもその差異について了承している」という文書を作成しなければならない。あまりに事務処理が大変なので、「事務処理用に社員をもう1人雇わなければならない」と悲鳴を上げる中小企業もあるくらいだ。事務処理のために、本来業務が圧迫されるリスクがある。

 金融機関からの融資の場合、申請した資金使途に反していなければ、借りたお金を自由に使うことができる。これに対して、補助金の場合は資金使途などに関して細かいルールがたくさん定められている。そのルールを無理やり中小企業に適用すると、組織がおかしくなる危険性がある。ものづくり補助金に関しては、以下のような話を聞いたことがある。

 ものづくり補助金では、外注加工費を補助対象経費総額の2分の1以下にしなければならないというルールがある。ある中小企業は外注先を使って新しいソフトウェアを開発しようとしたが、普通に計算すると外注加工費が経費総額の2分の1を超えてしまう。そこで、一時的に外注先からその企業に社員を出向させたという形にして、直接人件費として処理した。また、別のある企業はソフトウェアの内製を検討していた。平成27年度補正予算のものづくり補助金からは直接人件費が補助対象経費から外れたため、このままでは補助金が受けられない。そこで、社員を辞めさせて個人事業主にし、その社員に発注することで、補助金のスキームに乗せたという。こういうケースで最も不幸なのは、企業側の都合で出向させられたり、退職させられたりした社員である。

 安倍政権になってから、日本の開業率をアメリカ・イギリス並みの10%に引き上げるという目標が掲げられており、創業支援にも力が入っている。創業希望者を支援する企業・団体向けの「創業支援事業者補助金」という制度がある。補助金を受けた支援事業者は、創業希望者に対して窓口相談業務を提供したり、創業・経営に必要な知識を学ぶセミナーを開催したりする。

 この補助金では、支援事業者の直接人件費も補助対象になっているのだが、要件として、「新たに採用した社員の人件費」を補助対象とすると定められている。創業支援事業者補助金は、地方自治体が定めた3~5年の「創業支援事業計画」と連動した補助金であり、毎年公募が行われる。すると、継続的に補助金を受けたいと考える支援事業者は、毎年新たな社員を採用しなければならない。おそらく、創業は雇用を生み出すものだから、支援事業者も同じように雇用を生み出すべきだという考え方が背景にあるのだろう。しかし、この事業のために毎年新たに社員を採用するのも大変である。そこで、ある団体では、1年だけ社員と雇用契約を結び、翌年は別の社員とまた1年だけ雇用契約を結ぶ、ということを繰り返していると聞く。

 私は以前、公益財団法人東京しごと財団が実施する「高齢者職域拡大モデル事業」という補助金の申請支援をしたことがある。これは、高齢者を活用した新たなビジネスモデルに対して補助金が出るというものである。私が支援させていただいたのは、主に高齢者向けの健康関連製品を販売する企業であった。高齢者のニーズをよく解っているのは高齢者自身であるから、高齢者を販売員とする新しい販売モデルを構想した。具体的には、販路開拓のために、地方にある代理店に向けて新たな教育プログラムを整備することとした。ところが、補助金の要件が「都内で雇用すること」となっている。そこで、地方の代理店で販売員を採用し、補助金を受ける間は東京の本社に出向させ、教育が完了したら元の代理店に帰任するというモデルを描いた。

 しかし、入社後いきなり出向させられることを条件に入社を決める社員などいないし(ましてそれが高齢者となればなおさら難しい)、本社側も出向者受け入れ期間中の家賃などを負担しきれないということで、結局は申請を見送った。企業側の担当者は当初、「この補助金が自社にぴったりだ」と熱が入っていたのだが、かなり無理をして補助金のスキームに当てはめようとしていたため、申請を断念してよかったと私は思っている。

 以上のような話があるため、現行の補助金制度は、リスクマネーの迅速な供給という本来の役割を果たしていないと感じる。補助金に頼ると、事業がなかなか開始できない⇒事務処理に時間がかかり本業に集中できない⇒業績が回復しない⇒再び補助金に頼るという、魔のループに陥る恐れがある。だから、私が中小企業を支援させていただく際には、私の方から積極的に補助金を勧めることはない。やはり王道は、金融機関から融資を受けることである。一時的な経営難により通常の審査では融資を受けることが難しいのであれば、金融機関の心証をひっくり返せるような納得性の高い事業計画を練り上げることに時間をかける。補助金の事務処理やルール遵守(ルールのすり抜け?)に振り回されるより、そちらに頭と時間を使うべきだと思う。

 《余談》
 以前の記事「「開業率アップ」を掲げながら創業補助金には及び腰になった中小企業庁」で、補助金の適正規模について触れ、直観的に「1%」という数字を使った。創業補助金であれば、毎年の創業者数の1%、ものづくり補助金であれば、その年に新製品開発をする中小製造業の1%といった具合だ。この「1%」にもっともらしい説明をつけるとすれば、次のようになる。

 前述の通り、補助金の本来の役割は市場の失敗をカバーすることである。個人の世界において、市場の失敗をカバーする役割を持つのは生活保護である。生活保護の受給率は約1.7%である。ただし、生活保護の場合は、本来生活保護を受ける資格があるにもかかわらず、何らかの事情で生活保護を受けていない人がいる。日本の場合は特にその数が多いと言われる。そこで、本来生活保護を受ける資格がある人のうち、実際に生活保護を受けている人の割合のことを捕捉率と呼ぶ。日本の場合、捕捉率は15.3~18%である。この数字を基に、生活保護を受ける資格がある人の割合を計算すると、約26~31%となる。

 生活保護の場合は、憲法25条で生存権が保障されており、生まれたからには生きる権利があるから、保護対象が広くなるのは当然である。一方、企業の場合は、ゴーイングコンサーンという言葉はあるものの、企業が永続的に存続する権利はない。仮に市場が失敗したとしても、市場から退出しなければならないケースもある(その代わり、やり直しがきく)。そこで、本当にカバーすべき市場の失敗を、生活保護よりも相当辛く見積もって1%としたわけである。

 中小企業向けの補助金を生活保護と同列で論ずることには異論もあるに違いない。だが、生活保護を受けている人は、そのことを堂々と宣言せず、どこか後ろめたさを感じているのと同様に、補助金を受けている中小企業も、同じような後ろめたさを感じている部分があるのではないかと思う。ある企業は、補助金を使って開発した製品のパンフレットに、経済産業省の補助金を受けたことを記載することで、経済産業省の”お墨つき”をもらったとアピールしたがっていた。しかし、「経済産業省 ○○補助”金”事業」と書くのは嫌だという。そこで、「経済産業省 ○○補助事業」と書くことにした、という話を聞いたことがある。


2014年07月09日

【東京都補助金】受注型中小製造業競争力強化支援事業(予算:4.18億円)


 東京都が平成24年度から力を入れて実施している補助金が、「受注型中小製造業競争力強化支援事業助成金」である(窓口は、東京都中小企業団体中央会)。下請型の中小製造業に限定されるが、1社あたり最高で1,500万円の補助金が出る。今年度から使い勝手をよくするため、補助率が2分の1から3分の2に引き上げられた。

 本事業には4.18億円の予算が計上されている(※1)。1社あたりの補助金平均額が1,000万円とすると、全部で約42社ほど採択される見込みである。東京都の中小製造業は約5万社(※2)、中小製造業に占める下請企業の割合は18.6%(※3)であるから、都内の中小下請製造業は約9,300社と推計される。私の直観的な「1%理論」(※4)に従えば、補助金の投資対効果が表れるには約93社を支援する必要がある。よって、もう少し予算規模が大きくてもよい気がするが・・・。

(※1)東京都「「平成26年度 東京都予算案の概要」について」6.主要な施策を参照。
(※2)産業労働局「平成24年度 東京の中小企業の現状―製造業編―」第1章を参照。
(※3)中小企業庁「下請中小企業の現状と今後の政策展開について」を参照。
(※4)以前の記事「「開業率アップ」を掲げながら創業補助金には及び腰になった中小企業庁」を参照。

■概要:
 自社の技術の高度化・高付加価値化に向けた技術開発に要する経費の一部を助成。

■対象者:
 ・東京都内に主たる事務所または開発実施場所を持ち、平成26年4月日現在で引き続き2年以上事業を営んでいる中小企業者など(会社・個人事業者・組合など)
 ・上記中小企業者などを代表企業(申請者)とする中小企業グループ

■対象事業:
 本事業で指定する「ものづくり基盤技術」(下記参照)を用いて、自社の技術力の高度化や高付加価値化に向けた技術開発を行う事業。

 《取組例》機械・器具・装置の高度化、生産・加工法の高度化、IT化・デジタル化などによる技術・技能のシステム化。
 《ものづくり基盤技術》
 組込みソフトウェア、金型、冷凍空調、電子部品・デバイスの実装、プラスチック成形加工、粉末冶金、溶射・蒸着、鍛造、動力伝達、部材の締結、鋳造、金属プレス加工、位置決め、切削加工、繊維加工、高機能化学合成、熱処理、溶接、塗装、めっき、発酵、真空。

 本事業は、機械の部品製作や受注加工を行う下請企業の技術開発等を対象としており、自社ブランドの最終製品の販売を目的とした試作開発等は対象外である。

■助成金額:1,500万円以内

■助成率:助成対象経費の3分の2以内

■助成対象経費:
 原材料費、機械装置・工具器具費、委託・外注加工費、産業財産権出願・導入費、技術指導受入れ費、展示会出展・広告費など。

■募集予定(予算がなくなり次第終了):
 <第1回募集>
 募集申請受付期間:平成26年4月1日(火曜)~平成26年4月24日(木曜)
 助成対象期間:平成26年7月1日(火)~平成27年9月30日(水曜)

 受付終了しました。

 <第2回募集>
 募集申請受付期間:平成26年5月1日(木曜)~平成26年6月25日(水曜)
 助成対象期間:平成26年8月1日(金曜)~平成27年10月31日(土曜)

 受付終了しました。

 <第3回募集>
 募集申請受付期間:平成26年7月1日(火曜)~平成26年8月26日(火曜)
 助成対象期間:平成26年10月1日(水曜)~平成27年12月31日(木曜)

 <第4回募集>
 募集申請受付期間:平成26年9月1日(月曜)~平成26年10月17日(金曜)
 助成対象期間:平成26年11月1日(土曜)~平成28年1月31日(日曜)



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