このカテゴリの記事
『正論』2018年6月号『安倍”悪玉”論のいかがわしさ/シリア攻撃 揺れる世界』―政治家やメディアが国民に迎合したら民主主義は終わる
『正論』2018年5月号『策略の朝鮮半島/森友”改竄”の激震/新たなる皇帝の誕生・・・』―南北統一で「金氏朝鮮」が成立する可能性、他
『世界』2018年2月号『反貧困の政策論』―貧困を解決するには行政がもっと市場に介入して消費者にお金を使わせればよい、他

お問い合わせ
お問い合わせ
プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都豊島区を拠点に、東京23区で活動する中小企業診断士(コンサルタント・トレーナー)。コンサルティングなどの仕事の実際の中身は守秘義務の関係で書くのが難しいため、書評が中心となっている点は何卒ご容赦あれ。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
所属組織など
◆個人事務所「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ


(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

アクセスカウンター(PV)
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:


Top > 北朝鮮 アーカイブ
2018年05月15日

『正論』2018年6月号『安倍”悪玉”論のいかがわしさ/シリア攻撃 揺れる世界』―政治家やメディアが国民に迎合したら民主主義は終わる


正論2018年6月号正論2018年6月号

日本工業新聞社 2018-05-01

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 森友学園に対する国有地売却をめぐる財務省の決裁文書が改竄された疑いがあると朝日新聞が報じたのが3月2日である。「安倍晋三の葬儀はうちで出す」を”社是”としている朝日新聞が、本気で安倍政権を潰しにかかってきている証拠であった。しかし私は、率直に言うと、語弊があるかもしれないが「朝日新聞が余計なことをしてくれた」と感じていた。

 この問題に関しては、首相や明恵夫人の働きかけの有無が焦点であったが、1年経ってもめぼしい証拠は出てこず、野党が憶測で安倍首相を攻撃しているだけで、正直に言えば「どうでもよい問題」であった(事実、改竄前の文書によって、首相や明恵夫人の関与がないことがより明白になった)。そのどうでもよい問題をめぐるどうでもよい答弁に合わせるために、財務省が余計な忖度をして決裁文書を改竄したわけである。そして今度はこの改竄問題をことさら大きく取り上げて、麻生財務大臣の管理監督責任だの、安倍首相の任命責任だのと言い出した。この朝日新聞の報道によって、しばらくメディアと国会はこの問題一色になると容易に予測できた。

 3月5日に、韓国の文在寅大統領の特使である鄭義溶国家安全保障室長が訪朝して、北朝鮮の金正恩委員長と会談した。その会談では、4月末に南北朝鮮軍事境界線に位置する板門店の韓国側施設「平和の家」において南北首脳会談が行われることが合意された。これを受けて、ソウルへ戻った鄭義溶氏は、文在寅大統領に金正恩委員長との会談結果を報告した後、3月8日に文在寅大統領の特使としてアメリカへ渡航し、トランプ大統領に対して、「金正恩委員長がアメリカ合衆国大統領と会談したい意向がある」という金正恩委員長からのメッセージを伝えた。トランプ大統領は、「金正恩からの要請に応じよう」と答え、史上初の米朝首脳会談が実現することになった。朝鮮半島情勢は急転直下の展開を見せていた。

 北朝鮮が対話に応じる姿勢を見せてきたのは、最大限の経済制裁が効果を表したからである。北朝鮮の窓が少し開いたその隙に、日本はどうやって北朝鮮との対話を探るのか?アメリカ、韓国、それから中国やロシアといった関係諸国とどのように連携を取って北朝鮮の非核化を実現するのか?会談が破談してアメリカが北朝鮮に軍事攻撃を加えるという緊急事態が生じた場合を想定して、日本はいかなる準備をしておくべきか?さらに日本の場合は、積年の課題である拉致問題をこの機会にどう解決へと導くのか?といったことを、超党派的に大いに議論すべきであった。ようやく課題解決のスタートラインに立ち、課題解決の長いマラソンが始まるはずであった。ところが、朝日新聞の余計な横槍のせいで国会は空転し、スタートでいきなりつまずいた。金正恩委員長には、「拉致問題については周辺国があれこれ言ってくるが、肝心の日本がなぜ直接言ってこないのか?」と暴露され、安倍政権と外務省は赤っ恥をかいた。

 朝日新聞が北朝鮮問題という日本国家を揺るがしかねない問題よりも、財務省の決裁文書改竄問題という国民にとって受けがよい問題を優先した結果がこれである。しかも、朝日新聞はこうした事態を自ら招いておきながら、日本が北朝鮮問題で孤立していると呑気に批判する。
 (※朝日新聞の)ツイッターは北朝鮮の労働新聞が安倍政権を「退陣直前の状況」と評したことに触れ、「安倍政権にとって『嘘つき内閣』という非難よりも手痛いのは『退陣直前』という分析だ。国交正常化を見据え、腰を据えて交渉する相手と見なされていないのだ。米中露韓の現政権はしばらく倒れない。日本だけこんな内閣では激動の東アジア外交でますます出遅れる」(3月31日)と書いている。
(石川水穂「朝日新聞”倒閣”記者ツイッターを告発する」)
 販売部数至上主義に陥っている新聞、視聴率至上主義に陥っているテレビは、国家や国民をめぐる数多くの問題の中から、読者や視聴者が理解しやすい簡単な問題を選択する傾向が強い。野党もそういうマスコミを利用して、その簡単な問題の責任は政権にあるとすぐに騒ぎ立て、政権を打倒しようとする。マスコミは立法、司法、行政に次ぐ第4の権力、あるいは権力の監視者であるべきなのに、今や単なる野党の広告塔に成り下がっている。
 分かりやすく「手柄」を引き出そうとするパフォーマンスも、真相を煙に巻く結果をもたらした。野党議員に聞いたことがあるが、国会質疑においては、どれだけマスメディアに取り上げられるかも重要な要素らしい。それによって、党幹部から評価されて、党内での地位が上がる。とすると、翌朝の新聞の見出しを頭に思い浮かべながら「切り取りやすい一言」狙いをするという野党の戦略も出てこよう。共産党の小池晃書記局長は、この手の国会質問が非常に巧みだ。(中略)小池氏は、さしずめ、「国会の一言炎上男」だろう。
(山口真由「ピント外れの国会審議 もう1つのモリカケ問題」)
 小池氏は3月19日の参議院予算委員会で、明恵夫人の名前が決裁文書に記載された点について太田充理財局長に問いかけ、「基本的に総理夫人だからだと思う」という答弁を引き出した。その上で、「重大な発言ですよね。重大な発言ですよ。総理夫人なんですよ。まさに、国会議員以上に配慮しなきゃいけない存在なんですよ。だから決裁文書に登場してきているわけじゃないですか」と返した。そして、マスコミは小池氏のこの「重大な発言ですよ」の部分を切り取って繰り返し報じた(私はこの頃入院しており、日中よくテレビを観ていたのではっきり覚えている)。

 私が言うまでもないが、マスコミは国民にとって解りやすいイシューではなく、国民や国家にとって重要なイシューを扱うべきである。販売部数/視聴率至上主義を捨て去り、もっと大局的な視点に立たねばならない。こうしたマスコミの姿勢は、最初はなかなか国民には受け入れられないだろう。それでもなお、イシューの重要性を地道に説いて回る営業努力が必要である。真のマスコミは、赤貧に耐え、それでもなお国民や国家に奉仕する高邁な志を持った人々によって支えられるべきである。だから、本来マスコミが儲かる職業であるというのはおかしいのである。自由市場が短期的に現世代の経済的ニーズを満たす仕組みであるのに対し、民主主義とは中長期的に次世代の社会的課題を解決する制度である(「私と同じ苦しみを子ども世代に味わわせてはならない」)。マスコミはそういう民主主義の進展を促進するものでなければならない。マスコミの姿勢が変われば、マスコミに迎合して一発芸を狙う安直な政治家も減るだろう。

 それにしても、野党やマスコミは、「モリカケ問題に首相が関与している」ということにどうしてもしておきたいようである。感情に訴えて国民を扇動すると、全体主義を生む危険性がある。
 高井:権力を持つ国会議員が国民の感情に訴え、それに国民が呼応している現状は、民主主義の土台が崩されかねないという意味で極めて危険です。事実に基づき、国民の理性に訴えるのが「説得」で、逆に事実を無視して、国民の感情に訴えるのが「扇動」です。ナチス・ドイツのゲッベルズ宣伝相は「扇動」で国民の支持を集めることに成功しました。彼のような人物が今の日本に存在するとは思いませんが、「ミニ・ゲッベルズ」ならば与野党を問わず誕生しかねません。
(高井康行「ジャーナリズムが民主主義を滅ぼす」)
 ただし、個人的には、国民の理性を信じて事実を訴えることが必ずしも正しいとは限らないのではないかとも思っている。仮に事実が1つであるならば、「説得」も「扇動」も1つの事実(「扇動」の場合は虚偽の事実だが)に向かって国民の感情を収斂させることになり、全体主義へとつながりかねない。「説得」の場合は”冷静な”全体主義となり、「扇動」の場合は”熱狂的な”全体主義となるという違いがあるにすぎない。この点に関して、掛谷英紀「大学政治偏向ランキング 学者の政治活動を徹底批判」という興味深い記事があった。これは、2015年の「安全保障関連法に反対する学者の会」に署名した学者の所属大学、専攻分野を分析したものである。

 掛谷氏は、「安保反対の会」に署名するような左派系の学者には理論系が多く、工学系が少ないと述べている。理論系の学者は文字通り理論を組み立てて事実を明らかにする。一方、工学系の学者は実験を繰り返して事実を明らかにする。もし安保法制が間違っているということが動かしがたい事実であるならば、理論系の学者も工学系の学者も「安保反対の会」に署名しそうなものである。ところが、工学系の学者が少ないというのは、彼らは厳密な自然科学の研究のルールに従うものの、事実が1つであるとは限らず、事実が別の実験でひっくり返ったり、事実が複数存在したりすることを認めているからではないだろうか?事実が異なれば解釈、主義主張も異なる。そして、そういう違いがあるところに政治が生まれる。
 それぞれの人々がそれぞれの正義を主張するとき、政治が生ずる。妥協、排除、暴力の行使等々あらゆる手段を講じて、自らの正義を実現しようと試みるのが政治という営みに他ならない。(中略)政治の場においていかなる正義の独占をも許さないとするのがリベラル・デモクラシーの基礎なのである。
(岩田温「あなたもバッシングされる?世にはびこる”悪玉”論の恐怖」)
 「群盲象を評す」というインド発祥の寓話がある。6人の盲人が象に触って、それが何だと思うかと王から問われた。足を触った盲人は「柱のようです」と答え、尾を触った盲人は「綱のようです」と答え、鼻を触った盲人は「木の枝のようです」と答え、耳を触った盲人は「扇のようです」と答え、腹を触った盲人は「壁のようです」と答え、牙を触った盲人は「パイプのようです」と答えた。それを聞いた王は、「皆正しい。あなた方の話が食い違っているのは、あなた方が象の異なる部分を触っているからだ。象はあなた方の言う特徴を全て備えている」と答えた、という話である(以上はジャイナ教の寓話に拠った)。政治はこれと似ている。ある人はAと言い、別の人はBと言い、また別の人はCと言う。それぞれの主張の長所を斟酌しながら、より高次の包括的な新しい知を創造するのが政治的な営みである。「AはAだ。A以外は認めない」では政治にならない。

 左派は自由を掲げながら、「反体制、親中、親北朝鮮」で凝り固まっていることを私はしばしば本ブログで批判してきた。この考えが行き過ぎると全体主義に陥る。だが、右派は逆に「反中、反韓、反北朝鮮」で凝り固まっており、これも行き過ぎれば全体主義になる。極右と極左は同根異種であると、以前の記事「『正論』2018年3月号『親北・反日・約束破り・・・/暴露本「炎と怒り」で話題沸騰』―小国・日本の知恵「二項混合」に関する試論(議論の頭出し程度)、他」でも書いた。極左は、国家という枠組みを取り払い、民族などの表面的な違いを無視して、全世界の人々は本質的に同じであると説く。一方、極右は日本こそが絶対善であり、異質を排除して全世界を日本化しようとする。極左と極右は一見すると正反対であるようだが、どちらも世界をモノトーンで見ている点では実は共通している。右派にも反省すべき点がある。

 3月以降、朝日新聞の全体主義的な「『安倍政権=悪』キャンペーン」が展開されたが、以前に比べると国民は賢明になったと思う。内閣支持率が30%台まで”しか”下がらなかったのがその証左である(内閣支持率は底を打ったとの見方もある)。これが森喜朗首相の時代であれば、一発で内閣支持率が一桁台まで落ち込んでいたことだろう。国民の中には、森友学園問題(と加計学園問題)が大した問題ではないと考える人が増えている。ただ、だからと言って、国民主権を頼りにし、国民の力に完全に依拠して政治を展開するのは難しいと感じる。

 インターネットが普及した時代であるから、例えばネット上に政治空間を作り、国民が自由にイシューを発案して、他の大勢の国民が議論のフィールドに参加しながら必要な法律や施策、規制などを策定していく民主主義も原理的には可能である。だが、発案されるイシューは膨大になり、優先順位をどうつけるかが問題となる。おそらく議論フィールドへのアクセス数、フィールドに参加している国民の数などでランキングが作成されるだろう。だが、ランキングを作成した時点で人気投票と化し、国民は近視眼に陥る。また、たとえ政治空間で実名性が担保されたとしても、炎上、暴言、脅迫が日常茶飯事となり、収拾がつかなくなるに違いない。前述の通り、しばしば政治家は視野狭窄に陥り国会を空転させ、行政は保身に走り余計なことをするが、国民がもっと利己的になり、罵詈雑言の類で議論フィールドを混乱させるよりかは幾分ましである。

 だから、現在の立法府や行政府は最善ではないが最悪でもないのである。その両権力を、中長期的な視点、将来の世代の視点、社会的な善の視点から監視する役割をマスコミには期待したいし、政治家(特に野党)はそういうマスコミを上手に利用して国民を啓発してほしい。


2018年04月29日

『正論』2018年5月号『策略の朝鮮半島/森友”改竄”の激震/新たなる皇帝の誕生・・・』―南北統一で「金氏朝鮮」が成立する可能性、他


2018年5月号 (正論)2018年5月号 (正論)

日本工業新聞社 2018-03-31

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 (1)
 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は27日、軍事境界線のある板門店(パンムンジョム)の韓国側施設「平和の家」で会談し、「完全な非核化により、核のない朝鮮半島の実現という共通の目標を確認した」とする「板門店宣言」に署名した。宣言では1953年から休戦状態にある朝鮮戦争の「終戦」を今年中に目指すことや、両国に米国や中国を交えた多国間の枠組みで、平和体制の構築を協議する方針も示した。
(毎日新聞「南北首脳会談「朝鮮半島の完全な非核化」目標 共同宣言」〔2018年4月27日〕)
 以前の記事「『世界』2018年2月号『反貧困の政策論』―貧困を解決するには行政がもっと市場に介入して消費者にお金を使わせればよい、他」で、朝鮮半島で起こり得るシナリオとして、Ⅰ.北朝鮮が先制攻撃する場合、Ⅱ.アメリカが先制攻撃する場合、Ⅲ.米朝対話が成立する場合、Ⅳ.南北対話が成立する場合という4つを示し、最も可能性が高いのはⅢであり、次いでⅣではないか(ⅠとⅡは起こらないだろう)と書いたが、実際にはⅣが実現したわけだ。これによって、韓国と北朝鮮は将来的に統一に向かうと推測される。

 まず、経済面であるが、北朝鮮は中国と同様、表面的には社会主義を掲げながら、韓国に倣って徐々に市場経済を導入していくものと考えられる。既に、北朝鮮では相当程度まで市場経済が浸透しているという見方もある。1990年代に物資が極度に不足し、「苦難の行軍」を経験した際には、国営商店を介さずに自由に取引ができる闇市が発達した。21世紀に入って苦難の行軍を脱した後も闇市はなくならず、北朝鮮の人々は、市場レートよりもはるかに高い価格で取引がなされる闇市で、余った農作物などを売買した。政府は、国営商店と闇市の価格差を問題視し、2002年に7・1措置を出して国営商店の価格を大幅に引き上げたものの、それでも闇市はなくならなかった。市場の自由化の流れを止められないと感じた政府はついに、2003年に総合市場を公設した。現在、北朝鮮のGDPの4割程度は私経済によるものと推測されている。

 北朝鮮は経済特区を設置し、韓国企業の誘致に乗り出すであろう。現在、北朝鮮の経済特区と言うと、開城工業団地がある。2012年末時点の稼動企業数は123社、2012年時点の従業員数は5万4,234人、従業員の98.6パーセントは北朝鮮側の人員であった。2013年時点で、進出した韓国企業の投資総額は5,568億ウォン(482億円)で、生産額は月4,000万ドルに上った。これとは別に韓国側の公的企業が、造成や社会基盤整備に5.5兆ウォン(4,770億円)から6兆ウォン(5,200億円)を投資している。北朝鮮側は、労働者約5万3千人分の賃金として1年間に8,700万ドル(約86億円)の外貨収入を得ており、北朝鮮にとっては「ドル箱事業」であった。

 2016年2月10日、北朝鮮による弾道ミサイル発射実験を受け、韓国政府は、開城工業地区から北朝鮮へ流入する通貨が、兵器開発に流用されることを防ぐとして、開城工業地区の操業停止と韓国人の引き揚げの措置を行った。だが、2017年10月、北朝鮮が韓国との協議を経ず、秘密裏に工場を再稼働されていたことが明らかになり、再開してすでに6カ月経っていることが報じられた。まずは、この開城工業団地の操業を正式に認めるところから始められるに違いない。そして、北朝鮮は第2、第3の工業団地の造成に着手する可能性が高い。

 韓国企業はASEAN諸国に海外工場を持っているが、ASEAN主要国の製造業のワーカーの月額賃金は以下の通りである(JETRO「投資コスト比較」より)。

 ・バンコク(タイ)=378ドル
 ・ハノイ(ベトナム)=204ドル
 ・ジャカルタ(インドネシア)=324ドル
 ・マニラ(フィリピン)=237ドル
 ・プノンペン(カンボジア)=170ドル
 ・ビエンチャン(ラオス)=121ドル
 ・ヤンゴン(ミャンマー)=135ドル

 これに対して、北朝鮮の場合は、前述の通り5万3千人分の賃金が年間8,700万ドルであるから、1人あたりの月額賃金に直すと約137ドルである。ただし、開城工業団地の労働者は、他の北朝鮮の労働者よりも優遇されているはずであるから、北朝鮮のワーカーの平均月額賃金を求めると、ASEANのどの国よりも低くなると推定される。北朝鮮はこの労働コストの安さを武器に、韓国企業を大量に誘致し、自国の経済発展を目指す。韓国企業は、製品コストのより一層の引き下げというメリットが得られる。すると、日本企業にとっては非常に大きな脅威となる。

 現在、韓国と北朝鮮の経済格差は45倍であり、このままではとても統一できない。しかし、北朝鮮が今後10年の間に毎年10%の成長を続け、その後の10年間でさらに毎年7%の成長を達成すると仮定すると、北朝鮮の経済規模は約4.5倍になる。一方、韓国は今後20年の間毎年2%の成長が続くならば、韓国の経済規模は約1.5倍になる。したがって、20年後の経済格差は45×1.5÷4.5=15倍にまで縮小する。東西ドイツが統一した時の経済格差は、西ドイツ:東ドイツ=3:1であったことを踏まえると、これでもハードルは高いのだが、45倍に比べれば大幅に改善されたことになり、南北統一の可能性が見えてくる。

 政治に目を向けると、文在寅大統領はしばしば2国併存の連邦制を主張しているが、その具体的な政治機構ははっきりしない。北朝鮮の金政権と韓国の大統領制をそのまま残すのであれば、南北統一にはならない。かと言って、北朝鮮の金政権と韓国の大統領制の上に、何か新しい統一的な政治機構を作るのは現実的ではない。よって、北朝鮮の金政権と韓国の大統領制のどちらかを選択するしかない。北朝鮮と韓国はいずれも、自国が朝鮮半島を代表する国家であることを主張し合ってきた。北朝鮮の金政権と韓国の大統領制のどちらに正統性があると認めるのかという問題になるが、私は最終的に金政権が選択されるのではないかと予測する。

 と言うのも、韓国の歴代大統領の多くは、在任中の不祥事(身内の不祥事を含む)が原因で、その後に悲惨な末路をたどっているからである。その一部を挙げると次の通りである。

 ・李承晩(初代~第3代)=1960年の不正選挙で、副大統領に当選した李起鵬は四月革命で失脚し、長男の李康石の手によって、朴瑪利亜夫人や次男(李康旭)とともに射殺された。
 ・朴正煕(第5~9代)=妻(陸英修)は、文世光事件で銃弾が頭部に命中し、死亡。長男(朴志晩)は、麻薬法違反の容疑で繰り返し逮捕。本人は、側近の金載圭情報長官により暗殺。
 ・全斗煥(第11・12代)=退任後に、利権介入などが発覚し親族が逮捕された。後に、政権下の不正と親族の不正を国民に謝罪し、財産を国に返納した。その後も、光州事件や不正蓄財への追及が止まず、死刑判決を受けた(減刑の後、特赦)。
 ・盧泰愚(第13代)=退任後の1995年に政治資金の隠匿が発覚。さらに、粛軍クーデター、光州事件でも追及され、軍刑法違反として懲役17年の判決を受ける(1997年12月に特赦)。
 ・金大中(第15代)=長男の金弘一は、「李溶湖ゲート」、「陳承鉉ゲート」と呼ばれる不正事件で在宅起訴。次男の金弘業は、利権に便宜を図る見返りに25億ウォンを受け取り逮捕。 三男の金弘傑も、「崔圭善ゲート」と呼ばれる事件に関与し、逮捕。全部で親族5人が逮捕された。
 ・盧武鉉(第16代)=任期終了後の2009年に、6億円を超える不正資金疑惑について、事情聴取が実施され、逮捕も近いのではと思われていたが、自宅の裏山の岩崖から投身自殺。
 ・李明博(第17代)=2012年に入り、李明博が私邸として購入した土地の金額が、同地域の他の土地より安かったことや、土地の名義が別人だった事などから、購入資金を政府が不正に肩代わりしたとの疑惑がある。2018年3月、約10億円の収賄容疑などで逮捕。
 ・朴槿恵(第18代)=2016年10月末に発覚した友人崔順実の国政介入問題、いわゆる「崔順実ゲート事件」により、支持率が急落。12月9日、国会で弾劾訴追案が可決され、大統領としての職務が停止。2017年2月28日には特別検察官が国政介入疑惑における収賄を認定。3月10日、憲法裁判所により、罷免が決定。3月31日に逮捕。

 ブログ別館の記事「櫻井よしこ、呉善花『赤い韓国―危機を招く半島の真実』―全体主義的な韓国は「悪」を徹底的に叩くことでしか「善」を定義できない」で書いたような、「悪を徹底的に叩く」という韓国人の特質からすると、韓国にはおよそ正統性がある政権というものがほとんどなかったことになる。一方で、北朝鮮に目を向ければ、金日成―金正日―金正恩と続く政権がある。金正恩総書記によほどのことがない限り、20年後も金正恩体制が続いているだろう。

 もし今後の韓国大統領も同じように在任中の不正が続くならば、韓国人が自国の政権を見捨て、金政権に正統性を見出す可能性も決して低くない。最近左傾化が著しい韓国であれば十分あり得る。現在の韓国は50代の人口が多いが、彼らはいわゆる「386世代」である。386世代とは、1990年代に30代(3)であり、80年代(8)に大学生で、87年の民主化宣言まで民主化学生運動に参加していた者が多い60年代(6)の生まれを指す。彼らは進歩主義的傾向が強く、北朝鮮に強いシンパシーを抱いている。そして、20年後には彼らが韓国の政治の中心にいる。

 以上を総合すると、20年後ぐらいを目途に、朝鮮半島には「金氏朝鮮」とでも呼ぶべき国家が誕生すると予測する(北朝鮮が核兵器開発の目的としていた「体制の維持」も達成される)。政治的には共産党をトップとする社会主義であるが、経済的には部分的に自由市場を受け入れる。ちょうど、中国のミニチュア版が誕生するイメージである。金氏朝鮮は親中反日である。結局、朝鮮半島の国家というのは、中国に属することで生き延びる運命なのである。そういう意味では、朝鮮半島の歴史のメインストリームに戻ってきたということに他ならない。

 アメリカもこのことを見越した上で、トランプ大統領は米朝首脳会談に臨むだろう。北朝鮮が非核化を完了すれば、在韓米軍を韓国から撤退させる。だが、ここで気になるのは、南北首脳会談で、「年内の朝鮮戦争終結宣言を目指す」とされた点である。朝鮮戦争が終結すれば、韓国にアメリカ軍を駐留させる意味がなくなる。つまり、朝鮮戦争の終結とともに在韓米軍は撤退しなければならないのである。それまでに北朝鮮が非核化のプロセスを完了させられるとは到底思えない。北朝鮮は現在60発ほどの核兵器と、最大で150の核関連施設を保有していると言われている。これらの全てを、年内に撤廃するのはほとんど不可能だ。

 仮に米朝首脳会談で非核化の成果が得られて在韓米軍が撤退したとしても、それはまやかしの非核化(アメリカ向けのICBMのみ放棄)であり、将来的に誕生する金氏朝鮮は、隠しておいた残りの核兵器を今度は日本に向けてくるに違いない。その核兵器はもはやアメリカが対象ではないため、日本は朝鮮半島の非核化をアメリカに頼ることはできず、独力でこの問題に立ち向かわなければならない。拉致問題といい核問題といい、日本はずっとアメリカにおんぶにだっこの状態で、気がついてみたら交渉の蚊帳の外に置かれていた。そのような外交の愚策はもう許されない。日本がイニシアティブを発揮して朝鮮半島の反日国家と対峙する必要がある。

 (2)本号の井上和彦「シベリア出兵の美しき真実 ポーランド人を救った日本人」では、日本とポーランドの絆についての記事である。ポーランドが東欧一の親日国である理由が解る。

 ポーランドはウィーン会議(1814~15年)で形式上独立するも、事実上はロシア領であった。19世紀末、ポーランド人は真の独立を勝ち取るべく、2度にわたって帝政ロシアに独立戦争を挑んだ。しかし、蜂起は鎮圧され、さらに蜂起に立ち上がった多くのポーランド人が政治犯としてシベリアに強制移送された。その後、第1次世界大戦で戦場となったポーランドの人々がシベリアに逃れ、シベリアのポーランド人は15~20万人に膨れ上がった。そんな中、1917年にロシア革命が起き、1918年に第1次世界大戦が終結して、ようやくポーランドは独立を回復した。

 ところが、シベリアのポーランド人は、ロシア内戦で祖国への帰還が困難となり、それどころか生活は困窮を極め、餓死者が続出した。同胞の惨状を知ったウラジオストク在住のポーランド人は、彼らを救済するために「ポーランド救済委員会」を立ち上げた。彼らは、せめて子どもたちだけでも救って祖国へ帰してやりたいと願っていた。ちょうど同時期にシベリアに出兵していた日本人が彼らの存在を知り、日本政府が救済に動いた。日本陸軍は1920年7月20日に第1陣として、輸送船「筑前丸」に56名の児童とポーランド人の付き添い5名を乗せ、ウラジオストクの港を出発した。それ以降、1921年7月までに5回の救援便が合わせて375名の児童を救出した。さらに、1922年8月、輸送船「明石丸」と「臺北丸」が3回に分けて孤児390名を移送した。

 輸送船はウラジオストクを発ってから一度日本に立ち寄るのだが、そこで受けた日本の医療スタッフによる献身的な看病にポーランドの子どもは感激し、日本を出発する際には「日本を離れたくない」と泣きじゃくる子どももいたそうだ。そして、子どもたちの看病に奮闘した1人の日本人看護師のことが、ちょうど『致知』2018年4月号に紹介されていた。
 岡田:この第1回救済事業の時には、日本国内で腸チフスが流行し、20数名のポーランドの子供たちが腸チフスに罹ってしまいます。日赤の医師や看護師たちが「ここで死者を出したら申し訳ない」と、全力をあげて治療したことで全員元気にすることができたのですが、その時に看護をした23歳の松沢フミという女性が腸チフスに罹るんです。

 ところが、フミは腸チフスになっても、昼夜問わず献身的に子供たちを看護し続け、心配する同僚たちにこう言ったといいます。「人は誰でも自分の子や弟や妹が病に倒れたら、己が身を犠牲にしても助けようとします。けれどもこの子たちは両親も兄弟、姉妹もいないのです。誰かがその代わりにならなければなりません。私は決めたのです。この子たちの姉になると」 そしてフミは殉職。ポーランドの子供たちはその死を悼み、声が嗄れるほど泣いたといいます。
(岡田幹彦、服部剛「〔感動の日本史〕本気・本腰で生きた歴史の偉人たちに学ぶ」)
致知2018年4月号本気 本腰 本物 致知2018年4月号

致知出版社 2018-03


致知出版社HPで詳しく見る by G-Tools

 なお、『致知』の同記事では、他の偉人として、①太平洋戦争の沖縄戦で、県民の多くを疎開させた上で自決した沖縄県知事・島田叡、②義和団事件で日本の軍隊の優秀さを世界に証明した柴五郎、③第2次世界大戦中にドイツの反対を押し切ってユダヤ人難民を救った樋口季一郎、④硫黄島の戦いで目覚ましい統率力を発揮した栗林忠道の名前が挙げられている。


2018年02月16日

『世界』2018年2月号『反貧困の政策論』―貧困を解決するには行政がもっと市場に介入して消費者にお金を使わせればよい、他


世界 2018年 02 月号 [雑誌]世界 2018年 02 月号 [雑誌]

岩波書店 2018-01-06

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 (1)
 アメリカの報復の意志は、なぜ確からしいのか。それは、「同盟国である日本が攻撃されて黙っているわけにはいかないはず」だからだ。ただし、報復が北朝鮮を滅亡させるような規模で行われるかどうかについては、状況次第というほかはない。まして、北朝鮮がアメリカ本土に到達する核能力を獲得したとすれば、アメリカが自国民への被害を甘受してまで「日本のために」報復すると考えるわけにはいかない。
(柳澤協二「米朝戦争の危機と日本の針路」)
 引用文最後の部分は、アメリカによる核の傘が破れたことを意味する。この手の主張は右派が展開することが多く、『世界』の論評記事で取り上げるのは不適切であるのだが、核戦略に対する私の無知ゆえに、この「核の傘が破れる」というのがどうも理解できない。

 現在、アメリカと中国が核兵器を保有している。中国がアメリカを核で攻撃すると、アメリカは核で中国に対して反撃してくる可能性がある。そうなれば、双方の国にとって甚大な被害が生じるから、実際には核兵器は使用されない。これを相互確証破壊戦略と言う。中国が日本などのアメリカの同盟国を核で攻撃する場合も同様で、アメリカに核で反撃されるかもしれないから、抑止力が働く。これが同盟国にとっての核の傘の意義である。ここで、中国の同盟国である北朝鮮が核を保有した場合はどうであろうか?北朝鮮がアメリカを攻撃する場合でも、日本などアメリカの同盟国を攻撃する場合でも、アメリカは北朝鮮に核で反撃する可能性がある。だから、北朝鮮は核を実際に使用することができない。つまり、核の傘は破れていないはずである。北朝鮮が核を保有するとなぜアメリカの核の傘が破れるのか、詳しい人に是非ご教示いただきたい。

 右派が「アメリカの核の傘が破れる」と指摘する時、その先には「だから日本も核武装をするべきだ」という主張が続く。核の傘の危機を叫ぶ右派には、日本にどうしても核武装をさせたい勢力と、その背後で日本に核兵器を売ろうとするアメリカの軍産複合体の存在が見え隠れする。確かに、力に対しては力で対抗するのが国際政治のセオリーである。だが、論理よりも情理が優先する日本は、以前の記事「『致知』2018年2月号『活機応変』―小国は国内を長期にわたって分裂させてはならない。特に日本の場合は。」でも書いたように、核を保有することはできない。

 ここで、改めて北朝鮮をめぐって想定されるシナリオを整理してみたいと思う。
 <Ⅰ.北朝鮮が先制攻撃する場合>
 ①北朝鮮がアメリカに向けてICBMを発射する場合
 ⇒アメリカが核で反撃してくる可能性があるため、実際には実行されない。
 ②北朝鮮がアメリカの同盟国である日本や韓国に向けて核ミサイルを発射する場合
 ⇒この場合もアメリカが核で反撃してくる可能性があるため、実際には実行されない。
 ③北朝鮮がアメリカに対して通常の武力攻撃をする場合
 ⇒北朝鮮はアメリカの付近に軍隊を保有していないので、このシナリオは成り立たない。
 ④北朝鮮がアメリカの同盟国である日本や韓国に対して通常の武力攻撃をする場合
 ⇒韓国がアメリカ側につくか、アメリカを裏切るかによって変わる。
  ⅰ)韓国がアメリカ側につく場合
  ⇒構図的には、アメリカ・韓国・日本VS北朝鮮・中国・ロシアとなるが、まず日本は戦争に参加できない。また、ロシアは北朝鮮との関係が中国のそれに比べると弱いので、実際に表舞台に出てくるかどうか不明である。アメリカ・韓国の軍事力は、北朝鮮・中国の軍事力を凌駕しているから、アメリカ・韓国が勝利し、北朝鮮は崩壊する。ただ、その跡地に親米親韓政権ができるかというと、そうとは限らない。資本主義のラインが北緯38度から中国国境まで北上することに中国が反発するであろうし、何よりもアメリカが新国家の建設に後ろ向きになるであろう。というのも、イラク戦争後の政権樹立と国家安定に相当苦労させられていることを知っているからだ。となると、アメリカは敗戦国の中国に親中の傀儡政権を作ることを容認することもあり得る。
  ⅱ)韓国がアメリカを裏切る場合
  ⇒構図的には、アメリカ・日本VS北朝鮮・韓国・中国・ロシアとなる。この戦いはアメリカにとって非常に不利である。アメリカが敗戦すると、北朝鮮と韓国は統一国家を樹立するであろう。この統一国家は、韓国の巨大な資金を北朝鮮の核に投資するから、朝鮮半島に凶悪な核保有国家が誕生することを意味する。日本にとってはまさに悪夢である。

 ただし、北朝鮮が先制攻撃をする可能性はそもそも限りなく低いと思われる。北朝鮮がアメリカを挑発する時、必ず、「アメリカが攻撃をしてくるならば北朝鮮も黙ってはいない」という言い方をする。逆に言えば、北朝鮮から先制攻撃をする意思はないと考えてよい。後述するように、北朝鮮が核開発をする目的は、何もアメリカと戦争をしたいからではなく、アメリカを対話のテーブルに引きずり出して、南北統一の障害となっている米韓同盟を放棄させることであるからだ。

 <Ⅱ.アメリカが先制攻撃をする場合>
 ①アメリカが北朝鮮に向けてICBMを発射する場合
 ⇒北朝鮮の核ミサイルは60ほどであると見積もられている。この程度であればアメリカが全ての核ミサイルを破壊できるかもしれないが、100%成功する確証はない。もし撃ち漏らしがあれば、北朝鮮が核で反撃してくる恐れがある。アメリカ本土を核で攻撃されることに極度の恐怖を感じているアメリカは、この作戦に踏み切ることができない。
 ②アメリカが北朝鮮に対して通常の武力攻撃をする場合
 ⇒これはⅠ④と同じシナリオになる。アメリカの勝利は、韓国の態度にかかっているが、私は韓国がアメリカを裏切ると思う。近年の韓国は左傾化が進んでおり、保守の朴槿恵前大統領を辞任に追いやったロウソク革命では、親北左派の活動家が多数関与していたと報告されている。その活動の成果が、ウルトラ左派の文在寅大統領の誕生として結実したわけだ。文大統領は、アメリカに要請されてTHAADミサイルを配備した時、中国の猛反発を受けてあっさりと譲歩してしまった。また、国連が北朝鮮に対する制裁を決議を下した際も、北朝鮮に資金的援助をするほど、筋金入りの親北派である。文大統領の本音は、早く南北統一を実現して民族の分断を解消し、今までそうであったように、中国に属するという形を作りたいということだろう。

 アメリカもこのことは当然知っているであろうから、北朝鮮を攻撃する動機が減退する。結局のところ、北朝鮮はアメリカに対して先制攻撃をする意思がなく、アメリカも北朝鮮を攻撃するメリットがないことから、実際には両者の軍事衝突が起きる可能性は限りなく低いと思われる。

 <Ⅲ.米朝対話が成立する場合>
 北朝鮮はまず、アメリカ本土に届くICBMの保有をアメリカに認めさせようとするだろう。もちろん、実際にこのICBMが使われる可能性は前述のように低いわけであるが、北朝鮮の非核化を目指すアメリカはこの要求を呑まない。ただし、アメリカ国内では北朝鮮の核容認論も持ち上がっており、アメリカ本土に届かない核ミサイルであれば保有を認めてもよいという意見がある。しかし、これでは今度は北朝鮮が納得しない。というのも、元々北朝鮮がICBMを開発したのは、北朝鮮がICBMでアメリカを牽制しながら韓国を武力併合するためであるからだ。

 アメリカの要求はあくまでも北朝鮮の核放棄である。当然、北朝鮮は見返りを求める。具体的には米韓合同軍事演習の中止、さらには在韓米軍の撤退である。つまり、事実上の米韓同盟の破棄である。韓国からアメリカの脅威が消えれば、北朝鮮は韓国の併合へと動き出すだろう。また、左傾化した韓国も喜んで北朝鮮と一緒になるに違いない。新しい朝鮮半島の国家は社会主義国となる。アメリカとしては、冷戦の遺産を朝鮮半島という小さな領域に閉じ込めておく方が都合がよいのだが、それよりも北朝鮮の非核化が優先度が高いとなれば、また、左傾化した韓国がアメリカの言うことを聞かなくなっている現状を踏まえれば、韓国を捨てる可能性は高い。

 <Ⅳ.南北対話が成立する場合>
 これは対話において韓国がアメリカを裏切り、アメリカを出し抜いて北朝鮮と交渉を進めてしまう場合である。韓国が北朝鮮の核の脅威から逃れるためには、北朝鮮と早く統一をしてしまえばよい。Ⅲで書いたように、左傾化した今の韓国であれば十分に考えられることである。当然のことながら、米韓同盟は破棄される。アメリカは激怒するに違いないが、長年夢見た南北統一を実現させるためであれば、アメリカを無視することぐらいたやすいことである。この結果、朝鮮半島には、凶悪な核兵器を保有した社会主義国家が誕生する。

 可能性としては、Ⅲが最も高く、その次にⅣが考えられる。いずれにしても、朝鮮半島には社会主義化した反日国家が誕生する。すると、冷戦の遺産は韓国対北朝鮮という構図から、日本対朝鮮半島の新国家という構図に引き継がれる。日本のような小国は、大国同士の代理戦争に巻き込まれないようにすることが存亡のカギを握る。日本は、朝鮮半島の新国家が強烈な反日でも、むやみに対立して米中の代理戦争を演じるのではなく、この国とどうにかしてつき合う方法を編み出さなければならない。本ブログでは、大国が二項対立的な発想をするのに対し、日本は二項混合的に対立を切り抜けることを得意とすると書いた。今、その真価が問われる。さらに、朝鮮半島の新国家が核保有国である場合、日本も反射的に核を保有するのではなく、唯一の被爆国としての矜持を保ちながらいかなる戦略を展開すべきか知恵を絞らなければならない。

 《参考記事》
 『正論』2017年10月号『日本は北朝鮮と戦わないのか/傲る中国』―朝鮮半島の北が資本主義国家、南が社会主義国家になる可能性?
 『致知』2017年11月号『一剣を持して起つ』―米朝対話が成立するとはアメリカが韓国を捨てることを意味する(ことを左派は解っていない)、他

 (2)今月号の特集は「反貧困の政策論」であるが、日本人が貧困になった理由は至極単純であり、消費者が「安くてよい製品・サービスを早く提供せよ」と企業に要求したからである。確かに、低価格戦略でも規模の経済をいかんなく発揮すれば労働生産性が大きくなり、労働分配率を高めることも可能であろう。しかし、大多数の企業にとって、市場からの低価格の要求は、人件費の抑制という形になって現れる。正社員の人件費をこれ以上下げることが難しいとなれば、今度は非正規社員を使うことで人件費を変動費化する。こうして、安い給料しかもらえない社員は、市場においてさらに安い製品・サービスを企業に要求する。それを受けて、企業はまた社員の給与を引き下げる。この負のスパイラルの繰り返しである。

 私は本ブログで日本の階層構造を「神⇒天皇⇒立法府⇒行政府⇒市場/社会⇒企業/NPO⇒学校⇒家庭」とラフスケッチしてきた。自由主義的な考え方の人から見れば、行政が市場に対して何か力を及ぼすというのは奇異に映るかもしれない。だが、行政は市場を作ることができる。例えば、道路や鉄道を通し、そこに住宅を供給すれば、商圏を形成することができる。また、補助金や規則によって、消費者が買うべき、あるいは買うべきではない製品・サービスを選別することもできる。私は、こうした行政の力を活用して、市場や消費者に対し、「少々高いけれどもよい製品・サービス」を購入するように動機づける政策が必要なのではないかと考える。

 やや文脈が異なるものの、ドイツは「社会的市場経済」という考え方を導入している。これは市場経済であるから、市場の調整メカニズムと自由競争を尊重し、市場の均衡化機能を重視する立場である。だが同時に、「市場経済」の前に置かれた「社会的」という形容詞は、市場参加者で構成する社会全体の動きに配慮するという倫理的概念である。したがって、必要となれば、政府の政策運用による市場介入も許される。言うなれば、企業や私有財産、自由貿易を擁護しつつ、労働組合の団体交渉や年金・健康保険などの社会保険といった社会政策とを組み合わせた形の資本主義である。このように、行政が市場に介入することは可能である。

 実は日本においても、消費者が安い製品を購入するように行政が介入していた時期がある。ダイエーの中内功が「流通革命」を唱えていた1960年代のことである。日本生産性本部の中に設置されていた消費者教育委員会を母体とする日本消費者協会(1961年設立)は、一般消費者に対して、「賢い主婦」とは「スーパーで安い商品を買う人」であるというキャンペーンを展開していた。高度経済成長期には物価高が深刻な問題となっており、流通革命の旗手たるスーパーは、流通の近代化を進めて、物価問題を解決する救世主と見られていたのである。当時、大規模小売店舗を規制する法律としては百貨店法があったが、通産省の官僚も、中内功に対して百貨店法の規制をかいくぐる方法を指南していたという(満薗勇『商店街はいま必要なのか―「日本型流通」の近現代史』〔講談社、2015年〕より)。

商店街はいま必要なのか 「日本型流通」の近現代史 (講談社現代新書)商店街はいま必要なのか 「日本型流通」の近現代史 (講談社現代新書)
満薗 勇

講談社 2015-07-16

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 経済産業省はこれと正反対のことをやればよい。現代において賢い消費者とは、品質を正しく評価し、高い品質に見合った対価を支払う消費者のことであると啓蒙する。すると、まず一部の金持ちの消費者が高いお金を払うようになる。そうすれば、企業は人件費を上げることができる。給料が増えた社員は、自分が消費者の立場に立った時に、今までよりも高いお金を払うようになる。これが続いていくと、業績が改善する企業が増加するとともに、高い給与を手にする社員も増えていく。こうした正のスパイラルを生み出すことが今求められている。

 ところで、「片山善博の「日本を診る」(99)「平成30年度与党税制改正大綱」から読み取れる政治の劣化」という記事で、サラリーマン(この表現が既に男尊女卑である)の給与所得控除の額を一律に減らすのは、フリーランスとの間で不公平を生むと書かれていた。だが、会社員は企業の収入からコストを引いた残りを給与として受け取っている。また、フリーランスも収入から必要経費を引いた残りを給与として受け取っている。この点では、会社員にもフリーランスにも違いはない。むしろ、給与所得控除が認められている会社員の方が優遇されていると言うこともできる。それに、フリーランスは一般の人がイメージするほど恵まれていない。フリーランス貧乏については、ブログ別館の記事「ダイアン・マルケイ『ギグ・エコノミー―人生100年時代を幸せに暮らす最強の働き方』―フリーランス中心の社会は理想とは思えない」でも書いた。

 (3)
 原発事故情報公開弁護士団は、七七一訴訟の初期段階から不開示部分と理由の対比を求め、政府側に対して、「ヴォーン・インデックス」を作成することを求めてきた。ヴォーン・インデックスとは、インカメラ審理(裁判所のみが文書等を見聞して非公開で行われる審理)の問題点に対処するためにアメリカ合衆国の裁判所にて考案された手法であり、具体的には、文書の様式や記載事項、細かな拒否の理由に分類・整理した文書のことをいう。これにより、どの文書のどの記載事項が、いかなる不開示情報に当たると判断したのかを整理できる。
(海渡双葉「吉田調書を超えて(第5回)公開されない情報」)
 福島原発事故をめぐっては、幅広い関係者にヒアリングが実施されており、ヒアリングの対象者数は772名、総聴取時間は概算で1,479時間に上るという。聴取結果書の原本は内閣官房に保管されている。政府事故調は、2011年12月26日に中間報告を、2012年7月23日に最終報告を提出して調査活動を終了した。しかし、その聴取結果は全く公開されず、調査報告書にも添付されなかった。原発事故情報公開弁護士団は、ヒアリング情報の開示を求めて、ヴォーン・インデックスの作成を政府に要求したというわけである。

 だが、今のネット社会の脅威に鑑みるに、各関係者のヒアリング内容が公開されれば、立ちどころに当該対象者がバッシングの対象となり、ヒアリングの内容から真実を究明するという本来の目的は達せられないのではないかと危惧する。自分より劣っているマヌケをあぶり出し、ホッと胸を撫で下ろす(Mr.Children「週末のコンフィデンスソング」)どころか、勢いそのマヌケを罵詈雑言で総攻撃するに違いない。これは、現代社会の閉塞感がそうさせているのだろう。こんなことを書くと、私がいきなりユートピア主義者になったのではないかと思われるかもしれないが、(2)で書いたことなどを通じて社会が豊かになり、人々の心にゆとりが生まれないと、国民がヒアリング内容を冷静に受け止めることは不可能なのではないかと感じる。



  • ライブドアブログ
©2012-2017 free to write WHATEVER I like