このカテゴリの記事
『営業のモチベーション(DHBR2015年8月号)』―社員のタイプに応じた報酬制度の使い分けは公平性に反する、他
渋沢栄一、竹内均『渋沢栄一「論語」の読み方』―売り込まなければ売れない製品・サービスは失格かもしれない、他
エニアグラムのタイプ別に見たモチベーションの上げ方(私案)

お問い合わせ
お問い合わせ
プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
アクセスカウンター(PV)
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

タグクラウド

Top > 営業 アーカイブ
2015年08月05日

『営業のモチベーション(DHBR2015年8月号)』―社員のタイプに応じた報酬制度の使い分けは公平性に反する、他


ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2015年 08 月号 [雑誌]ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2015年 08 月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2015-07-10

Amazonで詳しく見る by G-Tools

【社会的責任】最適な社会的責任を果たす4つのステップ CSRこそ効率化せよ(カストゥーリ・ランガン、リサ・チェイス、ソエル・カリム)
 著者の分類に従うと、CSR(社会的責任)活動には、①いわゆるフィランソロピーやメセナのような慈善活動、②環境・社会へのベネフィットを提供するサステナビリティ・プロジェクト、③ビジネスモデルの抜本的な転換を通じて社会的ニーズの充足を目指すCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)戦略の3つがあるという。しかし、多くの企業ではこれら3つの活動に一貫性がなく、責任者も担当者もバラバラである。そのため、CSRの総合責任者を置いて、彼の下に社内のCSR活動を統合する必要がある、という論文である。

 この論文に限らないが、CSRの議論は色々と錯綜していて、非常に理解しづらい印象がある。そこで、私は次のように理解している。まず、企業活動を「成果が経済的か社会的か?」と「成果を生み出す手段が経済的か社会的か?」という2軸のマトリクスで4つに分ける。成果と手段がともに経済的というのは、通常の企業活動である。成果は経済的だが手段は社会的というのは、環境に配慮したサプライチェーンを構築したり、社員の労働環境、医療、教育に投資したりしながら、一般的な市場ニーズを充足する活動である。多くの企業のCSRはこの象限に該当する。

 手段は経済的だが成果は社会的という象限は具体例を挙げるのが難しいのだが、バングラデシュのグラミン銀行で有名になったマイクロファイナンスが該当するだろう。ファイナンスの仕組み自体は、従来のシステムを拡張・発展させたものであり、経済的である。しかし、そのシステムを通じて多くの小規模起業家(=顧客)を生み出し、彼らが貧困から脱するのを支援している。

 最難関のCSRは、成果も手段も社会的という象限である。この象限に取り組む企業はパッと思いつかない。法政大学・坂本光司教授の『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズには、障碍者雇用に積極的な企業(日本理科学工業株式会社、株式会社大谷、株式会社協和、株式会社障がい者つくし更生会など)と、障碍者向けの製品を製造する企業(徳武産業株式会社など)が紹介されている。仮に、ある企業が障碍者を数多く雇用し、障碍者向けの製品・サービスで持続的な収益を上げていれば、おそらくそれは究極のCSRと呼ぶことができるに違いない。

日本でいちばん大切にしたい会社日本でいちばん大切にしたい会社
坂本 光司

あさ出版 2008-03-21

Amazonで詳しく見る by G-Tools

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
正しいインセンティブ設計を構築する方法 誰が本当に優れた営業なのか(V・クマー、サラン・サンダー、ロバート・P・レオーネ)
営業の研究における第一人者が語る 【インタビュー】インセンティブがすべてではない(アンドリス・A・ゾルトナーズ)
 「正しいインセンティブ設計を構築する方法 誰が本当に優れた営業なのか」では、営業担当者を「トレーニング志向型」と「インセンティブ志向型」に分け、前者は教育研修の拡充を、後者は金銭的報酬の増加を通じて動機づけるべきだとしている。また、トレーニング志向型は小規模だが成長の早い顧客に販売する傾向があり、インセンティブ志向型はより大規模で安定的な顧客にアプローチする傾向があるため(個人的には逆の方がしっくりくるので、この記述は意外なのだが)、タイプに応じた顧客の振り分けをすべきことも示唆されている。

 だが、営業担当者のタイプに応じて動機づけの手法を変えるのは、あまり現実的ではないと感じる。同じ受注金額を獲得した2人の営業担当者について、一方はトレーニング志向型であるからより高度な教育研修の機会を付与し、もう一方はインセンティブ志向型であるからコミッションを高くする、などという企業はないだろう。そんなことをすれば社員の間に不公平感が生まれ、モチベーションはかえって低下するに違いない。それに、社員のタイプをいちいち判別して動機づけの手法を選択しなければならない人事部側も、制度運用の複雑さに悲鳴を上げるだろう。

 「営業の研究における第一人者が語る 【インタビュー】インセンティブがすべてではない」には次のように書かれている。
 営業担当者は普通さまざまな世代にまたがり、仕事への期待も異なります。ミレニアム世代は生活の質を向上させ、仕事にもっと意義を見つけたいと考えるでしょう。彼らはメールなどの電子メディアでたえずコミュニケーションを図ろうとし、自分の仕事ぶりに対するフィードバックを頻繁に求めます。ベビーブーマーは退職後の安心を確保したいと考えます。その中間層の人たちは、経済的な安定のために働いているのかもしれません。成功する報酬制度はこれらすべての目的に対応する必要があります。
 (※太字は筆者)
 先ほどの例で言えば、企業側としては教育研修とコミッションの両方の動機づけ手法を用意し、2人の営業担当者にその両方を与えるべきである。前者の営業担当者にはコミッションが、後者の営業担当者には教育研修が動機づけとして十分に機能しないが、それは仕方ないのである。それよりも、動機づけ手法の公平性を守ることによる利益の方がずっと大きい。

 以前の記事「坂本光司『日本でいちばん大切にしたい会社2』―給与・採用に関する2つの提言案(後半)」で、動機づけの手法には、①経済的動機づけ、②社会的動機づけ、③心理的動機づけという3つがあると書いた。①②は外発的動機づけであり、③は内発的動機づけである。このうち、①②についてもう少し詳しく書くと、

 ①経済的動機づけ=給与、賞与、各種手当、コミッション、福利厚生、ストックオプションなど。
 ②社会的動機づけ=命令、昇進、やりがいのある仕事、上司からの叱咤激励、人事考課、顧客からの評価、職場の人間関係、組織風土など。

となる。このうち、給与、福利厚生、昇進、人事考課など、制度というハードで運用されるものは、全社員に全てを公平に与えなければならない。社員のタイプに応じて使い分けることは許されない。ただ、何でもかんでもハードで解決しようとすると、制度構築で苦労する割には、一定の社員にとって機能しない動機づけ手法もたくさん生じることになる。それに、制度運用が組織に浸透するには時間がかかるものであり、その間は社員を上手く動機づけられないという問題もある。

 結局のところ、社員のタイプに応じて柔軟に動機づけられるのは、ソフトな動機づけ手法、中でも上司による叱咤激励に限られる。マネジャーは部下を動機づける様々な言葉を持っていなければならない。旧ブログで「モチベーションが高い人は「ボキャブラリーが多い」」という記事を書いたが、動機づけが上手なマネジャーもまた、ボキャブラリーが多いと思うのである。マネジャーには国語力が必要だ。昔のマネジャーは、部下から提出された日報に赤字でぎっしりとコメントを書いて返していたという。部下はそのコメントを迷惑だと思う反面ありがたく感じて、翌日の仕事にいそしんでいた。最近は、そういうマネジャーが減ってしまったように感じる。

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
乗務員のモチベーションを上げる3つの仕組み 日本交通のタクシーはなぜ「選ばれる」ようになったのか(川鍋一朗)
 サービスマニュアルの策定、キャリアパスの設定、各営業所の業績のランキング化という3つの施策によって、日本交通の改革を行ったという論文である。
 そこで実施したのが、営業所や関連会社のランキングだ。チーム単位での競争を促し、チームワークを育むことが目的である。ランキング上位の報奨としては、売上アップに直結する黒タク(※日本交通が新たに設けた「黄タク」、「黒タク」、「EDS」という3段階のキャリアパスで、2番目に位置する。黄タクと黒タクでは料金は変わらないが、黒タクの方が顧客からの指名が多いため、収入が上がる)を活用している。日本交通グループに加盟した企業は、原則として黒タク比率20%からスタートするが、以降、成績に応じて黒タク比率が高まるのだ。
 以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第42回)】いびつなオフィス構造もコミュニケーション不全を引き起こす原因に」で、私の前職の会社では、グループ会社が同じフロアに集まっていながら、壁で不自然に区切られているせいで、コミュニケーションが阻害されていると書いた。人間は不思議なもので、物理的に隔離されると、心理的にも壁を作ってしまう。このことを知ったいくつかの企業では、大部屋方式に改装したり、デスクのフリーアドレス化を進めたり、役員の個室を廃止したりして、社内コミュニケーションの活性化に努めている。

 だが、飲食店・小売店などの店舗では、そもそもこういう施策ができない。各店舗を孤立感から救うには、日本交通のような営業所・店舗間の業績ランキングを作成・共有して、適度な社内競争を促すことが有効かもしれない。加えて、例えば年に1度全店舗の代表者を集めて、業績上位の店舗を表彰したり、セブン・イレブンがやっているような「店舗間学習」(販売ノウハウを店舗間で共有する仕組み。コンビニは基本的に他店舗と商圏が重ならないので、自店舗のノウハウを公開しても他店舗に売上高を食われる心配がない)に取り組んだりすると、より効果的であろう。

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
【R&D】なぜ多くの発明、特許が対価を得られないのか 研究成果が事業にならない7つの理由(レディ・コタ、フィリップ・H・キム、オリバー・アレクシ)
 論文のタイトルからして、特許を製品化・事業化するプロセスの途中で直面する様々な課題に対して、どのように対処すべきかを論じたものだと勝手に想像していたのだが、ちょっと違った。特許は出願前に公知の状態であってはならない。ところが、研究成果を早く世に知らしめたい研究者は、勇み足で論文を出したり、仲間の研究者に情報を漏らしたりしてしまう。そこから情報が広がると、特許の要件を満たさなくなってしまうから注意が必要である、という論文であった。

 中小企業、特にベンチャー企業は、新しい技術やアイデアを自力で事業化することが難しい。そこで、資金力のある大企業に話を持ちかける。だが、ここに落とし穴がある。私が聞いた話では、ある大企業の経営者は、中小企業の社長から提案を持ち込まれると、その社長が持ってきた提案書を部下に渡して、「これを使って我が社で特許を取得せよ」と命令するのだという。以前の記事「起業・創業をめぐる3つの勘違いをまとめてみたい」で、ベンチャー企業はいきなり大企業を狙わない方がよいと書いたが、大企業との取引にはこういうリスクもあるので要注意だ。


2015年06月05日

渋沢栄一、竹内均『渋沢栄一「論語」の読み方』―売り込まなければ売れない製品・サービスは失格かもしれない、他


渋沢栄一「論語」の読み方渋沢栄一「論語」の読み方
渋沢 栄一 竹内 均

三笠書房 2004-10

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 旧ブログの記事「論語が実学であることを身をもって証明した一冊-『渋沢栄一「論語」の読み方』」、「「個人的な怨讐」を超越した渋沢の精神力-『渋沢栄一「論語」の読み方』」で取り上げた本を約5年ぶりに読み返してみたら、色々な発見を得ることができた。

 (1)
 子曰く、人の己を知らざるを患えず、人を知らざるを患う。〔学而〕

 学問をするのは、自分の修養のためであって、人に知られるための虚栄心からやっているのではない。自分の学問が進んで人格がそなわってきたこを人が知ってくれなくても、心配することはない。自分が他人から認められないといってクヨクヨ思いわずらうより、他人の真価を見抜けない自分の低い能力を思いわずらう人になりたいものだ。
 陽明学者の安岡正篤は、「人を知らざるを患う」の「人」を、「他人」ではなく「自分」と解釈していることを以前の記事「安岡正篤『論語に学ぶ』―安岡流論語の解釈まとめ」で述べた。
 もっと突っ込んで考えると、「人が己を知ってくれようがくれまいが問題ではない、そもそも己が己を知らないことの方が問題だ」と解釈した方が、もっと切実に感じられる。案外人間というものは、自分自身を知らないものである。自分が自分を知らないのだから、人が自分を知らないのは当然である。したがって、問題は、まず己が己を知ることでなければならない、ということになる。
(「安岡正篤『論語に学ぶ』―安岡流論語の解釈まとめ」より)
 ただ、『論語』の別の箇所には、次のような文章もある。
 子曰く、位なきを患えず、立つ所以を患う。己を知ること莫きを患えず、知らるべきを為すを求むるなり。〔里仁〕
 この文章も踏まえて考えると、基本的な解釈としては、「他人が自分を知らないことを心配するのではなく、自分の方がもっと他人のことを理解し、他人が欲していることを施し、他人に認められるような能力を身につけよ」ということになるのだろうと思う。とはいえ、結局のところ、他者理解と自己理解はつながっているのもまた真理であると考える。

 人生とは、自己の人格の中に宿る神の全容を明らかにする旅である。キリスト教の場合は、唯一絶対の神を知覚するために、聖書の教えを守り、教会で祈りを捧げる。一方、多神教文化である日本においては、それぞれの人の中に異なる神が存在している。

 自らの中に宿る神を知るためには、自己の内面と対話をするのも一つの手だが、それ以上に他者と積極的に交わることが重要である。その他者は、自分とは異なる神を宿しているかもしれない。それでも構わない。いや、異なる神を宿しているからこそ、交流する意義がある。なぜならば、真の学習は、異質と出会うことで達成されるからだ。したがって、日本の場合は、他者理解と自己理解を切り離すことができない(以前の記事「岩田靖夫『ヨーロッパ思想入門』―キリスト教は他者への愛を説くのに、なぜかヨーロッパ思想は他者を疎外している気がする」を参照)。

 (2)
 子張、禄を干(もと)めんことを学ぶ。子曰く、多く聞きて疑わしきを闕(か)き、慎んで其の余を言う。則ち尤(とが)め寡(すくな)し。多く見て殆(あや)うきを闕き、慎んで其の余を行う。則ち悔(くい)寡し。言うて尤め寡く、行い悔寡ければ、禄その中に在り。〔為政〕

 子張が先生の孔子に、役人となって給料をもらう道を質問した。すると孔子はこう答えた。「役人になりたければ自ら修養して実力を充実せよ。その修養の方法は、多く聞いて広く道理を知っても、自分で確信できないことはひかえて、間違いないと信ずることだけを人に語るようにし、多く見て広く物事を知っても、大丈夫と思えない行為はやめて、道義に反しないと確信できることだけを行なえば、とがめられることなく、また自ら後悔することもない。

 こうして言動に悔いがなければ、世間の評判もよく、長上にも知られ、自分から売り込まなくても、必ず登用される。そうすれば給料は自然についてくる」
 私が持っている版の帯には、「孔子に学ぶ”月給を確実に上げる”秘訣!」とあり、「『論語』はそういう目的のために読む本なのだろうか?」と思いながらこの本を購入した記憶がある。その秘訣の一部に該当するのがこの引用文である。簡単に言えば、修練を通じて自己の価値を高めれば、自分から売り込まなくても、自然に他人から重宝されるようになる、という意味である。月給を上げるのは目的ではなく、あくまでも結果にすぎない。

 これを企業に当てはめて考えると、自社の製品・サービス、さらにはその製品・サービスを生み出す経営の仕組みを磨き続ければ、自然と顧客はついてくるのであって、顧客に対して必死に売り込まなければならないような製品・サービスは失格である、ということになるだろう。

 ピーター・ドラッカーは、「マーケティングの究極の目的は、販売活動をなくすことである」という名言を残している。私は、最初にこの言葉を目にした時、「顧客のニーズが高度化し、製品やサービスがますます複雑になっている現代においては、むしろ販売・営業活動が重要になるのではないか?」と短絡的に思っていた。つまり、売り込みは不可欠だと考えていたわけだ。

 だが、顧客に対して機能や効能をあれこれと説明しなければならないのは、やはり製品・サービスとしては不十分だと思い直した。顧客が抱える問題が高度化しているからといって、解決策である製品・サービスを複雑にしてしまうのは、問題に対する洞察が浅い証拠であり、企業側の甘えである。たとえ非常に厄介な難題であっても、しっかりと考え抜けば、逆説的だが解決策は意外なほどシンプルになることが多い(数学の世界ではそういうことがよくある)。それを解りやすい製品・サービスに落とし込めば、売り込まなくても自ずと顧客に受け入れられるはずだ。

 顧客に製品・サービスを売り込まないと言っても、自社に閉じこもって顧客のニーズを想像しながら製品・サービスを開発すればよいというわけではない。それどころか、積極的に顧客のところへ出向く必要がある。顧客は現在どんな製品・サービスを使い、何をしているのかをじっくりと観察する。また、顧客は何で困っているのかをじっくりと傾聴する。その内容を踏まえ、自社製品・サービスを販売したいという欲求を抑えて、客観的な立場から何かしらのアドバイスを行う。

 とはいえ、顧客はいきなり見ず知らずの人に自分の困りごとを話してはくれない。最初は1つか2つの簡単な話しかしてくれないだろう。それでも、その1つか2つの問題に対し、真摯に回答する。すると、顧客との間に少し信頼関係ができる。顧客は、次はもう少し難しい問題をこの営業担当者に相談してみようと考える。営業担当者は再び、顧客から提示された問題に丁寧に回答する。そうすれば、また少し信頼関係が厚くなる。これを繰り返すと、顧客は営業担当者のことを頼りになる相談相手と見なし、ようやく自分の悩みの”本丸”を打ち明けてくれるようになる。そこにたまたま自社の製品・サービスがあてはまれば、それを謙虚に勧めるのである。

 営業担当者は、何度も足繁く顧客の元へ通わなければならない。顧客の立場に立って考えると、自分の貴重な時間を割いて何度も営業担当者に会うわけだから、営業担当者は自分と会うだけの価値があると顧客に思ってもらう必要がある。そのためには、前述の努力を積み重ねるしかない。自社の売り込みが目的ではなく、単に顧客の話を聞きたい、そして何かアドバイスできることがあればしたいという目的で顧客とのアポが取れる営業担当者は、超一流だと思う。

 《参考記事》
 『速効!「営業」学(『週刊ダイヤモンド』2014年3月22日号)』―コンサルティング営業とはつまり御用聞き営業である
 『発想力(『致知』2014年12月号)』―「バッタ営業」でも「人間力営業」でもいいじゃないか?


 (続く)


2014年09月15日

エニアグラムのタイプ別に見たモチベーションの上げ方(私案)


エニアグラム―あなたを知る9つのタイプ 基礎編 (海外シリーズ)エニアグラム―あなたを知る9つのタイプ 基礎編 (海外シリーズ)
ドン・リチャード リソ ラス ハドソン みやもと あきこ

角川書店 2001-10-19

Amazonで詳しく見る by G-Tools

9つの性格 エニアグラムで見つかる「本当の自分」と最良の人間関係 (PHP文庫)9つの性格 エニアグラムで見つかる「本当の自分」と最良の人間関係 (PHP文庫)
鈴木 秀子

PHP研究所 2004-01-06

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 「エニアグラム(enneagram)」とは、人を動機の種類によって9つのタイプに分ける性格論である("ennea"=9、"gram"=図という意味)。9つのタイプにはそれぞれ以下のような名前がついている。我々は、9つのタイプ全ての要素を多かれ少なかれ持ち合わせている。その中で一番強く傾向が表れるもの、無意識のうちに行動に表れやすいものが基本タイプとなる。なお、9つのタイプには優劣はない。各タイプの定義については、以下のリンクが参考になる。

 エニアグラムの九つのタイプの特徴|NPO法人日本エニアグラム学会

エニアグラム

 自分がどのタイプに該当するのかを判断するアセスメントはインターネットにたくさん転がっている。ただ、本家の診断は100以上の設問から構成されており、やるのが大変なので、手軽にできる簡易版を作ってみた(簡易版ゆえ、精度はそれほど高くない点はご了承いただきたい)。

 リソ=ハドソン エニアグラム性格タイプ診断テスト(無料サンプル版)|エニアグラム研究所[日本]
 簡易エニアグラム診断|未来創造塾 クエスト総合研究所
 エニアグラム 無料診断|コミュニケーションラボ
 エニアグラム タイプ診断簡易テスト~2つの質問でわかる9つの性格タイプ|シープラスエフ研究所
 エニアグラム改 性格診断×適職診断|Enneagram Personality

エニアグラム簡易アセスメント

 エニアグラムは自分の性格を知るために活用されることが多いが、他人のタイプを知ることも可能だ。冒頭で述べた通り、エニアグラムは動機の源泉を明らかにするものであるから、相手のタイプを知れば、相手をどのように動機づけるとよいのかが解る。営業担当者を部下に持つケースを想定して、効果的な仕事の与え方、コミュニケーションの取り方をタイプ別に整理してみた。

 (1)改革する人
 新しいことへの挑戦意欲が強いため、新規顧客や新製品の担当をさせるとよい。その仕事が難しければ難しいほど、本人は燃える。また、理想主義者であり、現実とのギャップを何とか埋めようとしたがる。よって、顧客の課題に深く入り込み、顧客にとってのあるべき姿をデザインして、それを実現するためのソリューションを提案するコンサルティング営業にも適性がある。心に響く言葉は、「この製品で世の中を変えてみないか?」、「社会にインパクトを与えてみないか?」

 (2)助ける人
 他人を支援すること、他人の役に立つことに喜びを感じる。よって、情緒的な人間関係が重視される既存顧客の担当や、アフターサービスの担当にするとよい。その際、担当顧客をあまり変えず、特定の顧客と長く仕事ができるようにする。このタイプは、スマートな営業方法よりも、人間力で勝負しようとする。営業担当者をサポートする営業事務などでも実力を発揮するだろう。心に響く言葉は、「あのお客様を助けてあげてほしい」、「あのお客様はあなたを必要としている」

 (3)達成する人
 営業担当者に最も多いのがこのタイプだと言われる。定量的で明確な目標を設定するとモチベーションが上がる。チャレンジ精神が旺盛という点では(1)改革する人と共通だが、(1)改革する人が変革の”質”を重視するのに対し、(3)達成する人は”量”を重視する。心に響く言葉は、「今月は○○円の受注を達成しよう」、「新規顧客数を前年度比で○○%に増やそう」

 (4)個性的な人
 創造的な手法で物事を進めることを好むタイプである。アーティストなどに多いタイプだとされる。独創性を重視する反面、他人との違いや他人からの評価に敏感な部分もある。心に響く言葉は、「○○さんはこういうやり方でやっているから、あなたは違うやり方を工夫してほしい」 そして、単に好きなようにやらせるのではなく、「そばで見ているぞ」というメッセージを送るとよい。

 (5)調べる人
 物事の全体像をとらえ、本質を深く追求しようとする。顧客の経営課題を深く分析する提案営業などで力を発揮する。この点で(1)改革する人と似ているが、(1)改革する人はあるべき姿と現状のギャップの大きさに燃えるタイプであるのに対し、(5)調べる人は調べるという行為そのものに楽しみを見出す。営業企画のスタッフにも向いている。心に響く言葉は、「あのお客様の潜在ニーズを分析してほしい」、「どうやったら我が社の製品が○○社に勝てるのか検討してほしい」

 (6)忠実な人
 いわゆる「組織人」、「会社人間」であり、企業の方針に忠実に従う。組織を回す上ではこのタイプの人が欠かせない。だから、他のタイプの人と組ませると面白いだろう。このタイプは、自ら方向性を打ち出すことは苦手だが、方針ややり方をしっかりと示せば、それに沿って真面目に仕事をしてくれる。よって、このタイプの人に仕事をさせる場合には、あらかじめ計画やマニュアルを整備することが必要である。心に響く言葉は、「会社のために一肌脱いでほしい」

 (7)熱中する人
 (4)個性的な人と同様、独創的なやり方を好む。(4)個性的な人が他人の目を気にするのに対し、(7)熱中する人は他人のことは気にせず、自分の好きなことを好きなようにやりたがる。よって、全面的な裁量を与えて、新規顧客の開拓などをさせるとよい。ただし、飽きっぽい一面もあるため、担当顧客を定期的に変えるといった工夫が必要である。新製品開発プロジェクトに参画させても面白いだろう。心に響く言葉は、「あのお客様のことはあなたに全部任せた」 そして、任せた以上は必要以上に介入しないことが大事である。

 (8)挑戦する人
 (1)改革する人はどちらかと言うと”市井のリーダー”という感じだが、(8)挑戦する人は”権力”に頼る傾向が強い。組織の上の方のポストになると、このタイプの割合が高くなる。(8)挑戦する人は、権力意欲をくすぐる言葉にめっぽう弱い。心に響く言葉は、「この仕事で成功したら昇進が待っているぞ」、「○○円の予算を与えるから、あなたの権限で好きに使っていいぞ」、「今回の商談では、○○部門(マーケティング、製造、技術など)の人間を自由に使っていいぞ」

 (9)平和をもたらす人
 一言で言えば平和主義者である。他人との争いを好まず、平穏な状態を好む。人間関係を尊重するという点では(2)助ける人と共通だが、(2)助ける人は他人の役に立つことを重要視するのに対し、(9)平和をもたらす人にとっては、自分の言動が実際に相手の役に立ったかどうかはあまり関係ない。むしろ、心理的に”つながっている”という状態に満足を覚える。このタイプはクレーム処理など、相手の心に深く寄り添う必要がある仕事で実力を発揮する。心に響く言葉は、「あのお客様の話をじっくり聞いてあげてほしい」、「穏便に事を進めてほしい」


カテゴリ: 経営 コメント( 0 )

  • ライブドアブログ
©2012-2017 free to write WHATEVER I like