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【城北支部国際部】「ここがポイント!”地方のインバウンド誘致”と”越境EC”」 ~現場での支援事例に基づく現状、課題、未来~(セミナーメモ書き)
【東京協会国際部セミナー】外国人従業員が活躍できるビジネス環境とは?(セミナーメモ書き)
【城北支部国際部セミナー】「ここがポイント!日本人が気づいていない外国人旅行者へのおもてなし」~インバウンド需要に対応する現場経営者からのメッセージ~

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
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◆個人事務所「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ


(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

Experian海外企業信用調査 海外企業信用調査(Experian)
(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

【中小企業診断士は独学で取れる】中小企業診断士に独学で合格するなら「資格スクエア」中小企業診断士の安い通信講座なら「資格スクエア」
(以下の資格の講師をしています。
 ―ITパスポート
 ―情報セキュリティマネジメント
 ―経営学検定(初級・中級)
 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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2017年07月30日

【城北支部国際部】「ここがポイント!”地方のインバウンド誘致”と”越境EC”」 ~現場での支援事例に基づく現状、課題、未来~(セミナーメモ書き)


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 私が所属する(一社)東京都中小企業診断士協会国際部で、診断士向けにセミナーを開催した。主催者側の私が言うのもおこがましいが、正直に言って、東京協会の理論政策更新研修よりも面白かったと思う(先日受講した理論政策更新研修のひどさは「東京都の中小企業向け補助金・助成金など一覧【平成29年度】」で書いた)。セミナーで勉強になったことのメモ書き。

 【講演①】非観光地域におけるインバウンド誘致の取り組み
 (東京都中小企業診断士協会 城北支部国際部 小沢智樹会員)
 ・人口に対する外国人観光客数の比率は、フランスが134.5%で群を抜いているが、先進国の多くは大体40~50%となっている。2016年の訪日外国人旅行者数は2,403万9,000人であり、人口に対する比率は18.9%である。ドイツの人口に対する外国人観光客数の割合は42%であり、仮に日本がドイツの比率を目標にすると、訪日外国人旅行者数は5,300万人となる。現在、政府は2020年までに訪日外国人旅行者数を4,000万人に増やすという計画を立てているが、必ずしも非現実的な数字とも言えないようである。

 旅行収支の対GDP比を見ると、アメリカやドイツが1.1%となっている。2016年の日本の旅行収支は1兆3,391億円であり、GDP約537兆円に対する割合はわずか0.2%である。これを、アメリカやドイツ並みに引き上げるとすると、旅行収支は約5兆4,466億円となる。政府の目標は2020年時点で8兆円であるから、こちらはかなりストレッチした目標であると言える。

 ・政府は2014年度から「地方創生関係交付金」を設けており、2016年度は「地方創生推進交付金」(1,000億円、事業費ベース2,000億円)を実施した。本交付金の目的は、①しごと創生、②地方への人の流れ、③働き方改革、④まちづくりの4つであり、①の一環として観光に注力することとなっている。いわゆるゴールデンルートと呼ばれる東京、京都、大阪(+富士山)に加えて、地方への観光を促進するのが目的である。具体的には、地域の「稼ぐ力」向上のため、様々な連携を図りながら地域経済全体の活性化につながる観光戦略を実施する専門組織として、日本版DMO(Destination Marketing/Management Organization)を確立し、これを核とした観光地域づくりを行う。また、地場産品を戦略的に束ね、安定的な販路開拓・拡大に取り組む地域商社を核に、地場産品市場の拡大、地域経済の活性化を目指している。

 交付金の額が大きい都道府県は、上位から順番に、北海道(65億円)、長野県(37億円)、熊本県(29億円)、茨城県(28億円)である。北海道の交付金が高いのは、市町村の数が多いためだ。熊本県、茨城県の交付金が多いのは、震災復興の意味合いがあるのかもしれない(ただし、東北地方の交付金はそれほど大きくないので、震災復興という観点のみで交付金の多寡を判断することは難しい)。都道府県民1人あたりの所得に対する都道府県民1人あたりの交付金の割合を見てみると、上位から順番に、高知県(20%)、鳥取県(18%)、東京都(16%)、富山県(13%)となっている。意外なことに、地方創生と言いながら、東京都の交付金も多い。

 ・現在、観光庁には「日本版DMO候補法人登録制度」というものがある。これは観光庁を登録主体として、日本版DMOの候補となり得る法人を「登録」し、登録を行った法人、およびこれと連携して事業を行う関係団体に対して、関係省庁が連携して支援を行うことで、各地における日本版DMOの形成・確立を強力に支援する制度である。登録を目指す法人は、日本版DMO形成・確立計画(形成計画)を作成し、地方公共団体と連名で観光庁に提出する。形成計画は、科学的アプローチによる観光地域づくりを重視している。すなわち、戦略に基づいてマーケティング/マネジメントを実施し、効果をKPI(Key Performance Indicator:重要業績指標)を用いて測定するということである。観光庁の審査を通ると、日本版DMOとして登録される。現時点で、広域連携DMO6件、地域連携DMO67件、地域DMO72件の計145件が登録されている。

 ・本講演のテーマは”非観光地”におけるインバウンド誘致である。観光地の定義は難しいが、Wikipediaの「日本の観光地一覧」によると、384市区町村が観光地に該当するそうだ。日本の市区町村は全部で1,741であるから、残りの1,357市区町村が非観光地ということになる。近年はニューツーリズムがブームになっており、エコツーリズム、スポーツツーリズム、グリーンツーリズム、メディカルツーリズムなど、様々な旅行形態が存在する。言い換えれば、地域の資源は何でも観光資源になり得る可能性を秘めている。

 講師はある自治体において、田園、大きな橋、サッカー、モニュメント、特攻機という資源に注目した。ところが、インバウンダーの約8割はアジア人(その大半は中国人)である。田園風景はアジア人にとって珍しいものではない。大きな橋に関しては、中国の方がよっぽど長けている。サッカーはアジアではあまり人気がない。モニュメントを見ても、観光客はそれに特別な価値を感じない。特攻機は、アジアでは歴史のタブーに触れてしまう。逆に、インバウンダーにとって受けがよかったのは、神社、嫁入り船、海岸線、お祭りだったそうだ。

 ・講師が非観光地でインバウンダーのニーズ調査を行った結果解ったのは、彼らは実は純粋なインバウンダーではないということであった。調査対象者の中には、もちろん欧米人もいたが、日本に住んでいる留学生や研修生が多かった。そして、彼らが本国から家族や親戚を呼び寄せているケースもあった。初めて日本を訪れる外国人を、いきなり非観光地に向かわせるのは非常にハードルが高い。そうではなく、日本に住んでいてある程度日本のことを解ってる人をまずはターゲットにする。そして、彼らの家族や親戚と一緒に来てもらうことで、徐々に観光客を増やすのが有効ではないかというのが講師の見解であった。

 なお、講師はその非観光地をPRするのに、「日本政府観光局(JNTO)」のHPを利用した。合わせて、観光案内所にチラシを配布した。HPに関して言うと、外国人向けのHPは観光地の特徴を解りやすく伝えようとシンプルにしがちであるが、外国人旅行客は事前にディープな情報を研究して訪日するケースが多いため、情報は惜しみなく出した方がよいとのことであった。

 【講演②】越境ECの現状と今後の課題について
 (越境EC総研合同会社 代表 中川泰氏)
 ・講師は越境ECのコンサルティングで数多くの企業を支援してきた方である。越境ECは今ブームになっているが、越境ECで儲かっている企業は実はほとんどないという。儲かっているのは、モールを運営するAmazon.comと、商品を運ぶ日本郵便だけだそうだ。だから、越境ECを始めようと思う方は、もう少し慎重に戦略を練った方がよい。

 講師のところに相談に来る方は、「中国で商品を売りたい。売れれば何でもよい」、「とにかくAmazon.comに出店したい」と言うケースがあまりに多いらしい。国・地域やチャネルを決める前に、何を売るか=商品を決めるのが先である。時折、「日本で売れないから海外で売りたい」という方もいるのだが、日本で売れないものは海外でも売れない。日本で売れるものがやはり海外でも売れる。だから、日本で自信を持って販売しているものを、越境ECでも扱うべきである。越境ECで売れる商品には3つの特徴がある。①差別化ポイントが解りやすい、②商品のメンテナンスがしやすい、③商品名の発音がしやすい、の3つである。

 ①については、国によって顧客が何を重視するかが異なる。「商品のスペックが全く同じだとしたら何を重視するか?」というアンケートを取ると、アメリカ人は「安い価格」、ヨーロッパ人は「エコへの配慮」、アジア人は「ブランド」(中国人にとっては「その商品を持っていると周囲に自慢できる」ことが重要)と答える。よって、ターゲット顧客ごとに訴求ポイントを上手く変えることが大切である。なお、アメリカ人について補足すると、彼らは低価格の商品ばかりをほしがっているわけではない。低価格も重要だが、スペックの高さも重要である。つまり、コストパフォーマンスを評価している。アメリカ人は、「その商品を持っていると作業が楽になる」といった利便性を重視する。③については、日本語の商品名をそのまま海外で使用すると、その国の隠語に近い発音になることがあるので要注意である。その場合は、日本と海外で商品名を使い分けるとよい。

 ・越境ECを行う場合には、SNSとの導線を意識する必要がある。マーケティング理論にはAIDMAモデルに代わるAISASモデルというものがあるが、今時の外国人(特に若者)は、欲しい商品がある時にgoogleで検索しない。SNSで友達がある商品を使っている写真を見て、それがほしいと思うと、すぐにAmazonで検索する。アメリカ人の約50%は、気になった商品は直接Amazonで検索するという調査結果もあるという。よって、例えばアメリカに越境ECで商品を売りたい場合には、まず在米日本人に商品を使ってもらって、写真をInstagramに英語でアップしてもらい、アメリカ人のフォロワーに浸透するような仕掛けを行うとよい。

 ・商品を選んだ後に、販売先の国を決める。まずは、①その商品を使う文化がある国を選ぶ必要がある。ある企業は、和包丁を越境ECで販売しようとしたが上手くいかなかった。というのも、和包丁は定期的に砥石で研ぐ必要があるが、外国人にはその研ぎ方が解らないためである。それから、②大きなモールがあって、インターネットで商品を買う文化がある国でなければならない。さらに、③郵便事情のいい国を選択するべきである。商品の運送状況を配達先までトレースしている国は、日本を含めて世界で8か国しかない(実はアメリカは入っていない)。

 インドネシアは人口が多く、ECが急成長しており、クレジットカードも普及しつつあるので、インドネシアで越境ECをしたいという人が多い。しかし、この手のマクロ指標は全くあてにならない。インドネシアは島国であり、物流事情が非常に悪いため、商品が届かないリスクが高い。よって、こういう国は除外するべきである。越境ECサイトで顧客の住所を入力させる際に、国名だけは、配達可能な国をプルダウン形式で選ばせるようにするとよい。

 ・商品、国、ターゲット顧客を決めたら、最後は販売サイトをどうするか決めなければならない。自社サイトで販売するという方法もあるが、自社サイトで成功している企業はほとんどないという。となると、モールに出店する方が成功確率が高い。ただし、テンセント(京東全球購〔JD Worldwide〕)やアリババ(天猫国際)は保証料や年会費で何百万円もかかる。これは、両社が出店企業からお金を取るモデルで成り立っているビジネスであるからだ。講師は、中国に越境ECで商品を売りたいと相談に来られる方に「予算はいくらですか?」と聞くのだが、大体500万円ぐらいという答えが返ってくる。その場合は、中国に進出するのは止めた方がよいとアドバイスするそうだ。これに対して、Amazon.comは、Amazonプライム会員(アメリカに約6,500万人)を収益源とするモデルであるため、出店企業はコストを抑えることができる。

 ・越境ECで頭を悩ますのが運賃の設定方法である。アメリカ人の約78%は、サイトに運賃が表示された瞬間に購入を諦めるというデータがある。運賃には、①送料込、②従量制、③定額制、④従価制という4つがある。①送料込は日本人には良心的に見えるものの、海外では送料が非常に安いか、商品が非常に安いかのどちらかだと思われる。よってお勧めできない。②従量制も顧客からは敬遠される傾向がある。よって、③定額制か④従価制にする。③定額制は、購買層が若い場合に有効である。④従価制は、購買層の所得が高い場合に有効である


2016年12月16日

【東京協会国際部セミナー】外国人従業員が活躍できるビジネス環境とは?(セミナーメモ書き)


外国人社員

《プログラム内容》
 【講演①】「外国人従業員が活躍できるビジネス環境とは」
 講師:エンピカンデル氏(株式会社トモノカイ 留学生支援事業メンバー)

 【講演②】「料理店での外国人社員の能力発揮の手法について」
 講師:稲岡千春氏(インド料理店”マサラキッチン”オーナー)

 【グループディスカッション】
 各テーブルに外国人ゲストをお迎えし、以下のテーマについてディスカッション。
 (a)外国人が日本の中小企業で働くメリットとは?
 (b)外国人が長く働きたいと思う魅力ある中小企業とは?
 (c)中小企業が外国人の能力を発揮させるためには?
 (1)日本の外国人留学生は、2003年に10万人を突破し、2015年には20万人を超えている(ただし、このうち約5万人は日本語学校の学生であり、大学生ではない)。政府は2020年までにこの数を30万人に増やす計画を立てている。日本人留学生の8割は日本での就職を希望しているが、日本で就職する留学生の数は2007年以降1万人前後でほぼ横ばいである。企業は表向きは外国人留学生を採用すると公言しているものの、実績との間には乖離がある。

 例えば、株式会社ディスコが実施した調査によると、2015年度に外国人留学生を採用する予定があると回答した企業は54.8%であったのに対し、2015年度に実際に外国人留学生を採用した(採用予定を含む)のは34.3%にとどまる。また、ある私立大学の求人票を調査したところ、約1,500社が「留学生可」としていたが、別の調査会社を使って採用実績を調査した結果、実際に外国人留学生を採用した企業は2%しかないことが判明した。

 (2)外国人留学生の採用ミスマッチには様々な原因が考えられる。①まず、外国人留学生への要求レベルが高すぎることが挙げられる。企業が外国人留学生を採用するのは、海外事業を実施・強化するためであろう。外国人留学生には、入社後すぐに海外事業を担当してもらう。そういう外国人留学生には、チャレンジ精神があり、異文化への適応能力が高く、複数の言語を自由自在に操り、将来的には経営者としてリーダーシップを発揮してほしいと高望みをしてしまう。しかし、そんなスーパーマンみたいな外国人留学生はいない。外国人留学生と言っても、能力は語学レベルを除けば日本の大卒とそれほど変わらない。

 ②2つ目の要因として、採用プロセスが結果的に外国人留学生を排除する形になっていることがある。SPIは明らかに日本人に有利である。また、グループディスカッションで「小学校の科目に1つ新しい科目を追加するならば、どんな科目がよいか?」といったテーマを与えてしまう。日本の小学校の事情を知らない外国人留学生は議論に参加できない。外国人留学生の採用に積極的な企業は、SPIの合格点を外国人留学生に限って低く設定するといった工夫をしている。また、日本の文化的コンテクストを前提としないグループディスカッションを行うべきである。

 ③最後に、外国人留学生に最も理解されない日本の慣行が総合職という職種の存在である。ただ、なぜ部署を転々とするのか、部署を転々とした結果、将来的にどうなるのかを丁寧に説明すれば納得してくれる。もう1つ、新卒で入社した直後は雑用ばかりをさせられることも理解できない。ある中国人留学生は、3年後に中国工場の経営幹部になるという約束で入社した。ところが、入社後にやらされた仕事は、日本工場の掃除、整理整頓、お茶出しばかりだった。彼は「うちの会社は自分を経営者にする気がない」と不満だったが、会社側は日本企業が現場を非常に重視する点を強調した。彼は晴れて3年後に中国工場の総経理となったという。

 (3)稲岡千春氏がインド料理店を開いたばかりの頃は、インド人の習慣に驚くことが多かったという。例えば、インド人は熱すぎるものや冷たすぎるものは手に取らない。そのため、顧客に出す皿や料理が生温かいことがしばしばあった。また、台拭きを雑巾として使う、ごみ袋を食品保存用に使う、洗剤スプーンでお茶の量を計る、シンクでモップを洗うなどの行動も見られた。インド人は悪気があってそうしているわけではない。熱すぎるものや冷たすぎるものを手にしないのは、そういうものは歯に悪い(歯が黄色くなる)と考えているためである。それから、インド人が物を使い回すのは彼らなりの節約意識の表れである。日本では、食品衛生管理法によって、食品用に使えるものとそうでないものが分かれていることを説明して理解を得た。

 (4)インドは厳格な階級社会である。ゴミ拾い、トイレ掃除、皿洗いなどは下の階級の人がすることであり、オーナーである稲岡氏がそれをするとインド人社員からとがめられた。インド社会のもう1つの特徴として、役割が非常に細かく分かれているという点がある。インドの家には使用人が10人いることも珍しくない。彼らは掃除する場所によって分担が決まっている。飲食店でも、カレーのクック、タンドールのクックといった具合に役割が分かれる。困るのは、インドはヒンドゥー教の国であり、カレーのクックがある日突然ベジタリアンになるケースである。ベジタリアンになったカレーのクックは味見ができない。クックが味見をせずにカレーを出して、顧客から「塩が入っていないのではないか?」と指摘されたこともあった。

 人口が多いインドでは、ゴミ拾い専門の人を探せばすぐに見つかるし、カレーのクックがベジタリアンになれば、代わりに別のカレーのクックを連れてくればよいのかもしれない。だが、日本では一度に大勢の社員を採用することができない。そのため、1人で何役もこなさなければならず、オーナーも率先して掃除をしなければならない。この点を繰り返しインド人社員に説明した。今ではタンドールのクックはカレーも作るし、接客やレジ打ちもするなど、多能工化している。

 (5)(3)、(4)はインド人社員に日本のやり方を覚えてもらった例だが、逆に、インド人社員のニーズを取り入れたケースもある。インド人は仕事よりも家族を大切にする。1年に1か月ほどはインドに帰りたいと言う。日本では1か月も休みをもらったら帰る席がなくなるところだが、稲岡氏は社員の要望に応えて1か月間の休暇を認めた。ところが、中には1か月経っても帰ってこない社員がいる。話を聞くと、現地で甥っ子や姪っ子などの面倒を見るにはもっと長い休みが必要だと言う。しかし、ずるずると休暇を引き延ばすわけにもいかない。この一件があって以降、稲岡氏は、インド人社員の中で1人をリーダーに指名し、彼を通じて休暇を申請させるようにした。同じインド人のリーダーの目が黒いうちは1か月以内に帰ってくるだろうという算段である。

 外国人と一緒に働く場合、価値観の衝突は必ず起こる。異文化コミュニケーションの研究者はしばしば、弁証法的な発想によって、自分とも相手とも異なる新たな共有価値観を構築することが重要だと説く。私の前職の企業の社長もそんなことをよく言っていた。しかし、第三の道を構築するのは簡単ではない。本ブログでは何度か、アメリカ、ロシア、ドイツ、中国といった大国が二項対立的に物事を考えると書いてきたが、大国が弁証法的な態度を身につけているならば、世界はとっくの昔に平和になっているはずだ。私の前職の企業の社長も、共有価値観を作るべきと言っておきながら結局は口先だけであり、社員同士(日本人同士である)が対立してもそれを何一つ解決できず、リストラをするか社員に逃げられるかのどちらかであった。

 個人的に、双方の価値観が対立した時に最も現実的な方策は「取引」であると思う。つまり、「次回はあなたの要求を呑むから、今回は私の言い分を聞いてくれ」といった関係である。ただし、完全に平等な取引というものは存在しない(だから、世界から紛争は消えない)。稲岡氏の場合は、日本でインド料理店を開いているため、インド人社員が稲岡氏に要求するよりも、稲岡氏がインド人社員に要求することの方が多くなる。どんなに経済がグローバル化しても、その企業がどの国に存在するかは、経営を左右する重要なファクターである。仮に、稲岡氏がインドでインド料理店を開いていたら、どのようなマネジメントを行っていたかは興味深いところである。

 (6)私のグループにはアメリカ人のゲストが入ってグループディスカッションを行った。彼が「中小企業が自ら外国人を雇用するのではなく、海外の企業を上手く使った方が安く済むことがある」というユニークな視点を提示してくれたため、私のグループでは与えられたテーマとは異なる観点で議論を行った。すなわち、「中小企業が海外展開をするにあたって、海外企業をどのように自社のビジネスモデルに取り込み、活用すればよいか?」という論点である。

 このアメリカ人は、日本で美容室を多店舗展開している企業に勤めている。最近は美容室だけでなく、美容用品を中国で製造し、アメリカに輸出しているという。彼の話がいかにもアメリカ人らしいと感じたので、その話を紹介する。日本企業が海外で製造拠点を探す場合、信用調査を行い、経営者に会うのはもちろんのこと、現地の工場を必ず視察するものである。特に、5Sが徹底されているかどうかをチェックする。そして、契約を締結した後も定期的に監査を行い、5Sのチェックに始まり、製造ラインや品質、社員のモラルなどを厳しく確認する。

 このアメリカ人の企業は中国企業に製造委託しているから、さぞかし品質管理は大変なのだろうと思ったのだが、彼は「ITソリューションがあれば品質管理はできる」と豪語する。現場を見なくても、現場から適切な情報が上がってくれば遠隔地で意思決定が可能だというのは、いかにもアメリカ人らしい。情報システムで細かい製品仕様を伝えることはできるのかと尋ねると、「そういう時はポンチ絵を描いて説明する」と言う。美容用品は、たとえ欠陥があったとしても顧客の生命や身体に与える影響は小さい。つまり、品質の要求水準はそこまで高くない。だからこそ、こういうマネジメントが成立しうるのではないか?日本人が十八番とする輸送機械や産業機械などは、欠陥が文字通り命取りになるから、こういう品質管理は通用しない気がした。


2016年09月28日

【城北支部国際部セミナー】「ここがポイント!日本人が気づいていない外国人旅行者へのおもてなし」~インバウンド需要に対応する現場経営者からのメッセージ~


ホテル

 私が所属する(一社)東京都中小企業診断士協会・城北支部国際部では、9月24日(土)に「『ここがポイント!日本人が気づいていない外国人旅行者へのおもてなし』~インバウンド需要に対応する現場経営者からのメッセージ~」と題してセミナーを開催した。プログラムは以下の通り。今回の記事では、セミナーの内容を簡単にまとめておく。
講演①「オ・モ・テ・ナ・シは日本だけの文化じゃない、旅行者の気持ちになってみて」
講師:株式会社ファーストメモリー代表取締役 李 承妍(り しょうけん)氏

講演②「東京都北区赤羽に泊まる。その心とは。」
講師:株式会社TheBoundary代表 「HOTEL ICHINICHI」オーナー 吉柴 宏美氏
 (1)「おもてなし」が最も問われるのは、マニュアルに書いていないことが起きた時である。ある中国人旅行客が日本で約15万円の炊飯器を購入したが、帰国後に初期不良であることが判明した。炊飯器のメーカーに問い合わせると、「修理することは可能だが、海外に送ることができない」と言われた。そこで、そのメーカーの製品を取り扱っている中国の販売代理店に相談したところ、「日本で買ったものは修理できない」と断られてしまった。

 この場合、「マニュアルに書いていないことはできない」と考えるのではなく、「マニュアルに書いていないことは、別に禁止されていることではない。顧客にとって意味があるならば、積極的にやればよい」と発想を転換する必要があるだろう。そういう判断ができる人材を育成すること、また、そのような判断を許容する組織風土を醸成することが、おもてなしを提供する上で重要になる。もちろん、毎回アドホックに判断を下すわけにもいかないので、定期的に「例外事象」を検証しなければならない。例外が1回限りのことではなく、今後も頻繁に起きる可能性があるのであれば、マニュアルを改訂する。そうすることで、組織全体のサービス品質が底上げされる。

 (2)欧米の旅行客は、旅の上級者が多い。彼らは事前に日本で行きたい場所の情報を細かくリサーチしている。谷中や根津神社のことを知っている外国人もいる。また、オーストラリアやアメリカの旅行客の中には、四国・九州を自転車でツーリングする人もいる。四国・九州では東京ほど英語が通じないため、ツーリストは片言の日本語で現地の人に話しかけるのだが、それでも親切に接してくれる日本人にいたく感動するそうだ。すると、次に日本を訪れた際には、午前中は日本語教室に通い、午後は旅行を楽しみたい、といった要望が出てくる。

 欧米人に対しては、こちら側もきめ細かく情報を提供することが求められる。Airbnbを利用して訪日する欧米人には、空港からのアクセス地図、宿泊地の周辺マップ、部屋にある家電の取扱説明書を提供している。また、欧米人は、帰国後に何を体験したのかを周囲の人に語りたがる、あるいは自分が体験したことを母国で実践したがる傾向がある。とりわけ、欧米人はラーメン、寿司、卵焼きに食いつく。そこで、母国の食材で作れるようなレシピを渡すと、非常に喜ばれる。海外には「だしを取る」という風習がないため、だしの取り方もレシピに書いておく。

 (3)アジア人観光客は、事前にリサーチするものの、情報がありすぎて混乱しているケースが多い。そこで、「ガイドブックにはこう書いてあるが、現地の人(日本人)は実際にはどう思っているのか?」を教えると、彼らの旅行の助けになる。アジア人は写真をたくさん撮って、SNSで友人とシェアする傾向が強い。そのため、本来は写真撮影NGの場所であっても、交渉して特別に許可をもらうことがある(例えば、茶室の内部など)。また、彼らはSNSにアップする写真を少しでもきれいに見せいたいという欲求も持っている。「写真に写っている顔を小さくしたい」、「二の腕を細くしたい」といったニーズにも応えてあげると、旅行客の満足度が上がる。

 ところで、インバウンド需要をとらえるために、外国語に対応したHPを制作している企業は多いが、たいていは英語化で止まっている。2015年の訪日外国人を国別に見ると、1位中国(約499万人、25.3%)、2位韓国(約400万人、20.3%)、3位台湾(約368万人、18.6%)、4位香港(約152万人、7.7%)、5位アメリカ(約103万人、5.2%)である(ANA「外国人観光客数 年別・国別ランキング」より)。よって、英語対応だけでなく、中国語対応することが欠かせない。

 (4)外国人旅行客はマナーが悪いと言われることがある。しかし、多くの外国人旅行客は、日本のルールは守りたいと思っている。ただ、日本のルールをよく知らないだけである。電車の中で電話を使ったり、大声で話したりしてはいけない、レストランの予約をキャンセルする場合には事前に電話しなければならないといったルールを共有しておけば、トラブルはかなり減らせる。

 (5)吉柴宏美氏は赤羽で「ICHINICHI」というホテル・ホステルを経営している。赤羽と言えば飲み屋のイメージが強い(「せんべろ」=1,000円でベロベロに酔えるという言葉がある)。ホテルで起業するという話を周囲にしたところ、「赤羽などに人が集まるのか?」と何人にも言われたという。だが、吉柴氏は「それは赤羽が雑多な街という印象を持っている人の意見だ」と一蹴した。訪日外国人は、赤羽という街がどういうところなのかは気にしない。空港から近く、自分が行きたい場所へのアクセスがよいところに泊まりたいと考える(これは、日本人が海外旅行する時も同じはずだ)。そういう視点で赤羽を見ると、実に外国人旅行客に適した立地である。

 また、赤羽に飲み屋が多いというのもプラスに働く。宿泊客に「日本で面白かったところはどこか?」と聞くと、ラーメン屋、のんべえ横丁といった回答が返ってくる。銀座などは日本旅行の定番であるが、銀座のショップは母国にもたいてい存在するわけで、わざわざ銀座まで来る必要はない(これは私も銀座で外国人が増えるのを見ながら、薄々感じていたことである。また、ビックカメラなどで爆買いをする中国人は多いものの、そこで売っている家電の大半は中国製であり、日本で買う意味があるのかと思ってしまう)。それよりも、日本ならではの体験を外国人旅行客は求めている。飲み屋が多い赤羽は、底知れぬポテンシャルを秘めているかもしれない。

 (6)最初の顧客誘導として、最も効果的なのは海外のホテルブッキングサイトである。Expedia、Booking.com(欧州のユーザーが多い)、Agoda(アジア人のユーザーが多い)、Trip Adviserなどと契約している。ホテルブッキングサイトを活用する場合、価格は統一する必要がある。各サイトに支払うコミッションの割合が異なるからと言って、サイトごとに価格を変えると、サイト内の検索順位が下がるようなアルゴリズムになっている。

 (7)小さなホテルであるから、大手ホテルならば絶対にやらないことをするように心がけている。ある台湾人旅行客が、空気清浄機を家電量販店で買おうとしていたが、あいにく売り切れていた。どうしてもその空気清浄機がほしいのだけれども、後2日で台湾に帰らなければならない。他の家電量販店にその空気清浄機が置いてある保証はない。そこで、吉柴氏がAmazonで検索したところ、在庫があると解ったので、吉柴氏の個人アカウントで立て替え購入をした。翌日、製品が無事に届き、その台湾人旅行客は大喜びで帰国した。実は、彼らはそれまで部屋が狭いだの何だのと文句を言っていた。しかし、空気清浄機の一件があってからはがらりと態度が変わり、Agodaのレビューで星10をつけてくれたそうだ。この話は(1)に通じるところがある。

 ※勝手ながら、10月は1か月間ブログをお休みします。11月にまたお会いしましょう!
 (ブログ別館「こぼれ落ちたピース」は更新する予定です)




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