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【東京協会国際部セミナー】外国人従業員が活躍できるビジネス環境とは?(セミナーメモ書き)
【城北支部国際部セミナー】「ここがポイント!日本人が気づいていない外国人旅行者へのおもてなし」~インバウンド需要に対応する現場経営者からのメッセージ~
中央支部国際部セミナー「ここがポイント!中小企業の海外展開―海外案件経験診断士からのメッセージ」に参加してきた

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
所属組織など
◆個人事務所「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ


(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

Experian海外企業信用調査 海外企業信用調査(Experian)
(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

中小企業診断士の安い通信講座なら「資格スクエア」資格スクエア
(以下の資格の講師をしています。
 ―ITパスポート
 ―情報セキュリティマネジメント
 ―経営学検定(初級・中級)
 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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2016年12月16日

【東京協会国際部セミナー】外国人従業員が活躍できるビジネス環境とは?(セミナーメモ書き)

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外国人社員

《プログラム内容》
 【講演①】「外国人従業員が活躍できるビジネス環境とは」
 講師:エンピカンデル氏(株式会社トモノカイ 留学生支援事業メンバー)

 【講演②】「料理店での外国人社員の能力発揮の手法について」
 講師:稲岡千春氏(インド料理店”マサラキッチン”オーナー)

 【グループディスカッション】
 各テーブルに外国人ゲストをお迎えし、以下のテーマについてディスカッション。
 (a)外国人が日本の中小企業で働くメリットとは?
 (b)外国人が長く働きたいと思う魅力ある中小企業とは?
 (c)中小企業が外国人の能力を発揮させるためには?
 (1)日本の外国人留学生は、2003年に10万人を突破し、2015年には20万人を超えている(ただし、このうち約5万人は日本語学校の学生であり、大学生ではない)。政府は2020年までにこの数を30万人に増やす計画を立てている。日本人留学生の8割は日本での就職を希望しているが、日本で就職する留学生の数は2007年以降1万人前後でほぼ横ばいである。企業は表向きは外国人留学生を採用すると公言しているものの、実績との間には乖離がある。

 例えば、株式会社ディスコが実施した調査によると、2015年度に外国人留学生を採用する予定があると回答した企業は54.8%であったのに対し、2015年度に実際に外国人留学生を採用した(採用予定を含む)のは34.3%にとどまる。また、ある私立大学の求人票を調査したところ、約1,500社が「留学生可」としていたが、別の調査会社を使って採用実績を調査した結果、実際に外国人留学生を採用した企業は2%しかないことが判明した。

 (2)外国人留学生の採用ミスマッチには様々な原因が考えられる。①まず、外国人留学生への要求レベルが高すぎることが挙げられる。企業が外国人留学生を採用するのは、海外事業を実施・強化するためであろう。外国人留学生には、入社後すぐに海外事業を担当してもらう。そういう外国人留学生には、チャレンジ精神があり、異文化への適応能力が高く、複数の言語を自由自在に操り、将来的には経営者としてリーダーシップを発揮してほしいと高望みをしてしまう。しかし、そんなスーパーマンみたいな外国人留学生はいない。外国人留学生と言っても、能力は語学レベルを除けば日本の大卒とそれほど変わらない。

 ②2つ目の要因として、採用プロセスが結果的に外国人留学生を排除する形になっていることがある。SPIは明らかに日本人に有利である。また、グループディスカッションで「小学校の科目に1つ新しい科目を追加するならば、どんな科目がよいか?」といったテーマを与えてしまう。日本の小学校の事情を知らない外国人留学生は議論に参加できない。外国人留学生の採用に積極的な企業は、SPIの合格点を外国人留学生に限って低く設定するといった工夫をしている。また、日本の文化的コンテクストを前提としないグループディスカッションを行うべきである。

 ③最後に、外国人留学生に最も理解されない日本の慣行が総合職という職種の存在である。ただ、なぜ部署を転々とするのか、部署を転々とした結果、将来的にどうなるのかを丁寧に説明すれば納得してくれる。もう1つ、新卒で入社した直後は雑用ばかりをさせられることも理解できない。ある中国人留学生は、3年後に中国工場の経営幹部になるという約束で入社した。ところが、入社後にやらされた仕事は、日本工場の掃除、整理整頓、お茶出しばかりだった。彼は「うちの会社は自分を経営者にする気がない」と不満だったが、会社側は日本企業が現場を非常に重視する点を強調した。彼は晴れて3年後に中国工場の総経理となったという。

 (3)稲岡千春氏がインド料理店を開いたばかりの頃は、インド人の習慣に驚くことが多かったという。例えば、インド人は熱すぎるものや冷たすぎるものは手に取らない。そのため、顧客に出す皿や料理が生温かいことがしばしばあった。また、台拭きを雑巾として使う、ごみ袋を食品保存用に使う、洗剤スプーンでお茶の量を計る、シンクでモップを洗うなどの行動も見られた。インド人は悪気があってそうしているわけではない。熱すぎるものや冷たすぎるものを手にしないのは、そういうものは歯に悪い(歯が黄色くなる)と考えているためである。それから、インド人が物を使い回すのは彼らなりの節約意識の表れである。日本では、食品衛生管理法によって、食品用に使えるものとそうでないものが分かれていることを説明して理解を得た。

 (4)インドは厳格な階級社会である。ゴミ拾い、トイレ掃除、皿洗いなどは下の階級の人がすることであり、オーナーである稲岡氏がそれをするとインド人社員からとがめられた。インド社会のもう1つの特徴として、役割が非常に細かく分かれているという点がある。インドの家には使用人が10人いることも珍しくない。彼らは掃除する場所によって分担が決まっている。飲食店でも、カレーのクック、タンドールのクックといった具合に役割が分かれる。困るのは、インドはヒンドゥー教の国であり、カレーのクックがある日突然ベジタリアンになるケースである。ベジタリアンになったカレーのクックは味見ができない。クックが味見をせずにカレーを出して、顧客から「塩が入っていないのではないか?」と指摘されたこともあった。

 人口が多いインドでは、ゴミ拾い専門の人を探せばすぐに見つかるし、カレーのクックがベジタリアンになれば、代わりに別のカレーのクックを連れてくればよいのかもしれない。だが、日本では一度に大勢の社員を採用することができない。そのため、1人で何役もこなさなければならず、オーナーも率先して掃除をしなければならない。この点を繰り返しインド人社員に説明した。今ではタンドールのクックはカレーも作るし、接客やレジ打ちもするなど、多能工化している。

 (5)(3)、(4)はインド人社員に日本のやり方を覚えてもらった例だが、逆に、インド人社員のニーズを取り入れたケースもある。インド人は仕事よりも家族を大切にする。1年に1か月ほどはインドに帰りたいと言う。日本では1か月も休みをもらったら帰る席がなくなるところだが、稲岡氏は社員の要望に応えて1か月間の休暇を認めた。ところが、中には1か月経っても帰ってこない社員がいる。話を聞くと、現地で甥っ子や姪っ子などの面倒を見るにはもっと長い休みが必要だと言う。しかし、ずるずると休暇を引き延ばすわけにもいかない。この一件があって以降、稲岡氏は、インド人社員の中で1人をリーダーに指名し、彼を通じて休暇を申請させるようにした。同じインド人のリーダーの目が黒いうちは1か月以内に帰ってくるだろうという算段である。

 外国人と一緒に働く場合、価値観の衝突は必ず起こる。異文化コミュニケーションの研究者はしばしば、弁証法的な発想によって、自分とも相手とも異なる新たな共有価値観を構築することが重要だと説く。私の前職の企業の社長もそんなことをよく言っていた。しかし、第三の道を構築するのは簡単ではない。本ブログでは何度か、アメリカ、ロシア、ドイツ、中国といった大国が二項対立的に物事を考えると書いてきたが、大国が弁証法的な態度を身につけているならば、世界はとっくの昔に平和になっているはずだ。私の前職の企業の社長も、共有価値観を作るべきと言っておきながら結局は口先だけであり、社員同士(日本人同士である)が対立してもそれを何一つ解決できず、リストラをするか社員に逃げられるかのどちらかであった。

 個人的に、双方の価値観が対立した時に最も現実的な方策は「取引」であると思う。つまり、「次回はあなたの要求を呑むから、今回は私の言い分を聞いてくれ」といった関係である。ただし、完全に平等な取引というものは存在しない(だから、世界から紛争は消えない)。稲岡氏の場合は、日本でインド料理店を開いているため、インド人社員が稲岡氏に要求するよりも、稲岡氏がインド人社員に要求することの方が多くなる。どんなに経済がグローバル化しても、その企業がどの国に存在するかは、経営を左右する重要なファクターである。仮に、稲岡氏がインドでインド料理店を開いていたら、どのようなマネジメントを行っていたかは興味深いところである。

 (6)私のグループにはアメリカ人のゲストが入ってグループディスカッションを行った。彼が「中小企業が自ら外国人を雇用するのではなく、海外の企業を上手く使った方が安く済むことがある」というユニークな視点を提示してくれたため、私のグループでは与えられたテーマとは異なる観点で議論を行った。すなわち、「中小企業が海外展開をするにあたって、海外企業をどのように自社のビジネスモデルに取り込み、活用すればよいか?」という論点である。

 このアメリカ人は、日本で美容室を多店舗展開している企業に勤めている。最近は美容室だけでなく、美容用品を中国で製造し、アメリカに輸出しているという。彼の話がいかにもアメリカ人らしいと感じたので、その話を紹介する。日本企業が海外で製造拠点を探す場合、信用調査を行い、経営者に会うのはもちろんのこと、現地の工場を必ず視察するものである。特に、5Sが徹底されているかどうかをチェックする。そして、契約を締結した後も定期的に監査を行い、5Sのチェックに始まり、製造ラインや品質、社員のモラルなどを厳しく確認する。

 このアメリカ人の企業は中国企業に製造委託しているから、さぞかし品質管理は大変なのだろうと思ったのだが、彼は「ITソリューションがあれば品質管理はできる」と豪語する。現場を見なくても、現場から適切な情報が上がってくれば遠隔地で意思決定が可能だというのは、いかにもアメリカ人らしい。情報システムで細かい製品仕様を伝えることはできるのかと尋ねると、「そういう時はポンチ絵を描いて説明する」と言う。美容用品は、たとえ欠陥があったとしても顧客の生命や身体に与える影響は小さい。つまり、品質の要求水準はそこまで高くない。だからこそ、こういうマネジメントが成立しうるのではないか?日本人が十八番とする輸送機械や産業機械などは、欠陥が文字通り命取りになるから、こういう品質管理は通用しない気がした。

2016年09月28日

【城北支部国際部セミナー】「ここがポイント!日本人が気づいていない外国人旅行者へのおもてなし」~インバウンド需要に対応する現場経営者からのメッセージ~

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ホテル

 私が所属する(一社)東京都中小企業診断士協会・城北支部国際部では、9月24日(土)に「『ここがポイント!日本人が気づいていない外国人旅行者へのおもてなし』~インバウンド需要に対応する現場経営者からのメッセージ~」と題してセミナーを開催した。プログラムは以下の通り。今回の記事では、セミナーの内容を簡単にまとめておく。
講演①「オ・モ・テ・ナ・シは日本だけの文化じゃない、旅行者の気持ちになってみて」
講師:株式会社ファーストメモリー代表取締役 李 承妍(り しょうけん)氏

講演②「東京都北区赤羽に泊まる。その心とは。」
講師:株式会社TheBoundary代表 「HOTEL ICHINICHI」オーナー 吉柴 宏美氏
 (1)「おもてなし」が最も問われるのは、マニュアルに書いていないことが起きた時である。ある中国人旅行客が日本で約15万円の炊飯器を購入したが、帰国後に初期不良であることが判明した。炊飯器のメーカーに問い合わせると、「修理することは可能だが、海外に送ることができない」と言われた。そこで、そのメーカーの製品を取り扱っている中国の販売代理店に相談したところ、「日本で買ったものは修理できない」と断られてしまった。

 この場合、「マニュアルに書いていないことはできない」と考えるのではなく、「マニュアルに書いていないことは、別に禁止されていることではない。顧客にとって意味があるならば、積極的にやればよい」と発想を転換する必要があるだろう。そういう判断ができる人材を育成すること、また、そのような判断を許容する組織風土を醸成することが、おもてなしを提供する上で重要になる。もちろん、毎回アドホックに判断を下すわけにもいかないので、定期的に「例外事象」を検証しなければならない。例外が1回限りのことではなく、今後も頻繁に起きる可能性があるのであれば、マニュアルを改訂する。そうすることで、組織全体のサービス品質が底上げされる。

 (2)欧米の旅行客は、旅の上級者が多い。彼らは事前に日本で行きたい場所の情報を細かくリサーチしている。谷中や根津神社のことを知っている外国人もいる。また、オーストラリアやアメリカの旅行客の中には、四国・九州を自転車でツーリングする人もいる。四国・九州では東京ほど英語が通じないため、ツーリストは片言の日本語で現地の人に話しかけるのだが、それでも親切に接してくれる日本人にいたく感動するそうだ。すると、次に日本を訪れた際には、午前中は日本語教室に通い、午後は旅行を楽しみたい、といった要望が出てくる。

 欧米人に対しては、こちら側もきめ細かく情報を提供することが求められる。Airbnbを利用して訪日する欧米人には、空港からのアクセス地図、宿泊地の周辺マップ、部屋にある家電の取扱説明書を提供している。また、欧米人は、帰国後に何を体験したのかを周囲の人に語りたがる、あるいは自分が体験したことを母国で実践したがる傾向がある。とりわけ、欧米人はラーメン、寿司、卵焼きに食いつく。そこで、母国の食材で作れるようなレシピを渡すと、非常に喜ばれる。海外には「だしを取る」という風習がないため、だしの取り方もレシピに書いておく。

 (3)アジア人観光客は、事前にリサーチするものの、情報がありすぎて混乱しているケースが多い。そこで、「ガイドブックにはこう書いてあるが、現地の人(日本人)は実際にはどう思っているのか?」を教えると、彼らの旅行の助けになる。アジア人は写真をたくさん撮って、SNSで友人とシェアする傾向が強い。そのため、本来は写真撮影NGの場所であっても、交渉して特別に許可をもらうことがある(例えば、茶室の内部など)。また、彼らはSNSにアップする写真を少しでもきれいに見せいたいという欲求も持っている。「写真に写っている顔を小さくしたい」、「二の腕を細くしたい」といったニーズにも応えてあげると、旅行客の満足度が上がる。

 ところで、インバウンド需要をとらえるために、外国語に対応したHPを制作している企業は多いが、たいていは英語化で止まっている。2015年の訪日外国人を国別に見ると、1位中国(約499万人、25.3%)、2位韓国(約400万人、20.3%)、3位台湾(約368万人、18.6%)、4位香港(約152万人、7.7%)、5位アメリカ(約103万人、5.2%)である(ANA「外国人観光客数 年別・国別ランキング」より)。よって、英語対応だけでなく、中国語対応することが欠かせない。

 (4)外国人旅行客はマナーが悪いと言われることがある。しかし、多くの外国人旅行客は、日本のルールは守りたいと思っている。ただ、日本のルールをよく知らないだけである。電車の中で電話を使ったり、大声で話したりしてはいけない、レストランの予約をキャンセルする場合には事前に電話しなければならないといったルールを共有しておけば、トラブルはかなり減らせる。

 (5)吉柴宏美氏は赤羽で「ICHINICHI」というホテル・ホステルを経営している。赤羽と言えば飲み屋のイメージが強い(「せんべろ」=1,000円でベロベロに酔えるという言葉がある)。ホテルで起業するという話を周囲にしたところ、「赤羽などに人が集まるのか?」と何人にも言われたという。だが、吉柴氏は「それは赤羽が雑多な街という印象を持っている人の意見だ」と一蹴した。訪日外国人は、赤羽という街がどういうところなのかは気にしない。空港から近く、自分が行きたい場所へのアクセスがよいところに泊まりたいと考える(これは、日本人が海外旅行する時も同じはずだ)。そういう視点で赤羽を見ると、実に外国人旅行客に適した立地である。

 また、赤羽に飲み屋が多いというのもプラスに働く。宿泊客に「日本で面白かったところはどこか?」と聞くと、ラーメン屋、のんべえ横丁といった回答が返ってくる。銀座などは日本旅行の定番であるが、銀座のショップは母国にもたいてい存在するわけで、わざわざ銀座まで来る必要はない(これは私も銀座で外国人が増えるのを見ながら、薄々感じていたことである。また、ビックカメラなどで爆買いをする中国人は多いものの、そこで売っている家電の大半は中国製であり、日本で買う意味があるのかと思ってしまう)。それよりも、日本ならではの体験を外国人旅行客は求めている。飲み屋が多い赤羽は、底知れぬポテンシャルを秘めているかもしれない。

 (6)最初の顧客誘導として、最も効果的なのは海外のホテルブッキングサイトである。Expedia、Booking.com(欧州のユーザーが多い)、Agoda(アジア人のユーザーが多い)、Trip Adviserなどと契約している。ホテルブッキングサイトを活用する場合、価格は統一する必要がある。各サイトに支払うコミッションの割合が異なるからと言って、サイトごとに価格を変えると、サイト内の検索順位が下がるようなアルゴリズムになっている。

 (7)小さなホテルであるから、大手ホテルならば絶対にやらないことをするように心がけている。ある台湾人旅行客が、空気清浄機を家電量販店で買おうとしていたが、あいにく売り切れていた。どうしてもその空気清浄機がほしいのだけれども、後2日で台湾に帰らなければならない。他の家電量販店にその空気清浄機が置いてある保証はない。そこで、吉柴氏がAmazonで検索したところ、在庫があると解ったので、吉柴氏の個人アカウントで立て替え購入をした。翌日、製品が無事に届き、その台湾人旅行客は大喜びで帰国した。実は、彼らはそれまで部屋が狭いだの何だのと文句を言っていた。しかし、空気清浄機の一件があってからはがらりと態度が変わり、Agodaのレビューで星10をつけてくれたそうだ。この話は(1)に通じるところがある。

 ※勝手ながら、10月は1か月間ブログをお休みします。11月にまたお会いしましょう!
 (ブログ別館「こぼれ落ちたピース」は更新する予定です)


2016年05月06日

中央支部国際部セミナー「ここがポイント!中小企業の海外展開―海外案件経験診断士からのメッセージ」に参加してきた

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ペルー・マチュピチュ

 (※)ペルーのマチュピチュの写真。プレゼンターの中に、ペルーで仕事をしたことがあるという方がいらっしゃったというただそれだけの理由で選んでみた。

 《お知らせ》
 2005年5月5日から開始したブログは、いよいよ12年目に突入しました。
 いつも読んでくださる皆様に感謝申し上げますとともに、
 今後も変わらぬご愛顧をどうぞよろしくお願いいたします。


 私は城北支部の国際部に所属しているのだが、城西支部の中小企業診断士の先生から紹介されて、中央支部の国際部セミナーに参加するという、訳の解らない(?)ことをしてきた。参加を許可してくださった中央支部国際部の皆様、ありがとうございます。

 中央支部は(一社)東京都中小企業診断士協会の6支部の中で最も会員数が多い。城北支部はつい最近会員数が400名を超えたと喜んでいたところなのだけれども、中央支部の会員は約1,500名である。組織の大きさが違うだけに、セミナーの規模も全然違う。城北支部も先日「中小企業診断士による国際展開支援事例から、支援のあり方、診断士の役割を学ぶ」というセミナーを開催したが、この時の参加者は20名弱だった。それに対し、今回のセミナーは、参加者が50人ほどいたのではないだろうか?会場も、神谷町の機械振興会館という立派な建物であった。

 以下、セミナー内容のメモ書き。

 (1)総合商社出身の中小企業診断士が、タイで誘拐されたという体験をお話ししてくださった。その先生がタイに出張する時、現地法人の社員が車で空港へ迎えに来ることになっていた。ただ、彼はその社員の顔を事前に調べていなかった。さて、空港に到着したが、お迎えらしい車がいない。するとそこに、「○○さんですよね?」と男性2人組が日本語で話しかけてきた。彼はすっかりその2人がお迎えの社員だと思い、2人が運転する車に乗り込んだ。ところが、一向にバンコクのホテルに向かう気配がない。この時点で、この先生は自分が誘拐されたことを悟った。

 彼は2人に歯向かえば殺されると思ったので、2人と仲良くなるように努めた。「日本に行ったことはあるか?」と聞くと、「ある」と答える。「どこに行ったことがあるのか?」とさらに尋ねると、「新宿の歌舞伎町だ」と言う。「歌舞伎町ならオレもしょっちゅう行っているよ」などという話でひとしきり盛り上がった。その後、彼が「すまんが今はこれだけしか持っていないので、勘弁してくれないか?」と言ってなけなしの現金を2人に渡したら、苦笑しながら解放してくれたという。

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 加藤晃他『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』によると、世界では年間約3万件の誘拐事件が発生している。別のリスクマネジメントセミナーに参加した時に聞いた話だが、誘拐犯にとって誘拐はビジネスである。誘拐は絶対に失敗してはならない。だから、下準備を入念に行う。彼らはまず、お金持ちの人物にターゲットを絞る。次に、その人物の行動をつぶさに観察する。どのルートで通勤しているか?家の近所ではどの辺りが行動範囲となっているか?1人になることが多いのはどのような時か?などを徹底的に調べ上げる。そして、確実に誘拐するのである。

 誘拐されないために重要なのは、彼らのターゲットリストに載らないようにすることである。派手な格好をしない、時々通勤ルートを変える、1人での行動をできるだけ控えるなどの対策が有効である。それでも万が一誘拐されてしまったら、この先生のように誘拐犯と仲良くなるのも1つの手である。というのも、誘拐犯は金銭目的で誘拐しているのであって、決して殺すことが目的ではない。だから、彼らも誘拐した人物をあまり手荒に扱うことはない。この点を理解せずに、パニックになって暴れたりすると、誘拐犯が逆上して殺害に及ぶことがある。

 (2)外資系のIT企業を転々としている企業内診断士からは、「ジャパンエントリ」についての話があった。ジャパンエントリとは、海外企業が日本に進出することを指す。その先生の所属企業が日本市場に参入する際、どのような課題に直面し、それをどのように解決したのかという話を期待したのだが、実際には彼の30年近くに及ぶ経歴の紹介や、外国人とのつき合い方などの話が長々と続き、やや取り留めのない講演であったとの印象を受けた。

 この先生は、イスラエルのIT企業、インドのオフショア開発企業、イギリス系のベトナム開発会社などで勤務した経験がある。エリン・メイヤー『異文化理解力―相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養』によると、イスラエルは比較的ハイコンテクストの文化である(ハイコンテクストである上に、ネガティブなフィードバックを直接的にするという。イスラエル人に慣れていない人は、あちこち飛躍した話をめちゃくちゃ厳しい口調で言われるような印象を受けるのだろう)。また、インド、ベトナムなどのアジア各国も、日本と同様にハイコンテクストである。

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 米英などのローコンテクストの国では、自分の主張を論理的かつ解りやすく説明することがよしとされる。一方、ハイコンテクストの国では、背景や文脈、他の事象との関係など、様々なテーマと結びつけて話をする。そのため、ローコンテクストの人にとっては非常に回りくどい。だが、エリン・メイヤーによれば、ハイコンテクスト同士のコミュニケーションが最も難しいという。安直な考え方だが、双方がともに理解しづらい複雑な話をするので、余計に話がややこしくなるのだろう。ハイコンテクスト同士が掛け合わさると、スーパーハイコンテクスト状態が生まれるらしい

 この先生(日本人)は、ハイコンテクストであるイスラエル人、インド人、ベトナム人と仕事をした期間が長い。ハイコンテクスト同士のコミュニケーションに慣れてしまった結果、セミナーの主催者から与えられたテーマに対して、ストレートにコンテンツを用意するという意識が薄れてしまったのかもしれない。この先生の話を聞きながら、私はベトナムでの生活が長い日本人のグループと一緒に仕事をした時のことを思い出していた。彼らはこちらから質問をしても答えがややピンボケであったり、逆に無関係な話を混ぜ込んできたりする。だから、質問すればするほど、話が解らなってしまうのである。これも一種のスーパーハイコンテクスト状態なのかもしれない。

 (3)ベトナムで独立開業した診断士からは、現地のベトナム情報を色々と知ることができた。ベトナム人は家族や友人との時間、自分の時間を非常に大切にするという(だから、残業などはもっての外だろう。これは他のASEANの国でもよく見られる傾向である)。会社から社員に何かプレゼントをする時には、家族で分け合うことができる物をあげると喜ばれる。家族は「お父さんは(こんなプレゼントをくれる)とてもいい会社で働いている」と思ってくれる。

 ベトナム人は日本人と違って、ほとんど本を読まない(VIETJO「年に1冊も本を読まないベトナム人、活字離れ進む」〔2015年4月13日〕という記事のことを思い出した)。また、大学の専攻通りの職種に就くことが多い。そのため、彼らの知識の幅は非常に狭い。そこで、知識や能力の幅を広げるために社内で勉強会や研修を開催すると、現地社員は喜んでくれるそうだ。

 (4)ペルー、アフガニスタン、シリア(今みたいに国家が崩壊する前の時期)で建設コンサルティングの仕事をしたという特異な経験を持つ診断士の話もあった。結局のところ、大切なのは日本人技術者と現地スタッフのコミュニケーションなのだという。「コミュニケーションが大切」と言うと、なぜか日本人は納得する。同じようなことは「コミュニケーション」を「人材育成」や「マネジメント」などに置き換えてもあてはまる。どうしてこんな抽象的な言葉で納得できるのか、私はいつも不思議なのだが、これもまた日本がハイコンテクストであることの証左なのだろう。

 私などは理解が遅いので、「具体的にどういうコミュニケーションをすればよいのか?」と聞きたくなるのだが、そういう時の反応はだいたい予想がつく。「それは個別のケースになってみないと解らない」というものである。日本人には特殊能力が備わっているせいか、具体的な問題に直面しても即興的に対応策を考え出すことができる(以前の記事「竹田恒泰『日本人はなぜ日本のことを知らないのか』―よくも悪くも「何となく、何とかしてしまう」のが日本人」を参照)。

 ただ、それでは他人に伝える知識としては不十分であろう。仮に個別のケースによって対応が異なるならば、「○○の時は○○する。△△の時は△△する。□□の時は□□する・・・」というルールの束をはっきりさせる必要がある。ITの言葉を借りれば、「IF~THEN・・・文」の条件分岐を分厚くする必要がある。それが重層的であればあるほど、プロフェッショナルと呼ぶにふさわしい。

 (5)最後に、総合商社勤務で中国駐在経験が長い診断士の話があった。中国現地法人では、人事の他に総務、経理、リスクマネジメントなども担当したそうだ。話を単純化するために、中国現地法人の組織ピラミッドが、経営層、マネジャー層、新人・若手層の3層から成り立っているとする。新人・若手層の給与は月10万円、マネジャー層の給与は月15万円であるとしよう。

 ある時、新人を採用しようと面接したところ、同年代の社員よりもはるかに優秀な人がいたため、月15万円の給与で採用することにした。ところが、この先生によれば、「いい人だから採用したい」と言って給与を上げて採用すると失敗するという。なぜならば、月15万円もらえるのはマネジャー層であって、新人・若手層ではない。月10万円の新人・若手層に、月15万円の新人を1人入れると、その企業の賃金テーブルが崩れてしまう。すると、社内では不協和音が生じる

 ただ、これは極めて日本的な考え方だと感じた。仮にこれが欧米企業の中国現地法人であれば、月15万円に見合う能力を持つ人は、新人であってもマネジャー相当として採用し、彼らと同じような仕事を与えるに違いない。逆に、どんなに能力が高くても、新人は組織ピラミッドの一番下からスタートし、順番に昇進しなければならないというのは、日本的な年功序列制の発想である。おそらく、この先生が勤める総合商社は、今も年功序列的な人事制度であろうと推測される。

 ただ、私は個人的に、年功序列を肯定的に評価していることは最後につけ加えておく(以前の記事「坂本光司『日本でいちばん大切にしたい会社2』―給与・採用に関する2つの提言案(前半)(後半)」、「『戦略人事(DHBR2015年12月号)』―アメリカ流人材マネジメントを日本流に修正する試案」などを参照)。年功序列を肯定するには、給与は仕事のパフォーマンスに対する対価であるという考えを大幅に捨て去る必要がある。給与は生活費としての性格が強いため、年齢を重ねて生活コストが上がれば、それと連動して給与も上げる必要がある(以前の記事「ドラッカー「顧客の創造」の意味に関する私的解釈」を参照)。


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