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【城北支部国際部】「ここがポイント!”地方のインバウンド誘致”と”越境EC”」 ~現場での支援事例に基づく現状、課題、未来~(セミナーメモ書き)
【城北支部国際部セミナー】「ここがポイント!日本人が気づいていない外国人旅行者へのおもてなし」~インバウンド需要に対応する現場経営者からのメッセージ~
【城北支部国際部セミナー】「中小企業診断士による国際展開支援事例から、支援のあり方、診断士の役割を学ぶ」を開催

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


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こぼれ落ちたピース
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◆個人事務所「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ


(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

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(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

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(以下の資格の講師をしています。
 ―ITパスポート
 ―情報セキュリティマネジメント
 ―経営学検定(初級・中級)
 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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2017年07月30日

【城北支部国際部】「ここがポイント!”地方のインバウンド誘致”と”越境EC”」 ~現場での支援事例に基づく現状、課題、未来~(セミナーメモ書き)

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 私が所属する(一社)東京都中小企業診断士協会国際部で、診断士向けにセミナーを開催した。主催者側の私が言うのもおこがましいが、正直に言って、東京協会の理論政策更新研修よりも面白かったと思う(先日受講した理論政策更新研修のひどさは「東京都の中小企業向け補助金・助成金など一覧【平成29年度】」で書いた)。セミナーで勉強になったことのメモ書き。

 【講演①】非観光地域におけるインバウンド誘致の取り組み
 (東京都中小企業診断士協会 城北支部国際部 小沢智樹会員)
 ・人口に対する外国人観光客数の比率は、フランスが134.5%で群を抜いているが、先進国の多くは大体40~50%となっている。2016年の訪日外国人旅行者数は2,403万9,000人であり、人口に対する比率は18.9%である。ドイツの人口に対する外国人観光客数の割合は42%であり、仮に日本がドイツの比率を目標にすると、訪日外国人旅行者数は5,300万人となる。現在、政府は2020年までに訪日外国人旅行者数を4,000万人に増やすという計画を立てているが、必ずしも非現実的な数字とも言えないようである。

 旅行収支の対GDP比を見ると、アメリカやドイツが1.1%となっている。2016年の日本の旅行収支は1兆3,391億円であり、GDP約537兆円に対する割合はわずか0.2%である。これを、アメリカやドイツ並みに引き上げるとすると、旅行収支は約5兆4,466億円となる。政府の目標は2020年時点で8兆円であるから、こちらはかなりストレッチした目標であると言える。

 ・政府は2014年度から「地方創生関係交付金」を設けており、2016年度は「地方創生推進交付金」(1,000億円、事業費ベース2,000億円)を実施した。本交付金の目的は、①しごと創生、②地方への人の流れ、③働き方改革、④まちづくりの4つであり、①の一環として観光に注力することとなっている。いわゆるゴールデンルートと呼ばれる東京、京都、大阪(+富士山)に加えて、地方への観光を促進するのが目的である。具体的には、地域の「稼ぐ力」向上のため、様々な連携を図りながら地域経済全体の活性化につながる観光戦略を実施する専門組織として、日本版DMO(Destination Marketing/Management Organization)を確立し、これを核とした観光地域づくりを行う。また、地場産品を戦略的に束ね、安定的な販路開拓・拡大に取り組む地域商社を核に、地場産品市場の拡大、地域経済の活性化を目指している。

 交付金の額が大きい都道府県は、上位から順番に、北海道(65億円)、長野県(37億円)、熊本県(29億円)、茨城県(28億円)である。北海道の交付金が高いのは、市町村の数が多いためだ。熊本県、茨城県の交付金が多いのは、震災復興の意味合いがあるのかもしれない(ただし、東北地方の交付金はそれほど大きくないので、震災復興という観点のみで交付金の多寡を判断することは難しい)。都道府県民1人あたりの所得に対する都道府県民1人あたりの交付金の割合を見てみると、上位から順番に、高知県(20%)、鳥取県(18%)、東京都(16%)、富山県(13%)となっている。意外なことに、地方創生と言いながら、東京都の交付金も多い。

 ・現在、観光庁には「日本版DMO候補法人登録制度」というものがある。これは観光庁を登録主体として、日本版DMOの候補となり得る法人を「登録」し、登録を行った法人、およびこれと連携して事業を行う関係団体に対して、関係省庁が連携して支援を行うことで、各地における日本版DMOの形成・確立を強力に支援する制度である。登録を目指す法人は、日本版DMO形成・確立計画(形成計画)を作成し、地方公共団体と連名で観光庁に提出する。形成計画は、科学的アプローチによる観光地域づくりを重視している。すなわち、戦略に基づいてマーケティング/マネジメントを実施し、効果をKPI(Key Performance Indicator:重要業績指標)を用いて測定するということである。観光庁の審査を通ると、日本版DMOとして登録される。現時点で、広域連携DMO6件、地域連携DMO67件、地域DMO72件の計145件が登録されている。

 ・本講演のテーマは”非観光地”におけるインバウンド誘致である。観光地の定義は難しいが、Wikipediaの「日本の観光地一覧」によると、384市区町村が観光地に該当するそうだ。日本の市区町村は全部で1,741であるから、残りの1,357市区町村が非観光地ということになる。近年はニューツーリズムがブームになっており、エコツーリズム、スポーツツーリズム、グリーンツーリズム、メディカルツーリズムなど、様々な旅行形態が存在する。言い換えれば、地域の資源は何でも観光資源になり得る可能性を秘めている。

 講師はある自治体において、田園、大きな橋、サッカー、モニュメント、特攻機という資源に注目した。ところが、インバウンダーの約8割はアジア人(その大半は中国人)である。田園風景はアジア人にとって珍しいものではない。大きな橋に関しては、中国の方がよっぽど長けている。サッカーはアジアではあまり人気がない。モニュメントを見ても、観光客はそれに特別な価値を感じない。特攻機は、アジアでは歴史のタブーに触れてしまう。逆に、インバウンダーにとって受けがよかったのは、神社、嫁入り船、海岸線、お祭りだったそうだ。

 ・講師が非観光地でインバウンダーのニーズ調査を行った結果解ったのは、彼らは実は純粋なインバウンダーではないということであった。調査対象者の中には、もちろん欧米人もいたが、日本に住んでいる留学生や研修生が多かった。そして、彼らが本国から家族や親戚を呼び寄せているケースもあった。初めて日本を訪れる外国人を、いきなり非観光地に向かわせるのは非常にハードルが高い。そうではなく、日本に住んでいてある程度日本のことを解ってる人をまずはターゲットにする。そして、彼らの家族や親戚と一緒に来てもらうことで、徐々に観光客を増やすのが有効ではないかというのが講師の見解であった。

 なお、講師はその非観光地をPRするのに、「日本政府観光局(JNTO)」のHPを利用した。合わせて、観光案内所にチラシを配布した。HPに関して言うと、外国人向けのHPは観光地の特徴を解りやすく伝えようとシンプルにしがちであるが、外国人旅行客は事前にディープな情報を研究して訪日するケースが多いため、情報は惜しみなく出した方がよいとのことであった。

 【講演②】越境ECの現状と今後の課題について
 (越境EC総研合同会社 代表 中川泰氏)
 ・講師は越境ECのコンサルティングで数多くの企業を支援してきた方である。越境ECは今ブームになっているが、越境ECで儲かっている企業は実はほとんどないという。儲かっているのは、モールを運営するAmazon.comと、商品を運ぶ日本郵便だけだそうだ。だから、越境ECを始めようと思う方は、もう少し慎重に戦略を練った方がよい。

 講師のところに相談に来る方は、「中国で商品を売りたい。売れれば何でもよい」、「とにかくAmazon.comに出店したい」と言うケースがあまりに多いらしい。国・地域やチャネルを決める前に、何を売るか=商品を決めるのが先である。時折、「日本で売れないから海外で売りたい」という方もいるのだが、日本で売れないものは海外でも売れない。日本で売れるものがやはり海外でも売れる。だから、日本で自信を持って販売しているものを、越境ECでも扱うべきである。越境ECで売れる商品には3つの特徴がある。①差別化ポイントが解りやすい、②商品のメンテナンスがしやすい、③商品名の発音がしやすい、の3つである。

 ①については、国によって顧客が何を重視するかが異なる。「商品のスペックが全く同じだとしたら何を重視するか?」というアンケートを取ると、アメリカ人は「安い価格」、ヨーロッパ人は「エコへの配慮」、アジア人は「ブランド」(中国人にとっては「その商品を持っていると周囲に自慢できる」ことが重要)と答える。よって、ターゲット顧客ごとに訴求ポイントを上手く変えることが大切である。なお、アメリカ人について補足すると、彼らは低価格の商品ばかりをほしがっているわけではない。低価格も重要だが、スペックの高さも重要である。つまり、コストパフォーマンスを評価している。アメリカ人は、「その商品を持っていると作業が楽になる」といった利便性を重視する。③については、日本語の商品名をそのまま海外で使用すると、その国の隠語に近い発音になることがあるので要注意である。その場合は、日本と海外で商品名を使い分けるとよい。

 ・越境ECを行う場合には、SNSとの導線を意識する必要がある。マーケティング理論にはAIDMAモデルに代わるAISASモデルというものがあるが、今時の外国人(特に若者)は、欲しい商品がある時にgoogleで検索しない。SNSで友達がある商品を使っている写真を見て、それがほしいと思うと、すぐにAmazonで検索する。アメリカ人の約50%は、気になった商品は直接Amazonで検索するという調査結果もあるという。よって、例えばアメリカに越境ECで商品を売りたい場合には、まず在米日本人に商品を使ってもらって、写真をInstagramに英語でアップしてもらい、アメリカ人のフォロワーに浸透するような仕掛けを行うとよい。

 ・商品を選んだ後に、販売先の国を決める。まずは、①その商品を使う文化がある国を選ぶ必要がある。ある企業は、和包丁を越境ECで販売しようとしたが上手くいかなかった。というのも、和包丁は定期的に砥石で研ぐ必要があるが、外国人にはその研ぎ方が解らないためである。それから、②大きなモールがあって、インターネットで商品を買う文化がある国でなければならない。さらに、③郵便事情のいい国を選択するべきである。商品の運送状況を配達先までトレースしている国は、日本を含めて世界で8か国しかない(実はアメリカは入っていない)。

 インドネシアは人口が多く、ECが急成長しており、クレジットカードも普及しつつあるので、インドネシアで越境ECをしたいという人が多い。しかし、この手のマクロ指標は全くあてにならない。インドネシアは島国であり、物流事情が非常に悪いため、商品が届かないリスクが高い。よって、こういう国は除外するべきである。越境ECサイトで顧客の住所を入力させる際に、国名だけは、配達可能な国をプルダウン形式で選ばせるようにするとよい。

 ・商品、国、ターゲット顧客を決めたら、最後は販売サイトをどうするか決めなければならない。自社サイトで販売するという方法もあるが、自社サイトで成功している企業はほとんどないという。となると、モールに出店する方が成功確率が高い。ただし、テンセント(京東全球購〔JD Worldwide〕)やアリババ(天猫国際)は保証料や年会費で何百万円もかかる。これは、両社が出店企業からお金を取るモデルで成り立っているビジネスであるからだ。講師は、中国に越境ECで商品を売りたいと相談に来られる方に「予算はいくらですか?」と聞くのだが、大体500万円ぐらいという答えが返ってくる。その場合は、中国に進出するのは止めた方がよいとアドバイスするそうだ。これに対して、Amazon.comは、Amazonプライム会員(アメリカに約6,500万人)を収益源とするモデルであるため、出店企業はコストを抑えることができる。

 ・越境ECで頭を悩ますのが運賃の設定方法である。アメリカ人の約78%は、サイトに運賃が表示された瞬間に購入を諦めるというデータがある。運賃には、①送料込、②従量制、③定額制、④従価制という4つがある。①送料込は日本人には良心的に見えるものの、海外では送料が非常に安いか、商品が非常に安いかのどちらかだと思われる。よってお勧めできない。②従量制も顧客からは敬遠される傾向がある。よって、③定額制か④従価制にする。③定額制は、購買層が若い場合に有効である。④従価制は、購買層の所得が高い場合に有効である

2016年09月28日

【城北支部国際部セミナー】「ここがポイント!日本人が気づいていない外国人旅行者へのおもてなし」~インバウンド需要に対応する現場経営者からのメッセージ~

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ホテル

 私が所属する(一社)東京都中小企業診断士協会・城北支部国際部では、9月24日(土)に「『ここがポイント!日本人が気づいていない外国人旅行者へのおもてなし』~インバウンド需要に対応する現場経営者からのメッセージ~」と題してセミナーを開催した。プログラムは以下の通り。今回の記事では、セミナーの内容を簡単にまとめておく。
講演①「オ・モ・テ・ナ・シは日本だけの文化じゃない、旅行者の気持ちになってみて」
講師:株式会社ファーストメモリー代表取締役 李 承妍(り しょうけん)氏

講演②「東京都北区赤羽に泊まる。その心とは。」
講師:株式会社TheBoundary代表 「HOTEL ICHINICHI」オーナー 吉柴 宏美氏
 (1)「おもてなし」が最も問われるのは、マニュアルに書いていないことが起きた時である。ある中国人旅行客が日本で約15万円の炊飯器を購入したが、帰国後に初期不良であることが判明した。炊飯器のメーカーに問い合わせると、「修理することは可能だが、海外に送ることができない」と言われた。そこで、そのメーカーの製品を取り扱っている中国の販売代理店に相談したところ、「日本で買ったものは修理できない」と断られてしまった。

 この場合、「マニュアルに書いていないことはできない」と考えるのではなく、「マニュアルに書いていないことは、別に禁止されていることではない。顧客にとって意味があるならば、積極的にやればよい」と発想を転換する必要があるだろう。そういう判断ができる人材を育成すること、また、そのような判断を許容する組織風土を醸成することが、おもてなしを提供する上で重要になる。もちろん、毎回アドホックに判断を下すわけにもいかないので、定期的に「例外事象」を検証しなければならない。例外が1回限りのことではなく、今後も頻繁に起きる可能性があるのであれば、マニュアルを改訂する。そうすることで、組織全体のサービス品質が底上げされる。

 (2)欧米の旅行客は、旅の上級者が多い。彼らは事前に日本で行きたい場所の情報を細かくリサーチしている。谷中や根津神社のことを知っている外国人もいる。また、オーストラリアやアメリカの旅行客の中には、四国・九州を自転車でツーリングする人もいる。四国・九州では東京ほど英語が通じないため、ツーリストは片言の日本語で現地の人に話しかけるのだが、それでも親切に接してくれる日本人にいたく感動するそうだ。すると、次に日本を訪れた際には、午前中は日本語教室に通い、午後は旅行を楽しみたい、といった要望が出てくる。

 欧米人に対しては、こちら側もきめ細かく情報を提供することが求められる。Airbnbを利用して訪日する欧米人には、空港からのアクセス地図、宿泊地の周辺マップ、部屋にある家電の取扱説明書を提供している。また、欧米人は、帰国後に何を体験したのかを周囲の人に語りたがる、あるいは自分が体験したことを母国で実践したがる傾向がある。とりわけ、欧米人はラーメン、寿司、卵焼きに食いつく。そこで、母国の食材で作れるようなレシピを渡すと、非常に喜ばれる。海外には「だしを取る」という風習がないため、だしの取り方もレシピに書いておく。

 (3)アジア人観光客は、事前にリサーチするものの、情報がありすぎて混乱しているケースが多い。そこで、「ガイドブックにはこう書いてあるが、現地の人(日本人)は実際にはどう思っているのか?」を教えると、彼らの旅行の助けになる。アジア人は写真をたくさん撮って、SNSで友人とシェアする傾向が強い。そのため、本来は写真撮影NGの場所であっても、交渉して特別に許可をもらうことがある(例えば、茶室の内部など)。また、彼らはSNSにアップする写真を少しでもきれいに見せいたいという欲求も持っている。「写真に写っている顔を小さくしたい」、「二の腕を細くしたい」といったニーズにも応えてあげると、旅行客の満足度が上がる。

 ところで、インバウンド需要をとらえるために、外国語に対応したHPを制作している企業は多いが、たいていは英語化で止まっている。2015年の訪日外国人を国別に見ると、1位中国(約499万人、25.3%)、2位韓国(約400万人、20.3%)、3位台湾(約368万人、18.6%)、4位香港(約152万人、7.7%)、5位アメリカ(約103万人、5.2%)である(ANA「外国人観光客数 年別・国別ランキング」より)。よって、英語対応だけでなく、中国語対応することが欠かせない。

 (4)外国人旅行客はマナーが悪いと言われることがある。しかし、多くの外国人旅行客は、日本のルールは守りたいと思っている。ただ、日本のルールをよく知らないだけである。電車の中で電話を使ったり、大声で話したりしてはいけない、レストランの予約をキャンセルする場合には事前に電話しなければならないといったルールを共有しておけば、トラブルはかなり減らせる。

 (5)吉柴宏美氏は赤羽で「ICHINICHI」というホテル・ホステルを経営している。赤羽と言えば飲み屋のイメージが強い(「せんべろ」=1,000円でベロベロに酔えるという言葉がある)。ホテルで起業するという話を周囲にしたところ、「赤羽などに人が集まるのか?」と何人にも言われたという。だが、吉柴氏は「それは赤羽が雑多な街という印象を持っている人の意見だ」と一蹴した。訪日外国人は、赤羽という街がどういうところなのかは気にしない。空港から近く、自分が行きたい場所へのアクセスがよいところに泊まりたいと考える(これは、日本人が海外旅行する時も同じはずだ)。そういう視点で赤羽を見ると、実に外国人旅行客に適した立地である。

 また、赤羽に飲み屋が多いというのもプラスに働く。宿泊客に「日本で面白かったところはどこか?」と聞くと、ラーメン屋、のんべえ横丁といった回答が返ってくる。銀座などは日本旅行の定番であるが、銀座のショップは母国にもたいてい存在するわけで、わざわざ銀座まで来る必要はない(これは私も銀座で外国人が増えるのを見ながら、薄々感じていたことである。また、ビックカメラなどで爆買いをする中国人は多いものの、そこで売っている家電の大半は中国製であり、日本で買う意味があるのかと思ってしまう)。それよりも、日本ならではの体験を外国人旅行客は求めている。飲み屋が多い赤羽は、底知れぬポテンシャルを秘めているかもしれない。

 (6)最初の顧客誘導として、最も効果的なのは海外のホテルブッキングサイトである。Expedia、Booking.com(欧州のユーザーが多い)、Agoda(アジア人のユーザーが多い)、Trip Adviserなどと契約している。ホテルブッキングサイトを活用する場合、価格は統一する必要がある。各サイトに支払うコミッションの割合が異なるからと言って、サイトごとに価格を変えると、サイト内の検索順位が下がるようなアルゴリズムになっている。

 (7)小さなホテルであるから、大手ホテルならば絶対にやらないことをするように心がけている。ある台湾人旅行客が、空気清浄機を家電量販店で買おうとしていたが、あいにく売り切れていた。どうしてもその空気清浄機がほしいのだけれども、後2日で台湾に帰らなければならない。他の家電量販店にその空気清浄機が置いてある保証はない。そこで、吉柴氏がAmazonで検索したところ、在庫があると解ったので、吉柴氏の個人アカウントで立て替え購入をした。翌日、製品が無事に届き、その台湾人旅行客は大喜びで帰国した。実は、彼らはそれまで部屋が狭いだの何だのと文句を言っていた。しかし、空気清浄機の一件があってからはがらりと態度が変わり、Agodaのレビューで星10をつけてくれたそうだ。この話は(1)に通じるところがある。

 ※勝手ながら、10月は1か月間ブログをお休みします。11月にまたお会いしましょう!
 (ブログ別館「こぼれ落ちたピース」は更新する予定です)


2016年03月30日

【城北支部国際部セミナー】「中小企業診断士による国際展開支援事例から、支援のあり方、診断士の役割を学ぶ」を開催

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グローバル

 私が所属する(一社)東京都中小企業診断士協会 城北支部国際部で、「中小企業診断士による国際展開支援事例から、支援のあり方、診断士の役割を学ぶ」というテーマで、診断士向けのセミナーを開催した。ここ数年、国際部では、「海外ビジネスを検討・推進している中小企業を診断士がどのように支援することができるか?」というテーマでセミナーを実施している。今回もその一環である。講師には、神谷俊彦先生(株式会社ケービーシー代表取締役)坂口到先生(ISコンサルティング株式会社代表取締役)をお招きした。以下、セミナー内容のメモ書き。

 (1)JETROは、海外進出成功のポイントとして、①進出目的を明確にする、②信頼できる現地パートナーを見極める、③事前調査を入念に実施する、という3つを挙げている。だが、この3つをしっかり守っている中小企業はそれほど多くない。取引先から海外に来てくれと言われて何となく進出してしまった、現地を2~3回視察しただけで進出地域を決めてしまった、という例は多い。しかも、困ったことに、①~③が不十分でもある程度成功してしまう、運のいい企業もいる。

 だから、海外事業で赤字を垂れ流しても、「まだ海外に慣れていないから」、「これは授業料だから」などと言って赤字を正当化してしまう。そして、自社も辛抱強く事業を続けていれば、先行する他社のようにいつか成功すると信じてしまう。しかし、これはやはりよくない。だから、JETROが掲げる3つの成功要因には、④撤退条件を明確にする、というのをつけ加える必要がある。何年後に市場シェア○○%を達成できなかったら、顧客企業を○○社獲得できなかったら、月産○○台に乗らなかったら、原価率が○○%まで下がらなかったら撤退する、とあらかじめ決めておく。

 (2)海外ビジネスには、日本では考えられないようなリスクがつきものである。外国人もしくは現地にいる日本人に騙されたという話は、日本にいながらでもたくさん入手することができる。そういう話を聞くたびに、「自分は絶対そんな目には遭わない」と、自分のリスク回避能力を過信する人がいる。そして、そういう人に限って、まんまと海外で騙される

 この話を聞いて、私は日本における不動産詐欺の話を思い出した。不動産詐欺に最も引っかかりやすい人は誰かと言うと、実は法学部出身者である(そして、私も法学部出身だ)。法律に関する知識があるから騙されないとは限らない。逆に、なまじ法律の知識があるだけに、詐欺師はそこにつけ込みやすいのだという。専門知識があればあるほど、自分の知識を過信せず、詐欺に引っかからないよう用心しなければならない

 (3)中小企業はニッチ戦略で生き残るべきだとよく言われる(私はこれに対しては必ずしも同意しないのだが)。だが、海外で成功する企業を観察すると、核となる独自製品を持つと同時に、周辺製品やサービスでも収益を上げている。例えば、海外に進出したとあるネジの製造会社は、ネジを作るだけでなく、治具の製作や、ネジ製造用機械の修理サービスも行っている。日本の製造業は、自分で治具を作る、機械が壊れたら自分で直す、機械を分解して自分で掃除するのが普通である。しかし、海外の製造業はそこまでやらない。だから、日本企業が当たり前と思ってやっていたことが、海外では強みになることがある。

 他の製品分野に進出する際、コンサルタントはアンゾフの成長ベクトルを思い浮かべる。4つの象限のうち、新しい顧客に新しい製品を提供する多角化戦略は、中小企業にとってあまりにリスクが高すぎるので禁じ手とされる。ところが、ある日本の金型メーカーは、マレーシアでカフェを経営している。外部の人間が見たら意味不明である。だが、そのメーカーの社長曰く、よく解らないマレーシアでいきなり金型の製造ラインを立ち上げるのは難しすぎる。それよりも、手っ取り早く商売ができるカフェをまずはやってみて、マレーシアという国がどういうところなのか理解しようと思った、ということであった。なるほどそういう多角化もあるのかと考えさせられた。

 (4)ASEANでは昨年末にASEAN経済共同体(AEC)が発足し、単一市場・単一製造拠点ができ上がると期待が高まっている。ところが、実際のところ、日本企業にとってのASEAN人気は若干下がっている。なぜならば、TPPができたことによって、ASEANで製造しなくても、日本から直接アメリカなどに輸出すればよくなったからである。また、アメリカの労賃が意外と安くなっているという現状もある。アメリカの大統領選で各候補者が揃って格差を問題にしているのは、アメリカ国内の労賃が相当下がっていることの表れである。

 (5)コスト削減を目的に海外進出する製造業は非常に多いが、コストを下げるのはそう簡単ではない。労務費は確かに下がるものの、製造原価に占める労務費の割合はそれほど高くない(この点については、かなり昔に旧ブログの記事「製造業が海外生産をする理由」で触れた)。原価を下げるには、原材料を現地で調達しなければならない。ところが、ネジ1本でも現地で調達するのは容易ではない。現地のよく解らない企業から調達したネジが原因で不具合が発生したら大問題である。だから、進出直後はどうしても日本から部品を輸入することになる。同時に、現地の調達先を少しずつ発掘・育成する努力が求められる。

 取引先からの要請で海外に進出した企業にとっての盲点は、顧客企業から「海外で製造しているなら、日本国内の製品も安くなりますよね?」と言われることである。確かに海外では、コストが下がって安価になった製品を、取引先の現地法人に納入している。一方、日本国内では、従来通りのコストの製品を国内の取引先に納入するという流れは変わっていない。ところが、取引先はこの点を無視して、国内でも原価が下げられると考えてしまうのである。だから、海外進出計画を策定する際には、海外進出が国内の既存事業に与える影響も考慮する必要がある。

 (6)東京商工会議所では、年間延べ100社以上の中小企業の経営相談を行っている。そのうち、海外関連は3~4割だという。東商には総合商社出身の海外展開担当コーディネーターが数名在籍している。海外関連の相談を持ちかけると、コーディネーターが経営課題を整理・深掘りし、課題解決に最適な専門家をアレンジしてくれる。

 ところが、中小企業には商社が嫌いな人が多いそうだ。相談に来る中小企業も、商社を介さずに直接海外に輸出したいと言う。しかし、コーディネーターが話を聞くと、社内に貿易経験者はおろか、英語を話せる人もいないという。これでは海外展開は無理である。確かに、商社は高いコミッションを取ることがある。だが、商社は世界中のネットワークを活かして顧客を探してくれる、貿易実務をお任せできる、クレームの初期対応をしてくれるなど、メリットも多い。コーディネーターが総合商社出身だからというわけではないが、商社を上手く活用するのも手である。

 商社側の立場に立つと、商社が既にカバーしている顧客に対して販売可能な製品である方が、ビジネスが進めやすいという。また、商社も全ての製品に詳しいわけではないから、製品知識などの面でメーカーが協力してくれると大変ありがたいそうだ。

 (7)日本にいる時は冷静に判断できるのに、海外となると途端に冷静さが失われるケースは本当によくあるようだ。ある輸入卸売業の企業は、台湾からの製品を日本国内で販売していた。だが、輸入事業が先細りになったため、新規事業を検討することとした。すると、輸入元の台湾企業から台湾の大手飲食業を紹介され、「日本のいい食材があれば是非購入したい」と言われた。そこで、この企業は台湾への輸出事業に本格的に乗り出すこととした。

 この企業は、「台湾の大手飲食業から『引合』があったので輸出事業を始めることにした」と語っていた。しかし、「いい食材があれば購入したい」、つまり「安くて品質のいものがあれば買いたい」というのは誰でも簡単に口にすることであり、引合でも何でもない。仮に、日本の大手飲食業から同じことを言われたら、この企業の社長はおそらく社交辞令程度にしかとらえなかっただろう。ところが、舞台が海外となった途端に、何かおいしい話のように感じてしまうのである。

 別のセミナーで、シンガポールに飲食店を開こうとしている中小企業の話を聞いた。シンガポールに視察に行った社長は、現地の不動産会社から物件を紹介され、ろくに内覧もしないうちに、「今日中にお金を払ってくれたらあなたに売る。だが、今日払ってくれなければ、別の人に売ることが決まっている」と言われた。この機会を逃したらシンガポールにお店を持つことができないと考えた社長は、いつも相談に乗ってもらっていたコンサルタントに電話でこの話を伝えた。当然、コンサルタントは支払いを止めさせようとした。しかし、社長はコンサルタントのアドバイスを振り切って入金してしまった。その後どうなったかは、読者の皆様のご想像にお任せする。

 (8)坂口先生のコンサルティングのスタンスは、中小企業がこういう風にしたいという考えを持っている場合、まずは可能な限りその考えを尊重する。その上で、こういう別の方法もあるがどうかと柔軟に軌道修正するのだそうだ。私もこのやり方には賛成である(昔は私も理想論を振りかざしていたが、最近は止めた。年配の診断士には自分の経験を押しつけるようなアドバイスができない人が少なからずいるようで、中小企業との間でトラブルになることがあると聞く)。

 坂口先生はとても穏やかな方なのだが、稀に中小企業の社長に対して厳しいことを言うことがある。その一例が、ブログ別館「ニアム・オキーフ『あなたは最初の100日間に何をすべきか―成功するリーダー、マネジャーの鉄則』」で書いた中小企業だ。坂口先生とはセミナー後の懇親会でもじっくり話をさせてもらったのだが、坂口先生が厳しく当たったのは、「利益を上げて事業を継続する」という企業側の本源的な目的と、「何か成果を上げて周りの役員にいいところを見せたい」という社長の個人的動機が両立不能だったからである。コンサルタントの仕事は、その企業にとって何が最善かを考えることであり、社長を個人的に満足させるのは二の次である

 《お知らせ》
 誠に勝手ながら、4月は1か月間ブログをお休みさせていただきます。
 5月にまたお会いしましょう!



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