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DHBR2017年9月号『燃え尽きない働き方』―バーンアウトでうつになったら日記をつけてみよう
双極性障害で入院したところ40日の予定が1週間で退院してしまった事の顛末

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2017年09月19日

DHBR2017年9月号『燃え尽きない働き方』―バーンアウトでうつになったら日記をつけてみよう


ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2017年 09 月号 [雑誌] (燃え尽きない働き方)ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2017年 09 月号 [雑誌] (燃え尽きない働き方)

ダイヤモンド社 2017-08-10

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 『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2017年9月号の特集は「燃え尽き症候群」。私は医学的なことは詳しく解らないのだが、燃え尽き症候群には大きく分けて2つのタイプがあると思う。1つは、「野心的な目標を掲げてそれを達成した後、次の目標が見えなくてモチベーションを失ってしまう」というタイプであり、スポーツ選手や企業経営者に多い。もう1つは、「自分では精一杯努力しているつもりなのに、一向に小さな成果さえも出せず、ついには何をやっても無駄だという無力感に襲われる」というタイプである。社会が成熟し、かつてのような高い成長が見込めなくなった現代では、後者のタイプの方が多いのではないかと思う。

 後者の燃え尽き症候群は、「心のエネルギーが枯れ果てて、ガス欠車のようにアクセルを踏んでも動かない状態」であり、うつ病との共通点が多い。燃え尽き症候群もうつ病も、「献身的な人、使命感の強い人、頑固で意思が強く思考や感情の切り替えが柔軟でない人、対人関係に不調和がある人、上昇志向が強く能力が高い人」、あるいは「感受性が強く周囲に気を遣いすぎる人、物事の受け止め方の柔軟性に乏しく、几帳面で神経質な人、責任感は強く何事も完璧にこなそうとするが、不器用で一つの物事に過剰にこだわりやすい人」がかかりやすいと言われる。ただし、うつ病の人は、昔のことをくよくよと思い出しては悔んだり、自分1人が犠牲になっていると感じたりする自責的な傾向が強いのに対し、燃え尽き症候群の場合は、他責感が強く表れ、怒りや嫌悪などの攻撃的な感情が他者に対して表れる。

 以前の記事「双極性障害で入院したところ40日の予定が1週間で退院してしまった事の顛末」でも書いたように、私自身もうつ病⇒非定型うつ病(後で知ったことだが、非定型うつ病という病名は医学的に確立されていない)⇒双極性障害Ⅱ型とコロコロと病名が変わってもう9年も治療を続けている。私の場合、双極性障害と言っても、自責的なうつ病の症状が現れるというよりも、前職のベンチャー企業で経験したひどい事柄を思い出しては「あの会社のせいでこうなった」と思うことが多々あり、他責的になりやすいという燃え尽き症候群の方に合致する。

 ただ、病気が発症した時は確かに長時間労働だったものの、燃え尽きるほどの長時間労働ではなかったから、燃え尽き症候群と言うには無理があると自分でも思っている。最近では、先ほどの記事でも書いたように、自分がどういう病気なのかはどうでもよくなっていて、これは私の性格の一部なのだと受け止めて、上手くつき合っていくしかないのだろうと腹を括っている。

 私は医療の専門家ではないので、燃え尽き症候群に関して何かを書くことはできない。しかし、まがりなりにも9年間、うつ病に関連する治療を受けてきたから、ここからはうつ病に関して私の思うところを書いてみたい(本号の特集からは外れるが・・・)。うつ病は一般的に、「脳のエネルギーが欠乏した状態であり、憂うつな気分や様々な意欲(食欲、睡眠欲、性欲など)の低下といった心理的症状が続くだけでなく、身体的な自覚症状(全身倦怠感、頭痛など)を伴う病気」とされるが、一義的な定義は学術的にも確立されていない。つまり、うつ病の症状は患者によってバラバラである。そのため、製薬会社はありとあらゆる抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬を販売している。うつ病の患者の中には、複数種類の薬を服用している方も少なくないだろう。

 しかし、これらの薬には問題もある。通常、新薬販売の認可を得るためには、被験者を2つのグループに分け、一方のグループには新薬を、もう一方のグループにはプラセボ(偽薬)を投与し、新薬を投与したグループのみに効果があったことを証明しなければならない。だが、一部の薬については、この試験に問題があったことが告発されている。
 2002年には複数の厳密な調査によって、製薬会社が薬の認可を得るためにFDAに提出したのと同じデータが再検討され、パキシル、プロザック、ゾロフト(※いずれも、現在主流の抗うつ薬)を初めとするSSRIにはプラセボ〔偽薬〕と比べてほんのわずかな効果しかないということがわかった。
(クリストファー・レーン『乱造される心の病』〔河出書房新社、2009年〕)
乱造される心の病乱造される心の病
クリストファー・レーン 寺西 のぶ子

河出書房新社 2009-08-22

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 私は今年に入ってから「光トポグラフィー検査」というものを受けた。これは、脳活動に伴う大脳皮質の血中ヘモグロビン濃度変化を計測することで、うつ病かどうかを判定する検査である。その結果、私は「典型的な双極性障害である」と言われたのだが、それ以上に衝撃を受けたのは、「抗うつ薬の効果があるのは、うつ病患者のうち全体の3割ほどにしかすぎない」という医師の言葉であった。前述の通り、抗うつ薬の中には効果が怪しいものがある。「薬が効かないのだが・・・」という患者の訴えを聞いた精神科医は、患者を放っておくわけにもいかず、何か手を打たねばとの思いから、新たな薬を次々と追加する。こうして、患者は薬漬けになっていく。

 さらに困ったことに、抗うつ薬などの効果は限定的なのに、服用を止める時には「離脱症状」と呼ばれる副作用を伴う。詳しい説明はこちらに譲るが、具体的には頭痛、倦怠感、眠気、めまい、吐き気、ふらつき、ふるえ、冷や汗、血圧低下などの症状が出る。私も今年8月の入院中に、それまで服用していた抗うつ薬を医師から一度に止めさせられた結果、ひどい離脱症状に苦しんだ。以上のことから言える1つ目の教訓は、「薬に頼りすぎてはならない」ということである。

 抗うつ薬などの薬の効果が限定的である場合、次に選択されるのは認知療法である。人は成長するにつれて固定的なスキーマが形成され、それに基づいて歪んだ思考方法や考えが自然に浮かぶ自動思考が起こる。これがうつ病などの精神病の引き金となる。そこで、そうした認知の歪みに焦点を当て、認知を修正することで症状の改善を目指すのが認知療法である。しかし、この認知療法は、薬による治療よりも難しい。というのも、回復プロセスが患者によって実に多様であるからだ。間違った薬を投与しても効果が出なかったで済まされるが、間違った認知療法を施すと、患者の認知の歪みをさらに強化してしまうことになりかねない。患者の多様性に対応できる医師が日本にどれだけいるのか、私には解らない。このことから言えるもう1つの教訓は、残念なことだが「医師に頼りすぎてもいけない」ということである。
 うつ病の治療に当たってきた臨床医は長い間、認知療法(心理学の一般的な治療法)を受けている患者は、回復に至るまで標準的な経路をたどると想定していた。その経路は、多くの患者が回復した経験を平均して確認されたものだ。ところが2013年、平均ではなく個人が回復する結果に注目した研究者チームは、回復までの標準的な経路が患者の30%にしか当てはまらない事実を発見したのだ。
(トッド・ローズ『平均思考は捨てなさい―出る杭を伸ばす個の科学』〔早川書房、2017年〕)
平均思考は捨てなさい──出る杭を伸ばす個の科学 (早川書房)平均思考は捨てなさい──出る杭を伸ばす個の科学 (早川書房)
トッド ローズ 小坂 恵理

早川書房 2017-05-25

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 それでも私は一応、7年ほど同じかかりつけの医師にお世話になっている。ただし、これはあくまでも気休めであって、結局のところ、「自分の精神病に責任を持つのは自分しかいない」というのが私の正直な実感である。うつ病と向き合うということは、自分の感情と向き合うということである。そのための有効なツールとして、私は「日記」をお勧めしたい。もちろん、繰り返しになるがうつ病の症状は多様であるから、日記が万能な解決策になるとは私も思っていない。私の場合は日記が役に立ったというだけにすぎない。

 日記には、「自分が何で苦しんだか、悲しんだか、腹が立ったか」ということをつらつらと書いていく。とりとめのない文章でも構わない。うつ病の人は几帳面なのできちんとした文章を書かなければならないと思いがちだが、そういうことは全く気にする必要はない。日記を書くと、自分の中に溜め込んでいた負の感情を外部化することができる。それだけでも、心理的な負担は随分と軽くなる。ちなみに、私が「【シリーズ】ベンチャー失敗の教訓」という記事をわざわざ1年かけて書いたのも同じ理由である。一部の人からは、「前職の企業から訴えられるかもしれない」と批判も受けたものの、私はあくまでも自分の治療の一環として行ったまでである。前職の企業の名誉を守るのと自分の健康を守るのとを比べれば、後者の方がはるかに重要である。

 また、日記をつけるという習慣を持つことにも意義がある。定年退職した人が認知症にならないようにするためには「きょういく」と「きょうよう」を持つことが効果的であると言われる。これは、「今日行くところ」と「今日の用事」を持つことが大切であるという意味である。同じようなことはうつ病の人にもあてはまる。さすがに、うつ病の人は外出するのもおっくうになりがちであるから「きょういく」までは要求できない。しかし、「きょうよう」の一環として日記をつけることは、とかく乱れがちな日常生活にリズムをもたらす効果があると考える。

 私は2012年夏に入院した際、治療期間がまだ長引きそうだと感じたため、途中から「5年日記」に切り替えた。これは、中小企業診断士の大先輩から教えてもらったものである。5年日記では、1ページに5年分の日記をつけることができる。この日記の利点は、例えば2017年9月19日の日記を書く時には、2016年、2015年、2014年、2013年の9月19日の日記を読み返すことができ、そこから新たな気づきが得られるということである。そこには、過去の自分が何で苦しんだか、悲しんだか、腹が立ったかが書かれている。それを読み返すと、意外とちっぽけなことで悩んでいたのだと思うことが多い。つまり、自分の感情を客観的に直視できる。すると、少しずつだが自分の心理的な成長が感じられ、うつ病の改善に効果がある。参考までに、私の5年日記の写真を掲載しておく。赤線が、私が過去の日記を読み返した時に気づきを得た箇所である。

5年日記
 (※)画像はモザイク処理してある点をご了承いただきたい。

デザインフィル 日記帳 ミドリ 日記 5年連用 洋風デザインフィル 日記帳 ミドリ 日記 5年連用 洋風

デザインフィル

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 なお、今回の記事を書き始めた時、本当は「バーンアウトでうつになった人には、他者からのフィードバックが効果的である」という内容を書くつもりであった。冒頭で述べた通り、燃え尽き症候群の人々の大半は、自分では精一杯努力しているのに、一向に成果が出ず、ついには何をやっても無駄だという無力感に襲われている。彼らは、何をしても周囲から認めてもらえないと感じている。そこで、周囲の人が積極的なフィードバックを与えることが重要ではないかと考えた。

 しかし、以前の記事「【議論】人材マネジメントをめぐる10の論点」で、企業内の人、特に上司は基本的に部下を動機づける理由がないと書いた。というのも、上司は部下に対して給料を支払う立場である。お金を払う立場の人がお金をもらう人を動機づけることが不自然であることは、企業に対して代金を払う顧客がわざわざ企業のことを動機づけようとはしないことを考えれば自明である。読者の皆さんも、企業で何か製品・サービスを購入した時、形式的に「ありがとうございました」と言うだけでなく、「いやぁ、この製品・サービスは本当に役に立ったよ。特にこの点がとてもよかったね」と踏み込んだフィードバックをする機会が何度あるだろうか?もちろん、こういう評価が企業内でも盛んに行われることに越したことはない。しかし、そういう機運が期待できない以上、うつ病には結局のところ本人が責任を持つしかないという見解に至ったわけである。

2017年09月01日

双極性障害で入院したところ40日の予定が1週間で退院してしまった事の顛末


頭から煙を出す男性

 《参考記事》【シリーズ】中小企業診断士を取った理由、診断士として独立した理由
  1.中小企業診断士という資格を知ったきっかけ
  2.中小企業診断士を勉強しようと思ったきっかけ
  3.ベンチャー企業での苦労
  4.長い長い病気との闘いの始まり
  5.増え続ける薬、失った仕事
  6.点と点が線でつながっていく
  7.これから独立を目指す方へのメッセージ
 上記のシリーズ記事をご覧いただいた方はご存知かもしれないが、私はここ5年ほど双極性障害(Ⅱ型)という精神病に罹患している。双極性障害(Ⅱ型)という診断に変わる前は4年ほど通常のうつ病だと思って治療を受けていたので、治療期間はトータルで9年近くに及ぶ。私の人生の4分の1は闘病生活で占められている。ここ2年ほどはまずまず仕事ができていたものの、調子に乗って仕事を入れまくった結果、休みが取れなくなり、抑うつ症状が強く出てしまった。もう7年ぐらいお世話になっているかかりつけの医師に相談したところ、このままだと身体が持たなくなるため、休養目的で入院した方がよいと言われた。

 実は、私は5年前のほぼ同じ時期にも、休養目的で都内のある病院の心療内科に入院している。その時は約40日入院し、人生で初めて全く何もしない夏休みを経験した。私が退院してから約半年後、その病院の心療内科が閉鎖されてしまったのだが、今年に入ってから心療内科が復活したというので、慣れている病院がいいだろうということでその病院に入院することにした。

 私が入院直前に飲んでいた薬は以下の通りである。
 リボリトール1mg×2錠【抗不安薬】
 ジェイゾロフト25mg×2錠【抗うつ薬】
 リーマス200mg×1錠【抗精神病薬】
 サインバルタ30mg×1錠【抗うつ薬】
 ジプレキサ5mg×1錠【抗精神病薬】
 メイラックス1mg×1錠【抗不安薬】
 入院前に外来で診察を受けた時、担当医から「双極性障害の場合、抗精神病薬と抗うつ薬や抗不安剤を一緒に飲むことはない。抗精神病薬のリーマスだけに絞って200mgから600mgに増量し、他の薬は中止しよう」と言われた。この時点で私の頭には2つの不安がよぎった。

 1つは、抗うつ薬や抗不安薬を急に中止することで生じる離脱症状である。離脱症状とは、薬を止める時に出る副作用のことだ。長期間、薬を飲んでいると、薬の成分が定期的に身体に入ってくる。すると、身体は定期的にその成分が入ってくるものだと思い、その予定で身体の中を調整する。そのような状態でにいきなり薬を止めると、身体は入ってくるものと思っている薬の成分が入って来ないので、身体の中の色々なバランスが狂ってしまう。具体的には、めまい、頭痛、吐き気、だるさ、しびれ、耳鳴りなど、様々な症状をきたす。私の場合、長期間にわたって抗うつ薬や抗不安薬を服用しているため、離脱作用が出る可能性が高い。

 もう1つは、リーマスの急激な増量に伴う副作用である。血液検査の結果、私の血液中のリーマスの濃度が低かったので担当医は増量の判断を下したのだが、リーマスには様々な副作用がある。手の細かいふるえ、口の渇き、吐き気、食欲不振、下痢、めまい、立ちくらみ、眠気、脱力・けん怠感などである(ちなみに、リーマスには「リチウム中毒」という重篤の副作用もあるが、600mg程度では発症することがほとんどないらしい)。この2つの不安はやがて現実となる。

 私が入院したのは8月4日(金)である。外来の時の担当医に加えて、主治医がもう1人つくことになった。2人とも5年前とは別の先生である。2人体制で盤石かと思いきや、全くそんなことはなかった。5年前に入院した時は、主治医1人だけで担当医はいなかったにもかかわらず、1日朝夕の2回回診があり、さらに週に2回30分程度の面談があってじっくりと私の話を聞いてくれた。ところが、今回は回診が毎朝1回だけで、定期的な面談もないという。医師が2人に増えたのに回診の回数が半分に減っているのだから、医療サービスの質は4分の1に落ちている。

 さらに言えば、5年前に比べて看護師の質も落ちていると感じた。5年前は、少なくとも朝晩の2回患者の様子を見に来て、血圧と体温を測ってくれた。私が時折こぼす弱音にも耳を傾けてくれた。しかし、今回は朝しか様子を見に来ない。しかも、他の診療科にかかっている患者の元には夜も看護師が訪れるのに、私のところだけ看護師がやって来ない。

 6日(日)、本来主治医は休日で休みのはずだが、なぜかこの日は病棟に来ていた。そして、私に対して驚くべきことを言った。「前回入院した時の記録も含めてこれまでの治療歴を見てみると、どうも双極性障害ではない気がする」。これには私も混乱した。5年間双極性障害だと思って治療を受けてきたのに、主治医は記録を見ただけであっさりとそれを否定しようというのである。この時点で、主治医は双極性障害ではないかもしれないと思っており、一方でもう1人の担当医は私が双極性障害だと思ってリーマスを増量しているのだから、2人の間で治療方針が矛盾している。私は一体何を信じればよいのか解らなくなった。「では、何の病気なのですか?」と聞いたところ、「それは入院中に病理検査を受けてもらわないと解らない」との返答であった。

 私は経営コンサルタントの端くれなのだが、コンサルティングの仕事をしていると、顧客企業が以前に使っていたコンサルティング会社の成果物を否定することがある。否定するとそれだけで仕事をした気分になるからだ。しかし、否定される側は、こんなにも不愉快な気持ちになるものなのかと、恥ずかしながら私はこの時初めて知った。確かに、前のコンサルティング会社の成果物が滅茶苦茶で、この通りに顧客企業が経営を行ったら危ない方向に行ってしまう場合には、その成果物を否定しなければならない局面というのはある。ただ、その場合には、すぐさま新たな仮説を提示して、顧客企業が真に進むべき方向性を照らすのがコンサルタントの責任である。

 もちろん、医師はコンサルタントと違って、不確かな仮説を簡単には提示できないという事情はあるだろう。だから、主治医は病理検査を私に勧めてきたわけだ。しかし、現状調査をするのであれば、すぐさま開始するべきだと思う。私が最初の病理検査を受けたのは、入院してから1週間が経過した10日(木)であった。しかも、入院中にどういう検査を受けるのか、その全体像は教えてくれない。あまりコンサルティングの常識を医師に押しつけるのもよくないのかもしれないけれども、コンサルティングであれば必ず事前に現状調査の全体像やスケジュールを顧客に提示するものである。何をいつまでに調査するのかをあらかじめ顧客に納得してもらう。今回のように、ずるずると病理検査を続けようというのは、私からすると考えられない。

 百歩譲って、その1週間が経過観察期間だったとしよう。しかし、本当に患者の経過を観察する気があったのかと疑念を抱かざるを得ない。案の定、入院して4日目ぐらいから、頭がガンガン揺れる感覚に襲われるようになった。離脱症状が出始めたのである。そのことを主治医に訴えたところ、最初に処方されたのは普通の頭痛薬であった。こんなものは効くはずがない。5日目になると、頭の不調に加えて吐き気がするようになった。もう1人の担当医に相談したら、コントミンを処方された。コントミンは古くからある統合失調症の薬らしい。だがこのコントミン、調べてみると命に関わる重篤な副作用をもたらす危険性があるため、やむを得ない場合に限って処方される薬だそうだ。担当医からはそんな説明は一切なかった。

 それでも一応コントミンを飲んでみたところ、その日は症状が治まった。しかし、翌6日目には激しい胸やけと吐き気に襲われた。めまい、手足の冷え、手先の震えといった症状も出てきた。私はここに至って、これは離脱症状だけのせいではないと思うようになった。というのも、以前も私は何度か薬を1週間ぐらい切らしてしまったことがあり、離脱症状に襲われたことがあるのだが、日に日に症状が悪くなるということは経験したことがなかったからだ。

 となると、考えられるのは、もう1つの可能性であるリーマスの副作用である。リーマスの血中濃度が徐々に上がったことで副作用が出たのかもしれない。ところが、主治医はリーマスのことは全く頭にないのか、「離脱症状で手足の冷えはない」と言い切るばかりである。ひとまず、対処療法的に吐き気止めと胸やけの薬を処方してもらった。入院中はゆっくりと本が読めると大量の本を病室に持ち込んだのに、長時間文字を見続けると気分が悪くなるし、本の内容をメモに取ろうとしても、手が震えて満足に字を書くことができない。

 7日目の10日(木)、いよいよめまいがひどくなってきた。前述の通り、この日は1回目の病理検査があり、簡単な知能テストのようなものを受検した。しかし、途中で気分が悪くなったため、半分しかテストを消化することができなかった。私はコントミンの効きが悪いので、普通のめまいの薬を出してほしいと看護師に何度かお願いした。看護師は院内の薬局に連絡を取ったらしく、夜になればめまいの薬が出ると言った。だが、夜になって夜の看護師にめまいの薬をもう一度お願いすると、明日の朝主治医の診察を受けてもらわないと出せないと言う。

 11日(金)~13日(日)は3連休で、主治医も担当医も基本的には休みであり、回診も十分にできない。そこで、この3連休は外泊してもよいとあらかじめ主治医からは告げられていた。このこと自体には私は怒っていない。ちょうどお盆休みにかかるから仕方のないことだ。前回入院した時も、主治医は夏休みを1週間とっていた。主治医の言葉を受けて、私は、11日の10時に病院を出て、13日の17時に病院に戻ってくる計画を事前に申請していた。ただ、10日の私がこんな状態であったので、主治医は私が外泊する翌11日の10時より前に回診に来ることになった。

 さて、11日になったのだが、待てど暮らせど主治医が来ない。11時になって私が看護師を呼んで確認してもらったら、まだ病棟に来ていないと言われた。仕方なくもう少し待ってみたものの、12時になっても来ない。しびれを切らした私が看護師に言うと、看護師が主治医の携帯に電話をしてくれた。ところが、主治医は夕方にしか来ないと言う。朝10時までに来ると言っておきながら、何の連絡もよこさずに来るのが夕方になるというのは非常識極まりない。民間企業でこんなことをしたら、即刻取引停止である。私は夕方まで待てないと言って、めまいの薬をもらわずに外泊した。これが5年前と同じく1日2回の回診ならば、10日の夕方に問題は解決していたはずだ。

 3連休は地獄であった。めまいはするし、頭はガンガン揺れるし、脳みそがギューッと締めつけられるような感覚が続いた。身体は火照っているのに、全身からは変な汗が出て、手足が冷えた。下痢もするようになった。食事も十分に摂れなかった。実は、食事は入院5日目あたりから満足に摂れなくなっていた。そのせいで、入院わずか1週間で体重が3kgも落ちた。入院前に取引先に頭を下げてせっかく休暇をもらったのに、これでは全く休暇にならなかった。ストレスから解放されるどころか、かえってストレスがたまる一方であった。

 あまりに症状が悪化したので、12日(土)に病院に電話したところ、一度病院に戻ってきてくれとのことだった。私は主治医も担当医もいないのだからどうせ薬は処方されないだろうと思っていたが、やはり看護師の力だけでは薬は出なかった。完全に無駄足であった。私はこのまま入院しても満足な治療が受けられないと感じ、退院を願い出た。だが、週末は退院手続きができないと言う。そこで、外泊を14日(月)の午前中まで延ばし、14日に病院に戻ってきて退院手続きをするということで話は落ち着いた。13日(日)、私はあまりよくないとは思いつつ、自宅に残っていたサインバルタとリボトリールを飲み、リーマスの服用を止めた。すると、症状はかなり改善した。

 14日の朝、病院に戻ると、主治医が悪びれる様子もなくやってきた。3連休の様子はどうだったかと尋ねるので、「お前のせいで最悪だった」と言ってやりたいところだった。私はその思いをぐっとこらえて淡々と前述の症状を説明した。すると、「部分的に離脱症状が混じっているが、下痢は離脱症状で説明ができない」と返された。

 私は、リーマスを3倍に増やした影響ではないのかと言うと、主治医は最初「リーマスは増やしていない」と言い放った。この主治医は、自分が患者に処方した薬の内容を忘れていたのである。私がそのことを指摘すると、やや慌てふためいた様子で、「それでもリーマスの副作用で下痢はあり得ない」と強弁してきた。私は3連休中にリーマスの付属書類も読み、リーマスの副作用に下痢があることを把握していた。リーマスの副作用で下痢を生じることがあることを報告する論文も見つけていた。そのことを言ってやろうかと思ったものの、ここで喧嘩してもストレスになるだけだと思い止めた。私はさっさと退院させてくれと言って、とっとと病院を後にした。こういうわけで、当初40日ほど入院する予定だったのが、実質1週間になってしまった。

 再びコンサルティングの話を持ち出すことをお許しいただきたいが、コンサルティングで顧客企業に何か改革を提案する時は、改革に伴うリスクも提示する。そして、リスクに対する2次対応策を一緒に提案するのが普通である。今回のケースでも、リーマス以外の薬を全て中止し、リーマスを増量することに伴うリスクは、医師であれば把握していて当然であるし、リスクが生じた場合にはすぐに対策を打つべきであろう。相手が入院患者であれば、なおさら迅速に手を打たなければならない。そうでなければ、何のために患者を入院させているのか解らない。

 もう1つ、この主治医には妙な癖があった。それは、人の言うことを何でもすぐに否定したがるということである。「双極性障害でないかもしれない」、「離脱症状で手足の冷えはない」、「リーマスの副作用で下痢はあり得ない」といった具合だ。さらに私は、夜眠りが浅いので、以前服用したことがあるサイレースという入眠剤を出してほしいとお願いしたことがあった。すると、「サイレースは健忘症の副作用があり、欧米では犯罪に使われることもあるため、販売が縮小されている。日本でも今後そのような動きになる。だから、サイレースは使わない方がよい」と言われた。これらの主治医の言葉に共通するのは、「では、代わりに一体何なのか?」という代替案がないことである。頭の中の知識(しかもその一部は誤っている可能性がある)だけで処理をして、目の前の患者と向き合おうとしない姿勢には無性に腹が立った。

 それでも1つだけ入院してよかったことがあるとすれば、医師が私の病気にどんな名前をつけようとも、実はそれは私の元々の性格の一部であって、治療でどうにかなるものではないのかもしれないと気づいたことである。そう考えると、多少は気持ちも楽になった。予期せぬ形で短期間で退院してしまったわけだが、まずはかかりつけの医師のところに戻って、薬を入院前の状態に戻してもらおうと思う。これは離脱症状対策である。その後は徐々に減薬をして、年末をめどに薬をゼロにできればと考えている。そうすれば、9年間の闘病生活にピリオドを打つことができる。




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