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『巨頭たちの謀事/朴槿恵政権崩壊(『正論』2017年2月号)』―ますます可能性が高まった「朝鮮半島統一」に対してどう対処すべきか?
大島正二『漢字伝来』―古代の日本―中国・朝鮮間の文化交流の謎

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

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2017年04月15日

『絶望の朝鮮半島・・・/言論の自由/世界を動かすスパイ戦(『正論』2017年5月号)』―緊迫する朝鮮半島で起こりそうなあれこれ、他

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正論2017年5月号正論2017年5月号

日本工業新聞社 2017-04-01

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 『正論』2017年5月号の記事は5月にアップしようと思ったが、朝鮮半島の情勢が想像以上に緊迫してきたため、急遽4月にアップすることとした。

 (1)以前の記事「『トランプ大統領/進まぬ憲法改正/「生前退位」でいいのか/「死刑廃止」宣言(『正論』2017年1月号)』―朴槿恵問題は一歩間違えば朝鮮半島の”革命”を引き起こしていた、他」で、朝鮮半島で起こり得るシナリオのうち、最も可能性が高く、かつ日本にとって最悪なのは、今度の韓国の大統領選挙で文在寅氏などが当選して親北左派政権が誕生し、中国の支援を受けて北朝鮮あるいは韓国主導で、朝鮮半島に核兵器を持った単一の共産主義国家が誕生することだと書いた。だが、ここに来て事態は急変している。

 ①まず、アメリカは本当に北朝鮮を先制攻撃するのかという問題がある。シリアが化学兵器を使用したという理由でアメリカがシリアを空爆し、ロシアの軍事拠点を破壊したことで、親ロ路線を進んでいたトランプ政権は完全に方針転換を余儀なくされた。プーチン大統領は、現在の米ロ関係は史上最悪だとまで述べている。このタイミングで北朝鮮を攻撃すれば、次は中国をも敵に回すことになる。ロシアと中国に同時に対処できる力が今のアメリカにあるだろうか?

 ②仮にアメリカが北朝鮮を攻撃するとして、何を大義名分に掲げるのかも問題である。シリアの場合は、化学兵器禁止条約違反を理由に空爆を行った。北朝鮮の場合、核心は核兵器にあるわけだが、現在のところ、核兵器を完全に禁止する条約は存在しない。核拡散防止条約(NPT)はあるものの、北朝鮮は同条約から脱退している。よって、核兵器を保有しているという理由で攻撃するという論理は成り立たない。もっとも、北朝鮮がマレーシアで金正男氏をVXで殺害しており、化学兵器を大量に保有しているという報道もある。アメリカなら、それを口実に攻撃をして、ついでに核関連施設を破壊するということも考えそうだが、理屈としては苦しい。

 ③アメリカが攻撃をする場合は、アメリカに核兵器が飛んでくることを防ぐのはもちろんのこと、同盟国である日本や韓国に被害が及ばないようにするために、ICBM(大陸間弾道ミサイル)と短距離ミサイルの基地を集中的かつピンポイントで一斉に攻撃すると思われる。また、同時に、北朝鮮のミサイルシステムに対して、大量のサイバー攻撃を仕掛けるであろう。さらに、核のボタンを握っている金正恩氏の斬首計画も進行するはずである。これらの作戦は短期決戦で行われ、かつミスなく遂行することが要求される。

 ④トランプ大統領は、中国が北朝鮮問題のカギを握っていると述べている。先の米中首脳会談でトランプ氏は習近平氏との昵懇をアピールし、中国が北朝鮮にさらなる強力な圧力をかけてくれることを期待している。その裏では、トランプ氏が対中貿易赤字の面で中国に大幅に譲歩したと推測される。だが、中国がどのようにして協力するのかは、どの報道を見てもいまいちピンとこない。1つ言えるのは、アメリカが北朝鮮を攻撃するのを中国は黙って見ていろという約束ではないのは確かである。北朝鮮をアメリカに取られることは、中国にとってアメリカの脅威が北上することを意味するから、中国としては望ましい事態ではない。

 ここからはかなり大胆な予想であるが、アメリカは中国に対し、中国が庇護していた金正男氏を暗殺された報復として、中国が金正恩氏を斬首することを要求したのではないかと考えている。そして、中国共産党が新たに正統性を付与した政権を打ち立てる。そうすれば、中国としても、北朝鮮を従来通りアメリカとの間の緩衝地帯として活用することができる。ただし、中国と北朝鮮が今まで構築してきた深い関係は、アメリカとの貿易という金銭的な価値と天秤にかけられるような簡単なものではない。中国が約束を履行しない可能性は十分にある(そもそも、先の米中首脳会談では、共同声明すら発表されていない)。

 ⑤アメリカによる攻撃のタイミングはいつなのかも不透明である。①で述べたように、シリア問題が深刻化しているため、アメリカが今すぐに北朝鮮を攻撃する可能性は低いと見ている(と書いたそばからアメリカが攻撃するかもしれないが)。シリア問題はヨーロッパの難民問題と関係しており、世界的な問題であるという意識が共有されている。一方、北朝鮮の核問題に関しては、残念ながらそこまで至っていない。ヨーロッパ諸国は、極東の小国が好き勝手に暴れているというぐらいの認識しか持っていない。つまり、北朝鮮問題は世界的に見て優先順位が低い。それに、アメリカが北朝鮮を攻撃する場合、韓国の軍隊が投入されることになるが、韓国軍の最高指揮官である大統領は現在不在である。だから、大統領選の結果を待つ必要がある。

 ⑥北朝鮮は、アメリカが先制攻撃をしてきたら、在日米軍基地をミサイルで攻撃すると公言している。仮に日本にミサイルが飛んできた場合、日本の自衛隊はこれを迎撃できるのであろうか?これについては、私も日本の軍事情勢に詳しいわけではないため、よく解らない。ただ、本号によると、海上自衛隊は日本海に常時イージス艦を1隻警戒配置しているが、日本の迎撃技術では一度に2発しか撃てない。一方で、北朝鮮は4発以上のミサイルを同時に発射する技術を確立している。したがって、北朝鮮のミサイルのうち、一部は日本本土を直撃するリスクがある(加藤達也、古田博司「私を弾圧した朴政権の最期」より)。

 ⑦⑤で述べたように、韓国は現在大統領が不在であるから、5月の大統領選が終わって政権が落ち着いた頃でなければ、現実的には北朝鮮を攻撃できないと思われる。ただし、ここで問題なのは、冒頭でも書いたように次の政権が親北左派になった場合である。アメリカの北朝鮮攻撃に対し、韓国が寝返るかもしれない。つまり、米韓同盟を破棄し、北朝鮮とともにアメリカと戦うというシナリオである。さらに、ここに加えて、中国までもが裏切り、北朝鮮を支援するようになれば、アメリカは南北から挟撃され、非常に苦しくなる。朝鮮戦争は長期化する恐れがある。

 (2)以前の記事「山本七平『人間集団における人望の研究』―「先憂後楽」の日本、「先楽後憂」のアメリカ」などでも書いたが、日本人は基本的に利他的な人種である。他者から何かを得たければ、自分からまずは何かを他者に与える。他者から何かをしてほしくなければ、自分がまずはそれを放棄する。日本人には謙虚な姿勢で自己を犠牲にする精神が身についている。確かにこれは日本人の美徳であり、私も日本が世界に誇るべきことの1つであると思う。

 この利他的な精神、別の言い方をすればお人好しの精神は、国内だけでなく国際政治の舞台でも発揮される。以前の記事「守屋武昌『日本防衛秘録―自衛隊は日本を守れるか』―基地の必要性を国民に納得させることはできない」でも書いたように、通常は自国をどう防衛するかという議論が先にあって、その議論が成熟したのちに国際貢献を検討するものであるが、日本の場合はこの議論が逆になっている。PKO法が20世紀に成立したのに対し、安保法制はようやく2年前に成立したにすぎない。駆けつけ警護は可能であるのに、海外における邦人救出については依然としてハードルが高い(だから、北朝鮮の拉致問題が一向に解決しない)。日本の経済はもう20年ぐらいずっと横ばいで苦しい状態なのに、海外支援には熱心に資金を供給する。

 ただ、(1)でも見たように、国際政治の舞台では、日本の利他的精神が全く通用しない相手がいるという事実から目を背けることはできない。左派であれば、戦争が起きるのは各国が武器を持っているせいだから、武器を全廃しよう、日本の憲法のように平和主義を採用しようと言うだろう。だが、「日本人は相手を攻撃しないから、海外の人も同じように考えるべきだ」という主張は、利他的であるように見えて、実は自分の都合を相手に押しつけるエゴイスティックな論法である。国内の人間関係と、国家間の関係は性質が違うことを左派の人々は理解していない。

 国家間の関係は、不信、緊張が基本である。国家の主たる役割は、主権、領土、国民を守ることである。これら3要素が、いつ何時、諸外国から侵害されるか解らないという不信感を国家は抱いている。よって、国家は自ずと利己的、自己保存的にならざるを得ない。そのために、軍隊という暴力を持つ。その軍隊によって外国からの脅威を低減させることができているから、国内の人間は安心して利他的に振る舞うことができる。相手を信頼して取引をすることができる。

 ここで左派は次のように言うだろう。国家という機構があるから、軍隊という暴力が発生する。世界同時革命によって世界政府を作り、世界中の人々が平等になれば、世界中で信頼が醸成され、戦争はなくなるのではないかと言うわけである。ただし、世界中で完全なる平等を実現するには、世界中どの地域に行っても同じように作物が収穫できて食べるのに困らず、世界中どの地域に行っても同じように天然資源が入手できて産業に困らないといった状態が前提となる。ところが、現実の世界はそうはなっていない。世界各地は非常にバラエティに富んでいる。ということは、どうしても土地や資源の奪い合いが避けられない。つまり、国家が発生する。

 国家とは、領土内の資源(国民を含む)を最大限に活用して、国力を増強するためのルールを定める機構である。世界の地理は不釣り合いであるから、国家が生じる。そして、各国のルールが異なるから、国家には多様性が生まれる。世界政府を提唱したカントは、そういうルールには普遍的なルールがあると主張した。だが、実際にはそれぞれの国家が抱える資源の量や質が異なるので、各国の事情に応じたルールが策定される。さらに、それぞれの国家は、隙あらば他国との格差を埋めようと狙っている。相互不信を出発点として徐々に信頼関係を構築し、条約などを締結する。それが無理ならば暴力的な手段に出る。日本国内と同じやり方で、最初から相手を信頼して下手に出ることは命取りになりかねない。これが国際政治の現実なのである。

 (3)本号の本筋からは外れるのだが、「日本虚人列伝」という連載で内田樹氏のことが取り上げられていた。人生相談では非常に的確な助言をするのに、こと問題が政治となると、まるで頓珍漢な回答をしてしまうことを批判している記事であったが、その中にこんな記述があった。
 広告代理店に就職してみたいという学生が就職活動の準備として「何やっとけばいいんですか?」という質問をしている。(中略)

 しかし、内田氏の回答は見事だ。問題に対する「正解」を求ているこの学生は「クリエイター」に向かないから、広告代理店に就職するのは止めた方がいいというのだ。そして、「最低限これだけはやっておけばいい」という最低限の水準を求める行為そのものを「そんなことをやっていても何にもなりませんよ」と一蹴する。さらに、最低レベルだけをこなすような人間は「いくらでも換えが利く」人間であり、「ある日いなくなっても誰も困らないし、誰も気がつかない」とまで断じている。
(岩田温「日本虚人列伝 第8回「内田樹」 売れっ子思想家先生が、見当外れの政治談議をつづける理由」)
 この内容には私も同感である。以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第25回)】「顧客から100を要求されたら101を提供すればよい」というマインド」で、顧客からの要求を少し上回る成果物を出せばよいと考えているマネジャーの話をしたが、目標を立てても往々にして結果はそれを下回ることをこのマネジャーは理解していない。顧客から100を要求されたら、130ぐらいを目指さなければならない。実際には8割程度の出来にしかならないから、130×0.8で104となり、ギリギリ顧客の要求を上回ることができる。元中日監督の落合博満氏は、3割バッターは3割を目標とするのではなく、3割3分ぐらいを目標とするから3割を達成できると語っていた。

采配采配
落合博満

ダイヤモンド社 2011-11-17

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 偏差値の高い学生の中には、試験で合格点ギリギリを狙うような勉強法をする人が少なからず存在する。確かに、試験に合格するためであれば、それでよいのかもしれない。しかし、それと同じ態度を人生全般に当てはめるのはよくないと私は思う。こういう人たちは、合格するのに必要最低限の知識を効率よく学習しようとする。しかし、新しいアイデアやイノベーションは、効率的な学習からは生まれない。むしろ、非効率な学習からこそイノベーションは生まれる。

 「こんなことを覚えて何の役に立つのか?」と思えるような知識でも、とにかく貪欲に吸収する。大量に知識を覚えると、既存の知識との間で齟齬が生じるようになる。自分の記憶の中で矛盾点が存在するのは非常に気持ちが悪い。そこで、脳はその非合理性を何とか論理的に説明しようと努力する。すると、そこから新たなアイデアが生まれることがある。また、しばしば言われるように、イノベーションというのは全くの無から生まれるのではなく、既存の知識の組み合わせによって生じるものである。ということは、脳に保管されている知識の量が多いほど、知識の組み合わせのパターンは多くなり、イノベーションの源泉が豊かになる。逆に、最低限の知識で済まそうとする人の脳内は、知識がスカスカであり、良質な知識のネットワークが形成されない。

2017年02月04日

『巨頭たちの謀事/朴槿恵政権崩壊(『正論』2017年2月号)』―ますます可能性が高まった「朝鮮半島統一」に対してどう対処すべきか?

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正論2017年2月号正論2017年2月号

日本工業新聞社 2016-12-28

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 加藤:デモの原因を作った朴氏に問題の根源があることは否めませんが、韓国の次期政権が北朝鮮寄りの政権になっていくと、反日に加えて北朝鮮に従順で親中国の政権が出来てしまう。それは日本の新たな脅威になる恐れがあると思うのです。

 呉:確かにこのままだと次の大統領は野党の文在寅(ムンジェイン)だと容易に想像がつきます。文在寅はもう強烈な親北朝鮮の政治家です。政策も親北朝鮮的な政策が採られ、そうなれば韓国はもう本当に大混乱に陥ることが避けられない。中国も後ろに控えていてそれをたくみに利用する―という光景が目に浮かびます。
(加藤達也、呉善花「言論弾圧の果てに・・・韓国の自由は死んだのか」)
 以前の記事「『トランプ大統領/進まぬ憲法改正/「生前退位」でいいのか/「死刑廃止」宣言(『正論』2017年1月号)』―朴槿恵問題は一歩間違えば朝鮮半島の”革命”を引き起こしていた、他」で、北朝鮮が朴槿恵問題につけ込んで韓国を攻撃し、朝鮮半島を統一する可能性について触れた。引用文にあるように、もし韓国で親北朝鮮の大統領が誕生すれば、結果的には朝鮮半島に反日、親中の共産主義国家が建設されることになるのかもしれない。朝鮮半島問題を含めて混乱を極める世界情勢を前に、西部邁氏は「慌てるな、落ち着け、自国の保護に全精力を注げ」(西部邁「ファシスタたらんとした者」より)と日本人を鼓舞するが、残念ながら日本には自力で自国を防衛するだけの力がないと思われる。

 以前の記事「山本七平『日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条』―日本組織の強みが弱みに転ずる時(1)(2)」で、日本社会は「(神?⇒)天皇⇒立法府⇒行政府⇒市場/社会⇒企業/NPO⇒学校⇒家庭⇒個人」と階層が積み重なる多重階層社会であると書いた。だが、このラフなスケッチに私は重要な要素を1つ加えるのを忘れていた。それは、神と同レベルに、「大国」という存在を位置づけることである。日本は常に、大国から影響力を受けることで存続を守ってきた。日本史の大半において、大国の位置にあったのは中国であった。明治維新後の日本においては、当時のヘゲモニーであるドイツやフランスなどが大国の位置を占めた。そして、戦後はアメリカが大国のポジションに収まっている。この伝統を今さら変えることは極めて困難である。

 朝鮮半島が共産主義国家として統一された時、その国家は資本主義国である日本と直接対峙することになる。朝鮮の新国家のバックには中国が、日本のバックにはアメリカがついている。ここで、単純に考えれば、日米同盟をより強固なものにして、朝鮮半島の共産主義国家からの脅威に備えるべきだという主張に至るであろう。しかし、私はこの考えは非常に危険だと感じる。

 本ブログでも何度か書いたが、大国は二項対立的な発想をする。つまり、危険だと解っていながらも常に対立関係に立ち、緊張を保つ。そして、大国は、周辺の小国を自国の味方に引き込み、勢力圏を拡大していく。しかし、大国の真の狙いは、大国同士が直接衝突して甚大な被害を出すのを防ぐために、双方の大国がお互いに囲い込んだ小国同士に代理戦争をさせることにある。中東はまさに、米露の代理戦争の舞台となっている。仮に日本が日米同盟を強固にするならば、中国も朝鮮半島の共産主義国との関係を強化し、かえって日本と朝鮮半島の共産主義国との紛争のリスクが高まるだろう。これは言うまでもなく、米中の代理戦争である。

 小国が、二項対立をする大国の一方に過度に肩入れするのは自殺行為である。そうではなく、(これも決して楽な道ではないのだが、)もう一方の大国の懐にも飛び込んでいくことが重要である。中国には「日本を攻撃すると中国にとって損になる」と思わせなければならない。そのためには、具体的には中国が主導するAIIBに日本が加盟したり、中国も交渉国として名を連ねているRCEPの交渉を日本が後押ししたりすることが必要であろう。RCEPの交渉を前進させるためには、アメリカにTPPに戻ってきてもらわなければならない。ここは日本の正念場である。そして、将来的にTPPとRCEPを連携させることができれば(FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏))、トランプ次期大統領が強く批判している中国の高関税問題は相当程度に解消する。

 中国は、朝鮮半島に新しく誕生した共産主義国家と一緒になって、歴史問題を執拗に取り上げることだろう。現に、南京事件と慰安婦問題をセットにした「アジアン・ホロコースト」なる言葉を中国と韓国が世界中にばら撒いているという(大高未貴「「慰安婦、南京=ホロコースト」のウソに終止符を」より)。中国などが歴史問題にこだわるのは、日本に自虐史観を植えつけるためである。そして、朝鮮半島の共産主義国家が(中国の支援を受けて)日本を攻撃した際に、日本人に「我が国はかつて、あなた方にひどいことをしました。我が国はとても悪い国です。だから、あなた方は我が国の領土を好きなように持って行って結構です」と言わせるためである。

 彼らには、いくら真実を主張しても通らない。中国などのプロパガンダを信じていた諸外国は、多少は認識の誤りを正すだろうが、肝心の中国はより一層プロパガンダに力を入れるに違いない。だから、歴史問題を処理するには、東アジアの外交で時折使われる「棚上げ」という技法を使うしかない。以前、韓国との間で「慰安婦問題の不可逆的解決」という合意がなされたが、これも一種の棚上げである。棚上げをするには何か条件が必要となるものの、あいにく私には妙案がない(日本のAIIB加盟が条件となる?)。また、棚上げもおそらく一時的なものに留まるであろう。慰安婦をめぐる韓国との合意も、大統領が代われば反故にされると言われている。それでも、中国の攻撃の手を緩めるために、韓国と同様の棚上げを検討するのは無価値ではないと思う。

 つまり、日本が生き残る道は、依然としてアメリカを神と同レベルに位置づけ、アメリカの(軍事的、経済的)影響力を受けつつも、同時に中国の(経済的)影響力も受けるという選択を取ることである。これを私は本ブログの中で「ちゃんぽん戦略」と呼んでいる。ちゃんぽん戦略は、対立する双方の大国の顔色を常にうかがい、キョロキョロする日和見主義的な戦略である。

 このように書くとみっともない戦略のように思う方もいるだろう。しかし、小国が大国の圧倒的なパワーに押しつぶされずに生き残るには、これ以外に有効な手だてが思いつかない。事実、世界の小国はちゃんぽん戦略を駆使してしたたかに生き延びている。ベトナムはロシアとの関係が深いが、同時にかつて戦争で自国をめちゃくちゃにしたアメリカとも合同軍事演習を行う仲である。フィリピンでは、ドゥテルテ大統領がアメリカをこき下ろし、中国にべったり寄り添う姿勢を見せたものの、結局は本鞘に収まった。賢い小国は大国を手玉に取っている。

 朝鮮半島をめぐっては、もう1つ重大なシナリオを検討しておかなければならない。それは、アメリカと中国が手を組んで、日本がはしごを外されるという事態である。本号でもその可能性について言及している箇所がある(西尾幹二、中西輝政「歴史問題はなぜ置き去りにされているのか」)。もっとも、米中が手を組んだ世界とは一体どんなものなのか、想像力が貧困な私には予想がつかない。米中は本当に、太平洋を二分割して統治するつもりなのだろうか?また、南シナ海のシーレーンを米中で共同管理するとでも言うのだろうか?

 日本は、神と同レベルに位置していたアメリカという存在を失う。そして、現実問題として、米中が朝鮮半島の共産主義国家を巻き込んで日本を包囲したら最悪である。前述の通り、日本は神と同じレベルで何らかの大国を崇めないと生き残ることができない。米中を失ったとすると、日本が頼ることのできる残りの大国はロシアしかない。以前の記事「『非立憲政治を終わらせるために―2016選挙の争点(『世界』2016年7月号)』―日本がロシアと同盟を結ぶという可能性、他」では、日露同盟があり得るのではないかと書いた。日露同盟が成立すれば、択捉島、国後島にロシア軍の駐留を認める代わりに、4島一括返還をさせることができるかもしれない。

 現在、安倍総理はロシアとの関係構築に熱心であるが、日本はオプションの1つとしてロシア研究にもっと投資することを真剣に検討した方がよい。もちろん、ロシアから学ぶのは忌まわしき共産主義ではない。ソ連から共産主義を取り除いた時に残る純粋なロシアである。ソ連から共産主義を吸収した時代を除けば、日本がロシアから熱心に学んだ時代がもう1つある。それは江戸時代後期である。ロシアから通商を求めて使節が度々訪日していた頃、例えば平田篤胤はロシアとの外交機密文書を大量に収集してロシアに学ぼうとしていた。篤胤は、ロシア語学習ノートを自分で作成するほどの熱の入れようであった。ロシアは帝国主義的で領土拡大に余念がないが、一方では仁徳ある国王が統治する国であるというのが篤胤の見方であった。

 18世紀末に大黒屋光太夫が帰国してからは、ロシアに対する日本人のイメージが大きく転換したという。従来の脅威としてのロシア、潜在的貿易相手国としてのロシアというイメージに加えて、憧れの国としてのロシアイメージが生まれた。同時に、ロシアを理想化し、畏怖することで新たな脅威のイメージも出てきた。江戸時代後期のロシア研究は、それほど長く続かなかったと思われる(明治時代に入るとプツリと途切れた?)。しかし、今回のロシア研究は、東アジアの情勢次第では、相当に腰を据えて行う必要が出てくる可能性がある。

 《参考》川久保剛、星山京子、石川公彌子『方法としての国学―江戸後期・近代・戦後』(北樹出版、2016年)

方法としての国学―江戸後期・近代・戦後 (叢書 新文明学3)方法としての国学―江戸後期・近代・戦後 (叢書 新文明学3)
川久保剛 星山京子 石川公彌子

北樹出版 2016-04-08

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2015年08月28日

大島正二『漢字伝来』―古代の日本―中国・朝鮮間の文化交流の謎

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漢字伝来 (岩波新書)漢字伝来 (岩波新書)
大島 正二

岩波書店 2006-08-18

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 本書は、漢字がたどった”日本語化”の道筋を追跡した1冊である。4世紀末~5世紀の初め頃には、阿直岐(あちき)や王仁(わに)のような百済からの学者によって、既に朝鮮半島に伝わっていた漢籍が日本にもたらされ、一部の上層階級の人によって、本格的な漢字・漢文の学習が行われ始めたと推測される。5~6世紀にかけては、漢字の使用はまだ渡来人の手に委ねられていた。しかし、7~8世紀に入ると、漢字は庶民にも浸透していたと考えられる。例えば、法隆寺五重塔の初層天井の組木からは、<万葉仮名>による落書きが発見されている。

 漢字の<音>を用いて、日本語の固有名詞を漢字で表記した例は、5世紀半ば頃から現れた。稲荷山古墳(埼玉県)、江田船山古墳(熊本県)、隅田八幡宮(和歌山県)から出土した金石文などがその例である。稲荷山古墳出土の金石文には、「獲加多支鹵(ワカタケル、雄略天皇のことか?)」の文字が見られる。その使用方法が洗練されたものが<万葉仮名>である。<万葉仮名>は、『万葉集』(7世紀後半~8世紀前半)によく使用されたことからその名前がついた。例えば、日本語の「あ」を表す漢字としては、阿、安など様々な候補がありうるわけだが、『万葉集』では文脈に応じて興味深い漢字の使い分けがされているという。

 漢字の表<音>的な用法と並行して、漢字を借りた日本語表記方法は新しい展開を見せるようになった。それは、<訓>の成立である。例えば、「池」という漢字に対して日本語の「カワ」、「ウミ」、「ヌマ」、「イケ」などのどれもが結びつく可能性がある中で、「イケ」が固定してくる。これが<訓>の成立である。<訓>の成立時期を特定するのは非常に難しいが、6世紀初頭より前には成立していたと考えられている。

 <万葉仮名>には、<音仮名>と<訓仮名>の2種類がある。<音仮名>とは、「春」を”波流”、「秋」を”阿伎”などのように、漢字の<音>を借りて表現する仮名である。これに対して<訓仮名>とは、「懐(なつかし)」を”名津蚊為”のように、漢字の<訓>を用いて表現する仮名である。『万葉集』には<音仮名>と<訓仮名>の両方が見られるため(ただし、大部分は<音仮名>であった)、漢字の<訓>の成立は『万葉集』よりも前であると言える。

 <訓>が浸透すると、日本人は漢文の<訓読>という画期的な読み方を生み出した。通常の翻訳のように原文から離れた訳文を作るのではなく、原文の漢字を1つ1つ追いながら、片端から日本語に置き換える方法である。漢文<訓読>は、7世紀末頃に始まったとされる。その後、漢文を読みやすくするための補助的な記号である<訓点>(返り点、送り仮名、ヲコト点など)が生み出された。最古の<訓点>は、奈良時代末の『華厳刊定記』(783年)に見られる。9世紀に入ると、万葉仮名で助詞・助動詞(てにをはなど)を漢字の傍らに記入するようになった。

 個人的には、この<訓読>、<訓点>の発明は、日本史上の発明の中で上位にランクインするものだと思っている。<訓読>、<訓点>のおかげで、多くの日本人が漢文を読めるようになった。しかも、原文から離れた訳文を作るわけではないため、意訳が生じる余地が少なく、原義をかなり高い精度で把握することが可能となった。<訓読>、<訓点>によって、中国文化の咀嚼スピードが格段に上がったはずである。

 漢文を読む方法と合わせて、日本語を漢字を用いて書く方法も確立されていった。まず、漢文<訓読>を前提とした<漢字文>が7世紀後半に成立した。<漢字文>とは、例えば「薬師像を作る」を、「作薬師像」(動詞+目的語)と書くのではなく、日本語の文法にのっとって、「薬師像作」(目的語+動詞)と表現する方法である。これは決して、漢文をつづる能力が未熟だったのではない。むしろ、規則正しい漢文から脱して日本語を写そうとする意図の反映である。

 <漢字文>に活用語尾や助詞・助動詞などを<万葉仮名>で補ったものが<宣命書き(宣命体)>である。宣命とは、「宣読(読み上げる)勅命(天皇の命令)」を意味する。<宣命書き>は、名詞・動詞・形容詞などの実質的な要素を主として<訓>によって大字で書き、助詞・助動詞など付属的な要素は<万葉仮名>によって小字で書き添えるという「漢字・万葉仮名まじり文」である。その<万葉仮名>を平仮名に変えると、後代の「漢字・仮名まじり文」とほぼ同じになる。日本語表記の展開史の上で注目すべき出来事であった。

 ところで、大陸の人々はなぜ日本に漢字を伝えたのだろうか?文字は民族を支配する手段である。支配者は、人々から既存の文字を奪い去り、新たな文字を強要することで、人々を政治に束縛する。漢族の王朝・南宋を滅ぼし、大帝国を築いたモンゴル族の元は、漢族の文字である漢字を捨てて、新しい国字<パスパ文字>を生み出した。日韓併合後の朝鮮半島では、ハングルが禁じられ、日本語教育が実施された。現代では、アメリカがTPP交渉の場において、日本語が日本市場への参入障壁になっているとして、英語を強制しようとしている。

 逆に、文字を奪われた民族は非常に非力であることも、歴史が証明するところである。マヤ文明を築いたマヤ族は、スペイン人の制服によってスペイン語を強要され、マヤ語を失った。そのため、現在ではマヤ語の読み書きができる現地人はほとんどいない。マヤ族が蓄積した高度な文明の遺産は、大半が未解明のままとなっている。

 そう考えると、朝鮮半島からの渡来人が日本に漢字をもたらしたのは、単なる文化交流のためではないように思える。百済からは仏教という宗教がセットで伝わっていることもポイントである。宗教を外国に広める場合には、何らかの政治的意図があるのが普通である。イエズス会が日本でキリスト教を熱心に布教したのは、日本を植民地化するためであったことはよく知られた話だ。当時の朝鮮半島の国々は、どのような政治方針で日本と接していたのだろうか?

 ここでもう1つの疑問が生じる。それは、漢字や仏教の伝来の始まりが、なぜ中国ではなく朝鮮半島の国々(具体的には百済)だったのか?ということである。古代の中国は中華思想(中国こそが世界の中心であるとする考え方)に基づく冊封体制を敷いており、周辺国を次々と属国に組み入れていた。朝鮮半島も属国の一部であり、日本も当然のことながらターゲットとなっていた。中国が日本を狙う際、中国が直接日本に赴くのではなく、地理的に最も近いという理由で、朝鮮半島の国々を手下のように使って日本に接近させたのだろうか?

 一方の日本も、中国・朝鮮半島に対して受け身ばかりではなかったようだ。室谷克実氏は『呆韓論』(産経セレクト、2013年)の中で、新羅には相当数の倭人が住んでいたと述べている。朝鮮半島の最古の正史『三国史記』には、新羅の4代目の王・脱解(たれ)の出身が日本であると書かれている。脱解は王になると、倭人を大輔(大臣)に起用した。国王とナンバー2だけが外国人という国はありえないので、一定の倭人が住んでいたと考えるのが自然であるという。

呆韓論 (産経セレクト)呆韓論 (産経セレクト)
室谷克実

産経新聞出版 2013-12-05

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 朝鮮半島の国と言うと、高句麗・新羅・百済の名前は挙がっても、任那は政治的な理由から避けられることが多い。任那には任那日本府という倭国の出先機関があり、朝鮮半島に政治的・軍事的影響力を及ぼしていたらしいということが、朝鮮半島の人々の自尊心を傷つけるためだ。

 しかし、任那に限らず、朝鮮半島南部では日本固有の前方後円墳がいくつも発見されていること、倭が新羅や百済を臣民としたと書かれている広開土王碑の信憑性が高まったことから、日本が何らかの形で朝鮮半島に関与していたことは確実とされている。以上のことを踏まえると、日本・中国・朝鮮半島の3者間の関係は、文化交流という耳触りのよい言葉だけでは語り尽くせない何かがありそうである。この辺りをもっと掘り下げることが今後の課題である。


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