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『正論』2018年1月号『非礼国家 韓国の自壊/「立憲民主」という虚構』―日本の左翼の欺瞞

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2018年01月23日

『正論』2018年1月号『非礼国家 韓国の自壊/「立憲民主」という虚構』―日本の左翼の欺瞞


正論2018年1月号正論2018年1月号

日本工業新聞社 2017-12-01

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 『孟子』には、大国に挟まれた小国がとるべき戦略ついて書かれた文章がある。
 滕の文公問いて曰く、滕は小国なり。斉・楚に間(はさ)まれり。斉に事(つか)えんか、楚に事えんか。孟子対えて曰く、此の謀(はかりごと)は吾が能く及ぶ所に非ざるなり。已むなくんば則ち一〔法〕あり。斯の池を鑿(うが)ち、斯の城を築き、民と与に之を守り、死を効(いた)すとも民去らずんば則ち是れ可為らん。

 【現代語訳】
 滕の文公がたずねられた。「滕はごく小さな国で、しかも斉と楚の2つの大国の間にはさまっています。〔どちらかに附かないと危いのだが〕、さて斉に附いたらよいものか、楚に附いたらよいものか、自分は迷っている。いったい、どうすればよいのだろう。」孟子はお答えしていわれた。「さあ、どうすればよいのか、私にも分かりかねます。だが、是非にとおっしゃるなら、たった1つだけ〔方法が〕あります。それは、このお城の堀を深くし、城壁を高くし、万一の場合には人民といっしょに籠城して、たとえ命をおとすとも、人民が〔殿様を見捨てて〕逃げだすようなことがなければ、宜しいでありましょう。〔それにはひたすら仁政を施したもうことです。〕」
孟子〈上〉 (岩波文庫)孟子〈上〉 (岩波文庫)
小林 勝人

岩波書店 1968-02-16

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 つまり、小国は徹頭徹尾、専守防衛に徹するべきだというわけである。ところで、『正論』2018年1月号を読んでいたら、恐ろしい事実が書かれていた。
 17年8月と9月に太平洋上に弾道ミサイルを撃ち込んだときの北朝鮮発の宣伝写真も面白い。リリースされた写真の、金正恩の近くの卓上モニターの表示は、ミサイルがどこに落ちたかを西側の報道によって把握した後で、画面を直して合成したものである。北朝鮮は近年のミサイル発射において事前に着弾海面に観測船を出していないので、どこにどう飛んでどう落ちたかは、西側情報を総合するまで、知り得ないのである。
(兵頭二十八「北のミサイル 日本国民はここに備えろ」)
 北朝鮮軍事に無知な私などは、北朝鮮は弾道ミサイルが日本列島を避けるよう、着弾地点を正確にコントロールしているものだと思い込んでいた(中国やロシアから移植した技術を用いれば、それは簡単に実現できるはずである)。ところが、驚くべきことに、北朝鮮は自国が発射した弾道ミサイルがどこに落ちるのか事前に把握していないのだという。ということは、弾道ミサイルが誤って日本列島に落ちる危険性があることを意味する。日本は迎撃態勢を早急に整えるべきだし、以前の記事「『正論』2017年11月号『日米朝 開戦の時/政界・開戦の時』―ファイティングポーズは取ったが防衛の細部の詰めを怠っている日本」でも書いたように、永世中立国であるスイスに倣って、核シェルターを急いで全国に張り巡らせる必要がある。

 そもそも、日本の防衛の基本方針である「専守防衛」というのも足枷である。日本は、「相手から武力攻撃を受けた時に初めて防衛力を行使し、その防衛力行使の態様も、自衛のための必要最低限度にとどめ、また保持する防衛力も自衛のための必要最低限度のものに限る」としている。この点について、日本の元陸上自衛官で、第36代東部方面総監を務めた渡部悦和氏は、著書『米中戦争―そのとき日本は』(講談社、2016年)の中で、次のように述べている。
 手足を縛りすぎた、この専守防衛というキャッチフレーズのために、国際的なスタンダードの安全保障議論がいかに阻害されてきたことか。集団的自衛権の議論、他国に脅威を与えない自衛力という議論、長距離攻撃能力(策源地攻撃能力)に関する議論、宇宙の軍事利用に関する議論など、枚挙にいとまがない。例えば、「他国に脅威を与えない自衛力」にこだわれば抑止戦略は成立しない。他国に脅威を与える軍事力があるからこそ、他国の侵略が抑止できるのである。
米中戦争 そのとき日本は (講談社現代新書)米中戦争 そのとき日本は (講談社現代新書)
渡部 悦和

講談社 2016-11-16

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 日本が相手国の攻撃を思いとどまらせるだけの抑止力を持つためには、自衛隊の位置づけを早く憲法上で明らかにしなければならない。安倍首相は9条3項に自衛隊を書き加えるという加憲案を提示しており、公明党もこれを支持している。だが、3項に自衛隊を書き加えた場合、2項(「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」)との関係が問題になる。戦力でない自衛隊とは何なのか、交戦権を持たない自衛隊には何ができるのかをめぐって、またしても神学論的な論争が繰り広げられる恐れがある。かといって、自民党内に根強く残る「国防軍」案も、自衛隊と国防軍との違いは何なのかという別の論争を巻き起こすに違いない。自衛隊が外国(特に中国と北朝鮮)に対して抑止力を持つためには、2項を削除して、新たに2項に自衛隊のことを記述するのがベストだと思う。
 ―共産党は?
 山添:明記すべきではありません。自衛隊を書き込んだ途端に2項は死文化、無意味なものになっていきます。自衛隊に対する縛りがなくなっていく、制限が解かれていくと思います。
 ―自衛隊は先々なくした方がいいというお考えですよね?無くしてからどのようになされたいのですか?
 山添:北東アジアで平和友好関係を構築するということです。攻めてこられなければ、あるいはお互いに威嚇するような関係でなければ、抑止力を持つ必要はないわけです。しかし、それには時間がかかります。まずは自衛隊の海外派遣を可能にする立法を改めるべきです。安保法制は廃止にすべきだし、軍縮を進めていくことも必要です。
(中谷元、細野豪志、山添拓、福島瑞穂、山尾志桜里「あの山尾志桜里センセイが語った憲法論とは・・・」)
 この山添拓議員の発言は意味不明である。確かに、国家間に信頼関係が構築されていれば、抑止力を持つ必要はない。例えば、日本とアメリカの間には日米同盟を基礎とする分厚い信頼関係があるから、日米がお互いに対して抑止力を持つことはない。だが、中国は現に尖閣諸島に対する野心を露わにし、ゆくゆくは沖縄も狙っている。北朝鮮は弾道ミサイルを日本にぶち込んで日本を火の海にしてやると威嚇している。日本と中朝の間には信頼関係がない。この状況で抑止力を手放せば相手の思うつぼである。以前の記事「岡部達味『国際政治の分析枠組』―軍縮をしたければ、一旦は軍拡しなければならない、他」でも書いたように、軍縮のためには一旦軍拡という回り道をしなければならない。両国の緊張が極限に達してようやく、対話の糸口が見えてくる。これが国際政治のリアリズムである。山添議員にはこの感覚が欠けている。

 それから、自衛隊の海外派遣の問題と安保法制の問題は別物である。現在、憲法解釈に基づいて自衛隊の海外派遣と安保法制が可能になっているが、いかようにも揺れ動く可能性がある憲法解釈という脆弱な基盤に頼るのではなく、憲法にしっかりと自衛隊のことを書いた上で、その条文と自衛隊の海外派遣、ならびに安保法制との関係を個別に論じるのが筋だと思う。その手続きを踏まないで、自衛隊の海外派遣も安保法制も一緒くたにしてダメだと言うだけであれば、共産党は何に対してもNOとしか言わない政党だとの誹りを免れ得ないだろう。

 ちなみに、共産主義国以外で国会に共産党が議席を持っているのは、日本とフランスだけだそうだ。トランプ大統領は、11月7日に「共産主義犠牲者の国民的記念日(National Day for the Victims of Communism)」声明を発表した。声明の中でトランプ大統領は、20世紀に世界中で共産主義の犠牲になった人の数は1億人を超えており、これは戦争による犠牲者よりも多いと述べている(江崎道朗「SEIRON時評 No.40」)。これが共産主義の実態である。

 中国に狙われている沖縄であるが、沖縄タイムスと琉球新報という2大紙が左傾化した報道を続けていると、八重山日報編集長の仲新城誠氏が『正論』の中で何度も指摘している。沖縄貿易局が辺野古の新護岸工事に着手した11月6日には、来日したトランプ大統領と安倍首相が首脳会談を行ったが、その日の沖縄タイムスの社説には次のような文章が掲載されたという。
 「日米韓中露の協調体制を維持し、北朝鮮に非核化を求めていくと同時に、北朝鮮の安全保障を考える時期にきているのではないか」
(仲新城誠「オール沖縄は敗れたのに勝った、勝ったと大騒ぎ・・・」)
 「北朝鮮に対する日本の安全保障を考える時期にきているのではないか」の間違いではないかと疑ったが、沖縄タイムスのHPを見ると、確かに「北朝鮮の安全保障」と書かれている(沖縄タイムス「社説〔トランプ大統領来日〕戦争を防ぐ手だて示せ」2017年11月6日)。なぜ、日本を核ミサイルで威嚇するような国の安全保障を日本が考えてやらなければならないのか、全く訳が解らない。それに、6か国協議は完全に機能不全に陥っているのに、今さら「日米韓中露の協調体制」による対話を持ち出すのは、単に美辞麗句を並べてもっともらしいことを言いたいという左翼の欲求を満たしているだけである。かように、日本の左翼は滅茶苦茶である。

 先の衆議院議員総選挙で、枝野幸男氏が率いる立憲民主党が躍進した。小池百合子氏のいわゆる「排除」発言で行き場を失ったリベラルにとって、立憲民主党がその受け皿になったと言われる。だが、枝野氏は元々9条改憲論者であり、自身のことを保守と明言している。ところが、メディアが立憲民主党のことを、自民党に対抗するリベラル政党であると持ち上げたことで、枝野氏は自分が「リベラル保守」であるなどと、倒錯した発言をするようになった。

 立憲民主党は、実は党の綱領を民進党から流用しており(筆坂秀世「リベラル?革命を捨てた左翼のなれの果て」)、主要な顔ぶれは菅内閣のメンバーと同じで(阿比留瑠比「大研究『枝野幸男』論 本当に筋を通す男なのか」)、陰では続々とリベラルの議員が入党している。保守を掲げながら、裏でリベラル化が進行しているのを見ると、まるでかつての旧民主党のようである。枝野氏が「リベラル保守」を掲げるのも、前原誠司氏がセンターライトとセンターレフトの間で揺れ動いていた姿に重なる(以前の記事「『「3分の2」後の政治課題/EUとユーロの行方―イギリス・ショックのあとで(『世界』2016年9月号)』―前原誠司氏はセンターライトと社会民主主義で混乱している、他」を参照)。立憲民主党は、結局は旧民主党と同じ道をたどるのではないか?

 もちろん、自民党も保守一本やりではなく、リベラルとのバランスを取っている。安倍首相はその辺のかじ取りが非常に巧みであり、選挙が近づくとリベラルな政策で有権者の支持を集め、選挙で大勝すると保守的な政策を進める。このやり方で、5年間安定的に政権を運営してきた。厳密に言うと、リベラルには2つの種類がある。1つは狭義のリベラルとでも言うべきもので、大きな政府を志向し、社会福祉の充実を目指す。安倍首相のリベラルな政策はこれに該当する。

 もう1つのリベラルは左翼の本丸であり、革命を目指し、究極的には国家という枠組みを取り払おうとするものである。旧民主党のリベラル議員は左翼議員である。だから、中国や韓国に土下座をして日本国家の価値を否定したり、外国人参政権の導入を目指して日本の政治を外国人に乗っ取らせることを画策したりする。安倍政権は保守とリベラルの政策をともに議論の俎上に載せるのに対し、旧民主党の左翼はリベラルの政策を秘密裏に実行しようとしていたからたちが悪い。リベラルとは、「表で主張していることと裏でやっていることが違う考え方の勢力」(山村明義「よみがえる『民主党』の悪夢」)という指摘は、まさにその通りである。その旧民主党とニアリーイコールの立憲民主党の動向には、特別の注意を向けなければならない。




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