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DHBR2018年9月号『発想するチーム』―トップマネジメントチームにしかできない7つの仕事(2)
『一橋ビジネスレビュー』2018年SUM.66巻1号『「新しい働き方」の科学』―「女性活躍推進度診断」(簡易版)を考えてみた
『経営の未来(DHBR2013年3月号)』―自社の経営が優良かどうかを判定するサーベイ

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2018年08月15日

DHBR2018年9月号『発想するチーム』―トップマネジメントチームにしかできない7つの仕事(2)


DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2018年9/号 [雑誌]DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2018年9/号 [雑誌]
ダイヤモンド社 DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部

ダイヤモンド社 2018-08-10

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 (前回の続き)

 (4)業績のモニタリング
 仕事をすればその結果を知り、改善につなげていくことはマネジメントの基本である。よって、業績のモニタリングもトップマネジメントチームの重要な仕事である。トップマネジメントチームは、価値観の浸透度合い、戦略の進捗、製品・サービスの販売量や品質に関する指標、研究開発、マーケティング、購買、製造、物流、営業、販売などの各種業務プロセスや、組織構造、人事制度、予算制度、情報システムといった企業のインフラがどの程度上手く機能しているかを判定する指標を持たなければならない。指標は多すぎても少なすぎてもダメである。デルはコックピット経営を導入していることで有名であったが、トップマネジメントチームがモニタリングしなければならない指標は100以上に上っていたという。これは人間の理解力を超えているだろう。

 仮に、先ほど挙げた各分野について、1分野につき3個の指標を設定したとすると(例えば、価値観の浸透度合いを測る指標を3個設定する)、全部で15分野×3個=45個となる。これでもまだ多い方かもしれない。同じくコックピット経営を導入しているカルビーが設定している指標の数はわずか20である。トップマネジメントチームが各指標について十分に議論するためには、このぐらいの数に絞った方がよさそうだ。目標管理制度が機能していれば、トップマネジメントチームの指標はミドルマネジメント、現場社員へと適切に展開されているはずであるから、細かい指標のモニタリングと改善については、ミドルマネジメントや現場社員に任せられるはずである。

 (5)日常業務の問題解決
 トップマネジメントチームがどんなに現場への権限移譲を進めても、現場では解決できない問題は生じる。こうした問題はトップマネジメントチームが解決するしかない。最近、フレデリック・ラルーの『ティール組織―マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(英治出版、2018年)という本が注目されている。同書については機会を改めて書こうと思うが、一言で言うと、ティール(進化型)組織では社員が皆経営者であり、各部門、各チームが自主経営を行っている点に特徴がある(同書は、権限はトップから部門・チームに委譲されるのではなく、初めから各部門・チームにあるという考えに立っているため、権限移譲という言葉を使っていない)。

 部門・チーム内、あるいは部門・チーム間の問題解決も、基本的には当事者に委ねられる。だから、トップマネジメントの仕事は非常に少ない。とはいえ、当事者だけではどうしても解決できない問題もあるから、ティール組織では「紛争解決メカニズム」という公式の手続きが定められており、トップマネジメントがこの手続きにコミットしていることが多いという。

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現
フレデリック・ラルー 嘉村賢州

英治出版 2018-01-24

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 トップマネジメントチームが日常業務の細かい問題にまで首を突っ込むのはやりすぎだと思われるかもしれない。しかし、トップマネジメントチームによる日常業務の問題解決には重要な側面がある。それは、悪い情報が現場から上がってくるルートを作っておくということである。言うまでもなく、衰退する組織では、現場がトップマネジメントチームにとって都合の悪い情報を隠蔽する体質ができ上がっている。それを防ぐために、トップマネジメントチームは日常業務の問題に関与し、組織に悪い芽が芽生えていないか目を光らせておかなければならない。

 もう1つの重要な側面として、現場からの例外情報を吸い上げるという点がある。前述の「(4)業績のモニタリング」で、トップマネジメントチームがモニタリングできる指標の数はせいぜい数十程度だと書いた。すると、トップマネジメントチームはその数十の指標に関する情報のみに敏感になり、それ以外の情報には疎くなる傾向がある。もしかすると、指標には表れないが、自社の経営を脅かす重要な兆候・変化が現場で起きているかもしれない。日常業務の問題解決に関与することは、そうした例外情報をキャッチする絶好の機会となる。重要な例外情報があれば、トップマネジメントチームはその情報が意味するところを議論し、必要に応じて価値観や戦略を見直して、それに伴い各種指標も再設定する必要がある。

 (6)取締役会・株主への対応
 取締役会はトップマネジメントチームの上司である。株主の代表として企業に送り込まれた取締役に対して、株主が投資した資金がどのように使われ、どのようなリターンを生み出したのかを説明する責任がトップマネジメントチームにはある。さらに、インプットとアウトプットのみに着目するのではなく、アウトプットを創出するプロセスが合理的であったかについても、取締役会に対して保証しなければならない。換言すれば、適切な部統制システムを整備し、運用するということである。加えて、トップマネジメントチームが新たな投資で資金を必要とする場合も、目的と目指すべき成果は何か、その成果をどのようなプロセスで創出するのか、成果を得るためにはいくらの資金が必要なのかを、取締役会に対して論理的に説明する義務を負う。

 ただし、特に日本企業の場合はそうだが、トップマネジメントチームのメンバーが取締役を兼ねているケースが多く、上記のような説明責任が上手く果たせないことがある。その場合は、直接株主に対して説明責任を果たす(それでも、中小企業のように、株主=代表取締役社長となっているオーナー企業では難しい)。株主と経営者の関係は、プリンシパル(本人)とエージェント(代理人)の関係に例えられることがある。この場合、プリンシパル=株主のエージェントである経営陣は、株主の意向通りに企業を経営しなければならないことになる。しかし、実際には、経営陣に一定の裁量が認められているのが普通である。トップマネジメントチームは、どういう考えの下にその裁量を発揮したのか、株主に対して適切に説明することが求められる。

 (7)社会的責任(CSR)の遂行
 企業に社会的責任を要求する声はますます高まっている。社会的責任の概念自体はさほど新しいものではなく、ドラッカーが半世紀近く前に既に言及している。ドラッカーは、「自社が責任を持てない分野には手を出すべきではない」と述べて、社会的責任の範囲をかなり限定していた。だが、資本主義の機能不全により社会問題が噴出すると、そうも言っていられなくなった。資本主義の担い手は企業である。だから、昨今の社会問題を引き起こしている原因も企業にある。これまで、そのような社会問題は、行政やNPOが解決するものとされてきた。ところが、行政の考え方は、弱者を救済するという目的で価格を安く設定する代わりに、NPOに対して補助金を与えるというものである。しかし、私が知る限り、補助金頼みのビジネスは例外なく腐敗する。というのも、顧客が市民なのか補助金をもらっている行政なのかが解らなくなるからだ。

 結局、社会問題の解決は、その問題を生み出した企業に期待されることになった。ドラッカーは資本主義は富の偏在を招くとして敬遠していたものの、近代以前から続く自由市場主義のことは信頼していた。社会問題はなかなかお金にならない領域であるが、企業はマネタイズの方法を知っており、事業のマネジメントのノウハウを持っている。企業は、自由市場主義の原則に基づいて、社会問題の解決に乗り出さなければならない。社会問題の解決とは、今まで市場にならなかった分野を市場化するという意味で新市場の創造であり、イノベーションの一種である。したがって、前述の「(2)戦略の構想」の延長線上で、トップマネジメントチームの仕事となる。CSR部門を作って、そこに一任しておけばよいという話ではない。

 社会問題はなかなかお金にならないと述べた。ということは、企業が社会問題の分野で自社の事業規模に見合った事業を育て上げるためには、相当広範囲にまたがって社会問題の解決に取り組む必要があることを意味する。本号には、ロバート・キャプラン、ジョージ・セラフェイム、エドゥアルド・トゥーゲントハット「企業の枠を超えたパートナーシップを構築する インクルーシブ・グロース実現への道」という論文がある。本論文によれば、企業のCSR活動の多くが失敗したのは、規模が小さすぎる、もっと単刀直入に言えば「野心」が足りなさすぎるためだという。その場しのぎの対処療法ではなく、政府やNPO/NGOなど異なるセクターのプレイヤーと手を取り合って、社会全体の新しいエコシステムを描き直すくらいのつもりでなければならない。こうしたイノベーションを実行できるのは、トップマネジメントチームしかいない。

 以上が、私の考えるトップマネジメントチームに固有の7つの仕事である。次の問題は、これらの仕事をチームメンバー間でどのように分担するかということである。個人的には、厳格な役割分担をしない方がよいのではないかと思っている。

 本号の後半には、性格テストに関する論文が収められていた。性格テストと言うとMBTIやFFMなどが有名であるが、近年は脳科学をベースとした性格テストが登場しているようだ。スザンヌ・M・ジョンソン・ビックバーグ、キム・クライストフォート「脳科学で見極める4つの性格タイプ」によると、人間の性格は①パイオニア(先導役)、②ドライバー(牽引役)、③ガーディアン(見守り役)、④インテグレーター(まとめ役)という4つに分けられる。例えばパイオニアとガーディアンは対立関係にあるが、チームに両者が存在するとお互いの役割を補完し合い、チーム全体のパフォーマンスを向上させることができるという。

 また、ヘレン・フィッシャー「脳の働きを理解すれば誰とでもうまくやっていける」によると、人間の性格特性には、①ドーパミン/ノルアドレナリン、②セロトニン、③テストステロン、④エストロゲン/オキシトシンという4種類のホルモンが関係しているそうだ。ドーパミン系が多い人は好奇心、創造性、自発性、熱意にあふれている。セロトニンが多い人は社交性が強く、集団に帰属しようとする傾向が強い。テストステロンが多い人は現実的、率直、決然、疑い深い、きっぱりと主張するといった特徴があり、エンジニアリング、力学、数学など規則性のある分野で力を発揮しやすい。エストロゲン/オキシトシンが多い人は直感的、想像にふける、信じやすい、共感しやすい、状況を基に長い目で物事を考えるという傾向が見られる。ここでも、それぞれのホルモンの特徴を活かしてチームを構成することが重要であるとされている。

 ただ、私は個人の性格をまるでパズルのように組み合わせるという考え方はあまり受け入れられない。パズルが静的で完全であれば、各ピースを隙間なく並べられるだろう。だが、トップマネジメントチームの仕事は動的である。チームの仕事が変化したのに、あるメンバーが「自分の仕事はこれだけである」と限定してしまうと、メンバーの誰も手をつけない仕事が生じる恐れがある。だから、一見非効率かもしれないが、メンバーの仕事はある程度重複していた方がよい。やや異なる分野の研究になるものの、新製品開発においては、マーケティング担当者と開発担当者のタスクが重複している方が、そうでない場合よりも高い成果を上げられるという報告もある(川上智子『顧客志向の新製品開発―マーケティングと技術のインタフェイス』〔有斐閣、2005年〕)。トップマネジメントチームの仕事にとっても示唆的な内容だと思う。

顧客志向の新製品開発―マーケティングと技術のインタフェイス顧客志向の新製品開発―マーケティングと技術のインタフェイス
川上 智子

有斐閣 2005-08-01

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2018年07月06日

『一橋ビジネスレビュー』2018年SUM.66巻1号『「新しい働き方」の科学』―「女性活躍推進度診断」(簡易版)を考えてみた


一橋ビジネスレビュー 2018年SUM.66巻1号一橋ビジネスレビュー 2018年SUM.66巻1号
一橋大学イノベーション研究センター

東洋経済新報社 2018-06-15

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 本号の特集論文7本のうち、3本が女性活躍推進に関するものであった(山本勲「女性活躍を推進する働き方と企業業績」、横浜国立大学服部研究室「性別役割分業観と女性の昇進意欲」、坂爪洋美「部下の性別による管理者行動の違いと働き方にかかわる人材マネジメントの影響」)。女性活躍推進自体は「ダイバーシティ(多様性)・マネジメント」の一環として、日本でも10年以上前から注目されていたのだが、昨今の働き手不足の問題と、それに伴う政府の「働き方改革」によって、今後ようやく加速していくものと思われる(悲しいことに、外圧がないと自己をなかなか変革できないという、日本人や日本組織の弱みが現れている)。

 本号の特集を受けて、「女性活躍推進度診断」の簡易版を作ってみた。企業で女性社員を積極的に活用するには、「個人の意識」と「組織の環境」の両方が変わる必要がある。「個人の意識」とは、それぞれの社員(特に男性)が女性社員の価値観や能力の違いを尊重・活用しようとする意識のことである。ここで、違いを認識する前提として、自己が何者かということを知っていることが重要となる。つまり、キャリア的に自律していなければならない。よって、「個人の意識」は「キャリア自律」と「多様性の尊重(個人レベル)」という2つの因子から構成される。

 組織のレベルでは、継続就労支援、マネジャーへの女性社員の登用、育児休暇制度の充実、ワーク・ライフ・バランスの確保など、各種施策によって女性社員の活躍のフィールドを広げていくことが不可欠である。ただし、これは必要条件ではあるが十分条件ではない。制度のようなハードを広げても、その制度が根づく組織文化が発達していしなければ、ハードが活かされることはない。したがって、組織レベルにおいても、異性社員の価値観や能力の違いを認識・尊重し、それを前向きに活用しようとする風土が醸成されていることが条件となる。これは組織のソフト面の話であると言える。つまり、「組織の環境」は、「女性活躍推進の取り組み」というハード面と、「多様性の尊重(個人レベル)」というソフト面の2つの因子から構成される。

 以下、「女性活躍推進度診断」の設問文である。全部で24問ある。いずれの設問も、5=よくあてはまる、4=あてはまる、3=どちらとも言えない、2=あまりあてはまらない、1=あてはまらない/知らない、の5段階でご回答いただきたい。

カテゴリ No. 設問 回答
キャリア自律 1 私は、与えられた仕事をこなすだけでなく、自分なりの思い入れやこだわりを持って仕事に打ち込んでいる。 5 4 3 2 1
2 私は、給料や昇進のために仕事をするというようりも、自分の中でやりがいや意義を感じながら仕事に取り組んでいる。 5 4 3 2 1
3 今の仕事を通じて、自分がなりたいと思う姿に近づいているという成長の実感がある。 5 4 3 2 1
4 私は、会社のビジョンや目指している方向性に共感している。 5 4 3 2 1
5 この職場では、それぞれの社員が会社や仕事に対する共通の思いを持って働いていると思う。 5 4 3 2 1
6 私は、この会社に魅力を感じており、会社とともに成長していきたいと思う。 5 4 3 2 1
多様性の尊重(個人レベル) 7 私は、男性社員と女性社員の考え方や価値観の違いを認識している。 5 4 3 2 1
8 私は、自分にはない異性社員の考え方や価値観をオープンに受け入れている。 5 4 3 2 1
9 私は、自分にはない異性社員の特性を活かそうとしている。 5 4 3 2 1
10 私は、社内の重要な仕事において、異性社員と対等な立場で協業した経験がある。 5 4 3 2 1
11 私は、異性社員との協業により、同性社員だけでは生み出し得ない成果を出している。 5 4 3 2 1
12 異性社員と対等な立場で、それぞれの力を発揮しながら、協調して成果を出したことが、自分のキャリア上の重要な経験になっている。 5 4 3 2 1
女性活躍推進の取り組み 13 この会社では、これまで女性が少なかった職種において、実際に女性の採用数が増加している。 5 4 3 2 1
14 この会社では、ジョブ・ローテーションや職種転換などによって、実際に女性が配置されている職場が増加している。 5 4 3 2 1
15 この会社では、管理職に女性社員を積極的に登用しようとして、実際に女性の管理職が増加している。 5 4 3 2 1
16 この会社では、これまで女性の受講者が少なかった研修に参加する女性が実際に増加している。 5 4 3 2 1
17 この会社では、女性のワークライフバランスを促進する制度(短時間勤務制度、在宅勤務制度など)が女性社員に積極的に活用されている。 5 4 3 2 1
18 この会社では、女性も男性と同程度の成果・パフォーマンスを出せば、実際に男性と同等に評価されている。 5 4 3 2 1
多様性の尊重(組織レベル) 19 この職場では、男性社員と女性社員の考え方や価値観の違いが認識されている。 5 4 3 2 1
20 この職場には、男性社員・女性社員の区別なく一人ひとりの考え方や価値観を大切にしようとする雰囲気がある。 5 4 3 2 1
21 この職場は、男性社員と女性社員それぞれの特性を活かそうとしている。 5 4 3 2 1
22 この職場では、社内の重要な仕事には男性社員と女性社員の双方が対等な立場で参加している。 5 4 3 2 1
23 この職場では、男性社員と女性社員がそれぞれの特性を発揮し、協調しながら成果を出している。 5 4 3 2 1
24 男性社員と女性社員が対等な立場で、それぞれの力を発揮しながら、協調して成果を出すことが、この会社の強みになっている。 5 4 3 2 1


女性活推進

 回答が終わったら、まずは「個人の意識」に該当するNo.1~12の平均点と、「組織の環境」に該当するNo.13~24の平均点を算出する。そして、上図の左側のマトリクス上にその平均点をプロットし、自社がどの象限に位置するのかを判定する。「個人の意識」、「組織の環境」の平均点がともに中央値である3以上であれば、女性活躍推進が実現している理想型となる。「個人の意識」の平均点のみ3点以上の場合は、社員個人の意識が先行して、組織の整備が追いついていないパターン、逆に「組織の環境」の平均点のみ3点以上の場合は、組織の整備が先行して社員個人の意識が追いついていないパターンとなる。「個人の意識」、「組織の環境」ともに平均点が3点未満の場合は、女性活躍推進で後れを取っていると言わざるを得ない。

 さらに、「個人の意識」は「キャリア自律」と「多様性の尊重(個人レベル)」から構成される。そこで、No.1~6(キャリア自律)の平均点とNo.7~12(多様性の尊重(個人レベル))の平均点を算出し、上図の右上のマトリクス上にその平均点をプロットする。「キャリア自律」、「多様性の尊重(個人レベル)」の平均点がともに3点以上であれば、自己意識と他者に対する意識のバランスが取れている理想型となる。だが、前述の通り、「キャリア自律」は「多様性の尊重(個人レベル)」の前提であるから、多くの企業は、「キャリア自律」の平均点のみが3点以上で、社員個人のキャリア意識が先行すると思われる。とはいえ、中には「多様性の尊重(個人レベル)」の平均点のみが3点以上という、他者に対する意識が先行する企業もあるだろう。「キャリア自律」、「多様性の尊重(個人レベル)」ともに平均点が3点未満の場合は、社員の意識が停滞している。

 「組織の環境」は「女性活躍推進の取り組み」というハード面と「多様性の尊重(組織レベル)」というソフト面から構成される。そこで、No.13~18(女性活躍推進の取り組み)の平均点とNo.19~24(多様性の尊重(組織レベル))の平均点を算出し、上図の右下のマトリクス上にその平均点をプロットする。「女性活躍推進の取り組み」、「多様性の尊重(組織レベル)」の平均点がともに3点以上であれば、ハードとソフトのバランスが取れている理想型となる。だが、多くの企業ではまずはハードの整備から着手するから、「女性活躍推進の取り組み」の平均点のみ3点以上というパターンが多いと思われる。とはいえ、ベンチャー企業のように、制度は整っていないが、多様な社員の受け入れに初めから抵抗がない企業では、「多様性の尊重(組織レベル)」の平均点のみが3点以上ということもあるだろう。「女性活躍推進の取り組み」、「多様性の尊重(組織レベル)」の平均点がともに3点未満の場合は、組織に大きな課題がある。

 上記の診断を一定の社員数に受けてもらい、結果を集計すると、女性活躍推進をめぐる自社の課題が見えてくるだろう。さらに、男性社員と女性社員、管理職と非管理職で分けて集計したり、社員の年代別、部門別に集計したりすれば、より細かく認識の差を抽出できる。例えば、管理職は我が社では女性社員の違いを受け入れる文化が醸成されていると考えているのに対し、非管理職はそのような文化の存在を否定しているといったケースは容易に想像できる。

 ここからは、女性社員の活用をめぐって企業が直面する課題について、私見を述べてみたいと思う。最近でこそ出産・育児後に復帰する女性社員が増えているものの、それでもまだまだ出産・育児を機に退職を余儀なくされる女性社員は圧倒的に多い。企業側の理屈は、女性社員は出産・育児によってブランクができると、その間に能力が低下してしまうというものである。だが、果たして能力はそんなに簡単に下がるものなのだろうか?

 日本企業はゼネラリストを育成する傾向が強く、様々な部門の業務を経験して、多様な能力を身につけさせようとする。そして、優れたゼネラリストが経営者となっていく。しかし、経営者になる頃には、20代・30代からは随分と時間が経過している。それでも、20代・30代で身につけた能力がゼネラリストとしては重要なのである。ということは、20代・30代の能力は衰えていないと言っているに等しい。経営陣に関しては、習得から数十年経った能力でも重宝されるのに、女性社員の能力はわずか2~3年のブランクで否定されるのは、明らかな矛盾である。

 もう1つの課題は、昇進をめぐるものである。多くの企業では、女性社員が出産・育児で休職している間は、業績評価をしない。仕事をしていないのだから、業績評価をしないのは当然と言われるかもしれない。だが、以前の記事「比較的シンプルな人事制度(年功制賃金制度)を考えてみた」で示した例によると、例えば職能Level4に昇格するためには「Level3時代の5年以内の評価ポイントが15(年平均3)以上」となっており、Level4に昇格することが課長に昇進するための条件になっている。ここで、Level3で3年勤務し、9ポイントを獲得した女性社員が出産・育児をきっかけに2年間休職したとする。すると、Level3時代の5年以内に15ポイントを獲得することは不可能になり、課長に昇進する道が絶たれる。休職している間は通算勤務期間に入れないという方法もあるが、その場合には、女性社員の昇進は必ず男性社員よりも遅れてしまう。

 ここで、私は、女性社員が休職している間に、疑似的に業績評価を行うという方法を提案したい。具体的には、休職期間中であっても、業績評価は例えば平均点の3を自動的に与える。そうすると、休職を理由に女性社員が昇進で遅れるケースが減る。これを不平等な処遇だと批判する人は必ずいるだろう。だが、本ブログで何度も書いているように、人事制度を完全に平等に設計することは不可能である。それに、子どもを育てている女性社員は、人口減少社会において貴重な国民を育てるという大仕事をしている。そういう表現が敬遠されるのであれば、子どもを育てている女性社員は、将来市場に出てくる潜在的な顧客候補を育てていると言ってもよい。つまり、子どもを育てることは、企業の業績に立派に貢献しているのである。

 やや話が逸れるが、この話を拡張すると、介護休暇を取っている社員についても、同じように自動的・疑似的な業績評価を行うべきだということになる。現在、介護離職が大きな問題になっている。仮に再就職できたとしても、前職よりも大幅な年収ダウンになるケースは枚挙にいとまがない。だが、自動的・疑似的な業績評価を行えば、その社員は退職する必要もなく、これまで積み上げてきた年収を失うこともなく、さらに昇進の可能性も残される。それを正当化するとすれば、その社員は介護によって親の健康状態を保っており、高齢者市場の維持に貢献していると言える。これもまた、子育てと同じくらい重要な仕事であると私は考える。

2013年03月14日

『経営の未来(DHBR2013年3月号)』―自社の経営が優良かどうかを判定するサーベイ


Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2013年 03月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2013年 03月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2013-02-09

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 DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2013年3月号で興味深かったのが、ニコラス・ブルームらの「経営の基本はいまだ通用するか」という論文。以下に示す経営の基本的な原則を実践している企業は本当に高い成果を上げているかをグローバル規模で調査したものだ。
(1)目標:長期的目標を定め、短期的成果について厳しく実現可能なベンチマークを設けているか。
(2)インセンティブ:成績優秀者に昇進とボーナスで報い、成績不振者の再教育や異動を行っているか。
(3)モニタリング(監視):改善の機会を見つけるため、成果に関するデータを徹底的に収集、分析しているか。
 論文の著者によると、調査における経営スコアが1点増えると、生産性が23%向上し、株式時価総額が14%増加し、売上高の年間成長率が1.4ポイント増加するという。

 実際のサーベイは、World Management Surveyで受けることができる。製造業、小売業、病院、学校の4業種のうち、日本企業のベンチマーキングが可能な製造業の質問項目を以下に挙げる(私の超訳なので、間違っている箇所があったらご指摘ください)。なお、各設問につき1点~5点のスコアをつけるのだが、いずれの設問も2点は「1点と3点の間」、4点は「3点と5点の間」と記述されているため、以下では説明を割愛する。

Q1.あなたの企業では、現代的なリーン生産方式の手法のうち、どのような種類のものが導入されているか?
 1.サプライヤの納期遵守以外に、リーン生産方式はほとんど導入されていない(導入されているとしても、場当たり的である)。
 3.いくつかのリーン生産方式の手法が導入されている。ただし、非公式かバラバラの変革プログラムによる。
 5.主要なリーン生産方式の手法(ジャスト・イン・タイム、自働化、多能工化など)が公式に全て導入されている。

Q2.どのような目的でリーン生産方式が導入されたか?
 1.他社が導入しているから。
 3.コスト削減のため。
 5.(コスト削減を含め、)ビジネス上の目標を達成するため。

Q3.通常、問題の発見と解決はどのように行われているか?
 1.問題が起こってもプロセス改善は行われない。
 3.パフォーマンス改善のために、問題が起きた場所で働く全社員を巻き込んだ1週間のワークショップが開かれる。
 5.問題を構造化することは各社員の責任であり、問題の解決は特別なチームや資源を投入せず、通常業務の一部として行われる。

Q4.業績評価のために、どのような指標を使っているか?
 1.測定されている指標は、ビジネス上の目標とは無関係である。また、測定は場当たり的である(全く測定されていないプロセスも存在する)。
 3.大部分のKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)が公式に測定されている。測定は上位マネジメント層が行っている。
 5.業績は継続的に測定されており、全社員に対して、公式・非公式を問わず、視覚的なマネジメントツールを用いて指標の中身が伝えられている。

Q5.社員はどのようにして業績の評価を受けているか?
 1.業績の評価はほとんどない。また、あったとしてもあまり意味のある方法ではない。例えば、達成できたか失敗したかを知らされるだけである。
 3.定期的に成功と失敗の両方について、評価を受ける。評価の結果は、上位マネジメント層に伝えられる。ただし、明確なフォローアップ計画は採用されていない。
 5.成果は、業績評価指標に基づいて継続的に評価される。継続的な改善を行うために、あらゆるフォローアップを受ける。また、評価の結果は全社員に伝えられる。

Q6.業績評価の会議は、どのように実施されるか?
 1.建設的な議論のための情報やデータはほとんど存在しない。あるいは、意味のないデータに議論が集中する。明確なアジェンダも会議の目的も知らされない。
 3.評価会議は、適切な情報やデータを使って行われる。会議の目的もアジェンダも明確である。しかし、問題の本質的な原因は議論されない。
 5.定期的な評価会議は、原因の特定と問題の解決にフォーカスが絞られている。会議の目的、アジェンダ、フォローアップのステップも全員に明示されている。会議は建設的なフィードバックとコーチングの場となっている。

Q7.評価会議中に合意された目標が達成されなかったらどうなるか?
 1.合意した目標を達成できなくても何も起こらない。
 3.合意した目標が達成できなくても、しばらくの間は大目に見てもらえる。
 5.合意した目標が達成できなかった場合は、その人の弱みを克服するためのトレーニングが行われるか、その人の能力に合った職場へ異動となる。

Q8.企業レベルの目標としては、どのようなものが設定されているか?
 1.目標は財務的なもの、またはオペレーション面のものである。
 3.非財務的な目標も設定されているが、トップマネジメントの評価に関係するものに限られる(それらの目標に、組織の他の社員が関与することはない)。
 5.財務面、非財務面の目標のバランスが取れている。上位マネジメント層は、財務的な目標だけの場合よりも、非財務的な目標もあった方が、しばしば刺激的で挑戦的だと考えている(例えば、2003年までにシェア60%を達成する、など)。

Q9.企業の目標は何に基づいているか?また、企業の目標はどの程度個々の社員のレベルにまでブレイクダウンされているか?
 1.企業の目標は(株主価値と何の関係もない)会計上の数値に基づいている。
 3.企業の目標は株主価値に基づいて設定されているが、個々の社員に明確にはブレイクダウンされていない。
 5.企業の目標は株主価値に基づいて設定されている。企業の業績は、企業の目標がビジネスユニットを通じて個々の社員にまで明確にブレイクダウンされた時、飛躍的に伸びる。

Q10.どのくらいの時間軸で企業の目標をとらえているか?それらの目標はお互いに関連しているか?
 1.トップマネジメントの主たる関心は、短期的な目標に当てられている。
 3.組織の全階層において、短期・長期両方の目標がある。それらの目標は独立して設定されているため、必ずしも相互に関係がない。
 5.長期的な目標が短期的な目標に翻訳されている。そのため、短期的な目標が、長期的な目標に到達するための”階段”となっている。

Q11.企業の目標は野心的か?あなたはその目標に突き動かされていると感じるか?
 1.企業の目標は容易に達成可能である。マネジャーは意図的に目標を低く見積もっている。
 3.大部分の地域で、トップマネジメントは、明確な経済的・論理的根拠に基づく野心的な目標を掲げている。一方で、そのような厳格な基準に耐えられない”聖域”(=甘い目標)がいくつか存在する。
 5.企業の目標は全ての部門の力を結集させなければ達成できない。また、それらの目標は非常に厳格な経済的・論理的根拠に基づいて設定されている。

Q12.社員が個人の目標について尋ねられたら、何と答えるだろうか?
 1.成果を測定する方法は複雑でしっかりと理解できない。個人の成果は公にされていない。
 3.成果を測定する方法が確立されており、情報も行き渡っている。成果は組織のあらゆる階層で公にされているが、お互いに比較することは推奨されていない。
 5.成果を測定する方法がしっかりと確立されており、情報も十分に行き渡っている。また、あらゆる評価面談の場を通じて、個人の成果の情報は補足される。成果とランキングは、競争を活性化させるために公にされている。

Q13.企業において優秀な人材を惹きつけ、能力開発することは最重要課題であることを、上位マネジメント層はどのように示しているか?
 1.上位マネジメント層は、優秀な人材を惹きつけ、能力開発することは最重要課題であると認識していない。
 3.上位マネジメント層は、組織のあらゆる階層で優秀な人材を獲得することが勝利のカギであると信じており、またそのように話している。
 5.上位マネジメント層は、人材開発によって評価され、人材開発に責任を負っている。

Q14.どのような報酬システムを導入しているか?
 1.成果の大小にかかわらず、均等に報酬を受ける。
 3.成果と連動した報酬システムを導入している。
 5.野心的な目標と、成果と連動した報酬システムによって、競合他社よりも高い成果を上げようと努力している。

Q15.仕事ができない社員がいた場合、企業としてはどう対処するか?
 1.仕事ができない社員でも、めったにそのポジションから異動とはならない。
 3.仕事ができないと考えられる社員は、数年の間同じポジションにとどまる。
 5.弱みが見つかったらすぐに解雇するか、あまり重要ではないポジションに異動させる。

Q16.花形社員の特定や能力開発は行われているか?
 1.社員は在職期間に応じて昇進する。
 3.社員は成果に応じて昇進する。
 5.積極的に花形社員を特定し、能力開発を行い、昇進させている。

Q17.あなたの企業で働くことは、競合他社で働くことと比べて魅力的か?
 1.競合他社の方が、優秀な人材を惹きつけるだけの価値を持っている。
 3.社員に対して我が社が提供する価値は、競合他社が提供する価値に匹敵する。
 5.我が社は、競合他社よりもユニークな価値を優秀な人材に提供できる。

Q18.退職を考えている花形社員がいた場合どうするか?
 1.花形社員を引きとめるためにほとんど何もしない。
 3.花形社員を引きとめるために努力する。
 5.花形社員を引きとめるために必要なことは何でもする。

 試しに、前職の会社を製造業に見立ててサーベイを受けてみた。【ベンチャー失敗の教訓】シリーズをご覧いただければ結果は言わずもがなの低評価だが、参考例として掲載しておく。日本の製造業の平均("Overall Management")は3.2である。その内訳を見ると、日本の製造業は、"Operations Management"、"Performance Monitoring"、"Target Setting"、"Talent Management"の中で、"Talent Management"のスコアが低いことが解る。

Overall Management
Overall Management

Operations Management
Operation Management

Performance Monitoring
Performance Monitoring

Target Setting
Target Setting

Talent Management
talent Management





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