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『魂を伝承する(『致知』2014年11月号)』―愛国心とは愛憎ないまぜの感情
鳥海靖『日・中・韓・露 歴史教科書はこんなに違う』―韓国の教科書は旧ソ連並みに社会主義的

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2014年11月20日

『魂を伝承する(『致知』2014年11月号)』―愛国心とは愛憎ないまぜの感情


致知2014年9月号魂を伝承する 致知2014年11月号

致知出版社 2014-11


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 現代を生きる我われに、日本の素晴らしさを尊び、後世に伝承していこうといった愛国心が必要です。この地球上にただ1つ、2千年以上も続いてきた他に類のない文明圏を守る意志を持ってほしい。僕が日本人として後進の方々に伝承していくべき魂があるとすれば、そこですね。(中略)

 私たちは戦前の誇り高い日本帝国を知っているし、日本に誇りを持つような教育も施されました。自分は日本の代表という自覚があり、日本人として品位のある生き方をしたいと思って生きてきた。(中略)ただ日本について敗戦後1か月か2か月には文化国家として日本を再建すると言い出したところにちょっと怪しいところがあった。やっぱり自分で自分の国を守ろうとしない人間は、きちんとした世界観を持てません。
(平川祐弘、渡部昇一「我ら日本の魂を伝承せん」)
 日本は敗戦後に自国の歴史を放棄させられ、自虐史観を押しつけられたと言われる。だから、右派の人々は、もっと愛国心を養うための教育をすべきだと主張する。この点には、私も総論レベルで賛成である。日本を愛せない人が、どうして日本に住み続けることができるだろうか?

 愛国心を養う教育とはどういうものなのかは、お隣の中国を見れば非常によく解る。中国では、国民に愛国心を植えつけることが教育目標の中に明記されている(日本の学習指導要領にあたるものとして、「愛国主義教育実施要綱」というものがある)。中国の教育の特徴は、(1)神話の強調、(2)選民意識の醸成、(3)トラウマの意識という3つに集約できる。

 (1)神話
 中国の神話は、「文明古国(太古以来の文明国)」、「礼儀之邦(礼節と儀礼の国家)」、「四大発明(古代中国による四大発明=製紙法、印刷術、羅針盤、火薬)」などといった4文字の慣用句で表現される。これらの慣用句は史実に基づくものもあるが、神話と結びついているケースもある。歴史を振り返れば、中国は数多くの重要な発明の地であった。その歴史の歩みの中で、科学や芸術が花開いた。したがって、中国人は自らの優れた文化的、道徳的気質を信じて疑わない。

 (2)選民意識
 「中国」という言葉自体が「中央、真ん中」の「王国、国家」という意味である。中国は「中華」(華=素晴らしい、繁栄した、の意)とも言われるが、中国人は自らを「華」、文化的・民族的なよそ者を「夷」(=野蛮な、の意)と呼んだ。中国は自らを世界の中心に配置し、周囲の異民族が中国文化と同化するよう働きかけた。アジアの歴史は、中国が周辺国といかにして文化的な師弟関係を結んでいったかの歴史であり、また、中国が自らの文明の普遍性を高めていった歴史でもある。

 (3)トラウマ
 中国にとって、1800年代半ばから1900年代半ばまでの期間は「恥辱の1世紀」である。中国人はこの期間を、自国が攻撃され、帝国主義者の手でバラバラに切り裂かれた時代として記憶に留めている。第1次・第2次アヘン戦争、日清戦争(中国では中日戦争)、義和団事件、満州事変、日中戦争(中国では抗日戦争)などは、中国人にとって「国恥」である。

 (※(1)~(3)の記述は、ワン・ジョン『中国の歴史認識はどう作られたのか』〔東洋経済新報社、2014年〕を参考にした)

中国の歴史認識はどう作られたのか中国の歴史認識はどう作られたのか
ワン ジョン 伊藤 真

東洋経済新報社 2014-05-16

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 神話はその国の歴史の起点となる固有の物語であり、史実に基づいていようがいまいが、他国がこれを否定することはできない。神話と選民意識は密接につながっている。自分たちの先祖をたどって行くと神話に行き着く。その神話は絶対的なものだから、神話から生まれた我々も絶対的な民族であると自信を持つようになる。これだけでも十分な愛国心教育なのだが、さらにトラウマを利用する。「我々はこんなにも素晴らしい民族だ。それを攻撃してきた彼らは絶対に許さない」と思わせる。敵を徹底的に貶めることで、相対的に自分たちの地位を高めるわけだ。

 こういう愛国心教育は、独裁国家の権力者が国民からの絶対的な支持を集めるための常套手段である。ところが、民主主義国家であるはずの韓国も、似たような愛国心教育を行っているらしい(以前の記事「鳥海靖『日・中・韓・露 歴史教科書はこんなに違う』―韓国の教科書は旧ソ連並みに社会主義的」を参照)。檀君の神話を信じ込ませ、朝鮮人が日本に高度な文明を伝えてあげたと民族的優位性を説き、民族的に劣位の日本人に植民支配されたことをトラウマとして強く認識させる。日本政府は韓国を政治的な価値観を供するパートナーと見なしているものの、韓国のことを調べれば調べるほど、実は共産主義国なのではないかと思えてくる。

 日本が手っ取り早く愛国主義的な教育をしたいのならば、中国や韓国に倣えばよい。『古事記』や『日本書紀』の神話を刷り込み、世界でただ1か国だけ、2000年以上も王家が続いている特別な国であることを意識させ、その特別な国を国際法違反の原子爆弾で攻撃したアメリカや、五族協和を目指した満州国の理念を頓挫させた中国を許しがたい敵として描けば効果的だろう。

 しかし、こういう愛国教育を行っている国は、だいたい対内的・対外的どちらの視点から見てもロクな国ではないということは、良識ある日本人ならすぐに気がつく。「自分大好き人間」を大量に育成すると、周囲に大きな迷惑がかかるだけなのである。そもそも愛とは、好きという感情が一方的に支配している状態ではない。よいところも悪いところもあることを認めながら、それでもやはり大切にしたいと思うのが愛である。家族愛はまさにその典型であろう。「愛は盲目」などと勝手に舞い上がっているうちは、まだ本当の愛ではない。

 日本の教育は、「日本人はこんなに悪い人でした」と教えることで、「自分大嫌い」人間を量産してきた。「自分大嫌い人間」は、「自分大好き人間」に比べると、内向的で周囲に害を及ぼさない分だけましかもしれない。しかし、自分大好き人間と同様に、健全な精神状態とは言い難い。従来の教育は、日本の悪いところばかりを教えすぎた。そこに日本の誇らしいところをうまく混合することで、多角的な視点から冷静に日本を愛せる国民を輩出すべきではないだろうか?

2014年06月21日

鳥海靖『日・中・韓・露 歴史教科書はこんなに違う』―韓国の教科書は旧ソ連並みに社会主義的


日・中・韓・露 歴史教科書はこんなに違う日・中・韓・露 歴史教科書はこんなに違う
鳥海 靖

扶桑社 2005-08

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 日本とアメリカ、ロシア(旧ソ連を含む)、韓国、中国の歴史教科書を比較した1冊。同じ歴史的事実であっても、国によって扱いが全然違っており興味深い。特に、中韓との比較に多くのページが割かれている。韓国は資本主義、民主主義という基本的価値観を日本と共有しており、日本のパートナーとなりうる国だと思っていたが、教科書の中身は社会主義国のそれを見ているようである。中国や旧ソ連の歴史教育が社会主義のイデオロギーに基づいているのは理解できるものの、韓国まで社会主義的な教育を行っているとはいささか残念である。

 韓国は自国史(韓国では「国史」と呼ばれる)の教育を非常に重視している。そして、初等学校から高等学校の全ての段階で、国史の教科書・指導書は国定である。国定の歴史教科書を使うという点では旧ソ連と共通であり、逆に、国(文部科学省)が学習指導要領という方針を示すだけで、民間企業が全ての教科書を作成する日本とは全く異なる。だが、教科書が国定であるということ以上に、韓国と旧ソ連の歴史教科書には見過ごせない共通点が3つあると感じた。

 (1)建国神話の過度な信奉
 旧ソ連には、「階級闘争の果てに社会主義が資本主義を打ち倒すのであり、ソ連こそが革命の先頭を走るミッションを帯びている」という建国神話がある。旧ソ連の支配の下に成立した東ドイツでは、資本主義の結果として生まれた帝国主義の申し子であるナチスを、社会主義が一掃したという建国神話があることは、以前の記事「岡裕人『忘却に抵抗するドイツ』―同じ共産主義が西ドイツでは反省を促し、東ドイツでは忘却をもたらした」で触れた。

 韓国では、檀君の古朝鮮建国(紀元前2333年)が、最初の国家形成として重要視されているという。しかし、紀元前2333年は中国最古の夏王朝よりもいっそう古いことになり、朝鮮半島に青銅器文化が出現する以前になるから、国史にある「青銅器文化を土台に古朝鮮の国家が建設された」という記述には矛盾があることになる。学者はこの点に薄々気づいているようだが、教育現場では今なお建国神話が強く信じられているらしい。

 もちろん、建国神話はその時代に生きた人々の意識を反映しており、何よりも国の原点を表すものであるから、無視することはできない。イギリスの歴史学者アーノルド・トインビーは、「12、3歳までに民族の神話を教えなかった民族は、必ず滅びる」と言っている。民族の連帯を図る上で、神話は非常に重要なのだ(この点、建国神話を簡単にしか取り上げていない日本の歴史教科書は弱い)。だが、神話を学ぶ上で本当に重要なのは、どこまでが史実で、どこからは物語なのかを峻別する冷静な意識ではないだろうか?建国神話を頑なに信じることは、科学的な理性を抑制し、「ない」ものを「ある」と言ってしまう捏造体質を身にまとうことになる。

 (2)愛国主義・民族主義・排外主義
 旧ソ連の教科書は愛国主義に満ちていたらしい。著者は1970年代に出版された旧ソ連の歴史教科書の日露戦争の部分を読んだことがあるそうだが、かつての日本の「国史」教科書にも遠く及ばない極端な愛国主義にうんざりさせられたという。愛国意識の醸成に欠かせないのが「英雄」の存在だ。日露戦争の箇所には、マカロフ、クロポトキン、ステッセル、コンドラチェンコなど日本人にもよく知られている軍人はもとより、日本人がほとんど知らない軍人たちが次々と登場し、英雄的な戦闘を繰り広げる場面がこれでもか、これでもかと描き出されていた。

 韓国の歴史教育は、民族史的・民族主義的視点を重視していることが、「国史」の「性格と目標」の中で明確に宣言されている。強い民族主義は、他の民族に対する優越感を生み出す。それが端的に表れているのが、古代の日朝交流を描いた場面である。そこでは、三国(百済・新羅・高句麗)が日本に対して自国の優れた文化を「伝えてあげた」という、上から目線の表現がされているそうだ(原文がどうなっているのか、是非見てみたい)。

 だが、強い民族主義は諸刃の剣であり、時に排外主義となる。自らの優越性を脅かす存在はすべからく敵となる。そして、韓国にとって最大の敵とは、他ならぬ日本だ。韓国からすれば、古代に自らの優れた文化を「伝えてあげた」民族が、自分たちに歯向かうことが許せなかったのだろう。国史においては、近代史の目的は、「日帝(日本)の武力侵略」と「過酷な植民統治」に対する「国権回復と独立」のための粘り強い闘争から、「民族運動家たちの独立精神と愛国心を模範とする」こととされている。そして、旧ソ連と同様、自国のために戦った英雄が次々と登場する。

 (3)偏った世界史観
 行き過ぎた愛国主義や排外主義の帰結として、偏った世界史観が導かれる。特定の敵ばかりにフォーカスするあまり、全体像が見えなくなってしまうのだ。旧ソ連の歴史教科書はヨーロッパ中心であったという。これは、社会主義が敵とみなす資本主義の起源がヨーロッパにあったことと無関係ではないだろう。

 韓国の場合、日本を強く敵視するあまり、それ以外の国を含む多角的な関係の把握が困難になっている。例えば、国史では日清戦争・日清講和条約がほとんど取り上げられていない。よって、同条約の第1条で清国が朝鮮国の完全無欠な独立を認めたという事実には触れられていない。さらに、日清戦争以前の清国と朝鮮の宗属関係についても全く説明されていない。清国と朝鮮の歴史的関係を抜きにして、19世紀末の日清朝露を中心とする東アジアの国際関係や日本の対朝鮮政策を適切に理解するのは困難ではないか?と著者は指摘する。

 また、日露戦争後の韓国支配についても、日韓では温度差がある。日本の場合は、ポーツマス条約、桂・ハリマン協定、第2次日英同盟協約などを取り上げて、韓国支配が米英などの承認の下に進められたことが説明されている。これに対して国史では、ハーグ密使事件に関して、「列強が日本の韓国支配を認めていた世界情勢の中で成功を収めることはできなかった」と一言述べられているにすぎない。これでは、日本の韓国支配が当時の国際社会の中でどのように受け止められていたか、十分な説明になっていないのではないか?と著者は疑問を呈している。

 旧ソ連の崩壊によって、マルクス=レーニン主義に支えられた歴史教育も崩壊した。現在のロシアは、「教条主義的な世界革命の神話」に固執したことを反省している。また、ロシアの国定教科書は依然としてヨーロッパ中心だが、地域ごとに使われている「地域教科書」を見ると、極東地域で使われているものの中には、日本との交流を説明したものが出てきているという。それに比べると、韓国の歴史教科書は、まるで旧ソ連時代のまま時間が止まっているようである。韓国は実質的に社会主義国家なのだ。韓国は現在、経済危機が指摘されているが、実は教育面からも崩壊するリスクをはらんでいるような気がしてならない。




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