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自社の強みを分析するのは難しい
『創造性VS生産性(DHBR2014年11月号)』―創造的な製品・サービスは、敢えて「非効率」や「不自由」を取り込んでみる
水曜どうでしょう『原付西日本制覇』宿泊先旅館まとめ

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プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
所属組織など
◆個人事務所「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ


(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

Experian海外企業信用調査 海外企業信用調査(Experian)
(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

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(以下の資格の講師をしています。
 ―ITパスポート
 ―情報セキュリティマネジメント
 ―経営学検定(初級・中級)
 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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2015年12月16日

自社の強みを分析するのは難しい

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strength

 事業戦略を構想する際には、まずは外部環境と内部環境を分析するのが定石であり、フレームワークとしてはSWOT分析を用いるのが定番となっている。とりわけ中小企業診断士はこのSWOT分析が大好きなようで、何かにつけてSWOT分析をやりたがる。そして、S(Strength:強み)には、決まりきったように「社長のリーダーシップが強い」と記入する。だが、社長のリーダーシップという強みは、裏を返せば社長がワンマンであるという弱みに容易に転じるのだから、ほとんど意味がない。そもそも、強みとは顧客にとって価値をもたらす源泉でなければならない(ゲイリー・ハメル、C・K・プラハラードの「コア・コンピタンス」の定義を参照)。

 自社の強みというのは、その企業でもよく解らないものだ。東京都で印刷機器の部品を製造する中小企業(A社とする)の事例を紹介したい。東京都は出版社が集中していることもあり、印刷会社が非常に多い。印刷業は東京都の地場産業と言ってもよいくらいだ(東京都の製造業事業所約3.5万所のうち、印刷業は17.1%を占める。全国では、製造業事業所約39.3万所のうち、印刷業は6.6%である)。ところが、周知の通り昨今の出版不況で印刷業界は縮小傾向にあり、A社も売上高が低迷していた。そのため、自社技術を活かして新分野に進出することとした。

 ある時、医療分野の展示会に出展したところ、海外の医療機器メーカーがA社の技術に注目した。海外メーカーが評価したのは、「微量の液体を一定の時間間隔で正確に滴下し続けるための穴を空ける技術」であった。A社自身は、その技術に特段強いとは認識していなかった。印刷機器に対して既定のインク量を正確に供給するのは、当たり前品質であったからだ。だが、医療機器メーカーにはそれが新鮮であった。A社はこの医療機器メーカーと共同で、微量薬品の計量用の部品を開発することとなった。A社がここに至るまでには、実は3年ほどかかっている。

 強みを自己分析するのが難しいことを示すもう1つの事例として、私が大好きな「水曜どうでしょう」を挙げたい。水曜どうでしょうのエッセンスを一言で表せば、「運任せの旅番組」(1997年『日本全国絵はがきの旅』より)である。番組の始まりとなった「サイコロの旅」は、北海道に帰るまでの移動手段を、全てサイコロの目に従って決めるという、運任せの旅だ。1999年の『ヨーロッパ・リベンジ』で、深夜番組にもかかわらず最高視聴率18.6%という驚異的な数字を叩き出したことに気をよくしたディレクター陣は、同年冬にゴールデンスペシャルを放送することとした。

 ゴールデンにふさわしい企画としてディレクター陣が選択したのが、サイコロの旅(『サイコロの旅6』)であった。当時のディレクター陣は、サイコロの旅こそが水曜どうでしょうの醍醐味であると考えたのだろう。出演者の大泉洋氏も、後に発売されたDVDの中で「十八番」と表現している。だが、視聴率は12.5%にとどまり、「惨敗」(2000年『onちゃんカレンダー』より)であった。

 水曜どうでしょうの強みは、単なる運任せの旅ではない。最初に旅のゴールは何となく決めておくが、旅をしているうちにゴールはどうでもよくなる。やることを失った一行は、道中で何かネタはないかと血眼になって探し、企画を全て運任せ、出たとこ勝負で現地調達する。結局は、旅そのものよりも、脇でちょこちょことやっていた企画の方が盛り上がってしまい、無事にゴールしたという感動が薄らぐ(もしくはゴールすること自体を放棄してお茶を濁す)という本末転倒に陥る。これが水曜どうでしょうの面白さである。旅そのもののストーリーと、脇の企画で盛り上がる4人のストーリーという物語の二重性を指摘したのが、臨床心理学者の佐々木玲仁氏である。

結局、どうして面白いのか ──「水曜どうでしょう」のしくみ結局、どうして面白いのか ──「水曜どうでしょう」のしくみ
佐々木玲仁

フィルムアート社 2012-09-13

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 『北極圏突入~アラスカ半島620マイル~』(1997年)では、当初の目的であるオーロラはちっとも見られず、代わりに大泉氏が毎日お見舞いする不味い料理に4人とも撃沈する痛々しい姿がフォーカスされた。『日本全国絵はがきの旅』では、途中からなぜか四国八十八か所を巡拝することになり、これが後の四国シリーズへと結びついた。『ヨーロッパ・リベンジ』では、最初はメルヘンにちなんだ小ネタを用意していたのに、すぐにネタが尽きてしまい、仕方なく立ち寄ったムンク美術館で購入した「ムンクさん」の人形が、ドラマ「フィヨルドの恋人」を生み出した。『原付西日本制覇』(2000年)では、道中で繰り広げた「甘いもの早食い対決」がメインの座を奪った。

 『ジャングル・リベンジ』(2004年)では、マレーシアのジャングルにたたずむ粗末な動物観察小屋「ブンブン」に泊まったという事実よりも、ブンブンで脱糞した大泉洋氏の方が強烈なインパクトを残した。『激闘!西表島』(2005年)では、虫捕りを目的に西表島に行ったのに、現地のガイド・ロビンソンさんに「虫はいねぇ」と言われてあっさりと企画を変更し、最後は夜通し魚釣りをする企画に変質した(真っ暗な画面に字幕だけが流れるという編集も衝撃的であった)。

 『日本全国絵はがきの旅』は1997年の年末に放送されたが、年末特番の関係で最終夜が深夜の非常に遅い時間に回された。せっかくの最終夜をそんな時間に放送するのはもったいないと考えたディレクター陣は、つなぎの企画として『車内でクリスマスパーティー』を考案した。すると、この1夜限りの企画が思いの外面白くなり、2005年の水曜どうでしょう祭りで実施した人気企画ランキング(第1回どうデミー賞)では、『日本全国絵はがきの旅』を押さえて堂々ランクインした。

 1998年にファンのために実施した「東北2泊3日バスツアー」は、ツアーそのものよりも、脇でファンを楽しませようと色々扮装する企画が面白くなってしまった。さらに、扮装よりも深夜の大泉VS藤村Dの紛争がさらに盛り上がり、「僕は一生どうでしょうします」という名言を生み出した(その様子は、1999年に『東北2泊3日生き地獄ツアー』として放送)。1999年『サイコロ6』のゴールデンスペシャルのために、4人は前日から24時間生コマーシャルを打ったのだが、コマーシャルの中身よりも、2畳しかない控室に4人が押し込められて管を巻く様子を収めた『30時間テレビの裏側全部見せます』(2000年)の方が藤村Dのお気に入りである。

 水曜どうでしょうの偶然性は、旅そのものに埋め込まれるのではなく、旅のサブストーリー側に埋め込まれている必要がある。サイコロの旅は、旅本体に偶然性が埋め込まれているため、水曜どうでしょう本来の強さが発揮できるわけではない。この点を当時のディレクター陣は十分に認識できていなかったのではなかろうか?強みを自己評価するのは非常に難しいのである。

 『サイコロ6』のDVDの副音声で、藤村Dは「今だったらゴールデンで『カブ』をやる」と発言していた。『原付日本列島制覇』の収録を2010年夏に終えたばかりで、撮影に手ごたえを感じていたことも影響しているが、それを差し引いても、カブ企画こそ水曜どうでしょうの醍醐味というのは確かだと思う。『原付日本列島制覇』は、基本的に『原付西日本制覇』をベースとし、道中で甘いもの早食い対決を繰り広げるのだが、それに加えて毎晩宿で繰り広げられるトークも主要部分を構成していた(全12夜のうち、3分の1ぐらいは宿トークではないだろうか?)。

 こう考えると、2013年『初めてのアフリカ』がファンの間で酷評された理由も容易に解る。「アフリカに野生の動物を見に行くぞ」と宣言して、その通りに動物を見てしまってはいけないのである。動物を見るというメインストーリーの中にさえ偶然性がないのだから、全く水曜どうでしょうらしくない。最近の記事によると、藤村Dはそろそろ新作をやりたいと意欲を燃やしているようだ。次回作は水曜どうでしょうらしい展開を期待したい(個人的には『試験に出るどうでしょう』シリーズを復活させて、安田顕氏を久しぶりに呼んでほしいと思っている)。

 強みとは、顧客が競合他社との比較で評価するものである。自分で「これが強い」と勝手に思い込んではいけない。それを避けるには、顧客に対して「我が社の強みは何であるか?」と率直に聞いてみるのがよい。ちなみに、私は経営コンサルティングがそこそこ得意だと思っているのだが、周囲の評価を聞いてみると、研修コンテンツの開発やケーススタディの作成に強いという声がよく返ってくる。自己評価と周囲の評価が異なるとがっかりすることがある。だが、仕事とは外部から要求されて行うものである以上、外部の声を優先しないわけにはいかない。

 (今日の記事は、単に水曜どうでしょうの話がしたかっただけのような気がする・・・)

カテゴリ: 経営 コメント( 0 )
2014年11月21日

『創造性VS生産性(DHBR2014年11月号)』―創造的な製品・サービスは、敢えて「非効率」や「不自由」を取り込んでみる

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Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 11月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 11月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2014-10-10

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 今月号で興味深かったのは、JAXA宇宙飛行士の若田光一氏のインタビュー記事(「日本人初のISSコマンダーが実践するリーダーシップ 宇宙空間で求められる極限のチーム・マネジメント」)である。日本人で初めてコマンダー=船長を務めた若田氏が、多国籍チームをいかにしてマネジメントしたか、その苦労が読み取れた。

 ・国際宇宙ステーション(ISS)での宇宙食にはNASAとロシアが供給する「標準食」に加え、宇宙飛行士が個々に選択できる「嗜好食」がある。ストレスを解消する手段がほとんどない宇宙空間では、食事が最大の楽しみである。そこで、コマンダーはそれぞれの宇宙飛行士の嗜好食が、予定通りにISSに打ち上げられるかどうかもチェックしなければならない。

 ・宇宙では前倒しで作業が進むことが望ましいとは限らない。ISSでの実験やメンテナンスの多くは、地上に専門家がいなければ実行できないからである。軌道上の作業が予定通りに進まないと、地上管制局は適切な人員配置ができない。これを調整するのもコマンダーの役割である。

 ・若田氏が初めてスペースシャトルに搭乗した時のコマンダーであるブライアン・ダフィーさんからは重要なことを教わった。彼は訓練中の昼食時などの何気ない会話で、クルー全員の人となりを深く観察していた。この飛行士はよく理解している。この人は理解が不十分だ。それをしっかり把握していたから、ダフィーさんは「この飛行士には完全に任せよう」、「この飛行士はサポートが必要だから、別の人をバックアップつけよう」という判断ができた。ISSのようなストレスがたまりやすい閉鎖空間では、自分のメッセージが正しく伝わっているか常に気をつけなければならない。

 ・若田氏は、クルーが全員で食事をした経験があったので、自分がコマンダーになった時は6人全員で毎晩夕食を取ろうと呼びかけた。しかし、これはうまく行かなかった。たまたまだが、アメリカ側のクルーに早寝早起きをしたい人がいた一方、ロシア人クルーは朝ゆっくり起きて、夜もゆっくり食事をしたいタイプが多かったからである。食事の時間を無理に合わせることでストレスが高まることがある。たった6人のクルーでさえそうなるのだから、15か国が参加する巨大な国際協力プロジェクトでは、チームの一体感を高めるのは容易ではない。

 ただ、特集の全体的な印象としては、「創造性」や「生産性」を測る具体的な指標などを明確にした上で各論文が紹介されているわけではなく、それらの指標がどのように対立するのか?両者の対立をどのように解決していけばよいのか?といった点については、消化不良な感じが否めなかった。創造性の定義についても、かなり広くとらえられている。
 一般的に創造性の定義は狭すぎます。作曲したり映画をつくったり、自己表現に関わることだと考えられています。私はもっと広く、創造性とは「人生の問題を解決すること」ととらえています。
(エド・キャットムル「成功を計画し、早めに失敗を起こす ピクサー流創造性を刺激する組織のつくり方」)
 ここで、製品・サービスを「必需品か否か?」と、「欠陥が顧客に与えるリスクが大きいか?」という2軸でマトリクスを作って、大まかに4つに分類してみる。「欠陥が顧客に与えるリスクが大きいか?」というのは、製品・サービスに品質上の重大な問題があった場合に、顧客の生命に危険が及ぶ可能性が高いか?(BtoCの場合)、あるいは、顧客企業の業務が停止する可能性があるか?(BtoBの場合)という意味である。

製品・サービスの4分類

 「必需品&欠陥が顧客に与えるリスクが小さい」の象限には、いわゆる日用品が入る。食料品に欠陥があると、食中毒は発生するだろうが、死亡事故につながることはまれである(もちろん、ないとは言い切れない)。また、衣服がすぐに破れてしまっても、みっともない思いこそすれ、命を落とすことはない。この象限に該当する製品・サービスは、製造コストが安い新興国が得意としている。ブランド力がある先進国の企業も、製造は海外に委託していることがほとんどである。

 「必需品&欠陥が顧客に与えるリスクが大きい」の象限には、BtoCビジネスであれば自動車、住宅、医療サービス、BtoBビジネスであれば産業機械、IT(基幹システム系)などが入る。自動車などに深刻な欠陥があれば大問題になることは言うまでもない。製造業が工場で用いる産業機械に欠陥があると、製造ラインは停止するし、最悪の場合、作業員が死亡することもある。企業の基幹システムが停止すれば、業務はストップし、多くの顧客に迷惑をかけることになる。

 この象限の製品・サービスを得意とするのが日本(+ヨーロッパ)である。この象限では、あらゆることにおいて完璧さが要求されるから、日本人の真面目さや精緻さといった強みが威力を発揮する。よく、「日本企業は過剰品質に陥りがちだ」と批判されるが、この象限に関していえば、過剰なぐらいに品質を作り込まなければならない。「必需品&欠陥が顧客に与えるリスクが小さい」の象限は、コスト重視でそれほど品質にこだわらなくてもよいのとは全く対照的である。

 「必需品でない&欠陥が顧客に与えるリスクが小さい」の象限には「文化的な財・サービス」を位置づけた。これは、映画、ドラマ、小説、マンガ、音楽、芸術、舞台、テーマパーク、ファッション、レストラン、観光など、趣味的に消費される製品・サービスであって、その国・地域の文化的特性が反映されたものを指す。映画やドラマに多少の欠陥がある、すなわち役者の演技が下手であったり、ストーリーに一貫性がなかったりしても、観ている人の生命には影響しない。

 この象限に滅法強いのがアメリカだ。世界中で映画が流通しているのはアメリカぐらいだし、ディズニーランドも世界中にある。アメリカは、自国民の好みをほとんどそのまま海外諸国にも”押しつける”のが非常に得意である。スマートフォンもfacebookもそうした製品・サービスの一部であろう(図中の「IT(個人向け)」とはそういう意味である)。スマートフォンは、別に持っていなくても日常生活に支障はないのに、今や「持っていないと恥ずかしい」と思われるくらいだ。

 「必需品でない&欠陥が顧客に与えるリスクが大きい」の象限に該当する製品・サービスは、私の中でちょっと思いつかなかった。「これだ」というものが思い浮かんだ方は、是非コメントなどでお教えいただけると大変ありがたい。

 エド・キャットムルが定義する創造性は全ての象限において必要であろう。しかし、一般的な意味での創造性が要求されるのは、「必需品でない&欠陥が顧客に与えるリスクが小さい」の象限ではないだろうか?この分野の製品・サービスは、人によって好き嫌いがはっきりしており、企業は創造力を活かしてファンを囲い込み、ファンの期待を大きく超える経験価値を提供することが成功の秘訣となる。その秘訣をもう少し紐解いていくと、この象限の製品・サービスには以下の3つの要素を取り込むことが有効なのではないだろうか?

 (1)他人には理解されない好みを反映させる
 この象限の製品・サービスは、人によって好き嫌いが分かれると書いた。特定の人に好かれるということは、別の特定の人には嫌われなければならない、ということだ。傍から見ると「何でこんなものが売れるのか?」と不思議がられるぐらいの方が望ましい。作り手の偏った好みを反映させることで、製品・サービスの特異性を際立たせることができる(以前の記事「『一流に学ぶハードワーク(DHBR2014年9月号)』―「失敗すると命にかかわる製品・サービス」とそうでない製品・サービスの戦略的違いについて」を参照)。

 私はフィクションの世界が好きではないので、映画もドラマも小説もほとんど見ない。また、音楽は音楽単体で聞きたいから、ミュージカルにも行かない。こういうのが好きな人の心理が私にはいまいちピンと来ないのだが、好きな人にはそれなりの理由があるのだろう。代わりに、私はプロ野球や大相撲が好きだし、このブログの右カラムにあるように、Mr.Childrenを愛し、水曜どうでしょうをマニアックなぐらいに観ている。当然、私が好きなものを嫌いな人は大勢いる。

 (2)敢えて「非効率」、「不自由」を取り込む
 下2つの象限は効率性を極限まで追求する領域である。我々にとって、効率とは日常そのものである。よって、裏を返せば、非効率はそれだけで非日常という驚きを演出することができる。旅行などは、目的地にすいすい行くことができて、目的地でお目当てのものをすんなり見たり食べたりすることができては面白くない。地図と格闘し、都市部ほど便利ではない交通網に翻弄され、最寄りの駅についてからも目的地を探すのに四苦八苦し、ようやくたどり着いたお店でご飯が出てくるのに30分以上待たされ、店主が「遠いところをわざわざどうも」などと言いながらご飯を運んでくる、そういう一連のプロセスが楽しいものだ。

 私は箱根が好きで、毎年旅行に行くのだが、箱根はここ数年で便利になりすぎてしまったように感じる。まず、箱根湯本の駅がきれいになりすぎた。PASMOが使えるようになり、以前はなかったエスカレーターまで設置されている。バスで待たされることもほとんどないし、レストランやお土産屋さんも妙に洗練されている。つまり、全体的に、小奇麗すぎるのである。こうなると、気分的には都心にいるのと差がなく、旅行に来た気がしない。この点が、箱根ファンとしては残念だ。

 (強引なつなぎ方だが、)旅と言えば水曜どうでしょうである。あの番組は非効率の塊のような番組だ。東京から札幌に帰るのに、わざわざサイコロを振って行き先を決め、途中でホテルに泊まればいいのに深夜バスを使う。サイコロでの移動に飽きたということで、別の移動手段はないものかと思案した結果生まれたのが、カブ企画である。東京から札幌、京都から鹿児島をわざわざ50ccのスーパーカブで移動する。海外企画でも、他に交通手段はいくらでもあるのに、移動はいつもレンタカー一本だ。しかし、その非効率さがあるからこそ笑いが活きてくる。

 『サイコロ2』の「壇ノ浦レポート」は、ファンの間では今や伝説となっている。『ヨーロッパ・リベンジ』では、大泉洋さんがフィヨルドを見たいと言ってスカンジナビア半島を遠回りしたところ、あまりに代わり映えしない景色に嫌気がさしたので、退屈しのぎに作ったのがドラマ「フィヨルドの恋人」である。そして、水曜どうでしょうには、安田顕さんという切り札がいる。「無類の不器用」という異名をとる安田さんが登場すると、他のメンバーが予想だにしなかった方向へと話が屈曲する。安田さんが出る企画には、『試験に出るどうでしょう』シリーズ、『シェフ大泉 夏野菜スペシャル』、『対決列島』といった名作が多い(番組を観たことがない人にはさっぱり解らないだろうが・・・)。

 ちなみに、2013年の最新作「初めてのアフリカ」はネットでの評判があまりよくなかった。「アフリカに動物を見に行くぞ」と言って、あっさりビッグ5(バッファロー、ゾウ、サイ、ヒョウ、ライオン)を見てしまっては、やはり面白みが半減する。加えて、今回の旅はスタッフも充実しすぎており、完璧なガイド(大津さん〔通称ムゼー〕)がいたし、撮影のバックアップも万全だった。要するに、どうでしょう班(=出演者+ディレクターのこと)は、用意された”箱”に入れられて、予定通りに動物を見てきた、ということなのだ。敢えて自ら非効率な道へと入り込み、それを嬉野Dが必死に撮影するという、いつものパターンが見られなかったのが、ネットの不評の原因ではないだろうか?

 (3)裏で徹底的にこだわる箇所を作る
 「必需品でない&欠陥が顧客に与えるリスクが小さい」の象限に入る製品・サービスは、「必需品&欠陥が顧客に与えるリスクが大きい」の象限に入る製品・サービスとは違い、完璧を目指す必要はない。むしろ、(2)で述べたように、非効率や不自由な部分があるぐらいの方が望ましい。ただし、それと同時に、そうでない部分においては、顧客が気づかないような部分で、作り手が徹底的に品質を作り込む必要がある。その努力が顧客の目に触れてはいけない。あくまでも陰で努力していることが重要である。それが顧客満足にどうしてプラスの影響を与えるのか、合理的な説明をすることは難しい。おそらく、顧客に無意識に働きかける何かがあるのだろう。

 水曜どうでしょうは、旅そのものは非効率だが、藤村Dの編集は非常に緻密である。最も特徴的なのは、字幕スーパーが出演者の発語と同時に表示されることだろう。普通の番組であれば、2~3行の字幕スーパーを一度に表示させる。これに対し、水曜どうでしょうでは、セリフに合わせて1行ずつ(場合によっては1語ずつ)表示される。藤村Dは「好きで編集をやっている」とは言うものの、この編集は実に大変だと思う。最近、水曜どうでしょうで用いられる特徴的なフォントを字幕に使う番組が増えたが、字幕スーパーの表示方法まで真似している番組は観たことがない。

 陰での非常に強いこだわりを感じるもう1つの例は、先日紫綬褒章の受賞が決まったサザンオールスターズの桑田佳祐さんである。サザン、もしくは桑田さん個人名義の曲は、シングルとアルバムで微妙にアレンジの違うバージョンが収められていることが多い。ただ、私は音楽に対する造詣が深くないので、シングルとアルバムを聴き比べても、どこがどう変わったのか解らない(汗)。Wikipediaでアレンジの違いについて解説されているのを見て、ようやく解るぐらいだ(聴き比べて違いが解る人は本当にすごいと思う)。そのくらい、桑田さんの音楽に対するこだわりが強いということなのだろう。その証拠に、サザンは未だに、CDと同時にLPも発売している。

2013年11月04日

水曜どうでしょう『原付西日本制覇』宿泊先旅館まとめ

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水曜どうでしょう「原付西日本制覇」 and 姫だるま

 DVD第20弾『原付西日本制覇/今世紀最後の水曜どうでしょう』を記念して(?)、どうでしょう班が合計6日間の行程で宿泊した旅館をまとめてみた。いろいろ調べて解ったのだが、「予算がない、ない」と言いながら、旅館は結構いいところを選んでいるんだね。(画は緩いけれど)つらい旅だから、せめて宿ぐらいはいいところに泊まろう、ということかな?

http://www.suisyou.com/index.html 1日目:城崎温泉 大西屋水翔苑
 大泉さんが着ていた浴衣に書かれている「大・・・」という文字から、ここの旅館と推定。1日目の宿トークは、特典映像に収められていた「完全版」が面白かった。2日目は島根県を目指そうと提案するD陣に対し、京都―鹿児島・佐多岬間1,400kmをどうしても3日間で走り切りたいミスターは不満顔。翌日中に500kmを走破して本州横断を目指すというミスターが苦肉の策でひねり出した案が、「全員がパニック状態に陥って、そのスキにたどり着く」という意味不明なもの(爆笑)。


http://www.choraku.co.jp/ 2日目:玉造温泉 長楽園
 2日目の宿は、「長楽園」と書かれた看板が映っていたので簡単に特定できた。初日よりは冷静になったミスターは、3日間で佐多岬まで行くことはさすがに断念。現実的なプランとして、30km/h×10時間=300kmぐらい走れば、下関あたりまで行けるのではと試算。ミ「企画変えようよ。下関まで行きゃあいいんだよ、京都をスタートして。西日本横断なんてちんけなことじゃなくて、中国横断でいこうよ」 藤「大泉君どうだい、初めて聞いたろ?でもこの人は企画会議の時こういうこと言うんだよ」(困惑)


http://senshunraku.jp/pc/index.html 3日目:萩 千春楽
 浴衣の文字が特定できず、4階建ての外観と、翌日のシーンに映っている周囲の建物を手がかりにしようとしたが難航。ところが、あれこれ調べていくうちに、実は水曜どうでしょう公式HPの「ウラ話」のコーナーで、この企画で宿泊した旅館が全部紹介されていることが判明した。なんだ、最初からここを見ればよかった(「グルメといで湯!ぶらりカブの旅 ガイドブック 122-2」)。


http://travel.rakuten.co.jp/HOTEL/32206/32206.html 4日目:湯布院 游輪
 高崎のだるまが結婚を控え、親代わりの大泉さんと独身最後の夜を過ごした宿。布団に入った大泉さんがだるまを横に置き、「風邪引くぞぉ」とだるまに布団をかけるシーンが好き。なお、翌日めでたく結婚することとなった、大分県・竹田市にある「後藤姫だるま工房」の姫だるまは、この企画で人気に火がついてしまい、今では予約しても3年待ちとかそういう状態らしい。私は、たまたま九州の売店で売られていた一回り小さいサイズのものを運よくゲットすることができた(冒頭の写真)。


http://kuramoto-aya-shusennomori.jp/syukuhaku/ 5日目:酒泉の杜 綾陽亭
 どうでしょう班御用達の宿。この後も、『対決列島』(2001年)、『日本全国絵はがきの旅2』(2002年)で利用している。夫婦だるまが新婚旅行で初日に宿泊した宿でもある。だんなは田舎の土建屋の社長だったらしく、すっかり旅行に夢中の社長は、明日の工事を全部下請けに出すらしい(笑)。近くには、長さ250m、高さ142mの「照葉大吊橋」がある。2000年の放送当時は日本一の高さを誇っていたが、2006年、大分県に高さ173mの「九重”夢”大吊橋」ができたため、現在は日本第2位。


http://www.hakusuikan.co.jp/ 6日目:指宿温泉 白水館
 番組では登場しないが、先ほどの「ウラ話」でこの旅館が紹介されている。温泉が大好きなどうでしょう班は、温泉がない佐多岬に行っても仕方がないということで、以前『サイコロ5』(1998年)で訪れた指宿温泉をゴールに変更。そして、企画の冒頭で目的地を発表するシーンの音声を、佐多岬から指宿に差し替えるという暴挙に(笑)。なお、指宿温泉の名物「砂蒸し風呂」は、体中をドクドクと血液が流れるのが解るというらしいから、その独特の感覚を一度体験してみたいものだ。


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