2014年01月23日
【数学Ⅱ(三角関数)】m=0, 1, 2, ……, 89とするとき、tanm°が有理数となるような整数mを全て求めよ
以前の記事「【数学Ⅱ(三角関数)】tan1°は有理数か?(京都大)」の補足。tan1°から順番に無理数であることを証明していったのだが、tan9°のところでつまづいてしまった。
tan9°が有理数であると仮定すると、
tan18°=tan(9+9)°で有理数
tan27°=tan(18+9)°で有理
tan36°=tan(27+9)°で有理数・・・(1)
・・・(中略)・・・
tan90°=tan(81°+9)°で有理数となるが、tan90°は定義されない。よって、最初の仮定が誤りであり、tan9°は無理数である、という証明を最初は考えていた。だが、「tan90°が定義されないこと」は背理法には使えない。例えば、tan45°が有理数であると仮定すると、tan90°=tan(45+45)°で有理数となる。ところが、tan90°は定義されないため、最初の仮定が誤りであり、tan45°は無理数ということになる。これは明らかに、tan45°=1(有理数)であることに反する。
仕方なく、半ば強引な方法だが、tan36°を求めてこれが無理数であることを示し、(1)との矛盾を導くことにした。36°=θとおくと、5θ=180°であるから、3θ=180°-2θである。よって、sin3θ=sin(180°-2θ)となる。この式を三倍角の公式「sin3θ=3sinθ-4sin3θ」を用いて簡単にすれば、cosθを求めることができる。
なお、cos3θ=cos(180°-2θ)とした場合は、三倍角の公式「cos3θ=4cos3θ-3cosθ」を用いれば、同様にcosθが求められる(ただし、cosθの3次方程式になるため、やや面倒である)。また、cos36°を求める方法には、正五角形を用いる方法もある。下図の下段にそれを示した。
この問題には、まだ続きがある。そして、こちらの方がはるかに難しい。
m=0, 1, 2, ……, 89とするとき、tanm°が有理数となるような整数mを全て求めよ。前回の記事で、tan1°から順番に無理数であることを示していった過程を見てみると、mが9の倍数以外の時は、nm=
30°+360°×k
60°+360°×k
120°+360°×k
150°+360°×k
210°+360°×k
240°+360°×k
300°+360°×k
330°+360°×k
を満たすnとkが存在しそうである。tanm°が有理数であると仮定すると、加法定理を利用すれば、tan2m°、tan3m°、・・・、tannm°が有理数であることが導かれる。ところが、nmは上記8パターンのいずれかに該当し、その時のtannm°の値は±√3、±1/√3のいずれかになるため、tannm°は無理数となって最初の仮定と矛盾する。
あとは、mが9の倍数の場合である。tan9°とtan36°が無理数であることは解っているから、残りのtan18°とtan27°を倍角の公式などを利用して力づくで計算しようとしたが、ルートだらけになって挫折した(汗)。「tanm°が有理数ならば、tannm°は有理数である」ことが帰納的に証明されているので、その対偶「tannm°が無理数ならば、tanm°は無理数である」を利用する。つまり、tanα°が無理数ならば、αの約数βについて、tanβ°も無理数となるわけだ。