2015年05月23日
「経営革新計画」、「特定研究開発等計画」の概要、申請方法、メリット、承認・認定件数
平成26年度の補正予算で実施されている「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス革新補助金)」の1次公募が5月8日(金)に締め切られた。私のところにもいくつか質問が寄せられたのだが、その中で考えさせられる(?)質問が1件あった。
ものづくり補助金には、主に「革新的サービス」と「ものづくり技術」の2タイプがある。その申請書様式(※リンクは東京都のもの)の「3.対象類型」を見ると、「革新的サービス」には「申請時に有効な経営革新計画の承認を受けている」というチェックボックスが、「ものづくり技術」には「『中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律』の法認定を受けている」というチェックボックスがある。「『中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律』の法認定を受けている」とは、「特定研究開発等計画(特定ものづくり基盤技術に関する研究開発およびその成果の利用に関する計画)が、経済産業局長から認定されていることを指す。
ものづくり補助金の公募要領を読むと、ここにチェックが入っている、すなわち「経営革新計画」の承認または「特定研究開発等計画」の認定を受けていると、審査の際に加点対象になるとある。だが、経営革新計画の承認件数に比べて、特定研究開発等計画の認定件数は少ないはずだ。よって、相対的に承認されやすい経営革新計画を持つ企業の方が審査で有利なのではないか?というわけである。私も気になったので、両計画の承認・認定件数を調べてみた。
○経営革新計画(2014年3月末時点)
北海道経済産業局 959
東北経済産業局 2,266
関東経済産業局 22,110
中部経済産業局 6,727
近畿経済産業局 7,852
中国経済産業局 6,439
四国経済産業局 1,340
九州経済産業局 7,512
沖縄経済産業部 298
――――――――――――
合計 55,503
○特定研究開発等計画
(※経営革新計画のように全国のデータが集計されていない。そのため、各地域の経済産業局のHPを見て、過去のニュースから情報を探さなければならず、ちょっと大変だった・・・)
北海道経済産業局 156(2014年7月18日時点)
東北経済産業局 313(2014年7月18日時点)
関東経済産業局 1,933(2014年10月20日時点)
中部経済産業局 680(2014年7月28日時点)
近畿経済産業局 989(2014年7月8日時点)
中国経済産業局 210(2014年7月10日時点)
四国経済産業局 103(2014年7月14日時点)
九州経済産業局 206(2014年8月1日時点)
沖縄経済産業部 28(2014年7月14日時点)
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合計 4,618
質問者の指摘通り、特定研究開発等計画は、経営革新計画の10分の1足らずしか認定されていない。この結果からは、相反する2つの見方ができると思う。1つ目は、加点を大きくして結果的に革新的サービスの方がものづくり技術よりも優遇されることになると、公平性という面で問題が出るため、実は加点はそれほど大きくないのではないか?という見方である。
とはいえ、今回のものづくり補助金では、国(中小企業庁)がサービス業重視の姿勢を明確に打ち出している。公募開始直前には「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」が公表され、公募要領ではものづくり技術よりも先に革新的サービスの説明が出てくるぐらいだ。よって、経営革新計画の承認を受けているサービス業を優先的に採択する可能性も否定できない。これがもう1つの見方である。どちらの見方が当たっているかは、具体的な得点配分が私には解らないので何とも言えない。
以下、経営革新計画と特定研究開発等計画の概要・申請方法・メリットに関するメモ書き。
【経営革新計画】
○概要
「中小企業新事業活動促進法」に基づき、中小企業が取り組む「新たな事業活動」について、「実現性がある数値目標」を具体的に定めた中期的な経営計画書を「経営革新計画」として承認する。計画が承認されると様々な支援策の対象となる他、計画策定を通して現状の課題や目標が明確になるなどの効果が期待できる。
○要件
(1)新たな事業活動
これまで行ってきた既存事業とは異なる新たな取組(新事業活動)を行う計画であること。新事業活動とは、以下の4つの分類に該当するものをいう。
①新商品の開発または生産
②新役務の開発または提供
③商品の新たな生産または販売の方式の導入
④役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動
(2)実現性がある数値目標
3~5年の計画で、経営指標の数値目標を達成できる計画であること。また、その数値目標を達成可能な実現性の高い内容であること。
条件①:付加価値額または1人あたりの付加価値額の伸び率=年率3%
条件②:経常利益の伸び率=年率1%
◆付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
◆1人あたりの付加価値額=付加価値額÷従業員数
◆経常利益=営業利益-営業外費用(支払利息、新株発行費など)
※年率3%ないし1%とは、計画期間中の平均である。3年計画の場合、3年後に付加価値額または1人あたりの付加価値額が現在と比べて9%増加、経常利益が現在と比べて3%増加していればよい。1年目は追加投資によって付加価値額などが減ることも考えられるが、長期的にその落ち込みをカバーする増加を実現できればよい。
○申請方法
各都道府県の指定書式(※リンクは東京都のもの)に計画を記入し、その他必要書類を揃えて、原則として本社がある都道府県を所轄する経済産業局に提出する(その他のケースについてはこちらを参照)。提出から受理までには何度か修正が発生するのが普通である。最終的に承認されるまでには、1~2か月ほどかかる。
○メリット
経営革新計画の承認を受けると、計画期間中、以下の支援措置を活用できる。なお、支援措置を受けるためには、承認を受けた後に、それぞれの支援機関などにおける審査が必要となる(経営革新計画の承認は、支援措置の適用を保証するものではない)。
1.政府系金融機関による低利融資制度
2.中小企業信用保険法の特例
3.中小企業投資育成株式会社の特例
4.起業支援ファンド(旧称:ベンチャーファンド)
5.高度化融資制度
6.小規模企業者等設備導入資金助成法の特例措置
7.特許関係料金減免制度
8.販路開拓コーディネーター事業
9.株式会社日本政策金融公庫法の特例
10.貿易保険法の特例
【特定研究開発等計画】
○概要
中小企業のものづくり基盤技術の高度化を支援することにより、我が国製造業の国際競争力の強化および新たな事業の創出を図ることを目的とした「中小ものづくり高度化法」が2006年4月19日に施行された。
中小企業は、単独または共同で、特定ものづくり基盤技術に関する研究開発およびその成果の利用に関する計画(特定研究開発等計画)を作成し、経済産業局長の認定を受けることにより、戦略的基盤技術高度化支援事業、日本政策金融公庫による低利融資、中小企業信用保険法の特例、特許料等の特例等の支援措置を受けることが可能となる。
○要件
研究対象となる技術が、特定ものづくり基盤技術に該当し、川下産業のニーズ充足、競争力強化に資するものであること。
◆特定ものづくり基盤技術・・・デザイン開発、情報処理、精密加工、製造環境、接合・実装、立体造形、表面処理、機械制御、複合・新機能材料、材料製造プロセス、バイオ、測定計測。
○申請方法
指定書式(※全国共通)に計画を記入し、その他必要書類を揃えて、研究開発を行う拠点となる施設がある都道府県を所轄する経済産業局に提出する。中小企業庁のHPには、認定審査は概ね3か月に1回行うと書かれているが、実際にこの頻度で審査を行っているのは関東経済産業局だけであり、他の経済産業局は概ね1年に1回となっている。
○メリット
特定研究開発等計画の認定を受けると、計画期間中、以下の支援措置を活用できる。なお、支援措置を受けるためには、認定を受けた後に、それぞれの支援機関などにおける審査が必要となる(特定研究開発等計画の認定は、支援措置の適用を保証するものではない)。
1.日本政策金融公庫の低利融資
2.中小企業投資育成株式会社法の特例措置
3.中小企業信用保険法の特例措置
4.特許料などの減免
5.戦略的基盤技術高度化支援事業
◆補助事業期間:2年度または3年度
◆補助金額:当該年度に行う研究開発などに要する補助金額の合計が4,500万円以下。
(1)大学・公設試験機関(補助率:定額、補助金額の合計のうち1,500万円を上限)
(2)中小企業・小規模事業者(補助率:2/3以内)
2年度目以降は、原則として次の通り交付申請できる。
2年度目:初年度の補助金交付決定額の2/3以内(定額:1,000万円以内)
3年度目:初年度の補助金交付決定額の半額以内(定額:750万円以内)
※経営革新計画の場合は融資の優遇措置が中心であるのに対し、特定研究開発等計画は「戦略的基盤技術高度化支援事業」という補助金に応募できるようになる点が最大の違いである。補助金の額は、中小企業向けとしては非常に高額である。