このカテゴリの記事
東京都の中小企業向け補助金・助成金など一覧【平成29年度】
【理論政策更新研修】着眼大局着手小局「3人対110カ国の交渉のシナリオ。資金なし時間なし知名度なしからのアプローチ」他
「神奈川県中小企業診断協会」の理論政策更新研修に行ってきた(テーマは「ものづくり」)(2/2)

お問い合わせ
お問い合わせ
プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
所属組織など
◆個人事務所「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ


(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

Experian海外企業信用調査 海外企業信用調査(Experian)
(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

中小企業診断士の安い通信講座なら「資格スクエア」資格スクエア
(以下の資格の講師をしています。
 ―ITパスポート
 ―情報セキュリティマネジメント
 ―経営学検定(初級・中級)
 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
アクセスカウンター(PV)
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

最新記事

Top > 理論政策更新研修 アーカイブ
2017年07月10日

東京都の中小企業向け補助金・助成金など一覧【平成29年度】

このエントリーをはてなブックマークに追加
商売繁盛

 (一社)東京都中小企業診断士協会の理論政策更新研修に参加してきた。この研修は2コマ構成なのだが、1コマ目は必ずその年度の中小企業政策を学習する時間となっている。今回は、東京都が平成29年度に実施する中小企業振興施策について、東京都産業労働局商工部の担当者から説明があった。東京都が中小企業振興施策のために持っている予算は約4,600億円だという。ただし、そのうち約700億円は観光、雇用・就労支援、農業のための予算であり、残り約3,900億円のうち約8割は制度融資のために都内の金融機関に貸し付けているものであるから、純粋に中小企業支援のために使われる予算は約600億円となる。それでも、中小企業庁の予算がだいたい1,500億円程度であるから、いかに東京都がお金を持っているかが解る。

 以下、研修の中で紹介があった主要な中小企業振興施策を列記する。70の施策があるが、実際にはこの倍ぐらいの施策があるそうだ。可能な限り、関連リンクをつけておいた。ただし、古い情報のページも混じっているため、随時最新情報をチェックしていただきたい。補助金・助成金は「●」、専門家派遣が中心のものは「◇」、相談窓口サービスが中心のものは「▽」で示した。

 【経営革新支援】
 ○経営革新計画
 ●団体向け課題解決プロジェクト支援事業

 【経営安定支援】
 ▽小規模企業対策(地域持続化支援事業)
 平成27年度から都内6か所に支援拠点を整備し、小規模事業者が抱える事業承継などの課題解決を支援するとともに、商工会や商工会議所が取り組む地域ブランド開発などの事業を促進し、地域全体の活性化を実現する。平成29年度は多摩・島しょにおける支援を充実。
 ◇中小企業活力向上プロジェクト
 ▽取引改善指導(ADR)
 ●受注型中小企業競争力強化支援事業
 ●新・目指せ!中小企業経営力強化事業
 ◇東京都BCP策定支援事業
 ○団体向けリスクマネジメント普及啓発事業【新規】
 ▽事業承継・再生支援事業
 ●技術・技能承継事業
 ▽中小企業サイバーセキュリティ対策の普及促進
 中小企業をサイバー空間の脅威から守るため、警視庁や各中小企業支援機関と連携し、平成28年度から相談窓口を設置するなどサイバーセキュリティ対策の普及促進を実施。東京五輪を控え、中小企業自らがサイバーセキュリティの重要性を実感し、早急な対策に取り組むことができるよう、企業1社1社への働きかけを強化する。
 ●中小企業における危機管理対策促進事業【新規】

 【販路開拓支援】
 ○東京ビッグサイトの拡張整備
 ○中小企業グローバル連携促進事業
 ▽海外販路開拓支援事業
 ▽都内中小企業の海外への魅力発信事業
 平成27年12月、東京都中小企業振興公社タイ事務所が業務を開始し、現地において経営相談やマッチングなどを実施。引き続き、都立産技研バンコク支所、タイ工業省、カシコン銀行などと連携し、都内中小企業の海外展開を現地できめ細かくサポート。
 ○海外展開人材育成事業
 企業の現状や発展段階に合わせて、貿易実務者養成講習会、国際化対応リーダー養成講座を開催し、中小企業の海外展開に資する人材の育成を総合的に支援。
 ○アジア特別商談会
 ○医療関連機器等の海外展開支援【新規】
 海外市場におけるPR(世界最大級の医療機器展示会「COMPAMED」への出展など)やビジネススキル・ノウハウの取得支援を実施する他、現地政府機関や企業、産業クラスター、研究機関などとの連携によるネットワークの構築を図る。
 ○産業交流展
 ○地域連携型商談機会創出事業

 【ネットワークづくり支援】
 ○広域多摩イノベーションプラットフォーム
 ○広域産業交流・連携の促進
 埼玉県、千葉県、神奈川県、横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市、相模原市の近隣8県市と共同で、年1回、中小企業と大企業による商談会を実施する。
 ○被災地等中小企業ビジネス革新支援事業
 都内および被災県等中小企業と、東日本を中心とした大企業開発試作部門との連携を促進することで、被災県の産業を立て直すとともに、都内産業の活性化を図る。
 ●新事業分野創出プロジェクト

 【技術支援】
 ●新製品・新技術開発助成事業
 ●製品開発着手支援助成事業
 ○ものづくりイノベーション企業創出道場
 ▽知的財産総合センターの運営
 ●知財戦略導入支援事業(ニッチトップ育成支援事業)
 ○知的財産活用製品化支援事業
 ○デザイン活用への支援
 ●次世代イノベーション創出プロジェクト2020
 ●成長産業分野の海外展開支援
 ●先進的防災技術実用化支援事業
 ●海外展開技術支援事業
 ○生産性向上のための中核人材育成事業
 ●革新的事業展開設備投資支援事業【新規】
 ○未来を拓くイノベーションTOKYOプロジェクト【新規】
 東京には世界屈指の大企業が拠点を有しているが、現状では大企業と中小・ベンチャー企業の連携は低調である。今後、広く中小企業全体に波及効果をもたらすイノベーションを創出するため、リーディング企業、ベンチャー・中小企業を巻き込んだオープンイノベーションを活用して、新製品・新技術開発や新事業への展開を促す仕組みの構築に向けた調査・検討を実施(平成30年度から採択プロジェクトへの支援を予定)。

 【創業支援】
 ○次世代アントレプレナー育成プログラム
 ○インキュベーション施設の運営
 東京コンテンツインキュベーションセンター(中野区)、ベンチャーKANDA(千代田区)、白鬚西R&Dセンター(荒川区)、ソーシャルインキュベーションオフィス・SUMIDA(墨田区)、タイム24ビル内創業支援施設(江東区)、青山創業促進センター(通称:青山スタートアップアクセラレーションセンター、渋谷区)、インキュベーショオフィス・TAMA(昭島市)の運営。
 ●インキュベーションHUB推進プロジェクト
 ○青山創業促進センターの設置・運営
 ●ライフサイエンス系ベンチャー支援
 ●創業活性化特別支援事業
 ▽創業支援拠点の運営
 ○東京都ベンチャー技術大賞
 ○多摩ものづくり創業の促進【新規】
 ○グローバル・ベンチャー創出プラットフォーム【新規】
 海外で成功するベンチャー企業を育成するために、海外のベンチャーキャピタルや大企業とのビジネスマッチングを重視する。
 ○女性ベンチャー成長促進事業【新規】
 国内外でトップベンチャーとして活躍する女性ベンチャーのモデルケースを輩出することを目的に、社会課題の解決やグローバル市場への進出など、スケールアップする可能性の高い事業ビジョンを持つ女性起業家を支援する。

 【地域工業の活性化】
 ○産業立地情報収集・提供事業
 ●産業集積活性支援事業
 ●都内ものづくり企業立地継続支援事業
 ●ものづくり企業グループ高度化支援事業
 ●地域の魅力を活かした新ビジネス創出事業【新規】
 ▽東京都企業立地相談センター業務委託事業【新規】
 今後、都内へ立地を希望する企業に対し、立地に関するよりきめ細やかな情報や適切なアドバイスをワンストップで提供できるよう、相談センターを設置する。

 【地域商業の活性化】
 ●商店街への支援
  -商店街補助事業
  -政策課題対応型商店街事業
  -商店街グランプリ
  -広域支援型商店街事業
  -進め!若手商人育成事業
 ◇商店街ステップアップ応援事業
 ●商店街空き店舗活用モデル事業
 ●商店街起業・承継支援事業
 ●若手・女性リーダー応援プログラム

 【総合的支援】
 ▽中小企業ニューマーケット開拓支援事業
 ○新事業分野開拓者認定・支援事業
 ●航空機産業への参入支援
 ●医療機器産業への参入支援
 ○東京発「クールジャパン」の推進
 東京の「クールジャパン」を世界へ発信・浸透させ、東京の産業力とブランド力の強化を図る。
 ○中小企業世界発信プロジェクト
 ○中小企業新サービス創出事業
 ●障害者スポーツ用具開発の促進【新規】
 東京2020パラリンピック競技大会に向けて、中小企業や地域が取り組む障害者スポーツ用具などの開発を支援。障害者スポーツ用具の開発が活性化され、中小企業の同用具市場さらには福祉機器市場への参入にもつなげていく。

 【試験研究機関】
 ●ロボット産業活性化事業
 ●中小企業へのIoT化支援事業【新規】

 ここからは余談。理論政策講師研修の2コマ目は「中小企業の海外展開支援」であったが、これが最悪であった。私の知り合いに海外経験が豊富な診断士の先生がいて、一部の「国際派」診断士なる人たちを非常に毛嫌いしている(まず、「国際派」の意味が解らないと言う)。彼らが勉強会や会合を開くと、何十年も前に海外で自分が経験したことを、「私が○○にいた頃の話『では』・・・」などと言って、永遠と自慢話を続けるそうだ。「国際派」診断士に対して否定的なその先生は、彼らのことを「出羽山地の神々」をもじって「ではの神」と揶揄している。

 研修の前日にその先生に会う機会があって、「明日、理論政策更新研修で、○○先生の『中小企業の海外展開支援』を聞くことになっている」と話したら、その先生は「それは一番最悪な講師だ。絶対にFOBとかL/C(信用状)とかの話をするに決まっている」とおっしゃった。案の定、蓋を開けてみたら、2時間半の研修のうち、大半はFOBやCIF、L/C、NEXIなど貿易実務の話であった。この程度の知識なら、貿易実務をやったことがない私でも知っている。それに、我々はそもそも診断士であって、貿易業務のプロを目指しているわけではない。

 診断士が関心を持っているのは、あくまでも経営の話である。例えば、輸出をする際には、どういう視点でターゲット市場を評価すればよいのか、展示会で効果的に見込み客のリストを集めるにはどうすればよいのか、販売店・代理店はどうやって見つけるのか、販売店・代理店の信用評価はどのようにして進めるのか、販売・代理店の育成、モニタリングはどうやって実施するのか、代理店とトラブルになったらどう対処すればよいのか、といったことを聞きたかった。もしも講師がこれらの論点に答えられないなら、「海外展開支援を専門としている」などと言ってほしくない。

 それに、輸出というのは、中小企業の海外展開の一面でしかない。神奈川県が実施した「海外展開している又は計画がある県内中小企業の動向調査」によると、最も割合が高い進出形態は「現地生産」である。「輸出」が2位、3位にあるが、4位には「販売拠点の設置」がランクインしている。これは、中国、ASEANなど、従来はコスト削減のための生産拠点として見てきた国が経済成長し、有望な市場としても評価できるようになったという事情を反映している。

海外展開している(した)進出形態

 ややデータが古いが、中小企業庁『中小企業白書(平成22年版)』によると、直接投資企業は、輸出企業と比較して、「人材確保・労務管理」や「投資費用の調達・資金繰り」といった人材面や資金面の課題を挙げる割合が高くなる傾向が見られる。

国際化における課題

 さらに、日本政策金融公庫『中小企業の海外進出に関する調査結果』(2012年5月)を見ると、海外直接投資先の経営課題(複数回答)として「外国人従業員の教育や労務管理が難しい」が製造業で1位、非製造業で2位になっている。とどのつまり、直接投資の場合は、人材マネジメントが中小企業にとって最大の経営課題となっていると言える。

海外直接投資先での経営課題

 人材マネジメントに関する経営課題を細分化すると、様々な問題が出てくると思う。現地の労働法が複雑で対応に苦労する、当局とのやり取りが煩雑である、政府の裁量で最低賃金がどんどん上昇し収益が圧迫される、ワーカーやスタッフの育成が難しい、仕事に対する意識が日本人と違いすぎて、日本人の指示通りに仕事をしてくれない、せっかく育成しても給与が高い企業にすぐに転職してしまう、ちょっとでも労働条件が悪いと感じるとストライキをちらつかせてくる、労働組合との対立が深刻である、ローカル社員の不正に悩まされている、リーダー・マネジャークラスの人材が育たない、ハイクラスの人材を外部から採用しようとしても適材がいない、経営の現地化が進まず、いつまでも日本人駐在員を引き上げられないなど、挙げればきりがない。

 進出国の最新事情を考慮に入れつつ、かつこれらの課題に対応しながら、現地企業が持続可能な成長を遂げるためにどうすればよいかアドバイスするのが診断士の仕事というものではないだろうか?そういう仕事ができるようになるために、我々は研修を受けているのである。そうでなければ、理論政策「更新」研修は、「知識の更新」にならない。

2017年02月24日

【理論政策更新研修】着眼大局着手小局「3人対110カ国の交渉のシナリオ。資金なし時間なし知名度なしからのアプローチ」他

このエントリーをはてなブックマークに追加
交渉

 中小企業診断士の資格更新要件の1つとなっている理論政策更新研修を受講してきた。今年の7月末までにあと2回受講しなければならない(苦笑)。今回はその研修内容のメモ書き。

 ○神奈川県商工会連合会の事業、企業支援について
 (神奈川県商工会連合会 地域振興課 村越満氏)

 まず、商工会と商工会議所の違いについて。商工会は、商工会法に基づいて、主に町村部に設立された団体で、全国に1,661存在する。会員数は約82万事業者である。これに対して商工会議所は、商工会議所法に基づいて、主に市の区域に設立された団体で、全国に515存在する。会員数は約125万事業者である。商工会の事業は、商工業者のための相談・指導業務を中心としている。商工会議所の場合は、これらの業務に加えて、原産地証明、商事紛争の仲裁など国際的な業務も行っている。商工会は、日本の約4分の3のエリアをカバーしている。しかし、エリア内の事業者数は日本の約3分の1であり、商工会は地方・田舎に設置されていると言える。会員の大半は小規模事業者であり、高齢化が進んでいるという特徴もある。

 商工会の2大事業は、①経営改善普及事業と②地域総合振興事業である。経営改善普及事業とは、会員、非会員を問わず、地域の小規模事業者の経営の改善発達を支援する事業である。地域総合振興事業とは、地区内商工業者の全般的な育成、地域商工業の振興、社会一般の福祉の増進に資する事業が中心である(例:商店街の祭りやイベントの支援など)。

 ①に関連して、商工会および商工会議所は現在、「経営発達支援計画」の策定を進めている。これは、商工会や商工会議所が、小規模事業者による事業計画の作成とその着実な実施を支援することや、地域活性化にもつながる展示会の開催などの面的な取り組みを促進するため、商工会・商工会議所が作成する支援計画のうち、小規模事業者の技術の向上、新たな事業の分野の開拓その他の小規模事業者の経営の発達に特に資するものについての計画を経済産業大臣が認定する仕組みである。2016年年7月現在、708件(815単会)が認定されている。

 もう1つ①に関連して、最近の商工会の大きな仕事の1つとなっているのが、「小規模事業者持続化補助金」である。この補助金は、小規模事業者が、商工会議所や商工会と一体となって、販路開拓に取り組む費用(チラシ作成や商談会参加のための運賃など)を支援するものである。原則として、上限50万円(補助率3分の2)という小規模な補助金でありながら、事業者にはかなり人気があるようで、毎年倍率が高くなっている。村越氏によると、事業者が単独で作成した経営計画では採択されないほどにレベルが上がっているそうだ。そこで、商工会は、経営計画の策定支援セミナーや個別相談会を実施して、事業者を手厚くフォローしている。

 ①の中心は「エキスパート派遣事業」である。これは、商工会連合会が、商工会に相談した小規模事業者の要請により、エキスパート(専門家)を現地に直接派遣し、商工会の経営指導員とともに相談者が抱える経営課題に関して助言、指導を行うものである。商工会連合会は商工会からの依頼に応じて、事業者の経営課題に合った専門家を選定・派遣するのだが、専門家が現地に行ってみたら事業者の課題とミスマッチであったということもある。本来、商工会連合会は適切な前さばきをして、課題を整理した上で専門家に依頼するところを、「多少怪しいな(経営課題がはっきりしないな)」と感じる案件でも専門家に無茶振りしていると本音を漏らしていた。

 ○まんてんプロジェクトの取り組みと会員企業の技術力
 (まんてんプロジェクト 専務理事〔APTES技術研究所〕 愛恭輔氏)

 JAXAの前身であるNASDAが2002年にまとめた内部報告書で、宇宙関連の部品の国産化率が30%まで落ち込んでいることが問題視され、中小企業に協力を求めてきた。そこで、「神奈川県異業種グループ連合会議」が神奈川・東京を主体として全国の中小企業に参加を呼びかけた。こうして、2003年9月に設立されたのが「航空・宇宙開発関連部品調達支援プロジェクト」であり、通称「まんてんプロジェクト」と呼ばれている。まんてんプロジェクトは、航空・宇宙産業に関する情報取集や共同受注、品質保証体制の研究とスキーム作り、会員および産学官の連携による開発やものづくりを目指している。現在の会員は約80社である。

 現在、「宇宙エレベーター」という構想があるらしい。ロケットに代わる安価な宇宙輸送機関として期待されているという。地上から約300km上空に建設されている宇宙ステーションと地上を直接結ぶエレベーターである。まんてんプロジェクトも慶應義塾大学と連携して研究を進めている。理論的には実現可能らしいが、実際には様々な問題がある。例えば、400km上空からぶら下げるロープをどうするのかという問題がある。どんなに軽いロープを使っても、400km上空に設置すれば相当な重量になる。また、現在日本では1km上空までエレベーターを上昇させる実験を行っているが、上昇したエレベーターが下降する際に発生する熱の扱いも問題になる。

 本ブログで何度か書いているように、私は日本の巨大な重層的ピラミッド社会の各階層において、水平方向に「コラボレーション」が生じることを期待している。この観点から、まんてんプロジェクトではどのような水平連携が行われているのか質問してみた。新素材の開発や、複合素材の加工に使用する油の開発などで、会員企業同士の連携が行われているという。また、最近は航空・宇宙関係の最終組立メーカーから、単体の部品ではなく、ユニットで納品してほしいという要望が増えており、複数技術の連携が求められる。コンソーシアムの事務局が役人だと、技術のことが解らず話をまとめられない。中小企業が事務局の場合、マンパワー不足や利害関係の衝突などによって、やはり話が進まない。まんてんプロジェクトでは、事務局が核となる中小企業を特定し、その企業を中心として具体的な連携が生じるようにお膳立てまでしているという。

 愛氏は、日本の中小製造業が減少していることに危機感を感じている。航空・宇宙関係の最終組立メーカーが必要な技術を中小企業に求めても、探すのに非常に苦労している。また、残っている中小製造業のレベルにも不安を抱いている。愛氏のところには、非常にベーシックな技術に関する相談が持ち込まれることが増えているそうだ。さらに愛氏は、技術力だけでなく、探求心が弱っているとも指摘する。愛氏が相談を受けて回答をすると、相手からはメールで「ありがとうございました」と返ってくるだけである。「ここはどうなのか?」、「こういう場合はどうすればよいのか?」といった、もっと深い対話を愛氏は望んでいる。ただ、現状としては、愛氏の側から、その後どうなったかなどと情報のキャッチボールを継続するしかないと考えている。

 ○着眼大局着手小局「3人対110カ国の交渉のシナリオ。資金なし時間なし知名度なしからのアプローチ」
 (起承転結社 代表取締役 小柳津誠氏)

 小柳津氏は「おもてなしズムJAPAN」という活動を主宰している。日本のおもてなしの精神をベースとして、世界各国でその国の文化や生活習慣、風土や伝統にマッチしたおもてなしのビジネスを展開するという壮大なビジョンを掲げている。そのビジネスのやり方が非常にユニークだったのでここに記録しておく。まず、世界中の人々のことを理解するには、世界中の人に直接会いに行くのがベストである。しかし、中小企業にはそんなリソースはない。そこで、世界中の人々に手っ取り早く会える方法はないかと考えた。行き着いたのが、「在日大使館にアプローチする」という方法である。在日大使館であれば、必ずネイティブがいる。しかも、在日大使館に勤務するぐらいであるから、日本に対してプラスのイメージを持っているに違いない。

 とはいえ、名もない中小企業がいきなり大使館にアポを取っても相手にされない。封書を送っても、開けずに捨てられる可能性が高い。そこで、クリアファイルに手紙を入れ、表面には宛先と相手国の国旗、自社名、裏面には自社の紹介文を書いた。開けずとも中身が解る上、自国の国旗が描かれたレターを無下には破り捨てないだろうという計算であった。都内には168か国の大使館があるが、そのうち、先進国や紛争国を除いた110か国にこのクリアファイルを郵送した。何度か郵送をし、その後電話でフォローしたところ、20ほどの大使館とつながりを持つことができた(余談だが、赤帽には、相手が手紙を直接受け取るまで配達するというサービスがある。小柳津氏もこのサービスの利用を考えたが、1件あたり約4,000円と高額なため断念した)。

 大使館とのやり取りで見えてきたニーズは以下の通りである。大使館に勤める人は公務員であり、在日中の実績を本国にアピールする必要がある。ところが、中小・後進国の大使館は慢性的に人材不足である。JETROやJICAが主催する大型イベントは、各国の大使館が有償でブースを出し、日本企業を無償で招待するという構図である。すると、自ずと人気国に日本企業が集中してしまい、中小・後進国は十分な費用対効果が得られない。

 そこで、小柳津氏は、JETROやJICAの構図を逆転させた。つまり、大使館は無償で招待し、参加企業から料金を徴収したのである。しかも、JETROやJICAのように大規模にせず、10対10ぐらいの規模に収めた。企業はお金を払って参加しているぐらいだから、相手国に高い関心を持っている。小規模なイベントではあるがマッチングの成功率は上がり、大使館からは非常に喜ばれたという。こういうビジネスのやり方もあるのかと、私にとっては非常に新鮮であった。

 最後に、小柳津氏がネタとして紹介してくださった話を1つ。小柳津氏の同期には、青色発光ダイオードの発明でノーベル物理学賞を受賞した天野浩氏がいる。小柳津氏曰く、天野氏は決して天才型ではなかったという。小柳津氏が学生だった頃、世界中の研究者たちが青色発光ダイオードの実験を繰り返しており、ダイオードは青色には発色しないということで結論が出ていた。ところが、日本(というか世界)でただ一人、赤崎勇氏だけは「絶対に青色に光る」と言い続けており、何と天野氏は赤崎氏の研究室に入ったのである。これに驚いた周囲の人たちは、「天野氏は人生を棒に振ってしまった」とまで言ったそうだ。

 天野氏が赤崎氏の研究室でやった実験は、非常に地味であった。ダイオードの発光条件を毎日少しずつ変えて、ダイオードが光るかどうか1日中じっと顕微鏡をのぞいて確認するというものである。ある日は0.5度温度を変えて1日観察する。光らなかった。次の日はまた0.5度温度を変えて1日観察する。また光らなかった。これの繰り返しである。この単純極まりない作業(小柳津氏は3日で音を上げると言っていた)を、天野氏は何と1年に300日行い、しかもそれを5年続けた。そして、約1,500回の実験の後、初めてダイオードはわずかに青く発色した。

 この話には2つおまけの話がある。まず、天野氏が赤崎氏に「先生、青色に光りました!」と報告した時、5年間も暗い顕微鏡の中をのぞいていた天野氏は暗闇の光に敏感になっていたためその光に気づいたが、通常の研究生活を送っていた赤崎氏にはそれが見えず、「うーん、見えないね」と一蹴されてしまったことである。

 もう1つのおまけ話とは、ダイオードが青色に発色したのは、実は天野氏の失敗のせいであったということである。天野氏はその日に限って、温度設定を間違えており、通常よりもはるかに低い温度のまま実験を行っていた。これまでの研究者は、そんな低温で光ることはあり得ないと考えており、実験をしていなかった温度条件である。だが、その温度条件こそ、ダイオードが青色に光るために必要だったのである。天野氏に関しては、運がよかっただけと言う人もいる。そういう声に対して天野氏はこう返すのだという―「1,500回もやっていれば運もあるよ」。

2014年12月06日

「神奈川県中小企業診断協会」の理論政策更新研修に行ってきた(テーマは「ものづくり」)(2/2)

このエントリーをはてなブックマークに追加
 (前回の続き)

 (4)3コマ目は、茅ケ崎市にある中小製造業の社長の講演であった。神奈川の研修は、経営者の生の声が聞けるのが非常によい。だから、この3コマ目は非常に楽しみにしていた。この企業は、平成22年に設立されたばかりの非常に若い会社である。にもかかわらず、社員数よりも多い機械設備を持っている。どうやってこれだけの設備を揃えることができたのか不思議だったのだが、実は非常に面白い事業承継をしていることが解った。

 その社長はもともと別の中小製造業に在籍しており、社長も長く務めていた。だが、オーナーが高齢になったこともあり、事業承継をすることになった。ところが、その社長はオーナーの親族ではなく、社長が事業承継をする場合には、会社の機械設備などを買い取る必要があった。しかし、社長にはそれだけの資金がない。そこで、まずは社長が別会社を設立し、元の会社が新会社に対して機械設備を貸し出すという形で事業承継をしたというのである。

 なるほど、そういう事業承継もあるのかと新しい発見だった。ただ、今のところは元の企業から機械設備を借りることができているが、仮に元の企業のオーナーが亡くなり、相続によって株式が分散してしまった場合、借りていた機械設備はどうなるのか、やや不安な部分はある。

 最近は製造業で起業しようとする人が非常に少ない。創業補助金の書面審査員などをしていても、1,000万円単位の初期投資をして製造業をやろうという人を見たことがない。その社長曰く、昔は工作機械が1台あれば、仕事が勝手に舞い込んできたそうだ。しかし、現在は相当の初期投資をしないと製造業で起業できない。それだけ、参入のハードルが高い。ただ、事業承継に困っている中小製造業は非常に多いわけで、製造業で起業したい人とうまくマッチングできる仕組みがあれば、製造業での起業がもっと増えるのかもしれない。

 (5)この社長はオートバイ好きが高じて、自社ブランドでオートバイのパーツを展開している。本業は下請による部品の製造だが、自社製品を開発してみると、今までは解らなかったことがいろいろ解ったそうだ。当たり前かもしれないが、自社製品を開発すると、製品企画から製造、販売まで全て自社でやらなければならない。その大変さが身に染みたという。本業で製造している部品は、長いバリューチェーンの一部にすぎず、1つの完成品を作るためには何百という企業が関わっている。自社製品では、その何百社分の苦労を一手に引き受けなければならない。

 また、社長は20年オートバイに乗っているので、自称「最もオートバイにうるさい顧客」である。その顧客(社長)のニーズを満たすのは容易ではない。社内ではよくできた、早くできたと思っても、社長が顧客の立場から見ると、全然できていないと不満に思うことが非常に多かったそうだ。本業でも、社内の勝手な基準で満足するのではなく、常に顧客の厳しい要求を先取りしていかなければならない、と感じたという。

 (6)中小企業はしばしば連携体を組んで経営力の強化を目論むが、この企業も同世代の社長を中心に連携体を構成している。しかし、この社長は、「中小企業の連携体はなかなかうまく行かない」と本音を漏らしていた。実は、1コマ目の関東経済産業局の職員が、「中小企業政策には連携体を支援する施策が多いが、これは個社を支援するよりも政策コストが安いためである」と語っていたばかりだったので、思わず苦笑いしてしまった。

 やはり、中小企業にはそれぞれの個性や特徴があり、考え方が違うので、連携体で足並みを揃えることは容易ではないのだという。一時期、共同受注が流行った時期があったが、成功した事例を聞いたことがないともおっしゃっていた。この連携体は、一応連携体という形をとっているものの、価値観が似ている特定の企業同士が1対1でやりとりをしているのが実態だという。

 中小企業のグループ化の効果については私も強い疑問を抱いており、「『2020年のマーケティング(DHBR2014年10月号)』―日本の企業間連携は、実は「共通目的」を追わない方がよい?」などといった記事も書いたので、参考までに。


  • ライブドアブログ
©2012-2017 free to write WHATEVER I like