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DHBR2018年3月号『顧客の習慣のつくり方』―「商店街に通う」という習慣を作るためにはどうすればよいか?、他
ものづくり補助金(平成29年度補正予算)申請書の書き方(1)
『産学連携を問う シーズとニーズの新たな結合を目指して(一橋ビジネスレビュー2013年WIN.61巻3号)』

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2018年02月28日

DHBR2018年3月号『顧客の習慣のつくり方』―「商店街に通う」という習慣を作るためにはどうすればよいか?、他


ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2018年 3 月号 [雑誌] (顧客の習慣のつくり方)ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2018年 3 月号 [雑誌] (顧客の習慣のつくり方)

ダイヤモンド社 2018-02-10

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 (1)顧客が自社の製品・サービスを(できれば無意識のうちに)継続的に購入するように「習慣づけ」するためには、「累積優位性」を築くことが重要だと言う。その時のポイントは、「顧客の選択の手間を省いてやる」ことである。脳は、処理を迫られると何度も同じことをしたがるという傾向がある。これを「処理流暢性」と言う。また、最近はどの店舗にも様々な製品・サービスが並んでいるが、あまりに多くの選択肢を見せられると、顧客はかえっていつも慣れ親しんだ製品・サービスを選ぶようになる。これを「認知的負荷」の忌避と呼ぶ。

 P&Gの元CEOであるアラン・G・ラフリーと、元トロント大学ロットマン・スクール・オブ・ビジネス学長の論文「累積的優位を築く4つのルール 顧客の「選択」を「習慣」に変える」によれば、累積的優位性を築くための4つのルールとは、①早く人気を獲得する、②習慣づけを「仕組む」、③ブランド内でイノベーションを起こす、④コミュニケーションをなるべくシンプルにしておく、である。私は最近、商店街の支援をする機会が増えたので、近隣住民が商店街を利用することを習慣とするためにはどうすればよいかと考えることがある。その際、この4つのルールは残念ながら役に立たない。というのも、1つ目のルールで商店街は早くもつまずいてしまうからである。
 マーケティング担当者は、早期に勝つことの重要性を昔から理解していた。タイドは急成長を続けていた自動洗濯機市場に狙いを定めて発売され、P&Gで最も賞賛され、成功し、利益を生むブランドの1つとなっている。P&Gは1964年にタイドを発売すると、すぐにこの分野では最も大きな広告宣伝費をかけた。さらに、当時米国で販売されていたすべての自動洗濯機には常に1箱のタイドを無償提供し、顧客の習慣付けも図ったのである。タイドはすぐにこの「最初の人気コンテスト」に勝利し、その後、後ろを振り返らなかった。
 商店街は、近隣の大型スーパー、コンビニ、チェーン店、ドラッグストア、カテゴリーキラーなどの競合他社に人気コンテストで負けている。商店街関係者は認めたくないだろうが、商店街は敗北からスタートしなければならない。これらの競合他社に向かっている顧客の足を商店街に向かわせるためにはどうすればよいか?言い換えれば、既に染みついてしまった習慣を変化させるためにはどうすればよいか?そのヒントが、渡邊克巳「なぜ同じ商品やサービスが選ばれ続けるのか 顧客の習慣を科学する」という論文にあるような気がした。
 筆者は、習慣的な購買行動を取るもう1つの要因として、自己同一性、いわゆるアイデンティティの維持があると考えている。選択を簡単にすること以上に、この動機が習慣化をより強固にするのではないだろうか。

 これも仮説ではあるが、自己同一性の維持は、社会の中で個人が活動する際に非常に重要な意味を持っている。言動に一貫性があることは、(本当にそうであるかどうかは別にして)「私はあなたに簡単には操作されませんよ」という牽制になるからだ。また人間が社会的動物である以上、他者から信用を得なければ生きていけない。言動の一貫性は、自分が信頼できる人間であることの証明でもある。さらに自己同一性の維持は、他者からの信頼を得るだけでなく、自分自身の快にもつながる。自分は意志に基づいて行動していると思うほうが満足を得やすい。自分の一貫した言動を周囲に見せることで、他者の評価を高め、みずからの満足感にも貢献するという、社会的な機能が存在すると考えている。
 私は首都圏の人間なので、地方で高齢化が急速に進んでいる商店街ではなく、商圏に子育て世代が増加している商店街を前提に話を進めることをご容赦いただきたい。子育て世代、特に小さい子どもを持つ両親の自己同一性とは、「できるだけ節約をしたい」というものもさることながら、「子どもには特別な思いをさせてあげたい」というものではないかと考える。

 平日には子どもを連れて八百屋に行き、店主から「今日の晩御飯は何にするんだい?」と聞かれて、すかさず「ハンバーグ」と答える子どもを制し、「ハンバーグは今度のテストでいい点を取ったらね。今日はピーマンとニンジンを食べてもらうよ」と母親が答え、店主に「ははは、坊やテスト頑張るんだよ」と励ましてもらう。ある時は、子どもに胸肉200g、ひき肉300g、アジの開き4尾といったちょっと難しいお使いをさせ、肉屋と魚屋の店主に手助けしてもらいながら何とか目的のものを購入させる。休日には近所の理髪店に連れて行き、店主と学校の出来事を話す練習をさせる。洋服店では、店主から「あらー、会うたびに大きくなるね」と驚かれながら、洋服をコーディネートしてもらう。そして、夜になるとたまには家族で外食をし、店主に「今日のおすすめはこれだよ、○○君好きでしょ?」などと促されるままに、この日ばかりは大好物を食べさせてもらう。

 多感な時期には、こういう1つ1つのちょっとした特別な出来事が人格形成にプラスの影響を与えるのではないかと思う。そして、大人になってふと子どもの頃を振り返った時に、あの八百屋で、あの肉屋で、あの魚屋で、あの理髪店で、あの洋服店で、あのレストランであんなことがあったなと思い出をかみしめる。これが故郷というものである。

 私の場合、子どもの頃には近所の商店街が既にシャッター商店街化していたため思い出がほとんどないのだが、大学時代を過ごした京都のことはよく覚えている。いつまで友達としゃべっていても怒られなかったオランジュ、から揚げ定食のコストパフォーマンスが異常に高いハイライト、ご飯とルーの比率が明らかにおかしいというくらいにご飯が多かった久留味、まずいが安くて量が多く、昼に食べると午後の授業に間に合わなくなる鷭、鶏白湯ラーメンで有名だった天天有、焼きたてでふわふわのパンがおいしい進々堂、大して旨くはないがなぜか飲み会の後の締めに食べたくなる長浜ラーメンなど、ちょっと個性的なお店のことはよく覚えている。それが多感だった大学時代の思い出に彩りを与えている。だから、京都は私にとって心の故郷である。貧乏だからと言って毎日吉野家などを使っていたら、思い出が貧弱になっていたかもしれない。

 話を元に戻そう。仮に子育て世代が毎日イトーヨーカドーやローソンで買い物をし、週末にはQBハウスで子どもの散髪をし、しまむらで洋服を購入し、ガストで食事をしていたら、子どもの思い出が画一的になり、人格に深みが出ないだろう。もちろん、私はイトーヨーカドーなどの企業を全面否定するわけではない。就職したての20代前半から30代にかけてのお金がない独身時代には、効率・低コスト一辺倒でこういう大手企業を利用するのもよいだろう。だが、結婚して子どもを持ったら、自己同一性にも自ずと変化が現れるのではないだろうか?
 これを購買行動に当てはめると、積極的に「使える言いわけ」を与えることは、習慣を崩すうえで効果的な可能性がある。特に、法律や規制の改正、卒業・就職・転職などのように、外的要因に変化が生じる機会は新たな習慣に誘導するチャンスだと考えている。
 子どもが生まれることも、重要な外的要因の変化である。商店街はこのチャンスを利用しないわけにはいかない。まずは、商圏にどんな子どもがいるのかを観察して子どもたちの顔を覚える、子どもに積極的に挨拶をする、子どもにサービスをする(私の知っているある八百屋では、卸売業者がリンゴの箱につけているシールを子どもに配り続けたら、子どもが親の手を引っ張って「このお店で買い物してほしい」と言うようになったという)、こういったことを通じて、子どもが利用しやすいお店であることを親に訴求することから始めるのが効果的ではないかと考える。

 (2)ハイディ・K・ガードナー「がん研究所はどのように文化を変えたのか 卓越したプロフェッショナルをコラボレーションに巻き込め」という論文は、がん研究所という非常に専門性の高い組織内でいかにしてコラボレーションを実現したかについて述べられた論文である。私は中小企業診断士なので、連携というと企業間連携や産学連携を思い浮かべる。資本提携や業務提携のように、強固なコラボレーションが予定されているものよりも、もう少し緩やかな連携である。資本提携や業務提携であれば、双方の共通目的・目標を設定し、価値観や行動規範を共有し、業務プロセスや組織の様々な仕組みを高度に統合するといったことが成功のカギとなる(この辺りについては、『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2016年12月号に詳しい)。

ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2016年 12 月号 [雑誌] (チームの力 多様なメンバーの強さを引き出す)ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2016年 12 月号 [雑誌] (チームの力 多様なメンバーの強さを引き出す)

ダイヤモンド社 2016-11-10

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 一方で、業務提携まで至らない企業間連携では(中小企業の場合はこのケースが圧倒的に多いだろう)、それぞれの企業がもう少し”欲をかいても”よいのではないかと考える。もちろん、連携によって達成すべき目標をバランス・スコア・カード(BSC)などで設定するものの、連携から得られるメリットを本業にも活かし、本業の業績も同時に向上させるというシナリオを描く。下図はその一例である。A社がPという技術を、B社がQという開発環境を保有しており、技術Pと開発環境Qを組み合わせて新製品を共同開発するケースである。共同開発という目標と同時に、A社はP技術を活用して既存のX技術を改良し、顧客満足度の向上を狙っている。同様に、B社はQ開発環境の改善を通じて既存製品のカスタマイズ能力を高め、売上増を狙っている。

中小企業の連携におけるBSC(①企業間連携)

 産学連携の場合は、もっと欲をかいてよい。日本産学フォーラム『協働による知の創造―米国での産学共同プロジェクト実施ガイドライン』(2002年11月)によると、企業と大学では目指すべき目標が全く異なることに注意しなければならないとされている。
 大学とその企業パートナーは常に研究協働はそれ自身目的ではないということを心に留めておくべきである。それは、学界、産業界の科学者が自らの研究を発展させることができる手段であり、企業が迅速に新製品を市場に送り出すことができる手段である。
 ライトン氏が言うには、最優先事項は、参加する双方の人々が「自分たちのゴールが何なのかはっきり述べる」ことである。企業と大学のゴールは互いに異なり、それぞれがそのゴールを達成するという意味で協働から確実で明確に利益を得ることができなければならない。
 企業の最終目標は新製品・サービスを迅速に市場に投入することである。これに対して大学の最終目標は学術的に貢献をすることであり、具体的には論文や書籍を出版することである。この違いを念頭に置いてBSCを作成しなければならない。図にすれば下図のようになる。プロセス目標は産学で共有するものの、最終目標は両者で異なっている。そして、繰り返しになるが、企業も大学も、産学連携から成果を獲得することは当然として、その過程で得られる様々な成果を双方の本業にも活かすことが重要である(図中の太矢印)。

中小企業の連携におけるBSC(②産学連携)
 「協働が機能するには、それぞれのパートナーがその努力から恩恵を蒙らなければならない。この点については参加者全員が独善的であって良い」とアレン氏とジャーマン氏は書いている。それが製品開発、または研究、教育、サービスのどれであろうと、「協働プログラムは、協働しない場合には、中核事業のひとつとして各機関が独自に行うような、開発対象でなければならない」。
 面白いことに、産学連携では、仮に産学連携が行われなかったとしても、企業や大学が単独で実施することができたであろう独立性の高い事業を連携して行う時に望ましい効果が得られると述べられている。以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第48回)】Webで公開されている失敗事例通りに失敗した産学連携プロジェクト」で、私が前職で経験した恥ずかしい失敗談を書いたが、この時は自社としてやりたいことが明確でなかった。経営陣は、自社のブランドイメージに学術的な”箔”がつけばよいという程度の考えしかなかった。だから、産学連携の最初の目的は、企業研修に関する洋書を大学の教授と共同で翻訳するというものであった。そこに、脂の乗った大学教授が入り込んできて、自分の研究テーマはこういうものだから、それに関係することをやりたいという話になり、いつの間にかその教授の研究の下請け機関のようになってしまった。

2018年01月01日

ものづくり補助金(平成29年度補正予算)申請書の書き方(1)


事業アイデア

 ※下記記事に加筆した平成30年度補正予算バージョン
 平成30年度補正ものづくり補助金申請書の書き方例(※注意点つき)(1)(2)
 ※余談(支援する気があるんだかないんだか・・・)
 平成30年度補正ものづくり補助金をめぐる7つの論点+3の論点
 ※補助金を初めて受ける企業に読んでいただきたい記事
 【シリーズ】補助金の現実
 【第1回】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない
 【第2回】補助金の会計処理は、通常の会計処理よりはるかに厳しい
 【第3回】補助金=益金であり、法人税の課税対象となる
 【第4回】《収益納付》補助金を使って利益が出たら、補助金を返納する必要がある
 【第5回】補助金の経済効果はどのくらいか?
 ※以前まとめた「ものづくり補助金申請書の書き方」
 「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(1)(2)(3)(4)(5)
 「平成27年度補正ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金)」申請書の書き方(細かい注意点)
 【平成28年度補正ものづくり補助金】賃上げに伴う補助上限額の増額について
 昨年12月に、経済産業省・中小企業庁は2017年度補正予算で、中小企業・小規模事業者を対象とした「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業(ものづくり補助金)」で1,000億円の予算を計上することを発表した。補助上限は原則として1,000万円とし、3年ぶりに1万社支援(2016年度補正での採択数は6,157件)を復活させる方針だ。公募は2018年2月に始まる予定である。過去の傾向からすると、公募は1か月ほどで締め切られる可能性が高いため、申請を検討している中小企業は今から準備を始めておいた方がよい。

 これまでも上記のように申請書の書き方に関する記事を何本か書いてきたが、これは申請書は基本的には中小企業が独力で作成してほしいという一介の中小企業診断士の願いからである。中小企業を支援するコンサルタント会社の中には成功報酬として採択金額の数十パーセントを取ったり、認定支援機関の中にはA4で1枚の確認書を書くだけで数十万円を請求したりするケースがあるらしく、中小企業庁が問題視している。中小企業の経営者は、こういう悪徳支援業者に引っかからないようにしていただきたいものである。

 なお、平成26年度補正予算ものづくり補助金の申請書の書き方の記事は、全体で5回もある割に、実際の申請書のフォーマットに沿った記述になっていなかった。その反省を踏まえ、今回は申請書のフォームを意識した記述例を紹介したい。ただし、今日はまだ公募前であり、正式な申請書が公表されていないため、便宜的に平成27年度補正予算ものづくり補助金の申請書に従った(毎年、フォーマットはほとんど変わっていないから、今回も昨年度とほぼ同じだと思う)。また、枠内の「審査項目」も、昨年度の公募要領からの引用である。記述例の作成にあたっては、高橋透『技術マーケティング戦略』(中央経済社、2016年)に記載されている架空の事例を私が編集した。これからお見せするサンプルは1万字程度だが、採択事業者から話を聞くと、A4で15ページ前後の申請書を作成しているところが大半である。

技術マーケティング戦略技術マーケティング戦略
高橋 透

中央経済社 2016-09-22


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 【事業計画名】
 導電性繊維技術を利用した、ウェアラブル装置に代わるセンシング繊維の開発

 その1:革新的な試作品開発・生産プロセスの改善の具体的な取組内容
 ◆当社の概要
 当社は1950年に創業した繊維企業である。創業当時から蓄積してきた紡績・織布/編成・染色加工・縫製における独自の技術を活かし、コットンやウール、麻など天然繊維をベースにした高機能・高感度の繊維製品を製造・販売している。近年は導電性繊維(※)フィルム、炭素繊維を開発し、多様な要素技術を有するのが強みである。また、産官学でのオープンイノベーションにも積極的に取り組んでおり、他からの技術支援を受けられる体制が整っている。

 (※)導電性繊維=通常、繊維を形成する高分子化合物は絶縁体であるが、特に導電性を持たせた繊維を導電性繊維と言う。近年、石油化学工場における静電気による火災の防止、医薬品工業,精密電子工業におけるほこりの付着や放電の防止のために、優れた制電性を有する被服材料が要求されている。現在開発されている導電性繊維には,①合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させたもの、②ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、③有機物繊維の表面を金属で被覆したもの、④有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆したもの、などがある(「世界大百科事典 第2版」より)。

 ○主な取扱製品
 ①一般・カジュアル衣料品=シワ形状コントロール素材で、ビジネスカジュアルからヴィンテージまで幅広いファッションに対応できるテキスタイル素材。
 ②ユニフォーム関連=防炎性の優れたアクリル系繊維プロテックスと、製造段階でできた落綿を含むコットンを混紡。防炎機能とエコロジーを兼ね備えたテキスタイル素材。
 ③一般衣料品・生活雑貨・インテリアホームテキスタイル=糸の内部に空隙を持つ、軽くて膨らみ感のあるソフトな風合い、優れた吸水性を持つ特殊紡績糸素材。
 ④抗菌・抗ウイルス機能繊維=繊維上のウイルスの数を減少させ、細菌、真菌などの増殖を抑制。高機能と高い安全性、洗濯耐久性を実現。
 【POINT】審査員は公募企業のことを知らないことが大半であるため、最初に簡単に会社の概要を説明するとよい。特に、強みに触れるとベター。
 ◆開発の背景
 当社を取り巻く事業環境をPEST分析した結果、図1のようになった。

 ○図1:PEST分析の結果
PEST分析の結果

 ○図2:成人の週1回以上運動・スポーツを行う者の割合の推移
成人の週1回以上運動・スポーツを行う者の割合の推移

 我が国は高齢化の進行に伴って社会保障費が毎年1兆円ずつ増加する見込みであり、社会保障費の抑制が喫緊の課題になっている。そのためには、国民が健康を維持することが重要である。幸い、健康に対する意識の高まりとともにスポーツ人口(特に女性)は中長期的に見ると増加傾向にあり(図2)、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催もスポーツ関連需要の拡大を後押ししている。文部科学省も「できるかぎり早期に、成人の週1回以上のスポーツ実施率が3人に2人(65%程度)、週3回以上のスポーツ実施率が3人に1人(30%程度)となることを目標」とする「スポーツ基本計画」を掲げている。

 ところで、近年の注目すべき技術としてセンシング技術が挙げられる。ウェアラブル端末に代表されるように、体内の各種データを随時取得してモニタリングしたいというニーズが消費者の間で高まっている。そこで、当社は強みである導電性繊維とセンシング技術を組み合わせて、健康意識の高いスポーツ愛好者をターゲットに、ウェアラブル端末よりも多様なデータを取得することが可能な、センシング繊維を開発することとした。
 【POINT】開発する製品・サービスをいきなり説明するのではなく、開発の背景にも触れるとよい。その際、客観的な分析結果があると説得力が増す。なお、この後の記述にも共通することだが、図表は別添資料とせず、本文に入れ込むべきである。審査員の中には、別添資料を読まない人がいるためである。
 ◆開発する製品
 今回開発するのは、図3のようなセンシング繊維である。ウェアラブル端末で取得可能な心拍数、体温に加えて、センシング繊維では心電波形、加速度も取得できる。当社が製造したセンシング繊維を活用して、顧客であるスポーツウェアメーカーはアンダーウェアを製作する。アンダーウェアを購入した最終消費者はまず、モニタリング・解析用のアプリケーションをスマートフォンにインストールし、会員登録する。次に、アンダーウェアに記載されているQRコードを読み取り、会員情報と紐づける。最終消費者が複数のアンダーウェアを購入・使用する場合でも、同一IDの下に身体情報を蓄積・管理することが可能である。アンダーウェアが取得した情報は、Bluetoothを通じてスマートフォンのアプリケーションに転送される(図4。なお、アプリケーションはスポーツウェアメーカーがスマートフォンアプリ開発会社に開発委託することを想定している)。

 ○図3:センシング繊維の概要
センシング繊維

 ○図4:センシング繊維活用アンダーウェアからスマートフォンへのデータ転送イメージ
ウェアラブル端末からスマートフォンへの転送

 (※適当な画像がなかったため、こちらから拝借した。本当は、アンダーウェアとスマートフォンの連携の図を記載する)
 【POINT】審査員は、必ずしも応募企業の技術に詳しいとは限らない(むしろ詳しくないと考えた方がよい)。審査員に製品・サービスのイメージが湧くよう、ビジュアルを多用して表現するのが望ましい。

 審査項目の「【技術面】①新製品・新技術・新サービス(既存技術の転用や隠れた価値の発掘(設計・デザイン・アイディアの活用等を含む))の革新的な開発となっているか」とも関連。
 ◆技術的な課題と解決策
 センシング繊維を開発するにあたっての技術的な課題と解決策は以下の通りである。課題の達成度合いは下記の指標にて判断する。
 【要素技術開発】
 ①導電性繊維・フィルムの導電性アップ⇒素材、組合せの見直しによる効率アップ(目標効率=○○%アップ)。
 ②発電繊維による発電量の確保⇒ナノファイバーを利用し、摩擦発電と圧電効果による発電のハイブリッド構造により実現(目標発電量=○○μA)。
 ③電気回路の設置⇒印刷方式の回路を生地にプリントする方式を採用(目標品質=○○)。

 【設計技術開発】
 ①生地の伸縮性、肌との密着度、データ精度と着心地のバランス⇒既存スポーツ向け繊維に発電用の炭素繊維を織り込むことで伸縮性を確保しつつ、圧着による皮膚接触圧を確保、デー測定の安定を図る(目標データ精度=医療用との相関r=0.7)。
 ②洗濯耐久性⇒特に課題となる、回路やセンサ部分を繊維、印刷加工にすること、フィルムコーティングすることで洗濯耐久性を確保(目標品質=○○)。

 【生産技術開発】
 ①発電、二次電池用炭素繊維の生産方法⇒溶融紡糸生産方式を用い、カーボンナノファイバー化することにより実現(目標生産量=○○)。
 ②生産キャパシティ、フレキシブルな生産⇒新規生産設備の導入(協力メーカーとの一部共同開発)(目標生産量=○○)。
 【POINT】技術的な課題は3~5個程度記述する。上記の例では文章でしか記述していないが(私が繊維業界に詳しくないため)、この部分も図面やポンチ絵などを用いてビジュアルで訴求したい。技術的な課題と解決策は審査の重要ポイントであるから、ここだけで最低でも2ページは記述がほしいところである。

 審査項目の「【技術面】②サービス・試作品等の開発における課題が明確になっているとともに、補助事業の目標に対する達成度の考え方を明確に設定しているか、③課題の解決方法が明確かつ妥当であり、優位性が見込まれるか」とも関連。
 ◆開発体制およびスケジュール
 開発体制および開発スケジュールは図5・6の通りである。回路の生地プリントについては、長年の協力企業である○○紡績株式会社からの支援を受ける。また、発電繊維に関する技術については、○○大学○○研究室と共同で研究を進める。

 ○図5:開発体制
開発体制

 ○図6:開発スケジュール
開発スケジュール

 <各タスクの説明>
 【要素技術開発】
 ①導電性繊維・フィルムの導電性アップ=森(フィルム技術)が中心となり、山口(炭素繊維技術)の支援を受けながら、○○シミュレーション方式、△△シミュレーション方式を用いて、素材u、v、wなど7種類の素材の中から最適な組み合わせを特定する。
 ②発電繊維による発電量の確保=・・・。
 ③電気回路の設置=・・・。

 【設計技術開発】
 ①生地の伸縮性、肌との密着度、データ精度と着心地のバランス=・・・。
 ②洗濯耐久性=・・・。

 【生産技術開発】
 ①発電、二次電池用炭素繊維の生産方法=・・・。
 ②生産キャパシティ、フレキシブルな生産=・・・。

 【試作品の生産・品質検証】=・・・。
 【POINT】開発体制を図で表し、責任者と担当者を明確にする。連携している協力会社や大学などがあればそれも記載する。自社に足りないリソースは外部から調達できる目途が立っていることを審査員にアピールすることができる。開発スケジュールはガントチャートで表した上で、それぞれのタスクの詳細(誰が、何を、どのように行うのか)を説明する。補助事業期間中に補助事業が完了するように留意する(補助事業期間は、年度によって1年を超える場合もあれば半年程度しかない場合もあるため、公募要領で確認すること)。

 審査項目の「【技術面】④補助事業実施のための体制及び技術的能力が備わっているか」、「【事業化面】①事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか」とも関連。
 (「ものづくり補助金(平成29年度補正予算)申請書の書き方(2)」へ続く)

2014年02月06日

『産学連携を問う シーズとニーズの新たな結合を目指して(一橋ビジネスレビュー2013年WIN.61巻3号)』


一橋ビジネスレビュー 2013年WIN.61巻3号: 産学連携を問う シーズとニーズの新たな結合を目指して一橋ビジネスレビュー 2013年WIN.61巻3号: 産学連携を問う シーズとニーズの新たな結合を目指して
一橋大学イノベーション研究センター

東洋経済新報社 2013-12-09

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 今年から『一橋ビジネスレビュー』の定期購読も開始。DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューに比べると学際色が強く、技術上の専門的な話も入っているので、個人的には難しく感じてしまう。この雑誌のレビューがまともに書けるようになるには時間がかかりそうだ。徐々に慣れていこう。ということで、今回は雑感を並べてみたい(先日の記事「『日本企業は新興国市場で勝てるか(DHBR2014年2月号)』―実はラマダーン月に食品・飲料メーカーの売上が増える、など」に続く雑感かよ?という突っ込みはなしの方向で)。

 (1)「産学連携」を特集とする本号で1つ勉強になったのは、「パスツールの4象限」という考え方。科学者の研究活動は、「科学的理解の高度化」と「社会への効用の提供」という2軸によって評価され、出現する4象限にはその領域で活動する代表的な科学者の名前がつけられている。

 ・ニールス・ボーア領域:「科学的理解の高度化」=高、「社会への効用の提供」=低
 ・トーマス・エジソン領域:「科学的理解の高度化」=低、「社会への効用の提供」=高
 ・ルイ・パスツール領域:「科学的理解の高度化」=高、「社会への効用の提供」=高
 ・それ以外の領域:「科学的理解の高度化」低、「社会への効用の提供」=低

 本号では、パスツール型の研究者との産学連携の成功事例が分析されている。パスツール型の研究者は、企業に対して科学的に高度な知識を提供するだけでなく、製品企画・事業化に関するコンサルティングも行っており、双方の深い交流が産学連携を成功に導いているという。

 しかし、パスツール型の研究者は、私からすると「ものすごく万能な研究者」のイメージがして、そんな研究者が果たしてどれくらいいるものかと疑問に感じてしまう。大半の研究者はボーア型かエジソン型であろう。いや、エジソンも、実際にはGEの基となるエジソン電気照明会社を設立した人物であることを考えると、大学側の科学者というよりも、企業内研究者と呼んだ方が正しい。とすると、大半の大学研究者はボーア型に該当するのではないか?そういうタイプの研究者と組んだ時に、どうすれば事業を成功させられるかが今後の研究課題であろう。

 (2)アメリカにおける大学と企業との関係性を、大学ごとに比較した論文も興味深かった。州立のカリフォルニア大学は、2003年に極めて厳格なガイドラインを打ち出した。これによると、研究者がいかなるところで発言し、思いついた事項であっても、また外部組織から資金を得ているかどうかにかかわらず、全てのアイデアの所有権を大学が保有する、とされている。

 一方、私立のスタンフォード大学も「全ての特許性のある発明に関しては、それが大学の責務の下で実施され、または大学の資産を随意的に用いた場合には、大学に開示されなければならない」という特許ポリシーを掲げている。しかし、これには次のようなただし書きがついている。「2人以上の研究者が共同活動を行っている場合、その発明者たちは、彼らが生み出した発明の技術移転という観点から最も有益性が高いと判断した時には、彼らの発明を公的空間(パブリックドメイン)」に置く自由を有している」 すなわち、特許を誰もが使用できる可能性があるわけだ。

 公共的意識が高いはずの州立のカリフォルニア大学が、科学的成果の”私有化”に積極的となり、一方で、どこよりもシリコンバレー企業との関係を密にしていた私立のスタンフォード大学が、科学の成果をできる限り”公共化”しようとしている点が非常に面白い。

 また、私立のイェール大学は、独自の大学資金ポートフォリオを組んで、積極的な投資活動を行っている。1978年の段階で550億円程度だった大学基金は、2000年には1兆円を超える規模にまで拡大している。2002年には、アメリカ国内株式や海外株式、未公開株式、不動産投資などへのポートフォリオを組んで、実に41%ものリターンを生み出した。全米の大学の中で、このような多角的ポートフォリオを保有した大学はイェール大学が初である。

 これに対して、シリコンバレーの真ん中にあって、産業界との資金のやり取りに積極的であったはずのスタンフォード大学は、イェール大学と比べてずっと控えめな投資戦略を持っていた。1979年に同大学の財務当局は、大学の投資ルールを変更し、VCに資金を供給することを認めた。ファカルティが創設したスタートアップ企業に大学資金を供給することは、組織として利益相反の可能性がある。それを恐れた大学は、VCへの投資という迂回的方法を選択した。

 特許を私有化することも、ポートフォリオ投資を行うことも、利益の創出が主たる目的である。ところが、スタンフォード大学は、敢えて特許を開放することで、そこに多くのシリコンバレー企業が集まってくることを期待している。また、VC重視の投資戦略によって、投資対象企業の経営に深く関与する機会が得られ、人的交流が促される。スタンフォード大学の戦略は、単に特許や共同研究による知識の流れにとどまらず、資金的なつながりを形成しながら人的・組織的ネットワークを生み出し、そのパスに沿って新たな有用性の高い知識の流れを確立する可能性を秘めている。その知識の連鎖的フィードバックが、産学連携の目的ということだろう。

 (3)以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第48回)】Webで公開されている失敗事例通りに失敗した産学連携プロジェクト」で、産学連携に失敗した苦い経験を告白した。私が携わっていたプロジェクトは規模が小さく、特殊なものかと思っていたが、本号を読むとそうでもなさそうだ。私の教訓がどこかで役立つことを願っている。

 本号には、産学連携プロジェクトに参加した企業研究者、大学研究者を対象とした調査結果の概要が掲載されている。それによると、産学連携プロジェクトに投入した研究資金は、大学研究者、企業研究者いずれも「100万円以上~1,000万円未満」という回答が最も多く、大学研究者の回答の5割強、企業研究者の回答の4割強を占めている。私が携わったプロジェクトでは、大学に支払った委託費、システム開発を依頼したベンダーへの外注費、特許取得のために弁理士事務所に支払った費用などを合わせると、だいたい800万円ぐらいであったと記憶している。

 産学連携プロジェクトの実施に費やした労力については、50人月以下という回答が、大学研究者で約半数強、企業研究者で約3分の2を占めている。平均人月を算出すると、大学で54人月、企業で43人月であった。私が携わったプロジェクトに関して言うと、大学側の工数は計算できないが、企業側の工数は約17人月ぐらいだった。4人体制で1年ほど続いたプロジェクトであり、私が自分の工数の8割を、残りの3名は2割をこのプロジェクトに投入していた。よって、(0.8×1人×12か月)+(0.2×3人×12か月)=16.8人月となる。

 産学連携プロジェクトから創出された最重要発明については、既に商業化しているという回答が全体の16%、検討中との回答が全体の38%であった。この数値が高いのかどうか、論文では考察が保留されている。通常の製品開発に比べてこの数値は高いのか低いのか?低い場合、数値を上げるにはどうすればよいのか?今後の研究が待たれるところである。




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