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【原文・現代語訳】島井宗室十七条の遺訓(第十四~十七条)
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【原文・現代語訳】島井宗室十七条の遺訓(第八~十条)

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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2014年02月01日

【原文・現代語訳】島井宗室十七条の遺訓(第十四~十七条)


島井宗室 (人物叢書 新装版)島井宗室 (人物叢書 新装版)
田中 健夫

吉川弘文館 1986-07

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 一(十四)、朝ハ早々起候て、暮候へば則ふせり候へ。させらぬ仕事もなきに、あぶら(油)をついやし候事入ぬ事候。用もなきに夜あるき、人の所へ長居候事、夜ひるともに無用候。第一、さしたてたる用は、一刻ものばし候ハで調候へ。後に調候ずる、明日仕べしと存す候事、謂れざる事候。時刻移さず調べき事。
 朝は早起きして、日が暮れたらすぐに寝るようにせよ。大した仕事もないのに油を売ってはならない。用もないのに夜に外出してはならない。他人のところに長居するのは夜でも昼でもダメである。しかし、差し迫った重要な用事は、一刻も早く片付けるようにせよ。後でやろう、明日やろうと考えてはいけない。重要な仕事には即座に取りかかるようにせよ。
 一(十五)、生中、身もちいかにもかろく、物を取出など候ずるにも、人にかけず候て、我と立居候ずる事。旅などにてハ、かけ(懸)硯・ごた袋等われとかたげ候へ。馬にものらず、多分五里―三里かち(徒)にて、とかく商人もあよ(歩)ミならひ候て然るべき物候。

われら若き時、馬に乗たる事無候。道之のりいかほどとおぼえ、馬ちん(賃)いかほど、はたごせん(旅籠銭)・ひるめし之代・船ちん、そこそこの事書付、おぼえ候へバ、人を遣候時、せんちん(船賃)・駄ちん、つかいを知る用候。宿々の丁(亭)主の名までもおぼえ候ずる事。旅などに人の商物事伝(ことづて)候共、少も無用候。余儀無く知音・親類遁れざる事ならば、是非に及ばず候。事伝物は少も売へぎ(剥)・買へぎ仕まじき事。
 生きている間は、いつも身軽にして、何か物を取りに出る時も、人に任せず、自分ですること。旅などに出る時は、懸硯(商取引に必要な帳面、金銭、印鑑、筆、硯などを収納した箱)、ごた袋などを肌身離さず持ち歩くようにせよ。馬に乗らず、3里~5里の道のりなら徒歩で行くこと。商人は歩きながら様々なことを学ぶものである。

 我々が若かった頃は、馬に乗ったことはない。歩いて道のりを覚え、馬賃、旅籠銭(宿代)、昼飯代、船賃などを書いて覚えた。人を遣わす時は、船賃、駄賃の使い過ぎに注意しなければならない。宿の亭主の名前も覚えること。旅の最中に他人の商い物のことを伝え聞いても、取り合ってはならない。知人や親類の頼みでどうしても仕方ない時はやむを得ない。自分の目で確かめず、伝え聞いただけのものは、売ったり買ったりしてはならない。
 一(十六)、いづれにても、しぜん寄合時、いさかい・口論出来候者、初めよりやがて立退、早々帰り候へ。親類・兄弟ならば是非に及ばず候。けんくわ(喧嘩)など其外何たる事むつかしき所へ出まじく候。たとい人之無躰をゆいかけ、少々ちじよく(恥辱)ニ成候とも、しらぬ躰にて、少之返事にも及候ハで、とりあい候まじく候。ひとのひけうもの(卑怯者)・おくびやうもの(臆病者)と申候共、宗室遺言十七条之書物そむき候事、せいし(誓紙)之罰如何候由申べき候事。
 寄合の時、争いや口論になったら、その場からそっと退出して帰るようにせよ。親族や兄弟の喧嘩ならば仕方がない。喧嘩が起こるような厄介な場所に出かけてはならない。たとえ、人から批判され、少々恥ずかしい思いをしても、知らぬ顔をして返事もせず、取り合うことはない。人から卑怯者、臆病者と言われても、宗室十七条の遺訓に背けば、誓紙の罰を受けるであろう。
 一(十七)、生中、夫婦中いかにも能候て、両人おもいあい候て、同前所帯をなげき、商売に心がけ、つましく油断無き様に仕べき候。二人いさかい中悪候てハ、何たる事にも情ハ入まじく候。所帯はやがてもちくづれ候ずる事。又我々死候はば、則其方名字をあらため、神屋と名乗候へ。我々心得候ひて、島井ハ我々一世にて相果候。但、神や名乗らず候へば、前田と名乗候てくるしからず候。其方次第候事。

 付、何事ニ付ても、病者にてハ成まじく候。何時成共、年中五度―六度不断灸治・薬のミ候ずる事。
 生きている間は、夫婦で互いに思いやり、家庭のことを心配し、油断なく事業に邁進しなければならない。2人の仲が悪くては、何事にも気持ちが入らず、家庭はやがて崩壊するだろう。また、我々が死んだら、あなたは名字を改めて神屋と名乗るがよい。我々がよく考えた結果、島井家は我々一代限りとする。神屋と名乗らないのであれば、前田と名乗ってもよい。あなたに任せる。

<付記>何事につけても、病弱であっては物事が務まらない。いつ何時も、1年に5~6回は灸治療を欠かさず、病気になれば薬のみを飲むこと(祈祷などに頼るなという意味か?)。

《後記》
 一代で巨万の富を築いた島井宗室だが、その暮らしぶりは非常に質素であったとされ、遺訓の中でも養嗣子である徳左衛門(信吉)に倹約を強く勧めている。ただ、この遺訓は全体的に処世訓であり、社是≒行動規範とはやや性質が異なるような気もする。もっとビジネス寄りの内容―例えば、顧客とどうやってリレーションを構築するのか?取引先とはどのようにつき合うのか?競争優位を獲得するためにどんなビジネスモデルにするのか?組織内の様々な仕組みや制度をどんな方針に基づいて導入するのか?など―が入っていれば、行動規範らしくなるだろう。


2014年01月31日

【原文・現代語訳】島井宗室十七条の遺訓(第十一~十三条)


島井宗室 (人物叢書 新装版)島井宗室 (人物叢書 新装版)
田中 健夫

吉川弘文館 1986-07

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 一(十一)、朝夕飯米一年に一人別壱石八斗に定り候へ共、多分むし物あるひハ大麦くわせ候へバ、一石三斗―四斗にもまハし候べく候。ミそは壱升百人あてニ候へ共、多候にして、百十人ほどにても一段能候。塩ハ百五十人にて然るべき候。

 多分ぬかミそ五斗ミそ油断無くこしらへくわせ候へ。朝夕ミそをすらせ、能々こし候て汁に仕べき候。其ミそかすに塩を入、大こん・かぶら・うり・なすび・とうぐわ・ひともじ(葱)、何成共、けづりくず(削屑)・へた・かわのすて候を取あつめ、其ミそかすニつけ候て、朝夕の下人共のさい(菜)にさせ、あるひハくきなどはしぜんにくるしからず候。

 又米のたかき時ハ、ぞうすい(雑炊)をくわせ候へ。寿貞一生ぞうすいくわれたると申候。但ぞうすいくわせ候に、先其方夫婦くい候ハでハ然るべからず候。かさにめしをもりくい候ずるにも、先ぞうすいをすハれ候て、少成共くい候ハずバ、下人のおぼえも如何候。何之道にも、其分別専用候。我々母なども、むかしハ皆其分にて候つる。我々も若き時、下人同然のめし計たべ候つる事。付、あぢすき無用事。大わたぼうし無用事。
 朝夕の飯で1年間に1人あたり1石8斗の米を消費することになるが、蒸し米や大麦を食べれば、1石3斗~4斗でもやりくりできるだろう。味噌は1升で100人分になるが、110人分まかなえればなおよい。塩は1升で150人分をまかなうべきである。

 ぬか味噌5斗を作って丁寧に使うようにせよ。朝夕味噌をすり、十分にこして味噌汁を作ること。その味噌かすに塩を入れ、大根、かぶら、うり、なすび、冬瓜、ネギなどの削りくず、ヘタ、皮を集めて入れて、朝夕の下人のおかずにするとよい。茎などはそのままおかずにしてもよい。

 また、米が高い時は雑炊を食べるようにせよ。寿貞は一生雑炊をお食べになったという。ただ、まずはあなた方夫婦が率先して雑炊を食べること。ちょっとだけ雑炊をすすり、後は全く食べないとしたら、下人の評判もよくない。いかなることでも、分別をわきまえることが重要である。我々の母なども、昔は皆分別をわきまえていた。我々も若い時は、下人同然の飯を食べたものである。
 一(十二)、我々つかい残たるものもとらせ候て、宗怡へ預ケ、如何様にも少づつ商事、宗怡次第ニ仕べき候。其内少々請取、所帯ニ少も仕入、たやすきかい物共候者、かい置候て、よそへ遣らず、商売あるひハしちを取、少は酒をも作候て然るべき候、あがり口之物にて、たかきあきない物、生中かい候まじく候。やすき物ハ、当時売候ハねども、きづか(気遣)いなき物候。

 第一、しちもなきに、少も人にかし候まじく候。我々遺言と申候て、知音・親類にもかし候まじく候。平戸殿(=松浦家のこと)などより御用共ならバ、道由・宗怡へも談合候て、御用立つべき候。其外御家中へハ少も無用候。
 我々が使い残したものも保管し、宗怡へ預けて少しずつ売却すること。その辺りは宗怡の判断に任せる。そのうち少々は受け取って家庭に入れてもよい。簡単に購入できるものは買い置きをしてよそにやらず、よい値で売却するか質に入れ、少しは酒も造るようにせよ。相場が急上昇している高い商品は、買ってはならない。安い商品は、その時は売れなくても、気を揉む必要はない(高くなるのを待て)。

 質もなしに他人にお金を貸してはならない。我々は遺言の中で、知人・親族であってもお金を貸さないと明記している。ただし、松浦家などから頼まれれば、道由・宗怡とも相談してお金を工面せよ。その他の家には決してお金を貸してはならない。
 一(十三)、人ハ少成共もとで(元手)有時に所帯に心がけ、商売油断無く、世のかせぎ専すべき事、生中之役にて候。もとでの有時ハゆだんにて、ほしき物もかい、仕度事をかかさず、万くわれい(華麗)ほしいままに候て、やがてつかいへらし、其時におどろき、後くわい(悔)なげき候ても、かせぎ候ずる便もなく、つましく候ずる物なく候てハ、後ハこつじき(乞食)よりハあるまじく候。左様之身をしらぬうけぬものハ、人のほうこう(奉公)もさせず候。

 何ぞ有時よりかせぎ商(あきない)、所帯はくるまの両輪のごとく、なげき候ずる事専用候。いかにつましく袋に物をつめ置候ても、人間の衣食ハ調候ハで叶わず候。其時ハ取出つかい候ハでハ叶まじく候。武士ハ領地より出候。商人はまうけ候ハでハ、袋に入置たる物、即座に皆に成すべき候。又まうけたる物を袋にいかほど入候共、むさと入ぬ用につかひへらし候者、底なき袋に物入たる同前たるべく候。何事其分別第一候事。
 人は、少しでも元手がある時は、家庭の維持を心がけ、油断なく事業を行い、稼ぎに専念するべきである。元手がある時は、油断してほしいものを買い、余計な支度をし、あれこれと華美なものを求めて、やがて元手を使い減らしてしまいがちだ。その時になって初めて驚き後悔しても、稼ぎを生み出す手段もなく、質素な暮らしをしなければ、後は乞食以下の暮らしをするしかない。そのような身分を受け入れられない者は、人の奉公もできないだろう。

 元手がある時、商売と家庭は車の両輪のごとく、両方とも十分に心を配らなければならない。どんなに倹約して袋に物を詰めておいても、人間の衣食が十分でなければ、その両輪はうまく回らない。その時は、袋から取り出した物を使わなければ、両輪が機能しない。武士には領地がある。商人は、儲けが出なかった時には、袋に入れておいた物に頼る。儲けたものをどんなに袋に入れても、むざむざと余計なことに使ってしまうのは、底が抜けた袋に物を入れているようなものだ。何事も分別をわきまえることが肝要である。


2014年01月30日

【原文・現代語訳】島井宗室十七条の遺訓(第八~十条)


島井宗室 (人物叢書 新装版)島井宗室 (人物叢書 新装版)
田中 健夫

吉川弘文館 1986-07

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 一(八)、生中、むさと用もなき所へ出入、よそあるき無用候、但殿様(=黒田家のこと)へしぜんしぜん何ぞ御肴之類珍しからず候共、あわび・鯛、左様之類成共、新をもとめさし出申すべき候。井上周防殿・小川内蔵殿へハ、是又しぜん参るべき候。其ほかは年始・歳末各なミたるべく候。

 とかく内計ニ居候て、朝夕かまの下の火をも我とたき、おきをもけし、たき物・薪等もむさとたかせ候ハぬやうに、家の内・うら等、ちりあくた成共取あつめ、なれのきれ、ちりのミじかきハ、すさにきらせ、ちりもながきはなわになわせ、き(木)のきれ竹のおれ、五分までハあつめ置、あら(洗)はせ、薪・かがり(篝)・焼物にも仕べき候。紙のきれハ五分・三分も取あつめ、すきかへし(漉返)に仕べき候。我々仕たるやうに分別、いささかの物も、つゐ(費)へにならぬやうに仕べき事。
 生きている間は、用もないところへ出歩いてはならない。ただし、黒田家に対しては、さほど珍しくない酒の肴であっても、あわびや鯛の類であっても、新しいものを探して差し出すようにせよ。井上周防殿・小川内蔵殿のもとにも参るようにせよ。それ以外は年末年始のみでよい。

 とにかく家の中にいて、朝夕窯の下の火を自ら焚いては消すようにせよ。たき物や薪などをムダにしないよう、家の中や裏でごみを拾い、短いものはすさ(壁土に混ぜて、ひび割れを防ぐつなぎとする材料)にし、長いものは縄にせよ。木や竹の端は、5分までの長さなら集めて洗い、薪、かがり、たき物にせよ。紙の切れ端は5分、いや3分であっても集めて、漉き直すようにせよ。我々がしたようにものを分別し、どんなものでもムダにしてはならない。
 一(九)、常住、薪・たき物、二分―三分のざつこいわし(雑魚鰯)、あるひは町かい、浜の物、材木等かい候共、我と出候てかい、いかにもねぎ(値切)りかい候て、其代たかさやすさを能おぼへ、其後にハ、誰にかハせても、其代のやすさたかさを居ながら知る事候。さ候へバ、下人にもぬかれ候まじく候。寿貞(=神屋寿貞のこと)ハ生中薪・焼物われと聖福寺門之前にて買われ候。

 人の所帯ハ、薪・すミ(炭)・油と申候へ共、第一薪が専用候。たきやうにて過分ちがい候。一日にめし(飯)・しる(汁)にいかほどと、われとたきおぼえ、いかほど成共、其分下女に渡候てたかせ候へ。但壱月にいかほどのつもりさん(算)用候ずる事。但たきぎ・たき物も、なま(生)しきとく(朽)ちたるが悪候。ひ(干)たる薪をかい候へ。薪より柴・はぎこぎ(端木小木)の類が然るべき候。柴などよりかや(茅)焼物が徳にて候。

 酒を作、ミそ(味噌)をにさせ候者、米一石に薪いかほどにてよきと、われとたきおぼえ、薪何把に、け(消)し炭いかほどとけしおぼえ候て、其後其さん用にたかせ、すみをもけさせ請取候べく候。いづれの道にも、我としんらう(心労)ハずバ、所帯は成まじく候事。
 薪、たき物、2分~3分の雑魚鰯、あるいは町のもの、浜のもの、材木など買う時には、自ら足を運び、値切り交渉をして、商品の高い・安いを覚えるようにせよ。その後は、誰に買いに行かせても、自分の家にいながらにして商品の高い・安いが解るぐらい、買いに行かせた下人に値段をよく教えよ。そうすれば、下人に出し抜かれることはないだろう。寿貞は生前、薪やたき物を私と一緒に聖福寺門の前でお買いになった。

 家庭では薪、炭、油が大事と言うが、その中では薪が最も重要である。焚き方によって消費量が大分違う。1日分の飯や汁を作るのにどのくらいの薪が必要なのかを自分で焚いて覚え、その量を下女に渡して焚かせるようにせよ。1か月に薪をどのくらい消費する見込みなのかは自分で計算すること。薪やたき物も、生の木や朽ちた木ではよくない。よく乾燥した薪を買わなければならない。なお、薪よりも柴の類の方がよい。また、柴より茅の方が得である。

 米一石を炊くのにどのくらいの薪が必要なのかを自分で実際に火を焚いて確かめ、薪の火を消すのにどのくらいの消し炭が必要なのかを自分で実際に火を消して覚えよ。そして、その見積に従って下人に火を焚かせ、消し炭を使わせよ。いすれにしても、自分自身で骨を折って確かめなければ、家計は持たないだろう。
 一(十)、酒を作り、しち(質)を取候共、米は我ともはかり、人に計らせ候とも、少も目もはなさず候て然るべき候。かたかけにて何たる事もさせ候まじく候。下人・下女にいたるまで、皆みなぬす(盗)人と心得べく候。酒作候者、かし(淅)米置候所を作、じやう(錠)をさし、こわいい(強飯)もぬすむ物にして、さまし候時、ゆだん仕まじく候。しちを取候共、させらぬ刀・わきざし・武具以下、家やしき(屋敷)人の子共、させらぬ茶のゆ道具、田地など申すに及ばず候。

 惣別人共あまためしつかい候事無用候。第一、女子多く置候事無用候。女房衆あるかれ候共、下女二人・おとこ壱人之外、曾以無用候。其方子共出来候者、いしやうなどうつくしき物きせ候まじく候。是又よそにあるき候共、おち(御乳)ニ下女壱人相そへあるかせ候へ。さしかさ(差傘)・まほり(守)刀等もたせ候事、中々無無用候(原文ママ)。ちいさきあミかさ(編笠)こしらへ、きせあるかせ候べく候事。
 酒を造る時、米の量は自分で測り、他人に測らせるとしても、決して目を離してはいけない。何事も中途半端に人に任せてはならない。下人・下女は皆、盗人になる可能性があると心得ておくべきである。酒を造る時は、洗い米を置く所を作り、錠をかけておかなければならない。強飯(蒸した米)も盗みの対象になるから、熱を冷ます時は油断してはならない。質に関しても、貴重な刀、脇差、武具、家屋敷の子ども、大切な茶の湯道具、田地などは質に入れてはならない。

 必要以上にたくさんの召使を抱えてはならない。まず、女子を多く置いてはいけない。女房衆が外出される時でも、下女2人、下男1人以外は不要である。あなたに子どもができても、華美な衣装は着せてはならない。また、子どもが外出する時は、乳母と下女を1人ずつ付き添わせるようにせよ。差傘や守刀などを持たせる必要はない。小さい編笠を作って、着せて歩かせればよい。



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