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山本七平『存亡の条件』―日本に「対立概念」を持ち込むと日本が崩壊するかもしれない
星浩『安倍政権の日本』―民主党を「社民主義」などと判断した結果・・・
目玉は「新ものづくり補助金」―平成25年度補正予算のポイント

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2014年08月22日

山本七平『存亡の条件』―日本に「対立概念」を持ち込むと日本が崩壊するかもしれない


存亡の条件存亡の条件
山本 七平

ダイヤモンド社 2011-03-11

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 本書の帯には自民党の石破茂氏のコメントが寄せられており、「われわれ日本人は劣化しはじめている」と書かれている。それは、山本七平によれば、日本がいつの時代にも諸外国に手本を求めてはそれを模倣し続けた結果、かえって自分のことが解らなくなっているためであるという。
 諸外国を見回って(といって、見回ったぐらいで外国文化がわかったら大変なことなのだが)、あちらはああやっているから、ああしようといえば、すぐまねをし、また、こうしたらいいという暗示にかかれば、すぐその通りにするといった状態は、実に、つい最近まで―否、おそらく今もつづいている状態なのである。

 そのため、自分の行動の本当の規範となっている思想は何なのかというと、いわば最も「リアル」なことが逆にわからなくなり、自分が、世界の文化圏の中のどこの位置にいて、どのような状態にあり、どのような伝統の延長線上にあるかさえわからなくなってきた。
 これは何も山本七平に限った主張ではない。日本の特徴を論ずれば必ず通る道である。日本人はこの手の話をさんざん聞かされている。では、どうしろと言うのか?だがここで、著者は、この「では、どうしろと言うのか?」という質問に対して、厳しい批判を浴びせる。
 いうまでもないが、これは全く無意味な言葉であり、「私は人間でなく奴隷である」と宣言しているに等しい。(中略)少なくとも人に自由意志があり、その人にその判断があるなら、自分の責任で自分の判断に基づいて自分で決心し、自分で実行してその結果は自分が負えばよいだけのことで、他人に「どうしろと言うのか」という質問をする必要は一切ないはずである。
 日本人がこのような思考に陥るのはなぜなのか?著者は、「対立概念」をめぐる日本の思考プロセスの未熟さにその手がかりを求める。
 基本的には、人間を対立概念で把握するということであり、これがいわばキリスト教国の基本的な把握の仕方である。人間は、たとえば、善悪という対立概念で1人の人を把握しているとき、その人はその人間を把握している。だがこのことは、人を、善人・悪人と分けることではない。もし人を、善人・悪人に分類してしまえば、それはその各々を対立概念で把握できなくなってしまう。(中略)

 これが分立と対立の違いだが、日本では常にこれが混同され、2つの違いが明確に意識されていない。新約聖書は、人間を悪人・善人と分けることを厳しく禁じている―人はあくまでも一人格であり、かつ、その一人格を善悪という対立概念で把握しているとき、それは生ける一人格を把握しているとする。
 人間とはその2つの対立概念によって把握したときにのみ、狂信的とはならない、どんな場所でも生きていけるものであることを発見したのである。そして、そう把握できる対象だけが実在の人間であり、そう把握できない状態になれば、それは滅亡以外にないはずであった。
 日本人は、対立ではなく分立で物事を考えてしまう。相反する思想、イデオロギー、社会、制度、文化を目の前にした時、その相反する要素を1つの事象の裏表として捉えることができない。その結果、一方を狂信してもう一方を徹底的に排除しようとする。だが、その先に待っているのは民族の滅亡である。そのようにして滅亡した先例として、著者はユダヤ国家を挙げる。

 ユダヤ教には3つの宗派があった。1つは現実主義的なサドカイ派であり、モーセの律法を尊重しつつも事実上それを棚上げし、リアルな世界をうまく立ち回る政治的な生活を送っていた。これと対極にあるのが理想主義的なエッセネ派であり、律法にどこまでも忠実であろうとして、政治からは距離を置いた。サドカイ派とエッセネ派の中間に位置するのが最大多数派のファリサイ派である。彼らは律法と現実の生活を接合し、当時の政治に真っ向から反するようになった。
 (ファリサイ派は)現政府を、モーセの律法に違反する悪と規定し、それへの服従を拒否して抵抗の姿勢をとることを善としながらも、権力指向を悪と規定することによって、自ら統治の責任を負うことを拒否しているという、一種の倒錯型政党・反権力型権力と名づける以外にない。
 ファリサイ派は信仰と政治、理想と現実という2つの概念を、人間の社会的生活に内包される対立概念ではなく、分立概念としか捉えることができなかった。その結果、信仰が政治を、理想が現実を駆逐し、滅亡への道を転げ落ちていった。日本がユダヤ国家のようにならないためには、対立概念を学ぶ必要があると著者は言う。「では、どうしろと言うのか?」という質問に答えることを拒否した著者が、本書の中で読者に提案している数少ない解決策の1つがこれである。

 だが、個人的には、日本人が対立概念を下手に身につけようとすると、かえって危険なのではないか?と危惧する。日本人が対立概念を持たないことは2000年来の伝統様式であり、それを今さら変えることは非常に難しい。無理に対立概念を植えつけようとすれば、二項対立が二者択一に転じ(多くの場合、理想が現実を駆逐する)、身を亡ぼすことになりかねない。

 潜在的にそれが解っていた日本人は、対立が分立に転ずることを防ぐため、敢えていろんな国を手本とし、それらの国から過剰とも言える流入を許してきたのではないだろうか?たくさんある手本の中から都合よく取捨選択するという現実的で天邪鬼な生き方が、行き過ぎた理想主義の防波堤になっていたように思える。これは、対立概念を学習するという課題を先送りにしている点で、器用な生き方とは言えない。しかし、日本人にはこの生き方しかできないのである。周囲の国から、日本は何を考えているのか解らないと批判されようとも、日本は自分自身の防衛策としてこの生き方を貫くしかない。

 日本が対立概念を身につけようとして、かえって自分の身を危険にさらした前例が太平洋戦争であろう。太平洋戦争は、一言で言えば「天皇制の秩序をとるか、西欧的な秩序をとるか」という分立(対立ではない)であった。その源流は、明治時代の教育勅語と帝国憲法の相克に求めることができる。教育勅語は古来からの儒教的な考えを明文化したものである。これに対して帝国憲法は、西欧を手本として制限君主制を導入したものであった。太平洋戦争は、教育勅語という理想が帝国憲法という現実を駆逐し、天皇のために西欧を攻撃したものであると解釈できる。

 理想が現実を排撃したという点では、日中戦争も同じように捉えられるだろう。日本は中国の専制君主制を理想とし、それを天皇制に反映させてきた。ところが、当の中国では、日本が学んだように専制君主制が敷かれていないことを発見する。つまり、「内なる中国(=理想)」と「外なる中国(=現実)」が矛盾した状態である。ここで日本は、外なる中国を内なる中国に合致させるために、中国を攻撃する。これが日中戦争の構図である(以前の記事「イザヤ・ベンダサン(山本七平)『日本人と中国人』―「南京を総攻撃するも中国に土下座するも同じ」、他」を参照)。

 現在の日本を混乱に陥れようと思ったら、「アメリカか、中国か」と日本に迫ればよい。世界の様々な問題をこの1点に集中させたら、おそらく日本は転覆するだろう。そうさせないためには、日本人は多様な視点を備えて自己防衛する必要がある。最近、憲法改正の動きが盛り上がっており、自民党は9条改正を、共産党は9条維持を訴えている。これは一見すると非常に不思議である。なぜならば、日米同盟を支持する自民党が、アメリカに”押しつけられた”憲法を変えようとしており、逆に中国共産主義を支持する共産党が、アメリカ産の憲法を維持しているからだ。

 しかし、日本人の自己防衛という観点からすれば、このぐらい政治が混乱していた方が実は社会が安定する。日本人は、諸外国から「アメリカか、中国か」と突きつけられる事態だけは避けなければならない。対立概念を持たない日本は、どちらか一方を狂信し、もう一方を打倒して自らも倒れることになるだろう。最低でも、「アメリカも、中国も」という状態に持ち込まなければならないし、あわよくば「アメリカも、中国も、第三国も」と思考を複雑化させる必要がある。

2014年03月05日

星浩『安倍政権の日本』―民主党を「社民主義」などと判断した結果・・・


安倍政権の日本 (朝日新書)安倍政権の日本 (朝日新書)
星 浩

朝日新聞社 2006-10

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 今さらながら第1次安倍政権に関する本のレビューを書くことをご容赦いただきたい。

 (1)安倍総理は就任直後のインタビューで、前政権での教訓を聞かれた時に、「前回は自分がやりたいと思う政策ばかりをやっていた。国民がやってほしいと思っている政策が後回しになっていた」といった発言をしていたのを覚えている。確かに、安倍総理は「戦後レジームからの脱却」というテーマを掲げ、在任期間わずか約1年の間に、教育基本法改正、防衛庁の省昇格、憲法改正の布石となる国民投票法の制定、天下りの規制を皮切りとする公務員制度改革など、過去半世紀の全ての首相が敬遠してきた国家の土台部分の難しい宿題を一挙に前進させた(小川榮太郎『約束の日 安倍晋三試論』より)。

 だが、本書を読んで改めて気づいたのは、安倍総理が就任した当時の日本は、”小泉後遺症”をはじめとする様々な課題を抱えており、安倍総理はその対応が後手に回ってしまった、ということだ。”小泉後遺症”とはすなわち、構造改革に伴う地方の疲弊であり、度重なる靖国神社参拝によって冷え込んだ日中・日韓関係のことである。これに加えて、社会保障と税の問題も残っていた。安倍政権がこれらの問題について様子をうかがっているうちに、「消えた年金」問題が浮上し、さらに当時の松岡利勝農水相大臣の自殺によって、第1次安倍政権はとどめを刺された。

 第2次安倍政権は、デフレ脱却という国民の10年来の悲願を果たすため、積極的な金融政策と財政出動を行い、半分ぐらいは道のりを達成したと言えるだろう。安倍総理がインタビューで語ったように、国民がやってほしいと思っている政策を優先させた結果である。だが、第三の矢である成長戦略には、国内外から疑問が投げかけられている。年明けから突発的な株安・円高が発生しているのは、投資家が成長戦略に対して失望しているからとも言われる。短期的な政策で行き詰まりつつある安倍総理は、中長期的な課題である憲法改正に目先を変えているようにも感じる。それによって、かえって足元をすくわれる結果にならないことを祈っている。

 (2)本書の最後に、著者と千葉大学法経学部教授・広井良典氏との対談が収められているのだが、そこで広井氏は政治哲学を大きく「保守主義」、「自由主義」、「社民主義」という3つに分けている。「保守主義」は、伝統的な家族や共同体に価値を置く立場である。「自由主義」は「独立した個人」に重きを置き、「市場」、「自助」を重視し、”小さな政府”を志向する。自由主義の代表はアメリカである。「社民主義」は、「独立した個人プラス公共性」に価値を置き、”大きな政府”を志向する。北欧の社会民主主義政党がその代表例である。

 広井氏は、本書が書かれた2006年時点で、小泉改革を引きずる自民党が「自由主義」に、小沢一郎氏を代表とする民主党が「社民主義」にあたるとしている。その上で、政治思想は保守主義から出発し、時代とともに自由主義と社民主義に分かれるが、どちらの考えもやがては行き詰まると指摘する。そこで広井氏は、第三の道として、両者を融合した「新しい社民主義」を提示する。「新しい社民主義」とは、社民主義的な理念をベースに置きつつ、市場原理や効率性を一定程度活用し、かつ環境保護に重要な価値を置く考え方である。

 しかし、実際のところ、自民党VS民主党の構造は、”小さな政府”VS”大きな政府”ではなかったと思う。実態は”国家保存”VS”国家解体”であり、民主党は社民主義ではなく社会主義であった(先日の記事「山谷えり子『日本よ、永遠なれ』―日教組の暴走による教育崩壊が恐ろしかった」を参照)。本書が書かれた2006年時点では、民主党の内幕が明らかでなかったため、広井氏が正体を見誤ったのかもしれない。だが私は、本書が朝日新聞社から出版されたものであることから、出版元が意図的に民主党の正体を隠したのではないか?と疑っている。

 社会主義の下では、自由主義における個人主義とは異なる個人主義が顔を出す。それはあらゆる組織・共同体と徹底的に抗戦する個人である。社会主義者は、個人は国家に抑圧され、企業に抑圧され、家族に抑圧されていると考える。よって、個人の独立を勝ち取るために、国家、企業、家族と徹底的に戦う。そして、組織・共同体に干渉されない自由を獲得するというわけだ。

 だが、この考え方は論理的に破綻していると思う。既存の組織・共同体から自由を勝ち取った人々は、新しいグループを形成して人々の上に立つ。そして、彼らは自らが勝ち取った自由を他の人々にも与えようとする。しかし、中には新しい自由を与えられることを抑圧と感じる人々がいる。新しいグループは、こうした人々にとって攻撃の対象となる。したがって、新しいグループは、新しい自由主義者によって打ち倒される。ところが、新しい自由主義者もまた、別の新しい自由主義者によって解体のターゲットとされる。この繰り返しである。

 あくなき闘争の果てに待っているのはどんな世界だろうか?自由を盾に他人に干渉すれば必ず打倒されるのだから、最後に残る自由は「何もしない自由」、「誰とも接触しない自由」しかない。個人は社会的なつながりを完全に断たれ、世界の中で単なる点としてのみ存在する。誰とも接触しないのだから、子孫を残すこともない。その先にあるのは、人類の滅亡である。

 (3)
 安倍氏の本(『美しい国』)との関係で一番面白いのが、レジームチェンジ論に対する批判です。ネオコンはイラクにおいてレジームチェンジ(体制変革)を目指したというが、アメリカは歴史的にフィリピンや中南米など多くの国で染料や介入による「民主化」を試みてきた。しかし成功したのは、ドイツ、日本、韓国くらいだ、と。

 この議論は、安倍氏の本の中で私(広井氏)が最も矛盾していると考える論点につながります。安倍氏は現憲法はアメリカに押しつけられたもので、日本人の手で憲法を作らなければ真の独立が得られないと主張しているように思われます。しかし、現憲法こそ米国のレジームチェンジ政策の産物ではないでしょうか。
 安倍政権を批判する時に、左派からいつも出てくるのが、「安倍総理はアメリカに押しつけられた憲法を改正しようとしているのに、他方でそのアメリカと同盟を強化しようとしているのは矛盾しているのではないか?」という声である。だが、憲法を改正することが日米同盟を否定することになるとは限らないだろう。

 アメリカは世界一の軍事大国であり、その軍事費は約55兆円にも上る。ところが、アメリカは軍事費の削減を急ピッチで進めている。すでに5兆円ほど削減済みであり、国防総省はさらに向こう10年間で50兆円の削減を目標にしている。一方、中国の軍事費は現在約10兆円で世界2位だが、毎年二ケタ増を続けており、2020年には約39兆円にもなると言われている。アメリカと中国の軍事費がほぼ肩を並べる格好になるわけだ。

 今までは日米同盟と言っても、アメリカが軍事面をほとんど肩代わりしてくれる片務的な関係であり、日本は経済発展のみに集中していればよかった。ところが、世界におけるアメリカのプレゼンスは低下しつつあるし、アメリカ自身もその道を自ら選択している(シリア問題をめぐってオバマ大統領は、「アメリカは世界の警察ではない」と発言した)。他方で隣国に目を向ければ、巨大な軍事国家が誕生しようとしている。この世界情勢の変化を受けて、日本としてどのような防衛・軍備を行うべきなのかをグランドデザインし、それが実現できる憲法を整え、アメリカと協力できる部分は協力していく、という発想を行うのは国家としてごく自然なことではないだろうか?

2014年01月08日

目玉は「新ものづくり補助金」―平成25年度補正予算のポイント


《2014年2月17日追記》
 「新ものづくり補助金(中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業)」の募集が本日より開始された。詳細は各都道府県の中小企業団体中央会HPを参照されたい。また、申請のポイントをこちらの記事にまとめておいた。 >>「新ものづくり補助金(中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業)」募集開始

《2014年3月23日追記》
 申請書の書き方に関する記事をアップしたので、こちらもご参照いただきたい。

 「新ものづくり補助金(平成25年度補正)」申請書の書き方(例)
 「新ものづくり補助金(平成25年度補正)」申請書の書き方(賃上げに関して)

《2014年4月14日追記》
 私が所属する認定支援機関「NPOビジネスサポート」で説明会を開催することにしたので、参加をご検討いただきたい。 >>
【東京】新ものづくり補助金・創業補助金説明会【緊急開催】

 昨年の12月12日、平成25年度の補正予算が閣議決定された。内訳は、「①競争力強化等(中小企業・エネルギー・イノベーションなど)」が5,511億円、「②復興の加速(復興庁計上)」が1,237億円となっている。①のうち、「中小企業対策」には3,403億円があてられた。昨年初頭に閣議決定された緊急経済対策(1月15日)に基づく平成24年度補正予算では、中小企業対策費に5,434億円が計上されたのに比べると、やや規模が縮小した。だが、それでも一般会計で計上されている中小企業対策費(平成25年度は政府全体で1,811億円、うち経済産業省分が1,071億円)に比べれば、大規模な補正予算である。

 平成25年度補正予算の目玉は、何と言っても「新ものづくり補助金」(予算1,400億円)であろう。これは、平成24年度補正予算で実施された「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」(通称「ものづくり補助金」、予算1,007億円)の内容を踏襲し、規模を拡充したものである。もともと、自民党が昨年5月に発表した「中小企業・小規模事業者成長プラン」の中には、「スーパーものづくり補助金」という項目が入っていた。そのため、中小企業診断士の間でも、「来年以降もものづくり補助金が継続されるのではないか?」という噂が広まっていた。

 そして8月、日刊工業新聞が「企業庁、中小支援に2000億円超-「ものづくり補助金」上限倍増2000万円」という記事を発表。ところが、これに対して中小企業庁は、「そのような補助金が検討された事実はない」と火消しに走る騒ぎがあった。まだ煮詰まっていないのに、中企庁の誰かが焦ってリークしてしまったのだろう。あるいは、ものづくり補助金を続けるべきか、情報を小出しにして世間の反応を見てみようという、中企庁のマーケティング活動ではないか?といぶかしる診断士の人もいた。

 その後、平成25年度補正予算の編成が始まると、経産省が新ものづくり補助金として2,000億円を要求。これに対し、財務省が難色を示しており、最終的には600億円程度になるのではないか?という報道もあった(「景気の腰折れ回避-経産部会13年度補正、「ものづくり補助金」拡充」)。ただ、結局は両者の間をとるような形で妥結し、1,400億円に落ち着いた。いや、600億円と2,000億円のちょうど真ん中は1,300億円であるから、そこから100億円の上積みを獲得した経産省の粘り勝ちといったところだろうか?

 新ものづくり補助金の概要は以下の通りである。上限額はものづくり補助金と変わらず1,000万円であるが、医療、環境、エネルギーなど特定分野への投資に関しては、上限額が1,500万円まで引き上げられる。また、新ものづくり補助金では、製造業に加えてサービス業も対象になる。まるで私が以前の記事「平成26年度経済産業省概算要求 中小企業関連政策についての雑感」で、「サービス業向けの補助金も考えられないものか?」と書いたことが伝わったかのようだ(私のブログなんて経産省・中企庁の関係者は絶対読んでいないだろうけど・・・)。

 ものづくり補助金の第1次募集の期間が3月15日~3月25日(第1次締切分)および3月26日~4月15日(第2次締切分)であったことから、新ものづくり補助金の募集期間もおそらく同じ時期になると思われる。申込期間が短い上、申込書類の作成には結構な時間を要するため、応募を検討している中小企業は今から作戦を練っておくとよいと思う。

《2014年1月23日追記》
 新ものづくり補助金の公募要領や応募様式などは、現時点で一切明らかになっていない。ただ、補助金の仕組み自体はそれほど大きく変わらないはずなので、平成24年度補正予算ものづくり補助金の公募要領などを研究して準備を進めるのがよいだろう(大阪府中小企業団体中央会のHPなどを参照)。


 ところで、安倍首相は先月18日、新ものづくり補助金について「賃上げをした企業に優先的に出していく」と述べ、茂木敏充経済産業相に指示する考えを示した(ものづくり補助金「賃上げ企業を優先」 首相、指示へ)。賃上げした事実をどうやって企業側に証明させるのか、興味深いところだ。社員の何割が賃上げをしていればよいのか?賃上げの幅は何%以上でなければならないのか?首相がさらっと口頭で指示した内容だが、詰めていくと結構難しい問題である。
1.試作品・新商品の開発や生産プロセスの改善、新しいサービスや販売方法の導入を含めた事業革新に取り組む費用に対する支援
 ・対象:中小企業・小規模事業者
 ・補助上限:1,000万円(特定分野(※)への投資は1,500万円)
   ※特定分野:医療・環境・エネルギー分野など
   ※設備投資を伴わない開発を行う小規模事業者向け特別枠:(上限700万円)
 ・対象分野:ものづくりに加え、商業・サービス分野を追加
 ・補助率:3分の2

2.金融機関から借入を行い老朽化に対処した大規模設備投資(※)に対する支援
 ・金融機関のモニタリング実績に応じ、借入額の1%相当を上限に設備投資費を補助
   ※大規模投資:総資産の15%を超える設備投資
《2014年1月22日追記》
 1月21日に中企庁のHPでもう少し詳しい情報が公開された(「平成25年度補正予算 事業毎PRチラシ」を参照)。
1.ものづくり・商業・サービス補助金
【補助上限:通常1,000万円(700万円(※1)、1,500万円(※2))、補助率:3分の2】

(※1)小規模事業者のみが利用でき、設備投資を伴わない費用を補助する特別枠。例:地元産品を活用したオリジナルスイーツの開発、理容店が女性顧客をターゲットにしたエステサービスを導入、など。
(※2)医療・環境・エネルギーなど特定分野への投資に関しては、上限額を1,500万円に引き上げ。

 ものづくり
 <要件>
 「中小ものづくり高度化法」に基づく特定ものづくり基盤技術を活用していること(例:情報処理、立体加工など)
 <事例:多言語対応の産業用インクジェットプリンタの開発>
 情報処理技術を活用して、多言語化に必要な処理能力を持つハードウェアを有するシステムを搭載する産業用インクジェットプリンタを開発し、さらに部品数の見直しによるコスト競争力向上により海外市場獲得を目指す。

 商業・サービス
 <要件>
 3~5年計画で「付加価値額」年率3%および「営業利益」年率1%の向上を達成する事業であること(付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費)
 例えば、「付加価値額」7,000万円(※3)⇒翌年度210万円の向上
     「営業利益」700万円(※3)⇒翌年度7万円の向上
をともに達成する事業であること。

(※3)中小企業の平均値。

 <事例①:理容店における女性顧客をターゲットとしたシェービング・エステの提供>
 他店では提供していないレディース・シェービング・エステに業務拡大。心安らぐ空間作りによって、リラクゼーションという付加価値を提供し、顧客単価の引上げを目指す。

 <事例②:電子カルテや新たな洗浄技術の導入およびその効果の検証のための設備導入>
 顧客情報を電子カルテ化し、顧客の生活環境に合った衣料品のメンテナンスサービスを提供するとともに、水洗いとドライの長所を併せ持つ洗浄方法の開発により、新規需要を開拓する。

2.老朽化設備の新陳代謝
【補助上限:借入金の1%相当額】
 新陳代謝型
 金融機関から借入を行い耐用年数を超過した設備を入れ替える大規模投資(総資産の15%を超える設備投資)を行う場合に、借入額の1%相当額を上限に補助する(例:事業者が1億円の借入を行う場合、100万円を上限に補助する)。

3.取引先の事業所の閉鎖・縮小の影響を受けている事業者の設備投資など
【補助上限:1,000万円、補助率:3分の2】
 取引先の事業所の閉鎖・縮小により10%以上売上減少が見込まれる中小企業・小規模事業者が、新たな事業展開をするために必要な設備投資などを補助する。
 なお、平成25年度補正予算における「中小企業対策」の概要は以下の通り。

(1)中小企業・小規模事業者の事業革新等への支援(2,013億円)
(1-1)中小企業・小規模事業者によるものづくり等の支援(新ものづくり補助金等)(1,582億円)

 ○ものづくり・商業・サービス革新事業(新ものづくり補助金)(1,400億円)
 製造業・商業・サービス業等の試作品開発、新ビジネスモデル開発、生産プロセスの改善、生産性向上を含め中小企業・小規模事業者の事業革新を支援。さらに、設備投資を伴わない開発を行う小規模事業者向けに特別枠を設定。また、金融機関から借入を行い老朽化に対処した大規模設備投資を行う場合、金融機関のモニタリング実績に応じ、借入額の1%相当を上限に設備投資費を補助。

 ○地域におけるオープンイノベーション基盤の構築(30億円)
 自治体の公設試験場、大学等に対する施設・設備の整備を支援。地方産業競争力協議会で特定した戦略分野に配分。

 ○研究開発型新事業創出支援プラットフォーム(102億円)
 グローバルかつオープンな技術融合と開発補助による技術シーズ事業化支援。

 ○リースによる先端設備投資支援(50億円)
 リース手法の活用により、高額な初期費用を要し初期稼働が見通し難い先端設備等の導入を推進。

(1-2)商店街・中心市街地活性化対策(225億円)

 ○商店街活性化に向けたソフト・ハード両面の支援(180億円)
  □商店街まちづくり事業
  地域の安心・安全に係る施設等の整備(子育て、高齢者向け等)。
  □地域商店街活性化事業
  消費喚起イベントや商店街の体質強化に資する人材育成研修等。

 ○中心市街地活性化(45億円)
 商店街に効果がある高度な商業機能の整備等を実施。

(1-3)小規模事業者支援(145億円)

 ○小規模事業者に焦点を当てたパッケージ型支援
  □商工会議所・商工会と一体となって行う、小規模事業者の地道な販路開拓を支援。
  □財務分析等の基盤整備。
  □ものづくりの技術・技能の継承や企業間出向等による人材育成。
  □海外展開支援(新興国等におけるワンストップ相談窓口の拡充や海外からの撤退時の法的支援の強化、現地商談会の開催等)。
  □「経営者保証に関するガイドライン」の周知、経営者保証によらない融資を受けるための相談窓口設置及び専門家派遣等。

(1-4)創業・ベンチャー支援等(61億円)

 ○「小さな創業」に対するきめ細かな支援(44億円)
 創業費用の一部を補助。産業競争力強化法における創業支援事業者(地域金融機関等)の取組を支援。

 ○ベンチャー創出のための目利き・支援人材の育成(7億円)
 ベンチャーキャピタル人材等による、徹底したきめ細やかな支援を実施。

 ○健康・医療戦略分野(創薬・医療機器・海外展開等)に係る投資促進(10億円)
 産業革新機構、中小企業基盤整備機構の財務基盤を強化し投資を加速。

(2)消費税転嫁円滑化総合対策(35億円)

 ○消費税率引き上げに向けた総合的な対策
 弱い立場の取引先(納入業者・下請・運送等)に消費税率引き上げ分を負担させることのないよう相談窓口の設置(全国の商工会・商工会議所等)や巡回指導等を行う。

(3)中小企業・小規模事業者の資金繰り・事業再生支援(1,356億円)

 ○経営支援と一体となった資金繰り支援(1,352億円 ※うち、財務省計上821億円)
  □原燃油高の影響や消費税率引上げに万全を期すため、セーフティネット保証の平時の運用への移行を図るとともに、日本政策金融公庫及び商工組合中央金庫における経営支援を強化することで、より手厚い資金繰り支援を実現。
  □日本政策金融公庫等において設備新陳代謝、所得増加及び創業等、前向きの事業展開に向けた取組の支援や経営者保証ガイドラインに対応した融資を促進。
  □経営改善サポート保証(産業競争力強化法)等による借換保証を推進。
  □国家戦略特区において商工業とともに行う農業を信用保証制度の対象化。

 ○事業再生支援の強化(4億円)
  □中小企業再生支援全国本部の機能拡充(産業競争力強化法にて措置)、経営改善計画策定の支援。

(4)その他(209億円)

 ○石油製品の安定供給の確保(ガソリンスタンドの支援)(160億円)
 消防法対応に伴う地下タンク改修支援、過疎地等の灯油配送合理化等。

 ○中堅・中小・小規模事業者の新興国進出支援(専門家派遣)(15億円)
 新興国でのビジネス経験が豊富な企業OB等のシニア人材の派遣。

 ○ASEANにおける日本企業の事業環境整備及び市場獲得支援(10億円)
 日ASEAN 経済産業協力委員会(AMEICC)を活用した制度整備等の協力。

 ○コンテンツ海賊版対策(3億円)
 アニメ・マンガの権利者情報のデータベース構築等を通じた海賊版対策の基盤整備。

 ○ロボット介護機器の普及促進(21億円)
 ロボット介護機器の普及を促進するため量産化に向けた実証を支援。

 なお、補正予算の執行に当たっては、中小企業・小規模事業者の補助金等申請書類の削減・簡素化を行う。




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