このカテゴリの記事
平成27年度補正ものづくり補助金の概要について
「ものづくり補助金」の「機械装置費」に関する一考
「新ものづくり補助金(中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業)」の運用改善に関する私案

プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
シャイン経営研究所HP
シャイン経営研究所
 (私の個人事務所)

※2019年にWordpressに移行しました。
>>>シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)

Top > 試作開発 アーカイブ
2016年01月06日

平成27年度補正ものづくり補助金の概要について


工場

 2015年12月18日に経済産業省が公表した平成27年度補正予算の資料によると、平成24年度補正から4年連続で「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金)」が実施されるようだ。今回も平成26年度補正時とほぼ同額の予算(1,020.5億円)が計上されている。以前、官公庁関係者で補助金に詳しい人に話を聞いたところ、「同じ名前の補助金はだいたい3年で終わる」とのことだったので、今回の継続は意外であった。2017年4月には消費増税を控えているため、景気対策と銘打って平成28年度補正でもものづくり補助金が出るかもしれない。

 まだ公募要領も何も出ておらず、具体的な中身はよく解らないのだが、中小企業庁のHPにヒントとなる資料が1つアップされていた。「平成27年度補正予算「ものづくり・商業・サービス新展開支援事業」に係る事務局の募集を開始します」というページは、タイトルの通り補助金の事務局(事業計画の審査、補助金の支払い業務など、採択された中小企業の各種サポートを行う事務局。平成24年度補正~平成26年度補正ものづくり補助金では、全国中小企業団体中央会が受託)を公募するページである。その「公募要領」には次のような記載がある。
【補助対象経費と補助率】
 1.革新的サービス・ものづくり開発支援
  (1)一般型(補助上限1,000万円、補助率2/3以内)
   機械装置費、技術導入費、運搬費、専門家経費
  (2)小規模型(補助上限500万円、補助率2/3以内)
   機械装置費、原材料費、技術導入費、外注加工費、委託費、
   知的財産権等関連経費、運搬費、専門家経費、クラウド利用費

 2.サービス・ものづくり高度生産性向上支援(補助上限3,000万円、補助率2/3以内)
   機械装置費、技術導入費、運搬費、専門家経費
 「1.革新的サービス・ものづくり開発支援」は従来から存在する類型である。これに対して、今回新たに加わったのが「2.サービス・ものづくり高度生産性向上支援」であり、経済産業省の資料では「IoT等の技術を用いて生産性向上を図る設備投資等を支援」と書かれている。この場合は補助上限が3,000万円まで引き上げられる。

 「1.革新的サービス・ものづくり開発支援」の(1)一般型、「2.サービス・ものづくり高度生産性向上支援」の補助対象経費を見ると、おそらく「設備投資のみ」が対象になると思われる。従来は(1)一般型の下に、さらに「試作開発+設備投資」と「設備投資のみ」という2つの類型があった。「試作開発+設備投資」を選択すると、試作開発に関連する様々な経費が補助対象となるのに対し、「設備投資のみ」を選択した場合は、対象費目が限定されるという違いがあった。上記で列挙されている経費は、従来の「設備投資のみ」で使用可能だった経費と一致する。

 個人的な印象だが、「試作開発+設備投資」の場合、導入する設備は試作用ということで小規模なものが選択されることが多い。量産に入ったら破棄しても構わないという小規模なものを購入する。量産段階になれば、量産用の大規模な設備を導入し直す(ただし、補助対象となるのは試作段階の設備のみであり、量産用設備は対象外)。他方、「設備投資のみ」の場合は、最初から量産を見据えて大規模な設備を導入する(1,000万円単位の工作機械など)。総じて、補助金と連動して動くお金は、補助対象費目が少ないにもかかわらず「設備投資のみ」の方が大きい。

 国としては、補助金の投入によってより多くのお金が動いてくれた方が景気の刺激になる。だから、「設備投資のみ」に誘導したい思惑があるのだろう。ところが、個人的に「設備投資のみ」には色々な問題があると感じている。その辺りは以前の記事「「新ものづくり補助金(中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業)」の運用改善に関する私案」、「「ものづくり補助金」の「機械装置費」に関する一考」でも書いた。簡単に言うと、「試作開発における技術的課題の解決を自社で主導的に行う企業を補助する」という補助金の目的に反して、課題解決を機械メーカーに丸投げしている企業が補助金を受け取ってしまう恐れがある、ということだ。

 今回は、「試作開発+設備投資」で1,000万円の補助金を受け取ることができないのかもしれない。「試作開発+設備投資」を行いたい場合は、「1.革新的サービス・ものづくり開発支援」の(2)小規模型を選択する。ただし、従来の小規模型は補助上限が700万円であったが、今回は500万円と減額されている。さらに、補助対象経費から直接人件費(常時雇用する社員の人件費)と雑役務費(試作開発のために臨時に雇用するパート・アルバイトの人件費)が外されている。ソフトウェア開発など、直接人件費がコストの大半を占めるIT企業にとっては非常に不利だ。

 最後に、今回追加された「2.サービス・ものづくり高度生産性向上支援」について。最近注目のIoTに関連した類型である。経済産業省の資料では、「新たに航空機部品を作ろうとする中小企業が、既存の職人的技能をデータ化すると共に、データを用いて製造できる装置を配置」という例が挙げられている。だが、これはIoTでも何でもなく、ITを使った製造プロセス改善にすぎない。

 IoTはInternet of Things(モノのインターネット)というぐらいだから、顧客に納入される製品(モノ)自体にデータ収集の機能を持たせることが大前提となる。そして、そのデータを一元管理して、運用・保守サービスの最適化や、顧客の収益力向上に向けた提案を行うことが狙いである。経済産業省の例はIoTの定義に合致しない(この話を知り合いの中小企業診断士にしたら、「きっと『IoT等の技術を用いて・・・』の『等』に含まれる例なのだろう」と解説してくれた)。

 前述の通り、「2.サービス・ものづくり高度生産性向上支援」は「設備投資のみ」が認められると思われる。とはいえ、IoT関連の新製品開発が、設備投資だけで可能になるとは到底思えない。大規模なサーバを購入すればIoTが実現できるわけではない。データ収集・通信機能を組み込んだ新製品の試作に必要な原材料費、製品に組み込むソフトウェアを自社で開発するための直接人件費、インターネット上で稼働させる管理ソフトを協力会社に委託する際の外注加工費、データ収集・解析方法に関する知的財産権等関連経費など、様々な費目が必要になることは容易に想像がつく。先ほどの定義の話といい、どうも経済産業省の考えていることはよく解らない。

2015年09月23日

「ものづくり補助金」の「機械装置費」に関する一考


工場(圧力計)

 今日は一体誰に向けて書いているのかが解らないマニアックな記事を。ここ数年、多くの中小企業(特に中小製造業)が利用した補助金に「ものづくり補助金」がある。これは、国内外のニーズに対応したサービスやものづくりの新事業を創出するため、革新的な設備投資やサービス・試作品の開発にかかる経費の一部を補助するというものである。補助対象となる費目の中に「機械装置費」があるのだが、この機械装置費の扱いが実は非常に厄介だと感じることがあった。

 (1)ものづくり補助金には、試作品の開発と機械装置の購入を行う「試作開発+設備投資」と、機械装置の購入のみを行う「設備投資のみ」という類型がある。以前の記事「【補助金の現実(2)】補助金の会計処理は、通常の会計処理よりはるかに厳しい」で書いたように、経済産業省関連の補助金では、取引先・仕入先から何を購入し、外注先・委託先・外部専門家に何の業務・工程を委託し、自社の社員にどんな業務を行わせたのか、細かく記録させることが要求される。

 「試作開発+設備投資」型の場合、必要書類を揃えていくと、幅5~6cmのA4キングファイルが必要になる。1冊では足らず、2冊、3冊にまたがることもある。これに対して、「設備投資のみ」型の場合は、下手をすると機械装置1台だけの購入で終わってしまうから、必要書類は非常に少ない。それなのに、時に「試作開発+設備投資」型よりも多くの補助金を受け取れるのは、どうも不公平な気がしてならない。ものづくり補助金の補助上限額は、原則として1,000万円である。同じ1,000万円をもらうのに、「試作開発+設備投資」ではキングファイルをいっぱいにしなければならないのに、「設備投資のみ」型では20枚程度の書類で済む、ということが起こりうる。

 この不公平感を解消するためには、「設備投資のみ」型を認めずに「試作開発+設備投資」型に一本化するのが無難であろう。そもそも、設備投資がメインであっても、試作開発である以上は、機械装置費以外の経費が発生するのが普通である。

 例えば、新型のマシニングセンタを導入すると、社員はその操作方法を何か月かかけて取得しなければならない。トヨタには「カタログエンジニアになるな」という言葉があるが、カタログに書いてある通りの操作方法しかできないようではダメだという意味である。自社製品や工程の特性に応じて、独自の使用方法を編み出す必要がある。その過程では、直接人件費や原材料費がかかる。また、新しいマシニングセンタを使って、計画していた新製品が図面通り、顧客からの要求通りに作れるかどうかも試さなければならない。ここでも原材料が消費される。したがって、設備投資がメインでも、最低でも原材料費と直接人件費は発生するはずなのである。

 (2)ものづくり補助金は、公募の回を重ねるごとに設備投資の比重が高まっていった。平成25年度補正以降は、原則として単価50万円以上(税抜き)の機械装置の購入が必須となった。この50万円という数字は、会計上単価50万円以上で耐用年数1年以上の機械装置を固定資産計上することに従ったものと思われる。ということは、経済産業省は、ものづくり補助金を通じて、中小企業の固定資産形成を促したいと考えているようである。

 しかし、量産段階ならともかく、試作開発の段階でそれほど大きな機械装置を購入することは考えにくい。試作段階では、機能が限定され、壊れても構わないような数百万円程度の機械装置を購入し、量産段階に入ったら1,000万円クラスの大型機械装置を導入する、というのが自然の流れである。にもかかわらず、ものづくり補助金は、できるだけ金額の大きい機械装置の購入を是としている節がある。そのため、補助金を使って1,000万円クラスのマシニングセンタ、旋盤加工機、射出成型機、CAD/CAMソフト、3次元測定器などを導入する中小企業が散見される。

 一方、ものづくり補助金においては、取得した機械装置を補助事業計画の目的の範囲外で使用してはならないという制約がある。Aという製品を製作するためにマシニングセンタを購入したら、そのマシニングセンタではA以外は製造してはならないというわけだ。「機械装置を目的外使用しない」という誓約書を企業に書かせている補助金事務局もある。仮に目的外使用が発覚した場合は、誓約書違反として補助金の辞退に追い込まれる、という話も聞いたことがある。

 ところが、機械装置が高額であればあるほど、特定の製品のためだけに使用するというのは考えにくくなる。マシニングセンタのような工作機械であれば、その1台で様々な製品を作るのが普通だ。CAD/CAMソフトは様々な製品が設計できるのに、補助事業計画に書いた製品しか扱えないようでは非効率極まりない。経営資源に限りがある中小企業は、設備の稼働率を上げようとするだろう(中小企業に限らず、大企業でもそうするだろう)。補助金で高額の機械装置を購入することを認めておきながら、用途を非常に狭く限定するのは、どうも矛盾しているように思える。

 (3)機械装置費と外注加工費の区別は難しい。よく受ける質問は、「制御基板の製作費は機械装置費か外注加工費か?」というものである。その制御基板が、顧客に所有権が移転する製品(ここでは、試作品も将来的には顧客に所有権が移転するものとして考える)の一部を占めるのであれば外注加工費であり、自社が保有する設備などに組み込まれて顧客に所有権が移転しなければ機械装置費である、というのが一応の区別である。

 だが、困るのは、ソフトウェア開発を外注した場合である。例えば、顧客に何らかのWebサービスを提供するために、自社サーバ内に格納するアプリケーションをスクラッチで開発してもらったとする。顧客はWebを通じてそのアプリケーションを利用するものの、アプリケーションの所有権はあくまでも自社に帰属したままである。したがって、先ほどの区別で言えば、アプリケーション開発は機械装置費となる。そのアプリケーションは、ほとんどその企業のサービスそのものなのに、全て機械装置費に計上して100%外注させることも可能なのである。

 ここで問題となるのは、ものづくり補助金には、「もっぱら企画のみに専念し、試作開発の実作業を第三者に丸投げする事業」(いわゆるファブレス)は補助対象外であると明示されていることである。その具体的な基準として、「外注加工費は経費総額の2分の1以下でなければならない」という規定がある。前述の例では、自社は設計だけで、開発を全て外部のITベンダーに任せている。それなのに、機械装置費と外注加工費の区別に従うと、ITベンダーに支払う報酬を全て機械装置費に計上することで、禁止規定をすり抜けて事実上ファブレスを行うこともできてしまう。

 こうした事態を回避するためには、外注加工費には、顧客に所有権が移転する製品に組み込まれるものの製作に加えて、顧客に一時的に使用権が発生する機械装置(ソフトウェアも含む)の製作も含めるとよい。ここで、こんなケースを考えてみよう。製造業向けに試験・検査サービスを提供している企業があるとする。この企業では、「顧客が自ら被測定物を持ち込み、この企業の設備を使って、試験・検査を顧客自身が実施する」というサービスを提供している。

 この企業が、新たな試験・検査装置を開発する際の部品組立を外部に委託する費用は何に該当するだろうか?ものづくり補助金における一般的な区分に従えば、機械装置費である。しかし、顧客に試験・検査装置の使用権が一時的に発生することを踏まえると、外注加工費に計上するのが適切ということになる。なお、この企業が部品を調達して自ら組み立てる場合は、部品代は原材料費に計上するのが適切である。

 平成26年度補正から新たに追加された「クラウド利用費」という費目も、話をややこしくしている。クラウド利用費とは、SaaS、PaaS、IaaSの利用料を指す。細かい話は抜きにして、ここで想定されているのは、「既に存在するWebアプリケーションを、自社サービス用にカスタマイズして、顧客に提供する」ようなサービスのことである。Salesforce.comは代表的なSaaSだが、中小企業向けのポータルサイトである「ミラサポ」はこのSalesforce.comをカスタマイズして提供されている。セールスフォース社に支払うカスタマイズ費や月額利用料がクラウド利用費に相当する。

 クラウド利用費には既存クラウドサービスのカスタマイズ費が含まれているために、先ほど見たような機械装置費と外注加工費の問題が生じる。つまり、ソフトウェアベンダーに開発を丸投げしても、その費用をクラウド利用費に全て計上することで、ファブレスを禁止する規定をすり抜けてしまうのである。ここでも、開発したアプリケーションの利用権が一時的に顧客に発生することから、カスタマイズ費を外注加工費に計上させるべきである(ちなみに、クラウドサービスの月額利用料は、原材料費に相当するだろうか?そもそも、ものづくり補助金の費目は、典型的な製造業を想定しているのに、ITサービスまでもカバーしようとしているところに無理がある気がする)。

2014年11月15日

「新ものづくり補助金(中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業)」の運用改善に関する私案


 平成25年度補正予算「新ものづくり補助金(中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業)」は、昨年の「ものづくり補助金(ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金)」に比べ、細かいルールがいくつも追加されて、非常に複雑になった印象を受ける。ただ、枝葉末節にこだわりすぎて、制度の本来の目的から逸れているのではと感じることもある。

 ものづくり補助金の元々の目的は、「中小企業が自ら主体的に新しい試作品を開発し、その機能・性能を客観的に評価する取り組みをサポートすること」であると解釈している。今日の記事では、私の周りで採択企業を支援している中小企業診断士からいろいろとうかがった話をベースに、本来の目的に立ち返って制度の運用を改善できそうなポイントを列記してみたいと思う。もっとも、来年度もまたこの手の補助金があるかどうかは解らないのだが・・・。

 (1)設備投資型
 新ものづくり補助金、ものづくり補助金ともに、マシニングセンタなどの機械装置を購入するだけの「設備投資型」という類型がある。アマダやキーエンスといった工作機械メーカーは、中小企業が補助金を活用して自社の製品を買ってくれるよう、かなり積極的な営業攻勢をかけているという。ただ、個人的には、この類型がどうして認められているのか不思議に思うところがある。

 というのも、公募要項などには、「主たる技術的課題の解決方法そのものを外注または委託する事業」は補助対象外と明記されている。そして、この要件を金額面から具体化したルールとして、「外注加工費と委託費の合計が補助対象経費総額の2分の1を超えてはならない」と定められている。ところが、機械装置の購入は、言い換えれば加工技術を外部から購入することであり、このルールをすり抜けて技術的課題の解決を外部に丸投げしているようにも見えてしまう。

 後述する「設備投資+試作開発型」や「試作開発のみ型」では、機械装置費以外に、原材料費、直接人件費、外注加工費、委託費、専門家謝金など多くの費目があり、それぞれの費目に関して実際にかかった経費のエビデンスを揃えると、下のような分厚いキングファイルが必要になる。ところが、「設備投資型」の場合、必要なのは機械装置費だけであり、しかも購入点数が1点だけであるから、揃えるべき証憑類も非常に少なくて済む。それなのに、「設備投資+試作開発型」などと同じ金額の補助金がもらえるというのも、何だか不公平な気がする。

キングジム キングファイル G A4 タテ 400枚 974N グレーキングジム キングファイル G A4 タテ 400枚 974N グレー

キングジム

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 実際には、工作機械を買うといっても、機械メーカーの標準カタログを見て、「これをください」と注文するだけでは済まない。自社の製品や製造ラインの特性に合わせて、カスタマイズを依頼するのが普通である。工作機械を導入すると、メーカーの技術者が操作方法をトレーニングしてくれるが、社員は教えられた通りに使うだけでは不十分だ。自分の業務に合わせて操作方法を工夫し、オリジナルのマニュアルを作成する。トヨタではよく、「カタログエンジニアにはなるな」と言われる。カタログに書いてある通りの使い方しかできない技術者にはなるな、という意味である。

 そして、当然のことであるが、新しい機械を使って何種類かの試作品を作り、機械の性能を評価するはずである。その際には、新しい治具やバイトなどの道具も開発する必要もあるだろう。こうした機械装置の導入に関する一連のプロセスを踏まえると、単に購入関係の書類だけではなく、例えば以下の書類も追加で提出を要求してはどうだろうか?そうすれば、提出書類のボリュームも多くなり、他の類型との不公平感も多少は緩和されるに違いない。

 ・機械メーカーに依頼したカスタマイズの仕様書。
 ・機械メーカーが作成した、特注部分に関する図面、仕様書、操作マニュアル。
 ・自社で作成したオリジナルの操作マニュアル。
 ・機械装置導入前後の製造プロセス比較図。
 ・機械装置で製作した試作品の図面、写真、品質評価の結果。
 ・新たに開発した治具やバイトなどの道具の図面、写真。

 (2)設備投資+試作開発型、試作開発のみ型
 この類型は、「設備投資型」とは違って原材料費など多くの費目があり、証憑類を揃えると膨大な量になることは先ほど述べた。特に、直接人件費が大変であり、賃金台帳、給与明細、週報、出勤簿、源泉税納付書、会議の議事録、作成した図面など、ありとあらゆる書類の提出が求められる。購入したモノが物理的に残る原材料などと異なり、直接人件費の場合は補助金が何に使われたのかが解りにくく、しばしば不正が起きることから、ルールが厳しくなっていると思われる。

 補助金のことをよく知っている中小企業は、面倒な直接人件費を外して、例えば「原材料費+機械装置費+外注加工費」といったパターンで申請してくるそうだ。ただ、これも「中小企業が自ら主体的に新しい試作品を開発し」ていると言えるかどうか怪しい部分がある。技術的課題の解決はほとんど外部のメーカーに委ねられており、自社は仕入れた部品を組み立てるだけであれば、主体的に試作品を開発しているとは言い難い。

 普通に試作品開発をしていれば、原材料の品質を評価したり、社内で部品を加工したり、外注先に提出する図面を引いたりと、必ず直接人件費が発生するはずである。仮に自社では組立しかしないとしても、その組立工程に何らかの重要な技術的課題があって、その課題の解決のために直接人件費が発生する、というのでなければおかしい。パソコンメーカーのデルは自社では組立しかやらないが、組立技術の開発に注力しており、特許もたくさん取得している。

 「設備投資+試作開発型」、「試作開発のみ型」の場合は、その企業が主体的に試作品開発を行っているという意思表示をさせるために、直接人件費を必須としてはどうだろうか?

《追記》
 本論からは逸れるが、直接人件費の申請にはリスクが伴うことを指摘しておく。中小企業の場合、社会保険に未加入、もしくは加入しているが保険料が未払いというケースがよくあるが、そのような企業は補助金が受けられないと言われている。就業規則がない企業も同様である。また、提出されたタイムカードを見ると、非常に多くの時間外労働が見られるにもかかわらず、給与明細上では残業代が支払われていない場合も、国から何らかの指導が入る可能性がある。法律違反を犯している企業には補助金を支給できない、というわけだ。

 (3)革新的サービス型
 新ものづくり補助金で追加された「革新的サービス型」は、サービスの範囲が広すぎて、何が革新的サービスなのかは私もよく解っていない(汗)。特に問題となるのが、サービスの評価をどのように行うか?である。前述のように、この制度での試作品開発には「機能・性能を客観的に評価する」ことも含まれる。製造業であれば、自社にある測定機などを使って品質評価を行うだろうし、産業技術研究センターのような外部の公的機関に評価を依頼することもできる。

 ところが、サービスは評価が非常に難しい。サービスの生産と消費が分離している場合、例えばソフトウェア開発であれば、完成したソフトを社内のテスト仕様書に従ってテストした結果が出るので、製造業と同様に客観的な評価をしたと言えるだろう。困るのは、サービスが生産されると同時に消費されるケースである。例えば、新しいヘッドスパサービスを提供するために頭皮マッサージ機器を導入し、社員が新しいマッサージの施術方法を習得したという場合、サービスの品質をどうやって測定すればよいのだろうか?

 結局のところ、そのようなサービスを評価するのは顧客でしかない。新ものづくり補助金は、あくまでも試作開発に対する補助金であり、テスト販売は例外的にしか認められていない。しかし、サービスの場合は、サービスの評価も責任を持って実施させるために、テスト販売をむしろ必須にすべきだと思うのである(ただし、テスト販売を通じて得られた収益は補助金から減額する)。公募の段階でテスト販売を事業計画書に盛り込み、補助事業終了時の報告書にはテスト販売の結果(売上・収益と顧客の声)を入れるようにする。

 現在の「革新的サービス型」の報告書は、経営革新計画に倣った5か年計画(経常利益、付加価値額の伸び)を記載するようになっている。しかし、そのような長期的・マクロなプランよりも、もっと足下のミクロな数字を重視した方がいいのではないだろうか?




  • ライブドアブログ
©2012-2017 free to write WHATEVER I like