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販売チャネルの的確性判断(後半)―『市場開拓、開発テーマ発掘のための マーケティングの具体的手法と経験事例集』
販売チャネルの的確性判断(前半)―『市場開拓、開発テーマ発掘のための マーケティングの具体的手法と経験事例集』
【ドラッカー書評(再)】『創造する経営者』―事業を製品別ではなく、顧客別に分析する方法を提案したい(2)

プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2013年08月02日

販売チャネルの的確性判断(後半)―『市場開拓、開発テーマ発掘のための マーケティングの具体的手法と経験事例集』


bookc_1725市場開拓、開発テーマ発掘のための
マーケティングの具体的手法と経験事例集
~『隠れたニーズ』を見つけ出し、『売れる仕組み』を作るには~

(発刊:2013年7月31日、体裁:A4判 約720頁、定価:99,750円(税込))

 (前回の続き)

1.1.3 (C)販売チャネルと中長期的なリレーションが構築できているか?
 (9)ケイパビリティ(組織能力)の補完度合い
 メーカーの製品が提供するベネフィットは、メーカーの力だけで完結するとは限らず、販売チャネルのケイパビリティを借りることで完結することがある。例えば、鮮度が命の生鮮食品の場合、いくらメーカーが鮮度の高い生鮮食品を出荷していても、食品スーパーが店頭に古い食品を陳列していれば、ベネフィットは失われる。この場合、食品スーパーには適切な在庫管理と発注管理の仕組みが備わっている必要がある。同様に、簡単な操作性が売りの産業用機器をメーカーが提供しているのに、販社の営業担当者の製品説明が分かりにくいものであれば、やはりベネフィットは失われる。この場合、販社には的確な製品説明ができる人材が備わっていなければならない(※1、2)。

 (10)組織的な価値観の共有度合い
 価値観とは、組織の優先順位を表す。この価値観がメーカーと販売チャネルでしっかりと共有されているほど、両者の関係は良好であると言える。反対に、価値観が異なると、両者の間で深刻な対立を招くことがある。例えば、メーカーは品質を重視しているのに、販売チャネルは品質よりも低価格を重視している場合、メーカーが意図しない価格競争に巻き込まれて、ブランド価値が失われる危険性がある(※1)。

 (11)担当者同士の信頼関係
 メーカー、販売チャネル双方の担当者の人間的な信頼関係も重要な指標である。単にメーカーから販売チャネルに製品を提供するだけの関係にとどまらず、メーカーの担当者が販売チャネルの担当者に対し、当該製品の売上が伸びるような販売促進策を積極的に提案できる関係が望ましい。例えば、メーカーの担当者は量販店の担当者に対して、効果的な棚割りやエンド企画の提案を行ったり、POSデータの分析結果を示したりすることで、信頼関係を構築することができる(※3)。また、嘘をつかない、約束を守る、相手を騙さないといった、ビジネスパーソンとしての基本的な行為の積み重ねも信頼関係を大きく左右する。そして、担当者同士の信頼関係は、中長期的な取引にとってプラスに作用する(※4)。

 (12)キーパーソン同士のリレーション
 担当者レベルでのリレーションに加えて、メーカー、販売チャネル双方のキーパーソンレベルでのリレーションも中長期的な取引のカギを握る。例えば、メーカーが新製品を開発した場合、量販店向けに発表会を開催するが、仕入れの直接担当者であるバイヤーはもちろん、その上司である商品部長なども招待することが重要であると言われる。また、メーカーと量販店の営業本部長や役員が定期的に会合を開き、市場動向を展望したり、相互の企業理念や経営姿勢を説明しあったりしながら、より密接な関係構築を行うことも有効である(※3)。このように、キーパーソン同士のリレーションが強固であれば、お互いを戦略上のパートナーとみなして取引を継続することが可能になる。

1.2 指標のスコアに応じた対応策
 各販売チャネルについて、(1)~(12)の指標をそれぞれ5段階評価で定量化し、「(A)販売チャネルがポテンシャルの高い市場を持っているか?」、「(B)販売チャネルが自社製品を積極的に販売してくれているか?」、「(C)販売チャネルと中長期的なリレーションが構築できているか?」という3つの視点別に合計スコアを算出する。その高低の組み合わせによって、下図の通りⅠ~Ⅷの8パターンが導かれる。各パターンに対するメーカーとしての対応策の一例を以下に示す。

 【パターンⅠ】・・・(A、B、C)=(高、高、高)
 大口の販売チャネルと理想的な関係が構築できている状態である。パートナーとしての関係を継続する。

 【パターンⅡ】・・・(A、B、C)=(低、高、高)
 販売チャネルのビジネス拡大が見込める場合は、現在の良好な関係を活かし、販売チャネルのマーケティング戦略や販売計画の立案、販促活動などを支援する。そうでない場合は現状維持とする。

 【パターンⅢ】・・・(A、B、C)=(高、低、高)
 販売チャネルのポテンシャルを活かせていない状態。現在の良好な関係を活かし、販売チャネルにおける自社製品の売上高が伸びるよう、販売チャネルのマーケティング戦略や販売計画の立案、販促活動などを支援する。

 【パターンⅣ】・・・(A、B、C)=(高、高、低)
 販売チャネルのポテンシャルも大きく、メーカーへの貢献度も大きいが、販売チャネルとの関係が悪化すると一気に売上高が落ち込むリスクがある。よって、会社を挙げて関係強化に注力する必要がある。

 【パターンⅤ】・・・(A、B、C)=(低、低、高)
 小口の販売チャネルと良好な関係が構築できている場合はこのパターンに該当することが多い。現在の関係を維持しつつも、メーカーの利益を圧迫しないよう、効率的に販売チャネルを支援する方法を検討する。

 【パターンⅥ】・・・(A、B、C)=(高、低、低)
 販売チャネルのポテンシャルを活かせていない上に、販売チャネルとのリレーションも希薄な状態である。まずは関係構築を図り、販売チャネルにおける自社製品の売上高が伸びるよう、販売チャネルのマーケティング戦略や販売計画の立案、販促活動などを支援する。

 【パターンⅦ】・・・(A、B、C)=(低、高、低)
 メーカーの売上高・利益面における販売チャネルへの依存度は大きいが、販売チャネルは当該製品分野をあまり重視していない場合はこのパターンに該当する。販売チャネルのビジネス拡大が見込めるならば、まずは関係構築を図り、販売チャネルの販売計画立案・販促活動などを支援する。そうでない場合は、販売チャネルが自社製品の取扱いを中止するケースを想定して、他のパターンの改善により売上高・利益の減少リスクを補う。

 【パターンⅧ】・・・(A、B、C)=(低、低、低)
 販売チャネルのポテンシャルも小さく、メーカーへの貢献度も低いため、撤退を検討する。

 メーカーはそれぞれの販売チャネルがⅠ~Ⅷのどのパターンに属するかを判定し、Ⅰ~Ⅷのパターンに会社としての優先順位をつけて、販売チャネルとの関係改善を図ることが重要である。


《参考文献》
(※1)渡辺達朗、久保知一、原頼利編『流通チャネル論 新制度派アプローチによる新展開』(有斐閣、2011)

流通チャネル論 -- 新制度派アプローチによる新展開流通チャネル論 -- 新制度派アプローチによる新展開
渡辺 達朗

有斐閣 2011-11-12

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(※2)スティーブン・ウィーラー、エバン・ハーシュ『チャネル競争戦略』(東洋経済新報社、2000)

チャネル競争戦略チャネル競争戦略
スティーブン ウィーラー エバン ハーシュ Steven Wheeler

東洋経済新報社 2000-10

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(※3)住谷宏編『大転換期のチャネル戦略』(同文舘、1992)

大転換期のチャネル戦略大転換期のチャネル戦略
チャネルマネジメント研究会

同文舘出版 1992-04

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(※4)住谷宏『利益重視のマーケティング・チャネル戦略』(同文舘、2000)

利益重視のマーケティング・チャネル戦略利益重視のマーケティング・チャネル戦略
住谷 宏

同文舘出版 2000-09

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2013年08月01日

販売チャネルの的確性判断(前半)―『市場開拓、開発テーマ発掘のための マーケティングの具体的手法と経験事例集』


 100名超(!)の著者による共著ですが、7月31日(水)に株式会社技術情報協会より私の処女作が出版されました。出版社の担当者から許可をいただいて、私が執筆した部分をブログにて公開いたします。

bookc_1725市場開拓、開発テーマ発掘のための
マーケティングの具体的手法と経験事例集
~『隠れたニーズ』を見つけ出し、『売れる仕組み』を作るには~

(発刊:2013年7月31日、体裁:A4判 約720頁、定価:99,750円(税込))

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1. 販売チャネルの的確性判断
 販売チャネルは、メーカーに代わって販売活動を行う組織である。新製品を大量に販売したいメーカーは、できるだけ多くの販売チャネルを活用したいと考えるが、販売チャネルを構成するメンバーが多くなればなるほど、メーカーが意図する製品のベネフィットが顧客企業や消費者に正確に伝わらなかったり、販売チャネルが安易な低価格競争を広げてメーカーの利益を損なったりすることがある。逆に、販売チャネルのメンバーを絞れば、メーカーによるコントロールは容易になるものの、潜在的な販売チャンスを逃す可能性があるし、また特定の販売チャネルの業績が急激に悪化すると、メーカーもその影響を強く受けることになる。以上の点から、メーカーは自社のマーケティング戦略に合致した販売チャネルのメンバーを適切に選定する必要がある。

1.1 的確性を判断する指標
 メーカーにとってよい販売チャネルとは、「ポテンシャルの高い市場に対して、中長期的に自社製品を積極的に販売し続けてくれるチャネル」である。ここでは、「(A)販売チャネルがポテンシャルの高い市場を持っているか?」、「(B)販売チャネルが自社製品を積極的に販売してくれているか?」、「(C)販売チャネルと中長期的なリレーションが構築できているか?」という3つの観点から、自社の各販売チャネルが前述の要件を満たすかどうかを判断する指標の例を示す。メーカーはこれらの指標を用いて、各販売チャネルの的確性を継続的にモニタリングするとよい。なお、販売チャネルのメンバーの数が多い場合は、業態や地域などが類似する販売チャネルをグルーピングして分析する。

1.1.1 (A)販売チャネルがポテンシャルの高い市場を持っているか?
 (1)メーカーのターゲット市場と販売チャネルのターゲット市場の適合度合い
 当然のことながら、メーカーが出す新製品のターゲット市場は、販売チャネルのターゲット市場に含まれていなければならない。例えば、メーカーが「20代独身世帯向け家電」を出す場合は、20代独身世帯をターゲット市場に含む販売チャネルを選定すべきである。

 (2)販売チャネルのターゲット市場の規模
 先ほどの「20代独身世帯向け家電」の例で言えば、販売チャネルの商圏における「20代独身世帯向け家電」の市場規模を算出する。必ずしも正確な金額を求める必要はなく、商圏の世帯構成や家計支出に関するデータなどから大まかに推測すればよい。市場規模が大きければ、当該販売チャネルはメーカーにとって魅力的である。

 (3)販売チャネルのターゲット市場における販売チャネルのシェア
 (2)で求めた市場規模に対する販売チャネルのシェアを算出する。これも概算でよく、販売チャネルから販売実績データなどを提供してもらい、大まかに推計する。シェアが大きければ、当該販売チャネルはメーカーにとって魅力が高い。

 (4)販売チャネルのターゲット市場規模やシェアの成長率
 (2)(3)は現時点の瞬間風速的な数値であるが、加えて過去の推移や将来の見込みも算出できると望ましい。販売チャネルのターゲット市場の規模が将来的に伸びそうな場合、あるいは、過去数年のうちに販売チャネルが市場シェアを急速に伸ばしている場合、メーカーは当該チャネルを押さえておくべきだろう。

1.1.2 (B)販売チャネルが自社製品を積極的に販売してくれているか?
 (5)販売チャネル別売上高に占める当該販売チャネルの割合
 メーカーの売上を販売チャネル別に分析し、販売チャネルの割合を算出する。この値は、会計システムや販売管理システムなどの社内情報システムを活用すれば、正確に求められる。売上高に対する貢献度が高い販売チャネルは、メーカーにとって魅力的である。

 (6)販売チャネル別利益に占める当該販売チャネルの割合
 メーカーの売上だけでなく、利益も販売チャネル別に分析する。(5)と同様、社内情報システムを用いて算出することになるが、その際にはメーカーの販促費を各販売チャネルにどのように割り振るのか、社内ルールを決めておく。分析の結果、売上高に占める割合は高いが、メーカーからのプロモーションの支援や人的サポートなどのコストがかかり、利益を圧迫している販売チャネルの存在が判明するかもしれない。逆に、売上高に占める割合は低いものの、メーカーからの手厚い支援を受けなくても効率的に販売してくれる結果、利益貢献度は高い販売チャネルの存在も分かる。

 (7)販売チャネル別売上高・利益に占める当該販売チャネルの割合の成長率
 (5)(6)は現時点の瞬間風速的な数値であるが、加えて過去の推移や将来の見込みも算出できると望ましい。将来の見込みを推計するにあたっては、各販売チャネルの中期経営計画や販売計画を、メーカーと販売チャネルの間で共有する必要がある。

 (8)販売チャネルからのフィードバックの密度
 販売チャネルはメーカーに代わって販売活動を行う組織であると同時に、顧客企業や最終消費者に代わって購買活動を行う組織でもある。したがって、顧客企業や最終消費者の要望や潜在ニーズについて、メーカーが知らない情報を販売チャネルが把握していることもある。そのような情報を頻繁にメーカーにフィードバックしてくれる販売チャネルは、メーカーにとって魅力的である。メーカーは、こうしたフィードバックに基づいて既存製品を改良したり、新製品開発のヒントを得たりすることができる。

 (続く)

2012年05月08日

【ドラッカー書評(再)】『創造する経営者』―事業を製品別ではなく、顧客別に分析する方法を提案したい(2)


創造する経営者 (ドラッカー名著集 6)創造する経営者 (ドラッカー名著集 6)
ピーター・F・ドラッカー 上田 惇生

ダイヤモンド社 2007-05-18

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 前回の続き。『創造する経営者』のレビューは今回で最後。結局、この本だけで記事が8本に(汗)。

 以下に、ユニバーサル・プロダクツ社の事例をベースに、チャネル別分析のラフな例を作ってみた(また手書きでスミマセン)。この例では、チャネルを3タイプに分けており、チャネルごとに異なる顧客価値を定義している。チャネルと顧客価値の整理を終えたら、各チャネルの潜在的な市場規模を推計し、自社のシェアを計算する。潜在的な市場規模は、その顧客価値を求めている人たちがどの程度の規模で存在するか?そして、顧客価値を構成する製品・サービス群に対して、その人たちがどのくらいのお金を使うか?を推測することで導かれる。最後に、それぞれのチャネルについて、各製品・サービスの売上と利益を計算し(利益の計算にあたっては、ABC会計の考え方を用いる)、製品・サービス別の利益率を算出する、という流れになる。なお、製品A~Gは発売時期が新しい順に並んでいる。

顧客別(チャネル別)の業績分析

 この分析から解るのは、あるチャネルでは「明日の主力製品」でも、別のチャネルでは明日が来そうにない製品であったり、あるチャネルにおける「昨日の主力製品」が、別のチャネルでは「今日の主力製品」になっていたりする、ということである。上図の例で言えば、大規模チャネルにおける製品Bは、製品Aに比べてあまり販促費をかけていない新製品にもかかわらず、売上高も利益率も高いことから「明日の主力製品」の候補になりうるのだが、中規模チャネルでは製品Bが足を引っ張る存在になっているかもしれない。逆に、大規模チャネルではそれほど業績が芳しくない一昔前の製品群である製品CとDが、中規模チャネルでは「今日の主力製品」として利益の稼ぎ頭になっていることも考えられる。

 また、製品FとGは、大規模チャネルでも中規模チャネルでも売れ行きが思わしくなく、回転率の低さがコスト高を招いて赤字につながっている「昨日の主力製品」なのに、小規模チャネルにおいては「今日の主力製品」として、異常に高い利益率をたたき出していることもあり得る。残った製品Eは、どのチャネルでも利益が出ていないことから、製品Eこそ「昨日の主力製品」として再整理の筆頭候補にするべきかもしれない。

 以上の示唆とチャネル別の市場規模・自社のシェアを踏まえると、例えば、

 ・中規模チャネルは大規模チャネルに匹敵する市場規模があるから、もっと中規模チャネルに注力する。今の中規模チャネルに欠けている「明日の主力製品」を生み出すことで、中規模チャネルにおけるシェアを大規模チャネル並みに引き上げることを目指す。
 ・小規模チャネルは市場規模こそ小さいものの、特定の製品が受け入れられる傾向が強いため、製品の取捨選択を行い、ニッチ市場におけるリーダーの地位を狙う。そして、安定的に利益を稼ぎ出せる基盤とする。

などといった戦略的な方向性が見えてくる。こうした分析結果は、全社単位で製品・サービスの業績分析を行った場合には見えてこないものである(もっとも、この例はかなり都合のいいように私が作ったケースなので、ストーリーとしてはできすぎているわけだが・・・)。

 ここでもう1つ注目しなければならないのは、前回の記事で書いた通り、顧客は複数の異なる製品・サービスをセットにして”ソリューション”として購入する、という点である。したがって、顧客はどのような製品・サービスの組合せを購入しているのかも分析する必要がある。製品単独で見ると利益率は低いものの、別の高利益製品とセットで購入されることが多い製品は、利益の”呼び水”として重視すべきであろう(小売業におけるいわゆる「ロスリーダー」のことであるが、メーカーでも通用する考え方だと思う)。

 上図の例で言うと、大規模チャネルにおける製品Aは利益率が低いが、この製品があることによって利益率の高い製品Cが売れているのであれば、製品Aの利益を多少犠牲にしてでも、製品Aに注力すべき理由がある(家電メーカーがあれだけ液晶テレビで大赤字を出しているにもかかわらず、液晶テレビからなかなか手をを引けないのは、家電量販店に自社ブランドの液晶テレビがないと、消費者が来店して別の自社ブランド製品を買ってくれないと考えているのも一因かもしれない。果たして本当に、液晶テレビがないと消費者はそういう購買行動をしないのかどうかは別として・・・)。

 さらにもう1つ考えなければならないのは、チャネルが競合他社の製品を扱っている場合、自社の製品とセットで他社の製品も購入されている可能性である。チャネルから競合他社の製品を含む売上データを入手することは困難であるけれども、もしそれができるのであれば、分析してみる価値はあるだろう。利益率が高い自社製品とセットで他社製品がよく売れているならば、その製品の戦略的な重要度は考えものである。また、利益率が低い自社製品が他社製品と一緒に買われているならば、敵に塩を送っていることになるから、すぐに取扱量を減らすべきかもしれない。

 以上、全社単位で製品別に業績を分析する方法に代わって、「事業の目的は顧客の創造である」というドラッカーの格言に従い、その目的の達成度合いを測るために、顧客別に業績を分析する方法を簡単にまとめてみた。もっとも、この記事を書きながら本書をよく読んでみたら、ドラッカーは杓子定規に全ての「暫定的な診断」を製品単位で行うべきだと主張しているわけではないことが解った、というオチがあるのだが(苦笑)。
 大規模小売店舗の場合は、顧客の消費行動の分析から入るべきかもしれない。よく行われている商品別の分析では、あまり多くは明らかにされない。金融のスーパーマーケットである金融機関の場合も、金融サービス別の分析ではなく、顧客の分析から入るべきであろう。
 ドラッカーはこうした分析を例外的なケースとして扱っているようだけれども、現在ではむしろこうした分析の方が主流となるべきではないか?というのが私の考えである。

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