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補助金にふさわしいと思う中小企業の3条件
「平成27年度補正ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金)」申請書の書き方(細かい注意点)
【ベンチャー失敗の教訓(第14回)】目的なきIPO(Initial Public Offering:株式公開)

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2017年03月15日

補助金にふさわしいと思う中小企業の3条件


地震計測器

 中小企業診断士という仕事柄か、補助金・助成金(以下、単に補助金とする)を受けたことがある中小企業を見学させていただく機会が増えた。もう何年も前のことだが、訪問企業の中にこんな中小企業があった。この中小企業は、地殻のひずみを測定する「ひずみ計」という機器を製造している。ひずみ計は微細な地殻変動をとらえ、地震を予知するのに使われる。精度が高いひずみ計になると、1億分の1~10億分の1ミリというひずみを測定することができる。

 一般的なひずみ計の原理はシンプルである。円筒状の金属にオイルを満たし、地中深くに埋める。地殻が変動すると、金属が押されることによってオイル面が上昇する。その上昇幅でひずみの大きさを測定するというわけである。ところが、この形態のひずみ計を設置するためには地下1,000mほどの穴を掘る必要があり、ボーリングだけで1億円以上かかる。また、オイル面の上昇幅しか測定しないため、円筒がどの方向から押されたのか解らないという問題もあった。

 そこでこの企業は、地下500mほどでも測定可能なひずみ計の開発を行った。また、地殻変動の方向を把握するために、円筒状の金属の中にオイルを入れるのではなく、小型のひずみ感知器を十字型に配置することとした。これで4方向の地殻変動を測定できるようになる。この企業は、新型のひずみ計の開発のために補助金を活用していた。

 東日本大震災以降、地震予知の研究は活発になっているのかと思いきや、全くの逆方向に動いているそうだ。気象庁は毎年、全国に設置されているひずみ計のリプレースのために概算要求を出しているのだが、財務省との予算折衝の過程で削られてしまうらしい。大学の地震研究の予算も同じように減少傾向にある。そのため、地震学科を廃止する大学が増えている。削られた予算はどこに向かっているのかというと、被災地の復興や原発の安全対策、津波防止などに振り向けられている。地震予知のような基礎研究には、予算がつきにくいのが現状である。

 補助金は資金調達の一手段である。ただし、以前の記事「【補助金の現実(2)】補助金の会計処理は、通常の会計処理よりはるかに厳しい」でも書いたように、補助金は書類作成が非常に大変であり、使途も厳しく限定される。よって、金融機関から借り入れることができるなら、はっきり言ってそれに越したことはない。借入が難しいということは、金融機関からその企業はリスクが高すぎると判断されたことを意味する。そういう企業に対して、補助金という公的資金を投入するのは、公的資金を投じてでもその企業を存続させたいそれなりの理由があるからである。

 それなりの理由とは、私なりに考えると3つある。第一に、事業化のハードルは高いが、事業化に成功すれば一定の市場規模が確保できるような、イノベーティブなアイデアを持っていることである。別の表現をすると、現時点では潜在顧客が対価を支払うほど市場が成熟していないものの、製品・サービスのよさが認められれば、市場が一気に開ける可能性がある、ということだ。要するに、製品ライフサイクルの極めて初期段階にあるアイデアのことを指す。

 上記のひずみ計の例で言えば、今は地震研究に対する逆風で市場が冷えている。しかし、地震予知の必要性は多くの人が認めるところであり、政治的な風向きが変われば再び市場が広がるかもしれない。こういう事業はいわばイノベーションの卵であり、金融機関はリスクが高いと判断して融資に消極的になる。その代わりに、補助金がリスクマネーを提供する役割を担う。

 公的資金を投じてでも保護したい中小企業とは、優れた技術・ノウハウなどの蓄積がある企業であろう。これが補助金の要件の2つ目だ。企業が公器であるとすれば、企業が持つ技術などは社会的な資産である。せっかく価値ある資産を持っているのに、企業の倒産によってそれが消えてしまえば、社会にとっても大きな損失となる。したがって、補助金がそれを阻止する。

 前述のひずみ計製造の中小企業は、1億分の1~10億分の1ミリというひずみに反応する感知器を製造する技術や、地中深くで取得したデータを地上まで転送し解析する技術などを持っている。このような技術は、単に難易度が高いだけでなく、地殻変動の測定以外の分野にも応用できる可能性があると思う。だから、仮にこの企業が経営不振に陥ってその組織能力が失われるとしたら、非常にもったいないことであるに違いない。

 金融機関は、理由がどうであれ財務状況が悪化した企業にはなかなか融資しない。それをカバーするのも補助金の役割である。だが、慢性的に財務状況が悪い企業に補助金を投入するのは、単なる延命措置にすぎない。補助金が有効なのは、一時的な経営悪化によって一時的に資金繰りが苦しくなっている企業である。さらに言えば、経営悪化の原因を適切に把握していることが必要だ。業績不振の原因を外部環境のせいにせず、内部環境の面から自己分析している企業であれば、補助金を使って経営を立て直せるかもしれない。これが3つ目の要件となる。

 ご紹介した中小企業の経営者は、気象庁に予算がつかない影響で経営が苦しいとこぼしていた。ただ、財務諸表を見せてもらうと、実はかなりの内部留保がある。だから、本当は補助金に頼らなくてもやっていけた可能性がある。優れた技術・ノウハウの蓄積がありながら、一時的な経営不振で資金難に陥っており、イノベーティブなアイデアで巻き返しを図ろうとする別の中小企業に補助金を回した方が効果的だったかもしれない。

 中小企業向けの補助金については、審査ポイントが公募要領などで全て公開されている。いくつかの公募要領を見てみると、1つ目の要件であるイノベーティブなアイデアの有無に関しては、たいてい審査対象となっている。ところが、2つ目の要件である優れた技術・ノウハウなどの蓄積については、どこまで突っ込んだ審査が行われているのかやや不明である。

 補助金に限らず中小企業の経営者とお話をさせていただく中で私が感じるのは、中小企業は意外と自社の競合他社がどこなのか知らない、ということである。優れた技術・ノウハウとは、一言で言えば強みである。だが、企業経営における強みとは、競合他社との比較で相対的に判定される。「我が社はこれが強い」といくら声高に言っても、自社が勝手にそう評価しているだけでは意味がない。補助金の審査においては、申込企業が競合他社を特定できているか?競合他社と自社の組織能力を定量的/定性的に比較できているか?その上で、自社の強みを明確にしているか?といった点を見るべきだと思うが、果たして十分に審査されているだろうか?

 3つ目の要件、すなわち、一時的な経営不振で一時的に資金繰りが逼迫しているが、経営不振の原因を適切に自己分析できているという点については、私が知る限り審査の対象になっていない。むしろ、以前の記事「とある中小企業向け補助金の書面審査員をやってみて感じた3つのこと(国に対して)」で書いたように、資金繰りが安定していることの方が高く評価される。

 もちろん、慢性的に資金難の企業は、補助金を受け取ってもその後の事業が続かないリスクがあるため、資金繰りを重視したくなる理由も解る。しかし、資金繰りが安定しているのであれば、何も面倒な補助金に頼らず、金融機関から借入をすればよい。私は、慢性的に資金難の企業に補助金を与えよと言いたいわけではない。繰り返しになるが、それでは中小企業の延命策になってしまう。あくまでも、一時的に資金難に陥っている企業を対象にした方がよいと考える。

 かつ、経営不振の原因を他責的ではなく自責的に分析できていることが望ましい。他責的な企業は、同じような環境変化が起きると再び経営不振に陥る。こういう企業に補助金を与えると、経営が苦しくなったら補助金に頼ればよいという依存症に陥る。そうではなく、経営不振の原因を自責的にとらえ、前向きに組織学習できている企業の方が、補助金にふさわしい。「今回だけは補助金を利用するが、今後は経営不振の教訓を生かして、補助金に頼らず安定的・持続的な経営を目指す」という企業こそ、補助金を最も有効に活用してくれるだろう。

2016年02月07日

「平成27年度補正ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金)」申請書の書き方(細かい注意点)


工場

 平成29年度補正予算「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業補助金」の申請書の書き方に関する記事を公開しました。ご参考までに。

 ものづくり補助金(平成29年度補正予算)申請書の書き方(1)(2)
 2016年2月5日(金)より、「平成27年度補正ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金)」の公募が開始された。公募要領に「革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセス改善を行う中小企業・小規模事業者の設備投資等を支援」すると書かれている通り、今回のものづくり補助金は従来と異なり、設備投資に対する補助が中心である。試作開発を行いたい場合は、下記の「小規模型」を選択する。なお、この「小規模型」は、対象が小規模事業者(商業・サービス業では従業員5人以下、製造業その他では従業員20人以下)に限定されるということではなく、補助金の額が小規模であるという意味である。

 事業類型 補助対象経費 補助率 補助上限額
 (下限額)
 一般型 機械装置費
 技術導入費
 運搬費
 専門家経費
 補助対象経費の
 3分の2以内
 1,000万円
 (100万円)
 小規模型 機械装置費
 原材料費(※)
 技術導入費
 外注加工費(※)
 委託費(※)
 知的財産権等関連経費(※)
 運搬費
 専門家経費
 クラウド利用費(※)
 (※は設備投資のみの場合
 対象外)
 補助対象経費の
 3分の2以内
 500万円
 (100万円)
 高度生産性
 向上型
 機械装置費
 技術導入費
 運搬費
 専門家経費
 補助対象経費の
 3分の2以内
 3,000万円
 (100万円)

 今回新たに追加された「高度生産性向上型」は、「IoTなどを用いた設備投資」によって生産性を向上させる取り組みを支援するものである。「IoTなどを用いた設備投資」とは、「IoTを用いた設備投資」、「最新モデルを用いた設備投資」のいずれかを指す。「最新モデルを用いた設備投資」とは、各メーカーの中で、下記のいずれかのモデルを用いた設備投資を行うことを言う。

 ①一定期間内(機械装置:10年以内、工具:4年以内、器具:6年以内、ソフトウェア:5年以内)に販売が開始されたもので、最も新しいモデル。
 ②販売開始年度が取得などをする年度およびその前年度であるモデル(当該年度に販売が開始されたものであれば、その販売時期は問わない)。

 単に最新モデルの工作機械を導入するだけでも「IoTなどを用いた設備投資」に該当するわけで、これのどこがIoTなのか?と疑問に思うのだが、どうも役人の考えていることはよく解らない。

 募集期間は2月5日(金)~4月13日(水)(※当日消印有効)。採択結果の発表は6月中とされている。補助事業実施期間は、交付決定後から2016年12月31日(土)まで(小規模型の場合は2016年11月30日(水)まで)である。以前の記事「【補助金の現実(1)】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない」でも書いたが、採択後すぐに補助事業を開始できるわけではない。交付申請という2回目の審査を受ける必要がある。過去の事例からして、交付申請を行ってから交付決定が下りるまでには約1か月かかる。

 だから、採択後すぐに交付申請を行っても、補助事業が開始できるのは早くて7月中である。一方、補助事業の終了は12月31日(土)(小規模型の場合は11月30日(水))に設定されているから、今回は超短期決戦を覚悟しなければならない。とりわけ、小規模型で試作開発をする場合、使える時間はわずか4か月ほどである。この期間で試作品を完成させるのは至難の業だろう。だから、例えば試作開発プロジェクトを技術課題ごとに3つのフェーズに分けて、今回の補助金ではフェーズ1の達成を目標とするなど、一工夫が必要かもしれない。
 【重要な注意点】《2016年2月24日追記》
 上記の通り、今回は補助事業実施期間が非常に短い。だが、期間内に機械装置を購入して、代金を支払えばそれで十分というわけではない点には注意が必要だ。機械装置を導入した後、ある程度試運転を行い、新製品を製造する必要がある。そして、生産工程がどの程度短縮されたのか、品質や精度がどの程度向上したのかなど、定量的な成果を報告しなければならない。

 機械装置は発注から納品まで数か月かかるのが通常である。しかし、採択企業からの発注が特定の機械メーカーに集中した場合、納期が延びる恐れがある。すると、上記の補助事業期間中に機械装置が納入されないという、重大な問題が発生することも考えられる。機械メーカーとは事前に十分協議をすることをお勧めする。
 《参考記事》
 「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)(平成26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス革新事業」)(1)(2)(3)(4)(5)
 「新ものづくり補助金(平成25年度補正)」申請書の書き方(賃上げに関して)

 申請書の具体的な書き方については上記の過去記事を参考にしていただくとして、今回の記事では形式的な細かい注意点を整理しておきたいと思う。何分、非常に多くの応募が予想されるため、形式要件を満たさない申請書は足切りされることが十分に予想される。せっかく質の高い事業計画をまとめたのに、つまらないミスで不採択になるのは避けたいところだ。

 【様式1】
 ☑左上の宛先は、全国中小企業団体中央会と、書類を提出する都道府県の中小企業団体中央会の連名とする。
 ☑右上の受付番号は空白とする(受付番号は事務局が採番する)。
 ☑右上の日付は、平成28年4月13日以前とする。
 ☑応募者欄のうち、代表者役職・氏名の欄については、代表者役職を忘れずに記入する。
 ☑応募者欄の印は、角印ではなく代表者印とする。

 【様式2】 
 ☑平成24年度補正~平成26年度補正ものづくり補助金に応募したことがある場合は、その時の受付番号を記入する。応募したことがあるのに記入がない場合、虚偽記載となる。

 《(1)応募者の概要等》
 ☑法人の場合は、法人番号を忘れずに記入する。自社の法人番号が解らなければ、「国税庁法人番号公表サイト」で検索できる。
 ☑代表者の役職および氏名欄は、代表者役職を忘れずに記入する。
 ☑補助事業の実施場所が本社所在地と異なる場合は、「補助事業の実施が本社の所在地と異なる場合の実施場所」に住所を記入する。申請書の提出先は、補助事業の実施場所がある都道府県の中小企業団体中央会となる。なお、採択された後、交付申請の段階で補助事業の実施場所を変更することは、原則としてできない。仮にこれが許されてしまうと、採択率が都道府県によって若干異なっていることから、公募は採択率が高い都道府県で行い、交付申請時に採択率が低い都道府県に補助事業の実施場所を移す、といったことができてしまう。
 ☑主たる業種には、日本産業分類の中分類を記入する。必ず、「2桁の中分類コード+中分類名」という形式で記入する。
 ☑創業・設立日は、登記簿謄本の会社設立の年月日と一致させる。
 ☑株主等一覧表の右上の日付を、【様式1】の右上の日付(提出日)以前とする。
 ☑株主等一覧表の出資比率の合計が100%となるようにする。
 ☑役員一覧に記載する役員は、登記簿謄本と一致させる。監査役も忘れずに記入する。
 ☑経営状況表の数値は、損益計算書と一致させる。

 《(2)事業内容》
 ☑事業計画名、事業計画の概要は、採択後にHPで公表される可能性がある(過去の事例を見ると、事業計画名は公表されている)。審査員に伝わるよう解りやすく書く必要はあるものの、あまり具体的に書きすぎるとノウハウの流出につながる恐れもあるため注意する。
 ☑本事業で取り組む対象分野となる業種には、日本産業分類の中分類を記入する。必ず、「2桁の中分類コード+中分類名」という形式で記入する。(1)応募者の概要等で記入した業種=会社全体の業種と異なっていてもよい。
 ☑事業類型は、「一般型」、「小規模型(試作開発等)」、「小規模型(設備投資のみ)」、「高度生産性向上型(IoT)」、「高度生産性向上型(最新モデル)」の5つのうち1つだけを選択する。
 ☑事業計画は、補助事業単独ではなく、会社全体の数字で作成する。以下にサンプルを掲載した。余白に金額の単位を補記しておく。この表においては、経営革新計画に倣い、経常利益=営業利益-営業外費用で計算する(営業外収益は加算しない)。したがって、損益計算書の金額とは必ずしも一致しない。計算式が色々と複雑なため、フォーマット(Dropbox)を用意した。黄色セルを入力すれば、残りのセルは自動計算されるようにしてある。
ものづくり補助金事業計画(例)

ものづくり補助金事業計画(フォーマット)

 ☑革新的サービスの場合、付加価値額が年平均3%以上、経常利益が年平均1%以上増加するような計画とする。例えば5年計画の場合、5年後の付加価値額が直近期末に比べて3%×5年=15%以上、経常利益が直近期末に比べて1%×5年=5%以上増加していなければならない。
 ☑高度生産性向上型の場合、投資利益率(上表の4年後の列の一番下)が5%以上となるような計画とする(投資利益率=2年後~4年後の「営業利益+減価償却費」の増加額の平均÷1年後の設備投資額。設備投資額=本補助金によって導入予定の機械装置の価格)。
 ☑単に上表を完成させるだけでなく、数値の根拠を明記する(添付資料としても可)。

 《(3)これまでに補助金または委託費の交付を受けた実績説明(申請中の案件を含む)》
 ☑申請時点から過去5年間の補助金・委託費の実績を記入する。補助金・委託費の実績があるのに故意に記入しなかった場合は虚偽記載となる。

 《(4)経費明細表》
 ☑冒頭の表の通り、事業類型ごとに使用可能な費目が決まっているため、それ以外の費目は使用しない。
 ☑一般型、高度生産性向上型は、単価50万円(税抜き)以上の機械装置費が必須である。
 ☑高度生産性向上型(最新モデル)の場合、機械装置費に最新モデル以外の機械装置を含めてはならない(例えば、本体は最新モデルであるが、オプションが旧モデルの場合、オプションは補助対象とはならないので要注意)。
 ☑高度生産性向上型(最新モデル)の場合、ここで言う「モデル」とは、経済産業省関係産業競争力強化法施行規則で言うところの「型式」のことである。型式があるということは規格品であり、したがって、型式のないカスタマイズされた機械装置は補助対象外である。
 ☑一般型、高度生産性向上型の場合、機械装置費以外の補助金は500万円が上限である。
 ☑外注加工費と委託費の補助対象経費の合計は、補助対象経費総額の2分の1以下とする。
 ☑委託費に含める間接経費または一般管理費は、直接経費の10%を限度とする。
 ☑知的財産権等関連経費の補助対象経費は、補助対象経費総額の3分の1以下とする。
 ☑技術導入費、外注加工費、委託費、専門家経費は、同一の法人・個人に支出できない。
 ☑専門家経費(謝金、旅費)には上限が定められているため、公募要領を参照のこと。
 ☑(A)事業に要する経費(税込み)には消費税込みの金額を、(B)補助対象経費(税抜き)には消費税抜きの金額を記入する。海外から輸入するなど消費税がかからない場合は、(A)=(B)としてよい。その際、積算基礎欄にもその旨を記載する。
 ☑汎用性があり、目的外使用になりうるもの(例:事務用パソコン、プリンタ、文書作成ソフトウェア、タブレット端末、スマートフォン、デジタル複合機など)は補助対象外である。たとえ、タブレットやサーバなどが今回の補助事業専用に使用するものであっても不可である。その他、補助対象外となる経費については、公募要領を参照のこと。
 ☑各費目の(C)補助金交付申請額の欄には、(B)補助対象経費(税抜き)の3分の2以内の金額を記入する。1円未満は必ず切り捨てる。
 ☑計算上、(C)補助金交付申請額が0円となる場合は、当該費目の(A)事業に要する経費(税込み)、(B)補助対象経費(税抜き)を計上することはできない((A)~(C)全て空白とする)。
 ☑(A)、(B)、(C)の合計が合っているか確認する。また、(C)の金額が事業類型ごとに定められた上限額と下限額の範囲内に収まっているかも確認する。
 ☑積算基礎欄には、購入する物件の単価(税込み)、数量を記入する。可能であれば、購入予定のメーカー名、技術指導者・専門家名も記入する。

 《(5)資金調達内訳》
 ☑以前の記事「【補助金の現実(1)】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない」で書いたように、ものづくり補助金は事後精算のため、補助金を受領するまでの間、つなぎ融資が必要である。自己資金で賄う場合は問題ないが、金融機関から借り入れる場合は必ず金融機関と交渉しておく。「取引銀行にこれからお願いする予定」程度の柔らかい話ではNGである。なお、無事に採択されて将来的に補助金をほぼ確実に受領できると解っている場合でも、金融機関が融資に応じないケースが稀にあると聞く。金融機関は、補助事業だけでなく会社全体の財務状況、返済状況、融資枠などを見て総合的に判断するためであるらしい。

 《(6)その他》
 (※ここは特に注意点はなし)

 【様式1、様式2】
 ☑ページ最下部中央に必ず通しページを記入する。

 【認定支援機関確認書】
 ☑左上の宛先は、全国中小企業団体中央会と、書類を提出する都道府県の中小企業団体中央会の連名とする。
 ☑右上の日付は、平成28年4月13日以前とする。
 ☑認定支援機関の印は、角印ではなく代表者印とする。
 ☑全国の認定支援機関は、「認定経営革新等支援機関 活動状況検索システム」(中小企業基盤整備機構)で検索することができる。普段自社と取引のある金融機関、税理士はたいてい認定支援機関となっているため、まずは金融機関、税理士に相談するとよい。

 【機械装置費に関する追加書類】
 ☑機械装置を購入する場合、有効期限が2016年6月以降の見積書、カタログ、パンフレットを提出する。単価50万円(税抜き)以上の機械装置を購入する場合は、入手価格の妥当性を証明できるよう、自社と資本関係にない2社以上の相見積を取得する。子会社、関連会社からの調達は認められない。また、相見積とは、Aという製品について代理店Xと代理店Yから見積書を取得することであり、製品Aと、Aと機能的に類似する製品Bの見積書を取得することではない。相見積が取れない場合は、業者選定理由書(書式自由)を提出する。
 ☑「業者選定理由書」は書式自由となっているが、過去のものづくり補助金で各都道府県事務局が用意した雛形がある。例えば、大阪府中小企業団体中央会のページからダウンロードできるWordの<参考様式7>を利用するとよい(左上は提出先の都道府県の中小企業団体中央会宛てとする)。なお、選定理由としては、技術的な理由、その企業からでなければ調達できない理由を書く。「見積を取る時間がない」、「古くから取引がある」などはNGである(神奈川県中小企業団体中央会「平成26年度補正ものづくり補助金 業者選定理由書の注意点」を参照)。

 (※)2016年6月までの有効期限というのは、採択発表時期を意識してのことだろう。だが、その後の交付申請では、交付申請時点で有効な見積書が必要となる。さらに言えば、最後の実績報告時に、発注時点で有効な見積書を提出しなければならない。したがって、何度も見積書を取り直す手間を省くために、機械メーカーには見積有効期限を長めに設定してもらうとよい(期限を「次回見積まで」、「成り行き」などとするのが最も簡単である)。

 ☑事業類型「高度生産性向上型(最新モデル)」を選択した場合は、最新モデルであることを証明する書類を提出する。この点だけは私もよく理解できていないのだが、このルールは「生産性向上設備投資税制」に倣ったものと思われる。だとすると、例えば工作機械については、一般社団法人 日本工作機械工業会に、ソフトウェアについては一般社団法人 情報サービス産業協会依頼すれば、証明書を発行してくれるのかもしれない。

2013年04月21日

【ベンチャー失敗の教訓(第14回)】目的なきIPO(Initial Public Offering:株式公開)


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 Z社のC社長は、私が入社した当初から、将来的に3社を上場させるつもりでいた。上場準備の経験がある人をわざわざ雇い入れていたぐらいだ。しかし、改めて言うまでもないことだが、株式公開とは戦略を実現するための資金を調達する手段である。したがって、その資金によってどのような戦略を実現したいのか?いくらぐらいの利益が出る見込みなのか?株主は出資額に見合ったリターンが得られるのか?ということをはっきりさせておかなければならない。

 だが、これまでの連載記事を読んでいただければ察しがつくように、とにかく形から入りたがるC社長の「上場したい」という想いだけが先行してしまい、上場準備は全くと言っていいほど進まなかった。上場準備のために雇われた社員は、上場が断念された途端、退職してしまった。

 上場準備には最低でも3年はかかると言われている。先日、ある化粧品会社で上場準備に携わった経験がある方からお話をうかがったのだが、その企業は上場するのに実に10年かかったそうだ。上場までには、以下の図にあるような様々なタスクを乗り越えなければならない。

上場準備(3期前)

上場準備(2期前)

上場準備(1期前)

上場準備(申請前)

(※「株式公開したいなら!IPOポータルサイトの上場ドットコム」より。それぞれのタスク詳細については同HPを参照)

 上場準備にはお金も必要である。上場準備にかかる期間にもよるが、おおよそ7,000万円から1億7,000万円ほど用意しなければならない。その内訳は以下の通りである。

 ・上場審査・手数料=500万~1,500万円
 ・年間上場料=50万~200万円
 ・株券・有価証券届出書・目論見書・IR等印刷=1,000~2,000万円
 ・証券事務代行費用=400万円程度
 ・会計監査費用(監査報酬)=600万~1,500万円/年
 ・証券会社コンサルティング=500万円程度/年
 ・外部コンサルタント(委託範囲で幅がある)=100万円~1,000万円/年
 ・J-SOX法対応(監査法人・外部コンサルタントの費用)=2,000万円~5,000万円
(※「株式公開入門Navi」より)

 よって、上場準備にかかる費用をカバーできる事業計画をあらかじめちゃんと練っておかないと、上場準備のコストで事業が圧迫されて上場できなくなるという、本末転倒な事態になりかねない。当時、3社の合計売上高は約2億円、変動費率は約10%だったが(3社とも労働集約型のビジネスであったため、固定費=人件費が大半であり、変動費はほとんど発生しなかった)、上場準備のコスト7,000万円を捻出するには、7,000÷(1-0.1)=約7,778万円の売上増が必要になる。2億円の売上高に対し、実に30%以上の成長を遂げなければならない計算であった。

 だが、上場準備のコストをカバーすればそれで十分というわけではない。上場後もコーポレートガバナンスの体制構築やディスクロージャー(情報公開)、コンプライアンスの強化などにコストがかかる。そして何よりも、株主からは上場前よりももっと多くの利益を上げるようプレッシャーをかけられる。先ほどの上場準備コストに、上場維持コストと株主から要求される利益水準を加えた上で、必要となる売上高を計算すれば、30%の成長でさえ生ぬるいということになるだろう。ところが、3社の経営陣の中には、売上高成長の明確なシナリオがあったとは到底思えない。

 そもそも、3社の業界では上場自体が必要なのかどうかも、私は個人的に疑問に思っていた。ぱっと思いつく限り、X社のような教育研修サービス会社で上場しているのはリンクアンドモチベーション、Y社のような人材紹介会社で上場しているのはインテリジェンスぐらいである。コンサルティング会社に至っては、上場している企業が思いつかない(システム構築とコンサルティングを同時にやっている企業ならば、アメリカで上場しているアクセンチュアなどがあるが、純粋なコンサルファームで上場しているところはないはずだ)。

 3社の業界では、特に大規模な設備投資も研究開発も必要ない。また、労働集約型ではあるものの、人材を大量に採用してビジネスを展開するようなビジネスモデルでもなかった(それをやると、人材やサービスの品質の維持が難しくなる)。その意味では、3社とも株式市場から資金を調達する大義などなかったのである。経営陣は、単にキャピタルゲインがほしいという個人的な動機だけで動いていたような気がしてならない。
(※注)
 X社(A社長)・・・企業向け集合研修・診断サービス、組織・人材開発コンサルティング
 Y社(B社長)・・・人材紹介、ヘッドハンティング事業
 Z社(C社長)・・・戦略コンサルティング
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