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『北欧に学べ なぜ彼らは世界一が取れるのか/最新 買っていい株220 買ってはいけない株80/東日本大震災4年 復興よ、どこへ行く(『週刊ダイヤモンド』2015年3月14日号)』
『地銀の瀬戸際 メガバンクの憂鬱(『週刊ダイヤモンド』2014年5月31日号)』―地銀再編で地方経済の衰退が加速する?
『LINE全解明(『週刊ダイヤモンド』2014年4月19日号)』―経営資源の中で「情報」だけレバレッジが検討されない謎

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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2015年03月27日

『北欧に学べ なぜ彼らは世界一が取れるのか/最新 買っていい株220 買ってはいけない株80/東日本大震災4年 復興よ、どこへ行く(『週刊ダイヤモンド』2015年3月14日号)』


週刊ダイヤモンド2015年3/14号[雑誌]特集1 北欧に学べ/イケア 物流主役、デザイン脇役の意外/H&M 驚異の在庫管理 レゴ 世代超越で囲い込み/嵐、EXILE、K-POP…実は北欧音楽家が世界を席巻/「落ちこぼれ」は作らないフィンランド式教育メソッド/特集2 2万円目前! 最新 買っていい株 いけない株週刊ダイヤモンド2015年3/14号[雑誌]

ダイヤモンド社 2015-03-09

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 日本人が大好きな北欧(デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド)の企業についての特集。そんな私もつられて読んでしまった。本号で「北欧成功の5か条」として挙げられていたことに対する私の考えを書いてみる。

(1)人口が少なく、最初から世界志向
 北欧4か国で人口は合計2500万人。企業は国内市場を当てにせず、すぐに海外に向かう。ドイツから欧州各国を経て、米国。近年の韓国企業も似た戦略だ。

 ⇔最近は、「日本の市場が将来的に縮小するから、海外に進出しなければならない」とよく言われる。政府も、今後5年間で新たに1万社の海外展開を目指すという目標を掲げている。ただ、個人的には、海外ばかりに目を向けるのもいかがなものかと思う部分がある。

 企業が海外市場を目指すのは、国内の供給能力が国内需要を超えたため、海外の需要を獲得して需給バランスを取ろうとするからである。だが、海外の需要というのは、本来はその国の企業がまかなうべきものである。海外展開する企業は、現地企業のビジネスチャンスを”横取り”したとも言える。その結果、グローバル企業は世界中の需要をかすめ取って富を蓄積する一方、各国では自国の産業が十分に育たず、経済発展が阻害される可能性がある。

(2)企業が絶えず新陳代謝する国策
 高負担・高福祉ばかり注目されるが、産業政策は市場原理的。雇用より個人を守るため、競争力の弱い企業は淘汰され、労働者は新しい産業に移動。フィンランドのノキア、スウェーデンのボルボ、サーブが典型。

 ⇔衰退した企業を救わず、労働力を新しい産業へと速やかに移行させる政策については私も賛成である。日本は、業績が悪化した企業を延命させる傾向がある。例えば、信用保証制度による保証承諾実績は、他国に比べて日本が突出している。比較的規模が大きいアメリカでさえ約1.58兆円であるのに対し、日本はその約7倍にあたる約11.6兆円に上る(数字はともに2011年)。しかも、代位弁済のために毎年1兆円もの税金が投入されている。

 また、リーマンショック後に制定された「中小企業金融円滑化法」では、「経営改善計画」を作成すれば、金融機関が貸付条件を変更してくれる、平たく言えば借入金の返済を猶予してもらえることになった。中小企業金融円滑化法は時限法であったが、何度か期間が延長され、2013年3月にようやく終了した。しかし、経営改善計画による貸付条件変更は現在でも行われている。この仕組みを使って延命を図っている企業は相当数あると予想される。

 代位弁済に巨額の税金を使ったり、金融機関の貸付条件変更に多大な労力を使ったりするよりは、ハローワークの予算と人材を充実させて、失業給付金を増額したり、職業訓練コースの数を増やしたり、訓練のクオリティを上げたりした方がよいと思う。

(3)北欧デザインで高い付加価値あり
 無駄を徹底的に省いたシンプルなデザインが特徴。北欧デザイン自体がブランドで、付加価値が高い。デザイン企業にとって北欧好きが多い日本は大市場。

 ⇔日本企業の製品は、欧米企業や中台韓企業と比べてデザインが弱いと言われる。しかし、日本人に美的センスが欠落しているわけではないはずだ。日本には茶道、華道、書道といった伝統があり、数多くの陶芸、絵画、工芸品などが蓄積されている。

 (4)とも関連するが、日本人はユニバーサルに通用する製品・サービスを創り出すことが得意ではない。逆に、特定の限られた市場をつぶさに観察し、一部の顧客に受け入れられる製品・サービスを開発する方が向いている。他の顧客が必要とする機能を排する代わりに、特定の顧客が要求する機能は徹底的に磨く。こうすることで、シンプルだが非常に使い勝手のよい製品・サービスが生まれる。ただし、その製品・サービスが受け入れられるのは、あくまでも日本企業がターゲットとした特定の顧客層だけであり、それ以外の人からは見向きもされない。

 ところが、日本企業にグローバル化の波が押し寄せ、アメリカ的な経営手法が流入すると、世界中で通用する製品・サービスを作らなければならなくなった。日本企業にとって世界市場は、様々なニーズを持つ様々な市場から構成されていると映る。したがって、様々な顧客の要望に応えるためという名目で、1つの製品・サービスにあれもこれもと機能を追加してしまう。その結果、機能過多に陥ってデザイン的に”イケていない”ものができ上がるわけだ。

(4)ローカライズはほとんどしない
 極めてシンプルなデザインや商品が多いためか、各国で同じ製品やサービスを投入。リソースの無駄を省き、利益率向上につながる。イケアが格好事例。同社は、中国の食卓に置いたら茶碗として使え、欧州の食卓ではサラダボウルとして使えるような製品デザインを目指している。

 ⇔(3)で述べたように、日本企業はこれを真似できないと思う。世界標準の単一製品・サービスを世界市場に投入するのは、一神教文化圏に生きる欧米企業(特にアメリカ企業)の得意技である。しかし、日本人は属するのは多神教文化であることを忘れてはならない。

 日本企業は、進出する市場の先々で、顧客をよく観察し、その顧客に合った製品・サービスを開発する。世界で戦う日本企業は、現地化された多様な製品・サービスを多数取り揃える必要がある(もっとも、(1)で述べたように、本当に世界で戦う必要があるのかについて、より突っ込んだ検討が求められる)。アメリカ企業は日本企業を見て、何と非効率な経営だと思うに違いない。それでも日本人は、自らの文化・精神的伝統に則った方法を採用しなければならない。

(5)カリスマ経営者は必要ない
 上下関係がなく、フラットな組織が特徴だ。アップルのスティーブ・ジョブズのような強烈な経営者はいない。若手には「経営者は力がないほどいい」との声も。

 ⇔経営者にカリスマ性が必要ないという点には賛成するが、フラットな組織にはあまり賛成しない。本ブログでも何度か書いたが、日本の組織は多層化している方が安定するし、日本人は上位者の権威を受けている方がむしろ自由を発揮できるという特性がある。

 日本の組織では、現場の社員が自由にアイデアを考えることができる。ただし、そのアイデアを実行していいかどうかは、上司に諮る必要がある。その上司も自分では判断できないので、さらに上司に諮る。その上司もまた、自分の上司に諮る。こういうエスカレーションを繰り返すのが日本の組織である。確かに、意思決定には時間がかかる。しかし私は、現場の創意工夫を引き出すことと、そのアイデアを多角的に検討することを両立させる優れた仕組みであると考える。

 ところが、最近は部下のアイデアをすぐに否定してしまう上司が増えているらしい。また、サントリーの「やってみなはれ」の精神が示すような、部下にどんどんアイデアを実行させて、失敗した時の責任だけは取るというタイプのマネジャーが減っているようで、大変残念である。


2014年06月05日

『地銀の瀬戸際 メガバンクの憂鬱(『週刊ダイヤモンド』2014年5月31日号)』―地銀再編で地方経済の衰退が加速する?


週刊 ダイヤモンド 2014年 5/31号 [雑誌]週刊 ダイヤモンド 2014年 5/31号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2014-05-26

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 昨年12月、金融庁は地銀各行の頭取に、「金融機関の将来にわたる収益構造の分析について」という1枚のペーパーを配った。縦軸に各地銀が基盤を置く地域の将来の市場規模の縮小度合いを、横軸に現状の収益性を取ったグラフに、全国の地銀105行をプロットしたものである。

 これは、通称「森ペーパー」と呼ばれる。森信親検査局長の肝いりで作られたこのペーパーは、地銀の行く末を案じ、再編を含めた生き残り策について、本気で議論していこうという金融庁の意思を雄弁に語っていた。森ペーパーの第1版には地銀名が入っておらず、「我が行はどの点なのか?」とちょっとした騒動になったらしい。その後、地銀名が入った第2版が出たようで、本号では各方面への取材ならびに各種統計に基づいて、その内容の再現が試みられている。

森ペーパー(再現版)

 ベースとなっているのは、野村證券が集計した2014年3月期の地銀・第二地銀105行の決算データである。森ペーパーでは横軸を「各行の中小企業向け貸出金利回りから、預金利回り、信用コスト率、預貸業務に関わる経費率を控除したもの」となっているが、本号では「貸出金利回り-預金利回り-信用コスト率-経費率」で代替されている(信用コスト率は信用コストが中小企業貸出からと仮定し、戻し入れ超はゼロとして算出)。同じく、森ペーパーでは縦軸を「人口動態から推計した将来の地元市場の規模(25年3月末)」としているが、本号では「各行が本店を置く都道府県の生産年齢人口の変化率(2010年⇒2025年)」で代替している。

 ダイヤモンド社の再現方法にも問題があるのかもしれないが、この図にはやや難がある。マトリクスの図というのは、全体を4象限に分けて、象限ごとに異なる対策を提案するためのものだ。ところが、再現された図を見ても、どこを境界線にして4象限に分かれるのか解りにくい。

 ぱっと見た感じでは(「生産年齢人口の変化率」マイナス20%と収益率0%が境界線だとすると)、全国の地銀105行のうち、大部分が左上の「生産年齢人口の変化率」=小、「収益性」=高に位置づけられており、「それほど問題が大きくない銀行」が多いようにも見える。逆に、右下の「生産年齢人口の変化率」=大、「収益性」=小という「深刻な問題を抱えた銀行」は意外と少ない。このデータを基に、「だから地銀は再編が必要なのだ」と主張するのは苦しいように思える。再編という結論ありきで金融庁が動いているような気がしてならない。

 地銀の主たる顧客は地元の中小企業である。そして中小企業は、地元の住民をターゲット顧客とする地域密着型と、域外へ製品・サービスを出荷する広域型に分かれる。前者の企業の方向性は、地域の住民の構成と行政による街づくりの方針によって、後者の企業の方向性は、その地域に蓄積された経営資源面の強みと行政の産業振興構想によって規定される。地域密着型と広域型のバランスは地域によって異なるし、また、同じように地域密着型が中心の地域であっても、住民構成や行政の方針によって必要とされる企業は変わってくる。

 だとすれば、まずは将来の人口予測や行政の各種方針などを基に、それぞれの地域の産業が具体的にどのようなものになるか、その全体像を明らかにすべきではないだろうか?それが明らかになれば、今度は、その産業はどんな中小企業によって支えられるのか?それらの中小企業にはどの程度の資金需要があるか?を地域別に推測できるようになる。

 ここまで考えて初めて、それぞれの地銀の適正規模が導き出せる。逆に言うと、地銀を再編すべきかどうかは、ここまで突っ込んだ分析をしなければ解らないはずだ。金融庁はそういうきめ細かい分析をすっ飛ばして、入手が容易なデータだけに基づいて、「どの地銀も苦境に陥る、だから再編だ」と騒ぎ立てているにすぎない。

 安易な地銀再編は、地域経済をより疲弊させる危険性もはらんでいる。多くの地域では、将来的に人口が減少すると予測されている(「自治体、2040年に半数消滅の恐れ 人口減で存続厳しく 」など)。前述の通り、地域ごとの傾向をつぶさに分析する必要はあるものの、共通して言えるのは、人口減に伴ってその地域には大企業が進出しづらくなり、中小企業が中心の経済となる、ということだ。しかも、中小企業の中でもさらに規模が小さい小規模企業が中心となる。当然のことながら、個々の企業の資金需要はそれほど大きくない。

 ところが、再編によって規模が大きくなった地銀は、そのような小規模企業に対する融資を、「自行の規模に見合わない」、「小規模の案件では十分な収益が上げられない」という理由で敬遠する可能性がある。すると、小規模企業に融資する金融機関がなくなり、小規模企業の経営が立ち行かなくなる。その先に待っているのは、地方のさらなる衰退に他ならない。

 そのような最悪のシナリオを回避するために必要なのは、地銀を再編して大規模化することではなく、地域の特性に合った最適なサイズに再構築することである。金融庁も森ペーパーを振りかざして半ば脅迫のように再編を迫るのではなく、もう少し冷静な頭脳を持ってほしいと思う。


2014年05月07日

『LINE全解明(『週刊ダイヤモンド』2014年4月19日号)』―経営資源の中で「情報」だけレバレッジが検討されない謎


週刊 ダイヤモンド 2014年 4/19号 [雑誌]週刊 ダイヤモンド 2014年 4/19号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2014-04-14

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 「若者たちのSNSのトレンドが、フェイスブック的な『ストック型』からLINE的な『フロー型』に移っている。これは世界的な傾向だ」と、野村総合研究所社会ITコンサルティング部の山崎秀夫シニア研究員は指摘する。フェイスブックに限らず、ツイッターやmixiなど、多くのSNSは日常の出来事を記録する「ストック型」のサービスだ。一方で、LINEやワッツアップは、チャットや通話をメインとした「フロー型」のサービスといえる。
 この記述を読んで、facebookやtwitterは今やストック型に位置づけられるんだ、と思ってしまった。旧ブログの記事「Twitterはブログを駆逐するのかねぇ?」を書いた時、私は明らかにtwitterをフロー型として意識していた。そして、ストック型のブログとフロー型のtwitterはうまく共存するであろうと考えていた。

 個人的には、twitterもfacebookもタイムラインで投稿がどんどん流れて行ってしまうことから、フロー型だと思っていた。ところが、さらにフロー型の特徴が強いLINEやワッツアップの前では、twitterやfacebookさえもストック型になってしまうらしい。どうやら、SNSの世界では、フロー型のサービスに対して、さらにフロー的なサービスが登場することで既存のフロー型をストック型に追いやり、市場の空白地帯を獲得する、という事象が起きているようだ。

 こうしてフロー的な情報がネットの世界に増殖するにしたがって、困った問題が起きている。改めて言うことでもないが、企業が分析対象としなければならない情報量が爆発的に増えているということだ。実は、奇妙なことに、人・モノ・カネ・情報・時間という経営資源のうち、情報だけはレバレッジを利かせる、つまり、少ない投入量で最大の成果を得ようという発想に乏しい。

 人材に関しては、例えば営業部門の営業成績を2倍にする場合、単純に営業担当者を2倍にしようと考える経営者はいない。多少は営業担当者を増やすかもしれないが、既存の営業担当者の生産性を引き上げることで、部門の目標を達成しようとするだろう。

 トヨタ生産方式の生みの親である大野耐一は、ある自動車の立ち上げ時に、エンジン担当の課長に「5千台を100人以下で作るように」と指示をした。すると2~3か月後に課長が、「80人で5千台作れるようになりました」と報告した。その自動車が非常によく売れ、エンジンも増産することになった。大野は課長に、「1万台は何人でできるか?」と聞いたところ、課長はすぐに「160人です」と答えたものだから、大野は激怒した。課長の計算は単なる「算術の経営」にすぎない。倍の台数をより少ない人数で作る「忍術の経営」でなければならない、と大野は説教したのである。

トヨタが「現場」でずっとくり返してきた言葉 (PHPビジネス新書)トヨタが「現場」でずっとくり返してきた言葉 (PHPビジネス新書)
若松 義人

PHP研究所 2013-06-19

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 モノについては、財務分析で在庫回転率が経営の効率性を図る重要な指標となっていることからも解るように、少ない在庫で多くの売上高を上げることが望ましいとされる。また、エリヤフ・ゴールドラットが提唱したTOC(制約理論)では、工場はできるだけ在庫を持たずにスループットを最大化することが求められる。逆に、在庫回転率が急に悪化している場合は、経営効率が悪くなっただけでなく、粉飾決算が疑われる。在庫回転率の急激な悪化と粗利率の改善がセットになっているケースでは、架空在庫による粉飾決算の可能性が高い。会計の世界では、「粉飾の第一歩は在庫の水増しから始まる」と言われている。

 カネに関しても、少ない投資で多くの利益を上げることに経営陣は苦心している。カネをたくさん投資すればするほど儲かるのであれば、金融機関からお金を借りまくって投資すればいい。しかし、そんなうまい話はどこにも転がっていないことは誰もが解っている。だからこそ、経営者の手腕が問われるわけだ。経営陣の元には、毎日部下からいろんな案件が持ち込まれる。部下は自分の案件によってどのくらい会社に利益がもたらされるのか、ROI、DCF、NPVなどの手法を用いて投資対効果を計算している。経営陣は様々な案件の投資対効果を見比べて、投資対効果が高く、かつ投資対効果算出のシナリオに納得感がある案件に投資をする。

 時間は、万人に平等に与えられた経営資源である。その反面、貯蓄することができず、常に減っていく一方の残酷な経営資源でもある。ドラッカーは著書『経営者の条件』の中で、「時間をマネジメントできる者こそがエグゼクティブ(経営管理者)である」と宣言した。人・モノ・カネに比べて、時間は実際に目にすることも、財務諸表上で値を確認することもできない。だからこそ、もっと注意を向けるべき重要な経営資源である、とドラッカーは強調したのである。ドラッカーは同書の中で、どの仕事にどのくらいの時間を費やしているのかをこまめに記録し、ムダな時間を省き、重要な仕事にはまとまった量の時間を投入しなければならないと述べている。

ドラッカー名著集1 経営者の条件ドラッカー名著集1 経営者の条件
P.F.ドラッカー

ダイヤモンド社 2006-11-10

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 このように、人・モノ・カネ・時間については、その投入量をできるだけ抑えようとする。ところが、情報だけはそういう考え方にならない。情報が増えたのであれば、ビッグデータという流行のキーワードに表れているように、増えた情報を全て分析対象に加えて、ITの処理能力で強引にカバーしようとする。ノーベル経済学賞を受賞したハーバード・サイモンは、1971年に、「情報は受け手の注意力を衰えさせる。このため、大量の情報は注意力の欠如を引き起こす」と述べた。情報量が増えれば、意思決定の質が上がるとは限らない。
 デジタルアーツの調査によると、男子高校生で53%が、女子高校生で74%が3時間以上スマホを使い、特に女子高校生では調査対象の17%が9~15時間利用しているという結果が出た。注目すべきは、スマホを所持する子ども全体で29%が、その使用をやめようと思いつつもやめられずに苦しんだ経験を持つという結果だ。

 「子どもにとって、LINEで友達とだべるのは、トイレに行きたくなくても一緒にトイレに行くのと同様の”付き合い”によるものが多い。本当はもう自分は会話から抜けたいのにやめる口実が見つからずずるずる続けるケースが多い」(兵庫県立大学・竹内和雄准教授)
 これは高校生のケースであるが、最近では増え続ける情報を追いかけることに必死になっているビジネスパーソンが増加していることは容易に想像がつく。彼らは、もうこれ以上情報を収集・分析しても仕方ないと思っているのに、新しい情報が次から次へと入ってくるから、作業を止められなくなっているかもしれない。情報は、意思決定を下すための材料である。ところが、情報を集めたり分析したりすること自体が目的となってしまい、肝心の意思決定がおざなりになっているケースがあるのではないだろうか?

 ビッグデータが一つの流行であるというのならば、敢えてその逆のことを提案してみたい。つまり、「情報を捨てよ」ということである。情報のチャネルを絞り、チャネルから流入する情報の量も制限する。人はより完璧な決断を下そうとすると、より多くの情報を集めたくなる。しかし、サイモンが「限定合理性」という言葉で説明したように、所詮人間は完全に合理的な意思決定を下すことなど無理なのである。だから、情報をくまなく収集・分析しようというのは幻想だ。

 情報に溺れると集中力が下がる。逆に、情報を絞れば、集中力が保たれる。だとすれば、限られた情報であっても、高い集中力を発揮することで、ビッグデータを利用した場合よりも良質な意思決定を下すことが可能となるのではないだろうか?今はビッグデータがもてはやされているが、数年後にはビッグデータへの投資を見直し、組織全体で情報(と情報システム)の取捨選択を行って、効率的な意思決定を行っている企業事例が出てくるような気がする。そして、「情報の生産性」を測定する指標(例:「1ギガバイトあたり利益」?)が開発されるのではないだろうか?



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