このカテゴリの記事
『最強の組織(DHBR2014年6月号)』―阪神とソニーの関係者に読んでもらいたい特集(後半)
『最強の組織(DHBR2014年6月号)』―阪神とソニーの関係者に読んでもらいたい特集(前半)
森繁和『勝ち続ける力』―落合氏と森氏に共通する7つの思考(2)

お問い合わせ
お問い合わせ
プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
アクセスカウンター(PV)
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

タグクラウド

Top > 阪神 アーカイブ
2014年06月10日

『最強の組織(DHBR2014年6月号)』―阪神とソニーの関係者に読んでもらいたい特集(後半)


Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 06月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 06月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2014-05-10

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 (前回からの続き)

○【インタビュー】変化への対応が企業を強くする 一流企業であり続けるために(古森重隆)
 富士フィルムホールディングスの代表取締役会長兼CEOである古森重隆氏のインタビュー記事。この記事はソニーの関係者に読んでもらいたい。
 これまでにない勢いで縮小すると読んだ主力事業は、設備や組織などを大胆にリストラしなければ生き残れないと結論づけました。世界中に巨大な生産設備があり、これらをそのまま放置する選択肢がないからです。

 しかし、主力事業のリストラだけでは縮小均衡に陥るだけです。それを避けるために何をするか、企業としてこの先も成長し続けるために最適な新規事業は何か。そうした側面も同時に読んでいかなければなりません。
 富士フィルムやソニーと、私がいた前職のベンチャー企業を同じ土俵の上で論じるのはおこがましいかもしれないが、「リストラをする時には必ず成長戦略がセットでなければならない」というのが、前職で学んだ重要な教訓の1つである(以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第19回)】真綿で首を絞めるように繰り返されるリストラ」を参照)。リストラはこれ以上の赤字を防ぐための応急処置であり、言わばマイナスをゼロ付近にまで戻すに過ぎない。ゼロから再びプラスに持っていくためには、成長戦略を描く必要がある。

 リストラをすると、残った社員にはリストラされた社員の分まで仕事が回ってくる。リストラされた社員が一番苦しいのはもちろんだが、残った社員も苦しみを味わうことになる。その苦しみを癒してくれるのは、成長戦略というかすかな光である。今の苦しい仕事を乗り越えれば、再び事業が軌道に乗るかもしれないという希望があれば、社員も何とか頑張ることができる。逆に、そういう一縷の望みもないままに、ただひたすら忙しいだけの仕事をさせられたら、社員のモチベーションは下がる一方であろう。そうすれば、待っているのは更なる業績の悪化と追加リストラである。

 ソニーからは成長戦略が見えてこない。『週刊ダイヤモンド』2014年4月26日号には平井一夫CEOのインタビューも掲載されていたが、「誰をターゲットに、どんな顧客価値を提供するのか?」という戦略の基本的なところが全く伝わってこなかった(もっとも、ソニーを貶めたい編集部の悪意(?)がはたらいて、敢えてそういう構成になっているのかもしれないが)。さらにたちの悪いことに、ソニーは自社ビルを売却するなど資産の切り売りによって、何とか延命を図っている状況である。挙句の果てには、ソニー生命の吸収によって黒字化を図ろうとしていたのだから、もはや経営ではなく錬金術の世界である(これには金融庁から待ったがかかったらしい)。

週刊 ダイヤモンド 2014年 4/26号 [雑誌]週刊 ダイヤモンド 2014年 4/26号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2014-04-21

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 メーカーの場合、技術力が最も重要かつ強力な経営資源です。技術力という経営資源で将来に渡ってその事業分野でコンペティターに勝ち続けていけるだけの基盤力があるか、マーケットがあるか、そういう製品を開発することができるかを重視しました。その結果、新たな成長戦略として6つの事業領域を選択したのです。
 ソニーは2000年度からの約15年間で、実に8回ものセグメント変更を行っている(「ソニーがまた「セグメント」を変更(1年9ヶ月ぶり8回目)|市況かぶ全力2階建」を参照)。もちろん、戦略の変更に伴って柔軟に組織を変えているのであれば評価に値するであろう。しかし、ソニーの場合、よく見るとセグメントの本質的な部分はほとんど変わっていないように感じる。経営不振の企業は、何かにつけて組織変更をしたがる。「改革を進めている」と対外的にアピールできるからだ。だが、そのような組織変更は何の利益も生み出さない。組織変更自体が目的になっているのは、組織衰退の証である。

 ソニーは今までやってきた事業にこだわりすぎており、幅広い視野が持てなくなっているのではないだろうか?富士フィルムのように市場が急速に消えているわけではなく、なまじ市場自体は残っていることが、ソニーにとっては災いしているように思える。ソニーの関係者は、「まだ市場はあるのだから、我々が巻き返すチャンスがあるはずだ」と思い込んでいるのかもしれない。だが、ここは一歩引いて、ソニーのコア技術とは一体何なのか?その技術で実現できそうなことは何なのか?それに対してどの程度のニーズがありそうか?といったことを、既成概念にとらわれずに広く洗い出す作業が必要ではないかと思う。

 ソニーの社員は優秀なので、2つ目の問いまでは比較的簡単に答えられるだろう。だが、一番肝心なのは、ありきたりなことではあるが3つ目の問いである。実は、ソニーの創業理念は技術を重視しており、井深大が起草した「設立趣意書」には技術という言葉が頻繁に登場する。逆に、顧客重視の要素が薄い。この点を指摘したのは、『ビジョナリー・カンパニー』の著者であるジェームズ・コリンズであった。コリンズは同書の中でソニーをビジョナリー・カンパニーとして扱っており、「企業理念には顧客第一主義は必ずしも必要ない」と述べていた。

 ところが、同書が出て以降のソニーの苦境を見るにつけ、やはり顧客重視の姿勢は経営に欠かせないものであると思う。その技術は誰が喜んでくれるのか?どのくらい喜んでくれるのか?(ちょっとだけなのか?それとも目玉が飛び出るほど喜んでくれるのか?)なぜ喜んでくれるのか?(何か日常生活で困っていたことが大幅に改善されるのか?顧客の暮らしを大幅に豊かにする生活体験を与えてくれるのか?)ということを愚直に問い続けることが、ソニーをマーケティング重視の企業に変えていくのではないだろうか?


2014年06月09日

『最強の組織(DHBR2014年6月号)』―阪神とソニーの関係者に読んでもらいたい特集(前半)


Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 06月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 06月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2014-05-10

Amazonで詳しく見る by G-Tools

○伝説のサッカー監督が語る ファガーソン8つの流儀:常勝軍団はこうしてつくられた(アレックス・ファガーソン、アニタ・エルバース)
 マンチェスター・ユナイテッドを26年率いて、実に13回ものリーグ優勝を含む38のタイトルを獲得したファガーソン氏のインタビュー記事。この記事は是非とも阪神タイガース関係者に読んでもらいたい。例えばこの部分である。
 エルバース:彼(ファガーソン)の判断を後押ししたのは、チームが再建途上のどの段階にあるかを見抜く鋭い感覚と、個々の選手が選手生命のどの段階にいるか―各選手がその瞬間にどれだけの価値をチームにもたらしているか―を見抜く、似たような鋭い感覚であった。(中略)ライバル・チームに比べ、ユナイテッドが獲得した選手は圧倒的に25歳未満の選手の割合が多かったのである。またユナイテッドは、まだ何年も活躍できそうな選手を喜んで手放したため、大半のライバル・チームと比べて選手放出から得る金額が多かった。(中略)

 ファガーソン:我々は選手を3つの層に分けて考えていました。30歳以上の選手、だいたい23歳から30歳くらいまでの選手、23歳未満のこれからの選手です。この背後にあるのは、若い選手は成長途上により、年長の選手によって設定された基準にいずれ到達する、という考え方です。どうやらすぐれたチームの寿命は大体4年程度しか持たないようなのです。私は常に、そうではないと何とか実証しようと努力したのですが―。なので4年経つと何らかの変革が必要になってきます。そこで我々は3年から4年後のチームを頭に描き、それに沿って物事を決めました。
 阪神ファンなら痛いぐらいに感じていることだが、阪神は若手選手の育成が非常に苦手だ。人気のあるベテラン選手に頼る⇒若手の出場機会が減る⇒ベテラン選手が怪我や引退でいなくなる⇒若手はベテランの代わりになるほど育っていないので、慌てて外国人やFA選手を獲得する⇒外国人やFA選手がそこその成績を残してポジションに居座る⇒若手の出場機会がさらに減る⇒外国人が不振でいなくなったり、FA選手に衰えが来たりする⇒また新しい外国人やFA選手を探す、というのがここ10年ぐらいの流れである。最近はようやく若手が出てきたが、ベテランの思わぬ怪我などでポジションが空いたことが原因であり、計画的な育成の結果とは言いがたい。

 落合元中日監督は、「どんなに強いチームでも、年間144試合戦えば60敗ぐらいはする。その60敗をどのように使うかが大事だ」と言っていた。60敗の中で「負けながらチームを育てていく」ことが重要だと言いたかったのだろう。落合氏の下で投手全般を見ていた森繁和氏は、阪神ファンの私からすると、非常に計画的に投手を育成していたように感じる。

 現在の先発ローテーションやリリーフ陣が数年後にはどうなっているか?どんな投手が足りなくなるか?2軍や1軍半の投手の中で、その不足部分を補う候補となるのは誰か?その候補者が数年後に先発ローテーションやリリーフを担うようになるには、どのように育成すればよいか?ということを相当考えていたのだろう。そして、その育成プランに沿って、全ての投手を最低でも1年に1回は1軍で試していた(以前の記事「森繁和『参謀』―阪神が涙目になる中日の投手王国の仕組み」を参照)。60敗の中には、投手育成のために使われた試合もあるに違いない。

 投手に比べると、野手の育成は難しい。投手の場合は、どんな投手でも1年間ローテーションを守ったり、リリーフを全うしたりするのは容易ではなく、怪我や不振で2軍に落ちることがある。よって、その期間を利用して、若手の育成をすることができる。これに対して、野手はやすやすと戦列を離れることができない。投手は身体に不調のサインが出た場合、無理をするとすぐに選手生命に関わるので、大事をとって休むことが許される。しかし、野手は多少の怪我があっても試合に出なければならない。金本氏のように、骨折しても頭部に死球を受けても簡単には休めない。だから、若手の育成機会は、最初からかなり限られているわけだ。

 負けながらチームを育てると言った落合氏でも、野手に関しては8年間で森野1人しか育てられなかった。ベテラン偏重ではないか?という批判に対して、落合氏は「実力がある者から使うのは当然だ」と反論していた。そのツケが回ってきて、現在の中日は野手の面で苦労している(投手についても苦労しているが・・・)。こういう事情と前例があるから、野手の場合は、投手以上に頭を使って綿密な育成計画を作る必要があると思う。

 現在の阪神を見ると、3年後と言わず、来年にでも顕在化しそうな問題が山積みである。まず、ベテランリリーフ陣のAFKは、おそらくもう先が長くない。JFKに頼りすぎて後継者探しに苦労した過去を繰り返してはならない。先発陣に目を向けると、能見は来年36歳であり、エースの看板を背負わせるのが難しくなる。メッセンジャーは今のパフォーマンスを維持できるか不安が残る。岩田も今は好調だが、もともと波が激しい投手であり、来年33歳になるから、いつまで持つか解らない。仮に3人が来年いっぺんにダメになったとすると、ローテは今年2年目の藤浪とルーキーの岩崎の2人しかいなくなる。20代中盤~後半の投手が複数一気に出てこないと、かなり厳しい。

 野手で一番の課題は、ショート鳥谷の後継者である。阪神は以前から内野の層が薄い。セカンドの西岡、上本が相次いで離脱した際、センターの大和にセカンドをやらせたり、せっかく外野手にコンバートしたばかりの今成をサードに回したりしているぐらいだ。ショートの後継者はいないといっても過言ではない。鳥谷は非常に頑丈な身体をしているが、来年はもう34歳であり、何が起きるかわからない。また、キャッチャーについても、FA選手の獲得で問題を先送りしている状況であり、以前からの懸念事項である矢野氏の後継者問題は一向に解決していない。さらに、外国人のマートン(レフト)、ゴメス(ファースト)に代わる日本人の中距離砲も育てなければならない。
 エルバース:ファガーソンの場合、並外れて攻撃的であると同時に並外れて計画的だった。彼はチームに、勝つための「準備」をさせていた。つまり、残り時間10分や5分、3分でゴールが必要な時にどうプレーすべきか、選手にたびたび練習させていたのである。「形勢が厳しくなった時の練習をしているので、そのような時に勝つためには何が必要かをわかっているのです」とユナイテッドの助監督の一人は我々に語った。
 これも今の阪神に欠けていることだと思う。阪神は広い甲子園を根拠地としながら、なぜか「打ち勝つ野球」を目指しているようである。よって、打線が活発な時は問題ないものの、ロースコアの接戦になると非常に弱いという印象がある。事実、今シーズンの序盤はチーム打率が3割を超えていた時期もあったのに、その後打線が低調になるとさっぱり勝てなくなった。私は、阪神は「守り勝つ野球」に戦略を変更すべきで、そのための練習がもっと必要だと考えている。

 具体的には、ゲーム終盤に僅差で負けているケースで、リリーフ陣はどのような投球をするべきなのか?また、攻撃陣はどうやって1点、2点を泥臭く取っていくのか?上位打線から始まる回ではどのような攻撃を仕掛けるのか?仮に下位打線から始まる場合には、どうやってチャンスを作って上位に回すのか?こういった厳しい局面を打開するための練習を積まなければならない。

 2005年に阪神が優勝した時には、JFKという鉄壁のリリーフ陣に加えて、SHEというもう1つのリリーフ陣がいた。SHEが僅差で負けているゲームでも踏ん張ってくれたおかげで、終盤に逆転した試合がいくつもあった。野球は5試合ものにできるか、5試合落とすかで貯金が10も違ってくる。そして、貯金が10違えば、優勝争いに大きく影響する。

 最近の阪神は、シーズン終盤に失速するのがお決まりになっている。2008年に13.5ゲーム差をひっくり返されて巨人に優勝をさらわれたのは、ファンにとっても思い出したくない出来事だ。2010年も優勝するチャンスがあったのに、終盤の取りこぼしが響いて中日と1ゲーム差の2位に終わった。2009年、2011年にはCS争いで息切れして4位に沈んだ。

 メンタル的な弱さもあるのかもしれないが、私は単にシーズンを通して戦い抜くだけの基礎的な体力が足りないためではないか?と思っている。落合氏は、選手が1年間戦える身体を作るために、春のキャンプを4勤1休から6勤1休に変更した。ペナントレースは6勤1休が基本なのだから、キャンプのスケジュールもそれに合わせるべきだというのが落合氏の考え方である。阪神も、こういう小さなところから改革を進める必要があるような気がする。

 (続く)


2013年02月08日

森繁和『勝ち続ける力』―落合氏と森氏に共通する7つの思考(2)


勝ち続ける力勝ち続ける力
森繁和

ビジネス社 2012-10-12

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 (前回の続き)

(4)孤独に負けない精神力をつけさせる
 (最近の若い選手は)自分の時間は1人で過ごしたいのに、グラウンド(仕事)では「どうすればいいですか」「指示を出してください」「これで間違っていませんか」という頼りなげな視線を向けてくる。

 それでは困る。自分1人で決めねばならないのだ。(中略)野球は9人対9人で戦うチームスポーツだが、実際は投手と打者による1対1の勝負である。しかも、投手の指先をボールが離れると、コンマ何秒で勝負がついてしまう。そんな一瞬の勝負に、長々とアドバイスしている時間はない。(『采配』)
 潰れない選手、伸びる選手には、共通点がある。特に投手の場合、この共通点は、大成するために絶対必要不可欠な条件だと感じる。それは、孤独な時間をきちんと過ごせることだ。(中略)

 相手を知る前に、孤独に慣れ、技術的にも精神的にも、自分をしっかりわかっておかないといけないのだ。そのためには孤独な時間をうまく過ごせるようになる必要があるのだ。山本昌や浅尾や吉見は、何だかんだ言ってもそれができる投手だった。ランニングを1人で黙々とやりながら、自分のことを考える。野球のことを考える。ピッチングのことを考える。そのひとときこそが大事だと私は思う。(『参謀』)
(5)30代で一人前になることを目指す
 現在のドラゴンズには、27歳の野本圭と岩崎達郎を筆頭に、26歳の堂上剛裕、大島洋平、24歳の松井佑介、23歳の平田良介、堂上直倫、福田永将ら、将来はレギュラーになってもおかしくない若手野手が何人もいる。彼らを私の一存でレギュラーに抜擢すれば、1年くらいはそこそこの成績を残してくれたかもしれない。

 しかし、基礎体力に加えて、長いペナントレースを戦い抜く体力をつけてくれないと、2年、3年と実績を残していくのは難しい。だからこそ、25歳から30歳くらいの間は、しっかりとした土台をつくる時期だととらえている。

 せっかく若くしてレギュラーになっても、30代半ばでユニフォームを脱ぐことになったら寂しい。ならば、20代で足場を固め、30歳でレギュラーの座を手に入れ、40代まで第一線でプレーできたほうが幸せなのではないだろうか。(『采配』)
 なにもあせる必要はない、選手の本格的な活躍は30代からでもいい、20代で一瞬活躍して、すぐケガや勘違いで活躍できなくなり、プロ野球界を去るケースを私もたくさん見てきたし、監督もそうだろう。だったら、じっくり下積みを経験して、練習を積み、森野(将彦)(筆者注:落合政権8年間の間に、野手でレギュラーをつかみとったのは森野だけである)のように、30代でレギュラーになり、欠かせない選手になったほうがよっぽど幸せだろう。

 ドラゴンズが誇る「アラ・イバ」コンビ、荒木雅博と井端弘和もレギュラーに定着したのは20代なかばである。選手のためを思えば、長い目で見て3年後、5年後にレギュラーになれるような育て方をすればよい。特にピッチャーは、体ができていないうちに無理をすると、短命で終わる危険が高くなる。1~2年ですぐ結果を求めるのは、選手のためと言うよりは、監督やコーチが実績をあせるからだろう。(『参謀』)
(6)「点をやらない野球」を徹底する
 監督になったつもりで考えてほしい。0対1の悔しい敗戦が3試合も続いた。ファンもメディアも「打てる選手がいない」と打線の低調ぶりを嘆いている。この状況から抜け出そうと、チームでミーティングをすることになった。監督であるあなたは、誰にどんなアドバイスをするか。(中略)

 私は投手陣を集め、こう言うだろう。「打線が援護できないのに、なぜ点を取られるんだ。おまえたちが0点に抑えてくれれば、打てなくても0対0の引き分けになる。勝てない時は負けない努力をするんだ」(『采配』)
 バッティングのように、すぐに結果が出ないものは仕方がない。それよりもやるべきこと、「守ること、走ること」をきちんとする。「やるべきこと」はミスをしないことだ。普通に捕れるボールを捕り、暴投しないようにすることだ。

 ヒットを打つことが「やるべきこと」ではない。3回に1回打てば、打率は十分なのだ。それより正面に来たボールを捕って確実にアウトにする。フライを捕る、走る、バックアップ、カバーリングをきちんと行っていれば、勝つことができても負けることもない。(『勝ち続ける力』)
(7)選手の中にリーダーを作らない
 最近の若い選手は、巷でチームリーダーと言われている選手に敬意を表し、「あの人についていけば」とか「あの人を中心に」といった発言をするが、それが勝負のかかった場面での依存心になってしまうケースが多い(筆者注:1点リードを許している展開で、1死2塁でチャンスが回ってきた時に、自分で決めてやろうとするのではなく、後に控えるチームリーダーに決めてもらおうと自分は進塁打に徹してしまうことを指す)。(中略)

 組織に必要なのはチームリーダーではなく、個々の自立心と競争心、そこから生まれる闘志ではないか。年齢、性別に関係なく、メンバーの一人ひとりが自立心を持ち、しっかりと行動できることが強固な組織力を築いていく。(『采配』)
 本来は、全員がリーダーシップをとる能力をもっているのが望ましい。自分はただついていくだけというのではなく、それぞれが考える集団がベストだ。そのうえで初めて、ひとつにまとまる意味がわかるのだ。

 結論としては、私は最初からリーダーを決めるべきではないと思っている。リーダーは育てるものではなく、自然に育つものだ。(『勝ち続ける力』)
 こうした2人の共通価値観に従って、長時間の厳しい練習を通してじっくりと育成された、タフで自立心のある選手たちが、投手も野手もそれぞれに考えながら能力を発揮し、鉄壁の「守りの野球」を実現させていったのだろう。中日の組織能力が一過性でなかったことは、2人がチームを去った2012年のペナントレースでも、勝敗自体は2011年と遜色ない成績を残したことに表れている(2011年が75勝59敗10分、2012年が75勝53敗16分)。問題はブランコ、ソト、ソーサという助っ人外国人が3人とも抜けた今年だ。落合―森文化が活きていれば、代わりの選手はすぐに出てくるに違いない。しかし、その文化が崩れ始めると、2002年から11年続くAクラスの座も危ういかもしれない。いや、個人的には中日の心配はどうでもいいのさ。問題は阪神よ、阪神!



  • ライブドアブログ
©2012-2017 free to write WHATEVER I like